特許異議申立
2016-700569
シリコーン樹脂製反射基材、その製造方法、及びその反射基材に用いる原材料組成物
- 審判番号
- 2016-700569
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-077292
- 登録番号
- 特許第5836420号(P5836420)
- 請求日
- 2016年06月24日
- 審決日
- 2019年04月25日
- 公報発行日
- 2019年08月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社朝日ラバー
- 【権利者代理人】特許業務法人眞久特許事務所
- 【権利者代理人】小宮 良雄
- 【権利者代理人】大西 浩之
- 【異議申立人】山▲崎▼ 浩一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 森 竜介
- 審判官 恩田 春香
- 審判官 小松 徹三
- 分類
- P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.1 -YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第126条第4項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5836420号発明「シリコーン樹脂製反射基材、その製造方法、及びその反射基材に用いる原材料組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5836420号の明細書及び特許請求の範囲を、平成30年12月14日に提出された訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-32〕について訂正することを認める。
特許第5836420号の請求項1~32に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5836420号の請求項1~32に係る特許についての出願は、2010年12月24日(優先権主張2010年3月23日、日本国)に国際出願した特願2012-506781号の一部を平成26年4月3日に新たな特許出願としたものであって、平成27年11月13日付けでその特許権の設定登録がされた。
その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 6月24日 特許異議申立人山▲崎▼浩一郎より請求項1~32に対して特許異議の申立て(以下「本件特許異議の申立て」という。)
平成28年 8月25日付け 取消理由通知
平成28年10月31日 特許権者から意見書及び訂正請求書の提出
平成28年12月7日付け 訂正拒絶理由通知
平成29年 1月13日 特許権者から意見書及び手続補正書の提出(当該手続補正書により、訂正請求書、訂正特許請求の範囲、及び訂正明細書の補正)
平成29年 2月27日 特許異議申立人山▲崎▼浩一郎から意見書の提出
平成29年 6月27日付け 取消理由通知(決定の予告)
平成29年 8月29日 特許権者から意見書及び訂正請求書の提出
平成29年10月11日 特許異議申立人山▲崎▼浩一郎から意見書の提出
平成30年 5月28日付け 取消理由通知(決定の予告)
平成30年 7月31日 特許権者から意見書の提出
平成30年11月 9日付け 取消理由通知
平成30年12月14日 特許権者から意見書及び訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)の提出
平成31年 2月22日 特許異議申立人山▲崎▼浩一郎から意見書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
平成30年12月24日に提出された本件訂正請求書による訂正は、「特許第5836420号の明細書、特許請求の範囲を本件請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲とおり、訂正後の請求項1~32について一群の請求項ごとに訂正することを求める。」というものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1中、
「反射層が、支持体上で又は基板として膜状、板状又は立体状に形成されているシリコーン樹脂製反射基材を形成するためのもので粘度を0.5~500Pa・sとする液状であり」と記載されているのを、「反射層が、膜状、板状又は立体状に支持体上に形成されることにより、シリコーン樹脂製反射基材を形成するためのものであり、反応性の官能基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物からなる接着性付与成分と失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する反応抑制剤とが混合されて分散されつつ含有され、粘度を10~500Pa・sとする液状であり」に訂正し、
「三次元架橋により硬化させ前記反射層にするためのものであり」と記載されているのを、「三次元架橋により前記支持体上で硬化させ前記反射層にするためのものであり」に訂正し、
「前記酸化チタンが、Al、Al2O3、ZnO、ZrO2、及び/又はSiO2で表面処理されている、又はシランカップリング処理で表面処理されており」と記載されているのを、「前記酸化チタンが、Al、Al2O3、ZnO、ZrO2、及び/又はSiO2で表面処理されており」に訂正し、
「前記反射層の反射率を波長350~1000nmのいずれかの波長で少なくとも90%とする前記シリコーン樹脂製反射基材を形成するために用いられる」と記載されているのを、「150℃で1000時間の加熱前後において前記反射層の反射率を波長350~1000nmのいずれかの波長で少なくとも90%とする前記シリコーン樹脂製反射基材の前記反射層を形成するために用いられる」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2中、
「反応性の官能基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物からなる接着性付与成分と失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する反応抑制剤との少なくとも何れかが」と記載されているのを、「加熱によって失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する前記反応抑制剤が」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項12中、
「Al、Al2O3、ZnO、ZrO2、及び/又はSiO2で表面処理されている、又はシランカップリング処理で表面処理された酸化チタンを含む白色無機フィラー粉末を混合させて分散させ含有させて、粘度を0.5~500Pa・sとする液状であり」と記載されているのを、「Al、Al2O3、ZnO、ZrO2、及び/又はSiO2で表面処理されている酸化チタンを含む白色無機フィラー粉末と反応性の官能基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物からなる接着性付与成分と失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する反応抑制剤とを混合させて分散させ含有させて、粘度を10~500Pa・sとする液状であり」に訂正し、
「支持体上で又は基板として」と記載されているのを、「支持体上で」に訂正し、
「前記反射層の反射率を波長350~1000nmのいずれかの波長で少なくとも90%とする」と記載されているのを、「150℃で1000時間の加熱前後において前記反射層の反射率を波長350~1000nmのいずれかの波長で少なくとも90%とする」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項16中、
「反応性の官能基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物からなる接着性付与成分と失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する反応抑制剤との少なくとも何れかを」と記載されているのを、「加熱によって失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する前記反応抑制剤を」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項27中、
「金属膜と前記反射層とが隙間なく仕切られたまま露出して形成されており、
又は
前記反射層である前記基板上に、
金属膜が付されていることを」とあるのを、
「金属膜と前記反射層とが隙間なく仕切られたまま露出して形成されていることを」に訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の段落【0031】中、
「反射層が、支持体上で又は基板として膜状、板状又は立体状に形成されているシリコーン樹脂製反射基材を形成するためのもので粘度を0.5~500Pa・sとする液状であり」と記載されているのを、「反射層が、膜状、板状又は立体状に支持体上に形成されることにより、シリコーン樹脂製反射基材を形成するためのものであり、反応性の官能基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物からなる接着性付与成分と失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する反応抑制剤とが混合されて分散されつつ含有され、粘度を10~500Pa・sとする液状であり」に訂正し、
「三次元架橋により硬化させ前記反射層にするためのものであり」と記載されているのを、「三次元架橋により前記支持体上で硬化させ前記反射層にするためのものであり」に訂正し、
「前記酸化チタンが、Al、Al2O3、ZnO、ZrO2、及び/又はSiO2で表面処理されている、又はシランカップリング処理で表面処理されており」と記載されているのを、「前記酸化チタンが、Al、Al2O3、ZnO、ZrO2、及び/又はSiO2で表面処理されており」に訂正し、
「前記反射層の反射率を波長350~1000nmのいずれかの波長で少なくとも90%とする前記シリコーン樹脂製反射基材を形成するために用いられる」と記載されているのを、「150℃で1000時間の加熱前後において前記反射層の反射率を波長350~1000nmのいずれかの波長で少なくとも90%とする前記シリコーン樹脂製反射基材の前記反射層を形成するために用いられる」に訂正する。
(7)訂正事項7
明細書の段落【0032】中、
「反応性の官能基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物からなる接着性付与成分と失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する反応抑制剤との少なくとも何れかが」と記載されているのを、「加熱によって失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する前記反応抑制剤が」に訂正する。
(8)訂正事項8
明細書の段落【0039】中、
「Al、Al2O3、ZnO、ZrO2、及び/又はSiO2で表面処理されている、又はシランカップリング処理で表面処理された酸化チタンを含む白色無機フィラー粉末を混合させて分散させ含有させて、粘度を0.5~500Pa・sとする液状であり」と記載されているのを、「Al、Al2O3、ZnO、ZrO2、及び/又はSiO2で表面処理されている酸化チタンを含む白色無機フィラー粉末と反応性の官能基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物からなる接着性付与成分と失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する反応抑制剤とを混合させて分散させ含有させて、粘度を10~500Pa・sとする液状であり」に訂正し、
「支持体上で又は基板として1~10μm」と記載されているのを、「支持体上で1~10μm」に訂正し、
「前記反射層の反射率を波長350~1000nmのいずれかの波長で少なくとも90%とする」と記載されているのを、「150℃で1000時間の加熱前後において前記反射層の反射率を波長350~1000nmのいずれかの波長で少なくとも90%とする」に訂正する。
(9)訂正事項9
明細書の段落【0041】中、
「反応性の官能基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物からなる接着性付与成分と失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する反応抑制剤との少なくとも何れかを」と記載されているのを、「加熱によって失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する前記反応抑制剤を」に訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の段落【0041】中、
「金属膜と前記反射層とが隙間なく仕切られたまま露出して形成されており、又は前記反射層である前記基板上に、金属膜が付されている」とあるのを、
「金属膜と前記反射層とが隙間なく仕切られたまま露出して形成されている」に訂正する。
2 各訂正事項についての訂正要件の適合性の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明では、「支持体上で又は基板として」「シリコーン樹脂製反射基材を形成する」となっているのを、「支持体上に形成されることにより、シリコーン樹脂製反射基材を形成する」とし、「基板」の文言を削除して限定するとともに、反射層が、「支持体上に形成される」こと、及び「三次元架橋により支持体上で硬化させ」ることとを明確にし、訂正前の請求項1に係る発明について、「反応性の官能基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物からなる接着性付与成分と失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する反応抑制剤とが混合されて分散されつつ含有され、」と構成を追加して、「原材料組成物」を限定し、また、訂正前の請求項1に係る発明について、「液状のもの」の「粘度」の数値範囲「0.5~500Pa・s」を、「10~500Pa・s」と限定し、訂正前の請求項1に係る発明では、「Al、Al2O3、ZnO、ZrO2、及び/又はSiO2で表面処理されている、又はシランカップリング処理で表面処理されており」としており表面処理がAl等の無機物での表面処理とシランカップリング処理との択一となっているのを、「Al、Al2O3、ZnO、ZrO2、及び/又はSiO2で表面処理され」たものに限定し、更に、訂正前の請求項1に係る発明について、「前記反射層の反射率を波長350~1000nmのいずれかの波長で少なくとも90%とする」ための条件が特定されていないものを、「150℃で1000時間の加熱前後」における反射率に限定し、更に、「原材料組成物」が「前記シリコーン樹脂製反射基材を形成するために用いられる」のを、「前記シリコーン樹脂製反射基材の前記反射層を形成するために用いられる」と限定する訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、特許法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、願書に添付した明細書中の段落【0014】、【0021】、【0032】、【0039】、【0099】、【0127】、【0174】、及び図12に基づいて導き出される構成である。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許異議の申立てにおいては、訂正前の全ての請求項1~32について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
オ 訂正事項1についてのまとめ
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、同法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。
