特許拒絶査定不服審判
2016-018601
接触作動式ランセット装置
- 審判番号
- 2016-018601
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-203380外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年12月09日
- 審決日
- 2017年09月19日
- 公報発行日
- 2018年03月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
- 【請求人代理人】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-203380「接触作動式ランセット装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月25日出願公開、特開2014-240030〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2005年(平成17年)5月6日(パリ条約による優先権主張 2004年5月7日 米国、2004年11月30日 米国、2004年11月30日 米国、2005年4月7日 米国)を国際出願日として出願した特願2007―511614号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成23年1月31日に新たに出願した特願2011―018990号の一部を、さらに平成26年10月1日に新たに出願したものであって、平成27年10月14日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月19日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月29日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)されたところ、同年12月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容について
(1)本件補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「 【請求項1】
第1つまみ用陥凹部および該第1つまみ用陥凹部の反対側にある第2つまみ用陥凹部を定めるハウジングと、
前記ハウジングと同軸に且つ移動可能に関連付けられたシールドと、
前記ハウジング内に配置された穿刺要素と
を備え、
前記シールドは、前記穿刺要素を解放するように、前記ハウジングから外方に延びる第1の位置から該ハウジング内に少なくとも部分的に後退される第2の位置まで移動するように、該ハウジングと移動可能に関連付けられており、前記第1および第2つまみ用陥凹部の各々は、前記穿刺要素を軸方向に通る軸から遠ざかるようにほぼ横断方向を向いている凹形の面形状を含み、前記第1および第2つまみ用陥凹部の各々は、ユーザの指を置く場所をユーザに教えるように視覚的および触覚的手がかりを与えるための複数の長手方向リブと複数のトラフとを含み、前記ハウジングのほぼ中央を通り前記軸にほぼ平行な面が、前記第1および第2つまみ用陥凹部間のほぼ等距離にあることを特徴とするランセット装置。」(下線は補正箇所を示す。)と補正された。
(2)本件補正の目的について
特許請求の範囲の請求項1についての上記の補正は、本件補正前の「つまみ用陷凹部」が、「第1及び第2のつまみ用陷凹部」であるとの限定と、本件補正前の請求項1の「ユーザの指を置く場所をユーザに教えるように視覚的および触覚的手がかりを与えるため」の「構造」を、「複数の長手方向リブと複数のトラフ」であるとの限定とを加える補正をするものであるから、上記補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められる。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
2 独立特許要件についての検討
(1)本件補正発明
本件補正発明1は、上記1(1)において摘示したとおりの請求項1の発明特定事項により特定されるものである。
(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由の引用文献1として引用され、本件の原出願の優先権主張日前に頒布された国際公開第03/049613号(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(以下、下線は当審で付した。)
(ア)「As shown in Figs. 1, 2 and 3, in order to perform a blood collection by use of the disposable blood collector, a user primarily removes the needle cap 1 from the needle 33 of the blood collector. Thereafter, the user places the blood collector on a desired site of the body of the patient, for example, on the skin of a finger of the patient, while gripping the housing 10 with a users hand, such that the lower end of the protective sleeve 20 is laid on the desired site of the body of the patient. The user slowly presses the housing 10 down, so that the protective sleeve 20 is moved upward relative to the downward moving housing 10 due to a reacting force. Due to the upward movement of the sleeve 20, the third lugs 23 of the sleeve 20 are moved in the same direction from the stoppers 13 of the housing 10. In such a case, the second lugs 22 of the sleeve 20 push the stop ring 31a of the needle holder 31 upward, so that the needle holder 31 having the needle 33 is moved upward while compressing the spring 32 held by the spring holder 11.When the protective sleeve 20 is moved upward to be retracted into the housing 10 to reach a predetermined depth around the recesses 12 of the housing 10, as shown in Fig. 4a, the upper portion of the sleeve 20 having the first lugs 21 is elastically opened outward to allow the first lugs 21 to be inserted into the recesses 12. Therefore, the recesses 12 stop the first lugs 21 of the sleeve 20.」(第7頁第27行~第8頁第14行、当審訳:「図1,2及び3に示されるように、使い捨て採血器を用いて採血を行うために、使用者は、まず、採血器の針33から針キャップ1を動かす。次に、使用者の手でハウジング10を把持したまま、使用者は患者の体の所望の部位、例えば、患者の指の皮膚に採血器を配置し、保護スリーブ20の下端部は、患者の体の所望の部位に置かれる。使用者は、ハウジング10をゆっくり押し下げるので、加えられた力で、ハウジング10が下方へ動くことにより、保護スリーブ20は、上へ動くこととなる。スリーブ20が上方へ動くことにより、スリーブ20の第3突起23はハウジング10のストッパー13から同じ方向へ移動される。この場合、スリーブ20の第2突起22は、針ホルダ31の止め輪31aを上方に押して、針33を有する針ホルダ31が上方に動かされて、バネホルダ11に保持されたバネ32を圧縮する。保護スリーブ20が、ハウジング10の凹部12の周りの所定の深さに達するようにハウジング10内に格納されるように上方に移動すると、図4aに示すとおり、第1突起21を有するスリーブ20の上部は、第1突起21が凹部12に挿入されるように外側に弾性的に解放される。したがって、凹部12は、スリーブ20の第1突起21を停止させる。」
