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特許異議申立

2017-700313

画像表示装置用透明両面粘着シート、これを用いた透明両面粘着シート付き画像表示装置用構成部材及び画像表示装置

審判番号
2017-700313
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-205161外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年03月28日
審決日
2017年06月06日
公報発行日
2017年07月28日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.537-Y (C09J) / P1651.536-Y (C09J) / P1651.113-Y (C09J) / P1651.121-Y (C09J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5997347号発明「画像表示装置用透明両面粘着シート、これを用いた透明両面粘着シート付き画像表示装置用構成部材及び画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5997347号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 特許第5997347号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成24年3月7日に出願された特願2012-49943号の一部を、平成27年10月19日に新たな特許出願としたものであって、平成28年9月2日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人鯨田雅信により特許異議の申立てがされたものである。 2.本件発明について 特許第5997347号の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「[請求項1] 段差部及び平坦面部を貼合面に有する画像表示装置構成部材と、他の画像表示装置構成部材とを貼合するために用いられる画像表示装置用透明両面粘着シートであって、 粘着シートの最大厚み部分の厚みが200μm以下であって、 少なくとも粘着剤層(A)及び粘着剤層(B)の重畳層を有し、 粘着剤層(A)の厚みと粘着剤層(B)の厚みとが(A)/(B)>1.0の関係を満たし、 少なくとも粘着剤層(A)は熱又は紫外線による硬化性を有し、かつ、 押し込み硬度(C2アスカー硬度)が40以上50未満であることを特徴とする、画像表示装置用透明両面粘着シート。 [請求項2] 粘着剤層(A)が、質量平均分子量10万~70万のアクリル酸エステル共重合体及び分子間水素引抜型光開始剤を含有する粘着剤組成物から形成される、請求項1記載の画像表示装置用透明両面粘着シート。 [請求項3] 請求項1又は2記載の画像表示装置用透明両面粘着シートを、画像表示装置用構成部材に貼合し、熱又は紫外線により硬化することを特徴とする透明両面粘着シート付き画像表示装置用構成部材の製造方法。 [請求項4] 請求項1に記載の少なくとも一方の画像表示装置用構成部材が、高さ50μm~100μmの段差部、及び、平坦面部を貼合面に有するものであることを、請求項3記載の透明両面粘着シート付き画像表示装置用構成部材の製造方法。 [請求項5] 少なくとも対面する2つの画像表示装置用構成部材を備え、少なくとも一方の画像表示装置用構成部材が高さ50μm~100μmの段差部、及び、平坦面部を貼合面に有し、対面する2つの画像表示装置用構成部材の平坦面部同士が成す間隔が200μm以下である画像表示装置において、 前記2つの画像表示装置用構成部材の間が、請求項1又は2記載の画像表示装置用透明両面粘着シートで充填されてなる構成を備えた画像表示装置。 [請求項6] 前記2つの画像表示装置用構成部材の他方が、タッチパネル又は画像表示パネルのいずれかである請求項5に記載の画像表示装置。」 3.申立理由の概要 特許異議申立人鯨田雅信が主張する特許異議申立理由は次のとおりである。 (1)特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号について(同法第113条第4号) 甲第1号証:高分子計器株式会社, Asker 製品情報 http://www.asker.co.jp/products/constant-loader/motor/cle-150/ 本件特許請求の範囲及び本件特許明細書の記載には不備があり、本件発明1~6は特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、本件発明1~6に係る特許は取り消されるべきものである。 (2)特許法第29条第1項第3号について(同法第113条第2号) 甲第2号証:特開2009-227891号公報 本件発明1~6は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、本件発明1~6に係る特許は取り消されるべきものである。 (3)特許法第29条第2項について(同法第113条第2号) 甲第2号証:特開2009-227891号公報 本件発明1~6は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件発明1~6に係る特許は取り消されるべきものである。 4.甲号証の記載事項 (1)甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、以下の事項が記載されている。 (1-1)「モータ駆動式 定圧荷重器 CLE-150シリーズ JIS K 6253-3に準拠した硬さ測定に最適 モータ駆動式による安定した降下速度制御 最小0.1mm/sから任意の速度設定が可能 ・・・ ■降下速度 ステッピングモータにより0.1~19.9mm/sまで任意の降下速度が設定できます。」(甲第1号証の第1頁) (2)甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、以下の事項が記載されている。 (2-1)「[請求項1] 少なくともA層とB層の2層を備えた粘着シートであって、 A層およびB層のいずれも、1種類以上の(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含むベースポリマーと、アクリル系架橋モノマーと、架橋開始剤とを含有する粘着剤組成物を架橋してなる層であって、 A層は、下記凹み回復性試験において、除荷後10秒以内に凹みが回復して視認可能な歪が残らない凹み回復性を備えており、且つ、 B層は、下記異物取込み性試験において、ガラスビーズの周囲に生じた気泡サイズ(直径)がそのガラスビーズのサイズ(直径)の2倍未満である異物取込み性を備えたものであることを特徴とする粘着シート。 (凹み回復性試験) 10cm×10cmのソーダライムガラスに粘着シートを貼り合せ、該粘着シート上に、厚さ100μmのPETフィルムを貼り合わせて試験試料を作製し、この試験試料のPET面上に、重さ534gの鋼球を静かに載せて30秒間静置した後、除荷して凹みの回復具合を目視観察する。 (異物取込み性試験) 10cm×10cm、厚み3mmのソーダライムガラス上に、粒子径50μm以上60μm未満のガラスビーズを振りまき、さらにその上に、予め粘着シートをPETフィルム(厚み100μm)に貼り合せて該ガラスと同サイズにカットしたものを、740gのハンドロールを用いて加熱することなく貼り合わせ、室温、常圧下の環境下で静置し、貼合後30分以内にガラスビーズの周囲の気泡の発生をマイクロスコープを用いて観察する。」 (2-2)「[0011] 本発明の粘着シートは、凹み回復性と異物取り込み性とを兼ね備えており、例えば図1及び図2に示すように、本発明の粘着シートを介してPDP等のディスプレイパネルに光学フィルムを貼り合わせれば、画面表面(言い換えれば光学フィルムの表面)を指などで押圧しても変形し難く、且つ変形しても凹みが回復し易いばかりか、被着面であるディスプレイパネル表面に埃等の異物が存在したとしても、視認可能な気泡の発生を抑えることができる。」 (2-3)「[0026] (架橋開始剤) 架橋開始剤は、光開始剤或いは熱重合開始剤を用いることが可能であり、特に光開始剤が好ましい。 光開始剤としては、開裂型の光開始剤及び水素引抜型の光開始剤のいずれを用いることもでき、中でも水素引抜型光開始剤が好ましい。水素引抜型と開裂型とを種々の割合で併用してもよい。 水素引抜型光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ジベンゾスベロン、2-エチルアントラキノン、イソブチルチオキサンソンなどのいずれか或いはこれらの二種類以上の組合わせからなる混合成分を用いることができる。但し、水素引抜型の光開始剤として前記に挙げた物質に限定するものではない。」 (2-4)「[0032] (A層の物性) A層は、20℃基準マスターカーブの周波数10-1Hz~10-5Hzのいずれにおいても、貯蔵剪断弾性率が1.0×104Paを超えて1.0×105Pa以下の範囲内にあり、且つ周波数10-3Hzにおけるtanδ(=損失剪断弾性率/貯蔵剪断弾性率)が1.0×10-1以下である物性を備えることが好ましい。 このように低周波数領域において貯蔵剪断弾性率(G’)の絶対値を大きくすると同時に、損失剪断弾性率(G”)の絶対値を小さくして両者の差をより大きくすることによって、外力、特に低速での押圧による凹み変形に対する回復性を高めると共に、永久歪みを残り難くすることができる。例えば粘着シートを介して貼り合わせたものの表面、特にA層及びB層の2層からなる場合にはA層側の表面が変形し難く、変形しても凹みが短時間で回復して歪みが残り難くなる。」 (2-5)「[0044] (架橋開始剤) 架橋開始剤としては、光開始剤或いは熱重合開始剤を挙げることができるが、光開始剤が好ましい。 光開始剤としては、開裂型の光開始剤及び水素引抜型の光開始剤のいずれを用いることもできるが、好ましくは水素引抜型であり、例えばベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ジベンゾスベロン、2-エチルアントラキノン、イソブチルチオキサンソンなどのいずれか或いはこれらの二種類以上の組合わせからなる混合成分を用いるのが好ましい。但し、水素引抜型の光開始剤として前記に挙げた物質に限定するものではない。 また、水素引抜型と開裂型とを種々の割合で併用してもよい。」 (2-6)「[0050] (B層の物性) B層は、20℃基準マスターカーブによる貯蔵せん断弾性率が、周波数10-3Hz~10-5Hzのいずれにおいても、貯蔵剪断弾性率が5.0×102Pa~1.0×104Pa、好ましくは1.0×103Pa~1.0×104Paの範囲内に入るように架橋するのが好ましい。かかる物性を備えたB層であれば、たとえ被着面上に粒径50μm~60μm程度の微粒子が存在したとしても、当該被着面に本粘着シートを積層すれば、特にA層及びB層の2層からなる場合にはB層側を被着面に重ねて積層すれば、前記微粒子を取り込むように濡れるため、前記微粒子周囲において目視にて視認可能な気泡の発生を抑えることができる。」 (2-7)「[0057] なお、A層およびB層の積層方法は、架橋度をそれぞれ調整するのが好ましいから、この点を考慮すると、各層を形成する粘着シートをそれぞれ形成し、これらの粘着シートを貼り合わせるのが好ましい。この際、粘着シートを貼り合わせた後、再度光線照射するなどして架橋させ、粘弾性特性の最終調整をするようにしてもよい。それぞれ架橋してA層形成用粘着シート及びB層形成用粘着シートを作製し、別々に架橋した粘着シートを貼り合わせる場合、貼合界面の密着力が弱くなる傾向があるため、密着強度を高めるためにも再び架橋するのが好ましい場合がある。 但し、かかる積層方法に限定するものではない。」 (2-8)「[0058] (厚み) 粘着シート全体の厚み(合計厚み)は、用途や必要に応じて変えるのが好ましいが、ディスプレイ体への用途を考慮すると、50μm~5mm、特に75μm~2mm、中でも特に75μm~1mmの厚みとするのが好ましい。 [0059] B層の厚み(B層が多層の場合にはその合計厚み)が10μm~2mmであり、且つ、B層の厚み(B層が多層の場合にはその合計厚み)が粘着シートの合計厚みの半分以下であるのが好ましい。」 (2-9)「[0062] (用途) 本粘着シートは、複層窓などの各種窓材や各種表示パネル等を構成するガラスの貼り合せ、フラットパネルディスプレイ前面側への光学フィルムの貼り合せ、光学フィルム同士の貼り合せ、ガラスやプラスチック等の透明基材への各種透明フィルムの貼り合せなど、各種透明部材の貼り合せに用いることができる。 中でも、ディスプレイパネル上に光学フィルムを貼り合わせる際、本粘着シートのB層をディスプレイパネルのディスプレイ被着面に重ねるようにして、本粘着シートを介してディスプレイパネル上に光学フィルムを貼り合わせれば、画面表面を指などで押圧しても変形し難く変形しても凹みが回復し易いと共に、被着面に異物が存在したとしても、視認可能な気泡の発生を抑えることができる。しかも、視認性の低下を防ぐことができ、しかもリジッドな保護板を介在させる必要もないから軽量化を図ることが出来る。 