特許異議申立
2016-700160
光学シミュレーション装置および方法並びにプログラム
- 審判番号
- 2016-700160
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-147016外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年02月24日
- 審決日
- 2017年01月30日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】富士フイルム株式会社
- 【権利者代理人】柳田 征史
- 【権利者代理人】佐久間 剛
- 【異議申立人】高橋 昌嗣
- 分類
- P1651.121-YAA(A61B) / P1651.113-YAA(A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5770684号発明「光学シミュレーション装置および方法並びにプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5770684号の特許請求の範囲を平成28年12月28日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕、17、18について訂正することを認める。
特許第5770684号の請求項7~18に係る特許を維持する。
特許第5770684号の請求項1~6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第5770684号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、2012年(平成24年)6月29日の出願であって、平成27年7月3日に特許の設定登録がされ、平成28年2月24日にその特許に対し、特許異議申立人により特許異議の申立てがなされたものである。
その後、当審において、同年5月24日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、同年7月25日付けで訂正請求書及び意見書を提出し、特許異議申立人により同年9月21日付けで意見書が提出され、さらに、当審において、同年10月27日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、同年12月28日付けで訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)及び意見書を提出したものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1~6を削除する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7に「前記表示制御部が、前記光強度の空間分布に対して、前記多層構造のシミュレーションモデルの層境界に対応した反射光の強度変化部分を表す画像を重ねて表示させるものであることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の光学シミュレーション装置。」と記載されているのを、
「光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層が散乱体である多層構造のシミュレーションモデルが設定されるシミュレーションモデル設定部と、
前記多層構造のシミュレーションモデルに対して光を入射した際における前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化をシミュレーションする光学シミュレーション部と、
該光学シミュレーション部においてシミュレーションされた前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化に基づいて生成された画像を表示部に表示させる表示制御部とを備え、
前記表示制御部が、前記光強度の空間分布に対して、前記多層構造のシミュレーションモデルの層境界に対応した反射光の強度変化部分を表す画像を重ねて表示させるものであることを特徴とする光学シミュレーション装置。」に訂正する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7とする。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に「前記表示制御部が、前記光強度の空間分布によって表される前記光の反射光と前記光との干渉信号強度に基づく画像を表示させるものであることを特徴とする請求項1記載の光学シミュレーション装置。」と記載されているのを、
「光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層が散乱体である多層構造のシミュレーションモデルが設定されるシミュレーションモデル設定部と、
前記多層構造のシミュレーションモデルに対して光を入射した際における前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化をシミュレーションする光学シミュレーション部と、
該光学シミュレーション部においてシミュレーションされた前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化に基づいて生成された画像を表示部に表示させる表示制御部とを備え、
前記表示制御部が、前記光強度の空間分布によって表される前記光の反射光と前記光との干渉信号強度に基づく画像を表示させるものであることを特徴とする光学シミュレーション装置。」に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7から9いずれか1項とする。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項13の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7から12いずれか1項とする。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項14の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7から13いずれか1項とする。
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項15に「前記散乱体の層が、微粒子をランダムに分散させたものであり、前記微粒子の屈折率、サイズおよび濃度に基づく散乱係数を設定することによってモデル化されるものであることを特徴とする請求項1から14いずれか1項記載の光学シミュレーション装置。」と記載されているのを、
「光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層が散乱体である多層構造のシミュレーションモデルが設定されるシミュレーションモデル設定部と、
前記多層構造のシミュレーションモデルに対して光を入射した際における前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化をシミュレーションする光学シミュレーション部と、
該光学シミュレーション部においてシミュレーションされた前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化に基づいて生成された画像を表示部に表示させる表示制御部とを備え、
