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特許異議申立

2016-700226

インクジェットプリンタ、インク回収部材、及びインク回収方法

審判番号
2016-700226
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2011-197690外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年03月16日
審決日
2017年05月16日
公報発行日
2017年09月29日
結論
請求成立(取消)
審判長/審判官
分類
P1651.121-ZAA(B41J) / P1651.113-ZAA(B41J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5778531号発明「インクジェットプリンタ、インク回収部材、及びインク回収方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5778531号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-4〕、5、6について、訂正することを認める。 特許第5778531号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 特許第5778531号の請求項1乃至6に係る特許についての出願は、平成27年7月17日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、平成28年3月16日付けで特許異議申立人椎名彊より請求項1乃至6に対して特許異議の申立てがされ、平成28年5月12日付けで取消理由が通知され、同年7月11日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年8月25日に特許異議申立人椎名彊から意見書が提出され、同年9月29日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年11月1日に意見書が提出がされ、同年11月14日付けで取消理由が通知され、平成29年1月12日に意見書が提出され、同年2月1日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年4月7日に意見書の提出及び訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)がされたものである。 2.訂正の適否 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のア乃至ウのとおりである。(下線は当審で付した。以下同様。) ア 請求項1に係る訂正(訂正事項1) (ア)訂正事項1-1 請求項1に、「前記開口部から重力方向に流れて前記インク回収部材内に入り、前記インク液化部材の下側から、前記横向きに分岐した空気流路へと流れる気流を発生させると共に、」とあるのを、「前記開口部から重力方向に流れて前記インク回収部材内に入り、前記インク液化部材の下側から出て、前記横向きに分岐した空気流路へと流れる気流を発生させると共に、」と訂正する。 (イ)訂正事項1-2 請求項1に、「前記開口部と前記貯留部とを接続する中空部をさらに備え、」とあるのを、「前記開口部と前記貯留部とを接続する中空部をさらに備え、前記空気流路への分岐位置は重力方向で前記中空部の前記開口部側にあり、」と訂正する。 (ウ)訂正事項1-3 請求項1に、「前記中空部は、前記開口部から流入し、前記インク液化部材によって液化したインクが、その内壁を伝って前記貯留部に運ばれるように、前記貯留部に向かって傾斜していることを特徴とするインクジェットプリンタ。」とあるのを、「前記中空部の内壁は、前記開口部から流入し、前記インク液化部材によって液化したインクが、前記内壁を伝って前記貯留部に運ばれるように、前記貯留部に向かって傾斜し」(訂正事項1-3-1)、「前記貯留部の底面に連続していることを特徴とするインクジェットプリンタ。」(訂正事項1-3-2)と訂正する。 イ 請求項5に係る訂正(訂正事項2) (ア)訂正事項2-1 請求項5に、「前記開口部から重力方向に流れて前記インク回収部材内に入り、前記インク液化部材の下側から、前記横向きに分岐した空気流路へと流れる気流を発生させると共に、」とあるのを、「前記開口部から重力方向に流れて前記インク回収部材内に入り、前記インク液化部材の下側から出て、前記横向きに分岐した空気流路へと流れる気流を発生させると共に、」と訂正する。 (イ)訂正事項2-2 請求項5に、「前記開口部と前記貯留部とを接続する中空部をさらに備え、」とあるのを、「前記開口部と前記貯留部とを接続する中空部をさらに備え、前記空気流路への分岐位置は重力方向で前記中空部の前記開口部側にあり、」と訂正する。 (ウ)訂正事項2-3 請求項5に、「前記中空部は、前記開口部から流入し、前記インク液化部材によって液化したインクが、その内壁を伝って前記貯留部に運ばれるように、前記貯留部に向かって傾斜していることを特徴とするインク回収部材。」とあるのを、「前記中空部の内壁は、前記開口部から流入し、前記インク液化部材によって液化したインクが、前記内壁を伝って前記貯留部に運ばれるように、前記貯留部に向かって傾斜し」(訂正事項2-3-1)、「前記貯留部の底面に連続していることを特徴とするインク回収部材。」(訂正事項2-3-2)と訂正する。 ウ 請求項6に係る訂正(訂正事項3) (ア)訂正事項3-1 請求項6に、「前記開口部から重力方向に流れて前記インク回収部材内に入り、前記インク液化部材の下側から、前記横向きに分岐した空気流路へと流れる気流を発生させると共に、」とあるのを、「前記開口部から重力方向に流れて前記インク回収部材内に入り、前記インク液化部材の下側から出て、前記横向きに分岐した空気流路へと流れる気流を発生させると共に、」と訂正する。 (イ)訂正事項3-2 請求項6に、「前記開口部と前記貯留部とを接続する中空部をさらに備え、」とあるのを、「前記開口部と前記貯留部とを接続する中空部をさらに備え、前記空気流路への分岐位置は重力方向で前記中空部の前記開口部側にあり、」と訂正する。 (ウ)訂正事項3-3 請求項6に、「前記中空部は、前記開口部から流入し、前記インク液化部材によって液化したインクが、その内壁を伝って前記貯留部に運ばれるように、前記貯留部に向かって傾斜していることを特徴とするインク回収方法。」とあるのを、「前記中空部の内壁は、前記開口部から流入し、前記インク液化部材によって液化したインクが、前記内壁を伝って前記貯留部に運ばれるように、前記貯留部に向かって傾斜し」(訂正事項3-3-1)、「前記貯留部の底面に連続していることを特徴とするインク回収方法。」