よって、例えば本粘着シートを介してガラス板を積層してなる構成を備えた複層窓材や、本粘着シートのB層をディスプレイ被着面に貼着して、本粘着シートをディスプレイパネルに積層してなる構成を備えたディスプレイ体などを提供することができる。」 (2-10)「[0069] (実施例1) アクリル酸エステル共重合体ポリマー(1):100質量部に対し、光開始剤としてLamberti社製の商品名「Esacure TZT」(2,4,6-トリメチルベンゾフェノンと4-メチルベンゾフェノンの混合品):0.8質量部と、架橋モノマー(A):20.0質量部とを添加して溶融攪拌して粘着剤組成物を調製した。 この粘着剤組成物を、厚さ75μmのシリコーン離型PETの離型面上に、厚さ100μmになるようにホットメルトコーターを用いて塗布し、その上に、厚さ50μmのシリコーン離型PETを積層させ、高圧水銀ランプを用いて片面積算光量2,000mJ/cm2の紫外線エネルギー(波長365mm換算)を両面側から照射して架橋させて、A層形成用粘着シートを得た。 [0070] これとは別に、アクリル酸エステル共重合体ポリマー(2):100部に対し、光開始剤として日本シイベルヘグナー社製の商品名「Esacure TZT」:0.8部と、A層と同じ架橋モノマー(A):10.0部とを添加して溶融攪拌して粘着剤組成物を調製した。 この粘着剤組成物を、厚さ75μmのシリコーン離型PETの離型面上に、厚さ0.05mmになるようにホットメルトコーターを用いて塗布し、その上に、厚さ50μmのシリコーン離型PETを積層させ、高圧水銀ランプを用いて片面積算光量1,000mJ/cm2の紫外線エネルギー(波長365mm換算)を両面側から照射して架橋させて、B層形成用粘着シートを得た。 [0071] それぞれ得たA層形成用粘着シート及びB層形成用粘着シートの一面側の離型フィルムを剥離してお互いに貼り合わせた後、高圧水銀ランプを用いて離型PET越しに片面の積算光量1000mJ/cm2を表裏両面側から照射させて積層粘着シート(A層厚さ:0.1mm、B層厚さ:0.05mm)を得た。 [0072] なお、アクリル酸エステル共重合体ポリマー(1)の組成は、n-ブチルアクリレート:78.4質量%、2-エチルヘキシルアクリレート:19.6質量%、アクリル酸:2質量%を共重合させたもので、Tgは-35℃、130℃溶融粘度は17.5万mPa・secであった。 アクリル酸エステル共重合体ポリマー(2)の組成は、2-エチルヘキシルアクリレート:77質量%、アクリル酸:4質量%、酢酸ビニル:19質量%を共重合させたもので、Tgは-15℃、130℃溶融粘度は33万mPa・secであった。 用いた架橋モノマー(A)は、分子量530の3官能アクリレートモノマーを主成分とする、単官能~4官能アクリレートモノマーの混合物であった。」 (2-11)「[0082] <試験1:凹み回復性> 上記実施例で得られた粘着シートのA層側の凹み回復性を次の方法で測定し、比較例で得られた粘着シートの凹み回復性と比較した。 [0083] 10cm×10cmのソーダライムガラス(厚みmm)の上に、実施例及び比較例で得られた粘着シートを貼り合せ(実施例の場合には、B層をガラスに重ねて貼り合せた)、さらに該粘着シート上に、厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡製コスモシャインA4300)を貼り合わせて試験試料とした。 この試験試料のPET面上に、重さ534gの鋼球を静かに載せて30秒間静置した後、除荷して凹みの回復具合を目視観察し、次の基準で評価した。 [0084] ○:除荷後、10秒以内に凹みが回復し視認可能な歪が残らなかったもの。 ×:除荷後、10秒以内に凹みが回復せず視認可能な歪が生じたもの。 [0085] <試験2:異物取込み性> 上記実施例で得られた粘着シートのB層側の異物取込み性を次の方法で測定し、比較例で得られた粘着シートの異物取込み性と比較した。具体的には、実施例で得られた粘着シートを基材(ソーダライムガラス)に貼着し(実施例の場合には、B層をガラスに重ねて貼着した)、該基材(被着体)との界面に異物が存在した場合において、気泡発生の状況を観察し評価した。 [0086] 10cm×の10cmソーダライムガラス(厚み3mm)上に、粒子径50μm程度相当の微粒子として、粒子径50μm以上60μm未満のガラスビーズを振りまき、さらにその上に、予め各粘着シート(実施例又は比較例で得られたもの)を透明なPETフィルム(厚み100μm)に貼り合せて(実施例の場合には、A層をPETフィルムに重ねて貼り合せた)該ガラスと同サイズにカットしたものを、740gのハンドロールを用いて、加圧しないように注意しながら加熱することなく貼り合わせて観察試料とした。この際、実施例の粘着シートの場合には、B層をガラスに重ねて貼着した。 この観察試料を室温、常圧下の環境下で静置し、貼合直後(30分以内)に、ガラスビーズの周囲において外観上の不具合となる気泡が生じていないかマイクロスコープ(キーエンス社製)にて調べた。そして、次の基準で評価した。 [0087] ○:ガラスビーズの周囲に生じた気泡サイズ(直径)がそのガラスビーズのサイズ(直径)の2倍未満であったもの。 ×:ガラスビーズの周囲に生じた気泡サイズ(直径)がそのガラスビーズのサイズ(直径)の2倍を超えたもの。」 (2-12)「[0088] [表2] [0089] (試験結果) 上記試験1及び2の結果は表2のとおりである。 これより、実施例1-3の粘着シートはいずれも、A層側は、除荷後10秒以内に凹みが回復して視認可能な歪が残らない凹み回復性を備えている一方、B層側は、ガラスビーズの周囲に生じた気泡サイズ(直径)がそのガラスビーズのサイズ(直径)の2倍未満である異物取込み性を備えており、粘着シート全体として凹み回復性と異物取り込み性の両方を兼ね備えていることが判明した。」 (2-13)「 [図1] [図2] 」 5.甲第2号証に記載された発明 甲第2号証には、少なくともA層とB層の2層を備えた粘着シートであって、A層およびB層のいずれも、1種類以上の(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含むベースポリマーと、アクリル系架橋モノマーと、架橋開始剤とを含有する粘着剤組成物を架橋してなる層であって、A層は凹み回復性試験(試験方法は摘記2-1を参照。)において、除荷後10秒以内に凹みが回復して視認可能な歪が残らない凹み回復性を備えており、且つ、B層は、異物取込み性試験(試験方法は摘記2-1を参照。)