前記散乱体の層が、微粒子をランダムに分散させたものであり、前記微粒子の屈折率、サイズおよび濃度に基づく散乱係数を設定することによってモデル化されるものであることを特徴とする請求項1から14いずれか1項記載の光学シミュレーション装置。」に訂正する。
ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項16の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7から15いずれか1項とする。
コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項17に「光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層が散乱体である多層構造のシミュレーションモデルを設定し、
該多層構造のシミュレーションモデルに対して光を入射した際における前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化をシミュレーションし、
該シミュレーションした前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化に基づいて生成された画像を表示することを特徴とする光学シミュレーション方法。」と記載されているのを、
「光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層が散乱体である多層構造のシミュレーションモデルを設定し、
該多層構造のシミュレーションモデルに対して光を入射した際における前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化をシミュレーションし、
該シミュレーションした前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化に基づいて生成された画像を表示することを特徴とする光学シミュレーション方法であって、
前記光強度の空間分布に対して、前記多層構造のシミュレーションモデルの層境界に対応した反射光の強度変化部分を表す画像を重ねて表示させることを特徴とする光学シミュレーション方法。」に訂正する。
サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項18に「コンピュータを、光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層が散乱体である多層構造のシミュレーションモデルが設定されるシミュレーションモデル設定部と、
前記多層構造のシミュレーションモデルに対して光を入射した際における前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化をシミュレーションする光学シミュレーション部と、
該光学シミュレーション部においてシミュレーションされた前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化に基づいて生成された画像を表示部に表示させる表示制御部として機能させることを特徴とする光学シミュレーションプログラム。」と記載されているのを、
「コンピュータを、光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層が散乱体である多層構造のシミュレーションモデルが設定されるシミュレーションモデル設定部と、
前記多層構造のシミュレーションモデルに対して光を入射した際における前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化をシミュレーションする光学シミュレーション部と、
該光学シミュレーション部においてシミュレーションされた前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化に基づいて生成された画像を表示部に表示させる表示制御部として機能させることを特徴とする光学シミュレーションプログラムであって、
前記表示制御部が、前記光強度の空間分布に対して、前記多層構造のシミュレーションモデルの層境界に対応した反射光の強度変化部分を表す画像を重ねて表示させるものであることを特徴とする光学シミュレーション方法。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、新規事項追加の有無、及び一群の請求項の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、請求項1~6をそれぞれ削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項1は、請求項1~6をそれぞれ削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項1は、請求項1~6をそれぞれ削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項2は、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項8の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7とする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項8の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項8の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7とする訂正であるから、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正前の請求項9が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項4は、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項10の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7から9いずれか1項とする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項10の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7から9いずれか1項とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項10の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7から9いずれか1項とする訂正であるから、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項6は、特許請求の範囲の請求項13の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7から12いずれか1項とする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項6は、特許請求の範囲の請求項13の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