特許拒絶査定不服審判
2025-000057
心不全管理のための感知
- 審判番号
- 2025-000057
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-576838
- 請求日
- 2025年01月06日
- 審決日
- 2026年03月31日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】メドトロニック,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】山本 修
- 【請求人代理人】宮前 徹
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 浩
- 審判官 萩田 裕介
- 審判官 松本 隆彦
- 分類
- P18 .121-Z (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-576838「心不全管理のための感知」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年12月30日国際公開、WO2020/263543、令和 4年 9月12日国内公表、特表2022-539525〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)6月8日(パリ条約による優先権主張 2019年6月27日)を国際出願日とする出願であって、その手続の概要は以下のとおりである。
令和 6年 3月15日付け 拒絶理由通知
同年 6月17日 意見書及び手続補正書の提出
同年 8月30日付け 拒絶査定
令和 7年 1月 6日 審判請求書及び手続補正書の提出
第2 令和7年1月6日提出の手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年1月6日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所を示す。)
「【請求項1】
複数の電極を含む医療デバイスを使用して患者の心不全ステータスを判定するためのシステムであって、
前記医療デバイスであって、前記医療デバイスが1つ以上のセンサを含む、前記医療デバイスと、
処理回路であって、
前記複数の電極のうちの少なくとも2つから受信された動脈インピーダンス信号に基づいて、前記患者の推定動脈圧波形を判定することであって、前記推定動脈圧波形が、複数の動脈圧周期を含み、前記複数の動脈圧周期の各々が、前記患者の複数の心周期の異なる心周期に対応し、各前記心周期が、対応する動脈圧周期における重複隆起の前後で発生する期間に対応する部分を含む、判定することと、
前記複数の心周期のうちの少なくともいくつかについて、前記対応する動脈圧周期の固有周波数の少なくとも1つの値を判定することと、
前記固有周波数の前記少なくとも1つの値に基づいて、前記患者の前記心不全ステータスを判定することと、を行うように構成された、処理回路と、を含み、
前記固有周波数の前記少なくとも1つの値が、前記対応する動脈圧周期の支配的な周波数の値であって、それを中心として前記対応する動脈圧周期の瞬時周波数が振動する、値である、システム。」
(2)本件補正前の請求項1の記載
本件補正前の、令和6年6月17日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
複数の電極を含む医療デバイスを使用して患者の心不全ステータスを判定するためのシステムであって、
前記医療デバイスであって、前記医療デバイスが1つ以上のセンサを含む、前記医療デバイスと、
処理回路であって、
前記複数の電極のうちの少なくとも2つから受信された動脈インピーダンス信号に基づいて、前記患者の推定動脈圧波形を判定することであって、前記推定動脈圧波形が、複数の動脈圧周期を含み、前記複数の動脈圧周期の各々が、前記患者の複数の心周期の異なる心周期に対応する、判定することと、
前記複数の心周期のうちの少なくともいくつかについて、前記対応する動脈圧周期の固有周波数の少なくとも1つの値を判定することと、
前記固有周波数の前記少なくとも1つの値に基づいて、前記患者の前記心不全ステータスを判定することと、を行うように構成された、処理回路と、を含み、
前記固有周波数の前記少なくとも1つの値が、前記対応する動脈圧周期の支配的な周波数の値であって、それを中心として前記対応する動脈圧周期の瞬時周波数が振動する、値である、システム。」
2 補正の適否
(1)補正の目的について
本件補正は、請求項1において、本件補正前には、「処理回路」に関して「前記複数の電極のうちの少なくとも2つから受信された動脈インピーダンス信号に基づいて、前記患者の推定動脈圧波形を判定することであって、前記推定動脈圧波形が、複数の動脈圧周期を含み、前記複数の動脈圧周期の各々が、前記患者の複数の心周期の異なる心周期に対応する、判定することと」とあったものを、「前記複数の電極のうちの少なくとも2つから受信された動脈インピーダンス信号に基づいて、前記患者の推定動脈圧波形を判定することであって、前記推定動脈圧波形が、複数の動脈圧周期を含み、前記複数の動脈圧周期の各々が、前記患者の複数の心周期の異なる心周期に対応し、各前記心周期が、対応する動脈圧周期における重複隆起の前後で発生する期間に対応する部分を含む、判定することと」と補正するものである。
この補正は、「前記複数の動脈圧周期の各々が」「対応」する「心周期」について、「各前記心周期が、対応する動脈圧周期における重複隆起の前後で発生する期間に対応する部分を含む」と限定するもので、いわゆる限定的減縮にあたるものであり、本件補正前後で発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。
そこで、上記1(1)で記載した本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(2)独立特許要件について
ア 引用文献
(ア)引用文献1