において、ガラスビーズの周囲に生じた気泡サイズ(直径)がそのガラスビーズのサイズ(直径)の2倍未満である異物取込み性を備えたものであることを特徴とする粘着シートが記載されており(摘記2-1)、A層及びB層で用いられる架橋開始剤としては、光開始剤或いは熱重合開始剤を用いることが可能であり、光開始剤としては開裂型の光開始剤及び水素引抜型の光開始剤のいずれを用いることもでき、中でも水素引抜型光開始剤が好ましく、例えばベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ジベンゾスベロン、2-エチルアントラキノン、イソブチルチオキサンソンなどのいずれか或いはこれらの二種類以上の組合わせからなる混合成分を用いることができること(摘記2-3、2-5)、本粘着シートは、複層窓などの各種窓材や各種表示パネル等を構成するガラスの貼り合せ、フラットパネルディスプレイ前面側への光学フィルムの貼り合せ、光学フィルム同士の貼り合せ、ガラスやプラスチック等の透明基材への各種透明フィルムの貼り合せなど、各種透明部材の貼り合せに用いることができること(摘記2-9)、例えば図1及び図2(摘記2-13)に示されるように、上記粘着シートを介してPDP等のディスプレイパネルに光学フィルムを貼り合わせれば、画面表面(言い換えれば光学フィルムの表面)を指などで押圧しても変形し難く、且つ変形しても凹みが回復し易いばかりか、被着面であるディスプレイパネル表面に埃等の異物が存在したとしても、視認可能な気泡の発生を抑えることができること(摘記2-2)、A層は、低周波数領域において貯蔵剪断弾性率(G’)の絶対値を大きくすると同時に、損失剪断弾性率(G”)の絶対値を小さくして両者の差をより大きくすることによって、外力、特に低速での押圧による凹み変形に対する回復性を高めると共に、永久歪みを残り難くすることができ、例えば粘着シートを介して貼り合わせたものの表面、特にA層及びB層の2層からなる場合にはA層側の表面が変形し難く、変形しても凹みが短時間で回復して歪みが残り難くなること(摘記2-4)、B層は、たとえ被着面上に粒径50μm~60μm程度の微粒子が存在したとしても、当該被着面に本粘着シートを積層すれば、特にA層及びB層の2層からなる場合にはB層側を被着面に重ねて積層すれば、前記微粒子を取り込むように濡れるため、前記微粒子周囲において目視にて視認可能な気泡の発生を抑えることができること(摘記2-6)、A層およびB層の積層方法は、架橋度をそれぞれ調整するのが好ましいから、各層を形成する粘着シートをそれぞれ形成し、これらの粘着シートを貼り合わせるのが好ましく、この際、粘着シートを貼り合わせた後、再度光線照射するなどして架橋させ、粘弾性特性の最終調整をするようにしてもよいこと(摘記2-7)、粘着シート全体の厚み(合計厚み)は、用途や必要に応じて変えるのが好ましいが、ディスプレイ体への用途を考慮すると、50μm~5mm、特に75μm~2mm、中でも特に75μm~1mmの厚みとするのが好ましく、B層の厚み(B層が多層の場合にはその合計厚み)が10μm~2mmであり、且つ、B層の厚み(B層が多層の場合にはその合計厚み)が粘着シートの合計厚みの半分以下であるのが好ましいこと(摘記2-8)が記載されている。また、実施例1として、アクリル酸エステル共重合体ポリマー(1)(n-ブチルアクリレート:78.4質量%、2-エチルヘキシルアクリレート:19.6質量%、アクリル酸:2質量%を共重合させたもので、Tgは-35℃、130℃溶融粘度は17.5万mPa・sec):100質量部に対し、光開始剤としてLamberti社製の商品名「Esacure TZT」(2,4,6-トリメチルベンゾフェノンと4-メチルベンゾフェノンの混合品):0.8質量部と、架橋モノマー(A)(分子量530の3官能アクリレートモノマーを主成分とする、単官能~4官能アクリレートモノマーの混合物):20.0質量部とを添加して溶融攪拌して粘着剤組成物を調製し、この粘着剤組成物を、厚さ75μmのシリコーン離型PETの離型面上に、厚さ100μmになるようにホットメルトコーターを用いて塗布し、その上に、厚さ50μmのシリコーン離型PETを積層させ、高圧水銀ランプを用いて片面積算光量2,000mJ/cm2の紫外線エネルギー(波長365mm換算)を両面側から照射して架橋させて、A層形成用粘着シートを得たこと(摘記2-10の[0069]、[0072])、これとは別に、アクリル酸エステル共重合体ポリマー(2)(2-エチルヘキシルアクリレート:77質量%、アクリル酸:4質量%、酢酸ビニル:19質量%を共重合させたもので、Tgは-15℃、130℃溶融粘度は33万mPa・sec):100部に対し、光開始剤として日本シイベルヘグナー社製の商品名「Esacure TZT」:0.8部と、A層と同じ架橋モノマー(A)(分子量530の3官能アクリレートモノマーを主成分とする、単官能~4官能アクリレートモノマーの混合物):10.0部とを添加して溶融攪拌して粘着剤組成物を調製し、この粘着剤組成物を、厚さ75μmのシリコーン離型PETの離型面上に、厚さ0.05mmになるようにホットメルトコーターを用いて塗布し、その上に、厚さ50μmのシリコーン離型PETを積層させ、高圧水銀ランプを用いて片面積算光量1,000mJ/cm2の紫外線エネルギー(波長365mm換算)を両面側から照射して架橋させて、B層形成用粘着シートを得たこと(摘記2-10の[0070]、[0072])、及びそれぞれ得たA層形成用粘着シート及びB層形成用粘着シートの一面側の離型フィルムを剥離してお互いに貼り合わせた後、高圧水銀ランプを用いて離型PET越しに片面の積算光量1000mJ/cm2を表裏両面側から照射させて実施例1の積層粘着シート(A層厚さ:0.1mm、B層厚さ:0.05mm)を得たこと(摘記2-10の[0071])が記載されており、10cm×10cmのソーダライムガラスの上にB層をガラスに重ねて貼り合わせ、さらに該粘着シート上に厚さ100μmのPETフィルムを貼り合わせて凹み回復性の試験試料とし、この試験試料のPET面上に、重さ534gの鋼球を静かに載せて30秒間静置した後、除荷して凹みの回復具合を目視観察し、凹み回復性を評価したところ、実施例1は○の評価(除荷後、10秒以内に凹みが回復し視認可能な歪が残らなかった)であったこと(摘記2-11、2-12)、10cm×10cmのソーダライムガラス上に粒子径50μm以上60μm未満のガラスビーズを振りまき、さらにその上に、予めA層を厚み100μmのPETフィルムに貼り合わせてガラスと同サイズにカットしたものを、B層をガラスに重ねて、740gのハンドロールを用いて、加圧しないように注意しながら加熱することなく貼り合わせて観察試料とし、この観察試料を室温、常温下の環境下で静置し、貼合直後(30分以内)に、ガラスビーズの周囲において外観上の不具合となる気泡が生じていないかマイクロスコープ(キーエンス社製)にて調べ、異物取込み性を評価したところ、実施例1は○の評価(ガラスビーズの周囲に生じた気泡サイズ(直径)がそのガラスビーズのサイズ(直径)の2倍未満)であったこと(摘記2-11、2-12)が記載されている。 