特許異議申立
2016-700474
積層ポリエステルフィルム
- 審判番号
- 2016-700474
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-148363外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年05月23日
- 審決日
- 2017年02月10日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5822992号発明「積層ポリエステルフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5822992号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項[1-4]について訂正することを認める。
特許第5822992号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5822992号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成26年1月7日を優先日とする平成26年7月19日の特許出願であり、平成27年10月16日にその特許権の設定登録がされた。その後、その特許について、特許異議申立人馬場智理により本件特許異議の申立てがされ、当審において平成28年9月8日付けで取消理由を通知したところ、その指定期間内である平成28年10月4日(受付日)に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成28年12月19日(受付日)に意見書が提出されたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のア、イのとおりである。
ア 請求項1に係る「平均粒径が0.01~1.0μmの範囲」を「平
均粒径が0.05~1.0μmの範囲」に訂正する。
イ 発明の詳細な説明の段落0009の「平均粒径が0.01~1.0
μmの範囲」を「平均粒径が0.05~1.0μmの範囲」に訂正
する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項
上記アの訂正事項に関連する記載として、本件特許明細書の発明の詳細な説明には「塗布層に用いる粒子の平均粒径」の範囲の具体例として「一般的には0.01~1.0μm、好ましくは0.05~0.8μm、」が列挙されていることから、本件発明の上記「平均粒径」の範囲の上限としての「1.0μm」、及び、その下限としての「0.05μm」なる数値は明細書に記載されているから、「塗布層」が「平均粒径が0.05~1.0μmの範囲である粒子を含有」することは、本件特許明細書に記載されているものと認められる。
上記アの訂正は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内において平均粒径の範囲を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、上記イの訂正は、訂正後の請求項1との整合性を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、上記アの訂正と同様に、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
そして、これらの訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項[1~4]について訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
本件発明1
「ウレタン樹脂および平均粒径が0.05~1.0μmの範囲である粒子を含有し、膜厚が0.001~1μmの範囲である塗布層を少なくとも片面に有する、ヘーズが5.0%を超える積層ポリエステルフィルムであり、前記塗布層中の粒子の含有量が3~70重量%の範囲であり、当該塗布層上にハードコート層を形成した際に、ヘーズ値が1.0%以上低下することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。」
本件発明2
「ハードコート層のヘーズが8.0%以下である請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。」
本件発明3
「ハードコート層が無溶剤系の活性エネルギー線硬化性樹脂層である請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。」
本件発明4
「無溶剤系の活性エネルギー線硬化性樹脂層の屈折率が1.56~1.65である請求項3に記載の積層ポリエステルフィルム。」
(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1~4に係る特許に対して平成28年9月8日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア 請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、請求項1及び2に係る特許は、取り消されるべきものである。
イ 請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に示される周知技術に基づき、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1~4に係る特許は、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2008-169277号公報
甲第2号証:特開2010-284943号公報
甲第3号証:特開2003-48245号公報
甲第4号証:国際公開第2008/146935号の再公表特許
甲第5号証:特開2008-247755号公報
(3)甲号証の記載
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
ポリエステルフィルムおよびそのうえに設けられた塗布層からなる光学用易接着性ポリエステルフィルムであって、塗布層が高分子バインダーおよび酸化チタン微粒子を含有し、該酸化チタン微粒子の平均一次粒子径が4~25nm、塗布層における酸化チタン微粒子の含有量が0.5~55重量%であり、塗布層の塗膜厚さが8~220nmであることを特徴とする、光学用易接着性ポリエステルフィルム。」
「【0006】
これら従来の易接着層は、ハードコート層との接着性という観点の考慮はされているものの、用いられるハードコート層との屈折率との組み合わせによっては干渉ムラが悪化し、反射防止能の性能が制限されることがある。本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、透明性、易滑性に優れ、種々の光学用途に用いられる層との接着力に優れながら、さらに反射防止加工後の干渉ムラが実用上問題ないレベルにある光学用易接着性ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。」
「【0013】
[高分子バインダー]
塗布層を構成する高分子バインダーは、高分子からなるバインダーであり、好ましくは、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂およびこれら樹脂同士の変性体のいずれか一種以上から構成される。・・・」
