特許訂正審判
2025-390147
代謝を緩徐化するための補酵素アンタゴニストの使用
- 審判番号
- 2025-390147
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2022-578629
- 登録番号
- 7737408
- 請求日
- 2025年10月17日
- 審決日
- 2026年03月16日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】タヴァールジェニクス ゲー・エム・ベー・ハー
- 【請求人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【請求人代理人】神谷 雪恵
- 審判長/審判官
- 審判長 冨永 みどり
- 審判官 小堀 麻子
- 審判官 星 功介
- 分類
- P141 .852-Y (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条、特許法第126条第3項、特許法第184条の19、特許法第126条第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7737408号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第7737408号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7737408号(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2022-578629号)は、2021年(令和3年)6月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2020年6月27日 (DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、令和7年9月2日に特許権の設定登録(請求項の数3)がなされたものである。
そして、令和7年10月17日に訂正審判(以下「本件訂正審判」という。)の請求がなされ、同年11月25日付けで訂正拒絶理由が通知され、令和8年1月20日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 令和8年1月20日提出の手続補正書による本件訂正審判の審判請求書の補正及びその適否
1 本件訂正審判の審判請求書の補正
令和8年1月20日提出の手続補正書による補正は、審判請求書に記載された訂正事項2を削除する補正である。
2 補正の適否
審判請求書において、訂正事項として訂正事項1及び2を請求していたところ、上記審判請求書の補正は、令和7年11月25日付けで通知した訂正拒絶理由に対応して、当該訂正事項のうちの一部の訂正事項である訂正事項2を削除する補正であるから、当該補正は、審判請求書の要旨を変更するものではなく、当該補正を認める。
そして、当該補正により、上記訂正拒絶理由は解消している。
第3 請求の趣旨及び訂正の内容
1 請求の趣旨
令和8年1月20日提出の手続補正書により補正された審判請求書の請求の趣旨は、「特許第7737408号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求める」というものである。
2 訂正の内容
上記第2のとおり、審判請求書の補正は認められたので、本件訂正審判の請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1からなるものである(下線は訂正箇所を示す。)。
[訂正事項1]特許請求の範囲の請求項1に「ベンフォオキシチアミン(B-OT)および/ またはオキサチアミン(OT)を含有する、疾患を有する患者の治療的処置のための組成物であって、」と記載されているのを、「ベンフォオキシチアミン(B-OT)および/ またはオキシチアミン(OT)を含有する、疾患を有する患者の治療的処置のための組成物であって、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び請求項3も同様に訂正する)。
なお、本件訂正前の請求項2及び3は、それぞれ請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正前の請求項2及び3に係る本件訂正は、特許法第126条第3項に規定する一群の請求項について請求されたものである。
第4 当審の判断
1 訂正の目的について
(1)特許法126条1項ただし書2号にいう「誤記の訂正」とは、本来その意であることが、特許請求の範囲、明細書又は図面などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいうと解される。
以下、これを本件について検討する。
(2)訂正事項1は、請求項1における「オキサチアミン(OT)」との記載を「オキシチアミン(OT)」との記載に訂正するものである。
ここで、本件訂正前の請求項1の「ベンフォオキシチアミン(B-OT)および/ またはオキサチアミン(OT)を含有する・・・組成物であって」との記載からみて、「オキサチアミン(OT)」という用語は何らかの物質を指すと解されるものの、一般的な技術用語ではなく、また、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面には、「オキサチアミン(OT)」との記載はないから、どのような物質を意味するのか明らかであるとはいえない。
(3)一方で、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面には、次の事項が記載されている。なお、以下の摘記において、下線は当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。
「【0031】
好ましい一実施形態では、阻害性構造的アナログまたは阻害性機能的アナログは、阻害性チアミンアナログ・・・、特にオキシチアミンおよび/またはベンフォオキシチアミンおよび/またはベンフォオキシチアミンアナログおよび/またはベンフォオキシチアミン誘導体である。