a 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に発行された文献である特表2015-506740号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。
・引1-ア
「【請求項11】
信号を解析するコンピュータ履行方法であって、次の、
対象のために血行動態波形データを入力することであり、波形には重複隆起が含まれること、
分析用に信号を第一および第二セクションに分かつために波形において重複隆起の位置を定めること、
第一および第二固有周波数(ω1、ω2)を定めることによって波の第一および第二セクションの各々を分析することであり、そこでは、各固有周波数は瞬時周波数曲線のすべての周波数のために最も高いエネルギーを伴う周波数の位置または近くであること、および
解析の結果を出力すること
を含む、方法。
【請求項12】
結果には、ω1、ω2およびΔωが含まれる、請求項11のコンピュータ履行方法。
【請求項13】
結果には、対象の健康状態の指標が含まれる、請求項11のコンピュータ履行方法。
【請求項14】
対象はヒト対象である、請求項13のコンピュータ履行方法。
【請求項15】
指標は心房細動の診断である、請求項14のコンピュータ履行方法。
【請求項16】
指標は心不全の診断である、請求項14のコンピュータ履行方法。
【請求項17】
指標は大動脈弁機能障害の診断である、請求項14のコンピュータ履行方法。
【請求項18】
指標は動脈疾患の診断である、請求項14のコンピュータ履行方法。
【請求項19】
動脈疾患は、動脈瘤、狭窄症および高血圧症から選ばれる、請求項18のコンピュータ履行方法。
【請求項20】
指標は不整脈の診断である、請求項14のコンピュータ履行方法。
【請求項21】
指標は入院のためのアラートである、請求項14のコンピュータ履行方法。
【請求項22】
波形は、動脈圧力波、壁面変位波およびフローまたは速度波から選ばれる、請求項11のコンピュータ履行方法。」
・引1-イ
「【0013】
血行動態波形の固有周波数(また、随意に優位周波数とも呼ばれる)は、特定の時間間隔の瞬時周波数(瞬間度数)(a specific time interval the instantaneous frequency)においてすべての周波数の中で最も高いエネルギー(または出力)を伴う周波数に対応する。本主題のデバイス、システムおよび方法には、これらの値を直接計算するための手段が含まれる。それらにはまた、以下に詳しく述べるように優位周波数(固有周波数)を推定する手段が含まれる。
・・・
【0015】
しかしながら、ハードウェアが構成され、急性セッティングにおいては(プライマリケアの医師または専門家を伴うかどうかにかかわらず)、対象の方法論に従ってソフトウェアを動かすシステムは心房(性)細動(結果)または大動脈弁機能障害(不全)および外科的介入の必要性を検出するために使用することができる。あるいはまた、そのような装置は、高血圧のために投薬すること、またはうっ血性心不全(CHF)を監視することに関連する長期ケアの一部として(家庭内で日常的にまたはプライマリケアの医師により定期的に)モニタリングするために用いることができる。血行動態波形状態における変化を観察することにより、実施形態はまた、入院に先行するまたはそれを必要とする事象のタイプを予測することに有用でありうる。」
・引1-ウ
「【0020】
そして、本発明の主題は、人体において健康な心臓・大動脈システムが、心臓のポンプ特性および大動脈(動脈)波動力学の間の精密なカップリング(結合)を表しているという事実に基づく。この最適なカップリングは、動脈疾患(例は、動脈硬化、加齢、高血圧)、心疾患(例は、心不全、冠動脈疾患)または他のマイナスの寄与(例は、喫煙)によって損なわれてしまう。
・・・
【0022】
さらに詳細にここで記述するように、分析によるそのような情報の抽出は、固有(瞬時)周波数に基づいており、そして次のもののためのデバイス、システム、および方法を含む。すなわち、
圧力波形とは異なるCVDsの診断、
圧力波形からのCVDの重症度の評価、
壁の変位波形とは異なるCVDの診断、
壁の変位波形からのCVDの重症度の評価、
流動波形とは異なるCVDsの診断、
流動波形からCVDの重症度の評価、
圧力、壁の変位、および/または流動波形の組合せとは異なるCVDsの診断、および
圧力、壁の変位および/または流動波形のCVD形態の組合せの重症度の評価である。
データ分析の伝統的な方法は、定常および線形であるデータの仮定に基づく。フーリエ解析は、まさに典型的で、そしてしばしば使用される方法である。しかし、定常性および線形性の仮定は、動脈波のために保持されないことが知られている。それでも、スパースタイム-周波数表示(Sparse Time-Frequency Representation)(STFR)の新しい方法は、上記のこと、さらに他の方法および目標を達成するためにここに適用することができるように開発されている。
【0023】
STFR法が採用され、それは、それが非線形データ解析のために適切であり、それがノイズの摂動の影響を受けにくく、より重要なことには、それが信号のいくつかの本質的な物理的特性を維持するからである。一般的STFR問題は次のように規定される。すなわち、以下のようである。
【数1】
[図:0001438844000001.jpg]
対象のデバイス、システム、および方法では、簡略化および修飾化したバージョンのSTFRが最小化によって採用されてよい。すなわち、以下のようである。
【数2】
[図:0001438844000002.jpg]
ここで、T0は、重複隆起のどちらかの側の二つのドメインにおいて固有の/優位な周波数(IF)値(ω1、ω2)を決定するためには、大動脈弁閉鎖(すなわち、チャートにした重複隆起)の時間である。」
・引1-エ
「【0027】
