特許拒絶査定不服審判
2016-019378
半導体チップ
- 審判番号
- 2016-019378
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-520692外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年12月26日
- 審決日
- 2018年03月13日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エプコス アクチエンゲゼルシャフト
- 【請求人代理人】長門 侃二
- 分類
- P18 .121-WZ (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-520692「半導体チップ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月 7日国際公開、WO2013/017530、平成26年 8月28日国内公表、特表2014-522102〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2012年7月26日(パリ条約に基づく優先権主張 2011年7月29日 ドイツ(DE))を国際出願日として出願したものであって、平成27年2月24日付け拒絶理由通知に対して同年6月2日付けで手続補正がなされ、平成28年1月19日付け拒絶理由通知に対して同年7月26日付けで手続補正がなされたが、同年8月17日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年12月26日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると共に手続補正がなされ、平成29年9月25日付け当審の拒絶理由通知に対して同年12月27日付けで手続補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成29年12月27日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ハウジングを備える半導体チップであって、
前記ハウジング(1)は、収容空間(3)が設けられた射出成形体(4)、及び前記収容空間(3)に通ずる開口部(31)を備え、
前記半導体チップ(2)は、前記収容空間(3)に収納されるとともに、圧力測定用に作製され、
前記開口部(31)は、膜またはバルブにより封止され、
前記射出成形体(4)は、前記半導体チップ(2)と電気的に接続するための、少なくとも1つのメタライジング部(6,7,11,12,14,15,24,25)を備え、
前記少なくとも1つのメタライジング部は、前記収容空間(3)に配設された少なくとも1つのメタライジング部(6,7)、前記射出成形体(4)を貫通する少なくとも1つの貫通接続部として形成されたメタライジング部(11,12)、及び前記収容空間(3)の外側に配設された少なくとも1つのメタライジング部(14,15)を含み、
前記貫通接続部(11,12)は、前記収容空間(3)内の前記メタライジング部(6,7)から前記収容空間(3)の外側の前記メタライジング部(14,15)まで通じていることを特徴とする半導体チップ。」
なお、平成29年12月27日付け手続補正による補正によって、発明(発明の名称、請求項の末尾)を「半導体チップ」としたが、これにより本願発明に矛盾が生じた。
即ち、本願発明の「ハウジングを備える半導体チップであって、」によれば、ハウジングは半導体チップの構成の一部であると解せる。一方、本願発明の「前記ハウジング(1)は、収容空間(3)が設けられた射出成形体(4)・・・を備え、前記半導体チップ(2)は、前記収容空間(3)に収納されるとともに、」によれば、「前記ハウジング」及び「前記半導体チップ(2)」との記載からして、先に記載された「ハウジング」及び「半導体チップ」と同一のものと認められるが、半導体チップ(2)がハウジング内に収納されることだから、ハウジングは半導体チップ(2)と別構成であると解せる。よって、前者の「半導体チップ」と後者の「半導体チップ(2)」は、同一用語であるにもかかわらず、別構成である。
したがって、本願発明の解釈として、「半導体チップ(2)」は、ハウジングの収容空間に収納された半導体チップそのものであり、本願発明の1行目及び末尾の「半導体チップ」は、「ハウジング、半導体チップ(2)」を備えた全体の構成物を示すものと認定し、以下、「半導体チップ(2)」と「半導体チップ」とを分けていくことにする。
第3 引用文献