「【0018】
酸化チタン微粒子の平均一次粒子径は4~25nm、好ましくは5~25nmである。平均一次粒子径が25nmを超えると光学散乱が発生し塗布層の透明性が悪くなり、他方、4nm未満であると微粒子同士の凝集が多くなり二次粒子径が大きくなり、光学散乱が発生し、塗布層の透明性が悪くなる。なお、本発明における微粒子の平均一次粒子径は、数平均一次粒子径である。」
「【0038】
(4)ヘーズ
JIS K7136に準じ、日本電色工業社製のヘイズ測定器(NDH-2000)を使用してフィルムのヘイズ値を測定した。なお、フィルムのヘイズを下記の基準で評価した。
◎: ヘイズ値≦2.0% ・・・フィルムのヘイズ極めて良好
○:2.0%<ヘイズ値≦4.0% ・・・フィルムのヘイズ良好
×:4.0%<ヘイズ値 ・・・フィルムのヘイズ不良」
「【0046】
【表1】
」
「【0048】
酸化チタン微粒子1:
平均一次粒子径:10nm、屈折率:2.2 (触媒化成工業株式会社製 NEOSUNVEIL PW-1010)
・・・
酸化チタン微粒子3:
平均一次粒子径:20nm、屈折率:2.4 (石原産業株式会社製 商品名TTO-51(A))
・・・」
「【0049】
・・・
有機微粒子2:
アクリルフィラー(平均一次粒子径:250nm、屈折率:1.50) (日本触媒社製 商品名エポスターMX-200W)」
以上の記載(特に、上記「表1」の「実施例9~11,18」)によれば、甲第1号証には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
引用発明
「ポリエステル樹脂および平均粒径が0.01μm(「実施例9~11」)又は0.02μm(「実施例18」)の酸化チタン微粒子と平均粒径が0.25μmの有機微粒子(「実施例9~11,18」)とを含有し、膜厚が0.1(実施例9)、0.15(実施例10)、又は0.2μm(実施例11,18)である塗布層を少なくとも片面に有する、ヘーズが4.0%を超える積層ポリエステルフィルムであり、前記塗布層中の酸化チタン微粒子の含有量が40重量%(「実施例9~11」)又は50重量%(「実施例18」)であり、前記塗布層中の有機微粒子の含有量が0.5重量%(「実施例9~11,18」)であり、当該塗布層上にハードコート層を形成した際に、ヘーズ値が2.0%~4.0%の範囲となる積層ポリエステルフィルム。」
(4)判断
ア.特許法第29条第1項3号について
本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明は、少なくとも以下の点で相違する。
相違点1
塗布層が含有する粒子に関し、本件発明1では、「平均粒径が0.05~1.0μmの範囲である粒子」を「3~70重量%の範囲」で含有するのに対し、引用発明では、平均粒径が0.01μmの酸化チタン微粒子を40重量%又は平均粒径が0.02μmの酸化チタン微粒子を50重量%と、平均粒径が0.25μmの有機微粒子を0.5重量%含有する点
相違点2
塗布層を少なくとも片面に有する積層ポリエステルフィルムであって、塗布層上にハードコート層を形成した際にヘーズ値が低下する点に関し、本件発明1は、「ヘーズが5.0%を超える積層ポリエステルフィルム」であり、「塗布層上にハードコート層を形成した際に、ヘーズ値が1.0%以上低下する」のに対し、引用発明は、「ヘーズが4.0%を超える積層ポリエステルフィルム」であって、塗布層上にハードコート層を形成した際に、ヘーズ値が2.0%~4.0%の範囲となるものであって、低下するヘーズ値が不明な点
上記相違点1及び2は実質的な相違点であるから、本件発明は引用発明と同一のものではなく、甲第1号証に記載されたものではない。
イ.特許法第29条第2項について
相違点1に関し、甲2~5には、塗布層において「平均粒径が0.05~1.0μmの範囲である粒子」を「3~70重量%の範囲」で含有するものとすることの開示又は示唆がなく、引用発明の塗布層が含有する粒子を「平均粒径が0.05~1.0μmの範囲」としてその含有量を「3~70重量%の範囲」と変更すべき事由を示す他の証拠もない。
また、相違点2に関し、甲第2~4号証には、積層ポリエステルフィルムに機能層を積層した場合にヘーズが低下する現象が記載されているが、甲第2、3号証には、ハードコート層を形成する前の積層ポリエステルフィルムのヘーズを高くすることの記載はなく、むしろ、低くすることについて記載されており(甲第2号証の段落0010、甲第3号証の段落0065等を参照。)、甲第4号証には、塗布層及びハードコート層についての記載がない。
すなわち、甲第2~4号証には、「塗布層を少なくとも片面に有する、ヘーズが5.0%を超える積層ポリエステルフィルム」において、「塗布層上にハードコート層を形成した際に、ヘーズ値が1.0%以上低下する」という技術的事項の開示や示唆がない。
そして、当該事項により、本件発明1は、ヘーズが大きく下がり、機能層の加工・未加工の区別を付けやすくすることができる基材フィルムを提供することができる(本件特許明細書段落0010)という顕著な効果を奏するものであり、本件発明1は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ.本件発明2~4について
本件請求項2~4に記載された発明は、本件発明1をさらに限定したものであるので、本件発明1と同様に、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
エ.特許異議申立人の意見について
相違点1に関し、特許異議申立人は、本件発明1の「平均粒径が0.05~1.0μmの範囲である粒子」なる事項における平均粒径の規定は、引用発明の「有機微粒子」の平均粒径と一致すること、本件発明1の「塗布層中の粒子の含有量が3~70重量%の範囲」なる事項の含有量の規定は、引用発明の上記「有機微粒子」と「酸化チタン微粒子」の含有量と一致すること、及び、上記本件発明1の「平均粒径が0.05~1.0μmの範囲である」粒子と「塗布層中の含有量が3~70重量%の範囲」の粒子が同一のものを指すとは記載されていないことから、本件発明1は甲第1号証に記載されていると主張する。
しかしながら、例えば、本件特許明細書の段落0098~段落0126に記載の実施例において、各実施例の塗布層には、本件発明1に規定される平均粒径を有する「粒子IIA,IIB,IIC,IID」(段落0115)の中からいずれか1種類の粒子を、本件発明1に規定される範囲の含有量で含有させることが記載されており、かかる記載のとおり、本件特許明細書全体を参酌すれば、本件発明1の「平均粒径が0.05~1.0μmの範囲である」粒子と「塗布層中の含有量が3~70重量%の範囲」の粒子が、同一の粒子を指すと解するのが相当である。
また、相違点2に関し、特許異議申立人は、甲第1号証に記載される上記実施例9~11,18の積層フィルムもハードコート層を形成することによって1.0%以上ヘーズが低下していた蓋然性があるから、甲第1号証に記載される積層フィルムも加工、未加工の区別をできていた蓋然性があること、及び、本件発明の「機能層の加工・未加工の区別をつけやすくする」という解決課題は、本件特許優先日時点において新規の課題ではなかった蓋然性があることを主張している。
しかしながら、かかる主張を裏付ける証拠がないため、上記主張は採用できない。
4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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