7から12いずれか1項とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項6は、特許請求の範囲の請求項13の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7から12いずれか1項とする訂正であるから、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項7は、特許請求の範囲の請求項14の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7から13いずれか1項とする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項7は、特許請求の範囲の請求項14の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7から13いずれか1項とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項7は、特許請求の範囲の請求項10の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7から13いずれか1項とする訂正であるから、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項8は、訂正前の請求項15が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項8は、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(9)訂正事項9について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項9は、特許請求の範囲の請求項16の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7から15いずれか1項とする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項9は、特許請求の範囲の請求項16の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7から15いずれか1項とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項9は、特許請求の範囲の請求項16の引用先を、請求項1~6の削除に伴って、請求項7から15いずれか1項とする訂正であるから、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(10)訂正事項10について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項10は、訂正前の請求項17に対して訂正前の請求項7を加える訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項10は、訂正前の請求項17に対して訂正前の請求項7を加える訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項10は、訂正前の請求項17に対して訂正前の請求項7を加える訂正であるから、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(11)訂正事項11について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項11は、訂正前の請求項18に対して訂正前の請求項7を加える訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項11は、訂正前の請求項18に対して訂正前の請求項7を加える訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 新規事項追加の有無
訂正事項11は、訂正前の請求項18に対して訂正前の請求項7を加える訂正であるから、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(12)一群の請求項の適否
訂正前の請求項1~16は、請求項2~16が請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、一群の請求項である。
そして、上記訂正事項1~11に係る本件訂正は、請求項〔1~16〕、17、18の訂正を請求するものであるから、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項ごとに」適法に請求されたものである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~16〕、17、18について訂正を認める。
第3 本件訂正発明について
本件訂正請求により訂正された請求項1~18に係る発明(削除された請求項を含む、以下、「本件訂正発明1~18」という)は、その特許請求の範囲の請求項1~18に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「
【請求項1】 (削除)
【請求項2】 (削除)
【請求項3】 (削除)
【請求項4】 (削除)
【請求項5】 (削除)
【請求項6】 (削除)
【請求項7】
光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層が散乱体である多層構造のシミュレーションモデルが設定されるシミュレーションモデル設定部と、
前記多層構造のシミュレーションモデルに対して光を入射した際における前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化をシミュレーションする光学シミュレーション部と、
該光学シミュレーション部においてシミュレーションされた前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化に基づいて生成された画像を表示部に表示させる表示制御部とを備え、
前記表示制御部が、前記光強度の空間分布に対して、前記多層構造のシミュレーションモデルの層境界に対応した反射光の強度変化部分を表す画像を重ねて表示させるものであることを特徴とする光学シミュレーション装置。
【請求項8】
前記表示制御部が、所定の入力部によって受け付けられた位置における光強度の情報を表示させるものであることを特徴とする請求項7記載の光学シミュレーション装置。
【請求項9】
光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層が散乱体である多層構造のシミュレーションモデルが設定されるシミュレーションモデル設定部と、
前記多層構造のシミュレーションモデルに対して光を入射した際における前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化をシミュレーションする光学シミュレーション部と、
該光学シミュレーション部においてシミュレーションされた前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化に基づいて生成された画像を表示部に表示させる表示制御部とを備え、
前記表示制御部が、前記光強度の空間分布によって表される前記光の反射光と前記光との干渉信号強度に基づく画像を表示させるものであることを特徴とする光学シミュレーション装置。