そうすると、甲第2号証には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「フラットパネルディスプレイ前面側への光学フィルムの貼り合せなど、各種透明部材の貼り合せに用いることができる、少なくともA層とB層の2層を備えた粘着シートであって、 A層およびB層のいずれも、1種類以上の(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含むベースポリマーと、アクリル系架橋モノマーと、架橋開始剤とを含有する粘着剤組成物を架橋してなる層であって、 A層およびB層は、各層を形成する粘着シートをそれぞれ形成し、これらの粘着シートを貼り合わせた後、再度光線照射して架橋させたものであり、 A層形成用粘着シートは、アクリル酸エステル共重合体ポリマー(1)(n-ブチルアクリレート:78.4質量%、2-エチルヘキシルアクリレート:19.6質量%、アクリル酸:2質量%を共重合させたもので、Tgは-35℃、130℃溶融粘度は17.5万mPa・sec):100質量部に対し、光開始剤としてLamberti社製の商品名「Esacure TZT」(2,4,6-トリメチルベンゾフェノンと4-メチルベンゾフェノンの混合品):0.8質量部と、架橋モノマー(A)(分子量530の3官能アクリレートモノマーを主成分とする、単官能~4官能アクリレートモノマーの混合物):20.0質量部とを添加して溶融攪拌して粘着剤組成物を調製し、高圧水銀ランプを用いて片面積算光量2,000mJ/cm2の紫外線エネルギー(波長365mm換算)を両面側から照射して架橋させて得たものであり、 B層形成用粘着シートは、アクリル酸エステル共重合体ポリマー(2)(2-エチルヘキシルアクリレート:77質量%、アクリル酸:4質量%、酢酸ビニル:19質量%を共重合させたもので、Tgは-15℃、130℃溶融粘度は33万mPa・sec):100部に対し、光開始剤として日本シイベルヘグナー社製の商品名「Esacure TZT」:0.8部と、A層と同じ架橋モノマー(A)(分子量530の3官能アクリレートモノマーを主成分とする、単官能~4官能アクリレートモノマーの混合物):10.0部とを添加して溶融攪拌して粘着剤組成物を調製し、高圧水銀ランプを用いて片面積算光量1,000mJ/cm2の紫外線エネルギー(波長365mm換算)を両面側から照射して架橋させて得たものであり、 それぞれ得たA層形成用粘着シート及びB層形成用粘着シートをお互いに貼り合わせた後、高圧水銀ランプを用いて離型PET越しに片面の積算光量1000mJ/cm2を表裏両面側から照射させて積層粘着シートとしたものであり、A層厚さは0.1mm、B層厚さは0.05mmであり、 A層は凹み回復性試験(試験方法は摘記2-1を参照。)において、除荷後10秒以内に凹みが回復して視認可能な歪が残らない凹み回復性を備えており、且つ、B層は、異物取込み性試験(試験方法は摘記2-1を参照。)において、ガラスビーズの周囲に生じた気泡サイズ(直径)がそのガラスビーズのサイズ(直径)の2倍未満である異物取込み性を備えたものである、粘着シート。」(以下、「引用発明」という。) 6.判断 (1)特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号について ア 本件発明1について 本件発明1における「押し込み硬度(C2アスカー硬度)」の測定条件について、本件明細書[0074]には、「粘着シートの押込硬度は、透明両面粘着シート1~3について、それぞれを複数枚重ねて厚みを2mm±0.3mmとし、アスカー硬度計を用いて2.5mm深さの測定端子を、押込加重1000g押込速度3mm/分にて垂直に押し込むようにして測定した。」と記載されている。「押込加重1000g押込速度 3mm/分にて垂直に押し込む」ことを実行する手段については特段記載されていないが、例えば、ステッピングモーターを用いて部材の移動を行う機器は、本件特許に係る出願の出願日前に周知であり、移動速度は当業者が任意に設計し得る事項にすぎないから、出願時の技術常識を考慮すると、上記の測定を当業者が実施できないとまではいえない。また、測定されるC2アスカー硬度の値が、押し込みを実行する手段によって変化するものともいえないから、本件明細書に押込み手段の記載がないことをもって、本件発明1が本件特許明細書に記載された発明でないということもできない。そうすると、本件発明1は、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしている。 イ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人鯨田雅信は、特許異議申立書の第18頁において、「本件の特許明細書の段落0043に記載されたアスカー硬度計(AskerC2L)の補助装置としては、当業者はモータ駆動式 定圧荷重器 CLE-150シリーズを使用している。・・・なお、段落0043に記載されたアスカー硬度計(AskerC2L)と組み合わせて使用できる補助装置は、モータ駆動式 定圧荷重器 CLE-150シリーズ以外になく、本件の特許明細書中にもモータ駆動式 定圧荷重器CLE-150シリーズ以外の補助装置を具体的に特定する記載はない。よって、当業者は補助装置としてモータ駆動式 定圧荷重器 CLE-150以外のものを使用して測定することはできない。」と主張している。 しかしながら、本件明細書には、本件発明1のC2アスカー硬度の測定に際して使用する補助装置については特段記載されておらず、補助装置として特定の装置を使用しなければならない旨の記載もなく、また、C2アスカー硬度の測定装置は周知のものであるから、出願時の技術常識を考慮すれば、必ずしも「モータ駆動式 定圧荷重器CLE-150シリーズ」を使わなくともC2アスカー硬度の測定は可能であると考えられる。よって、特許異議申立人の主張は採用することができない。 また、特許異議申立人鯨田雅信は、特許異議申立書の第18~19頁において、「甲第1号証にはモータ駆動式 定圧荷重器 CLE-150シリーズの押込速度の下限値が、0.1mm/秒と記載されている。この押込速度0.1mm/秒は、6mm/分に等しい速度であり、本件の特許明細書の段落0074に記載された押込速度3mm/分よりも2倍も速い速度が押込速度の下限値として記載されている。すなわち、本件の特許明細書の段落0074に記載された押込速度3mm/分は、当業者が一般的に用いる装置では達成できない程、非常の遅い速度である。なお・・・人手によって、押込速度3mm/分を達成することも考えられるが、1分間に3mmを定圧、かつ定速で押し込むことは到底不可能であり、このような測定では正確な押し込み硬度(C2アスカー硬度)を測定することはできない。