また、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、訂正事項1は、訂正要件を満たしている。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、訂正後の請求項1に接着性付与成分及び反応抑制剤とが含有されることを直列的に付加したことに伴い、「接着性付与成分」を削除し、請求項1に記載されたものであることを明示するため「前記」の文言を追記した「反応抑制剤」を「加熱によって失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する」というものに一層限定することによって、特許請求の範囲を減縮する訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、特許法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、願書に添付した明細書中の段落【0059】、【0105】に基づいて導き出される構成である。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許異議の申立てにおいては、訂正前の全ての請求項1~32について特許異議の申立てがされているので、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
オ 訂正事項2についてのまとめ
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、同法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。
また、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、訂正事項2は、訂正要件を満たしている。
(3)訂正事項3、4について
訂正事項3は訂正事項1と同様に訂正するものであり、訂正事項4は訂正事項2と同様に訂正するものである。
したがって、訂正事項3、4は、訂正要件を満たしている。
(4)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項5は、訂正前の請求項27に係る発明では、「支持体上」と「基板上」とを択一的に記載しているのを、訂正後の請求項27に係る発明では、「支持体上」に関わるものに限定する訂正である。
したがって、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、特許法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、願書に添付した明細書中の段落【0025】、【0041】に基づいて導き出される構成である。
したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許異議の申立てにおいては、訂正前の全ての請求項1~32について特許異議の申立てがされているので、訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
オ 訂正事項5についてのまとめ
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、同法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。
また、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、訂正事項5は、訂正要件を満たしている。
(5)訂正事項6~10について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項6~10は、上記訂正事項1~5に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
よって、訂正事項6~10は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当し、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、特許法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項6~10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6~10は、訂正事項1、2及び5に関し前記(1)、(2)及び(4)で述べたのと同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ 願書に添付した明細書の訂正に係る請求項についての説明
訂正事項6~10は、それぞれ訂正事項1~5に対応する課題を解決するための手段として、段落【0031】、【0032】、【0039】、【0041】、【0041】について訂正するものであるから、これらの訂正事項6~10による明細書の訂正に係る請求項は、それぞれ請求項1、2、12、16、27である。
したがって、これらを含む一群の請求項、すなわち請求項1~32が訂正事項6~10の対象となる。
よって、訂正事項6~10は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合する。
オ 訂正事項6~10についてのまとめ
よって、訂正事項6~10は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、同法第120条の5第2項に規定する要件を満たしている。
また、訂正事項6~10は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項、並びに特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
よって、訂正事項6~10は、訂正要件を満たしている。
(6)一群の請求項について
訂正事項1~5に係る訂正前の請求項1~32は、当該訂正事項1を含む請求項1の記載を、請求項2~32が夫々直接的又は間接的に引用しているものであるから、訂正前の請求項1~32は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
よって、訂正事項1~5に係る訂正の請求は、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
(7)訂正要件の適合性の判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求書による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当するから、同法第120条の5第2項に規定する要件を満たしており、かつ、同条第4項の規定、及び、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-32〕について訂正を認める。
第3 訂正後の請求項1~32に係る発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-32〕について訂正を認めるから、平成30年12月14日に提出された本件訂正請求書による訂正後の本件特許の請求項1~32に係る発明(以下、当該訂正後の本件特許の請求項1~32に係る発明のそれぞれを、以下順に「本件発明1」~「本件発明32」という。)は、以下のとおりのものである(下線部は、訂正箇所を示す。)。
「【請求項1】
RSiO3/2単位(オルガノ基Rは、同一又は異なり、アルキル基、フェニル基、又は架橋性官能基に由来する基である)からなるモノオルガノシロキシ単位及び/又はSiO2単位からなるシロキシ単位を含む三次元架橋したシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料と、前記シリコーン樹脂よりも高屈折率で表面処理された酸化チタンを含む白色無機フィラー粉末とが混合されて分散されつつ含有され液状又はグリース状で粘性又は塑性のものであり、前記シリコーン樹脂に前記白色無機フィラー粉末が分散されつつ含有された反射層が、膜状、板状又は立体状に支持体上に形成されることにより、シリコーン樹脂製反射基材を形成するためのものであり、反応性の官能基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物からなる接着性付与成分と失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する反応抑制剤とが混合されて分散されつつ含有され、粘度を10~500Pa・sとする液状であり若しくは国際規格ISO 7323に基づく可塑度を100~500mm/100とするミラブルタイプ又は可塑物である原材料組成物であって、
前記原材料組成物を塗工、金型成形、スタンプ成形、熱プレス成形、コンプレッション成形、射出成形、トランスファー成形、押し出し成形及び/又はカレンダー成形によって1~10μmの薄膜から2000μmの厚膜乃至板、又は立体形状に三次元架橋により前記支持体上で硬化させ前記反射層にするためのものであり、
前記三次元架橋したシリコーン樹脂が、前記モノオルガノシロキシ単位であるT単位、前記シロキシ単位であるQ単位、R3SiO1/2単位(Rは前記と同じ)からなるトリオルガノシロキシ単位であるM単位、及び/又はR2SiO単位(Rは前記と同じ)からなるジオルガノシロキシ単位であるD単位を組み合わせて含み、それらの単位を有しているMQ樹脂、MDQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、TD樹脂、TQ樹脂、及びTDQ樹脂から選ばれる少なくとも何れかのシリコーン樹脂であって、前記酸化チタンが、Al、Al2O3、ZnO、ZrO2、及び/又はSiO2で表面処理されており、
150℃で1000時間の加熱前後において前記反射層の反射率を波長350~1000nmのいずれかの波長で少なくとも90%とする前記シリコーン樹脂製反射基材の前記反射層を形成するために用いられることを特徴とする原材料組成物。」
【請求項2】
加熱によって失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する前記反応抑制剤が、混合されて分散されつつ含有されていることを特徴とする請求項1に記載の原材料組成物。
【請求項3】
前記重合性シリコーン樹脂原材料を三次元架橋させる架橋剤が、混合されて分散されつつ含有されていることを特徴とする請求項1に記載の原材料組成物。
【請求項4】
粘度調整のための有機溶剤及び/又は反応性希釈剤が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の原材料組成物。
【請求項5】
シランカップリング剤である機能性シラン化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の原材料組成物。
【請求項6】
前記三次元架橋したシリコーン樹脂は、繰返単位のSi原子が酸素原子又は架橋性官能基を介して次なる繰返単位のSi原子に結合して三次元架橋していることを特徴とする請求項1に記載の原材料組成物。
【請求項7】
前記重合性シリコーン樹脂原材料には、それが三次元架橋したシリコーン樹脂中でシロキシ基繰返単位を4~10とする低分子量ポリシロキサンを最大でも300ppmとなるように、前記低分子量ポリシロキサンを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の原材料組成物。
【請求項8】
前記白色無機フィラー粉末が、アルミナ、硫酸バリウム、マグネシア、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素、チタン酸バリウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、シリカ、マイカ粉、粉末ガラス、粉末ニッケル及び粉末アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の光反射剤を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の原材料組成物。
【請求項9】
前記重合性シリコーン樹脂原材料が、付加反応で硬化し、有機過酸化物で硬化し、又は縮合で硬化して、三次元架橋するものであることを特徴とする請求項1に記載の原材料組成物。
【請求項10】
前記重合性シリコーン樹脂原材料が、重金属系触媒を含み、三次元架橋するものであることを特徴とする請求項9に記載の原材料組成物。
【請求項11】
前記重合性シリコーン樹脂原材料が、非環状のジメチルシロキシ繰返単位を主成分として含んでいて、三次元架橋するものであることを特徴とする請求項1に記載の原材料組成物。
【請求項12】
RSiO3/2単位(オルガノ基Rは、同一又は異なり、アルキル基、フェニル基、又は架橋性官能基に由来する基である)からなるモノオルガノシロキシ単位及び/又はSiO2単位からなるシロキシ単位を含む三次元架橋しており前記モノオルガノシロキシ単位であるT単位、前記シロキシ単位であるQ単位、R3SiO1/2単位(Rは前記と同じ)からなるトリオルガノシロキシ単位であるM単位、及び/又はR2SiO単位(Rは前記と同じ)からなるジオルガノシロキシ単位であるD単位を組み合わせて含み、それらの単位を有しているMQ樹脂、MDQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、TD樹脂、TQ樹脂、及びTDQ樹脂から選ばれる少なくとも何れかのシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料に、前記シリコーン樹脂よりも高屈折率であってAl、Al2O3、ZnO、ZrO2、及び/又はSiO2で表面処理されている酸化チタンを含む白色無機フィラー粉末と反応性の官能基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物からなる接着性付与成分と失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する反応抑制剤とを混合させて分散させ含有させて、粘度を10~500Pa・sとする液状であり若しくは国際規格ISO 7323に基づく可塑度を100~500mm/100とするミラブルタイプ又は可塑物である液状又はグリース状で粘性又は塑性である請求項1~11の何れかに記載された原材料組成物とした後、
前記原材料組成物を塗工、金型成形、スタンプ成形、熱プレス成形、コンプレッション成形、射出成形、トランスファー成形、押し出し成形及び/又はカレンダー成形してから三次元架橋させて前記シリコーン樹脂へ重合させることにより、反射層を支持体上で1~10μmの薄膜から2000μmの厚膜乃至板、又は立体形状に形成し、150℃で1000時間の加熱前後において前記反射層の反射率を波長350~1000nmのいずれかの波長で少なくとも90%とすることを特徴とするシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項13】
前記重合が、加熱、加湿、加圧及び紫外線照射の少なくとも何れかにより、なされることを特徴とする請求項12に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項14】
前記反射層が、スクリーン印刷、バーコーター、ロールコーター、リバースコーター、グラビアコーター、エアナイフコーター、スプレーコーター、又はカーテンコーターで形成されることを特徴とする請求項12に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項15】
前記シリコーン樹脂が、非環状のジメチルシロキシ繰返単位を主成分として含んでいることを特徴とする請求項12に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項16】
前記原材料組成物が、加熱によって失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する前記反応抑制剤を、混合され分散されつつ含有していることを特徴とする請求項12に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項17】
前記シリコーン樹脂中に含まれる、シロキシ基繰返単位を4~10とする低分子量ポリシロキサンが、最大でも300ppmであることを特徴とする請求項12に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項18】