・・・
【0040】
本発明による使用の好ましい一実施形態では、阻害性チアミンアナログは、ベンフォオキシチアミン(以下、略して「B-OT」)という物質である。B-OTは、オキシチアミンの前駆体(「プロファルマコン」、「プロドラッグ」)である。B-OTは、経口投与が可能であり、哺乳動物の生体内に吸収された後、すぐにオキシチアミンを放出する。オキシチアミンは、チアミン依存性酵素を阻害する。哺乳動物では、B-OTのオキシチアミンへの変換(代謝)は血液中で行われる。血液循環を通じて、B-OTは身体のあらゆる部位の細胞に到達することができる。
・・・
【0042】
B-OTの経口投与後のバイオアベイラビリティに関するラット実験によるイン・ビボ薬物動態データでは、B-OTの血中測定可能量は0%、つまり事実上プロドラッグ体は血中測定不能であるが、投与したB-OTの総量の44%がオキシチアミン(OT)の形態で血中測定可能であることが示されている。
・・・
【0140】
図1aに、雄のビーグル犬の、1日目の、すなわちB-OTを1mg/kg/日の量で単回投与した後の初日のオキシチアミン(OT)の個々の血漿濃度の経時変化を示す。
【0141】
図1bおよび図1cは、雄のビーグル犬の、1日目の、すなわちB-OTを0.5mg/kg/日の量で毎日単回投与した初日(図1b)および7日目、すなわち7番目の日(図1c)のオキシチアミン(OT)の個々の血漿濃度の経時的変化を示す図である。
【0142】
図1dは、(図1a~図1cの)雄のビーグル犬の、B-OTを0.5mg/kg/日の濃度で毎日単回投与した際の1日目および7日目の、ならびにB-OTを1.0mg/kg/日の量で単回投与した後の1日目のオキシチアミン(OT)の平均血漿濃度の経時変化を示す。
【0143】
B-OT投与前の1日目に得られた血漿サンプルには、オキシチアミンが認められなかった。作用物質B-OTで処置したすべての動物で、OTに関する全身性曝露が達成された。B-OTのすべての適用用量について、B-OT投与後のOT血漿濃度の最大値の時点(Tmax)を調査したところ、1~2時間の間に最も高い値が得られた。適用するB-OT用量を0.2mg/kgから1.0mg/kgまで段階的に増加させたところ、用量の増加にほぼ線形に比例してオキシチアミン(OT)の血漿濃度が増加することが確認された。」
(4)上記(3)のとおり、設定登録時の明細書には、チアミン依存性酵素を阻害する「オキシチアミン」やその前駆体である「ベンフォオキシチアミン」(B-OT)を用いることが記載されるとともに(【0031】、【0040】)、請求項1にも略語として記載される「OT」が一貫して「オキシチアミン」を指すものとして記載されている(【0042】、【0140】~【0143】)。
(5)そうすると、一般的な技術用語ではなく、かつ、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されていない本件訂正前の請求項1の「オキサチアミン(OT)」との記載は、明らかな誤りであり、これを「オキシチアミン(OT)」とする訂正は、本来その意であることが、特許請求の範囲の記載、明細書又は図面から明らかな内容の字句、語句に正すものであって、本件訂正前の記載が当然に本件訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法126条1項ただし書2号に掲げる、誤記の訂正を目的とするものである。
2 国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件特許は外国語国際特許出願に係るものであるから、誤記の訂正を目的とする訂正を行う場合には、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下「本件国際出願当初明細書」という。)の範囲内においてしなければならないところ、本件国際出願当初明細書には、上記(3)に記載した設定登録時の明細書【0031】、【0040】、【0042】、【0140】~【0143】と同じ記載があり、訂正事項1は当該記載に基づいて誤記を訂正するものであるから、本件国際出願当初明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第184条の19の規定によって読み替えて適用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
3 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと
上記1で述べたとおり、訂正事項1に係る訂正は、本件訂正前の本件特許の特許請求の範囲の請求項1において、それ自体で誤りであることが明らかな「オキサチアミン(OT)」との記載を正しい記載にするものであり、かつ、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面から正しい記載が自明な事項として定まるものであって、その誤りを正しい記載にする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法126条6項の規定に適合する。
4 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件訂正後の請求項1~3に係る発明には、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、本件訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法126条7項に規定の独立特許要件を満たすものである。
第5 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法126条1項ただし書2号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条5項、6項及び7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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