特許異議申立
2016-700278
液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法
- 審判番号
- 2016-700278
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-062338外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年04月06日
- 審決日
- 2017年02月01日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(D06M) / P1651.121-YAA(D06M) / P1651.536-YAA(D06M) / P1651.537-YAA(D06M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5792487号発明「液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5792487号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
特許第5792487号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5792487号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成23年3月22日に特許出願され、平成27年8月14日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人鎌田和弘(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成28年6月20日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年8月12日(受付日)に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正」という。また、本件訂正に係る請求を、「本件訂正請求」という。)があり、本件訂正請求に対して申立人から平成28年9月16日(受付日)に意見書が提出されたものである。さらに、平成28年11月1日付けで審尋がなされ、その指定期間内の平成28年12月16日(受付日)に特許権者から回答書が提出され、平成28年12月21日(受付日)に申立人から回答書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に
「前記香料組成物として下記(b)成分を前記液体柔軟剤組成物中の含有量が0.2~3質量%となるように用いる」
とあるのを、
「前記香料組成物として下記(b)成分を前記液体柔軟剤組成物中の含有量が0.8~3質量%となるように用いる」
と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項
本件訂正は、(b)成分の液体柔軟剤組成物中の含有量について、本件訂正前は、「0.2~3質量%」であったものを、「0.8~3質量%」と、数値範囲を狭めるのものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
さらに、本件特許明細書の段落【0087】の【表1】には、「液体柔軟剤組成物(質量%)」の「(b)成分」として、「組成1」ないし「組成3」について「0.8%」と記載されている。そうすると、本件訂正は、訂正前の(b)成分の数値範囲の下限を、上記【表1】記載のものとしたものであるから、本件訂正は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてしたものである。
そして、特許請求の範囲の拡張や変更をするものではないことは明らかである。
本件訂正は、請求項1と、請求項1を直接あるいは間接に引用する請求項2ないし6を対象とするものであるから、本件訂正は、一群の請求項に対して請求されたものである。
3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1-6〕について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1.本件発明1
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし6に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6にそれぞれ記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
下記(a)成分、香料組成物及び水を含有する液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法であって、前記香料組成物として下記(b)成分を前記液体柔軟剤組成物中の含有量が0.8~3質量%となるように用いる、液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法。
(a)成分;窒素原子に結合する基のうち1~3個が、エステル基又はアミド基で分断されている総炭素数14~22の炭化水素基であり、残りが炭素数1~3のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基である第3級アミン、その酸塩及びその4級化物から選ばれる1種以上の化合物
(b)成分:下記(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分を含有し、(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/(b2)成分]が0.2~1であり、(b3)成分の質量と、(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の合計質量の比[(b3)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分〕]が0.6~0.95である、香料組成物
