特許訂正審判
2016-390146
イブプロフェンリシナートの経口投与用の懸濁液
- 審判番号
- 2016-390146
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2012-507789外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年11月04日
- 審決日
- 2017年02月14日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P141 .852-Y (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5977672号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5977672号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本件特許第5977672号に係る発明は、平成22年4月27日(パリ条約による優先権主張 2009年4月27日(ES)スペイン、2009年4月27日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする特願2012-507789号の請求項1~9に係る発明について、平成28年7月29日に特許権の設定登録がなされたものであるところ、平成28年11月4日に本件訂正審判が請求されたものである。
2.請求の趣旨
特許第5977672号に係る明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正することを認める、との審決を求める。
3.訂正事項
(1)訂正事項1
本件特許明細書の段落【0004】に「水溶液中において少し溶解性を示す物質になることである。」と記載されているのを、「水溶液中において高い溶解性を示す物質になることである。」に訂正する。
(2)訂正事項2
本件特許明細書の段落【0018】に「スクロースナトリウム(sodium sucrose)」と記載されているのを、「サッカリンナトリウム(sodium saccharin)に訂正する。
(3)訂正事項3
本件特許明細書の段落【0021】、【0025】(表2)、【0027】(表3)、【0031】(表5)、【0040】、【0051】にそれぞれ「スクロースナトリウム」と記載されているのを、「サッカリンナトリウム」に訂正する。
4.訂正の適否の判断
(1)訂正の目的
ア 訂正事項1について
訂正前の本件特許明細書の段落【0004】に記載された「イブプロフェンが素早く完全に水に溶解する時に、イブプロフェンが、水溶液中において少し溶解性を示す物質になることである。」は、前半と後半の内容が相矛盾する記載であり、技術的に意味を成していない。したがって、この記載に誤記が存在することは明らかである。
そして、同段落【0004】の記載全体は「イブプロフェンリシナートは、化学合成のプロセスによってイブプロフェンおよびリジンアミノ酸から得られる塩である。イブプロフェンがリジン塩を形成する際に起こるもっとも重要な物理化学的な変化の1つは、イブプロフェンが素早く完全に水に溶解する時に、イブプロフェンが、水溶液中において少し溶解性を示す物質になることである。このことは、胃腸への吸収が、より急速かつ均質に起こることを意味する。これによって、イブプロフェンの官能味覚特性(organoleptic taste characteristics)は悪化するものの、イブプロフェンの薬物動態特性が変化し、別の好適な治療特性が付加される。」というものであり、この記載に続いて、同段落【0005】には「イブプロフェンリシナートの主要な効果の1つは、経口投与できる可溶性の塩であるので、イブプロフェンリシナートが、広い胃の表面上で均一に分散できる。これによって、一方では、より急速かつ均一な吸収が可能になり、他方では、水に対して不溶性の鎮痛薬、解熱薬、および、抗炎症薬に関連する副作用の発生率を著しく低下させることが可能になる。これらの効果は、イブプロフェンリシナートの動力学的特性および許容特性が、イブプロフェンに比べて良好であることを意味する。」との記載があることから、同段落【0004】には、イブプロフェンがリジン塩を形成すると水に対する溶解性が高くなることが記載されているのであって、同段落【0004】に記載された「水溶液中において少し溶解性を示す物質になることである。」が「水溶液中において高い溶解性を示す物質になることである。」の誤記であることは、明白である。
したがって、訂正事項1は、誤記の訂正に該当し、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 訂正事項2及び訂正事項3について
訂正前の本件特許明細書の段落【0018】に記載された「スクロースナトリウム(sodium sucrose)」ならびに同段落【0021】、同段落【0025】(表2)、同段落【0027】(表3)、同段落【0031】(表5)、同段落【0040】および同段落【0051】に記載された「スクロースナトリウム」で表される物質は存在しない。したがって、これらの記載が何らかの誤記であることは明らかである。
そして、同段落【0018】には「さらにより具体的な別の態様では、本発明の薬学的組成物の甘味料は、0.10重量%~0.20重量%にて含まれる。さらにより具体的な別の態様では、上記甘味料は、スクロースナトリウム(sodium sucrose)、サイクラミン酸ナトリウム、および、アスパルテームである。」と記載されていることから、スクロースナトリウム(sodium sucrose)が「サイクラミン酸ナトリウム」および「アスパルテーム」とともに、甘味料の例示として記載されるものであることが理解できる。
また、同段落【0007】には「イブプロフェンリシナートは、通常糖を含んでいるので、糖尿病を患う患者には投与できない。」との記載があり、同段落【0009】には「本発明は、小児に対して投与することが可能であり、かつ、糖尿病またはフルクトース/ショ糖不耐症(fructose/sucrose intolerance)を患う患者に適切に投与可能なように、鎮痛活性、解熱活性および抗炎症活性を有し、ショ糖を含まず、」との記載があり、同段落【0011】には「より具体的な態様において、上記薬学的組成物は、イブプロフェンリシナートおよび薬学的に許容可能な賦形剤を、経口投与可能な懸濁液の形態で含んでいるが、ショ糖を含んでいない。」との記載があることから、「スクロースナトリウム(sodium sucrose)」および「スクロースナトリウム」がそれぞれ、「スクロース(sucrose)」および「スクロース」を誤記したものではないことが明白である。
一方、当業界における代表的な甘味料として「サッカリンナトリウム」が認識されており、甘味料の例示として「サイクラミン酸ナトリウム」および「アスパルテーム」とともに挙げられるものとして、理解することができる。
したがって、同段落【0018】に記載された「スクロースナトリウム(sodium sucrose)」が「サッカリンナトリウム(sodium saccharin)」の誤記であり、同段落【0021】、同段落【0025】(表2)、同段落【0027】(表3)、同段落【0031】(表5)、同段落【0040】および同段落【0051】に記載された「スクロースナトリウム」が「サッカリンナトリウム」の誤記であることは、明白である。
したがって、訂正事項2及び訂正事項3は、誤記の訂正に該当し、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものである。
(2)その他の要件について
訂正事項1~訂正事項3に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。
また、訂正事項1~訂正事項3に係る訂正は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明になるものではないから、特許法第126条第7項に規定する要件に適合するものである。
5.むすび
以上のとおり、本件審判請求による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものであるので、訂正を認める。
よって、結論のとおり審決する。
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