(イ)「When the upper portion of the sleeve 20 is elastically opened outward and the first lugs 21 of the sleeve 20 are stopped by the recesses 12, as shown in Fig. 4b, the stop ring 31a of the needle holder 31 is released from the second lugs 22 of the sleeve 20, so that the needle holder 31 is triggered to be quickly moved downward due to a restoring force of the compressed spring 32. The needle 33 of the needle holder 31 is thus quickly projected from the sleeve 20 through the needle hole 24, and is inserted into the desired site of the body of the patient.」(第8頁第15~23行、当審訳:「スリーブ20の上部が外側に弾性的に解放され、スリーブ20の第1突起21が凹部12によって停止された時、図4bに示されるように、針ホルダ31の止め輪31aは、スリーブ20の第2突起22から離脱し、圧縮バネ32の復元力により針ホルダ31が速やかに降下する。針ホルダ31の針33は、針穴24を通ってスリーブ20から素早く突出し、患者の所望の部位に挿入される。」)
(ウ)「
」
上記図1及び図2より、採血器のハウジング10には、陥凹部があり、該陥凹部は、針33を軸方向に通る軸から遠ざかるようにほぼ横断方向を向いている凹形の面形状である点が見て取れる。そして、これらの図から、陥凹部がハウジング10を把持する時の把持部となることは、当業者には明らかである。
(エ)「
」
上記図4aより、「保護スリーブ20」が、「ハウジング10」と同軸である点及び「針ホルダ31」及び「針33」が、「ハウジング10」内に配置された点が見て取れる。
(オ)上記(ア)及び(エ)から総合すると、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「ハウジング10をゆっくり押し下げるので、加えられた力で、ハウジング10が下方へ動くことにより、保護スリーブ20は、上へ動き、
第1突起21を有するスリーブ20の上部は、第1突起21が凹部12に挿入されるように外側に弾性的に解放されることにより、凹部12は、スリーブ20の第1突起21を停止させ、
スリーブ20の上部が外側に弾性的に解放され、スリーブ20の第1突起21が凹部12によって停止された時、針ホルダ31の止め輪31aは、スリーブ20の第2突起22から離脱し、圧縮バネ32の復元力により針ホルダ31が速やかに降下して、針ホルダ31の針33は、針穴24を通ってスリーブ20から素早く突出し、患者の所望の部位に挿入され、
採血器のハウジング10には、把持用陥凹部があり、
把持用陥凹部は、針33を軸方向に通る軸から遠ざかるようにほぼ横断方向を向いている凹形の面形状であり、
ハウジング10は、保護スリーブ20と同軸であり、
針ホルダ31及び針33は、ハウジング10内に配置された、
採血器」
イ 本件の原出願の優先権主張日前に頒布された米国特許第6299626号明細書(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア) 「Turning now to FIGS. 9 to 13, the casing 100 illustrated is of hollow elongate form with a generally rectangular cavity therein (see particularly FIG. 12). The casing 100 is open at both ends and has, close to one end, a pair of external grooves 102 which traverse the major faces of the casing. The major faces also have therein two depressions 104 which are ribbed and facilitate gripping of the casing 100. At one end of the casing there are two internal recesses 106, the recesses being in the inner faces of the two major walls of the casing 100. Two grooves 108 run substantially the full length of the casing. More specifically, each grooves 108 extends from one end of the casing 100 and terminates at a position close to the other end of the casing 100.」(第4欄第45-57行、当審訳:「ここで、図9~図13に示すように、図示されたケーシング100は、中空の細長い形状で有り、その中に略長方形のキャビティが設けられている(特に、図12参照)。ケーシング100は、両端が開口しており、ケーシングの主面を横切る一対の外部溝102を一端近くに有している。主面にはまた、ケーシング100の把持を容易にし、リブ付の2つのくぼみ104が設けられている。ケースの一端には2つの内部凹部106が有り、凹部はケーシング100の2つの主壁の内面にある。2つの溝108は、実質的にケーシングの全長にわたって延びている。具体的には、各溝108は、ケーシング100一端から延び、ケーシング100の他端に近い位置で終端している。」)
(イ) 「To assemble the skin pricker, the plunger 132 is inserted through the left hand end of the casing 100 as viewed in FIG. 20, The latches 146 are cammed inwardly by the end portion of the casing which is not provided with grooves 108. Immediately the latches 146 reach the grooves 108 they snap outwardly and enter the grooves. Engagement between those surfaces of the latches 146 which are normal to the fingers 144 and the end faces of the grooves 108 prevents the plunger 132 thereafter being removed from the casing 100. The assembly 110 is inserted through the right hand end of the casing 100 (as viewed in FIG. 20) and pushed in until the protrusions 122 enter the recesses 106. This locks the plug 120 in place and closes-off one end of the casing 100.