(訂正事項3-3-2)と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、及び一群の請求項について ア 訂正事項1(請求項1に係る訂正)について (ア)訂正事項1-1について a 訂正の目的について 訂正事項1-1は、訂正前の請求項1に記載の「インク液化部材の下側から、前記横向きに分岐した空気流路へと流れる気流」について、「インク液化部材の下側から出て、前記横向きに分岐した空気流路へと流れる気流」と具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項1-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 願書に添付した明細書の図1には、「インク液化部材の下側から、横向きに分岐した空気流路へと流れる気流」が、「インク液化部材の下側から出て」いることが示されている。 よって、訂正事項1-1は、願書に添付した特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものである。 (イ)訂正事項1-2について a 訂正の目的について 訂正事項1-2は、訂正前の請求項1に記載の「空気流路」への「分岐」について、「空気流路への分岐位置は重力方向で前記中空部の前記開口部側にあり」と具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項1-2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1-2の「空気流路」への「分岐」に関連する記載として、願書に添付した図面の図1には、「空気流路への分岐位置は重力方向で前記中空部の前記開口部側にあ」ることが示されている。 よって、訂正事項1-2は、願書に添付した特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものである。 (ウ)訂正事項1-3-1について a 訂正の目的について 訂正事項1-3-1は、訂正前の請求項1に記載の「前記中空部は、前記開口部から流入し、前記インク液化部材によって液化したインクが、その内壁を伝って前記貯留部に運ばれるように、前記貯留部に向かって傾斜し」との記載では、傾斜の対象が中空部と特定されており、不明瞭な記載となっていたところ、「前記中空部の内壁は、前記開口部から流入し、前記インク液化部材によって液化したインクが、前記内壁を伝って前記貯留部に運ばれるように、前記貯留部に向かって傾斜し」と記載することにより、傾斜の対象を「中空部の内壁」と明瞭とするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項1-3-1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1-3-1の「中空部の内壁」に関連する記載として、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には「また、中空部の内壁が貯留部に向かって傾斜しているので、インクを貯留部に効率よく運ぶことができる。」(【0010】)と記載されていることから、「中空部の内壁」が、貯留部に向かって傾斜していることは、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものである。 よって、訂正事項1-3-1は、願書に添付した特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものである。 (エ)訂正事項1-3-2について a 訂正の目的について 訂正事項1-3-2は、訂正前の請求項1に記載の「中空部の内壁」について、「前記貯留部の底面に連続している」と具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項1-3-2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 c 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1-3-2の「中空部の内壁」に関連する記載として、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には「本実施形態においてインクだまり部3の底面は、中空部6の内壁に連続しており」(【0029】)と記載されていることから、「中空部の内壁」が、貯留部の底面に連続していることは、願書に添付した明細書に記載された範囲内のものである。 よって、訂正事項1-3-2は、願書に添付した特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものである。 (オ)小括 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するものである。 イ 訂正事項2(請求項5に係る訂正)について (ア)訂正事項2-1について 訂正事項2-1は、訂正事項1-1と、実質的に同じ内容の訂正である。 そうすると、訂正事項2-1は、上記「ア (ア)訂正事項1-1について」と同じ理由により、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 (イ)訂正事項2-2について 訂正事項2-2は、訂正事項1-2と、実質的に同じ内容の訂正である。 そうすると、訂正事項2-2は、上記「ア (イ)訂正事項1-2について」と同じ理由により、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 (ウ)訂正事項2-3-1について 訂正事項2-3-1は、訂正事項1-3-1と、実質的に同じ内容の訂正である。 そうすると、訂正事項2-3-1は、上記「ア (ウ)訂正事項1-3-1について」と同じ理由により、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 (エ)訂正事項2-3-2について 訂正事項2-3-2は、訂正事項1-3-2と、実質的に同じ内容の訂正である。 そうすると、訂正事項2-3-2は、上記「ア (ウ)訂正事項1-3-2について」と同じ理由により、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 (オ)小括 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するものである。 ウ 訂正事項3(請求項6に係る訂正)について (ア)訂正事項3-1について 訂正事項3-1は、訂正事項1-1と、実質的に同じ内容の訂正である。 そうすると、訂正事項3-1は、上記「ア (ア)訂正事項1-1について」と同じ理由により、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 (イ)訂正事項3-2について 訂正事項3-2は、訂正事項1-2と、実質的に同じ内容の訂正である。 そうすると、訂正事項3-2は、上記「ア (イ)訂正事項1-2について」と同じ理由により、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 (ウ)訂正事項3-3-1について 訂正事項3-3-1は、訂正事項1-3-1と、実質的に同じ内容の訂正である。 