特許異議申立
2016-700504
医療機器
- 審判番号
- 2016-700504
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-014325外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月01日
- 審決日
- 2017年03月28日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友ベークライト株式会社
- 【権利者代理人】速水 進治
- 【異議申立人】菊地 公一
- 分類
- P1652.121-YAA(A61M) / P1652.113-YAA(A61M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5880080号発明「医療機器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5880080号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。
特許第5880080号の請求項1、3、4、10に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5880080号の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、平成24年1月26日に特許出願され、平成28年2月12日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人菊地公一により特許異議の申立てがされ、平成28年10月21日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年12月22日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)があり、その本件訂正請求に対して特許異議申立人菊地公一から平成29年1月27日付けで意見書が提出され、さらに、平成29年2月6日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年3月10日に意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし訂正事項5のとおりである。
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「を有することを特徴とする医療機器」を、「を有し、前記屈曲操作部は、操作者により操作される円板状の部材を有しており、前記手元操作部が有するケースのうち前記屈曲操作部が配置されている部位は、円弧状に膨らんでおり、かつ側部に開口を有しており、前記部材は、周方向において部分的に前記開口から露出していることを特徴とする医療機器」に訂正する。
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項2に、「前記巻取部の軸心方向における少なくとも一部分は、前記軸心方向に対して直交する断面形状が角丸多角形であり、前記屈曲操作部は、前記巻取部の前記一部分の対向する2つの面を挟み込んで、当該一部分を前記軸周りに回転可能に保持していることを特徴とする請求項1に記載の医療機器」と記載されているのを、独立形式に改め、「長尺で可撓性の本体部と、前記本体部に埋設され、且つ、先端が前記本体部の先端部に固定された操作線と、前記本体部の基端部に設けられ、且つ、前記操作線の基端部が連結された手元操作部と、前記手元操作部に設けられ、前記操作線を牽引することにより前記本体部を屈曲させる操作を行うための屈曲操作部と、前記手元操作部に設けられ、且つ、前記屈曲操作部による前記操作線の牽引量を変化させずに、前記手元操作部からの前記操作線の繰り出し可能量を調節する操作を行うためのたるみ量調節操作部と、を有し、前記たるみ量調節操作部は、前記屈曲操作部に設けられ、前記操作線を巻き取る巻取部と、前記巻取部をその軸周りに回転させて前記巻取部に対する前記操作線の巻き取り量を調節する操作を行うための巻取操作部と、を有し、前記巻取部の軸心方向における少なくとも一部分は、前記軸心方向に対して直交する断面形状が角丸多角形であり、前記屈曲操作部は、前記巻取部の前記一部分の対向する2つの面を挟み込んで、当該一部分を前記軸周りに回転可能に保持していることを特徴とする医療機器」に訂正する。
(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項5に、「前記屈曲操作部は、前記操作線を巻き取る屈曲用巻取部と、前記屈曲用巻取部を回転させて前記屈曲用巻取部に対する前記操作線の巻き取り量を調節する操作を行うための屈曲用巻取操作部と、を有し、前記屈曲用巻取部に巻回された前記操作線の巻回軸と、前記巻取部に巻回された前記操作線の巻回軸と、が直交し、前記巻取部からの前記操作線の引き出し方向と、前記巻取部の配設箇所での前記屈曲用巻取部の接線方向と、が一致していることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の医療機器」と記載されているうち、請求項1を引用するものを独立形式に改め、「長尺で可撓性の本体部と、前記本体部に埋設され、且つ、先端が前記本体部の先端部に固定された操作線と、前記本体部の基端部に設けられ、且つ、前記操作線の基端部が連結された手元操作部と、前記手元操作部に設けられ、前記操作線を牽引することにより前記本体部を屈曲させる操作を行うための屈曲操作部と、前記手元操作部に設けられ、且つ、前記屈曲操作部による前記操作線の牽引量を変化させずに、前記手元操作部からの前記操作線の繰り出し可能量を調節する操作を行うためのたるみ量調節操作部と、を有し、前記たるみ量調節操作部は、前記屈曲操作部に設けられ、前記操作線を巻き取る巻取部と、前記巻取部をその軸周りに回転させて前記巻取部に対する前記操作線の巻き取り量を調節する操作を行うための巻取操作部と、を有し、前記屈曲操作部は、前記操作線を巻き取る屈曲用巻取部と、前記屈曲用巻取部を回転させて前記屈曲用巻取部に対する前記操作線の巻き取り量を調節する操作を行うための屈曲用巻取操作部と、を有し、前記屈曲用巻取部に巻回された前記操作線の巻回軸と、前記巻取部に巻回された前記操作線の巻回軸と、が直交し、前記巻取部からの前記操作線の引き出し方向と、前記巻取部の配設箇所での前記屈曲用巻取部の接線方向と、が一致していることを特徴とする医療機器」に訂正する。