平成29年9月25日付け当審の拒絶理由通知で引用された特開2008-89559号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「圧力センサ」に関し、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審で付与した。
「【0020】
本体部(基体部2および突起部3)は、立体回路部品(MID:Molded Interconnect Device)として構成される。本実施形態では、本体部は、基材としての絶縁性の樹脂材料(例えば、ポリアミドやポリフタルアミド等の各種エンジニアリングプラスチック材料)を例えば射出成形等によって所定形状に成形し、その表面に導体パターン6を形成して得ることができ、MIDの公知の各種手法(例えば、UV露光法(サブトラクティブ法、セミアディティブ法、アディティブ法等)、レーザーイメージング法、IVOND法等の1回成形法や、SKW法等の2回成形法等)によって得ることが可能である。
【0021】
図3に示すように、突起部3の中心部には当該突起部3の軸方向に貫通する貫通孔5が形成されるとともに、その外周部には取付用の雄ねじ3aが形成されている。
【0022】
一方、図3および図4に示すように、基体部2の突起部3が設けられる側の反対側となる部分には、平面視で略矩形状の凹部2aが形成されている。また、突起部3に形成した貫通孔5が、この凹部2aの底面2bのほぼ中央部に開口している。
【0023】
そして、図3~図5に示すように、貫通孔5の底面2bでの開口端(貫通孔5の延伸方向の一端)を閉蓋する状態で圧力検出素子4が実装されている。この圧力検出素子4は、単結晶シリコン基板の片面に受圧面を形成したもので、ダイヤフラムや、歪みゲージ、電極等(いずれも図示せず)を備え、ピエゾ抵抗効果によって圧力を電気抵抗に変換するものである。貫通孔5は、圧力導入孔に相当する。
【0024】
本実施形態では、この圧力検出素子4は、図4に示すように、底面2b上に形成された導体パターン6に対してフリップチップ実装されている。なお、図中、8は導電性接着剤、9はアンダーフィル(樹脂製の絶縁性接着剤)、10は圧力検出素子4の各電極のバンプである。
【0025】
このとき、アンダーフィル9は、図5中のAに示すように、圧力検出素子4の外縁に沿って略矩形環状に配置されており、このアンダーフィル9と圧力検出素子4とによって、貫通孔5から凹部2a内への検出対象流体(液体または気体)の進入(漏出)が抑制されている。すなわち、アンダーフィル9は、シール部材としても機能している。また、アンダーフィル9として放熱性の高い材料(例えばシリコン系の樹脂材料)を用いることで、圧力センサ1の耐熱性を高めるとともに、圧力検出素子4の温度による検出誤差を抑制することができる。
【0026】
導体パターン6は、物理蒸着や、レーザ等の電磁波の照射による不要部の除去、電解メッキ処理による圧膜化等、各種の処理を用いて適宜に形成することができる。
【0027】
ここで、導体パターン6は、図2~図5に示すように、凹部2aの開口縁部2cを跨いで凹部2aの内面と本体部(基体部2)の側壁面2dとを接続するように形成されている。したがって、圧力検出素子4の検出結果を、側壁面2d上に露出した導体パターン6との導通を確立することで容易に取得することができる。」
上記段落から引用文献1の「圧力センサ」には以下の事項が記載されている。
段落【0020】ないし【0022】によれば、射出成形によって成形された本体部は、基体部2、及び突起部3に形成された貫通孔5を備えたものである。
段落【0023】によれば、貫通孔5の底面2bでの開口端を閉蓋する状態で圧力検出素子4が実装されているものである。
段落【0024】、【0027】によれば、導体パターン6は、底面2bでフリップチップ実装された圧力検出素子4と接続され、凹部2aの開口縁部2cを跨いで凹部2aの内面と基体部2の側壁面2dとを接続するように形成されているものである。
よって、引用文献1には下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「射出成形によって成形された本体部は、基体部2、及び突起部3に形成された貫通孔5を備え、
貫通孔5の底面2bで圧力検出素子4が実装され、
導体パターン6は、底面2bでフリップチップ実装された圧力検出素子4と接続され、凹部2aの開口縁部2cを跨いで凹部2aの内面と基体部2の側壁面2dとを接続するように形成されている
圧力センサ」
第4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
ア.本願発明の「半導体チップ(2)」は、上記「第2 本願発明」で指摘したようにチップ(素子)そのものの構成を示すものであり、圧力測定用のものである。そうすると、引用発明の「圧力検出素子」は、半導体である直接の記載がないが、本願発明の「チップ(2)」に相当するものといえる。