そうすると、訂正事項3-3-1は、上記「ア (ウ)訂正事項1-3-1について」と同じ理由により、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 (エ)訂正事項3-3-2について 訂正事項3-3-2は、訂正事項1-3-2と、実質的に同じ内容の訂正である。 そうすると、訂正事項3-3-2は、上記「ア (ウ)訂正事項1-3-2について」と同じ理由により、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 (オ)小括 よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するものである。 エ 一群の請求項についての適否 訂正事項1に係る訂正前の請求項1乃至4について、請求項2乃至4はすべて直接的又は間接的に「請求項1」を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1乃至4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当するものである。 よって、訂正事項1~4による訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項ごとに」適法に請求されたものである。 また、訂正後の請求項1乃至4は、一群の請求項である。 (3)まとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1ないし4〕、〔5〕及び〔6〕について訂正を認める。 3.当審の判断 (1)本件訂正特許発明 上記「2.訂正の適否」のとおり、本件訂正は認められるから、上記訂正請求により訂正された請求項1乃至6に係る発明(以下、順に「本件訂正特許発明1」乃至「本件訂正特許発明6」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 インクを吐出するノズルを備えたインクヘッドと、 前記インクヘッドから吐出されたインクを回収するインク回収部材とを備え、 前記インク回収部材は、その内部にインクを受容する中空構造であり、 前記インクヘッドから吐出されたインクが入り込む開口部と、 前記開口部から、その重力方向下側に連通し、前記開口部から流入したインクを貯留する貯留部と、 前記開口部と前記貯留部との間にあり、霧状のインクを液化するインク液化部材と、 前記インク液化部材と前記貯留部との間から横向きに分岐する、当該インク液化部材によって液化されたインクの通路上ではない空気流路に設けられた排気手段とを備え、 前記排気手段が、 前記開口部から重力方向に流れて前記インク回収部材内に入り、前記インク液化部材の下側から出て、前記横向きに分岐した空気流路へと流れる気流を発生させると共に、 前記開口部と前記貯留部とを接続する中空部をさらに備え、 前記空気流路への分岐位置は重力方向で前記中空部の前記開口部側にあり、前記中空部の内壁は、前記開口部から流入し、前記インク液化部材によって液化したインクが、前記内壁を伝って前記貯留部に運ばれるように、前記貯留部に向かって傾斜し、前記貯留部の底面に連続していることを特徴とするインクジェットプリンタ。 【請求項2】 インクを吐出する対象の印刷媒体を支持する支持部をさらに備え、 前記インク回収部材は、前記支持部の外側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。 【請求項3】 前記インク液化部材は、複数の網状体が積層されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ。 【請求項4】 前記貯留部は、前記インク回収部材の外部に設けられた排出部に接続されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。 【請求項5】 インクを吐出するノズルを備えたインクヘッドから吐出されたインクを回収するインク回収部材であって、 その内部にインクを受容する中空構造であり、 前記インクヘッドから吐出されたインクが入り込む開口部と、 前記開口部から、その重力方向下側に連通し、前記開口部から流入したインクを貯留する貯留部と、 前記開口部と前記貯留部との間にあり、霧状のインクを液化するインク液化部材と、 前記インク液化部材と前記貯留部との間から横向きに分岐する、当該インク液化部材によって液化されたインクの通路上ではない空気流路に設けられた排気手段とを備え、 前記排気手段が、 前記開口部から重力方向に流れて前記インク回収部材内に入り、前記インク液化部材の下側から出て、前記横向きに分岐した空気流路へと流れる気流を発生させると共に、 前記開口部と前記貯留部とを接続する中空部をさらに備え、 前記空気流路への分岐位置は重力方向で前記中空部の前記開口部側にあり、前記中空部の内壁は、前記開口部から流入し、前記インク液化部材によって液化したインクが、前記内壁を伝って前記貯留部に運ばれるように、前記貯留部に向かって傾斜し、前記貯留部の底面に連続していることを特徴とするインク回収部材。 【請求項6】 インクを吐出するノズルを備えたインクヘッドから吐出されたインクをインク回収部材により回収するインク回収方法であって、 前記インク回収部材は、その内部にインクを受容する中空構造であり、 前記インクヘッドから吐出されたインクが入り込む開口部と、 前記開口部から、その重力方向下側に連通し、前記開口部から流入したインクを貯留する貯留部と、 前記開口部と前記貯留部との間にあり、霧状のインクを液化するインク液化部材と、 前記インク液化部材と前記貯留部との間から横向きに分岐する、当該インク液化部材によって液化されたインクの通路上ではない空気流路に設けられた排気手段とを備え、 前記排気手段が、 前記開口部から重力方向に流れて前記インク回収部材内に入り、前記インク液化部材の下側から出て、前記横向きに分岐した空気流路へと流れる気流を発生させると共に、 前記開口部と前記貯留部とを接続する中空部をさらに備え、 前記空気流路への分岐位置は重力方向で前記中空部の前記開口部側にあり、前記中空部の内壁は、前記開口部から流入し、前記インク液化部材によって液化したインクが、前記内壁を伝って前記貯留部に運ばれるように、前記貯留部に向かって傾斜し、前記貯留部の底面に連続していることを特徴とするインク回収方法。」 (2)各刊行物の記載 ア 刊行物1(甲第2号証) 平成29年2月1日付けの取消理由通知において引用した刊行物1(特開2009-291977号公報)には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同じ。) (ア)「【請求項1】 印刷媒体を支持する媒体支持手段と、 前記媒体支持手段に支持された印刷媒体の表面に対向した状態で前記印刷媒体に対して相対移動しながら下方に向けてインクを吐出するプリンタヘッドと、 前記プリンタヘッドが前記印刷媒体から外れた位置に移動して行われる前記プリンタヘッドのメンテナンス時に吐出されるインクを受容するインク受容ユニットとを有したインクジェットプリンタにおいて、 前記インク受容ユニットは、内部に受容中空部を備えた箱状に形成され且つ前記受容中空部に連通した受容開口部が形成されるとともに、前記インク受容ユニットの外部から前記受容開口部に向かって流れる吸引空気流を発生させる吸引空気流発生手段を備えて構成され、 前記プリンタヘッドは、前記プリンタヘッドのメンテナンス時に前記インク受容ユニットの上方に位置するとともに前記受容開口部と上下に対向し、 前記受容開口部には、網状に形成されたインクミスト液状化部材が前記受容開口部を覆うように取り付けられたことを特徴とするインクジェットプリンタ。」 (イ)「【0007】 上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェットプリンタは、印刷媒体(例えば、実施形態における印刷シートM)を支持する媒体支持手段(例えば、実施形態におけるプラテン12a)と、前記媒体支持手段に支持された印刷媒体の表面に対向した状態で前記印刷媒体に対して相対移動しながら下方に向けてインクを吐出するプリンタヘッドと、前記プリンタヘッドが前記印刷媒体から外れた位置に移動して行われる前記プリンタヘッドのメンテナンス時に吐出されるインクを受容するインク受容ユニット(例えば、実施形態におけるフラッシングボックス30)とを有して構成される。」 (ウ)「【0019】 図1に示すように、右ボディ部14の上部には、カートリッジ取付部16が設けられており、このカートリッジ取付部16に対して、インクの色ごとに複数のカートリッジ式のインクタンク18が前面側から着脱可能に取り付けられている。カートリッジ取付部16の内部には、インクタンク18を受容してインクを受け入れる接続部(図示せず)が設けられている。そして、この接続部から右ボディ部14および上ボディ部15の内部を延びたインクチューブ(図示せず)が色ごとにプリンタヘッド22(図3参照)と繋がっており、インクタンク18のインクがインクチューブを介してプリンタヘッド22に供給されるようになっている。 【0020】 ヘッドユニット20は、図3に示すように、キャリッジ21およびプリンタヘッド22を主体に構成される。キャリッジ21は、その後面がガイドレール15bと嵌合しており、ガイドレール15bに沿って左右に往復移動自在となっている。プリンタヘッド22は、例えばマゼンダ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)の各色のプリンタヘッド22M,22Y,22C,22Kから構成される。各プリンタヘッドの下面には、下方に向けてインクを吐出する複数のノズル開口(図示せず)が形成されている。 【0021】 図3に示すように、プラテン12aの左方側に吐出検査ユニット25が設置されており、この吐出検査ユニット25の下方にフラッシングボックス30が取り付けられている。吐出検査ユニット25は、本体部25aの中央部分に略矩形で上下に貫通した検査領域25bが形成されている。また、その略矩形の検査領域25bの対角位置に、発光素子26と受光素子27とが配設され、発光素子26から発射された検査光が受光素子27において受光可能となっている。 【0022】 フラッシングボックス30は、図4に示すように、本体ボックス31、集約メッシュ38、フィルタ39および排気ファン40を主体に構成される。本体ボックス31は、内部が中空となった略直方体の箱状に形成されるとともに、その上面には上方に向けて開口した受容開口部32aが形成されている。また、本体ボックス31の底面31aには、下方に向けて開口した排出口35が形成されており、排出口35が最も下部に位置するように底面31aは斜めに形成されている。このフラッシングボックス30がインクジェットプリンタ10に設置された状態においては、受容開口部32aが検査領域25bの下方に位置している。本体ボックス31の内部には、受容開口部32aと連通して上下に延びる第1受容室32、および第1受容室32の下部と連通して上下に延びる第2受容室33が形成されている。第2受容室33には、下から順に複数の板状体34a,34b,34c,34d・・・が交互に形成され、各板状体の先端部は下方に傾斜するように形成されている。なお、排出口35の下方には、排出口35と例えばチューブ(図示せず)で繋がれた廃液タンク(図示せず)が設置されている。 【0023】 集約メッシュ38は、例えば樹脂材料を用いて網目状に形成されており、受容開口部32aの全体を覆うようにして、受容開口部32aの上端部に取り付けられる。なお、集約メッシュ38として、例えばメッシュの線の直径がおよそ1mmで、且つ一辺がおよそ3.3mmの略正方形の隙間が形成されたメッシュが好適に用いられる。第2受容室33の上部には、フィルタ39が取り付けられるとともに、フィルタ39の外方(後方)に隣接して排気ファン40が設置されている。なお、フラッシングボックス30は、例えばその内部容積がおよそ3430cm3となっている。」 (エ)「【0027】 フラッシング動作を行うときには、まず、キャリッジ21をガイドレール15bの左端部近傍に移動させて、各プリンタヘッドのノズル開口を検査領域25b(受容開口部32a)の上方に位置させる(以下、この位置をフラッシング位置と称す)。ここで、例えば各プリンタヘッドがこのフラッシング位置に移動したことが検出されたときに、排気ファン40が稼動を開始するように構成されている。よって、排気ファン40が稼動することにより、フラッシングボックス30内の空気が所定の方向へ流れるようになっている。その空気の流れを大まかに説明すると、図4に示すように、受容開口部32aにおいて下方へ(矢印Aの方向へ)流れ、そして第1受容室32の下端部から第2受容室33へ(矢印Bの方向へ)流れた後、第2受容室33の上端部からフィルタ39へ(矢印Cの方向へ)流れて、フィルタ39を通過して濾過された後フラッシングボックス30の外部に排出される。 … 【0029】 ここで、集約メッシュ38を通過する際のインク滴およびインクミストの挙動について説明する。吐出されたインク滴およびインクミストは、集約メッシュ38と接触することによって集約メッシュ38に付着する。また、フラッシング動作を何度か繰り返して行うことにより、集約メッシュ38にはインクが付着した状態となっており、このような状態でさらにフラッシング動作を行うことにより、集約メッシュ38に付着したインクに対して、吐出されたインク滴およびインクミストが付着していく。そして、集約メッシュ38において、付着したインク滴およびインクミスト同士が合体してインク滴が形成され、このインク滴が空気の流れに乗って第1受容室32の下方へと進んでいく。このように、受容開口部32aに集約メッシュ38を取り付けることにより、インクミストを付着させてインクミストの液状化を促進させることが可能で、よって、集約メッシュ38を通過して下方に進むインクミストの量を減少させることができる。