(b1)成分:1分子の総炭素数が8~10のアルコール香料
(b2)成分:1分子の総炭素数が12~16のアルコール香料
(b3)成分:logPが2.8~9.0の香料成分(但し、アルコール香料を除く)
【請求項2】
前記液体柔軟剤組成物がアルコール香料に感受性である、請求項1に記載の液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法。
【請求項3】
前記(b2)成分が、1分子の炭素数13~15で、且つ脂肪族アルコール、脂環式アルコール香料及び分子内に2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル基を有するアルコール香料から選ばれるアルコール香料から選ばれる1種以上のアルコール香料である、請求項1又は2に記載の液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法。
【請求項4】
前記(b3)成分が、logP3.0~6.0の香料成分である、請求項1~3の何れかに記載の液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法。
【請求項5】
更に下記(c)成分を液体柔軟剤組成物に含有させる、請求項1~4の何れかに記載の液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法。
(c)成分:分子内にカチオン性基を含有するポリマー
【請求項6】
液体柔軟剤組成物中の(a)成分の含有量が15~25質量%である、請求項1~5の何れかに記載の液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法。」
2.当事者が提出した証拠及び取消理由の概要
当事者が提出した証拠はいずれも書証であり、以下のとおりである。
[申立人提出]
○特許異議申立書に添付
・甲1:特開2009-150036号公報
・甲2:特表平10-507793号公報
・甲3:特開平11-81134号公報
・甲4:特開平10-219566号公報
・甲5:特開2002-285474号公報
・甲6:特開2005-82924号公報
・甲7:特開2009-144268号公報
○平成28年12月21日付け回答書に添付
・甲8:吉村壽次編、「化学辞典 第2版」、森北出版株式会社、平成21年12月16日第2版第1刷発行、表紙、63及び64ページ及び438ページ、並びに、奥付
・甲9:中島基貴編著、「香料と調香の基礎知識」、産業図書株式会社、平成27年4月3日第7刷発行、表紙、92及び93ページ、126ないし165ページ、並びに、奥付
[特許権者提出]
○平成28年8月10日付け意見書に添付
・乙1:「特許庁公報 11(1999)-6 〔7216〕 周知・慣用技術集(香料) 第I部 香料一般」、日本国特許庁、平成11年1月29日発効、表紙、24ないし27ページ、230ないし241ページ、並びに、裏表紙
○平成28年12月15日付け回答書に添付
・乙2:中島基貴編著、「香料と調香の基礎知識」、産業図書株式会社、平成27年4月3日第7刷発行、
表紙、目次vi及びviiページ、126ないし155ページ、210ないし247ページ
・乙3:「特許庁公報 11(1999)-6 〔7216〕 周知・慣用技術集(香料) 第I部 香料一般」、日本国特許庁、平成11年1月29日発効、表紙、1及び2ページ、並びに、裏表紙
本件訂正前の請求項1ないし6に係る特許に対して、上記平成28年6月20日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。
(なお、甲第○号証を、以下「甲○」という。甲第○号証に記載された発明及び事項を、以下、それぞれ「甲○発明」及び「甲○事項」という。)
(1)【理由1】特許法第36条第4項第1号
ア.請求項2に記載された「アルコールに感受性である」について、本件特許明細書には、どのような組成物であれば「アルコールに感受性である」のか否かが明らかではない。したがって、当業者が請求項2に係る発明を実施しようとした場合に、どのように実施するかを理解できない。
イ.請求項5に記載された「分子内にカチオン性基を含有するポリマー」について、本件特許明細書には、「カチオン性基」が具体的にどのような置換基を含むものであるかが、記載されていないので、当業者が請求項5に係る発明を実施しようとした場合に、どのように実施するかを理解できない。
(2)【理由2】特許法第36条第6項第1号
ア.請求項1に定義する(b1)、(b2)及び(b3)のすべての化合物の組み合わせにおいて粘度増加抑制効果が生じるかどうかについては不明であり、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
イ.請求項5に記載された「分子内にカチオン性基を含有するポリマー」の詳細について、具体的な記載がないから、請求項5の記載は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。
(3)【理由3】特許法第36条第6項第2号
請求項1に記載された「増粘抑制」は、本件特許明細書に定義がなく、本件特許明細書の記載や出願時の技術常識を考慮しても、当該語の意味内容を当業者が理解できない。
(4)【理由4】特許法第29条第1項第3号
本件発明1ないし4及び6は、甲1発明、甲2発明、あるいは甲3発明のいずれかと同一である。
(5)【理由5】特許法第29条第2項
ア.本件発明2ないし4は、甲1発明、甲2発明あるいは甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ.本件発明5及び6は、甲1発明、甲2発明、甲3発明、及び、例えば甲4ないし7に記載された従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3.甲号証の記載
(1)甲1
甲1には、段落【0038】、【0040】、【0042】、【0047】、【0059】の記載があり、これらの記載から、甲1には、以下の甲1発明が記載されていると認める。