As the plunger assembly 110 is inserted into the casing 100, the element 112 passes between the plates 138. The cams 116 of the element 112 enter the notches 142. At this stage the lancet blade 114 is well spaced from the opening 136 in the head 134 and there is no danger that anyone handling the skin pricker will be cut.」(第5欄第28-46行、当審訳:「スキンプリッカーを組み立てるために、プランジャ132は、図20に見られるようにケーシング100の左手端部を通して挿入され、ラッチ146は、溝108が設けられていないケーシングの端部によって内側にカムされている。 直ちに、ラッチ146は溝108に達し、それらは外側にスナップして溝に入る。 フィンガ144に垂直なラッチ146の表面と溝108の端面との間の係合は、プランジャ132がその後ケーシング100から取り外されることを防止する。 アセンブリ110は、ケーシング100の右端部(図20に示す)に挿入され、突起122が凹部106に入るまで押し込まれる。 これは、プラグ120を定位置にロックし、ケーシング100の一端を閉鎖する。
プランジャアセンブリ110がケーシング100に挿入されると、要素112はプレート138の間を通過する。要素112のカム116はノッチ142に入る。この段階で、ランセットブレード114は、頭部134の開口部136から十分に離間しており、スキンプリッカーを取り扱う人が刺される危険はない。」
(ウ)「
」
(エ)「
」
(オ)「
」
(3)対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「ハウジング10」は、本件補正発明の「ハウジング」に相当する。また、引用発明1の「把持用陥凹部」は、使用者が把持する時の視覚的および触覚的手がかりを与えるものにもなるといえるから、本件補正発明1の「ユーザの指を置く場所をユーザに教えるように視覚的および触覚的手がかりを与えるため」の構造を含む「つまみ用陥凹部」に相当する。そして、引用発明1の「ハウジング10」は、「把持用陥凹部」を有しているから、引用発明1の「ハウジング10」と、本件補正発明の「ハウジング」とは、「つまみ用陥凹部」がある点で共通する。
イ 引用発明1の「保護スリーブ20」は、本件補正発明の「シールド」に相当し、引用発明1の「保護スリーブ20」は、「ハウジング10をゆっくり押し下げるので、加えられた力で、ハウジング10が下方へ動くことにより」、「上へ動」くものであり、「ハウジング10」と同軸であるから、引用発明1の「保護スリーブ20」と、本件補正発明の「シールド」とは、「同軸に且つ移動可能に関連付けられ」ている点で共通する。
ウ 引用発明1の「針ホルダ31」及び「針33」は、「ハウジング10」内に配置されているから、引用発明1の「ハウジング10」内に配置された「針ホルダ31」及び「針33」は、本件補正発明の「前記ハウジング内に配置された穿刺要素」に相当する。
エ 引用発明1の「ハウジング10がゆっくり押し下げられる」前の「保護スリーブ20」の位置は、本件補正発明の「前記ハウジングから外方に延びる第1の位置」に相当し、引用発明1の「保護スリーブ20」が、「スリーブ20の第1突起21が凹部12によって停止された」位置において、「保護スリーブ20の上部が外側に弾性的に解放され」、針ホルダ31の止め輪31aは、スリーブ20の第2突起22から離脱し、圧縮バネ32の復元力により針ホルダ31が速やかに降下して、針ホルダ31の針33は、針穴24を通ってスリーブ20から素早く突出」するから、引用発明1の「保護スリーブ20」が、「スリーブ20の第1突起21が凹部12によって停止された」位置は、本件補正発明の「前記穿刺要素を解放するように、前記ハウジングから外方に延びる第1の位置から該ハウジング内に少なくとも部分的に後退される第2の位置」に相当する。そうすると、引用発明1の「保護スリーブ20」が、「ハウジング10がゆっくり押し下げられることで、上へ動き、第1突起21を有する保護スリーブ20の上部は、第1突起21が凹部12に挿入されるように外側に弾性的に解放されることにより、凹部12は、スリーブ20の第1突起21を停止させ、保護スリーブ20の上部が外側に弾性的に解放され、スリーブ20の第1突起21が凹部12によって停止された時、針ホルダ31の止め輪31aは、スリーブ20の第2突起22から離脱し、圧縮バネ32の復元力により針ホルダ31が速やかに降下して、針ホルダ31の針33は、針穴24を通ってスリーブ20から素早く突出」することは、本件補正発明の「シールド」が、「前記穿刺要素を解放するように、前記ハウジングから外方に延びる第1の位置から該ハウジング内に少なくとも部分的に後退される第2の位置まで移動するように、該ハウジングと移動可能に関連付けられて」いることに相当する。