そして、集約メッシュ38を通過したインク滴は、底面31aに到達して排出口35へと導かれ廃液タンクに流下して回収される。 【0030】 ここで、集約メッシュ38を取り付けていない従来の構成においては、多量のインクミストが第1受容室32の下端部から第2受容室33へと進み、例えば板状体34aの上面に堆積して固化し、板状体34aと板状体34bとの隙間を埋めることがあり、この場合は受容開口部32aに空気の流れを発生させることが困難となっていた。一方、本発明に係る集約メッシュ38を取り付けることにより、集約メッシュ38を通過する際にほとんどのインクミストが液状化され、集約メッシュ38を通過した少量のインクミストも例えば板状体34aの下面に付着して回収されるので、板状体間の隙間を埋めて空気の流れを阻害するような事態が発生せず、空気の流れを確保することができる。 … 【0033】 上述の実施形態において、受容開口部32aの上端部に一層の集約メッシュ38を取り付けた構成について説明したが、受容開口部32aにおいて例えば上下に複数層の集約メッシュ38を並べて取り付ける構成でも良い。」 (オ)【図1】より、インク受容ユニットが媒体支持手段の外側に設けられていることが看取できる。 これらの記載を総合すると、刊行物1(甲2号証)には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「印刷媒体を支持する媒体支持手段と、 前記媒体支持手段に支持された印刷媒体の表面に対向した状態で前記印刷媒体に対して相対移動しながら下方に向けてインクを吐出するプリンタヘッドと、 媒体支持手段の外側に設けられ、前記プリンタヘッドが前記印刷媒体から外れた位置に移動して行われる前記プリンタヘッドのメンテナンス時に吐出されるインクを受容するインク受容ユニットとを有したインクジェットプリンタにおいて、 前記インク受容ユニットは、内部に受容中空部を備えた箱状に形成され且つ前記受容中空部に連通した受容開口部が形成されるとともに、前記インク受容ユニットの外部から前記受容開口部に向かって流れる吸引空気流を発生させる吸引空気流発生手段を備えて構成され、 前記プリンタヘッドは、前記プリンタヘッドのメンテナンス時に前記インク受容ユニットの上方に位置するとともに前記受容開口部と上下に対向し、 前記受容開口部には、網状に形成されたインクミスト液状化部材が前記受容開口部を覆うように取り付けられたインクジェットプリンタであって、 インク受容ユニットは、本体ボックス、集約メッシュ、フィルタおよび排気ファンを主体に構成され、 インク受容ユニットを構成する本体ボックスの底面には、下方に向けて開口した排出口が形成されており、排出口が最も下部に位置するように底面は斜めに形成されており、 本体ボックスの内部には、受容開口部と連通して上下に延びる第1受容室、および第1受容室の下部と連通して上下に延びる第2受容室が形成され、 排出口の下方には、排出口と例えばチューブで繋がれた廃液タンクが設置され、 空気の流れは、受容開口部において下方へ流れ、そして第1受容室の下端部から第2受容室へ流れた後、第2受容室の上端部からフィルタへ流れて、フィルタを通過して濾過された後フラッシングボックスの外部に排出され、 集約メッシュにおいて、付着したインク滴およびインクミスト同士が合体してインク滴が形成され、このインク滴が空気の流れに乗って第1受容室の下方へと進んでいき、 集約メッシュを通過したインク滴は、底面に到達して排出口へと導かれ廃液タンクに流下して回収され、 集約メッシュを通過する際にほとんどのインクミストが液状化され、集約メッシュを通過した少量のインクミストも例えば板状体の下面に付着して回収されるので、板状体間の隙間を埋めて空気の流れを阻害するような事態が発生せず、空気の流れを確保することができ、 上下に複数層の集約メッシュを並べて取り付ける、インクジェットプリンタ。」 イ 刊行物2(甲第1号証) 平成29年2月1日付けの取消理由通知において引用した刊行物2(特開2011-20301号公報)には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0018】 本実施形態に係るフラッシングユニットは、インクジェットプリンタに搭載されている。図1は、本発明の一実施形態に係るフラッシングユニットが搭載されたインクジェットプリンタの外観を示す斜視図である。同図に示すように、インクジェットプリンタ1は、例えばフラットベッド型インクジェットプリンタであり、印刷対象のメディアが載置されるステージ部2と、インク液滴を吐出するインクジェットヘッドHが搭載された印刷ユニット3とを備えている。このようなインクジェットプリンタ1において、フラッシングユニット4は、印刷ユニット3の一端側(右側)に設けられている。」 (イ)「【0020】 図2~5に示すように、フラッシングユニット4は、ファン5と、インクミスト回収機構6とから構成されている。このフラッシングユニット4は、インクジェットヘッドHの待機時において、画像印刷時以外にノズル(図示しない)からインクが吐出されるフラッシング処理の際に発生するインクミストを回収するためのユニットである。 【0021】 ファン5は、インクミストを吸引するための吸引機構である。ファン5は、例えばシロッコファン(多翼ファン)であり、印刷ユニット3においてカバー部7の内側に配設されている。ファン5は、図示しない電源に接続されており、フラッシング処理の実施の有無に関わらず常に作動している。 【0022】 インクミスト回収機構6は、ファン5の吸引力によりインクミストを回収する機構である。このインクミスト回収機構6は、箱状を成しており、インクジェットヘッドHが画像印刷等を行わない待機時(印刷ユニット3の右側の位置)において、インクジェットヘッドHのノズル面と対向する位置に近接して配置されている。インクミスト回収機構6は、上面部8と、トレイ部9と、ダクト部10とを備えている。 【0023】 上面部8は、フラッシング処理時においてノズルから吐出されたインクが滴下される部分である。この上面部8には、ファン5の吸引力によってインクミストをインクミスト回収機構6の内部に吸入するための複数(本実施形態では15個)の吸入孔11が設けられている。この複数の吸入孔11は、上面部8においてファン5が配設されている側の一端部(後端部)に沿って形成されており、上面部8の中央部から両端部になるにつれて直径が大きくなっている(図4参照)。なお、上面部8の中央部から両端部につれてとは、図4に示すように、同じ直径の複数の吸入穴11が中央部から両端部につれて段々と大きくなっていてもよい(つまり、中央部に配置された5個の吸入孔11が同じ直径で、その両側にそれぞれ配置される6個の吸入孔11が同じ直径で、更にその両側にそれぞれ配置される4個の吸入孔11が同じ直径であってもよい)し、隣り合う吸入孔11が中央部から両端部につれて徐々に(1個ずつ)大きくなっていてもよい。 【0024】 また、上面部8には、図3に示すように、複数の吸入孔11に対応する位置に液滴化部材12が設けられている。この液滴化部材12は、複数の吸入孔11から吸入されたインクミストを液滴化するための板状の部材である。