また、本件の特許明細書中では、一般的装置で達成される下限値よりもはるかに遅い押込速度で押し込み硬度を測定しているにも関わらず、そのような遅い押込速度をいかにして達成するかについて具体的手段の記載が一切ない。このことから、本件特許発明は本件の特許明細書に記載された発明であるとはいえない。また、同様の理由により、本件特許発明は当業者が実施できるように記載されているとは言えない」と主張している。 ここで、甲第1号証には特許異議申立人が指摘するとおり、モータ駆動式 定圧荷重器 CLE-150シリーズの押込速度の下限値が、0.1mm/秒(6mm/分に相当。)であることが記載されているが(摘記1-1)、本件の特許明細書には、本件発明1におけるC2アスカー硬度を測定する際に、補助装置として「モータ駆動式 定圧荷重器 CLE-150シリーズ」を使用する旨の記載はないし、出願時の技術常識を考慮すれば、必ずしも「モータ駆動式 定圧荷重器CLE-150シリーズ」を使わなくとも測定は可能であると考えられる。 また、仮に、該定圧荷重器を使用しなければならないとしても、甲第1号証に記載されたステッピングモータによって降下速度が制御されるモータ駆動式定圧荷重器においては、通常、ステッピングモータは、パルス駆動され、最小ステップ角度毎に回転するものであるから、その回転速度は、パルス駆動の間隔を調整することで、必要に応じて任意に定めることができるものであって、該モータ駆動式定圧荷重器において、1分間に3mmの押し込み速度を実現することは、当業者が適宜なし得ることであって、実施不可能とはいえない。 そして、測定されるC2アスカー硬度の値が、押し込みを実行する手段によって大幅に変化するものともいえないから、甲第1号証の記載を参酌しても、本件明細書に押込み手段の記載がないことをもって、本件発明1が本件特許明細書に記載された発明でないということはできないし、本件発明1が発明の詳細な説明に実質的に記載されていないということもできない。 よって、特許異議申立人の主張は採用することができない。 ウ 本件発明2~6について 本件発明2~6は、いずれも本件発明1を直接又は間接的に引用する発明であるから、本件発明1と同じ理由により、いずれも特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしている。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1~6が特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない旨の特許異議申立理由(1)は、理由がないものである。 (2)特許法第29条第1項第3号について ア 本件発明1について (ア)本件発明1と引用発明との対比 本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「フラットパネルディスプレイ」及び「光学フィルム」は、いずれも本件発明1における「画像表示装置構成部材」に相当し、また、引用発明は「透明部材の貼り合せに用いることができる」粘着シートであるから、本件発明1における「透明両面粘着シート」に相当する。さらに、引用発明においては、「A層」及び「B層」が、「各層を形成する粘着シートをそれぞれ形成し、これらの粘着シートを貼り合わせた後、再度光線照射して架橋させたもの」であることから、引用発明における「A層」及び「B層」は、それぞれ本件発明1における「粘着剤層(A)」及び「粘着剤層(B)」に相当するものと解することができ、両層の「重畳層」を有している点でも一致するものと認められる。加えて、引用発明においては、「A層厚さは0.1mm、B層厚さは0.05mm」であるところ、両層を合わせた厚みは0.15mm(150μm)、A層の厚みとB層の厚みとの比A/Bは0.1/0.05=2.0と計算されるから、本件発明1における「粘着シートの最大厚み部分の厚みが200μm以下」及び「粘着剤層(A)の厚みと粘着剤層(B)の厚みとが(A)/(B)>1.0」という要件も満足する。そうすると、両者は、 「画像表示装置構成部材と、他の画像表示装置構成部材とを貼合するために用いられる画像表示装置用透明両面粘着シートであって、粘着シートの最大厚み部分の厚みが150μmであって、少なくとも粘着剤層(A)及び粘着剤層(B)の重畳層を有し、粘着剤層(A)の厚みと粘着剤層(B)との厚みとが(A)/(B)=2.0の関係を満たす、画像表示装置用透明両面粘着シート。」の点で一致し、 相違点1:貼合される画像表示装置構成部材について、本件発明1においては段差部及び平坦面部を貼合面に有する画像表示装置構成部材と、他の画像表示装置構成部材であることが特定されているのに対し、引用発明においてはそのように特定されていない点 相違点2:少なくとも粘着剤層(A)が、本件発明1においては熱又は紫外線による硬化性を有することが特定されているのに対し、引用発明においてはそのように特定されていない点 相違点3:押し込み硬度(C2アスカー硬度)が、本件発明1においては40以上50未満であることが特定されているのに対し、引用発明においてはそのようなことが特定されていない点 で相違する。そこで、上記相違点について検討する。 (イ)相違点3について 事案に鑑みて、まず相違点3について検討する。 本件特許明細書の[0043]には、「本粘着シートは、押し込み硬度(C2アスカー硬度)が40以上50未満であることが好ましく、43以上47未満であることがより好ましい。押し込み硬度が、40以上であることにより、十分な粘着力と凝集力を有することになり、また50未満であることにより、硬すぎて段差追随性に劣るなどの懸念をなくすことができる。 本粘着シートにおいて、押し込み硬度は、粘着剤層(A)の厚みを粘着剤層(B)に対して厚くすること、すなわち粘着剤層(A)の比率を大きくすることで、その値を小さく調整することができる。」と記載されており、実際、本件特許明細書の[0076]表1には、C2アスカー硬度が45である実施例1の粘着シートが加工・保管安定性、印刷段差追随性、耐発泡性及び総合評価において優れたものであったことが記載されているから、本件発明1において、押し込み硬度(C2アスカー硬度)の数値範囲が40以上50未満に特定されていることにより、十分な粘着力と凝集力を有し、かつ、硬すぎて段差追随性に劣るなどの懸念もないという好ましい効果がもたらされるものと理解することができ、かつ、そのような調整が実施可能であることも裏付けられている。 これに対して、甲第2号証には粘着シートの押し込み硬度(C2アスカー硬度)について何ら記載されておらず、出願時の技術常識を考慮しても、甲第2号証の実施例1(摘記2-10)に記載された粘着剤層を構成する成分や架橋の条件から、引用発明の粘着シートのC2アスカー硬度を導き出すことはできない。 