【請求項10】
前記多層構造の少なくとも一部が、生体の一部の構造であることを特徴とする請求項7から9いずれか1項記載の光学シミュレーション装置。
【請求項11】
前記多層構造の少なくとも一部が、皮膚または粘膜であることを特徴とする請求項10記載の光学シミュレーション装置。
【請求項12】
前記多層構造の少なくとも一部が、前記皮膚と該皮膚に塗布される塗布剤からなる層であることを特徴とする請求項11記載の光学シミュレーション装置。
【請求項13】
前記多層構造の各層の境界が、凹凸面または曲面であることを特徴とする請求項7から12いずれか1項記載の光学シミュレーション装置。
【請求項14】
前記多層構造の各層内または境界部分に、局所的に前記各層とは異なる光学特性を有する領域が設けられていることを特徴とする請求項7から13いずれか1項記載の光学シミュレーション装置。
【請求項15】
光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層が散乱体である多層構造のシミュレーションモデルが設定されるシミュレーションモデル設定部と、
前記多層構造のシミュレーションモデルに対して光を入射した際における前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化をシミュレーションする光学シミュレーション部と、
該光学シミュレーション部においてシミュレーションされた前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化に基づいて生成された画像を表示部に表示させる表示制御部とを備え、
前記散乱体の層が、微粒子をランダムに分散させたものであり、前記微粒子の屈折率、サイズおよび濃度に基づく散乱係数を設定することによってモデル化されるものであることを特徴とする光学シミュレーション装置。
【請求項16】
前記光がパルス光であることを特徴とする請求項7から15いずれか1項記載の光学シミュレーション装置。
【請求項17】
光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層が散乱体である多層構造のシミュレーションモデルを設定し、
該多層構造のシミュレーションモデルに対して光を入射した際における前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化をシミュレーションし、
該シミュレーションした前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化に基づいて生成された画像を表示することを特徴とする光学シミュレーション方法であって、
前記光強度の空間分布に対して、前記多層構造のシミュレーションモデルの層境界に対応した反射光の強度変化部分を表す画像を重ねて表示させることを特徴とする光学シミュレーション方法。
【請求項18】
コンピュータを、光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層が散乱体である多層構造のシミュレーションモデルが設定されるシミュレーションモデル設定部と、
前記多層構造のシミュレーションモデルに対して光を入射した際における前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化をシミュレーションする光学シミュレーション部と、
該光学シミュレーション部においてシミュレーションされた前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化に基づいて生成された画像を表示部に表示させる表示制御部として機能させることを特徴とする光学シミュレーションプログラムであって、
前記表示制御部が、前記光強度の空間分布に対して、前記多層構造のシミュレーションモデルの層境界に対応した反射光の強度変化部分を表す画像を重ねて表示させるものであることを特徴とする光学シミュレーションプログラム。」
第4 申立て理由及び取消理由の概要
1 申立て理由の概要
特許異議申立人の申立て理由は、以下のとおりである。
(1)新規性
本件特許の請求項1~3、5、8、10、11、15~18に係る発明(特許の設定登録時の特許請求の範囲に記載されたもの)は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)進歩性
本件特許の請求項1~8、10、11、15~18に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項9~11に係る発明は、甲1~3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項12~16に係る発明は、甲1及び甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項12~16に係る発明は、甲1~4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件特許の請求項1~18に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
特許異議の申立て理由の証拠は、以下のとおりである。
・甲第1号証:山田幸生、高橋修一、谷川ゆかり「散乱性媒質中の放射エネルギーの伝搬と生体医用光学」光学、日本光学会(応用物理学会)、1997年、第26巻第12号、p.649-656(以下、「甲1」という。)
・甲第2号証:E Pickwell 他「In vivo study of human skin using pulsed terahertz radiation」Physics in Medicine and Biology、p.1595-1607(以下、「甲2」という。)
・甲第3号証:David C.Reed 他「Computational Model of OCT in Lung Tissue」Proc.of SPIE(国際光学技術協会)Vol.7570 p.757001-1 757001-7(以下、「甲3」という。)
・甲第4号証:元田真史 他「毛穴を考慮した皮膚層からの光反射特性と微粒子塗布による影響」日本光学会年次学術講演会、Optics & Photonics Japan 2009 2009年11月24-26日 朱鷺メッセ:新潟コンベンションセンター 予稿集 p.512-513(以下、「甲4」という。)
2 取消理由の概要
当審において平成28年10月27日付けで通知した取消理由は、概略以下のとおりである。
本件特許の請求項1~6、8、10、11、13、14、16~18に係る発明(平成28年7月25日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載されたもの)は、本件特許の出願前日本国内において頒布された甲1及び甲4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。
なお、平成28年5月24日付けで通知した取消理由は、証拠として甲1だけを採用して通知したものであり、その内容は、証拠として甲1及び甲4を採用した上記取消理由に含まれるものである。
第5 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
1 申立て理由及び取消理由の主引用例である「甲1」には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。