「下記a-1~a-3成分、c-2成分、およびイオン交換水を含む液体柔軟製組成物を用いる方法
c-2成分は1.8質量%または3質量%である。
a-1成分:牛脂脂肪酸およびパーム油由来脂肪酸の混合物とトリエタノールアミンとの反応により得られた第4級アンモニウム塩混合物
a-2成分:牛脂脂肪酸およびパーム油由来脂肪酸の混合物とN-メチルジエタノールアミンとの反応により得られた第4級アンモニウム塩混合物
a-3:ステアリン酸及びパルミチン酸の混合物とN-(3-アルカノイルアミノプロピル)-N-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルアミンとの反応により得られた第4級アンモニウム塩混合物
エストラゴール(20質量%)、イソブチルサリシレート(20質量%)、ベンジルサリシレート(20質量%)、テンタローム(20質量%)、およびオイゲノール(20質量%)を含むc-2成分」
(2)甲2
甲2には、【特許請求の範囲】の「1.」、10ページ下から9行ないし11ページ3行、17ページ下から12ないし10行、53ページ1行ないし54ページ6行、55ページ下から7行ないし56ページ下から7行、56ページ下から6行ないし57ページ11行、58ページ下から12行ないし59ページ7行、60ページ1ないし3行、60ページ13及び14行の記載があり、これらの記載から、甲2には、香料Aを用いた甲2発明(以下、「甲2発明A」という。)と香料Bを用いた甲2発明(以下、「甲2発明B」という。)がそれぞれ記載されていると認める。
ア.甲2発明A
「下記エステル四級物、下記香料A、および脱イオン水を含む液体柔軟剤組成物を用いる方法であって、
以下の香料Aは、0.40重量%~1.35重量%含まれる。
ジ(ソフトタロウオイルオキシエキル)ジメチルアンモニウムクロリド、ジ(タロウオイルオキシエチル)(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルサルフェート、1,2-ジ(硬化タロウオイルオキシ)-3ートリエチルアンモニウムプロパンクロリド
香料A:サリチル酸ベンジル(20重量%)、エチレンブラシレート(20重量%)、ガラキソリドー50%(20重量%)、ヘキシルシンナムアルデヒド(20重量%)、及びテトラヒドロリナロール(20重量%)を含む。」
イ.甲2発明B
「下記エステル四級物、下記香料B、および脱イオン水を含む液体柔軟剤組成物を用いる方法であって、
以下の香料Bは、0.40重量%~1.35重量%含まれる。
ジ(ソフトタロウオイルオキシエキル)ジメチルアンモニウムクロリド、ジ(タロウオイルオキシエチル)(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルサルフェート、1,2-ジ(硬化タロウオイルオキシ)-3-トリエチルアンモニウムプロパンクロリド
香料B:酢酸ベンジル(4重量%)、サリチル酸ベンジル(12重量%)、クマリン(4重量%)、エチレンブラシレート(10重量%)、ガラキソリドー50%(10重量%)、ヘキシルシンナムアルデヒド(20重量%)、リリアール(15重量%)、メチルジヒドロイソジャスモネート(5重量%)、γ-n-メチルヨノン(10重量%)、パチョリアルコール(4重量%)、およびテトラヒドロリナロール(6重量%)を含む。」
(3)甲3
甲3には、段落【請求項1】、【0063】及び【0064】、【0074】、【0077】、【0081】、【0082】の記載があり、これらの記載から、甲3には、以下の甲3発明が記載されていると認める。
「下記a2、a9、a7、またはジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムクロライド、成分d2、および水を含む柔軟剤組成物
成分d2は0.003~0.3重量%含まれる。
a2:R2=R3=パームステアリン酸残基、R1=メチル基、a7:R2=R3=オレイン酸残基、R1=メチル基、4級化剤=ヨウ化メチル、a9:R2=R3=硬化牛脂脂肪酸残基、R1=メチル基、4級化剤=ヨウかメチル、ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムクロライド
成分d2:オレンジオイル(25重量%)、メチルイオノン-β(15重量%)、アセチルセドレン クール-T(10重量%)、p-t-ブチルシクロヘキシルアセテート(15重量%)、合成サンダル(7重量%)、ユーカリプトール(7重量%)、アニスアルデヒド(5重量%)、サンダルマイソール コア(5重量%)、ヘリオナール(4重量%)、バニリン(3重量%)、エチルバニリン(3重量%)、ダマスコン(0.5重量%)、アルデヒドC-16ストロベリー(0.5重量%)」
4.判断
(1)【理由1】について
ア.本件特許明細書の段落【0089】ないし【0091】には、「アルコール香料に対する液体柔軟剤組成物の感受性の評価方法」が実施例として記載され、かつ、得られた測定値である「粘度測定値」を代入するための「算出式(1)」や、得られた値に対して「アルコール香料に感受性である」か否かを判定するための閾値である「3.0」が記載されている。
そうすると当業者であれば、上記本件特許明細書記載の「評価方法」を適用し、得られた測定値の「3.0」との大小関係をみることで、アルコール香料に感受性であるか否かが把握できることは明らかである。
したがって、本件特許明細書には、本件特許の請求項2に記載された「アルコールに感受性である」について、当業者が請求項2に係る発明の実施をすることができる程度に記載されていない、とまでいうことはできない。
イ.本件特許明細書の段落【0053】ないし【0072】には、「カチオン性基を含有するポリマー」として具体的な物質が記載されている。
したがって、当業者であれば、ポリマーを、当該具体的な物質の中から選択することで、過度な試行錯誤を強いられることなく請求項2に係る発明を実施することができると解されるから、本件特許明細書の記載が、請求項2に係る発明を実施することができる程度に記載されていない、とまでいうことはできない。