(4)訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に、「前記たるみ量調節操作部は、前記操作線に係合する係合部と、前記係合部を前記操作線の延在方向に対して交差する方向へ移動させる移動機構と、前記係合部を任意の位置で前記手元操作部に対して固定する固定機構と、を有することを特徴とする請求項1に記載の医療機器」と記載されているのを、独立形式に改め、「長尺で可撓性の本体部と、前記本体部に埋設され、且つ、先端が前記本体部の先端部に固定された操作線と、前記本体部の基端部に設けられ、且つ、前記操作線の基端部が連結された手元操作部と、前記手元操作部に設けられ、前記操作線を牽引することにより前記本体部を屈曲させる操作を行うための屈曲操作部と、前記手元操作部に設けられ、且つ、前記屈曲操作部による前記操作線の牽引量を変化させずに、前記手元操作部からの前記操作線の繰り出し可能量を調節する操作を行うためのたるみ量調節操作部と、を有し、前記たるみ量調節操作部は、前記屈曲操作部に設けられ、前記操作線を巻き取る巻取部と、前記巻取部をその軸周りに回転させて前記巻取部に対する前記操作線の巻き取り量を調節する操作を行うための巻取操作部と、を有し、前記たるみ量調節操作部は、前記操作線に係合する係合部と、前記係合部を前記操作線の延在方向に対して交差する方向へ移動させる移動機構と、前記係合部を任意の位置で前記手元操作部に対して固定する固定機構と、を有することを特徴とする医療機器」に訂正する。
(5)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項8に、「前記たるみ量調節操作部は、前記操作線の基端が固定され、且つ、前記屈曲操作部に対して移動可能に前記屈曲操作部に設けられた操作線固定部と、前記操作線固定部を任意の位置で前記屈曲操作部に対して固定する固定機構と、を有することを特徴とする請求項1に記載の医療機器」と記載されているのを、独立形式に改め、「長尺で可撓性の本体部と、前記本体部に埋設され、且つ、先端が前記本体部の先端部に固定された操作線と、前記本体部の基端部に設けられ、且つ、前記操作線の基端部が連結された手元操作部と、前記手元操作部に設けられ、前記操作線を牽引することにより前記本体部を屈曲させる操作を行うための屈曲操作部と、前記手元操作部に設けられ、且つ、前記屈曲操作部による前記操作線の牽引量を変化させずに、前記手元操作部からの前記操作線の繰り出し可能量を調節する操作を行うためのたるみ量調節操作部と、を有し、前記たるみ量調節操作部は、前記屈曲操作部に設けられ、前記操作線を巻き取る巻取部と、前記巻取部をその軸周りに回転させて前記巻取部に対する前記操作線の巻き取り量を調節する操作を行うための巻取操作部と、を有し、前記たるみ量調節操作部は、前記操作線の基端が固定され、且つ、前記屈曲操作部に対して移動可能に前記屈曲操作部に設けられた操作線固定部と、前記操作線固定部を任意の位置で前記屈曲操作部に対して固定する固定機構と、を有することを特徴とする医療機器」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)一群の請求項について
訂正事項1~5に係る訂正前の請求項1~10について、請求項2~10はそれぞれ直接または他の請求項を介して請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~10に対応する訂正後の請求項1~10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「屈曲操作部」及び「手元操作部」の構成について、「前記屈曲操作部は、操作者により操作される円板状の部材を有しており、前記手元操作部が有するケースのうち前記屈曲操作部が配置されている部位は、円弧状に膨らんでおり、かつ側部に開口を有しており、前記部材は、周方向において部分的に前記開口から露出している」と限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1の「前記屈曲操作部は、操作者により操作される円板状の部材を有しており、前記手元操作部が有するケースのうち前記屈曲操作部が配置されている部位は、円弧状に膨らんでおり、かつ側部に開口を有しており、前記部材は、周方向において部分的に前記開口から露出している」という構成は、明細書の段落【0039】、【0045】~【0048】の記載事項、及び、【図1】、【図2】に図示されている事項から明らかであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
また、上記アのとおり訂正事項1は「屈曲操作部」及び「手元操作部」の構成を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張しまたは変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する126条第5項及び第6項に適合するものである。
(3)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項2が、訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改める訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する126条第5項及び第6項に適合するものである。
(4)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項5が、訂正前の請求項1~4を引用する記載であったところ、請求項2~4を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改める訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する126条第5項及び第6項に適合するものである。