また、本願発明の(1行目及び末尾の)「半導体チップ」は、上記「第2 本願発明」で指摘したように「ハウジング、半導体チップ(2)」を備えた全体の構成物を示すものである。そうすると、引用発明の「圧力センサ」は、「本体部、圧力検出素子」を備えているから、圧力検出素子が半導体である直接の記載がないものの、本願発明でいう「チップ」に相当するものといえる。
イ.引用発明の「(本体部の)基体部2」は、射出成形によって成形されたものであり、引用文献1の図3を参照すると、基体部2内において圧力検出素子4と貫通孔5の底面2bとの間に空間を形成しているものだから、本願発明の「収容空間が設けられた射出成形体」に相当する。
また、引用発明の「突起部3に形成された貫通孔5」は、底面2bから圧力検出素子4までの空間に通じるから、本願発明の「前記収納空間に通じる開口部」に相当する。なお、本願発明の「開口部」は、どこに形成されているか具体的な特定がないので、引用発明との比較において単に開口部(貫通孔)があれば足りるものである。
そして、引用発明の「本体部」は、上記の基体部2(本願発明の「射出成形体」に相当。)と貫通孔5(本願発明の「開口部」に相当。)を備えたものであるから、本願発明の「ハウジング」に相当する。
よって、引用発明の「射出成形によって成形された本体部は、基体部2、及び突起部3に形成された貫通孔5を備え」ることは、本願発明の「ハウジングを備えるチップであって、前記ハウジングは、収容空間が設けられた射出成形体、及び前記収容空間に通ずる開口部を備え」ることに相当する。
ウ.引用発明の「圧力検出用素子4」は、基体部2内の(圧力検出素子4と底面2bとの間の)空間に備わるものであり、当然に圧力測定用に作製されたものである。なお、本願発明の「半導体チップ(2)」は、収納空間内のどこに形成されているか具体的な特定がないので、半導体という点を除けば、引用発明との比較において、単に圧力測定用のチップ(素子)があれば足りるものである。
よって、引用発明の「貫通孔5の底面2bで圧力検出素子4が実装され」ることは、本願発明の「前記チップ(2)は、前記収容空間に収納されるとともに、圧力測定用に作製され」ることに相当する。
エ.開口部について、本願発明は「膜またはバルブにより封止され」ているのに対し、引用発明はその旨の特定がない。
オ.引用発明の「導体パターン6」は、圧力検出素子4と接続するために形成された部分は基体2内の空間にあり、基体部の側壁面2dに形成された部分は基体2外にあるから、本願発明の「前記収容空間に配設された少なくとも1つのメタライジング部、及び前記収容空間の外側に配設された少なくとも1つのメタライジング部」に相当する構成を備えているものである。
そして、引用発明の「導体パターン6」は、基体部2内と基体部2外の導体パターンを接続しているから、本願発明の「接続部として形成したメタライジング部」に相当する構成は備えているものの、「射出成形体を貫通する少なくとも1つの貫通接続部」とはいえない。
よって、引用発明の「導体パターン6は、底面2bでフリップチップ実装された圧力検出素子4と接続され、凹部2aの開口縁部2cを跨いで凹部2aの内面と基体部2の側壁面2dとを接続するように形成されている」ことは、本願発明の「前記少なくとも1つのメタライジング部は、前記収容空間に配設された少なくとも1つのメタライジング部、接続部として形成されたメタライジング部、及び前記収容空間の外側に配設された少なくとも1つのメタライジング部を含み、前記接続部は、前記収容空間内の前記メタライジング部から前記収容空間の外側の前記メタライジング部まで通じている」ことに相当する。
但し、接続部として形成されたメタライジング部について、本願発明は「前記射出成形体を貫通する貫通接続部」であるのに対し、引用発明はその旨の特定がない。
よって、本願発明と引用発明とは以下の点で一致ないし相違する。
<一致点>
「ハウジングを備えるチップであって、
前記ハウジングは、収容空間が設けられた射出成形体、及び前記収容空間に通ずる開口部を備え、
前記チップ(2)は、前記収容空間に収納されるとともに、圧力測定用に作製され、
前記射出成形体は、前記チップ(2)と電気的に接続するための、少なくとも1つのメタライジング部を備え、
前記少なくとも1つのメタライジング部は、前記収容空間に配設された少なくとも1つのメタライジング部、及び前記収容空間の外側に配設された少なくとも1つのメタライジング部を含む、
チップ。」
<相違点1>
本願発明は「半導体チップ」及び「半導体チップ(2)」であるのに対し、引用発明の「チップ」及び「チップ(2)」は半導体と直接明記されていない。
<相違点2>
開口部について、本願発明は「膜またはバルブにより封止され」ているのに対し、引用発明はその旨の特定がない。
<相違点3>