(2)【理由2】について
ア.本件発明1の課題は、「・・・爽やかでフレッシュ感のある香りを衣類に賦与するために液体柔軟剤組成物にアルコール香料を用いるにあたって、30度近傍での保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘を抑制する方法を提供する・・・」(本件特許明細書、段落【0007】)であるところ、本件発明1の特定事項である「(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/(b2)成分]が0.2~1であり、(b3)成分の質量と、(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の合計質量の比[(b3)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分〕]が0.6~0.95」と特定されている。
これについて、本件特許明細書には、
「【0045】
詳細には、30℃近傍の保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘を抑制するにあたり、(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/( 詳細には、30℃近傍の保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘を抑制するにあたり、(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/(b2)成分]は0.2~1であることが重要である。30℃近傍の保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘を更に抑制する観点から、(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/(b2)成分]は、好ましくは0.25~0.9、より好ましくは0.3~0.8であることが好適である。
【0046】
30℃近傍の保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘を抑制しつつ、衣類に爽やかでフレッシュな香りを賦与するにあたり、(b3)成分の質量と、(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の合計質量の比[(b3)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分〕]は0.6~0.95であることが重要である。30℃近傍の保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘抑制効果を更に高める観点から、(b3)成分の質量と、(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の合計質量の比[(b3)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分〕]は0.65以上が好ましく、0.7以上がより好ましい。衣類により爽やかでフレッシュな香りを賦与する観点から、かかる質量比は0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましい。」と記載されている。
さらに、具体的な実施例として化合物の組み合わせを変えた実施例1ないし9を示し、「(b1)成分/(b2)成分」の例として、「0.7」と「0.85」、「(b3)成分/(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分」の例として、「0.6」、「0.75」、「0.9」の場合につき効果を確認している。
すると、本件発明1のすべての化合物の組み合わせについて、実施例により確認されていなくとも、当業者であれば、異なる化合物の組み合わせでも、本件発明1に特定された質量比を満たせば本件の課題を解決できると認識し得るものといえるから、本件発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明である。
また、本件発明5についても、上記課題を解決するものであるから、本件発明5は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明ではない、ということはできない。
(3)【理由3】について
本件特許明細書の
「【0093】
<増粘抑制効果の評価>
得られた液体柔軟剤組成物の初期粘度並びに30℃で20日間保存後の粘度を、前記粘度測定法に従って測定した。ここで、30℃で20日間の保存は、液体柔軟剤組成物を、30±3℃に調温された恒温槽で20日間保存することにより実施した。
初期粘度及び保存後の粘度の測定値を下記式に代入し、増粘度の値を求めた。この評価方法においては、増粘度の値が2.5以下であれば合格と判定する。増粘度の値は、より好ましくは2.0未満、更に好ましくは1.5以下である。
増粘度=〔保存後の粘度(mPa・s)〕/〔初期粘度(mPa・s)〕」
との記載から、異なる2時点(初期と保存後)の「粘度」のうち、未来の時点である「保存後」の「粘度」を分子とし、過去の時点である「初期」の「粘度」を分母として、「増粘度」定義しているから、本件特許明細書に記載された「増粘」とは、「粘度」が時間の経過とともに増加することをいうのは、文意から明らかである。そして、「増粘抑制」とは、「増粘」を「抑制」するのであるから、上記「粘度」の増加を「抑制」、すなわち、「粘度」の増加幅を小さくするものであることは、本件特許明細書の上記記載から当業者に理解できる。
(4)【理由4】について
ア.甲1発明との同一性について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は、香料成分として下記(b)成分を液体柔軟剤組成物中の含有量が0.8~3質量%となるように用いる、