(5)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の特許請求の範囲の請求項6が、訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改める訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する126条第5項及び第6項に適合するものである。
(6)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の特許請求の範囲の請求項8が、訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改める訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する126条第5項及び第6項に適合するものである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正を認める。
以下、訂正後の本件請求項1、3、4、10に係る発明を、それぞれ、本件特許発明1、3、4、10という。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1、3、4、10に係る発明(以下、訂正特許請求の範囲の請求項1、3、4、10に係る発明を、それぞれ、「本件特許発明1」、「本件特許発明3」、「本件特許発明4」、「本件特許発明10」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、3、4、10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
2 取消理由の概要
訂正後の請求項1、3、4、10に係る発明(以下、「本件特許発明1」、「本件特許発明3」、「本件特許発明4」、「本件特許発明10」)の特許に対して平成29年2月6日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)本件特許発明1は、甲第1号証(特開平8-38613号公報)に記載された発明(以下、「甲1発明」という。)及び甲第3号証(特開平6-292728号公報)に記載された発明(以下、「甲3発明」という。)、または、甲1発明及び甲第4号証(実用新案登録第3162588号公報)に記載された発明(以下、「甲4発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1の特許は、取り消されるべきものである。
(2)本件特許発明10は、甲1発明及び甲3発明、または、甲1発明及び甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明10の特許は、取り消されるべきものである。
(3)本件特許発明3は、甲1発明及び甲3発明並びに周知の事項、または、甲1発明及び甲4発明並びに周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明3の特許は、取り消されるべきものである。
(4)本件特許発明4は、甲1発明及び甲3発明並びに周知の事項、または、甲1発明及び甲4発明並びに周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明4の特許は、取り消されるべきものである。
3 甲号証の記載事項及び甲号証に記載された発明
(1)甲第1号証及び甲1発明
甲第1号証(特開平8-38613号公報)には、段落【0022】~【0043】、【0074】~【0075】、【図1】~【図7】の記載事項及び開示事項から、以下の発明が記載されている。
(甲1発明)
「カテーテル本体101と、ワイヤ120、130と、操作具1と、湾曲操作部2と、固定部36と、を有し、固定部36は、湾曲操作部2に設けられ、ワイヤ120、130を巻き取る固定ネジ37、38と、固定ネジ37、38と、をその軸回りに回転させて固定ネジ37、38に対するワイヤ120、130の巻き取り量を調整する操作を行うための溝と、を有する医療機器。」
(2)甲第3号証及び甲3発明
甲第3号証には、段落【0001】、【0049】~【0053】、【0071】~【0073】、【図1】、【図13】~【図15】、【図17】、【図20】、【図21】の記載事項及び開示事項から、以下の発明が記載されている(以下、「甲3発明」という。)。
(甲3発明)
「操作可能なカテーテルを制御する手動制御可能なアクチュエータを備えたカテーテルにおいて、牽引ケーブル32a、32cを引っ張ることによりシャフト10の近位セクション15を屈曲させるための屈曲操作部としてのサムホイール92がハンドル/アクチュエータ12に設けられ、サムホイール92は円形の部材であり、ハンドル/アクチュエータ12のうち、サムホイール92が配置される部位は、円弧状に膨らんでおり、かつ、側部に開口を有し、サムホイール92は、周方向において部分的に上記開口から露出する構成を有する、操作可能なカテーテル。」
(3)甲第4号証及び甲4発明
甲第4号証には、段落【0001】、【0017】、【0022】~【0039】、【図1】、【図3】、【図6】~【図8】、【図11】、【図13】の記載事項及び開示事項から、以下の発明が記載されている(以下、「甲4発明」という。)。
(甲4発明)
「先端可動カテーテルであって、第1ワイヤ5aまたは第2ワイヤ5bを引っ張ることによりシース本体2の遠位端部分を屈曲させる操作部3が保持部4に設けられており、操作部3は、円板状の部材である第1回転操作部32と第2回転操作部33とを有し、保持部4のうち操作部3が配置される部位は円弧状に膨らんでおり、かつ、側部に開口を有し、さらに、第1及び第2回転操作部32、33は、周方向において部分的に上記開口から露出している、先端可動カテーテル。」
第4 当審の判断
1 (1)の取消理由について