前記支持体と前記反射層とが接触しており、その両者又は一方の接着体となる面にシランカップリング剤である機能性シラン化合物が用いられることを特徴とする請求項12に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項19】
前記三次元架橋したシリコーン樹脂が、付加反応で硬化し、有機過酸化物で硬化し、又は縮合で硬化したものであることを特徴とする請求項12に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項20】
前記三次元架橋したシリコーン樹脂が、重金属系触媒を含むことを特徴とする請求項19に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項21】
前記反射層が、10~200μmの厚さの膜に形成されていることを特徴とする請求項12に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項22】
前記シリコーン樹脂が、屈折率を1.35以上、1.65未満とすることを特徴とする請求項12に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項23】
前記白色無機フィラー粉末が、アルミナ、硫酸バリウム、マグネシア、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素、チタン酸バリウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、シリカ、マイカ粉、粉末ガラス、粉末ニッケル及び粉末アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の光反射剤を含むものであることを特徴とする請求項12に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項24】
前記原材料組成物が、前記シリコーン樹脂へと三次元架橋させる架橋剤を、三次元架橋した前記シリコーン樹脂へと重合する重合性シリコーン樹脂原材料に、混合させて分散させつつ含有させたものであることを特徴とする請求項12に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項25】
前記反射層に、前記白色無機フィラー粉末と蛍光体とが分散されつつ含有されていることを特徴とする請求項12に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項26】
前記シリコーン樹脂の少なくとも一部の表面の研磨、粗面化、ざらついた金型による金型成形若しくはスタンプ成形、及び/又はケミカルエッチングによって、前記白色無機フィラー粉末の一部が、前記表面から露出していることを特徴とする請求項12に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項27】
前記支持体上に、
金属膜が付されその上に前記反射層が形成され、
前記反射層が付されその上に金属膜が形成され、若しくは
金属膜と前記反射層とが隙間なく仕切られたまま露出して形成されていることを特徴とする請求項12に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項28】
前記金属膜と前記反射層との間にガスバリア層が付されていることを特徴とする請求項27に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項29】
前記金属膜が、めっき被膜、金属蒸着被膜、金属溶射膜、又は接着された金属箔膜であることを特徴とする請求項28に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項30】
前記シリコーン樹脂製反射基材が、発光素子、発光装置及び光電変換素子の何れかの背面、外周及び/又は導光材反射面に、配置されていることを特徴とする請求項12に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項31】
前記シリコーン樹脂原材料組成物が、白金族金属系触媒を含みつつ、前記シリコーン樹脂原材料として、分子中に単一又は複数のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンであるベースポリマーと、分子中に単一又は複数のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを含むことを特徴とする請求項12に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。
【請求項32】
前記三次元架橋したシリコーン樹脂は、繰返単位のSi原子が酸素原子又は架橋性官能基を介して次なる繰返単位のSi原子に結合して三次元架橋していることを特徴とする請求項12に記載のシリコーン樹脂製反射基材の製造方法。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1~32に係る特許に対して、当審が平成30年11月9日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
<理由1>
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
<理由2>
本件特許の請求項1~3、5、6、8~16、19~24、27、29~32に係る発明は、本件特許の原出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
<理由3>
本件特許の請求項1~6、8~16、18~32に係る発明は、本件特許の原出願の優先日前に日本国内または外国において頒布された甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項7、17に係る発明は、本件特許の原出願の優先日前に日本国内または外国において頒布された甲第1号証及び甲第3号証又は甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
記
甲第1号証:特開2001-207059号公報
甲第2号証:特開2009-164275号公報
甲第3号証:エレクトロニクス用シリコーン、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、2003年6月発行
2 甲号証の記載
(1)甲第1号証について
ア 甲第1号証の記載事項
取消理由通知において引用した甲第1号証(特開2001-207059号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサン、
(B)ケイ素原子に結合する水素原子を一分子中に少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)白金族金属系触媒、及び
(D)テトラアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物で表面処理した酸化チタン粉末;成分(A)100重量部に対して15重量部以上を含有してなる酸化チタン充填付加反応硬化型シリコーンゴム組成物。」
(イ)「【0002】
【従来の技術】従来より酸化チタンは、着色剤としてシリコーン組成物に添加されてきたが、新しい用途として、例えば薄膜での遮光剤や、逆に反射剤としての要求がある。具体的には、フォトカプラー素子の並列型タイプの反射剤や、LEDの下地反射コーティング等が挙げられる。これらの要求ニーズに合わせるためには、酸化チタンを多量に添加する必要がある。しかし、従来のようにシリコーンゴム組成物に酸化チタンを多量に添加すると、粘度やチキソ性が高くなり、このため組成物の取扱いが困難で、かつ十分な作業性が得られなかった。」
(ウ)「【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
(A)アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサン:成分(A)のアルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に結合するアルケニル基を一分子中に少なくとも2個含有するもので、本発明組成物のベースポリマーとして使用される。このアルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンは、一般的には主鎖部分が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のものであるが、これは分子構造の一部に分岐状の構造を含んでいてもよく、また全体が環状体であってもよい。中でも、硬化物の機械的強度等の物性の点から直鎖状のジオルガノポリシロキサンが好ましい。該アルケニル基は、分子鎖の両末端のみに存在していても、側鎖置換基として分子鎖の途中のみに存在していても、或いは分子鎖の両末端及び分子鎖の途中に存在していてもよい。このようなアルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンの代表例としては、例えば、下記一般式(1):
【0006】
【化1】
(式中、R1は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、Xはアルケニル基であり、Yはアルケニル基又はR1であり、nは0又は1以上の整数であり、mは0又は1以上の整数であり、かつ分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する。)で表されるジオルガノポリシロキサンが挙げられる。」
(エ)「【0010】(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン:成分(B)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ケイ素原子に結合する水素原子(即ち、SiH基)を一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上含有するもので、架橋剤として使用される。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、分岐状、環状、或いは三次元網状構造の樹脂状物のいずれでもよい。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンの代表例としては、例えば、下記平均組成式(2):
HaR2bSiO(4-a-b)/2 (2)
(式中、R2は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、a及びbは、0<a<2、0.7≦b≦2 かつ 0.8≦a+b≦3、好ましくは0.001≦a≦1.2、0.8≦b≦2 かつ 1≦a+b≦2.7、より好ましくは0.01≦a≦1、1.2≦b≦2 かつ 1.8≦a+b≦2.4を満足する数である。)で表わされるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。」
(オ)「【0011】平均組成式(2)において、R2の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基としては、前記一般式(1)のR1として例示したものと同じものが挙げられる。代表的なR2は炭素原子数が1~10、特に炭素原子数が1~7のものであり、好ましくはメチル基等の炭素原子数1~3の低級アルキル基;フェニル基;及び3,3,3-トリフルオロプロピル基である。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンの例としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8-ペンタメチルぺンタシクロシロキサン等のシロキサンオリゴマー;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等;R2(H)SiO1/2単位とSiO4/2単位からなり、任意にR3SiO1/2単位、R2SiO2/2単位、R(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2単位又はRSiO3/2単位を含み得るシリコーンレジン(但し、式中、Rは前記のR1として例示した非置換又は置換の1価炭化水素基と同様のものである。)等が挙げられる。」
(カ)「【0019】
(D)テトラアルコキシシラン及び/又はテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物で表面処理した酸化チタン:成分(D)の表面処理した酸化チタン粉末は、テトラアルコキシシラン及びテトラアルコキシシラン部分加水分解縮合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物で酸化チタン微粉末を表面処理したもので、硬化物に主として着色(白色)、遮光性、反射性、耐熱性、機械的特性等を付与又は補強する成分である。」
(キ)「【0028】前記のテトラアルコキシシラン及び/又はテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物の使用量は、酸化チタン粉末の比表面積やその他の性状に合わせて適宜調節できるが、通常、酸化チタン粉末100重量部当たり、0.1~20重量部、好ましくは0.5~10重量部程度でよい。このような表面処理により、酸化チタン粉末の表面にシロキサンの被膜が形成され、シリコーン樹脂成分とのヌレ性(即ち、親和性)が向上し、低粘度、低チキソ性で流動性に富む組成物が得られる。」
(ク)「【0030】その他の成分:本発明の組成物には、前記成分(A)~(D)以外に、必要に応じて、通常使用されている添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えばヒュームドシリカ、沈降シリカ、ヒュームド二酸化チタン等の補強性無機フィラー;破砕シリカ、溶融シリカ、結晶性シリカ(石英粉)、けい酸カルシウム、酸化第二鉄、カーボンブラック等の非補強性無機フィラー等が挙げられる。これらの無機フィラーの添加量は、(A)~(D)成分の合計量100重量部当たり、通常0~200重量部である。また、後述するように、特に組成物を2液型で使用する場合は、アセチレンアルコールや、アセチレンアルコールのシラン変性誘導体やシロキサン変性誘導体等の硬化抑制剤を添加することができる。更に、組成物の接着性を向上する目的で、前記成分以外にエポキシ基含有ポリシロキサン化合物やエステルシロキサン化合物を添加することができる。」
(ケ)「【0031】シリコーンゴム組成物及びその硬化物の製造法、用途:本発明の組成物は、基本的には、前記成分(A)~(D)及び必要に応じて添加剤成分を混合又は混練することにより製造される。この場合、通常の付加硬化型シリコーンゴム組成物と同様に、例えば、成分(A)の一部、成分(C)及び成分(D)と、成分(A)の残部及び成分(B)というように、前記の成分(A)~(D)を2液に分け、使用時にこれら2液を混合して硬化させる所謂2液型の組成物としてもよい。他の2液型の組成物としては、酸化チタン粉末を表面処理する際に、成分(A)の少なくとも一部と、酸化チタン粉末と、テトラアルコキシシラン及び/又はテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物とを混合又は混練し、該混合物又は混練物を加熱処理したものを予め調製し、これを1液とし、他の成分を混合又は混練して別の1液としたものが挙げられる。また、成分(A)~(D)を少量の硬化抑制剤と共に混合又は混練して所謂1液型の組成物としてもよい。」
(コ)「【0032】本発明の硬化物は、このようなシリコーンゴム組成物を硬化して得られる。硬化条件としては、公知の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物と同様でよく、例えば室温でも十分硬化するが、必要に応じ加熱してもよい。こうして得られる本発明の硬化物は、高い遮光性と反射特性を有しかつ低粘度、低チキソ性であるということから、電気・電子部品の遮光用又は反射用のコーティング剤、ポッティング剤等に利用できる。」
(サ)「【0033】
【実施例】実施例1
下記式:
【0034】
【化5】
(式中、nはこのシロキサンの25℃における粘度が1、000cP(センチポイズ)となるような数である。)