(b)成分:下記(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分を含有し、(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/(b2)成分]が0.2~1であり、(b3)成分の質量と、(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の合計質量の比[(b3)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分〕]が0.6~0.95である、香料組成物
(b1)成分:1分子の総炭素数が8~10のアルコール香料
(b2)成分:1分子の総炭素数が12~16のアルコール香料
(b3)成分:logPが2.8~9.0の香料成分(但し、アルコール香料を除く)
ものであるのに対し、
甲1発明の、c-2成分のエストラゴール、テンタローム、オイゲノールは、それぞれ上記本件発明1の(b)の各成分のb3、b3,b1に該当する(なお、この点、特許権者は争わない。特許権者回答書2ページ5ないし9行)ものの、ベンジルサリシレート(サリチル酸ベンジル)が、「1分子の総炭素数が12~16のアルコール香料」であるか否か、すなわち、本件発明1の上記「(b2)成分」であるか否かが明らかではない点。
(イ)判断
「ベンジルサリシレート(サリチル酸ベンジル)」が「1分子の総炭素数が12~16のアルコール香料」であるか否かについて、
甲8には、「アルコール」の一般的な定義が、「炭化水素の水素原子をヒドロキシ基で置換した化合物で、一般式ROHで表される.ただし、ヒドロキシ基がベンゼン環の炭素に直接結合したフェノール類はアルコール類には入らない.・・・」(63ページ、「アルコール」の欄)との記載があり、
甲9には、「分子構造とにおいの間にはある程度の相関性が認められている。」(93ページ3及び4行)とともに、同ページの「表5.1 主な発香団」において、有効物質が「アルコール」、「フェノール」及び「エステル」の発香団が、それぞれ「-OH」、「-OH」及び「-COOR」である旨、記載されている。そして、甲9の「6.2 アルコール」(127ないし154ページ)には、香料として、主に用いられるアルコールが記載されているところ、「ベンジルサリシレート(サリチル酸ベンジル)」は記載されていない。一方の甲9と刊行物としては同一である乙2の「6.7 エステル」(211ないし247ページ)には、香料として用いられるエステルが、記載されているところ、そのうちの1つとして、「(3)サリチル酸ベンジル」(242ページ)との記載がある。
乙1には、「マスキング剤(消臭・脱臭・防臭・除臭)として使用される主な香料及び香料関連物質」が列挙された【表1】に「サリチル酸ベンジル」が「芳香族エステル類」の欄に記載されている(238ページ)。一方、「サリチル酸ベンジル」は、「テルペン系アルコール類」、「脂肪族鎖状アルコール類」、「脂肪族脂環式アルコール類」を含む、他の欄には記載されていない。
よって、「ベンジルサルシレート(サリチル酸ベンジル)」が、「アルコール香料」であると認めるに足る証拠はなく、甲1発明の「ベンジルサリシレート」が本件発明1の「(b2)成分」に相当するとはいえない。
そうすると、上記相違点は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明と同一ではない。
申立人は、平成28年12月21付け回答書において、甲8及び9の上記それぞれの摘記事項から、「香料の分野では、アルコール類とフェノール類を区別せず、『アルコール香料は、発香団であるヒドロキシル基を芳香環に直接置換したフェノール類を含む、ヒドロキシル基を有する香料化合物である』と解される。」(3ページ下から4ないし1行)と主張している。
しかし、乙2には、ヒドロキシル基を有する香料化合物として、236ないし237ページにジヒドロキシジメチル安息香酸メチルが記載され、240ないし242ページにサリチル酸エステルとしてサリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸イソブチル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸知る-3-ヘキセニル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸フェニルエチルがそれぞれ記載されている。そしてこれらは全てエステルとして記載されている。
そうすると、「ベンジルサリシレート(サリチル酸ベンジル)」は、ヒドロキシル基を有するものではあるものの、エステルの欄に記載され、アルコールの欄には記載されていないことから、香料の分野において、一概に「ベンジルサリシレート(サリチル酸ベンジル)」は、エステル香料に分類される上、アルコール香料にも分類されるものでもあるということはできない。
(ウ)本件発明2ないし4及び6について
本件発明2ないし4及び6のそれぞれは、本件発明1の特定事項の全てを包含しさらに本件発明1を限定したものである。
上記(イ)に示したとおり、本件発明1と甲1発明は、少なくとも上記相違点1で実質的に相違するから、本件発明1から上記限定を省いた本件発明2ないし4及び6も、甲1発明と同一ではない。
イ.甲2発明との同一性について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明Aとを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点2>
本件発明1は、香料成分として下記(b)成分を液体柔軟剤組成物中の含有量が0.8~3質量%となるように用いる、
(b)成分:下記(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分を含有し、(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/(b2)成分]が0.2~1であり、(b3)成分の質量と、(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の合計質量の比[(b3)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分〕]が0.6~0.95である、香料組成物