いずれにしても、図2Aは概略的に、コンピュータベースのシステム100を示し、そこではスキャナ110には、血行動態波形測定値を取得するために信号112を送信および受信するためのオンボード電子機器が含まれる。そのような目的のために、マイクロ波センサ〔少なくとも血管変位(血管排出量)を測定するため〕および/または超音波センサ(いずれかまたは双方の血管膨張および血流速度/フローを測定するため)の使用がよく知られている。適切な公に利用可能なハードウェアの例には、GE LOGIQ Book Portable Ultrasound Machine(GE LOGIQブックポータブル超音波マシン)で採用されるものが含まれ、その技術は難なく対象デバイス、システム、および方法に適合される。適切なマイクロ波センサ技術は、Fletcher(フレッチャー)、RR、およびS Kulkarni(クルカルニ)の「Clip-on wireless wearable microwave sensor for ambulatory cardiac monitoring(歩行可能心臓モニタリングのためのクリップオンワイヤレスウェアラブルマイクロ波センサ)」、IEEE、2010.365-369.Web(ウェブ).2012年2月3日に記述される。
・・・
【0030】
ハンドヘルドスキャナ(ハンディースキャナ)は、有利には、壁ソケット(コンセント)への接続を回避するように電池駆動であってよい。ハンドヘルドまたは組み込まれたか、またはより一層大きなユニティにおいてであるかにかかわらず、スキャナ110は、無線(示されるように)または有線通信(示さない)によって、汎用コンピュータ120で、随意に、それぞれ実行され、および結果を通信するためのディスプレイ122を含むものとインターフェースすることができる。そうでない場合には、オンボード処理および/またはディスプレイハードウェアは、センサハウジングそれ自体に関連して提供されてもよい。そのようなオプションは、これらが自宅で、移動中などに、患者/対象によって使用することができるように、ハンドヘルドまたは半ポータブルデバイスのために特に有用でありうる。」
引1-オ
「【0033】
血行動態波形をどのように取得するかにかかわらず、所定の波形0が二つのIF値を生成する対象の方法において分析される。図3Aにつき、これらは(正確にまたはおおよそで)、第一セクション/ドメイン1のためにω1およびω2に対応し、そこでは、心臓および大動脈は結合されたシステム10にあり、そしてシステム10'単独での大動脈のために第二セクション/ドメイン2がある。これらのドメインは、示されるように、重複隆起(DN)によって分けられ/描写される。
【0034】
図3Aはまた、波形の圧力測定のスケールを示す。しかし、上に注釈したように、波形のスケールは重要ではなく--単にその形状に過ぎない。より一層注目すべきことは、図3A-5Bから定まるω1およびω2の値である。
【0035】
したがって、図3Aおよび3Bは、二体の若い成体の圧力波形およびそれらの計算されたIF値を示す。心臓+大動脈システムおよび動脈波ダイナミクス(波動力学)がそれらの最適な状態にある(または最適に近い)とき、それらのデータは、若い健康な成体からのものである。IF値は互いに接近する。図4A-4Cは、三体の30-40年齢のオールド(高齢)成体の圧力波形およびそれらの計算されたIF値を示す。心臓+大動脈システムおよび動脈波ダイナミクスの最適な状態から離れているとき、増加した大動脈リジディティ(剛性)のための可能性が高く、データは成体からのものである。これらの例では、IF値はさらに、図3Aおよび3Bからのものより分離される。図5Aおよび5Bは、重症心不全を有する加齢成体および他のものの圧力波形を、それぞれ、それらの計算されたIF値と共に示す。IF値の差がかなり大きい。
【0036】
図6Aは、計算されたIFにおいて、第一および第二の波形ドメインについてのプロットされた傾向を示す。たとえ、限られたデータセットがあっても、ω1は比較的一定に留まるか、または年齢と共に増加するかのどちらかであり、その一方で、ω2は年齢と共に減少することは明らかである。それゆえ、図6Bのプロットでは、IF値の差が示され、差は年齢と共に増加する。
【0037】
同様に、様々な対象およびそれらの関連する波形値のために既知の条件の観察に基づいて、データベースを開発し、そしてIF値および心臓の健康/CVD条件の間の相関を提案することが可能である。このような努力は、図7の表に示される。ここで、相対的な(>または<)ω1、ω2およびΔω値は、種々の可能な状態を示しているようにテーブルにまとめられた。適切な研究力に裏付けられ、そのようなテーブルは、システム100/100'からのIF分析出力を解釈する医師への援助として提供することができる。代わりに、テーブルのためのリレーションズ/ロジックは、医師のフィードバック/解釈と独立した判断を提供するためにそのようなシステムをプログラミングすることで埋め込むことができる。
【0038】
いずれにしても、図8は、一般的および具体的な処理を例示するコンピュータプログラムフローチャート200の一例であり、それは主題の方法に従って遂行することができる。202では、血行動態波形データは電子形式で取得され、および/または入力される。204では、波形デート(date)は、随意に重複隆起の位置でセグメント化される。これは、以下でさらに議論されるようにプロセスであり、またはIF値が計算される206に対し固有であることができる。コンピュータプロセスは次いで、医師の評価のためにω1、ω2およびΔωの出力(グラフィック表示、プリントアウトなどによる)と共に終了することができる。そうでなければ208でのコンピュータプログラムは、質問し、およびIF値を健康の値特性のデータベースと比較することができ、この比較に基づいて、210で、プログラムは、CVDの診断を与え、および関連するリスクを評定することができる。あるいは、またはさらに、212で、このプロセスは、現在のIF値を、患者について歴史的なIF値を含むデータベースと、その後CVDリスク因子および/または214での疾患の進行の決定と比較するように続行することができる。そのような任意の評価に続いて、216では、プログラムは関連した治療、予防策略などを提案することができ、--心臓事象の発症が検出された場合、緊急入院を促すことが含まれる。
【0039】