【0035】で表されるビニル基含有直鎖状ジメチルポリシロキサン100重量部、平均粒径0.15μmの酸化チタン粉末(純度98%、石原産業社製)120重量部及びテトラエトキシシラン3重量部を3本ロールで混練した後、プラネタリーミキサーを使用して、この混練物を更に160℃で3時間混練した。次に、この混練物にメチルハイドロジェンポリシロキサン〔ケイ素原子に結合する水素原子(SiH基)の含有量:0.7モル/100g〕8重量部((A)成分中のビニル基に対する(B)成分中のSiH基のモル比:4.5)及び塩化白金酸のオクチルアルコール変性物溶液(白金含有量:2重量%)0.02重量部を加えて撹拌し、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物を得た。この組成物の粘度(25℃での粘度、以下同様)をB型回転粘度計を用いて測定したところ、64P(ポイズ)であった。」
(シ)「【0036】得られた組成物について、下記方法に従って流動性(フロー値)、硬化物のゴム物性及び他の特性、薄膜の光透過性を測定した。結果を表1に示す。
<流動性(フロー値)>上記組成物1gをガラス板上に正確に計量し、該ガラス板ごと水平台上に室温で30分間放置し、次いで150℃で30分間加熱硬化させた後、組成物の直径をノギスで測定した。
<硬化物のゴム物性>上記組成物を150mm×100mm×2mmの金型に流し込み、これを真空脱泡した後、150℃で4時間加熱してシート状の硬化物を得た。この硬化物について、JIS K 6249に準じてゴム物性(硬さ、引張り強さ、伸び)を測定した。なお、硬さはスプリング式硬さ試験機デュローメータータイプAを使用して測定した。
<硬化物の電気特性>上記組成物を150mm×100mm×1mmの金型に流し込み、これを真空脱泡した後、150℃で4時間加熱し、シート状の硬化物を得た。この硬化物について、JIS K 6249に準じて体積抵抗率を測定した。
<硬化物の耐熱性>前記ゴム物性の測定に使用したものと同様のシート状の硬化物を250℃で24時間加熱した後の硬さ、及び同温度で48時間加熱した後の硬さをJIS K 6249に準じて測定した(スプリング式硬さ試験機デュローメータータイプAを使用)。」
(ス)「【0037】<硬化物の接着性>上記組成物を、電気・電子部品に用いられる、150mm×100mm×1mmのニッケル、アルミニウム、シリコンの各基板上に流延し、これを真空脱泡した後、150℃で4時間加熱し、シート状の硬化物を得た。得られた硬化物について、これをミクロスパチラを用いて基板から剥ぎ取る際に、凝集破壊(硬化物の断面で破壊したもの)の部分と界面剥離(硬化物と基板との接着界面で破壊したもの)の部分との割合(面積比)を観察し、下記基準で接着性を評価した。
○:凝集破壊率が80%を越えるもので、良好に接着する。
△:凝集破壊率が20~80%のもので、接着する。
×:凝集破壊率が20%未満のもので、殆ど接着しない(容易に剥離する)。
<薄膜の遮光性(光透過率)>離型剤をコーティングしたガラス板上に各厚さのスペーサーを置き、上記組成物をポッティング、真空脱泡した後、150℃で4時間硬化して得られた厚さ50μm、100μm又は200μmの薄膜について、分光光度計により800nmでの光透過率を測定(リファレンスは空気)した。」
(セ)「【0047】
【表1】
」
イ 甲第1号証に記載された発明
(ア)上記ア(エ)段落【0010】、(オ)段落【0011】において、成分(B)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、三次元網状構造の樹脂状物、及びR2(H)SiO1/2単位とSiO4/2単位からなり、RSiO3/2単位を含み得るシリコーンレジンが開示されているところ、SiO4/2単位、RSiO3/2単位は、それぞれ、SiO2単位からなるシロキシ単位、RSiO3/2単位(オルガノ基Rは、同一又は異なり、アルキル基、フェニル基、又は架橋性官能基に由来する基である)からなるモノオルガノシロキシ単位であることは明らかである。
したがって、甲第1号証には、「SiO2単位からなるシロキシ単位を含み、RSiO3/2単位(オルガノ基Rは、同一又は異なり、アルキル基、フェニル基、又は架橋性官能基に由来する基である)からなるモノオルガノシロキシ単位を含み得る三次元架橋したシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料」が開示されている。
(イ)上記ア(ス)段落【0037】の記載から、甲第1号証には、「上記組成物」は、「電気・電子部品に用いられる、ニッケル、アルミニウム、シリコンの各基板上に流延し、これを真空脱泡した後、加熱し、シート状の硬化物を得るためのもの」であることが開示されている。
(ウ)以上から、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「SiO2単位からなるシロキシ単位を含み、RSiO3/2単位(オルガノ基Rは、同一又は異なり、アルキル基、フェニル基、又は架橋性官能基に由来する基である)からなるモノオルガノシロキシ単位を含み得る三次元架橋したシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料と、
テトラアルコキシシラン及び/又はテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物で表面処理され、表面処理により、酸化チタン粉末の表面にシロキサンの被膜が形成された酸化チタン粉末、
及び添加剤成分を混合又は混練することにより製造される組成物であって、
テトラアルコキシシラン及び/又はテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物で表面処理した酸化チタン粉末は、硬化物に主として着色(白色)、遮光性、反射性、耐熱性、機械的特性等を付与又は補強する成分であり、
添加剤として、アセチレンアルコール等の硬化抑制剤を添加することができ、更に、組成物の接着性を向上する目的で、前記成分以外にエポキシ基含有ポリシロキサン化合物やエステルシロキサン化合物を添加することができ、
低粘度、低チキソ性であるということから、電気・電子部品の遮光用又は反射用のコーティング剤、ポッティング剤等に利用でき、
電気・電子部品に用いられる、ニッケル、アルミニウム、シリコンの各基板上に流延し、これを真空脱泡した後、加熱し、シート状の硬化物を得るためのものである、シリコーンゴム組成物。」
(2)甲第2号証について
ア 甲第2号証の記載事項
取消理由通知において引用した甲第2号証(特開2009-164275号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は合議体が付加した。以下同じ。)
(ア)「【請求項1】
三次元架橋しているシリコーン樹脂からなるバインダーと、アルミナ粉末、マグネシア粉末、チッ化アルミニウム粉末、チッ化ホウ素粉末、チッ化ケイ素粉末、グラファイト粉末、カーボン粉末、シリカ粉末、炭化ケイ素粉末、炭化ホウ素粉末、炭化チタン粉末、ムライト粉末、ダイヤモンド粉末、銅粉末、アルミニウム粉末、銀粉末、鉄粉末、レジンパウダー、チタン酸バリウム粉末、酸化チタン粉末、シルク、カオリン粉末、酸化鉄粉末、酸化亜鉛粉末、シリカアルミナ粉末、タルク粉末、ガラスファイバー、カーボンファイバ、及び/又は着色剤であるフィラーとが含有されて、成形されていることを特徴とするシリコーン樹脂基材。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂が、シランカップリング剤と、それに架橋反応するシロキサン化合物とにより、前記三次元架橋していることを特徴とする請求項1に記載のシリコーン樹脂基材。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子や電気素子の基板やパッケージに用いられるもので、通電や発光のロスを生じず、強度が強く、自在に成形できるシリコーン樹脂基材に関するものである。」
(ウ)「【背景技術】
【0002】
照明器具、信号機など様々な発光機器に、発光ダイオード(LED)が用いられている。このような発光ダイオード、特に高輝度発光ダイオードは、白熱電球、ハロゲンランプ、水銀灯、蛍光灯などの白色系単色照明装置よりも、明るく消費電力が少ない。
【0003】
従来、発光ダイオードは、セラミックス製基板や、熱可塑性樹脂であるエポキシ樹脂製基板又はポリエーテルエーテルケトン製基板に載置され、背面側の基板と反対側で、レンズにより封止され、発光機器内に組み込まれていた。…(略)…
【0004】
セラミックス製基板は、セラミックスの焼成時の大きな収縮の所為で精密構造にすることができなかったり、発光した光の一部が基板へ向いて出射されセラミックス孔から遺漏したり、表面をメッキしてもメッキ金属がその孔からマイグレーションしたりする。エポキシ樹脂製やポリエーテルエーテルケトン製の基板は、成形時に鉛フリーリフローに耐え得るが、その際に極僅かに収縮した凹み、所謂、ひけを生じたり、転写性が悪いため精密かつ正確な基板を成形できなかったり、発光した高輝度の光の一部の曝露やその光源の熱の曝露により基板を黄変させて劣化させたり、基板での反射効率を低下させたりする。またポリシロキサン組成物から形成した透明シリコーン樹脂製基板は、強度が不十分である所為で、応力や歪がかかると容易く割れてしまう。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、発光ダイオードを始めとする光学素子や電気素子の基板やパッケージに用いることができ、鉛フリーリフローに耐え、ひけを生じることなく精密な成形ができ、光や熱で黄変したり劣化したりせず、メッキなどの表面加工を施すことができ、硬くて丈夫なシリコーン樹脂基材を提供することを目的とする。
…(略)…
【発明の効果】
【0015】
本発明のシリコーン樹脂基材は、高い機械的強度を有し、強光で劣化せず、硬くて耐久性に優れたものである。それの製造の際、260℃以上に加熱される鉛フリーリフローに耐え、ひけを生じることなく精密かつ正確に成形でき、生産効率が良いため、安価に大量生産できる。
【0016】
しかも、シリコーン樹脂基材に、金属メッキや金属蒸着のような表面加工処理を施すことができる。シリコーン樹脂基材は、その表面加工処理が施されても、セラミックスのようにその孔からの光漏れや表面処理した金属のマイグレーションを生じないうえ、セラミックス並みの硬度を有する。
【0017】
このシリコーン樹脂基材は、熱伝導率や誘電率や反射強度を調整することができるので、発光ダイオードを始めとする光学素子や電気素子の基板やパッケージとして組み込んでシリコーン基材含有製品とすることができる。」
(エ)「【0019】
本発明のシリコーン樹脂基材1及びそれが発光ダイオード基板として組み込まれた発光ダイオードパッケージ11であるシリコーン樹脂基材含有製品の実施の態様について、図1を参照しながら説明する。
【0020】
シリコーン樹脂基材1は、シランカップリング剤とそれに架橋反応するシロキサン化合物とにより三次元架橋しているシリコーン樹脂からなるバインダー2、及びフィラー3が含有されており、外形が長方体でその上面が中央で湾曲して窪むように鋼型で成型されたものである。その窪み8の表面に、反射膜層4が形成されている。」
(オ)「【0025】
先ず、シランカップリング剤とシロキサン化合物とフィラーとを含むバインダー用組成物を調製し、加熱、又は光照射によりシランカップリング剤とシロキサン化合物とが架橋したバインダーとしその分子間にフィラーを含ませたシリコーン樹脂を金型内で成型し、中央で窪んだシリコーン樹脂基材である発光ダイオード基板を得る(いわゆる内添法)。その窪みの表面に金属メッキ処理を施して反射膜層を付し、窪みに発光ダイオードの導線を貫通させ、発光ダイオードと発光ダイオード基板とを接着剤で固定する。発光ダイオード基板をフィルターで覆い接着剤で固定して封止すると、発光ダイオードパッケージが得られる。
【0026】
内添法の例を示したが、フィラーにシランカップリング剤をコーティング処理してから、シロキサン化合物に加え、加熱、又は光照射によりシランカップリング剤とシロキサン化合物とを架橋させてバインダーの分子間にフィラーを内包させたシリコーン樹脂を金型内で成型させるいわゆる乾式法で、発光ダイオード基板を得てもよい。」
(カ)「【0029】
ポリ(ジアルキルシロキサン)やポリ(ジフェニルシロキサン)は直鎖状に高分子量化したものであるから平面被膜を形成するだけであるが、この三次元架橋し得るポリシロキサン化合物はその途中のSi基が、アルキルオキシシリル基やジアルキルオキシシリル基、ビニルシリル基やジビニルシリル基、ヒドロシリル基やジヒドロシリル基であったり、それらの基が複数存在したりすることにより、網目状に三次元的に架橋するというものである。シロキサン化合物同士や、シロキサン化合物とシランカップリング剤とは、夫々のアルキルオキシシリル基又はジアルキルオキシシリル基同士が脱アルコール化反応により縮合して架橋したり、ビニルシリル基やジビニルシリル基とヒドロシリル基やジヒドロシリル基とが白金錯体等の白金触媒存在下で、無溶媒中、加熱や光照射によって付加して架橋したりする。シロキサン化合物はその中でも、付加して架橋するポリシロキサン化合物が好ましい。ジフェニルシロキシ基(-Si(C6H5)2-O-)やジメチルシロキシ基(-Si(CH3)2-O-)のような繰り返し単位を有するシロキサン化合物であってもよいが、ジフェニルシロキシ基が多くなるほど、架橋して得られるシリコーン樹脂は、その強度が増加する反面、強い光の曝露により黄変し易くなり、反射性が低下したりくすんだりする。シロキサン化合物は、ジメチルシロキシ基の繰り返し単位を有し、アルキルオキシシリル基、ジアルキルオキシシリル基、ビニルシリル基、ジビニルシリル基、ヒドロシリル基、ジヒドロシリル基を有しているポリシロキサン化合物であると、一層好ましい。」
(キ)「【0031】
より具体的には、ヒドロシリル含有シリル基を有するシロキサン化合物の例として、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)3、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)3
…(略)…
(CH3)3SiOSi(OC2H5)2O[SiH(CH3)O]p9[Si(CH3)2O]q1Si(CH3)3、
…(略)…
(CH3)3SiOSi(OC2H5)2O[SiH(C2H5)O]p12Si(CH3)3
…(略)…
【0032】
ビニルシリル含有シリル基を有するシロキサン化合物として、
(C2H5O)3SiCH2CH=CH2、
…(略)…
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[SiOC2H5(CH=CH2)O]t2Si(OC2H5)3、
…(略)…
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[Si(OC2H5)2O]u4Si(OC2H5)2CH=CH2、
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[Si(OC2H5)2O]u5Si(OC2H5)2CH=CH2
…(略)…」
(ク)「【0035】
シリコーン樹脂は、付加反応性で、無溶媒下で加熱硬化するものであり、型を用いて、コンプレッション成形、射出成形、トランスファー成形、液状シリコーンゴム射出成形(LIMS)、押し出し成形、カレンダー成形のような方法で成形される。
【0036】
シランカップリング剤は、反応性官能基として、アルキルオキシ基やビニル基やアミノ基やエポキシ基を有するものが挙げられる。カップリング剤としては、シランカップリング剤の他に、チタネートやアルミネートのカップリング剤でもよい。…(略)…」
(ケ)「【0039】
シランカップリング剤には、フィラーに付着するタイプと、フィラーに結合するタイプとがある。このようなシランカップリング剤は、分子量が小さいほど、フィラーと相互作用し難く、フィラーに付着しても、シリコーン樹脂のバインダー自体を膨張させない。
【0040】
シロキサン化合物にシランカップリング剤が含まれていると、それが含まれていない場合よりも、フィラーを網目構造の中に確りと取り込むため、シリコーン樹脂の強度が顕著に強くなる。
【0041】
シロキサン化合物とシランカップリング剤とにより三次元架橋したシリコーン樹脂は、シランカップリング剤の分子量が小さいほど、アルミナのようなフィラーと相互作用し難くまたフィラーに付着してもシリコーン樹脂のバインダー自体を膨張させない。その結果、シリコーン樹脂基材の線膨張係数が小さいものとなる。シランカップリング剤は、フィラーが顔料であると、シリコーン樹脂基材の線膨張係数がなお一層小さいものとなる。