オ 引用発明1の「把持用陥凹部は、針33を軸方向に通る軸から遠ざかるようにほぼ横断方向を向いている凹形の面形状であ」ることは、本件補正発明の「つまみ用陥凹部は、前記穿刺要素を軸方向に通る軸から遠ざかるようにほぼ横断方向を向いている凹形の面形状」であることに相当する。
カ 引用発明1の「採血器」は、本件補正発明の「ランセット装置」に相当する。
キ 以上のことから、本件補正発明と引用発明1とは、つぎの一致点で一致し、つぎの相違点で相違するものである。
<一致点>
「つまみ用陥凹部を有するハウジングと、
前記ハウジングと同軸に且つ移動可能に関連付けられたシールドと、
前記ハウジング内に配置された穿刺要素と
を備え、
前記シールドは、前記穿刺要素を解放するように、前記ハウジングから外方に延びる第1の位置から該ハウジング内に少なくとも部分的に後退される第2の位置まで移動するように、該ハウジングと移動可能に関連付けられており、つまみ用陥凹部は、前記穿刺要素を軸方向に通る軸から遠ざかるようにほぼ横断方向を向いている凹形の面形状を含み、つまみ用陷凹部は、ユーザの指を置く場所をユーザに教えるように視覚的および触覚的手がかりを与えるための構造を含む、ランセット装置。」
<相違点>
「ハウジング」が、本件補正発明では、「第1つまみ用陥凹部および該第1つまみ用陥凹部の反対側にある第2つまみ用陥凹部を」有し、「前記第1および第2つまみ用陥凹部の各々は、ユーザの指を置く場所をユーザに教えるように視覚的および触覚的手がかりを与えるための複数の長手方向リブと複数のトラフとを含み、前記ハウジングのほぼ中央を通り前記軸にほぼ平行な面が、前記第1および第2つまみ用陥凹部間のほぼ等距離にある」のに対し、引用発明1では、把持用陥凹部がハウジングにあることが認められるものの、どの面にどの様に設けられているか特定されておらず、そのため上記本件補正発明のつまみ用陥凹部に関する特定がない点。
(4)相違点についての検討
引用例2には、スキンプリッカー(本件補正発明の「ランセット装置」に相当)のケーシング100(本件補正発明の「ハウジング」に相当)の主面に、ケーシング100の把持を容易にするための、リブ付の2つのくぼみ104(本件補正発明の「陥凹部」に相当)が設けられている構成が記載されている。
また、(2)イ(ウ)及び(エ)から、引用例2の2つのくぼみは、それぞれ互いに対向する主面にある点、ケーシング100のほぼ中央を通りランセットブレード114の軸にほぼ平行な面が、2つのくぼみ間のほぼ等距離にある点が見て取れる。
そして、(2)イ(ウ)のごとくリブが連続的に並べばその間がトラフとなることは明らかである。
以上の事から、引用例2には、互いに対向する主面にある2つのくぼみを有し、2つのくぼみの各々は、複数のリブと複数のトラフとを含み、ケーシングのほぼ中央を通り前記軸にほぼ平行な面が、2つのくぼみの間のほぼ等距離にある構成が記載されているといえる。
また、引用例2において、ケーシング100の把持を容易にするためのくぼみに形成された複数のリブと複数のトラフが、ユーザの指を置く場所をユーザに教えるように視覚的および触覚的手がかりを与えるためのものになることは明らかであり、そのために「リブ」をどの方向に形成するかは、設計的事項であるといえる。
そうすると、引用発明1の「ハウジング10」の構成として、引用例2に記載された上記構成を適用し、その際にリブの方向として長手方向とし本件補正発明のごとく構成することは当業者が容易に想到できたことである。
(5)本件補正発明の効果について
本件補正発明1の効果は、引用例1及び2から当業者が予測し得る程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明1及び引用例2に記載された構成に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件補正発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反する。