入力または取得される波形に関して、それは選定された動脈部位のいずれかで採ることができる。図9Aおよび9Bは、上行大動脈および伏在動脈の間の圧力波およびフロー波において輪郭における特徴的な変化をそれぞれ示す。任意の場所でのいずれかのタイプの波を使用することができる。しかし、時には、対応する疾患に関連した位置に近い(例は、心疾患のために心臓の近くで)測定を行うことが有利な場合がある。
【0040】
図10Aは大動脈のコンピュータによる計算モデルからの圧力波形の一例である。コンピュータによる計算モデルは生理学的に関連した。これらの方法ならびにモデルの物理パラメータは、Pahlevan(パフレバン)NM、Gharib(ガリブ)M.の「Aortic wave dynamics and its influence on left ventricular workload(大動脈波のダイナミクスおよび左心室の仕事量への影響)」、PLoS ONE. 2011;6:e23106に記載され、その全体が参照によりここに組み込まれ、そして以下に更に解説する。しかしながら、本議論に関連して、図10Bは図10Aの波形から算出された瞬時波形周波数3を例示する。顕著なことに、ドメイン1および2のそれぞれにおいて瞬時周波数は二つのレンジバンドAおよびBでの特定の支配的な周波数の周辺で振動している。システムIF値はこれらのバンド内に含まれる。上述するように、IF値は、算出され、またはこれらのバンド内で評価することができる。」
・引1-カ
「図2A
[図:0001438844000003.jpg]
」
・引1-キ
「図3A
[図:0001438844000004.jpg]
」
・引1-ク
「図7
[図:0001438844000005.jpg]
」
引1-ケ
「図8
[図:0001438844000006.jpg]
」
b 引用文献1の認定事項
(a)認定事項a
引用文献1の段落0027に「図2Aは概略的に、コンピュータベースのシステム100を示し、そこではスキャナ110には、血行動態波形測定値を取得するために信号112を送信および受信するためのオンボード電子機器が含まれる。」(引1-エ)、段落0030に「スキャナ110は、無線(示されるように)または有線通信(示さない)によって、汎用コンピュータ120で、随意に、それぞれ実行され、および結果を通信するためのディスプレイ122を含むものとインターフェースすることができる。」(引1-エ)と記載されており、上記引1-カで摘記した図2Aには、「ディスプレイ122、汎用コンピュータ120、スキャナ110を含むコンピュータベースのシステム100」が記載されている。
(b)認定事項b
引用文献1の段落0027に「スキャナ110には、血行動態波形測定値を取得するために信号112を送信および受信するためのオンボード電子機器が含まれる。そのような目的のために、マイクロ波センサ〔少なくとも血管変位(血管排出量)を測定するため〕および/または超音波センサ(いずれかまたは双方の血管膨張および血流速度/フローを測定するため)の使用がよく知られている。」(引1-エ)と記載されており、「スキャナ110」に含まれる「血行動態波形測定値を取得するために信号112を送信および受信するためのオンボード電子機器」に「マイクロ波センサ」及び/又は「超音波センサ」が含まれると認められる。
(c)認定事項c
引用文献1の段落0038に「図8は、一般的および具体的な処理を例示するコンピュータプログラムフローチャート200の一例であり」及び「202では、血行動態波形データは電子形式で取得され、および/または入力される。204では、波形デート(date)は、随意に重複隆起の位置でセグメント化される。これは、以下でさらに議論されるようにプロセスであり、またはIF値が計算される206に対し固有であることができる。コンピュータプロセスは次いで、医師の評価のためにω1、ω2およびΔωの出力(グラフィック表示、プリントアウトなどによる)」(引1-オ)と記載されている。引用文献1の図2Aに描かれている「コンピュータベースのシステム100」の構成では、コンピュータが「汎用コンピュータ120」しか存在しないことから、測定データを処理は「汎用コンピュータ120」で行われるものであり、上記記載の「コンピュータプログラムチャート200」は、「汎用コンピュータ120」で実行されると認められる。
(d)認定事項d
引用文献1の段落0038に「図8は、一般的および具体的な処理を例示するコンピュータプログラムフローチャート200の一例であり、それは主題の方法に従って遂行することができる。202では、血行動態波形データは電子形式で取得され、および/または入力される。204では、波形デート(date)は、随意に重複隆起の位置でセグメント化される。」(引1-オ)と記載されている。図8(引1-ケ)のコンピュータフローチャートにおいて、ステップ「204」で「セグメント化」される「波形デート(date)」は、ステップ「202」で取得及び/又は入力された「血行動態波形データ」であることは明らかであるから、「波形デート(date)」は、「波形データ(data)」の誤記と認められる。
(e)認定事項e
引用文献1の図8(引1-ケ)のコンピュータフローチャートにおいて、ステップ206は「コンピューティング 固有周波数(IF)」と記載されており、引用文献1の段落0038には、「IF値が計算される206に対し固有であることができる。コンピュータプロセスは次いで、医師の評価のためにω1、ω2およびΔωの出力(グラフィック表示、プリントアウトなどによる)と共に終了することができる。」(引1-オ)と記載されている。また、段落0023には「T0は、重複隆起のどちらかの側の二つのドメインにおいて固有の/優位な周波数(IF)値(ω1、ω2)を決定するためには、大動脈弁閉鎖(すなわち、チャートにした重複隆起)の時間である」(引1-エ)と記載されている。これらの記載事項から、ステップ206は、「重複隆起のどちらかの側の二つのドメインにおいて固有の/優位な周波数(IF)値(ω1、ω2)が計算される」ステップと認められる。
c 引用発明の認定