液滴化部材12は、長さ寸法が上面部8の長さ寸法と同等の大きさとなっていると共に、幅寸法が上面部8の幅寸法よりも小さくなっている(10mm程度)。また、液滴化部材12は、図5に示すように、幅方向の断面が略L字状を成している。このような構成を有する液滴化部材12は、図5に示すように、トレイ部9の連結孔13(後述)と吸入孔11との間に配置されており、吸入孔11が連通されて後端側(図示左側)が閉塞されると共に前端側(図示右側)が開放される空間Sを上面部8との間に形成するように、吸入孔11の下方において上面部8の後端側寄りに取り付けられている。 【0025】 トレイ部9は、ファン5によるインクミストの吸引路を形成する部分である。トレイ部9は、上方に開口する開口部9aを有する断面台形状の箱型を成しており、開口部9aは、上面部8によって閉塞されている。トレイ部9の長手方向の側面9bには、その中央部分に複数の連結孔13が設けられている。そして、トレイ部9の側面9bには、連結孔13に対応する部分(トレイ部9の略中央部)にダクト部10が連結されている。また、トレイ部9の底面部9cは、後側に下り勾配で傾斜している。なお、トレイ部9の底面部9cの一端部(傾斜側)には、トレイ部9内に溜まったインクを排出するための排出口(図示しない)が設けられている。 【0026】 ダクト部10は、ファン5とトレイ部9とを連結する部分である。ダクト部10の一端部は、上述のようにトレイ部9の連結孔13に対応する側面9bに連結されている。また、ダクト部10の他端部は、ファン5が配設された位置に対応するカバー部7の側面に連結されている。そして、ファン5とダクト部10との間には、フィルター14が設けられている。このフィルター14は、図6に示すように、枠体部14aと、フィルター部14bと、固定部14cとを備えている。枠体部14a及び固定部14cは、例えば鉄等の金属から成り、フィルター部14bは、例えば不織布から成っている。そして、フィルター14は、フィルター部14bを枠体部14a及び固定部14cによって挟んで例えばねじによって締結することで構成されている。フィルター14では、フィルター部14bにインクミストを付着させることでインクミストを回収する。なお、フィルター14bは、取り替え自在となっている。 【0027】 以上のような構成を有するインクミスト回収機構6は、フラッシング処理時において、上面部8とインクジェットヘッドHのノズル面とが一定の間隔(ギャップ)となるように保持されている。そして、フラッシングユニット4では、ファン5が作動すると、トレイ部9及びダクト部10を介してインクミスト回収機構6の上面部8の複数の吸引孔11に吸引力が生じる。これにより、フラッシング処理により発生したインクミストは、複数の吸入孔11からインクミスト回収機構11の内部に吸入される。 【0028】 また、インクミスト回収機構6の下方には、インクトレイ15が設けられている。インクトレイ15は、インクミスト回収機構6の上面部8及びトレイ部9から滴下したインクを貯留する部分である。このインクトレイ15の底面部には、貯留されたインクを排出するための排出口15aが設けられている。この排出口15aは、印刷ユニット3の下方に延びており、インクトレイ15内のインクの排出を調整するためのバルブ(図示しない)が設けられている。そして、排出口15aの先端部には、タンク16が取り外し自在に接続されている。このような構成により、インクトレイ15に貯留されたインクは、バルブの調整によって排出口15aを介してタンク16に排出され、廃棄処理される。 【0029】 続いて、インクミスト回収機構6においてインクミストが液滴化される工程について、 図7を参照しながら説明する。図7は、ファン5により発生する気流を模式的に示す図である。なお、図7は一例であり、ファン5の吸引力等の条件の変化によっては、図7に示す流れとは異なる場合がある。 【0030】 図7(a)に示すように、まずファン5の吸引力によって吸入孔11からインクミストが吸入される。このとき、吸入孔11では、縁部よりも中心部の流速が速くなっていると共に、中心部よりも縁部の相対圧力が高くなっている。これにより、インクミストは、吸入孔11の中心部に集中して結合することで液滴化される。さらに、吸入孔11から吸入されたインクミストは、液滴化部材12に衝突することで液滴化される。 【0031】 また、インクミストが吸入孔11から吸入される際、吸入孔11の縁部付近における上面部8の裏面8aでは、上方に巻き上がる渦流が発生する。これにより、インクミストが上面部8の裏面8aに衝突し、インクミストが液滴化される。 【0032】 さらに、上面部8の裏面8aと液滴化部材12とによって形成される空間Sでは、両側面側よりも中心部の速度が速くなっていると共に、中心部よりも両側面側の相対圧力が高くなっている。これにより、吸入孔11から吸入されて液滴化部材12により開放されている側(図示右側)に曲げられて空間Sを進むインクミストは、空間Sの中心部に集中して結合し、その結合したインクミストが自重により下方に落ちることで液滴化部材12と衝突して液滴化される。また、上面部8と液滴化部材12との間が狭く(例えば、4mm程度)なっているので、上面部8と液滴化部材12との間、すなわち空間Sに乱流が発生する。これにより、インクミストが上面部8及び液滴化部材12に衝突し、インクミストが液滴化される。 【0033】 そして、図7(b)に示すように、液滴化部材12の端部まで達したインクミストは、トレイ部9の側面9d(側面9bに対向する側面)によって流速が減速させられる。これにより、インクミストがトレイ部9の側面9d付近で停滞するため、後続のインクミストと先行するインクミストとの衝突が生じ、インクミストが液滴化される。また、トレイ部9の側面9dにインクミストが衝突することで液滴化される。以上のような工程により、インクミスト回収機構6の内部においてインクミストが液滴化される。」 (ウ)「【0036】 また、本実施形態では、ファン5は、インクミスト回収機構6のトレイ部9の側面9bにダクト部10を介して連結されており、複数の吸入孔11は、上面部8におけるインクミスト回収機構6のトレイ部9の側面9b側の端部に沿って設けられており、液滴化部材12は、ファン5が連結されるインクミスト回収機構6のトレイ部9に設けられた連結孔13と吸引孔11との間において、後端側(側面9b側)からこの後端側に対応する前端側(側面9d側)に向けて延在しており、吸引孔11が連通されて後端側が閉塞されると共に前端側が開放される空間Sを形成している。 【0037】 このような構成を採用することにより、吸入孔11から吸入されたインクミストがまず側面9d側に曲げられ、その後、液滴化部材11の前端側の端部においてファン5側に曲げられる吸引流路となる。これにより、図6に示すように、上面部8と液滴化部材12との間に形成される空間Sにおいて、液滴化部材12及び上面部8とインクミストとの衝突、インクミスト同士の衝突、及び空間S内の流速及び圧力の差異に起因するインクミストの結合が生じる。