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特許訂正審判

2025-390110

チカグレロル活性を逆転させる方法

審判番号
2025-390110
法域
特許
審判種別
訂正審判(訂正の審決)
出願番号
特願2021-515473
登録番号
7478975
請求日
2025年08月06日
審決日
2025年10月21日
公報発行日
2026年03月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【請求人】エスエフジェイ ファーマ エックス,インコーポレイテッド
  • 【請求人代理人】稲葉 良幸
  • 【請求人代理人】大貫 敏史
  • 【請求人代理人】江口 昭彦
  • 【請求人代理人】内藤 和彦
審判長/審判官
  • 審判長 吉田 佳代子
  • 審判官 松波 由美子
  • 審判官 関 景輔
分類
P141 .852-Y (A61K) / P141 .853-Y (A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第126条
データ出所
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特許第7478975号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第7478975号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7478975号(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2021-515473号)は、2019年(令和元年)9月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2018年9月20日、2019年2月15日、2019年4月19日 いずれも(US)米国)を国際出願日とするものであって、令和6年4月25日に特許権の設定登録(請求項の数43)がなされ、その後、令和7年8月6日に本件訂正審判の請求がなされたものである。 第2 請求の趣旨及び訂正の内容 1 請求の趣旨 本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第7478975号の特許請求の範囲を、本審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求める、というものである。 2 訂正の内容 本件訂正審判の請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1における「9g~36gの前記医薬組成物を投与すること」なる記載を「9g~36gの前記抗体又はその断片を投与すること」と訂正する。 なお、訂正前の請求項1~43において、請求項2~43は、請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 第3 当審の判断 1 訂正の目的について (1)誤記の訂正 ア 特許法126条1項ただし書2号にいう「誤記の訂正」とは、本来その意であることが、特許請求の範囲、明細書又は図面などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の請求項1の記載が当然に訂正後の請求項1の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいうと解される。 イ 訂正事項1は、訂正前の本件特許の特許請求の範囲の請求項1(以下「訂正前の請求項1」という。)において、「9g~36gの前記医薬組成物」との記載のうち、「医薬組成物」を「抗体又はその断片」と訂正するものである。 ウ ここで、訂正前の請求項1に係る発明は、「チカグレロル((1S,2S,3R,5S)-3-[7-{[(1R,2S)-2-(3,4-ジフルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-5-(プロピルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-3-イル]-5-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロペンタン-1,2-ジオール)(以下「チカグレロル」という。)に関連した出血又は前記出血のリスクを逆転させる方法を、それを必要としている患者において使用するための、チカグレロルに結合する抗体又はその断片を含む医薬組成物」において、「前記方法が、前記患者に対し、9g~36gの前記医薬組成物を投与すること」が特定された、いわゆる用法・用量が特定された医薬用途発明であるところ、例えば、「プラビックス(登録商標)錠25mg プラビックス(登録商標)錠75mg」の添付文書に、「用法及び用量」として「クロピドグレルとして75mgを1日1回経口投与する」と説明されるように、医薬品の用量については、賦形剤その他の成分を含む医薬組成物全体の量ではなく、有効成分の量で表記することは、医薬品分野における技術常識である。 そうすると、訂正前の請求項1における「9g~36gの前記医薬組成物」との記載に誤記が存在することは明らかである。 エ 他方、医薬組成物に含まれる有効成分に関して、本件特許の明細書には、「いくつかの実施態様では、抗体又はその断片は、チカグレロルに結合し、チカグレロル及びTAMの抗血小板凝集活性を中和し、その結果として、チカグレロル及びTAMの存在下でADP誘導性血小板凝集を回復させる。」と記載されるように(【0039】)、「抗体又はその断片」が、「チカグレロルに関連した出血又は前記出血のリスクを逆転させる方法」における有効成分であることが理解できる。 オ また、訂正前の請求項1に記載された「9g~36g」の用量に関して、本件特許の明細書には、「抗体又はその断片」がFabであり、Fabは「約9g~約18g」又は「約36g」の用量で投与されること(【0015】)、また、「抗体又はその断片」が「9~48gの間の中間用量」で投与されることや、その中間用量として「36g」が記載されている(【0082】、【0090】)。 