接続部として形成されたメタライジング部について、本願発明は「前記射出成形体を貫通する貫通接続部」であるのに対し、引用発明はその旨の特定がない。
そこで、<相違点1>ないし<相違点3>について検討する。
・<相違点1>について
引用発明の「圧力検出素子」は、引用文献1の段落【0023】によれば、「単結晶シリコン基板の片面に受圧面を形成したもので、ダイヤフラムや、歪みゲージ、電極等(いずれも図示せず)を備え、ピエゾ抵抗効果によって圧力を電気抵抗に変換するものである」から、半導体圧力検出素子といえる。なお、本願発明の「半導体チップ(2)」は、圧力を測定用とだけ記載されており、具体的な構成や材料は本願明細書を参照しても記載がない。
よって、本願発明の「半導体チップ(2)」と引用発明の「チップ(2)」(圧力検出素子)との実質的な差異は認められない。また、本願発明の「半導体チップ」と引用発明の「チップ」についても、共にハウジング、半導体チップ2を備えているから、実質的な差異は認められない。
したがって、相違点1は実質的な相違ではない。
仮に、引用発明の「チップ(2)」(圧力検出素子)が厳密にいうと「半導体」ではないとしても、本願発明の「半導体チップ(2)」は、圧力測定用であることを除いて、具体的な構成や圧力検出の原理等が一切開示されていないから格別なものとは認められず、また、一般に圧力測定用として半導体チップを用いることは普通に行われていることであることから、引用例の「チップ(2)」(圧力検出素子)を半導体で形成して相違点1の構成にすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
・<相違点2>について
開口部に「膜」を設けることは、平成29年9月25日付け当審の拒絶理由通知で引用した特開2004-279091号公報(【従来の技術】として説明された段落【0004】を参照。)に記載されているように、圧力センサにおいてごく一般的に採用される技術事項である。
よって、引用発明の貫通孔に一般的な技術事項を採用して相違点2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
・<相違点3>について
ハウジング内とハウジング外に形成したメタライジング部を接続するためには、ハウジングと他の構造物との間(隙間)に接続部を形成するか、ハウジングそのものに孔を設けて接続部を形成するかのどちらかを選択するところ、ハウジングに貫通孔を設けてそこにメタライジング部を形成して接続することは、平成29年9月25日付け当審の拒絶理由通知で引用した特開2011-44533号公報(段落【0033】~【0041】、図3を参照。以下、「引用文献2」という。)及び特開2005-86032号公報(段落【0015】~【0023】、図1を参照。以下、「引用文献3」という。)に記載されているように従来周知の技術事項である。
よって、引用発明1の基体部2内と基体部2外に形成された導体パターンを接続する手段として、周知の技術事項を採用して相違点3の構成とすること(引用発明において、基体部2の内部から側壁にかけて貫通孔を設け、該貫通孔に導体パターンを形成すること)は、当業者であれば容易になし得たことである。
この点について、出願人は、審判請求書において「引用文献2は、LEDの放熱性の向上という点及び開口部を設けることができない点を鑑みると、本願発明及び引用文献1とは課題及び作用効果が異なるばかりか、技術分野の共通性も低いものと思料致します。すなわち、引用文献2は、本願発明を拒絶するための引用文献としての適格性に欠け、更には引用文献2の開示内容を引用文献1に組み合わせる動機づけもないものと思料致します。」、「引用文献3は、圧電デバイスであること及び開口部を設けることができない点を鑑みると、本願発明及び引用文献1とは課題及び作用効果が異なるばかりか、技術分野の共通性も低いものと思料致します。すなわち、引用文献3は、本願発明を拒絶するための引用文献としての適格性に欠け、更には引用文献3の開示内容を引用文献1に組み合わせる動機づけもないものと思料致します。」と主張している。しかしながら、周知の技術事項としたのは、ハウジング内のメタライズ部とハウジング外のメタライジング部とを接続するために、ハウジングに貫通孔を設けメタライジング部を形成したことであり、この技術事項は「ハウジング内にチップ(素子)があって、ハウジング外に外部接続用端子(電極)を設けた」チップ部品で共通していれば適用可能なものであり、放熱性や開口部の有無は直接関係ないのことである。よって、出願人の主張は、採用することができない。
したがって、本願発明は、引用発明により当業者が容易になし得たものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-019378