また、吸入孔11から吸入されたインクミストがファン5まで到達するまでの流路を長く確保することができる。従って、空間Sにおいてインクミストと液滴化部材12及び上面部8との衝突面積(領域)が多くなると共に、インクミストを液滴化するのに適した気流を生成することができるので、インクミストの液滴化を更に促進でき、より効果的にインクミストを回収することができる。」 (エ)上記【0028】、【図3】、及び【図5】より、インクミスト回収機構とインクトレイとの間から横向きに分岐するダクト部が設けられていることが看取できる。 (オ)上記【0023】、【0037】及び【図5】より、吸入孔から重力方向に流れてインクミスト回収機構(フラッシングユニット)内に入り、インクミスト回収機構の下側から、ファン側に曲げられるインクミストの吸引流路が看取できる。 これらの記載を総合すると、刊行物2(甲1号証)には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「インクジェットプリンタは、印刷対象のメディアが載置されるステージ部と、インク液滴を吐出するインクジェットヘッドが搭載された印刷ユニットとを備え、このようなインクジェットプリンタにおいて、フラッシングユニットは、印刷ユニットの一端側(右側)に設けられ、フラッシングユニットは、ファンと、インクミスト回収機構とから構成され、フラッシングユニットは、インクジェットヘッドの待機時において、画像印刷時以外にノズルからインクが吐出されるフラッシング処理の際に発生するインクミストを回収するためのユニットであり、ファンは、インクミストを吸引するための吸引機構であり、インクミスト回収機構は、箱状を成しており、上面部には、ファンの吸引力によってインクミストをインクミスト回収機構の内部に吸入するための複数の吸入孔が設けられ、複数の吸入孔に対応する位置に液滴化部材が設けられ、液滴化部材は、トレイ部の連結孔と吸入孔との間に配置されており、トレイ部は、ファンによるインクミストの吸引路を形成する部分であり、トレイ部は、上方に開口する開口部を有する断面台形状の箱型を成しており、開口部は、上面部によって閉塞されており、トレイ部の長手方向の側面には、その中央部分に複数の連結孔が設けられ、トレイ部の側面には、連結孔に対応する部分(トレイ部の略中央部)にダクト部が連結され、トレイ部の底面部は、後側に下り勾配で傾斜し、トレイ部の底面部の一端部(傾斜側)には、トレイ部内に溜まったインクを排出するための排出口が設けられ、ダクト部は、ファンとトレイ部とを連結する部分であり、ダクト部の一端部は、トレイ部の連結孔に対応する側面に連結されており、ダクト部の他端部は、ファンが配設された位置に対応するカバー部の側面に連結されており、インクミスト回収機構の下方には、インクトレイが設けられ、インクトレイは、インクミスト回収機構の上面部及びトレイ部から滴下したインクを貯留する部分であり、このインクトレイの底面部には、貯留されたインクを排出するための排出口が設けられ、排出口の先端部には、タンクが取り外し自在に接続されており、インクミスト回収機構とインクトレイとの間から横向きに分岐するダクト部を備え、吸入孔から重力方向に流れてインクミスト回収機構(フラッシングユニット)内に入り、インクミスト回収機構の下側から、ファン側に曲げられるインクミストの吸引流路を備えている、インクジェットプリンタ。」 (4)対比 本件訂正特許発明1と引用発明1とを対比すると、 ア 後者の「インク」、「インクミスト液状化部材」、「吸引空気流発生手段」、及び「インクジェットプリンタ」は、それぞれ、前者の「インク」、「霧状のインクを液化するインク液化部材」、「排気手段」、及び「インクジェットプリンタ」に相当する。 イ 後者は、インクを吐出するプリンタヘッドを備えるインクジェットプリンタであるから、後者の「プリンタヘッド」は、「インクを吐出するノズルを備えたインクヘッド」といえる。 ウ 後者の「インク受容ユニット」は、プリンタヘッドのメンテナンス時に吐出されるインクを受容するものであり、内部に受容中空部を備えた箱状に形成されるから、「インクヘッドから吐出されたインクを回収するインク回収部材」であって、「内部にインクを受容する中空構造」であるといえる。 エ 後者の「受容開口部」は、プリンタヘッドのメンテナンス時に吐出されるインクを受容するインク受容ユニットに形成され、受容中空部に連通したものであるから、「インクヘッドから吐出されたインクが入り込む開口部」といえる。 オ 後者の「廃液タンク」は、受容開口部が形成されるインク受容ユニットの底面には、下方に向けて開口した排出口が形成されており、排出口が最も下部に位置し、排出口の下方に、排出口とチューブで繋がれたものであるから、「開口部から、その重力方向下側に連通し、前記開口部から流入したインクを貯留する貯留部」といえる。 カ 上記エ、及びオより、後者の「インクミスト液状化部材」は、受容開口部に形成されたものであって、廃液タンクとの間にあるといえるから、「開口部と貯留部との間にあり」といえる。 キ 後者は、本体ボックスの内部には、受容開口部と連通して上下に延びる第1受容室、および第1受容室の下部と連通して上下に延びる第2受容室が形成され、空気の流れは、受容開口部において下方へ流れ、そして第1受容室の下端部から第2受容室へ流れた後、第2受容室の上端部からフィルタへ流れて、フィルタを通過して濾過された後フラッシングボックスの外部に排出され、集約メッシュにおいて、付着したインク滴およびインクミスト同士が合体してインク滴が形成され、このインク滴が空気の流れに乗って第1受容室の下方へと進んでいき、集約メッシュを通過したインク滴は、底面に到達して排出口へと導かれ廃液タンクに流下して回収される、ものである。そうすると、後者の「受容開口部」から「第一受容室」の「排出口」を経た「廃液タンク」までが「インクの通路」といえるから、後者の「吸引空気流発生手段」は、「インク液化部材によって液化されたインクの通路上ではない空気流路に設けられた排気手段」といえる。 ク 後者の「受容中空部」は、インク受容ユニットに備えられ、受容開口部に連通したものであって、インク受容ユニットを構成する本体ボックスの底面には、下方に向けて開口した排出口が形成されており、排出口が最も下部に位置するように底面は斜めに形成され、排出口と廃液タンクとはチューブで繋がれ廃液タンクの底面に連続しているから、後者の「受容中空部」は、前者の「中空部」に相当し、中空部の内壁は、前記開口部から流入し、前記インク液化部材によって液化したインクが、その内壁を伝って前記貯留部に運ばれるように、前記貯留部に向かって傾斜し、貯留部の底面に連続している、といえる。 