(b1)成分:1分子の総炭素数が8~10のアルコール香料
(b2)成分:1分子の総炭素数が12~16のアルコール香料
(b3)成分:logPが2.8~9.0の香料成分(但し、アルコール香料を除く)
ものであるのに対し、
甲2発明Aの、香料Aを構成する、エチレンブラシレート、ガラキソリドー50%、ヘキシルシンナムアルデヒド、テトラヒドロリナロールは、それぞれ上記本件発明1の(b)の各成分のb3、b3、b3、b1に該当する(なお、この点、特許権者は争わない。特許権者回答書4ページ4及び5行)ものの、ベンジルサリシレート(サリチル酸ベンジル)が、「1分子の総炭素数が12~16のアルコール香料」であるか否か、すなわち、本件発明1の上記「(b2)成分」であるか否かが明らかではない点。
また、本件発明1と甲2発明Bとを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点3>
本件発明1は、香料成分として下記(b)成分を液体柔軟剤組成物中の含有量が0.8~3質量%となるように用いる、
(b)成分:下記(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分を含有し、(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/(b2)成分]が0.2~1であり、(b3)成分の質量と、(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の合計質量の比[(b3)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分〕]が0.6~0.95である、香料組成物
(b1)成分:1分子の総炭素数が8~10のアルコール香料
(b2)成分:1分子の総炭素数が12~16のアルコール香料
(b3)成分:logPが2.8~9.0の香料成分(但し、アルコール香料を除く)
ものであるのに対し、
甲2発明Bの、香料Bを構成する、エチレンブラシレート、ガラキソリドー50%、ヘキシルシンナムアルデヒド、リリアール、γ-n-メチルヨノン、パチョリアルコール、テトラヒドロリナロールは、それぞれ上記本件発明1の(b)の各成分のb3、b3、b3、b3、b3、b2、b1に該当する(なお、この点、特許権者は争わない。特許権者回答書4ページ4及び5行)ものの、ベンジルサリシレート(サリチル酸ベンジル)が、「1分子の総炭素数が12~16のアルコール香料」であるか否か、すなわち、本件発明1の上記「(b2)成分」であるか否かが明らかではない点。
(イ)判断
上記ア.(イ)に示したとおり、「サリチル酸ベンジル(ベンジルサリシレート)」は、「(b2)成分:1分子の総炭素数が12~16のアルコール香料」に相当するとは認められない。
そうすると、甲2発明Aは、「(b2)成分」を含まない。
また、甲2発明Bは、b1/b2の値は、1.5となるから、本件発明1で特定された「0.2~1」の範囲のものではない。
したがって、上記相違点2及び3は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2発明A及び甲2発明Bのいずれのものとも同一ではない。
(ウ)本件発明2ないし4及び6について
本件発明2ないし4及び6のそれぞれは、本件発明1の特定事項の全てを包含しさらに本件発明1を限定したものである。
上記(イ)に示したとおり、本件発明1と、甲2発明Aあるいは甲2発明Bは、それぞれ上記相違点2あるいは相違点3において、少なくとも実質的に相違するから、本件発明1をさらに限定した本件発明2ないし4及び6も、甲2発明Aあるいは甲2発明Bと同一ではない。
ウ.甲3発明との同一性について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点4>
本件発明1は、香料成分として下記(b)成分を液体柔軟剤組成物中の含有量が0.8~3質量%となるように用いる、
(b)成分:下記(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分を含有し、(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/(b2)成分]が0.2~1であり、(b3)成分の質量と、(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の合計質量の比[(b3)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分〕]が0.6~0.95である、香料組成物
(b1)成分:1分子の総炭素数が8~10のアルコール香料
(b2)成分:1分子の総炭素数が12~16のアルコール香料
(b3)成分:logPが2.8~9.0の香料成分(但し、アルコール香料を除く)
ものであるのに対し、
甲3発明の香料成分であるd2が、0.003~0.3重量%である点。
(イ)判断
甲3発明の香料成分が、0.003~0.3重量%程度、本件発明1の(b)成分に相当する成分が甲3発明中に含まれていたとしても、それは0.3重量%以下であり、本件発明1に特定された(b)成分の含有量の数値範囲である0.8~3質量%に含まれない。
したがって、上記相違点4は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲3発明と同一ではない。
(ウ)本件発明2ないし4及び6について
本件発明2ないし4及び6のそれぞれは、本件発明1の特定事項の全てを包含しさらに本件発明1を限定したものである。
上記(イ)に示したとおり、本件発明1と、甲3発明は、相違点4において、少なくとも実質的に相違するから、本件発明1をさらに限定した本件発明2ないし4及び6も、甲3発明と同一ではない。
(5)【理由5】について
ア.甲1発明を主とする理由5について