(1)本件特許発明1と甲1発明との対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、本件特許発明1が「屈曲操作部は、操作者により操作される円板状の部材を有しており、手元操作部が有するケースのうち前記屈曲操作部が配置されている部位は、円弧状に膨らんでおり、かつ側部に開口を有しており、前記部材は、周方向において部分的に前記開口から露出している」という構成を有するのに対し、甲1発明はそのような構成を備えない点で相違している(以下、「相違点」という。)。
以下、上記相違点について検討する。
(2)相違点についての検討
ア 上記第3 3(2)及び(3)で述べたとおり、甲3発明および甲4発明は、いずれも、先端をケーブルまたはワイヤを牽引することで屈曲させるカテーテル装置において、その屈曲操作部が円板状の部材を有し、ケースのうち前記屈曲操作部が配置されている部位は、円弧状に膨らんでおり、かつ側部に開口を有しており、円板状の部材は、周方向において部分的にその開口から露出しているという構成を備えている。そこで、甲1発明に、上記甲3発明または甲4発明の構成を適用できるか検討する。
イ 甲1発明は、甲第1号証の段落【0001】、【0005】、【0006】の記載から、「ワイヤーの牽引によりカテーテル先端部を湾曲させる場合、カテーテル先端部の湾曲角度(湾曲状態)を維持するための湾曲角度維持機構、ワイヤーの過度の牽引によるワイヤーの切断を防止する機構、あるいは組立時、使用時にワイヤーが弛緩したときにワイヤーの張力を調節する調整機構等を設け、より操作性を向上することが考えられているが、これらの各機構をそれぞれ独立して設置すると、部品点数の増大とともに、操作具の構造が極めて複雑となり、大型化、重量増大を招くばかりでなく、製造時や前記調整時における操作具の組み立てを困難にする要因となるという問題があり、それらの問題を、簡単な構造で、多機能かつ操作性に優れ、組み立ても容易なカテーテルの操作具を提供することを課題とするものと認められる。
ウ そして、甲1発明は、湾曲角度維持機構に係る課題解決として、制動部材を有するものであるところ(【特許請求の範囲】【請求項1】、段落【0073】)、その制動部材の構成として、段落【0048】及び【図3】に記載されているように、リール本体33の状面39とハウジング6の上部内面64との間に、制動部材5が設置されているもの、及び、段落【0050に記載されているように軸孔63と回転軸31との間に、制動部材5が設置されているものが記載されている。そして、これらの構造は、いずれも、「ハウジング6の上面から露出した回転軸31の部分」を有することが前提となっている。
エ また、甲1発明は、ワイヤーの過度の牽引によるワイヤーの切断を防止することに係る課題解決として、段落【0057】及び【図1】に記載されているように、「ハウジング6の上面から露出した回転軸31の部分」に取り付けられた操作レバー4の屈曲部43と、該屈曲部43がハウジング6の外面に当接する部分81、82とを有するものが記載されている。
オ すなわち、甲第1号証に記載された甲1発明は、上記イの課題解決のため、上記ウで述べたとおり、「ハウジング6の上面から露出した回転軸31の部分」に「操作レバー4」を取り付けるものと理解される。
カ 一方、甲1発明に、上記甲3発明または甲4発明の構成を適用するのであれば、操作部として、甲3発明のサムホイール92、または、甲4発明の「第1回転操作部32と第2回転操作部33とを有する操作部3」を設けるため、甲1発明の「ハウジング6の上面から露出した回転軸31の部分」及びその部分に取り付けられた「操作レバー4」を除く必要があり、そのことは、上記した甲1発明の課題を解決するために必要な構成を排除することになる。してみると、甲1発明に、上記甲3発明または甲4発明の構成を適用することには阻害要因があると言わざるをえない。
キ また、甲第1号証、甲第3号証、及び、甲第4号証のいずれにも、上記阻害要因を排除できる動機付けの記載及び示唆もない。
(3)小括
したがって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲3発明、または、甲1発明及び甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に該当しない。
2 (2)の取消理由について
(1)本件特許発明10と甲1発明との対比・判断
本件特許発明10と甲1発明とを対比すると、本件特許発明10は、本件特許発明1の「医療機器」を「カテーテル」に限定したものであり、この点について、本件特許発明10と甲1発明との相違はない。
したがって、両者の相違点は、上記1(1)の「相違点」と同じである。
(2)相違点についての検討
そして、上記「相違点」については、上記1(2)で検討したとおり、甲1発明に、上記甲3発明または甲4発明の構成を適用することには阻害要因があると言わざるをえない。
(3)小括
したがって、本件特許発明10は、甲1発明及び甲3発明、または、甲1発明及び甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に該当しない。
3 (3)、(4)の取消理由について
本件特許発明3及び本件特許発明4のいずれも、本件特許発明1のすべてを、その構成に含むものである。
そして、上記1で検討したとおり、本件特許発明1は、甲1発明及び甲3発明、または、甲1発明及び甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許発明3及び本件特許発明4のいずれも、甲1発明及び甲3発明並びに周知の事項、または、甲1発明及び甲4発明並びに周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本件特許発明3及び本件特許発明4は、いずれも、特許法第29条第2項の規定に該当しない。
第5 まとめ
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、3、4、10に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、3、4、10に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-700504