したがって、両者は、 「インクを吐出するノズルを備えたインクヘッドと、 前記インクヘッドから吐出されたインクを回収するインク回収部材とを備え、 前記インク回収部材は、その内部にインクを受容する中空構造であり、 前記インクヘッドから吐出されたインクが入り込む開口部と、 前記開口部から、その重力方向下側に連通し、前記開口部から流入したインクを貯留する貯留部と、 前記開口部と前記貯留部との間にあり、霧状のインクを液化するインク液化部材と、 当該インク液化部材によって液化されたインクの通路上ではない空気流路に設けられた排気手段とを備え、 前記開口部と前記貯留部とを接続する中空部をさらに備え、 前記中空部の内壁は、前記開口部から流入し、前記インク液化部材によって液化したインクが、前記内壁を伝って前記貯留部に運ばれるように、前記貯留部に向かって傾斜し、貯留部の底面に連続しているインクジェットプリンタ。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 本件訂正特許発明1が、「インク液化部材と貯留部との間から横向きに分岐する」排気手段を備え、排気手段が、「開口部から重力方向に流れてインク回収部材内に入り、インク液化部材の下側から出て、横向きに分岐した空気流路へと流れる気流を発生させ」、「空気流路への分岐位置は重力方向で中空部の開口部側にあ」るのに対し、引用発明1は、その点が明らかでない点。 (5)判断 上記相違点について、以下、検討する。 引用発明2の「インクミスト回収機構」、「インクトレイ」、「ファン」、「吸入孔」、及び「フラッシングユニット」は、それぞれ、本件訂正特許発明1の「インク液化部材」、「貯留部」、「排気手段」、「開口部」、及び「インク回収部材」に相当する。 引用発明2の「ダクト部」は、インクミスト回収機構とインクトレイとの間から横向きに分岐するものであるから、「横向きに分岐した空気流路」といえ、また、ダクト部は、ファンとトレイ部とを連結する部分であり、ダクト部の他端部は、ファンが配設された位置に対応するカバー部の側面に連結されているから、「インク液化部材と貯留部との間から横向きに分岐する」排気手段を備えるといえる。 また、引用発明2の「インクミストの吸引流路」は、吸入孔から重力方向に流れてインクミスト回収機構(フラッシングユニット)内に入り、インクミスト回収機構の下側から、ファン側に曲げられるものであって、吸引源はファンであるから、排気手段が、「開口部から重力方向に流れてインク回収部材内に入り、インク液化部材の下側から、横向きに分岐した空気流路へと流れる気流を発生させる」といえる。 そうすると、引用発明2は、上記相違点に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項における「インク液化部材と貯留部との間から横向きに分岐する」排気手段を備え、排気手段が、「開口部から重力方向に流れてインク回収部材内に入り、インク液化部材の下側から出て、横向きに分岐した空気流路へと流れる気流を発生させ」との事項を備えるものである。 ここで、本件訂正特許発明1の「空気流路への分岐位置は重力方向で中空部の開口部側にあ」ることにより、開口部から排気ファンに至る空気の流路を、相対的に、短く構成し得るといえるが、開口部から排気ファンに至る空気の流路の相対的な長短と、「空気流路への分岐位置」が本件特許明細書に記載の「排気ファン4の吸引力を確実に開口部1に作用させて、インクを確実に吸い寄せることが可能であり、インクジェットプリンタ20を汚すことなく清潔に保つことができる。」(【0047】参照。)という効果を奏する位置であるか否かとは、一義的に関係付けられるものではない。 そうすると、本件訂正特許発明1の「空気流路への分岐位置は重力方向で中空部の開口部側にあ」るとの事項は、当業者が適宜なし得る設計的事項といえる。 そして、引用発明1も引用発明2も、インクジェットプリンタである点で技術分野が共通する。 また、引用発明1も引用発明2も、インクミストの飛散を抑制し、回収する装置を提供するという点で課題が共通する。 そうすると、引用発明1において、引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。 したがって、引用発明1において、引用発明2を適用することにより、上記相違点に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 そして、本件訂正特許発明1の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1、及び引用発明2から、当業者が予測しうる範囲内のものである。 よって、本件訂正特許発明1は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ない。 (6)本件訂正特許発明2について 引用発明1の「印刷媒体を支持する媒体支持手段」は、本件訂正特許発明2の「インクを吐出する対象の印刷媒体を支持する支持部」に相当し、引用発明1の「インク受容ユニット」は、「媒体支持手段の外側に設けられ」ているから、本件訂正特許発明2の「インク回収部材は、支持部の外側に設けられている」といえる。 そうすると、引用発明1は、訂正後の請求項2に係る発明特定事項を全て備えている。 よって、本件訂正特許発明2は、上記(5)と同様の理由により、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ない。 (7)本件訂正特許発明3について 引用発明1の「集約メッシュ」は、「上下に複数層並べて取り付ける」ものであるから、複数の網状体が積層されたものといえる。 そうすると、引用発明1は、訂正後の請求項3に係る発明特定事項を全て備えている。 よって、本件訂正特許発明3は、上記(5)と同様の理由により、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ない。 (8)本件訂正特許発明4について 引用発明2の「タンク」は、「インクミスト回収機構の上面部及びトレイ部から滴下したインクを貯留する部分であるインクトレイの底面部に、貯留されたインクを排出するための排出口を設け、排出口の先端部に、取り外し自在に接続されている」ものであるから、本件訂正特許発明4の「インク回収部材の外部に設けられた排出部に接続されている貯留部」といえる。 そうすると、訂正後の請求項4に係る発明特定事項は、引用発明2に記載されている。 よって、本件訂正特許発明4は、上記(5)と同様の理由により、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ない。 (9)本件訂正特許発明5及び6について 本件訂正特許発明5及び6は、本件訂正特許発明1の「インクジェットプリンタ」を、それぞれ、「インク回収部材」、及び「インク回収方法」とカテゴリーを変えたものであって、実質的に本願発明1と相違しないから、本件訂正特許発明5及び6は、上記(5)と同様の理由により、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ない。 4.むすび 以上のとおり、本件訂正特許発明1乃至本件訂正特許発明6は、特許法第29条第2項の規定を満たさないから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700226

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