【0042】
特に、シランカップリング剤処理してフィラーと、バインダーであるシリコーン樹脂とが架橋しているシリコーン樹脂基材は、フィラーがシランカップリング剤を介してシリコーン樹脂と架橋しているため、曲げ強度、濡れ性・分散性が向上しており、高品質のものとなる。このようなシランカップリング処理は、例えばフィラーに対し1質量%のシランカップリング剤を添加し、ヘンシェルミキサーで撹拌して表面処理を行い、100~130℃で、30~90分間、乾燥させるというものである。」
(コ)「【0046】
シリコーン樹脂基材の誘電率を調整するのに用いられるフィラーとして、誘電率の高いフィラーであるチタン酸バリウム、酸化チタン;誘電率が低いフィラーであるシルクフィラー、カオリンフィラー、酸化鉄フィラー、酸化亜鉛、シリカアルミナ、タルク、フッ素樹脂パウダー、粉末アルミニウムが挙げられる。なかでも、酸化チタンは、屈折率が大きいため、光反射性や隠蔽性が大きく、光漏れ防止に有効である。酸化チタンは、ルチル型結晶構造であってもアナターゼ型結晶構造であってもよく、平均粒子径を10~100nmとすることが好ましい。ルチル型結晶構造は、屈折率が一層高いから、反射効率を向上させることができる。さらに酸化チタンは、酸化還元触媒作用があるので、黄変対策に有効である。
…(略)…
【0051】
反射膜層は、金属メッキや金属蒸着によって形成される被膜である。シリコーン樹脂基材を形成しているシリコーン樹脂に金属メッキ処理や金属蒸着処理を施し易い。反射膜層は、銀メッキ、ニッケルメッキ、クロムメッキ、金メッキであってもよく、アルミニウム蒸着膜であってもよい。…(略)…
【0054】
シリコーン樹脂基材は、それの表面反射効率を上げて、光漏れを防止するために、銀蒸着、アルミニウム蒸着のような金属蒸着処理;めっき処理が施されて金属被膜が形成されていてもよい。金属被膜ほどの反射効率でなくてもよい場合には、屈折率の大きな酸化チタンのような白色フィラーや、アルミニウム粉末のような金属フィラーを含有するものであってもよい。それにより、高輝度の発光ダイオード等の光や熱の所為で、黄変してしまうのを、防ぐことができる。
…(略)…
【0056】
シリコーン樹脂基材含有製品として、シリコーン樹脂基材を発光ダイオードパッケージに用いた例を示したが、反射膜層を有しないシリコーン樹脂基材を発光ダイオード基板に用いたものであってもよく、また半導体素子基板、集積回路基板、高周波基板、電気回路基板、太陽電池基板に用いたものであってもよく、それらをケースやハウジングとして用いたパッケージであってもよい。」
(サ)「【0073】
(試験5.透過率測定試験・反射率測定試験)
フィラーであるアルミナ又は酸化チタンの含有量毎の透過率と反射率との物性についての試験を行った。
【0074】
フィラーであるアルミナA-42-6(昭和電工株式会社製;商品名)、又は酸化チタンTTO-51(石原産業株式会社製;商品名)の20質量%、40質量%、60質量%をシリコーン樹脂KJR632(信越化学工業株式会社製;商品名)に夫々充填し、金型を用いたコンプレッション成形により、成形して、硬化物であるシリコーン樹脂基材を得た。夫々の透過率と反射率とを、分光光度計UV-3150(株式会社島津製作所製;商品名)により測定した。その結果を、図5に示す。
【0075】
図5から明らかな通り、フィラーがアルミナであるよりも酸化チタンである方が、シリコーン樹脂基材の透過率が低く、何れも40質量%、60質量%含まれていると、透過率が極めて低く、光の遺漏が殆ど認められない。一方、フィラーがアルミナであるよりも酸化チタンである方が、シリコーン樹脂基材での420nm以上の反射率が高い。フィラーがアルミナである方が酸化チタンであるよりも、低波長での320nm近傍の低波長での反射率が高い。」
(シ)「【0080】
(試験7.熱安定性試験)
シリコーン樹脂基材の熱安定性の物性についての試験を行った。
【0081】
試験1で作製したのと同様なシリコーン樹脂基材を作製した。それを、150℃の循環式オーブン内に、クリップで吊るし、100時間、200時間、400時間、700時間、800時間経過後に、全光線透過率を測定した。なお、対照としてエポキシ樹脂製の基材を用いた。その結果を図6に示す。図6から明らかな通り、シリコーン樹脂基材は、長期間加熱しても、黄変も透過率低下も起こっていない。一方、エポキシ樹脂製の基材は、経時的に長波長側の透過率が低下しており、品質の劣化が認められた。」
(ス)「【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のシリコーン樹脂基材は、発光ダイオード基板、半導体素子基板、集積回路基板、高周波基板、電気回路基板、太陽電池基板として、またそれらのパッケージとして用いることができる。」
イ 甲第2号証に記載された発明
(ア)甲第2号証の上記ア(オ)の段落【0025】には、シランカップリング剤とシロキサン化合物とフィラーとを含むバインダー用組成物を調製し、加熱、又は光照射によりシランカップリング剤とシロキサン化合物とが架橋したバインダーとしその分子間にフィラーを含ませたシリコーン樹脂を金型内で成型し、シリコーン樹脂基材を得ることが開示されている。
すなわち、同段落には、シランカップリング剤とシロキサン化合物とフィラーとを含むバインダー用組成物であって、調整された当該バインダー用組成物は、加熱、又は光照射によりシランカップリング剤とシロキサン化合物とが架橋したバインダーとしその分子間にフィラーを含ませたシリコーン樹脂を金型内で成型して、シリコーン樹脂基材を得るためのものであることが開示されている。
(イ)甲第2号証の上記ア(コ)の段落【0056】、(ス)の段落【0084】から、甲第2号証には、シリコーン樹脂基材は、発光ダイオード基板、半導体素子基板、集積回路基板、高周波基板、電気回路基板、太陽電池基板として、またそれらのパッケージとして用いることができることが開示されている。
(ウ)甲第2号証の上記ア(キ)の、例えば、段落【0031】に記載の(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)3、(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)3、段落【0032】に記載の(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[SiOC2H5(CH=CH2)O]t2Si(OC2H5)3、(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[Si(OC2H5)2O]u4Si(OC2H5)2CH=CH2、(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[Si(OC2H5)2O]u5Si(OC2H5)2CH=CH2は、いずれもTQ樹脂のシリコーン樹脂を形成するシロキサン化合物であり、段落【0031】に記載の(CH3)3SiOSi(OC2H5)2O[SiH(CH3)O]p9[Si(CH3)2O]q1Si(CH3)3、(CH3)3SiOSi(OC2H5)2O[SiH(C2H5)O]p12Si(CH3)3は、いずれもMDQ樹脂のシリコーン樹脂を形成するシロキサン化合物であるといえる。
したがって、上記ア(ア)の請求項1、2、(カ)の段落【0029】も参照すると、甲第2号証には、RSiO3/2単位(オルガノ基Rは、同一又は異なり、アルキル基、フェニル基、又は架橋性官能基に由来する基である)からなるモノオルガノシロキシ単位及び/又はSiO2単位からなるシロキシ単位を含む三次元架橋したシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料、及び、三次元架橋したシリコーン樹脂が、モノオルガノシロキシ単位であるT単位、シロキシ単位であるQ単位、R3SiO1/2単位(Rは前記と同じ)からなるトリオルガノシロキシ単位であるM単位、及び/又はR2SiO単位(Rは前記と同じ)からなるジオルガノシロキシ単位であるD単位を組み合わせて含み、それらの単位を有している、例えば、MDQ樹脂又はTQ樹脂のシリコーン樹脂が開示されているといえる。
(エ)甲第2号証の上記ア(サ)の段落【0074】には、フィラーである酸化チタンTTO-51(石原産業株式会社製;商品名)をシリコーン樹脂に充填し、成形して、硬化物であるシリコーン樹脂基材を得た旨が記載されており、上記(ア)も参照すると、甲第2号証には、シランカップリング剤と、シロキサン化合物からなる重合性シリコーン樹脂原材料と、酸化チタン粉末からなるフィラーとが、混合されて分散されつつ含有された組成物が開示されているといえる。
(オ)甲第2号証の上記ア(キ)の段落【0035】には、「シリコーン樹脂は、付加反応性で、無溶媒下で加熱硬化するものであり、型を用いて、コンプレッション成形、射出成形、トランスファー成形、液状シリコーンゴム射出成形(LIMS)、押し出し成形、カレンダー成形のような方法で成形される。」と記載されている。
また、コンプレッション成形、トランスファー成形、押し出し成形、カレンダー成形は、通常、グリース状で粘性又は塑性の原材料を、型やロール機を用いて成形するものであることが、技術常識である。
したがって、甲第2号証には、シリコーン樹脂は、「コンプレッション成形、射出成形、トランスファー成形、液状シリコーンゴム射出成形(LIMS)、押し出し成形、カレンダー成形のような方法で成形される」こと、及び「液状又はグリース状で粘性又は塑性のもの」である原材料組成物が開示されている。
(カ)甲第2号証の上記ア(サ)の段落【0073】、【0074】の記載から、甲第2号証には、「シリコーン樹脂基材の反射率を測定し、反射率の物性についての試験を行った」ことが開示されているといえる。
(キ)以上から、甲第2号証には、以下の発明(以下、それぞれ「甲2発明A」、「甲2発明B」という。)が記載されている。
<甲2発明A>
「シランカップリング剤とシロキサン化合物とフィラーとを含むバインダー用組成物であって、
調整された当該バインダー用組成物は、加熱、又は光照射によりシランカップリング剤とシロキサン化合物とが架橋したバインダーとしその分子間にフィラーを含ませたシリコーン樹脂を金型内で成型して、シリコーン樹脂基材を得るためのものであり、
当該シリコーン樹脂基材は、発光ダイオード基板、半導体素子基板、集積回路基板、高周波基板、電気回路基板、太陽電池基板として、またそれらのパッケージとして用いることができ、
前記バインダー用組成物は、RSiO3/2単位(オルガノ基Rは、同一又は異なり、アルキル基、フェニル基、又は架橋性官能基に由来する基である)からなるモノオルガノシロキシ単位及び/又はSiO2単位からなるシロキシ単位を含む三次元架橋したシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料と、酸化チタン粉末からなる白色フィラーとが、混合されて分散されつつ含有され、液状又はグリース状で粘性又は塑性のものであり、
前記シリコーン樹脂は、コンプレッション成形、射出成形、トランスファー成形、液状シリコーンゴム射出成形(LIMS)、押し出し成形、カレンダー成形のような方法で成形され、
前記三次元架橋したシリコーン樹脂が、モノオルガノシロキシ単位であるT単位、シロキシ単位であるQ単位、R3SiO1/2単位(Rは前記と同じ)からなるトリオルガノシロキシ単位であるM単位、及び/又はR2SiO単位(Rは前記と同じ)からなるジオルガノシロキシ単位であるD単位を組み合わせて含み、それらの単位を有している、例えばMDQ樹脂又はTQ樹脂のシリコーン樹脂であり、
シリコーン樹脂基材の反射率を測定し、反射率の物性について試験を行った、バインダー用組成物。」
<甲2発明B>
「シリコーン樹脂基材の製造方法であって、
シランカップリング剤とシロキサン化合物とフィラーとを含むバインダー用組成物を調製し、加熱、又は光照射によりシランカップリング剤とシロキサン化合物とが架橋したバインダーとしその分子間にフィラーを含ませたシリコーン樹脂を金型内で成型し、シリコーン樹脂基材を得て、
シリコーン樹脂基材の反射率を測定し、反射率の物性について試験を行った、シリコーン樹脂基材の製造方法であり、
当該シリコーン樹脂基材は、発光ダイオード基板、半導体素子基板、集積回路基板、高周波基板、電気回路基板、太陽電池基板として、またそれらのパッケージとして用いることができ、
前記バインダー用組成物は、RSiO3/2単位(オルガノ基Rは、同一又は異なり、アルキル基、フェニル基、又は架橋性官能基に由来する基である)からなるモノオルガノシロキシ単位及び/又はSiO2単位からなるシロキシ単位を含む三次元架橋したシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料と、酸化チタン粉末からなる白色フィラーとが、混合されて分散されつつ含有され、液状又はグリース状で粘性又は塑性のものであり、
前記シリコーン樹脂は、コンプレッション成形、射出成形、トランスファー成形、液状シリコーンゴム射出成形(LIMS)、押し出し成形、カレンダー成形のような方法で成形され、
前記三次元架橋したシリコーン樹脂が、モノオルガノシロキシ単位であるT単位、シロキシ単位であるQ単位、R3SiO1/2単位(Rは前記と同じ)からなるトリオルガノシロキシ単位であるM単位、及び/又はR2SiO単位(Rは前記と同じ)からなるジオルガノシロキシ単位であるD単位を組み合わせて含み、それらの単位を有している、例えばMDQ樹脂又はTQ樹脂のシリコーン樹脂である、シリコーン樹脂基材の製造方法。」
(3)甲第3号証について
取消理由通知において引用した甲第3号証(エレクトロニクス用シリコーン、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、2003年6月発行)には、以下の事項が記載されている。
「【低分子シロキサンについて】
マイクロリレー、マイクロスイッチやマイクロモーターなどが密閉、半密閉状況下におかれた場合、シリコーン材料から揮散する成分がその接点部で電気エネルギーによって絶縁物に変化し、導通不良をおこす現象が発生することがあり、接点障害と呼ばれています。接点障害の原因となる揮散成分は下図に示されるもので低分子シロキサンと称されるものです。低分子低減グレードではその含有量を低減させています。」(第1ページ左下部分)
(4)甲第4号証について
平成29年2月27日に特許異議申立人山▲崎▼浩一郎から提出された意見書に添付された甲第4号証(「機能材料:超微粒子酸化チタン|製品情報|石原産業株式会社|」、https://www.iskweb.co.jp/products/functional02.html)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「超微粒子酸化チタンTTOシリーズの特徴
…(略)…
無機系、有機系の表面処理により酸化チタン表面の親水性・撥水性を制御し、用途に応じた分散性と耐候性を得ております。」
(イ)「各種グレード一覧
1.TTO-51、55シリーズ詳細(焼成法)
…(略)…」
グレード、TTO-51(A)、TTO-51(C)、TTO-55(A)、TTO-55(B)、TTO-55(C)、TTO-55(D)は、いずれも「結晶型」が「ルチル結晶」であることが示されており、それぞれの「表面処理種」及び「表面特性」は、以下のとおりであることが示されている。
「TTO-51(A):Al(OH)3、親水性、
TTO-51(C):Al(OH)3/ステアリン酸、撥水性、
TTO-55(A):Al(OH)3、親水性、
TTO-55(B):Al(OH)3、親水性、
TTO-55(C):Al(OH)3/ステアリン酸、撥水性、
TTO-55(D):ZrO2/Al(OH)3、親水性」
(5)甲第5号証について
平成29年2月27日に特許異議申立人山▲崎▼浩一郎から提出された意見書に添付された甲第5号証(「色材」、社団法人色材協会、昭和51年1月20日、第49巻、第1号、2~14ページ)には、以下の事項が記載されている。
「酸化チタンの表面処理の影響が明らかに次の順序になることを発表している。
アナタース形無処理>アナタース形Al処理>アナタース形Al,Si処理>ルチル形Al処理>ルチル形Al,Si処理>ルチル形Al,Si,Zn処理>
また、酸化チタンを使用した塗膜における耐候性の強さは上記の順序と全く逆になっているのが硫酸法酸化チタンとしては一般的傾向であり、…(略)…」(7ページ左欄)
(6)甲第6号証について