(甲1ア)
「以下に層構造を成している頭部を模擬した半球状モデルに対して有限要素法を用いて光伝搬を説いた例20)を示す。
2.3 ヒト頭部模型モデル内光伝搬
ヒト頭部は、外側より皮膚、頭蓋骨、透明層(脳脊髄液層)、灰白質、白質からなる層構造を有し、各層はそれぞれ光学的に特有の散乱と吸収特性をもつ。このようなヒト頭部を簡略化して図6のような層構造をもった直径70mmの半球モデルを作り、有限要素解析のための要素分割を行った。表面の1層を皮膚、その内側2層を頭蓋骨、さらにその内側1層を灰白質、残りを白質とし、透明層については今回は省略した。各層の吸収係数や散乱係数は、文献21)値を参考にして表2のように与えた。
底面の1点にパルス光を入射された後のパルス光の伝搬の様子(積分強度φ)を画像化したものが図7である。各時刻において最大の積分強度の値で画像を無次元化しているため最大強度の部分を同じ濃さで示しているが、実際には最大強度は時間と共に急激に小さくなっている。表2のように皮膚や頭蓋骨の吸収よりも脳組織の吸収を大きくしたため、脳内部に入った光は吸収されてしまい、その結果、パルス光の一部が皮膚と頭蓋骨層を通って反対側まで到達している。脳組織の吸収を外側と同じにすれば、パルス光は中心部を通って反対側に届くようになる(図9(a))。」(652頁右欄下から7行目~653頁左欄18行目)
(甲1イ) 図6
(甲1ウ) 表2
(甲1エ) 図7
2 甲1に記載された発明の認定
(1)上記(甲1ア)の「層構造を成している頭部を模擬した半球状モデルに対して有限要素法を用いて光伝搬」解析する技術は、光学シミュレーション装置、光学シミュレーション方法、又は光学シミュレーションプログラムであることは明らかである。
(2)上記(甲1ア)及び(甲1エ)の図7によれば、「底面の1点にパルス光を入射された後のパルス光の伝搬の様子(積分強度φ)を」経時的に「画像化」していることが理解できる。
(3)上記(1)及び(2)を踏まえ、上記1の甲1ア~エの記載を総合すると、甲1には、
「層構造を成している頭部を模擬した半球状モデルに対して有限要素法を用いて光伝搬解析する光学シミュレーション装置(光学シミュレーション方法、又は光学シミュレーションプログラム)であって、
ヒト頭部は、外側より皮膚、頭蓋骨、透明層(脳脊髄液層)、灰白質、白質からなる層構造を有し、各層はそれぞれ光学的に特有の散乱と吸収特性をもち、このようなヒト頭部を簡略化して層構造をもった直径70mmの半球モデルを作り、有限要素解析のための要素分割を行ない、各層に吸収係数や散乱係数を与え、
底面の1点にパルス光を入射された後のパルス光の伝搬の様子(積分強度φ)を経時的に画像化した、
光学シミュレーション装置(光学シミュレーション方法、又は光学シミュレーションプログラム)。」の発明が記載されている(以下、「甲1発明」という。)。
第5 当審の判断
1 取消理由(進歩性)についての検討
本件特許の請求項1~6は本件訂正請求により削除されたので、請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立ては却下する。
以下、本件訂正発明7~18について順次検討する。
(1)本件訂正発明7について
ア 本件訂正発明7と甲1発明との対比
(ア)甲1発明の「層構造を成している頭部を模擬した半球状モデル」は、「ヒト頭部は、外側より皮膚、頭蓋骨、透明層(脳脊髄液層)、灰白質、白質からなる層構造を有し、各層はそれぞれ光学的に特有の散乱と吸収特性をもち、このようなヒト頭部」を「模擬」し、「各層に吸収係数や散乱係数を与え」るものであるから、本件訂正発明7の「光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層が散乱体である多層構造のシミュレーションモデル」に相当する。
そして、甲1発明の「光学シミュレーション装置」が、上記半球状モデルを設定するためのシミュレーションモデル設定部を備えていることは自明である。
よって、甲1発明の「層構造を成している頭部を模擬した半球状モデル」を作成するためのシミュレーションモデル設定部は、本件訂正発明7の「光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層が散乱体である多層構造のシミュレーションモデルが設定されるシミュレーションモデル設定部」に相当する。
(イ)甲1発明の「光学シミュレーション装置」は、「層構造を成している頭部を模擬した半球状モデルに対して有限要素法を用いて光伝搬解析する」ものであって、「底面の1点にパルス光を入射された後のパルス光の伝搬の様子(積分強度φ)を経時的に画像化」するものであることから、「パルス光の伝搬の様子(積分強度φ)を経時的に」シミュレーションする光学シミュレーション部を備えていることは自明である。
よって、甲1発明の「層構造を成している頭部を模擬した半球状モデルに対して有限要素法を用いて光伝搬解析する」ものであって、「底面の1点にパルス光を入射された後のパルス光の伝搬の様子(積分強度φ)を経時的に」シミュレーションする光学シミュレーション部は、本件訂正発明7の「前記多層構造のシミュレーションモデルに対して光を入射した際における前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化をシミュレーションする光学シミュレーション部」に相当する。
(ウ)甲1発明の「光学シミュレーション装置」は、「層構造を成している頭部を模擬した半球状モデルに対して有限要素法を用いて光伝搬解析する」ものであって、「底面の1点にパルス光を入射された後のパルス光の伝搬の様子(積分強度φ)を経時的に画像化」するものであることから、「画像化」のための表示制御部を備えていることは自明である。
よって、甲1発明の「層構造を成している頭部を模擬した半球状モデルに対して有限要素法を用いて光伝搬解析する」ものであって、「底面の1点にパルス光を入射された後のパルス光の伝搬の様子(積分強度φ)を経時的に画像化」する表示制御部は、本件訂正発明7の「該光学シミュレーション部においてシミュレーションされた前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化に基づいて生成された画像を表示部に表示させる表示制御部」に相当する。
イ 本件訂正発明7と甲1発明との一致点、相違点
よって、本件訂正発明7と甲1発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。
(一致点)
「光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層が散乱体である多層構造のシミュレーションモデルが設定されるシミュレーションモデル設定部と、
前記多層構造のシミュレーションモデルに対して光を入射した際における前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化をシミュレーションする光学シミュレーション部と、
該光学シミュレーション部においてシミュレーションされた前記多層構造内での光強度の空間分布の時間変化に基づいて生成された画像を表示部に表示させる表示制御部とを備える、
光学シミュレーション装置。」
(相違点1)
表示制御部について、本件訂正発明7では、「前記光強度の空間分布に対して、前記多層構造のシミュレーションモデルの層境界に対応した反射光の強度変化部分を表す画像を重ねて表示させるものである」のに対し、甲1発明では、この点につき特定されていない点。
