特許拒絶査定不服審判
2016-010876
半導体装置
- 審判番号
- 2016-010876
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-045498外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年07月19日
- 審決日
- 2017年04月17日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社半導体エネルギー研究所
- 【請求人代理人】柳瀬 睦肇
- 【請求人】シャープ株式会社
- 【請求人代理人】柳瀬 睦肇
- 分類
- P18 .121-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第4項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012- 45498「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月12日出願公開、特開2013-183001〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月1日を出願日とする出願であって、平成27年2月10日付で審査請求がなされ、平成28年1月20日付で拒絶理由が通知され、同年3月7日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされ、同年4月26日付で拒絶査定がなされたものである。
これに対して、平成28年7月19日付で拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。
第2 平成28年7月19日付の手続補正についての却下の決定
[補正却下の結論]
平成28年7月19日付の手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
平成28年7月19日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。(なお、下線は、補正の箇所を示すものとして審判請求人が付加したものである。)
「【請求項1】
ガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極上に形成された金属酸化物からなる第1のゲート絶縁膜と、
前記第1のゲート絶縁膜上に形成された前記第1のゲート絶縁膜と組成が異なる第2のゲート絶縁膜と、
前記第2のゲート絶縁膜上に形成され、前記ゲート電極と重畳する位置に設けられた酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と電気的に接続されたソース電極及びドレイン電極と、を有し、
前記第1のゲート絶縁膜の表面から3nm以下の領域において、前記ガラス基板中に含まれるナトリウムの濃度が、1×1018atoms/cm3以下であり、
前記金属酸化物は酸化アルミニウムであり、
前記酸化アルミニウムの密度は3.2g/cm3以上であり、
前記酸化アルミニウムの水の放出量は1.0×1015atoms/cm3以下であり、
前記酸化アルミニウムの水素の放出量は1.0×1015atoms/cm3以下であり、
前記第2のゲート絶縁膜は前記酸化物半導体膜と接する部分において少なくとも化学量論的組成比を超える量の酸素が存在することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記酸化物半導体膜はチャネル領域を有しており、
前記酸化物半導体膜上には、前記チャネル領域上に位置する酸化物絶縁膜が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記酸化物半導体膜は、インジウム酸化物、亜鉛酸化物、ガリウム酸化物、及びスズ酸化物の群から選択された少なくとも一つの酸化物を含む膜であり、
前記第2のゲート絶縁膜は、SiO2+α(ただし、α>0)である酸化シリコン膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記酸化物半導体膜は、結晶部を含み、
前記結晶部は、c軸が前記酸化物半導体膜の被形成面の法線ベクトルに平行な方向に揃うことを特徴とする半導体装置。」
(2)補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
ガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成され、酸化物半導体膜を有するトランジスタと、
前記酸化物半導体膜と前記ガラス基板との間に形成された金属酸化物からなる絶縁膜と、を有し、
前記絶縁膜の表面から3nm以下の領域において、前記ガラス基板中に含まれるナトリウムの濃度が、1×1018atoms/cm3以下であり、
前記金属酸化物は酸化アルミニウムであり、
前記酸化アルミニウムの密度は3.2g/cm3以上であり、
前記酸化アルミニウムの水の放出量は1.0×1015atoms/cm3以下であり、
前記酸化アルミニウムの水素の放出量は1.0×1015atoms/cm3以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
ガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成された金属酸化物からなる下地絶縁膜と、
前記下地絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成され、前記ゲート電極と重畳する位置に設けられた酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と電気的に接続されたソース電極及びドレイン電極と、を有し、
前記下地絶縁膜の表面から3nm以下の領域において、前記ガラス基板中に含まれるナトリウムの濃度が、1×1018atoms/cm3以下であり、
前記金属酸化物は酸化アルミニウムであり、
前記酸化アルミニウムの密度は3.2g/cm3以上であり、
前記酸化アルミニウムの水の放出量は1.0×1015atoms/cm3以下であり、
前記酸化アルミニウムの水素の放出量は1.0×1015atoms/cm3以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
ガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極上に形成された金属酸化物からなる第1のゲート絶縁膜と、
前記第1のゲート絶縁膜上に形成された前記第1のゲート絶縁膜と組成が異なる第2のゲート絶縁膜と、
前記第2のゲート絶縁膜上に形成され、前記ゲート電極と重畳する位置に設けられた酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と電気的に接続されたソース電極及びドレイン電極と、を有し、
前記第1のゲート絶縁膜の表面から3nm以下の領域において、前記ガラス基板中に含まれるナトリウムの濃度が、1×1018atoms/cm3以下であり、
前記金属酸化物は酸化アルミニウムであり、
前記酸化アルミニウムの密度は3.2g/cm3以上であり、
前記酸化アルミニウムの水の放出量は1.0×1015atoms/cm3以下であり、
前記酸化アルミニウムの水素の放出量は1.0×1015atoms/cm3以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記酸化物半導体膜はチャネル領域を有しており、