上記aの記載事項及び上記bの認定事項から、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。
「うっ血性心不全(CHF)を監視することに関連する長期ケアの一部として(家庭内で日常的にまたはプライマリケアの医師により定期的に)モニタリングするために用いることができる(【0015】)、ディスプレイ122、汎用コンピュータ120、スキャナ110を含むコンピュータベースのシステム100であって、(認定事項a、図2A)
スキャナ110には、マイクロ波センサ及び/又は超音波センサを含む、血行動態波形測定値を取得するために信号112を送信および受信するためのオンボード電子機器が含まれ、(【0027】、認定事項b)
汎用コンピュータ120は、コンピュータプログラムフローチャート200を実行するものであり、(認定事項c)
コンピュータフローチャート200は、血行動態波形データが電子形式で取得され(【0038】)、波形データ(data)は、随意に重複隆起の位置でセグメント化され(【0038】、認定事項d)、重複隆起のどちらかの側の二つのドメインにおいて固有の/優位な周波数(IF)値(ω1、ω2)が計算され(認定事項e)、現在のIF値を、患者について歴史的なIF値を含むデータベースと、その後CVDリスク因子および/または214での疾患の進行の決定と比較するように続行するものであり、(【0038】)
前記波形は、動脈圧力波、壁面変位波およびフローまたは速度波から選ばれるものであり、(請求項22)
ドメイン1および2のそれぞれにおいて瞬時周波数は二つのレンジバンドAおよびBでの特定の支配的な周波数の周辺で振動しており、システムIF値はこれらのバンド内に含まれ、IF値は、算出され、またはこれらのバンド内で評価することができるものである(【0040】)
システム。」(以下、「引用発明」という。)
(イ)引用文献2
a 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に発行された文献である特表2018-517528号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。
「【0006】
図1は、心臓の鼓動に対する脈動信号1の例を示す。脈動信号1は、動脈内で伝播する進行圧力波によって生成される先行脈動信号2と、動脈内で反射する圧力波によって生成される後続圧力波3との重ね合わせである。
【0007】
従来では、血圧値は、このような脈動信号の形及び波形を分析することによって取得される。残念ながら、脈動信号は、血圧信号に関連する信号であるものの、実際の血圧信号ではない。当該脈動信号の振幅及び形の歪みが、血圧値の測定に対して大きい誤差を引き起こすことが分かっている。特に、脈動信号のDP(拡張期血圧)の値、SP(収縮血圧)の値、P1(収縮の最初の中央ピーク)の値及びESP(収縮の終了時の圧力)が、元となる血圧信号のDP値、SP値、P1値及びESP値に対する振幅とタイミングとに一致しない。」
「【0028】
しかしながら、脈波センサは、光電脈波センサに限定されない。また、生体脈動センサが、図7~9に示されているように可能である。このような生体インピーダンスセンサ23は、電流6を通電するための2つの電極5と電圧8を測定するための2つの別電極7とを有する。さらに、これは、脈動信号を測定することを可能にする。図7は、インピーダンス型脈動センサを有する胸血圧計を示す。図8は、インピーダンス型脈動センサ23を有する腕血圧計を示す。図9は、インピーダンス型脈動センサ23を有する手首血圧計を示す。この場合、当該脈動センサは、非侵襲性のセンサである。また、埋め込み式の脈波センサも可能である。当該脈動信号が、例えば、動脈9の近くの身体組織2中に埋め込まれた埋め込み式加速度センサ3によって測定され得る(図10参照)。当該脈動信号が、例えば、動脈の近くに埋め込まれた埋め込み式光電脈波センサ4によって測定され得る(図11参照)。当該脈動信号が、例えば、動脈9の近くに埋め込まれた埋め込み式インピーダンスセンサ23によって測定され得る(図12参照)。当該脈動信号が、例えば、動脈の中に埋め込まれた侵襲性の動脈センサによって測定され得る(図示せず)。」
「図1
[図:0001438844000007.jpg]
」
b 引用文献2に記載の技術手段
上記aの引用文献2の記載事項から、引用文献2には、次の技術手段が記載されている。
「電流を通電するための2つの電極と電圧を測定するための2つの別電極とを有する生体インピーダンスセンサである生体脈動センサにより動脈振動を測定し、脈動の波形を得ること。」(以下、「引用文献2記載の技術手段」という。)
(ウ)引用文献3
a 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に発行された文献である特表2017-521115号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。
「【0041】
図1Aは、被験者104上に配置された一実施形態の血圧測定デバイス102を含む一実施形態のシステム100を示す。一実施形態では、血圧測定デバイス102は、1つまたは複数の動脈測定センサ101に接続されたプロセッサ103と、1つまたは複数の高度センサ105と、電源107と、アンテナに接続された無線モジュール109とを含み得る。1つまたは複数の動脈測定センサ101は、直接または間接的に被験者104の動脈特性を測定し得る任意のタイプのセンサまたはセンサの組合せであり得る。一例として、1つまたは複数の動脈測定センサ101は、生体インピーダンスを測定するために、電極のセットの1つによって交流電流を注入し、電極の別のセットを用いて電圧を検出する、電気組織および血液インピーダンス測定センサであり得る。別の例として、1つまたは複数の動脈測定センサ101は、パルスオキシメータを含むフォトプレチスモグラフィセンサなどの光学センサであり得る。さらなる例として、1つまたは複数の動脈測定センサ101は、超音波センサであり得る。さらに別の例として、1つまたは複数の動脈測定センサ101は、面圧力センサであり得る。依然としてさらなる例として、1つまたは複数の動脈測定センサ101は、インピーダンスプレチスモグラフィセンサなどのインピーダンスセンサであり得る。1つまたは複数の動脈測定センサ101は、血圧測定デバイス102のプロセッサ103に動脈特性の測定値を出力し得る。1つまたは複数の高度センサ105は、血圧測定デバイス102および血圧測定デバイス102が取り付けられ得る被験者104の肢または他の一の高さを測定し得る任意のタイプのセンサまたはセンサの組合せであり得る。例として、1つまたは複数の高度センサは、3次元慣性センサ(たとえば、加速度計など)、GPSセンサなどであり得る。1つまたは複数の高度センサ105は、血圧測定デバイス102のプロセッサ103に高度測定値を出力し得る。」