また、甲第2号証に記載された引用発明(実施例1)の粘着シートを製造するためのA層形成用粘着シートは、構成成分(アクリル酸エステル共重合体ポリマー(1)、架橋モノマー(A)及び光開始剤(2,4,6-トリメチルベンゾフェノンと4-メチルベンゾフェノンの混合品)と配合量比、層の厚み(100μm)及び架橋条件(片面積算光量2000mJ/cm2、波長365nm換算)(摘記2-10の[0069]、[0072])の点で、本件特許明細書に記載された実施例1の透明両面粘着シートの作製において用いられた粘着剤層(A)を構成する感圧粘着剤用組成物(A-1)の構成成分(アクリル酸エステル共重合体A、架橋モノマーは添加せず、光重合開始剤は4-メチルベンゾフェノン)と配合量比、層の厚み(60μm)及び架橋条件(紫外線照射していない)(本件特許明細書[0062])とは異なっており、甲第2号証に記載された引用発明(実施例1)の粘着シートを製造するためのB層形成用粘着シートも、構成成分(アクリル酸エステル共重合体ポリマー(2)、架橋モノマー(A)及び光開始剤(2,4,6-トリメチルベンゾフェノンと4-メチルベンゾフェノンの混合品)と配合量比、層の厚み(50μm)及び架橋条件(片面積算光量1000mJ/cm2、波長365nm換算)(摘記2-10の[0070]、[0072])の点で、本件特許明細書に記載された実施例1の透明両面粘着シートの作製において用いられた粘着剤層(B)を構成する感圧粘着剤用組成物(B-1)の構成成分(アクリル酸エステル共重合体A、架橋剤はトリメチロールプロパントリアクリレート、光重合開始剤は1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン)と配合量比、層の厚み(30μm)及び架橋条件(紫外線照射していない)(本件特許明細書[0063])とは異なっており、さらに、甲第2号証に記載された引用発明(実施例1)の粘着シートを製造するために、A層形成用粘着シートとB層形成用粘着シートを貼り合わせた後、再度光線照射して架橋させる工程についても、層構成(A層/B層の二層)及び架橋条件(離型PET越しに片面の積算光量1000mJ/cm2を表裏両面から照射)(摘記2-10の[0071])の点で、本件特許明細書に記載された実施例1の透明両面粘着シートの作製工程で採用された層構成(感圧粘着剤層(A-1)/中間樹脂層(B-1)/感圧粘着剤層(A-1))の三層に共押出)及び架橋条件(多層シートの一方のポリエチレンテレフタレートフィルム側から、積算光量1000mJ/cm2を照射)(本件特許明細書[0064])とは異なっているから、引用発明の粘着シートが本件発明1の実施例に相当する具体例と物として同一であるとはいえず、したがって、両者がC2アスカー硬度等の諸物性において一致している蓋然性が高いと解することもできない。 加えて、甲第2号証においては、貼合される画像表示装置構成部材が段差部を貼合面に有するものであることが特定されておらず、このため、当該段差部の存在に由来する「印刷段差追随性」及び「耐発泡性」の評価も行われていないから、引用発明が本件発明1と同様の効果を奏するものであるかどうかも確認できない。 そうすると、相違点3は形式的な相違点であるということはできず、本件発明1と引用発明とは、少なくとも相違点3において実質的に相違するものと認められる。よって、相違点1及び2について検討するまでもなく、本件発明1は甲第2号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当しない。 (ウ)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人鯨田雅信は、特許異議申立書の第20頁において、「甲第2号証の実施例1(段落0069~0072)で作製された粘着剤組成物の組成は、本件特許発明の実施例で用いた粘着剤組成物の組成とほぼ同様である。具体的には、甲第2号証の実施例1で作製されたアクリル酸エステル共重合体ポリマー(2)の組成は、2-エチルヘキシルアクリレート:77質量%、アクリル酸:4質量%、酢酸ビニル:19質量%であり(甲第2号証の段落0072)、本件特許発明の実施例で作製された感圧粘着剤用組成物の組成は、2-エチルヘキシルアクリレート75質量部と、酢酸ビニル20質量部と、アクリル酸5質量部(本件の特許明細書の段落0062)であり、ほぼ同一の組成となっている。また、他の層に用いられる粘着材組成物の組成にも大差がない。 このため、本件特許発明の実施例で形成される粘着シートの物性と、甲第2号証の実施例1で形成される粘着シートの物性も同様であるものと考えられる。また、特徴的な構成である発明特定事項(A)~(E)(当審注:本件発明1の発明特定事項のうち、「押し込み硬度(C2アスカー硬度)が40以上50未満である」という発明特定事項(F)を除いた、残りすべての発明特定事項に当たる。)や粘着剤組成物の組成を本件の特許明細書に記載のもの同等のものとすれば当然に発明特定事項(F)を満たすものとなる。すなわち、甲第2号証の実施例1では、押し込み硬度(C2アスカー硬度)が40以上50未満である積層粘着シートが得られていると言える。このため、本件特許発明1の発明特定事項(F)も甲第2号証に記載されている。 よって、本件特許発明1は、甲第2号証に記載の発明であるか、甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到できた発明である。」と主張している。 しかしながら、上記6.(2)ア(イ)「相違点3について」において検討したとおり、甲第2号証の実施例1(段落0069~0072)で作製されたA層形成用粘着シート及びB層形成用粘着シートの粘着剤組成物の組成が、本件発明の実施例1で用いられた感圧粘着剤用組成物(A-1)及び中間樹脂層用組成物(B-1)の組成と「ほぼ同一の組成」であるとはいえないから、特許異議申立人の主張は採用できない。また、透明両面粘着シートの押し込み硬度(C2アスカー硬度)は、当該粘着シートを構成する単層の粘着剤組成物の化学的組成だけで決まるものではなく、層構成の違い(二層/三層)や、架橋条件によっても変化するから、「特徴的な構成である発明特定事項(A)~(E)や粘着剤組成物の組成を本件の特許明細書に記載のもの同等のものとすれば当然に発明特定事項(F)を満たすものとなる。」という主張も採用できない。 