本件発明2ないし6は、本件発明1の構成の全てを包含してさらに限定するものであるから、本件発明2ないし6の各々と、甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点1において相違する。
しかし、甲1発明において、「(b2)成分:1分子の総炭素数が12~16のアルコール香料」に該当する香料をさらに加え、本件発明1に特定された事項である「(b)成分:下記(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分を含有し、(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/(b2)成分]が0.2~1であり、(b3)成分の質量と、(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の合計質量の比[(b3)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分〕]が0.6~0.95である」ようにすることは、甲1に記載あるいは示唆されていないし、他の証拠にも記載あるいは示唆されていない。
本件発明2ないし6は、上記相違点に係る構成を備えることで、「・・・爽やかでフレッシュ感のある香りを衣類に賦与するために液体柔軟剤組成物にアルコール香料を用いるにあたって、30度近傍での保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘を抑制する方法を提供する・・・」(本件特許明細書、段落【0007】)との課題を解決できるという格別な作用効果を奏するものである。
以上のとおりであるから、本件発明2ないし4を、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。また、本件発明5及び6を、甲1発明及び従来周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
イ.甲2発明Aあるいは甲2発明Bを主とする理由5について
本件発明2ないし6と、甲2発明Aあるいは甲2発明Bとを対比すると、それぞれ少なくとも上記<相違点2>あるいは<相違点3>と相違する。
(ア)<相違点2>について
甲2発明Aにおいて、「(b2)成分:1分子の総炭素数が12~16のアルコール香料」に該当する香料をさらに加え、本件発明1に特定された事項である「(b)成分:下記(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分を含有し、(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/(b2)成分]が0.2~1であり、(b3)成分の質量と、(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の合計質量の比[(b3)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分〕]が0.6~0.95である」ようにすることは、甲2に記載あるいは示唆されていないし、他の証拠にも記載あるいは示唆されていない。
本件発明2ないし6は、上記相違点に係る構成を備えることで、上記ア.に示した格別な作用効果を奏するものである。
以上のとおりであるから、本件発明2ないし4を、甲2発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。また、本件発明5及び6を、甲2発明A及び従来周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
(イ)<相違点3>について
甲2発明Bにおいて、「(b1)成分:1分子の総炭素数が8~10のアルコール香料」と「(b2)成分:1分子の総炭素数が12~16のアルコール香料」に属する香料成分を増減させることによって、「(b)成分:下記(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分を含有し、(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/(b2)成分]が0.2~1であり、(b3)成分の質量と、(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の合計質量の比[(b3)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分〕]が0.6~0.95である」ようにすることは、甲2に記載あるいは示唆されていないし、他の証拠にも記載あるいは示唆されていない。
本件発明2ないし6は、上記相違点に係る構成を備えることで、上記ア.に示した格別な作用効果を奏するものである。
以上のとおりであるから、本件発明2ないし4を、甲2発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。また、本件発明5及び6を、甲2発明B及び従来周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
ウ.甲3発明を主とする理由5について
本件発明2ないし6と、甲3発明とを対比すると、それぞれ少なくとも上記<相違点4>において相違する。
しかし、甲3発明において、「香料成分」のうちのさらに、「(b)成分」に該当するものを増減し、「液体柔軟剤組成物中の含有量が0.8~3質量%」となるようにすることは、甲3に記載あるいは示唆されていないし、他の証拠にも記載あるいは示唆されていない。
本件発明2ないし6は、上記相違点に係る構成を備えることで、上記ア.に示した格別な作用効果を奏するものである。
以上のとおりであるから、本件発明2ないし4を、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。また、本件発明5及び6を、甲3発明及び従来周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-700278