「【0044】
図1Bは、プロセッサ103の様々な処理モジュールを示す、図1Aを参照して上記で説明した血圧測定デバイス102などの例示的な血圧測定デバイスの構成要素ブロック図である。一実施形態では、図1Bに示す血圧測定デバイスは、生体インピーダンスに基づいて血圧を測定し得る。動脈測定センサ101は、動脈などの物体に励起電極を介して振動電流、正弦波電流などの励起信号を印加するように構成された、発振器などの信号発生器と、結果として生じる電圧を測定し、プロセッサ103に電圧を提供する検出電極とを含み得る。高度センサ105は、プロセッサ103に加速度測定値を出力するように構成され得る慣性センサを備え得る。」
「【0049】
図5は、脈圧に関する圧力対時間のグラフである。図5は、収縮期における開始と、次の脈拍が発生するまでの拡張期の最後の部分における指数関数的減衰とを有する典型的な脈圧を示す。測定されたインピーダンス変動は、一般的に、大きいバイアスを有し得る。図5において、信号は、ハイパスフィルタリングされており、それは、ベースラインを除去し得る。バイアスは、ハイパスフィルタリングによって除去され得るが、これは、減衰に関する正確な漸近値を提供しない可能性がある。」
「図5
[図:0001438844000008.jpg]
」
b 引用文献3に記載の技術手段
上記aの引用文献3の記載事項から、引用文献3には、次の技術手段が記載されている。
「生体インピーダンスを測定するために、電極のセットの1つによって交流電流を注入し、電極の別のセットを用いて電圧を検出する、電気組織および血液インピーダンス測定センサである動脈測定センサを用いて、生体インピーダンスを測定し、脈圧の波形を得ること。」(以下、「引用文献3記載の技術手段」という。)
イ 対比・判断
(ア)本件補正発明と引用発明との対比
a 「複数の電極を含む医療デバイスを使用して患者の心不全ステータスを判定するためのシステムであって、」について
引用発明は、「うっ血性心不全(CHF)を監視することに関連する長期ケアの一部として(家庭内で日常的にまたはプライマリケアの医師により定期的に)モニタリングするために用いることができる」「システム」であり、「スキャナ」で得た「血行動態波形測定値」(「血行動態波形データ」)から、「固有の/優位な周波数(IF)値(ω1、ω2)が計算され」、「CVDリスク因子および/または214での疾患の進行の決定と比較するように続行するものであ」る。「うっ血性心不全(CHF)を監視する」ために「疾患の進行」を決定することを踏まえると、引用発明の「スキャナ」は、本件補正発明の「医療デバイス」に相当し、本件補正発明と引用発明は、「医療デバイスを使用して患者の心不全ステータスを判定するためのシステム」で共通し、引用発明は、医療デバイスが電極を含むものではない。
b 「前記医療デバイスであって、前記医療デバイスが1つ以上のセンサを含む、前記医療デバイスと、」について
引用発明は、「スキャナ」が「マイクロ波センサ及び/又は超音波センサ」を含み、この「マイクロ波センサ及び/又は超音波センサ」が、本件補正発明の「1つ以上のセンサ」に相当するから、引用発明の「マイクロ波センサ及び/又は超音波センサを含む血行動態波形測定値を取得するために信号112を送信および受信するためのオンボード電子機器が含まれ」る「スキャナ」は、本件補正発明の「前記医療デバイスが1つ以上のセンサを含む、前記医療デバイス」に相当する。
c 「処理回路であって、」について
引用発明の「汎用コンピュータ120」は、「コンピュータプログラムフローチャート200を実行」し、「血行動態波形データ」を処理するものであり、計算処理回路を備えていることは明らかであるから、本件補正発明の「処理回路」に相当する構成を備えている。
d 「前記複数の電極のうちの少なくとも2つから受信された動脈インピーダンス信号に基づいて、前記患者の推定動脈圧波形を判定することであって、前記推定動脈圧波形が、複数の動脈圧周期を含み、前記複数の動脈圧周期の各々が、前記患者の複数の心周期の異なる心周期に対応し、各前記心周期が、対応する動脈圧周期における重複隆起の前後で発生する期間に対応する部分を含む、判定することと、」について
引用発明の「電子形式で取得され」ることは、本件補正発明の「受信され」ることに相当する。
引用発明の「血行動態波形」は、引用文献1の図3A(上記ア(ア)aの引1-キ)にみられるような波形であり、「重複隆起の位置でセグメント化され」るものであって、重複隆起の前後の2つの周期を含み、それぞれが心周期の収縮期と拡張期に対応することは技術常識であるから、引用発明の「血行動態波形」は、本件補正発明の「複数の動脈圧周期を含み、前記複数の動脈圧周期の各々が、前記患者の複数の心周期の異なる心周期に対応し、各前記心周期が、対応する動脈圧周期における重複隆起の前後で発生する期間に対応する部分を含む」に相当するものである。
そして、引用発明の「血行動態波形」は、明示的に「動脈圧力波」である場合を含むものであり、引用発明において、「スキャナ110」で取得した「血行動態波形測定値」に基づいて「血行動態波形」を推定することは明らかであるから、引用発明の「スキャナ110」で取得した「血行動態波形測定値」に基づいて「動脈圧力波」を含む「血行動態波形」を推定することと、本件補正発明の「前記複数の電極のうちの少なくとも2つから受信された動脈インピーダンス信号に基づいて、前記患者の推定動脈圧波形を判定すること」は、「医療デバイスから受信した信号に基づいて、前記患者の推定動脈圧波形を判定する」ことで共通する。