なお、特許異議申立人は、上記の主張において、「具体的には、甲第2号証の実施例1で作製されたアクリル酸エステル共重合体ポリマー(2)の組成は・・・であり(甲第2号証の段落0072)、本件特許発明の実施例で作製された感圧粘着剤用組成物の組成は・・・(本件の特許明細書の段落0062)であり」という対比を行っているので、引用発明(甲第2号証の実施例1)における「B層形成用粘着シート」及び「B層」が、それぞれ本件発明1の実施例1における「感圧粘着剤用組成物(A-1)」及び「感圧粘着剤層(A-1)」に相当し、引用発明(甲第2号証の実施例1)における「A層形成用粘着シート」及び「A層」が、それぞれ本件発明1の実施例1における「感圧粘着剤用組成物(B-1)」及び「感圧粘着剤層(B-1)」に相当すると主張しているように見受けられる。しかし、引用発明(甲第2号証の実施例1)及び本件発明1の実施例1の各層の構成は、それぞれ上記6.(2)ア(イ)「相違点3について」に記載したとおりであるから、各層の対応関係が特許異議申立人の主張するとおりであるとして検討しても、各層の組成がそれぞれ「ほぼ同一の組成」であるとはいえないし、透明両面粘着シートの押し込み硬度(C2アスカー硬度)は、層構成の違い(二層/三層)や、架橋条件によっても変化するから、特許異議申立人の主張は採用できない。また、特許異議申立人の主張するA層及びB層の対応関係を採用すると、層の厚みの比が、引用発明においてはB層厚さ/A層厚さ=0.05/0.1=0.5と計算されることになるから、本件発明1における「粘着剤層(A)の厚みと粘着剤層(B)との厚みとが(A)/(B)=2.0」という要件を満たさないこととなり、新たな相違点を生じることになるから、この点からも、「本件特許発明1は、甲第2号証に記載の発明である」との特許異議申立人の主張は採用できない。 イ 本件発明2~6について 本件発明2~6は、いずれも本件発明1を直接又は間接的に引用する発明であるから、本件発明1と同じ理由により、いずれも特許法第29条第1項第3号には該当しない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1~6が特許法第29条第1項第3号に該当する旨の特許異議申立理由(2)は、理由がないものである。 (3)特許法第29条第2項について ア 本件発明1について (ア)本件発明1と引用発明との対比 本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、上記6.(2)ア(ア)「本件発明1と引用発明との対比」に記載したとおりである。 (イ)相違点3について 事案に鑑みて、まず相違点3について検討する。 甲第2号証には粘着シートの押し込み硬度(C2アスカー硬度)について何ら記載されていない。また、引用発明が解決しようとする課題は、粘着シートを介してPDP等のディスプレイパネルに光学フィルムを貼り合わせたときに、画面表面(光学フィルムの表面)を指などで押圧しても変形し難く、且つ変形しても凹みが回復し易いばかりか、被着面であるディスプレイパネル表面に埃等の異物が存在したとしても、視認可能な気泡の発生を抑えることができる(摘記2-2)という粘着シートを提供することにあるものと解されるが、粘着シートの押し込み硬度(C2アスカー硬度)を特定の範囲に調整することが、上記のような貼り合わせ物における凹み回復性と異物取り込み性の両方を兼ね備えた粘着シートを提供するという課題の解決につながるということは記載も示唆もされていないし、粘着シートの押し込み硬度(C2アスカー硬度)を指標として、上記のような凹み回復性や異物取り込み性を調整できることが、本願出願時において周知の技術的事項であったとも認められない。 さらに、本件発明1は、「段差部及び平坦面部を貼合面に有する画像表示装置構成部材」を貼合対象としており、解決しようとする課題の一つとして段差追随性(本件特許明細書[0043])を有するものであるのに対し、甲第2号証においては、引用発明の粘着シートにより貼合される画像表示装置構成部材が段差部を貼合面に有するものであることが特定されておらず、本件特許明細書に記載されたような、当該段差部の存在に由来する「印刷段差追随性」及び「耐発泡性」の評価も行われていないから、引用発明は本件発明1と同様の効果を奏するものであるかどうかも確認できない。そうすると、本件発明1は、上記相違点3に係る事項を備えることにより、甲第2号証には記載されていない有利な効果を奏するものと解することができる。 よって、相違点1及び2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、特許法第29条第2項の規定には違反していない。 (ウ)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人鯨田雅信は、特許異議申立書の第20頁において、6.(2)ア(ウ)「特許異議申立人の主張について」に引用したとおりの主張をしており、概ね、「甲第2号証の実施例1(段落0069~0072)で作製された粘着剤組成物の組成は、本件特許発明の実施例で用いた粘着剤組成物の組成とほぼ同様である。」ことを主な理由として、「本件特許発明1は、・・・甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到できた発明である。」と主張している。 しかしながら、上記6.(2)ア(イ)「相違点3について」及び6.(2)ア(ウ)「特許異議申立人の主張について」において検討したとおり、甲第2号証の実施例1(段落0069~0072)で作製されたA層形成用粘着シート及びB層形成用粘着シートの粘着剤組成物の組成が、本件発明の実施例1で用いられた感圧粘着剤用組成物(A-1)及び中間樹脂層用組成物(B-1)の組成と「ほぼ同一の組成」であるとはいえないから、特許異議申立人の主張は採用できないものであるし、また、上記6.(3)ア(イ)「相違点3について」において検討したとおり、甲第2号証には粘着シートの押し込み硬度(C2アスカー硬度)を調整する動機付けとなる記載がなく、それにより段差追随性等の課題を解決するという有利な効果が得られることについての記載もないから、特許異議申立人の主張は採用できない。 イ 本件発明2~6について 本件発明2~6は、いずれも本件発明1を直接又は間接的に引用する発明であるから、本件発明1と同じ理由により、いずれも特許法第29条第2項の規定には違反していない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1~6が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨の特許異議申立理由(3)は、理由がないものである。 7.むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700313

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