しかしながら、「医薬組成物」の投与量については、「約30mL~約2Lの総容量で投与される」(【0081】)というように、「mL」又は「L」の単位で記載され、「g」単位による記載は見当たらない。 さらに、訂正前の請求項1を引用する請求項6においても、「前記抗体又はその断片はFab」であることが記載され、請求項6を引用する請求項7、8においてはそれぞれ、「前記用量は約9g~約18gのFab」、「前記Fabを、約9g、約18g、約24g、約30g又は約36g投与される」と記載されているように、本件特許の明細書及び請求項1を間接的に引用する請求項7、8のいずれにおいても、訂正前の請求項1に記載された「9g~36g」という量は、「医薬組成物」の投与量ではなく、「抗体又はその断片」の「用量」として記載されている。 カ 以上のような、本件特許の明細書及び特許請求の範囲の記載及び上記ウで説示した医薬品分野における技術常識を踏まえれば、訂正前の請求項1に記載された「9g~36g」が「医薬組成物」の「用量」に関する記載であって、本来、医薬組成物の有効成分である「抗体又はその断片」の量を意味するものであることは明らかである。 キ したがって、訂正前の請求項1における「9g~36gの前記医薬組成物を投与すること」との記載は誤記であり、これを「9g~36gの前記抗体又はその断片を投与すること」とする訂正は、本来その意であることが、特許請求の範囲の記載から明らかな内容の字句、語句に正すものであり、かつ訂正前の請求項1の記載は当然に訂正後の請求項1の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものである。 よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法126条1項ただし書2号に掲げる、誤記の訂正を目的とするものである。 (2)明瞭でない記載の釈明 ア 特許法126条1項ただし書3号にいう「明瞭でない記載の釈明」とは、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面中の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載等、明細書、特許請求の範囲又は図面に生じている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにすることをいうと解される。 イ ここで、前記(1)オで述べたとおり、本件明細書の【0015】、【0081】、【0082】及び【0090】並びに訂正前の請求項6~8の記載によれば、訂正前の請求項1に記載された「9g~36g」という量については、「医薬組成物」の投与量ではなく、「抗体又はその断片」の用量として記載されている。 ウ そうすると、訂正前の請求項1に記載された「9g~36gの前記医薬組成物を投与すること」との記載は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲の記載との関係において不合理を生じている。 エ したがって、訂正前の請求項1に記載された「9g~36gの前記医薬組成物を投与すること」との記載を、「9g~36gの前記抗体又はその断片を投与すること」とする訂正は、明細書又は特許請求の範囲の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものである。 よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法126条1項ただし書3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記1で述べたとおり、訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1において誤りであることが明らかな記載又は明瞭でない記載を正しい記載にするものであって、前記1(1)オで述べたとおり、いずれも特許請求の範囲及び明細書において明示された記載に基づいて訂正するものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 よって、訂正事項1に係る訂正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法126条5項の規定に適合する。 3 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないこと 上記1で述べたとおり、訂正事項1に係る訂正は、本来その意であることが、明らかな内容の字句、語句に正すものであり、また、設定登録時の明細書又は特許請求の範囲中の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものである。そうすると、本件訂正の前後において特許請求の範囲に実質的な変更はないから、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法126条6項の規定に適合する。 4 特許出願の際に独立して特許を受けることができること 上記3で述べたとおり、本件訂正の前後において特許請求の範囲に実質的な変更はないから、訂正後の請求項1~43に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする新たな理由は見いだせない。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法126条7項に規定される独立特許要件を満たすものである。 第4 むすび 以上のとおり、本件訂正は、特許法126条1項ただし書2号及び3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条5項、6項及び7項の規定に適合するものである。 よって、結論のとおり審決する。

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