e 「前記複数の心周期のうちの少なくともいくつかについて、前記対応する動脈圧周期の固有周波数の少なくとも1つの値を判定することと、」について
引用発明の「固有の/優位な周波数(IF)値(ω1、ω2)」が、本件補正発明の「固有周波数」に相当するので、引用発明の「重複隆起のどちらかの側の二つのドメインにおいて固有の/優位な周波数(IF)値(ω1、ω2)が計算され」ることが、本件補正発明の「前記複数の心周期のうちの少なくともいくつかについて、前記対応する動脈圧周期の固有周波数の少なくとも1つの値を判定すること」に相当する。
f 「前記固有周波数の前記少なくとも1つの値に基づいて、前記患者の前記心不全ステータスを判定することと、」について
引用発明は、「現在のIF値を、患者について歴史的なIF値を含むデータベースと、その後CVDリスク因子および/または214での疾患の進行の決定と比較」して、「うっ血性心不全(CHF)を監視する」ものであるから、本件補正発明の「前記固有周波数の前記少なくとも1つの値に基づいて、前記患者の前記心不全ステータスを判定する」に相当する構成を備えているといえる。
g 「前記固有周波数の前記少なくとも1つの値が、前記対応する動脈圧周期の支配的な周波数の値であって、それを中心として前記対応する動脈圧周期の瞬時周波数が振動する、値である」について
引用発明において、IF値は、「固有の/優位な周波数(IF)値」であり、「瞬時周波数」は、「ドメイン1および2のそれぞれにおいて」「二つのレンジバンドAおよびBでの特定の支配的な周波数の周辺で振動しており」、システムIF値はこれらのバンド内に含まれ、IF値は、算出され、またはこれらのバンド内で評価することができるものである。そうすると、引用発明の、対応する動脈圧周期の「固有の/優位な周波数(IF)値」と、本件補正発明の「前記固有周波数の前記少なくとも1つの値が、前記対応する動脈圧周期の支配的な周波数の値であって、それを中心として前記対応する動脈圧周期の瞬時周波数が振動する、値である」は、「前記固有周波数の前記少なくとも1つの値が、前記対応する動脈圧周期の支配的な周波数の値であって、前記対応する動脈圧周期の瞬時周波数が振動する範囲内の値である」ことで共通する。
h 以上から、本件補正発明と引用発明は、以下の一致点と相違点を有する。
<一致点>
「医療デバイスを使用して患者の心不全ステータスを判定するためのシステムであって、
前記医療デバイスであって、前記医療デバイスが1つ以上のセンサを含む、前記医療デバイスと、
処理回路であって、
医療デバイスから受信された信号に基づいて、前記患者の推定動脈圧波形を判定することであって、前記推定動脈圧波形が、複数の動脈圧周期を含み、前記複数の動脈圧周期の各々が、前記患者の複数の心周期の異なる心周期に対応し、各前記心周期が、対応する動脈圧周期における重複隆起の前後で発生する期間に対応する部分を含む、判定することと、
前記複数の心周期のうちの少なくともいくつかについて、前記対応する動脈圧周期の固有周波数の少なくとも1つの値を判定することと、
前記固有周波数の前記少なくとも1つの値に基づいて、前記患者の前記心不全ステータスを判定することと、を行うように構成された、処理回路と、を含み、
前記固有周波数の前記少なくとも1つの値が、前記対応する動脈圧周期の支配的な周波数の値であって、前記対応する動脈圧周期の瞬時周波数が振動する範囲内の値である、システム。」
<相違点>
相違点1:本件補正発明は、「医療デバイス」が「複数の電極を含む」ものであり、「前記患者の推定動脈圧波形を判定する」ことが、「前記複数の電極のうちの少なくとも2つから受信された動脈インピーダンス信号に基づいて」行われるのに対して、引用発明は、スキャナが複数に電極を含まず、推定動脈圧波形の判定が、動脈インピーダンス信号に基づいて行われるものではない点。
相違点2:「前記固有周波数の前記少なくとも1つの値」について、本件補正発明は、「前記固有周波数の前記少なくとも1つの値が、」「それを中心として前記対応する動脈圧周期の瞬時周波数が振動する、値である」のに対して、引用発明は、「瞬時周波数は二つのレンジバンドAおよびBでの特定の支配的な周波数の周辺で振動」するものの、「固有の/優位な周波数(IF)値」が、振動の中心であるかは不明である点。
(イ)判断
a 相違点1について
引用文献2には、「電流を通電するための2つの電極と電圧を測定するための2つの別電極とを有する生体インピーダンスセンサである生体脈動センサ。」(上記ア(イ)b)が記載されており、
引用文献3には、「生体インピーダンスを測定するために、電極のセットの1つによって交流電流を注入し、電極の別のセットを用いて電圧を検出する、電気組織および血液インピーダンス測定センサである動脈測定センサ。」(上記ア(ウ)b)が記載されている。引用文献2、3に記載の各技術手段はともに動脈の脈動由来のインピーダンスを複数の電極を用いて測定し、動脈波を推定する技術である。
引用発明と引用文献2、3に記載の技術は、ともに動脈波の測定に関するものであるから、引用発明において、引用文献2、3に記載の技術を適用して、複数の電極を含むインピーダンス測定センサを用いて生体インピーダンスを測定し、測定したインピーダンスに基づいて動脈圧波形を得るように変更すること、つまり本件補正発明の上記相違点1に係る構成を具備させることは当業者が容易に想到しうることである。
b 相違点2について
引用発明において「瞬時周波数は二つのレンジバンドAおよびBでの特定の支配的な周波数の周辺で振動」するものであることをふまえると、その振動の中心となる値が、支配的なものであり、「固有の/優位な」ものとして把握できることは当業者が十分に認識できることであるから、引用発明において、「固有の/優位な周波数(IF)値」として、「二つのレンジバンドAおよびBでの特定の支配的な周波数の周辺で」「瞬時周波数」が「振動」する、その中心を採用することは当業者が適宜なし得る事項である。
c 効果