ウ 判断
上記相違点1に係る発明特定事項、すなわち、光学シミュレーション装置において、表示制御部が、シミュレーションされた光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造内での「光強度の空間分布に対して」、前記複数の層のうちの少なくとも1層が散乱体である「多層構造のシミュレーションモデルの層境界に対応した反射光の強度変化部分を表す画像を重ねて表示させる」ことは、甲1における他の記載箇所及び甲2~4のいずれにも開示も示唆もされていない。
よって、甲1発明において、上記相違点1に係る発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
エ 小括
上記ウで検討したとおりであるから、本件訂正発明7は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件訂正発明8について
本件訂正発明7は、上記(1)で検討したとおり、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことから、本件訂正発明7をさらに限定する本件訂正発明8も、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件訂正発明9について
ア 本件訂正発明9と甲1発明との対比
対比については、上記(1)アを参照されたい。
イ 本件訂正発明9と甲1発明との一致点、相違点
本件訂正発明9と甲1発明とは、次の点で相違する。一致点については、上記(1)イを参照されたい。
(相違点2)
表示制御部について、本件訂正発明9では、「前記光強度の空間分布によって表される前記光の反射光と前記光との干渉信号強度に基づく画像を表示させるものである」のに対し、甲1発明では、この点につき特定されていない点。
ウ 判断
上記相違点2に係る発明特定事項、すなわち、光学シミュレーション装置において、表示制御部が、シミュレーションされた光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造内での「光強度の空間分布によって表される」前記多層構造のシミュレーションモデルに対して入射した「光の反射光と」、前記多層構造のシミュレーションモデルに対して入射した「光との干渉信号強度に基づく画像を表示させる」ことは、甲1における他の記載箇所及び甲2~4のいずれにも開示も示唆もされていない。
よって、甲1発明において、上記相違点2に係る発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
エ 小括
上記ウで検討したとおりであるから、本件訂正発明9は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件訂正発明10~14について
本件訂正発明7~9は、上記(1)~(3)で検討したとおり、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことから、本件訂正発明7~9いずれか1項をさらに限定する本件訂正発明10~14も、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)本件訂正発明15について
ア 本件訂正発明15と甲1発明との対比
対比については、上記(1)アを参照されたい。
イ 本件訂正発明15と甲1発明との一致点、相違点
本件訂正発明15と甲1発明とは、次の点で相違する。一致点については、上記(1)イを参照されたい。
(相違点3)
散乱体の層について、本件訂正発明15では、「微粒子をランダムに分散させたものであり、前記微粒子の屈折率、サイズおよび濃度に基づく散乱係数を設定することによってモデル化されるものである」のに対し、甲1発明では、この点につき特定されていない点。
ウ 判断
上記相違点3に係る発明特定事項、すなわち、光学シミュレーション装置において、光学特性が互いに異なる複数の層を積層した多層構造であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層の散乱体の層が、「微粒子をランダムに分散させたものであり、前記微粒子の屈折率、サイズおよび濃度に基づく散乱係数を設定することによってモデル化されるものである」ことは、甲1における他の記載箇所及び甲2~4のいずれにも開示も示唆もされていない。
よって、甲1発明において、上記相違点3に係る発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(6)本件訂正発明16について
本件訂正発明7~15は、上記(1)~(5)で検討したとおり、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことから、本件訂正発明7~15いずれか1項をさらに限定する本件訂正発明16も、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(7)本件訂正発明17及び18について
本件訂正発明17及び18は、本件訂正発明7に記載の光学シミュレーション装置における発明特定事項を変更せず、発明のカテゴリをそれぞれ光学シミュレーション方法及び光学シミュレーションプログラムに変更しただけのものである。
よって、本件訂正発明1が、上記(1)で検討したとおり、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことから、本件訂正発明17及び18は、いずれも、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(8)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人が提出した平成28年9月21日付けの意見書では、本件訂正発明7~18についての具体的な反論をしていない。
(9)小括
よって、当審が通知した取消理由によっては、本件訂正発明7~18に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由以外の申立て理由についての検討
申立て理由のうち上記「第4 1(2)進歩性」についての判断は、上記1で検討したとおりであるので、以下、(1)新規性について判断する。
(1)新規性
本件訂正発明8、10、11、15~18は、上記1で検討したとおり、それぞれ、甲1発明との対比において、相違点として、少なくとも相違点1~3のいずれかを認定することができるから、本件訂正発明8、10、11、15~18は、いずれも甲1に記載された発明であるとはいえない。
(2)小括
よって、取消理由以外の申立ての理由及び証拠によっては、本件訂正発明7~18に係る特許を取り消すことはできない。
第6 結び
以上のとおりであるから、取消理由及び申立ての理由によっては、本件訂正発明7~18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明7~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許の請求項1~6は、本件訂正請求により削除されたので、請求項1~6に係る特許に対する申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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