3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成28年2月19日にされた手続補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであって、そのうち請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「 【請求項1】
第1つまみ用陥凹部および該第1つまみ用陥凹部の反対側にある第2つまみ用陥凹部を定めるハウジングと、
前記ハウジングと同軸に且つ移動可能に関連付けられたシールドと、
前記ハウジング内に配置された穿刺要素と
を備え、
前記シールドは、前記穿刺要素を解放するように、前記ハウジングから外方に延びる第1の位置から該ハウジング内に少なくとも部分的に後退される第2の位置まで移動するように、該ハウジングと移動可能に関連付けられており、前記つまみ用陥凹部の各々は、前記穿刺要素を軸方向に通る軸から遠ざかるようにほぼ横断方向を向いている凹形の面形状を含み、前記つまみ用陥凹部の各々は、ユーザの指を置く場所をユーザに教えるように視覚的および触覚的手がかりを与えるための構造を含み、前記ハウジングのほぼ中央を通り前記軸にほぼ平行な面が、前記つまみ用陥凹部間のほぼ等距離にあることを特徴とするランセット装置。」
2 引用例及びその記載事項
原査定で引用された引用例1に記載の事項及び引用発明1は、上記第2の2(2)アにおいて説示し、認定したとおりである。
3 本願発明と引用発明1との対比・判断
(1)対比
上記第2の1で検討した本件補正発明は、本願発明の「つまみ用陷凹部」が、「第1及び第2のつまみ用陷凹部」であるとの限定と、本願発明の「ユーザの指を置く場所をユーザに教えるように視覚的および触覚的手がかりを与えるため」の「構造」を、「複数の長手方向リブと複数のトラフ」であるとの限定とを加える補正をするものである。
してみると、本願発明と引用発明1とは、つぎの一致点で一致し、つぎの相違点で相違するものである。
<一致点>
「つまみ用陥凹部を有するハウジングと、
前記ハウジングと同軸に且つ移動可能に関連付けられたシールドと、
前記ハウジング内に配置された穿刺要素と
を備え、
前記シールドは、前記穿刺要素を解放するように、前記ハウジングから外方に延びる第1の位置から該ハウジング内に少なくとも部分的に後退される第2の位置まで移動するように、該ハウジングと移動可能に関連付けられており、前記つまみ用陥凹部は、前記穿刺要素を軸方向に通る軸から遠ざかるようにほぼ横断方向を向いている凹形の面形状を含み、前記つまみ用陥凹部は、ユーザの指を置く場所をユーザに教えるように視覚的および触覚的手がかりを与えるための構造を含む、ランセット装置。」
<相違点>
「ハウジング」が、本願発明では、「第1つまみ用陥凹部および該第1つまみ用陥凹部の反対側にある第2つまみ用陥凹部を」有し、「前記第1および第2つまみ用陥凹部の各々は、前記ハウジングのほぼ中央を通り前記軸にほぼ平行な面が、前記つまみ用陥凹部間のほぼ等距離にある」のに対し、引用発明1では、把持用陥凹部がハウジングにあることが認められるものの、どの面にどの様に設けられているか特定されておらず、そのため上記本願発明のつまみ用陥凹部に関する特定がない点。
(2)判断
上記相違点について検討すると、引用発明1の「把持用陥凹部」を、どの面にどの様に形成するかは、採血器の使用方法等を考慮して適宜設定されるものであって、引用発明1が、「ハウジング10をゆっくり押し下げる」際に、「ハウジング10」を把持していることを考慮すると、「把持用陥凹部」が形成された主面と反対側の主面の、「ハウジング10」のほぼ中央を通り前記軸にほぼ平行な面に対しほぼ等距離の位置に、「把持用陥凹部」を形成する程度のことは、当業者が容易に想到できたことである。
してみると、本願発明は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
上記で検討したように、本願発明は、本願の原出願の優先権主張日前に頒布された引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない 。
したがって、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、上記結論のとおり審決する。
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