平成29年10月11日に特許異議申立人山▲崎▼浩一郎から提出された意見書に添付された甲第6号証(「フィラー活用辞典」、フィラー研究会、株式会社大成社、平成6年5月31日、264ページ)には、以下の事項が記載されている。
「シランカップリング剤は一般に次の化学構造式で表される。
YRSiX3
Xはケイ素原子に直接結合している加水分解基であり、工業的にはメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基が最も多く用いられている。この加水分解基Xは水溶液中、空気中の水分または無機フィラー表面に吸着された水分により加水分解されてシラノール基(SiOH)及びHXが生成する。」
(7)甲第7号証について
平成29年10月11日に特許異議申立人山▲崎▼浩一郎から提出された意見書に添付された甲第7号証(「化学大事典」、大木道則他、株式会社東京化学同人、平成1年10月20日)には、以下の事項が記載されている。
「シロキサン[Siloxane] Si-O結合(シロキサン結合)をもつ化合物の総称.鎖状シロキサンH3SiO(H2)SiO)nSiH3、環状シロキサン(-H2SiO-)n等の一般式で示される.水素をメチル基、フェニル基で置換したシロキサンが一般によく知られており、シラノールの縮合、ハロゲノシランやアミノシランの加水分解で生成する.シリコーンゴム、シリコーン油、シリコーングリースなどはシロキサン結合を有するポリシロキサン*である.」
(8)甲第8号証について
平成31年2月22日に特許異議申立人山▲崎▼浩一郎から提出された意見書に添付された甲第8号証(「岩波理化学事典第4版」、久保亮五他、岩波書店、平成1年12月15日、495ページ)には、以下の事項が記載されている。
「酸化ケイ素 [silicon oxide] [1]一酸化ケイ素.SiO.褐色の無形固体.…(略)…研磨材あるいはガラスのコーティング剤などに用いる.[2]二酸化ケイ素.SiO2.多くの多形が見出される.シリカというのは俗称である.…(略)… また非晶質の石英ガラスのほかコロイド状のシリカゲル、水熱条件下で得作られるキタイト(シリカK共呼ばれる.正方晶系)、SiOの酸化によるシロキサン鎖をもつ繊維状シリカWなどがある.…(略)…」
3 当審の判断
(1)特許法第36条第6項第2号について
上記第2の1(1)に記載した、本件訂正の訂正事項1により、請求項1の記載は「反射層が、膜状、板状又は立体状に支持体上に形成されることにより、シリコーン樹脂製反射基材を形成するためのものであり」、「三次元架橋により前記支持体上で硬化させ前記反射層にするためのものであり」、「150℃で1000時間の加熱前後において前記反射層の反射率を波長350~1000nmのいずれかの波長で少なくとも90%とする前記シリコーン樹脂製反射基材の前記反射層を形成するために用いられる」と訂正されたので、請求項1に記載された「シリコーン樹脂製反射基材」と「反射層」との区別は明確であり、請求項1に係る発明の原材料組成物は、「シリコーン樹脂製反射基材の反射層」を形成するために用いられることが明確である。また、請求項1に記載された、「反射層」が、「膜状、板状又は立体状に『支持体上に』形成されることにより、シリコーン樹脂製反射基材を形成するためのもの」、「三次元架橋により『前記支持体上で』硬化させ前記反射層にするためのもの」とは、三次元架橋により支持体上で硬化させ反射層にするためのもののみを意味することが明確である。
したがって、本件発明1~11は、明確であり、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たす。
よって、平成30年11月9日付けの取消理由通知に記載した取消理由の理由1により、本件請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
(2)特許法第29条第1項第3号及び第29条第2項について
ア 甲1発明との対比・判断
(ア)本件発明1について
A 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(A)甲1発明の「シリコーンゴム組成物」は、本件発明1の「原材料組成物」に相当する。
(B)甲1発明は、「SiO2単位からなるシロキシ単位を含み、RSiO3/2単位(…略…)からなるモノオルガノシロキシ単位を含み得る三次元架橋したシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料」を「混合又は混練することにより製造される」ものであるから、本願発明1と甲1発明とは、「SiO2単位からなるシロキシ単位を含み、RSiO3/2単位(…略…)からなるモノオルガノシロキシ単位を含み得る三次元架橋したシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料」とが「混合されて分散されつつ含有され」るものである点で共通する。
甲1発明の「酸化チタン粉末」は、本件発明1の「酸化チタンを含む」「無機フィラー粉末」に相当する。また、「酸化チタン粉末」はシリコーン樹脂よりも高屈折率である。
また、甲1発明の「酸化チタン粉末」は、「テトラアルコキシシラン及び/又はテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物を用いて表面処理され、表面処理により、酸化チタン粉末の表面にシロキサンの被膜が形成された」ものである。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「SiO2単位からなるシロキシ単位を含み、RSiO3/2単位(オルガノ基Rは、同一又は異なり、アルキル基、フェニル基、又は架橋性官能基に由来する基である)からなるモノオルガノシロキシ単位を含み得る三次元架橋したシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料と、前記シリコーン樹脂よりも高屈折率で表面処理された酸化チタンを含む無機フィラー粉末とが混合されて分散されつつ含有され」るものである点で共通する。
(C)甲1発明は、「低粘度、低チキソ性である」から、本件発明1と甲1発明とは、「液状又はグリース状で粘性又は塑性のものであ」る点で一致する。
(D)甲1発明は、「三次元架橋したシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料」により「製造される組成物」であるから、「三次元架橋により硬化させ」シリコーン樹脂とするものである。
また、甲1発明は、「反射用のコーティング剤、ポッティング剤」に「利用でき」るものであるから、「組成物」は「反射部材」にするためのものであり、甲1発明の「コーティング」は本件発明1の「塗工」に相当する。
また、甲1発明は、「電気・電子部品に用いられる、ニッケル、アルミニウム、シリコンの各基板上に流延し、これを真空脱泡した後、加熱し、シート状の硬化物を得るためのもの」であり、甲1発明の「基板」、「シート状」は、それぞれ、本件発明1の「支持体」、「膜状、板状又は立体状」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「前記シリコーン樹脂に前記無機フィラー粉末」が「含有された反射部材」が、「膜状、板状又は立体状に支持体上に形成されることにより、シリコーン樹脂製反射部材を形成するため」のものである点で一致し、「前記原材料組成物を塗工」によって「三次元架橋により前記支持体上で硬化させ前記反射部材にするためのもの」である点で共通する。
(E)本件発明1は、「前記三次元架橋したシリコーン樹脂が、前記モノオルガノシロキシ単位であるT単位、前記シロキシ単位であるQ単位、R3SiO1/2単位(Rは前記と同じ)からなるトリオルガノシロキシ単位であるM単位、及び/又はR2SiO単位(Rは前記と同じ)からなるジオルガノシロキシ単位であるD単位を組み合わせて含み、それらの単位を有しているMQ樹脂、MDQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、TD樹脂、TQ樹脂、及びTDQ樹脂から選ばれる少なくとも何れかのシリコーン樹脂」である。
それに対し、甲1発明の「重合性シリコーン樹脂原材料」は、「SiO2単位からなるシロキシ単位を含み、RSiO3/2単位(オルガノ基Rは、同一又は異なり、アルキル基、フェニル基、又は架橋性官能基に由来する基である)からなるモノオルガノシロキシ単位を含み得る三次元架橋したシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料」であるから、「SiO2単位からなるシロキシ単位、及びRSiO3/2単位(…(略)…)からなるモノオルガノシロキシ単位を含み、三次元架橋したシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料」であるといえる。
したがって、本件発明1と甲1発明において、三次元架橋したシリコーン樹脂が、「前記モノオルガノシロキシ単位であるT単位」、及び「前記シロキシ単位であるQ単位」を「組み合わせて含み」、「それらの単位を有している」「TQ樹脂」の「シリコーン樹脂」である点で共通する。
(F)甲1発明は、「添加剤成分を混合又は混練することにより製造される組成物」であって、「添加剤として」、「更に、組成物の接着性を向上する目的で、前記成分以外にエポキシ基含有ポリシロキサン化合物やエステルシロキサン化合物を添加することができ」るものであるところ、甲1発明の「エポキシ基含有ポリシロキサン化合物」は、本件発明1の「反応性官能基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物からなる接着性付与成分」に相当するから、本件発明1と甲1発明とは、「反応性の官能基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物からなる接着性付与成分」が「混合されて分散されつつ含有され」たものである」点で一致する。
(G)甲1発明は、「添加剤成分を混合又は混練することにより製造される組成物」であって、「添加剤として、アセチレンアルコール等の硬化抑制剤を添加することができ」るものであるところ、甲1発明の「アセチレンアルコール等の硬化抑制剤」は、本件発明1の「失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する反応抑制剤」に相当するから、本件発明1と甲1発明とは、「失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する反応抑制剤」が「混合されて分散されつつ含有され」たものである点で一致する。
(H)以上をまとめると、本件発明1と甲1発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「SiO2単位からなるシロキシ単位を含み、RSiO3/2単位(オルガノ基Rは、同一又は異なり、アルキル基、フェニル基、又は架橋性官能基に由来する基である)からなるモノオルガノシロキシ単位を含み得る三次元架橋したシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料と、前記シリコーン樹脂よりも高屈折率で表面処理された酸化チタンを含む無機フィラー粉末とが混合されて分散されつつ含有され液状又はグリース状で粘性又は塑性のものであり、前記シリコーン樹脂に前記無機フィラー粉末が含有された反射部材が、膜状、板状又は立体状に支持体上に形成されることにより、シリコーン樹脂製反射部材を形成するためのものであり、反応性の官能基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物からなる接着性付与成分と失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する反応抑制剤とが混合されて分散されつつ含有される原材料組成物であって、
前記原材料組成物を塗工によって三次元架橋により前記支持体上で硬化させ前記反射部材にするためのものであり、
前記三次元架橋したシリコーン樹脂が、前記モノオルガノシロキシ単位であるT単位、及び前記シロキシ単位であるQ単位を組み合わせて含み、それらの単位を有しているTQ樹脂のシリコーン樹脂であって、
前記シリコーン樹脂製反射部材を形成するために用いられる原材料組成物。」
<相違点1>
表面処理された酸化チタンを含む無機フィラー粉末について、本件発明1では、「白色無機フィラー粉末」であるのに対し、甲1発明では、「テトラアルコキシシランで表面処理した酸化チタン粉末」は、「硬化物に」「着色(白色)」を「付与又は補強する成分」であるものの、シリコーンゴム組成物(原材料組成物)の「酸化チタン粉末」が「白色」であるか不明である点。
<相違点2>
原材料組成物の用途について、本件発明1は、「前記シリコーン樹脂に前記白色無機フィラー粉末が『分散されつつ』含有された『反射層』が、形成されることにより、『シリコーン樹脂製反射基材』を形成するためのもの」であり、「『前記原材料組成物』を『1~10μmの薄膜から2000μmの厚膜乃至板、又は立体形状』に硬化させ『前記反射層』にするためのもの」であり、また、「『前記シリコーン樹脂製反射基材の前記反射層』を形成するために用いられる」ものであるのに対し、甲1発明のシリコーンゴム組成物(原材料組成物)は、「『重合性シリコーン樹脂原材料』と、『酸化チタン粉末』とが、『混合又は混練することにより製造される組成物』」であって、「『電気・電子部品』の『反射用のコーティング剤、ポッティング剤等に利用でき』」、「電気・電子部品に用いられる、ニッケル、アルミニウム、シリコンの各基板上に流延し、これを真空脱泡した後、加熱し、シート状の硬化物を得るためのものである」ものの、本件発明1のこのような構成について特定されていない点。
<相違点3>
粘度または可塑度について、本件発明1は、「粘度を10~500Pa・sとする液状であり若しくは国際規格ISO 7323に基づく可塑度を100~500mm/100とするミラブルタイプ又は可塑物である」のに対し、甲1発明では、本件発明1のこのような構成について特定されていない点。
<相違点4>
酸化チタンについて、本件発明1では、「Al、Al2O3、ZnO、ZrO2、及び/又はSiO2で表面処理されて」いるのに対し、甲1発明では、「テトラアルコキシシラン及び/又はテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物を用いて表面処理され、表面処理により、酸化チタン粉末の表面にシロキサンの被膜が形成された酸化チタン粉末」であるものの、本件発明1のこのような構成について特定されていない点。
<相違点5>
本件発明1では、「150℃で1000時間の加熱前後において前記反射層の反射率を波長350~1000nmのいずれかの波長で少なくとも90%とする前記シリコーン樹脂製反射基材の前記反射層を形成するために用いられる」ものであるのに対し、甲1発明では、「『電気・電子部品』の『反射用のコーティング剤、ポッティング剤等に利用でき』」るものの、本件発明1のこのような構成について特定されていない点。
B 判断
(A)まず、相違点4について検討する。
本件発明1における、「前記酸化チタンが、…SiO2で表面処理されて」いるものは、文言上、「酸化チタン」が「SiO2」(シリカ)で表面処理されているものであることは明らかであり、一方、甲1発明において、酸化チタン粉末の表面に形成される被膜はシロキサンの被膜である。
SiO2(シリカ)は、Si-O-Si結合を有しているものの、テトラアルコキシランが加水分解及び重合し、反応すべきものが全て反応したときの反応物であるのに対し、シロキサンは、シロキサン結合(Si-O-Si)を含むものの総称であって、SiO2(シリカ)とは化学物質として区別されるものである(必要であれば、甲第7号証、甲第8号証を参照。)。
そして、甲第1号証には、テトラアルコキシシラン及び/又はテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物について反応すべきものを全て反応させSiO2(シリカ)を得ることは、記載も示唆もされていない。
したがって、相違点4に係る本件発明1の構成は、特許異議申立人が提出したその他の証拠を考慮したとしても、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到できるものではない。
(B)以上のとおりであるから、相違点1~3、5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲1発明と同一ではない。
(イ)本件発明2~32について