本件補正発明が奏する効果は、引用発明及び引用文献2、3の記載から当業者が十分に予想しうる範囲内である。
ウ 請求人の主張
(ア)請求人の主張
請求人は、審判請求書の請求の理由において、進歩性について以下の旨を主張している。
主張1:「『複数の電極のうちの少なくとも2つから受信された動脈インピーダンス信号に基づ(く)』ことが引用文献1に開示されていない以上、ここで判定される『推定動脈圧波形』に関する構成、つまり、本願発明1において『推定動脈圧波形が複数の動脈圧周期を含み、複数の動脈圧周期の各々が、患者の複数の心周期の異なる心周期に対応し、各心周期が、対応する動脈圧周期における重複隆起の前後で発生する期間に対応する部分を含む』構成についても引用文献1には一切記載も示唆もされていない。」
主張2:「引用文献2、3に開示されるのは、主に「医療デバイス」が備える「複数の電極」に関するものにすぎない。つまり、本願発明1の上記構成について引用文献2、3には一切記載も示唆もされていない。」
主張3:「本願発明1は、上記構成を備えることにより、先に引用した本願明細書の段落0024に記載されるように、固有の周波数を監視して、経時的な患者の心血管機能の変化を追跡することができるという、従来技術にはない新規な作用効果を奏するものとなる。」
(イ)主張に対する当審の判断
a 主張1及び主張2について
引用発明において、スキャナによる測定値は、動脈圧そのものではないから、測定値から得られる波形は、動脈圧力波形そのものではなく、推定された動脈圧力波形であるといえる。そして、この波形は、引用文献1の図3A(上記ア(ア)aの引1-キ)にみられるような「重複隆起(DN)」を有する波形であり、重複隆起の前が収縮期、後が拡張期であることは技術常識であるから、本件補正発明の「前記推定動脈圧波形が、複数の動脈圧周期を含み、前記複数の動脈圧周期の各々が、前記患者の複数の心周期の異なる心周期に対応し、各前記心周期が、対応する動脈圧周期における重複隆起の前後で発生する期間に対応する部分を含む」に相当するものである。
そして、上記(イ)aで説示したとおり、引用発明において、引用文献2、3に記載の技術を適用することは容易であり、引用文献2、3に記載の技術を適用することにより、測定が、複数の電極を有する生体インピーダンスセンサで行われれば、当然、測定に続く処理も、測定された動脈インピーダンス信号に基づくものとなり、必然的に、動脈圧波形も、動脈インピーダンス信号に基づくものとなる。
よって、主張1及び主張2は採用することができない。
b 主張3について
引用発明も、「動脈圧力波」を含む「血行動態波形」の「固有の/優位な周波数(IF)値(ω1、ω2)」に基づいて、「うっ血性心不全(CHF)を監視することに関連する長期ケアの一部として(家庭内で日常的にまたはプライマリケアの医師により定期的に)モニタリング」(引用文献1の【0015】(上記ア(ア)aの引1-イ))するものであるから、本件補正発明と同様の効果を奏することは明らかである。
また、本件補正発明は、「複数の電極を含む医療デバイス」が本件の明細書に記載されているような「植え込み型医療デバイス」であることは特定されておらず、本件の明細書の「上述した植え込み型または外部デバイスのうちの1つ以上である、複数の電極を含み、かつ臨床設定の外で患者とともに位置するように構成された多数のタイプの医療デバイスを使用して、そのような、特許の動脈インピーダンス信号を取得し得る。」と記載されていることからも、「植え込み型医療デバイス」ではない「外部デバイス」タイプのものを含むものであることは明らかであるから、「植え込み型」により奏される効果は本件補正発明の効果ではない。
よって、主張3は採用できない。
エ 小括
本件補正発明は、引用発明及び引用文献2、3に記載の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもあるから、同法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反する。
3 むすび
以上から、本件補正は、特許法第17条の2第5号第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、上記2(2)に示したとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~22に係る発明は、令和6年6月17日提出の手続補正書により補正された、特許求の範囲の請求項1~22に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.1(2)に記載したとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由(特許法第29条第2項について)
本願発明に対する原査定の拒絶の理由である理由3は概略、以下のとおりである。引用文献1~3は上記第2 2(2)ア(ア)~(ウ)に記載した引用文献1~3と同じである。
理由3.(進歩性)本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載の技術手段に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用文献及び引用発明
引用発明並びに引用文献1~3に記載の記載事項は、前記第2の2(2)アにおいて示したとおりである。
4 当審の判断
本願発明は、本件補正発明における「前記複数の動脈圧周期の各々が」「対応」する「心周期」について、「各前記心周期が、対応する動脈圧周期における重複隆起の前後で発生する期間に対応する部分を含む」というが付されていないものに対応し、本件補正発明をその範囲に含むものであるところ、前記第2の2(2)イ及びウで本件補正発明について説示したものと同様、本願発明は、引用発明、引用文献2、3記載の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明、並びに、引用文献2、3記載の技術手段に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-000057