本件発明2~32も、本件発明1が有する構成を有しているから、本件発明2、3、5、6、8~16、19~24、27、29~32は、甲1発明と同一ではなく、また、本件発明2~6、8~16、18~32は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明7、17は、甲1発明及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)甲1発明との対比・判断のまとめ
以上のとおり、本件発明1~3、5、6、8~16、19~24、27、29~32は、甲1発明と同一ではなく、また、本件発明1~6、8~16、18~32は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明7、17は、甲1発明及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 甲2発明A、甲2発明Bとの対比・判断
(ア)本件発明1について
A 甲2発明Aとの対比
本件発明1と甲2発明Aとを対比する。
(A)甲2発明Aの「バインダー用組成物」、「酸化チタン粉末からなる白色フィラー」は、それぞれ本件発明1の「原材料組成物」、「酸化チタンを含む白色無機フィラー粉末」に相当する。
また、「酸化チタン粉末」はシリコーン樹脂よりも高屈折率である。
また、甲2発明Aは、「前記バインダー用組成物は、RSiO3/2単位(オルガノ基Rは、同一又は異なり、アルキル基、フェニル基、又は架橋性官能基に由来する基である)からなるモノオルガノシロキシ単位及び/又はSiO22単位からなるシロキシ単位を含む三次元架橋したシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料と、酸化チタン粉末からなる白色フィラーとが、混合されて分散されつつ含有され、液状又はグリース状で粘性又は塑性のもの」である。
したがって、本件発明1と甲2発明Aとは、「RSiO3/2単位(オルガノ基Rは、同一又は異なり、アルキル基、フェニル基、又は架橋性官能基に由来する基である)からなるモノオルガノシロキシ単位及び/又はSiO2単位からなるシロキシ単位を含む三次元架橋したシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料と、前記シリコーン樹脂よりも高屈折率」で「酸化チタンを含む白色無機フィラー粉末とが混合されて分散されつつ含有され液状又はグリース状で粘性又は塑性のもの」であり、「シリコーン樹脂製」部材を形成するために用いられる「原材料組成物」である点で一致する。
(B)甲2発明Aは、「調整された当該バインダー用組成物は、加熱、又は光照射によりシランカップリング剤とシロキサン化合物とが架橋したバインダーとしその分子間にフィラーを含ませたシリコーン樹脂を金型内で成型して、シリコーン樹脂基材を得るためのものであり」、「『前記バインダー用組成物は』、『三次元架橋したシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料と、酸化チタン粉末からなる白色フィラーとが、混合されて分散されつつ含有され』」、「前記シリコーン樹脂は、コンプレッション成形、射出成形、トランスファー成形、液状シリコーンゴム射出成形(LIMS)、押し出し成形、カレンダー成形のような方法で成形され」、「シリコーン樹脂基材の反射率を測定し、反射率の物性について試験を行った」ものである。
したがって、本件発明1と甲2発明Aとは、「前記シリコーン樹脂に前記白色無機フィラー粉末」が「含有された反射部材」が、「シリコーン樹脂製反射部材を形成するため」のものである点で一致し、「前記原材料組成物」を「金型成形」、「コンプレッション成形、射出成形、トランスファー成形、押し出し成形及び/又はカレンダー成形」によって「三次元架橋により硬化させ」反射部材にするためのものである点で共通する。
(C)本件発明1は、「前記三次元架橋したシリコーン樹脂が、前記モノオルガノシロキシ単位であるT単位、前記シロキシ単位であるQ単位、R3SiO1/2単位(Rは前記と同じ)からなるトリオルガノシロキシ単位であるM単位、及び/又はR2SiO単位(Rは前記と同じ)からなるジオルガノシロキシ単位であるD単位を組み合わせて含み、それらの単位を有しているMQ樹脂、MDQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、TD樹脂、TQ樹脂、及びTDQ樹脂から選ばれる少なくとも何れかのシリコーン樹脂」である。
それに対し、甲2発明Aでは、「前記三次元架橋したシリコーン樹脂が、モノオルガノシロキシ単位であるT単位、シロキシ単位であるQ単位、R3SiO1/2単位(Rは前記と同じ)からなるトリオルガノシロキシ単位であるM単位、及び/又はR2SiO単位(Rは前記と同じ)からなるジオルガノシロキシ単位であるD単位を組み合わせて含み、それらの単位を有している、例えばMDQ樹脂及びTQ樹脂のシリコーン樹脂」である。
したがって、両者は、「前記三次元架橋したシリコーン樹脂が、前記モノオルガノシロキシ単位であるT単位、前記シロキシ単位であるQ単位、R3SiO1/2単位(Rは前記と同じ)からなるトリオルガノシロキシ単位であるM単位、及び/又はR2SiO単位(Rは前記と同じ)からなるジオルガノシロキシ単位であるD単位を組み合わせて含み、それらの単位を有しているMDQ樹脂、TQ樹脂から選ばれる少なくとも何れかのシリコーン樹脂」である点で一致する。
(D)以上をまとめると、本件発明1と甲2発明Aとの一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「RSiO3/2単位(オルガノ基Rは、同一又は異なり、アルキル基、フェニル基、又は架橋性官能基に由来する基である)からなるモノオルガノシロキシ単位及び/又はSiO2単位からなるシロキシ単位を含む三次元架橋したシリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料と、前記シリコーン樹脂よりも高屈折率で酸化チタンを含む白色無機フィラー粉末とが混合されて分散されつつ含有され液状又はグリース状で粘性又は塑性のものであり、前記シリコーン樹脂に前記白色無機フィラー粉末が含有された反射部材が、シリコーン樹脂製反射部材を形成するためのものである原材料組成物であって、
前記原材料組成物を金型成形、コンプレッション成形、射出成形、トランスファー成形、押し出し成形及び/又はカレンダー成形によって三次元架橋により硬化させ前記反射部材にするためのものであり、
前記三次元架橋したシリコーン樹脂が、前記モノオルガノシロキシ単位であるT単位、シロキシ単位であるQ単位、R3SiO1/2単位(Rは前記と同じ)からなるトリオルガノシロキシ単位であるM単位、及び/又はR2SiO単位(Rは前記と同じ)からなるジオルガノシロキシ単位であるD単位を組み合わせて含み、それらの単位を有しているMDQ樹脂、TQ樹脂から選ばれる少なくとも何れかのシリコーン樹脂であって、
前記シリコーン樹脂製反射部材を形成するために用いられる原材料組成物。」
<相違点1>
白色無機フィラー粉末が含む酸化チタンについて、本件発明1では、「表面処理された酸化チタン」であり、「前記酸化チタンが、Al、Al2O3、ZnO、ZrO2、及び/又はSiO2で表面処理されてお」るのに対し、甲2発明Aでは、「酸化チタン粉末からなる白色フィラー」について、表面処理されたものであるか否かが不明である点。
<相違点2>
原材料組成物の用途について、本件発明1は、「前記シリコーン樹脂に前記白色無機フィラー粉末が『分散されつつ』含有された『反射層』が、『膜状、板状又は立体状に支持体上に形成されることにより、シリコーン樹脂製反射基材』を形成するためのもの」であり、「前記原材料組成物を『1~10μmの薄膜から2000μmの厚膜乃至板、又は立体形状』に『前記支持体上で』硬化させ『前記反射層』にするためのもの」であり、また、「前記シリコーン樹脂製反射基材の前記反射層を形成するために用いられる」ものであるのに対し、甲2発明Aでは、「調整された当該バインダー用組成物」は、「シリコーン樹脂基材を得るためのものであり、当該シリコーン樹脂基材は、発光ダイオード基板、半導体素子基板、集積回路基板、高周波基板、電気回路基板、太陽電池基板として、またそれらのパッケージとして用いることができ」、「シリコーン樹脂基材の反射率を測定し、反射率の物性について試験を行った」ものの、本件発明1のこのような構成について特定されていない点。
<相違点3>
本件発明1は、「反応性の官能基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物からなる接着性付与成分」が「混合されて分散されつつ含有され」たものであるのに対し、甲2発明Aでは、本件発明1のこのような構成について特定されていない点。
<相違点4>
本件発明1は、「失活又は揮発するまで硬化反応を抑制する反応抑制剤」が「混合されて分散されつつ含有され」たものであるのに対し、甲2発明Aでは、本件発明1のこのような構成について特定されていない点。
<相違点5>
粘度または可塑度について、本件発明1では、「粘度を10~500Pa・sとする液状であり若しくは国際規格ISO 7323に基づく可塑度を100~500mm/100とするミラブルタイプ又は可塑物である」のに対し、甲2発明Aでは、本件発明1のこのような構成について特定されていない点。
<相違点6>
シリコーン樹脂について、本件発明1では、「MQ樹脂、MDQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、TD樹脂、TQ樹脂、及びTDQ樹脂から選ばれる少なくとも何れかのシリコーン樹脂」であるのに対し、甲2発明Aでは、「例えば、MDQ樹脂又はTQ樹脂のシリコーン樹脂」であり、MDQ樹脂とTQ樹脂以外の本件発明1のこのような構成の樹脂について特定されていない点。
<相違点7>
シリコーン樹脂製反射基材の反射率について、本件発明1では、「150℃で1000時間の加熱前後において前記反射層の反射率を波長350~1000nmのいずれかの波長で少なくとも90%とする前記シリコーン樹脂製反射基材の前記反射層を形成するために用いられる」ものであるのに対し、甲2発明Aでは、シリコーン樹脂基材の反射率について、本件発明1のこのような構成について特定されていない点。
B 判断
(A)事案に鑑み、まず、相違点2及び相違点3についてまとめて検討する。
a まず、甲2発明Aが含むシランカップリング剤に関して検討する。
樹脂の原材料組成物に、シランカップリング剤を添加することにより密着性などを付与することは、技術常識であるが(平成30年5月28日付け取消理由通知(決定の予告)の第3の3(1)イ参照。)、甲第2号証の上記2(2)ア(ケ)の段落【0040】に「シロキサン化合物にシランカップリング剤が含まれていると、それが含まれていない場合よりも、フィラーを網目構造の中に確りと取り込むため、シリコーン樹脂の強度が顕著に強くなる。」と、段落【0041】に「シロキサン化合物とシランカップリング剤とにより三次元架橋したシリコーン樹脂は、…(略)…またフィラーに付着してもシリコーン樹脂のバインダー自体を膨張させない。その結果、シリコーン樹脂基材の線膨張係数が小さいものとなる。」と記載されているように、甲第2号証に記載されているシランカップリング剤は「接着性付与成分」として用いられるものではなく、また、シランカップリング剤が含まれるシリコーン樹脂は、支持体上で硬化させるものでもない。
よって、甲第2号証に記載されているシランカップリング剤は、原材料組成物を支持体上で硬化させ反射層とする際に接着性を付与する本件発明1の「接着性付与成分」には該当しない。
b 次に、甲2発明Aにおいて、相違点2及び相違点3に係る本件発明1の構成を採用することの容易想到性について検討する。
(a)甲第2号証の上記2(2)ア(ウ)の段落【0002】~【0004】、【0006】には、従来、様々な発光機器に発光ダイオードが用いられており、発光ダイオードは、セラミックス製基板や、熱可塑性樹脂であるエポキシ樹脂製基板又はポリエーテルエーテルケトン製基板に載置され、発光機器内に組み込まれていたが、従来技術は問題があったため、本発明は、発光ダイオードなどの基板やパッケージに用いることができ、硬くて丈夫なシリコーン樹脂基材を提供することを目的とする旨が記載されている。
また、段落【0015】~【0017】にも、本発明のシリコーン樹脂基材は、硬くて耐久性に優れたものであることや、発光ダイオードなどの基板やパッケージとして組み込んでシリコーン基材含有製品とする旨が記載されている。
すなわち、甲第2号証に記載された「本発明」のシリコーン樹脂基材は、硬くて耐久性に優れた発光ダイオードの基板自体やパッケージ自体を構成するものであるから、甲2発明Aにおいて、シリコーン樹脂を金型内で成型して、シリコーン樹脂基材を得る際に、別個の支持体を用いて、その上にシリコーン樹脂基材の反射層を成形するためのものではなく、また、硬化の際に、密着性・接着性が優れているものとする必要性もない。
(b)そうすると、甲2発明Aにおいて、硬化させて得たシリコーン樹脂基材の反射層を、発光機器に組み込む際に、支持体上に取り付けることはあっても、バインダー用組成物を、シリコーン樹脂基材の反射層自体を形成する際に、支持体上でシリコーン樹脂を硬化させるためのものとする動機はなく、また、硬化の際に、密着性・接着性が優れているものとする必要性もないので、接着性付与成分が含有されたものとする動機があるとはいえない。
(c)したがって、本件発明1が有している「『反射層』が、『支持体上に形成されることにより、シリコーン樹脂製反射基材を形成するためのもの』」であり、また、「『前記原材料組成物』を『1~10μmの薄膜から2000μmの厚膜乃至板、又は立体形状』に『前記支持体上で』硬化させ『前記反射層にするためのもの』」であるという構成、及び、「反応性の官能基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物からなる接着性付与成分」が「混合されて分散されつつ含有され」たものであるという構成を、甲2発明Aにおいて導くことは困難であり、相違点2及び相違点3に係る本件発明1の構成は、特許異議申立人が提出したその他の証拠を考慮したとしても、甲2発明Aに基づいて当業者が容易に想到できるものではない。
よって、甲2発明Aにおいて、相違点2及び相違点3に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。
(B)以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2発明Aと同一ではない。
(イ)本件発明2~11について
本件発明2~11も、上記(ア)B(A)b(c)で述べた、本件発明1が有している上記構成を有しているから、本件発明2、3、5、6、8~11は、甲2発明Aと同一ではなく、また、本件発明2~6、8~11は、甲2発明Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明7は、甲2発明A及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)本件発明12について
A 甲2発明Bとの対比
(A)本件発明12は、上記第3に記載したとおりのもので、請求項1~11に記載された原材料組成物を引用し、発明のカテゴリーが組成物の発明からシリコーン樹脂製反射基材の製造方法の発明に変更されたものである。
本件発明12は、本件発明1で特定される構成要件を、実質的に全て含むものであり、また、「前記原材料組成物を…前記シリコーン樹脂へ重合させることにより、反射層を支持体上で…又は立体形状に形成し」との構成要件を有する。
(B)したがって、本件発明12と甲2発明Bとを対比すると、上記(ア)A(D)で述べた<相違点1>~<相違点7>及び少なくとも以下の相違点を有する。
<相違点A>
本件発明12は、「『前記原材料組成物』を『前記シリコーン樹脂へ重合させることにより』、『反射層を支持体上で』『形成』する『シリコーン樹脂反射基材の製造方法』」であるのに対し、甲2発明Bは、「『バインダー用組成物を調整し、加熱、又は光照射により』『バインダーとし』、『シリコーン樹脂を金型内で成型し、シリコーン樹脂基材を得て、シリコーン樹脂基材の反射率を測定し、反射率の物性について試験を行った、シリコーン樹脂基材の製造方法であり』、『前記バインダー用組成物』は、『シリコーン樹脂へと重合させる重合性シリコーン樹脂原材料』が『含有され』」るものであり、「シリコーン樹脂基材の反射率を測定し、反射率の物性について試験を行った」ものであるものの、本件発明12の上記の構成について特定されていない、すなわち、甲2発明Bでは、シリコーン樹脂基材が、バインダー用組成物を重合させることにより、支持体上で形成したものであるとの構成については特定されていない点。
B 判断
(A)まず、上記相違点Aについて検討する。
a 甲第2号証の上記2(2)ア(ウ)の段落【0002】~【0004】、【0006】には、従来、様々な発光機器に発光ダイオードが用いられており、発光ダイオードは、セラミックス製基板や、熱可塑性樹脂であるエポキシ樹脂製基板又はポリエーテルエーテルケトン製基板に載置され、発光機器内に組み込まれていたが、従来技術は問題があったため、本発明は、発光ダイオードなどの基板やパッケージに用いることができ、硬くて丈夫なシリコーン樹脂基材を提供することを目的とする旨が記載されている。
また、段落【0015】~【0017】にも、本発明のシリコーン樹脂基材は、硬くて耐久性に優れたものであることや、発光ダイオードなどの基板やパッケージとして組み込んでシリコーン基材含有製品とする旨が記載されている。
すなわち、甲第2号証に記載された「本発明」のシリコーン樹脂基材は、硬くて耐久性に優れた発光ダイオードの基板自体やパッケージ自体を構成するものであるから、甲2発明Bにおいて、シリコーン樹脂を金型内で成型する際に、別個の支持体を用いて、その上に成形するものではない。
b そうすると、甲2発明Bにおいて、重合させて得たシリコーン樹脂基材を、発光機器に組み込む際に、支持体上に取り付けることはあっても、シリコーン樹脂基材自体を形成する際に、支持体上でシリコーン樹脂を重合させることにより形成する動機があるとはいえない。
したがって、本件発明12が有している「前記原材料組成物」を「前記シリコーン樹脂へ重合させることにより」、「反射層を支持体上で」「形成」するという構成を甲2発明Bにおいて導くことは困難であり、相違点Aに係る本件発明12の構成は、特許異議申立人が提出したその他の証拠を考慮したとしても、甲2発明Bに基づいて当業者が容易に想到できるものではない。
c よって、甲2発明Bにおいて、相違点Aに係る本件発明12の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。
(B)以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明12は、甲2発明Bと同一ではなく、また、甲2発明Bに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)本件発明13~32について
本件発明13~32も、上記(ウ)B(A)bで述べた、本件発明12が有している上記構成を有しているから、本件発明13~16、19~24、27、29~32は、甲2発明Bと同一ではなく、また、本件発明13~16、18~32は、甲2発明Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明17は、甲2発明B及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(オ)甲2発明A、甲2発明Bとの対比・判断のまとめ
以上のとおり、本件発明1~3、5、6、8~11は、甲2発明Aと同一ではなく、また、本件発明1~6、8~11は、甲2発明Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明7は、甲2発明A及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明12~16、19~24、27、29~32は、甲2発明Bと同一ではなく、また、本件発明12~16、18~32は、甲2発明Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明17は、甲2発明B及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 特許法第29条第1項第3号及び第29条第2項についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~3、5、6、8~16、19~24、27、29~32は、甲1発明と同一ではなく、また、本件発明1~6、8~16、18~32は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明7、17は、甲1発明及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
以上のとおり、本件発明1~3、5、6、8~11は、甲2発明Aと同一ではなく、また、本件発明1~6、8~11は、甲2発明Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明7は、甲2発明A及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明12~16、19~24、27、29~32は、甲2発明Bと同一ではなく、また、本件発明12~16、18~32は、甲2発明Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明17は、甲2発明B及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、平成30年11月9日付けの取消理由通知に記載した取消理由の理由2または3により、本件請求項1~32に係る特許を取り消すことはできない。
(3)特許異議申立人の意見について
ア 特許異議申立人山▲崎▼浩一郎は、平成31年2月22日に提出した意見書において、以下のように主張する。
(ア)特許権者が、平成29年8月29日に提出した意見書の14頁において、本件特許発明1と甲第1号証との相違点としている、イ「本件発明1は、接着成分が反応性の官能基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物が混合されて分散されつつ含有されているのに対し、甲第1号証の発明は、エポキシ基含有ポリシロキサン化合物やエステルシロキサン化合物を添加している点。」、ウ「本件発明1は、反応抑制剤が混合されて分散されつつ含有されているのに対し、甲第1号証の発明は、反応抑制剤の記載が無い点。」、エ「本件発明1は、シリコーン樹脂が少なくともT単位、Q単位を含む樹脂等で特定されているのに対し、甲第1号証の発明は、そのような特定が無い点。」は、いずれも相違点にはならない(上記意見書3~5ページの3(2)イ~エ参照。)。
(イ)特許権者が、平成29年8月29日に提出した意見書の14~16頁で主張する、甲第1号証では、SiO2で処理された酸化チタンが記載されていない、また実質的にも記載されていないという指摘は技術的に誤りであり、甲第1号証にSiO2で表面処理された酸化チタンは実質的に開示されている(上記意見書5~9ページの3(2)オ参照。)。
(ウ)特許権者は、平成29年8月29日に提出した意見書の17頁で、「支持体の記載のない甲第1号証では、係る組み合わせによる効果を奏する技術思想は示唆されていない。」と主張しているが、甲第1号証の0037段落における基板は、本件発明でいうところの支持体に該当するものであり、支持体の記載が無い、という特許権者の主張は誤りである。そして、支持体が無いという理由で、本件発明の硬化が示唆できない、という主張も、当を得ておらず、当業者にとってもその効果の指標としては容易に想到できるものである(上記意見書9~10ページの3(2)カ参照。)。
イ 上記主張について検討する。
上記ア(ア)の主張について、本件発明1と甲1発明との一致点と相違点は、上記3(2)イ(ア)A(H)のとおりであり、イ、ウ、及びエについての特許異議申立人の主張に誤りはない。
しかしながら、特許異議申立人の上記主張を考慮したとしても、「判断」については、上記3(2)イ(ア)B(B)で述べたとおり、相違点1~3、5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲1発明と同一ではない。
上記ア(イ)の主張について、上記上記3(2)イ(ア)B(A)で述べたとおり、甲1発明において、酸化チタン粉末の表面に形成される被膜はシロキサンの被膜であり、本件発明1におけるSiO2(シリカ)は、Si-O-Si結合を有しているものの、テトラアルコキシランが加水分解及び重合し、反応すべきものが全て反応したときの反応物であるのに対し、シロキサンは、シロキサン結合(Si-O-Si)を含むものの総称であって、SiO2(シリカ)とは化学物質として区別されるものである(必要であれば、甲第7号証、甲第8号証を参照。)。
そして、甲第1号証には、テトラアルコキシシラン及び/又はテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物について反応すべきものを全て反応させSiO2(シリカ)を得ることは、記載も示唆もされていない。
したがって、甲第1号証には、SiO2で表面処理された酸化チタンは開示されていない。
上記ア(ウ)の主張について、本件発明1と甲1発明とを対比すると、上記3(2)イ(ア)A(D)で述べたとおり、甲1発明は、「電気・電子部品に用いられる、ニッケル、アルミニウム、シリコンの各基板上に流延し、これを真空脱泡した後、加熱し、シート状の硬化物を得るためのもの」であり、甲1発明の「基板」、「シート状」は、それぞれ、本件発明1の「支持体」、「膜状、板状又は立体状」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「前記シリコーン樹脂に前記無機フィラー粉末」が「含有された反射部材」が、「膜状、板状又は立体状に支持体上に形成されることにより、シリコーン樹脂製反射部材を形成するため」のものである点で一致し、「前記原材料組成物を塗工」によって「三次元架橋により前記支持体上で硬化させ前記反射部材にするためのもの」である点で共通する。
よって、「支持体の記載が無い、という特許権者の主張は誤りである。」との特許異議申立人の上記主張に誤りはない。
しかしながら、特許異議申立人の上記主張を考慮したとしても、「判断」については、上記3(2)イ(ア)B(B)で述べたとおり、本件発明1は、甲1発明と同一ではなく、また、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立人山▲崎▼浩一郎は、本件訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立書76ページの「3(4)」の「モ 特許法第36条第6項第1号及び特許法第29条第1項の柱書の異議申立て理由について(請求項7、17)」において、
「(ア)本件訂正前の特許請求の範囲に関し、本件明細書の実施例10(段落0186)には、低分子量ポリシロキサンの量を300ppm未満になるまで「減圧下及び/又は200℃で維持した」との記載があるが、実際に300ppm未満となったことは確認しておらず、また、どのようにすれば低分子ポリシロキサンの量を確認できるかも記載されておらず、更にはどの程度の減圧条件であるか、及び減圧・加熱の維持時間も記載されていない。よって、実施例10に記載のシリコーン樹脂組成物は、請求項7及び17を満たすものであることを十分説明できていない。従って、本件特許発明7は完成されているとはいえず、また十分に本件明細書で説明されているものではない。
(イ)以上より、本件特許発明7、及び17で特定される発明は、未完成であり、また、本件明細書において十分に説明されているものであるとは言えない。」と主張する。
2 しかしながら、本件の明細書の発明の詳細な説明には、次のように記載されている。
「【0089】
シリコーン樹脂製反射基材は、電気部品に装着されるものであるから、電気接点障害やくもりの原因となるものでシリコーン樹脂中に含有される低分子シロキサン例えばシロキシ基繰返単位が4~10(D4~D10)の環状低分子量シロキサンを、予め300ppm、好ましくは50ppm未満にまで除去したシリコーン樹脂で形成されていると、なお一層好ましい。具体的には、市販の低分子シロキサン低減グレードの重合性シリコーン樹脂原材料を用いたり、低分子シロキサン除去処理として、加熱オーブン処理(例えば200℃で4時間加熱処理)、真空加熱処理(例えば真空下200℃で2時間加熱)などの加熱処理を施したりしたシリコーン樹脂原材料を用いることができる。また、これらの処理に加えて、超音波溶媒抽出などの手段を施して成型品から低分子シロキサン除去することもできる。シリコーン樹脂原材料から低分子シロキサンを除去できるが、成形品から低分子シロキサンを除去する方が、より低レベルにまで除去できるので、好ましい。」
「【0186】
(実施例10)
シリコーン樹脂原材料組成物を調製後、シロキシ基繰返単位を4~10とする低分子量ポリシロキサンを300ppm未満になるまで、減圧下及び/又は200℃で維持した後、常圧に戻して用いたこと以外は、実施例1~10と同様にして、シリコーン樹脂製反射基材を作製し、夫々LEDを実装してLED照明基板を製造したところ、電気接点障害、くもりの発生による照度低下などの現象は、認められなかった。」
「【0191】
(実施例16)
シリコーン樹脂原材料組成物を調製後、シロキシ基繰返単位を4~10とする低分子量ポリシロキサンを300ppm未満になるまで、減圧下及び/又は200℃で維持した後、常圧に戻して用いたこと以外は、実施例1~15と同様にして、シリコーン樹脂製反射基材を作製し、夫々LEDを実装してLED照明基板を製造したところ、何れも電気接点障害、くもりの発生による照度低下などの現象は、認められなかった。」
3 上記のように発明の詳細な説明の段落【0089】には、「シリコーン樹脂中に含有される低分子シロキサン例えばシロキシ基繰返単位が4~10(D4~D10)の環状低分子量シロキサンを、予め300ppm、…(略)…にまで除去したシリコーン樹脂で形成されていると、なお一層好ましい。」と記載されている。
したがって、発明の詳細な説明には、シリコーン樹脂中に含まれるシロキシ基繰返単位を4~10とする低分子量ポリシロキサンを最大でも300ppmとなるようにした、シリコーン樹脂原材料組成物が開示されているといえる。
よって、本件発明7及び17は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしている。
4 なお、段落【0089】には、予め、低分子シロキサンを除去する具体的な方法について、「低分子シロキサン除去処理として、加熱オーブン処理(例えば200℃で4時間加熱処理)、真空加熱処理(例えば真空下200℃で2時間加熱)などの加熱処理を施したりしたシリコーン樹脂原材料を用いることができる。」と記載されている。
また、シリコーン樹脂中の低分子ポリシロキサンの量を、例えば、ガスクロマトグラフィーにより定量して確認できることは、技術常識(必要であれば、特開2006-124489号公報の段落【0027】、特開2005-113115号公報の段落【0049】、特開2001-139894号公報の段落【0026】、特開平6-37213号公報の段落【0020】、【0024】、特開平5-170911号公報の段落【0018】、【0020】、特開平4-311764号公報の段落【0032】、【0034】等を参照。)である。
したがって、当業者であれば、どのようにすれば低分子ポリシロキサンの量を確認できるか理解でき、低分子量ポリシロキサンの量を300ppm未満になるまで除去するには、「減圧下及び/又は200℃で維持」をどのような条件ですればよいのかも理解できる。
5 また、上記3のとおり、発明の詳細な説明には、シリコーン樹脂中に含まれるシロキシ基繰返単位を4~10とする低分子量ポリシロキサンを最大でも300ppmとなるようにした、シリコーン樹脂原材料組成物が開示されているといえる。
また、上記4で述べたように、発明の詳細な説明の段落【0089】の記載及び技術常識を考慮すると、どのようにすれば低分子ポリシロキサンの量を確認できるかも、どのような条件であれば低分子量ポリシロキサンの量を300ppm未満になるまで除去できるのかも理解できるから、本件発明7、17は、「実際上、明らかに実施できない発明」には該当しない。
したがって、本件発明7、17は、未完成発明であるとはいえず、特許法第29条第1項の柱書の規定に違反したものではない。
6 よって、特許異議申立人山▲崎▼浩一郎のかかる主張は、採用することができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~32に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~32に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-700569