前記酸化物半導体膜上には、前記チャネル領域上に位置する酸化物絶縁膜が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、
前記酸化物半導体膜は、インジウム酸化物、亜鉛酸化物、ガリウム酸化物、及びスズ酸化物の群から選択された少なくとも一つの酸化物を含む膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、
前記酸化物半導体膜は、結晶部を含み、
前記結晶部は、c軸が前記酸化物半導体膜の被形成面の法線ベクトルに平行な方向に揃うことを特徴とする半導体装置。」
2 補正の適否について
(1)補正の目的について
補正後の請求項1ないし4に係る発明は、補正前の請求項3ないし6に係る発明に対応し、本件補正は、補正前の請求項に係る発明に次の補正がなされたものである。
ア 補正前の請求項1ないし2を削除し、補正前の請求項3ないし6を補正後の請求項1ないし4とし、それにともない、補正前の請求項4の「請求項2または3において、」、補正前の請求項5の「請求項1乃至4のいずれか一項において、」および、補正前の請求項6の「請求項1乃至5のいずれか一項において、」の記載を、それぞれ補正後の請求項2において「請求項1において、」、補正言お請求項3において「請求項1または2において、」および、補正後の請求項4において「請求項1乃至3のいずれか一項において、」とする補正。(以下、「補正事項ア」という。)
補正事項アについて検討すると、補正事項アは、補正前の請求項1ないし2を削除し、補正前の請求項3ないし6を補正後の請求項1ないし4とし、それにともない、補正後の請求項2ないし4が引用する請求項を補正するものであるから、請求項の削除を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項アは、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる、請求項の削除を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項アは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そして、補正事項アは、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項アは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項アは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
イ 補正前の請求項3に、補正後の請求項1において「前記第2のゲート絶縁膜は前記酸化物半導体膜と接する部分において少なくとも化学量論的組成比を超える量の酸素が存在すること」を加える補正。(以下、「補正事項イ」という。)
補正事項イにより加えられた部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項イは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項イは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項イは、補正前の請求項3の「第2のゲート絶縁膜」について、補正後の請求項1において「前記第2のゲート絶縁膜は前記酸化物半導体膜と接する部分において少なくとも化学量論的組成比を超える量の酸素が存在すること」との限定を加えるものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項イは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
ウ 補正前の請求項5に、補正後の請求項3において「前記第2のゲート絶縁膜は、SiO2+α(ただし、α>0)である酸化シリコン膜であること」を加える補正。(以下、「補正事項ウ」という。)
補正事項ウにより加えられた部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項ウは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項ウは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項ウは、補正前の請求項5の「第2のゲート絶縁膜」について、補正後の請求項3において「前記第2のゲート絶縁膜は、SiO2+α(ただし、α>0)である酸化シリコン膜であること」との限定を加えるものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項イは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する
(2)進歩性について
ア 引用例1について
(ア)引用例1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2011-109080号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。(なお、下線は、当審において付与した。以下、同じ。)
a 「【0026】
なお本発明は、マイクロプロセッサ、画像処理回路などの集積回路や、RFタグ、半導体表示装置等、ありとあらゆる半導体装置の作製に用いることができる。半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を意味し、半導体表示装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。半導体表示装置は、液晶表示装置、有機発光素子(OLED)に代表される発光素子を各画素に備えた発光装置、電子ペーパー、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)等や、半導体膜を用いた回路素子を駆動回路に有しているその他の半導体表示装置がその範疇に含まれる。
【0027】
(実施の形態1)
チャネルエッチ構造のボトムゲート型の薄膜トランジスタを例に挙げ、半導体装置の作製方法について図1乃至図3を用いて説明する。
【0028】
図1(A)に示すように、基板100上にゲート電極101を形成する。
・・・ 中 略 ・・・
【0035】
次いで、ゲート電極101上に、ゲート絶縁膜102を形成する。ゲート絶縁膜102は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、酸化アルミニウムまたは酸化タンタルを単層で又は積層させて形成することができる。ゲート絶縁膜102は、水分や、水素などの不純物を極力含まないことが望ましい。バリア性の高い材料を用いた絶縁膜と、含まれる窒素の比率が低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜とを積層させた構造を有するゲート絶縁膜102を形成しても良い。この場合、酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜は、バリア性を有する絶縁膜と酸化物半導体膜の間に形成する。バリア性の高い絶縁膜として、例えば窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜などが挙げられる。バリア性を有する絶縁膜を用いることで、水分または水素などの雰囲気中不純物、或いは基板内に含まれるアルカリ金属、重金属などの不純物が、酸化物半導体膜内、ゲート絶縁膜102内、或いは、酸化物半導体膜と他の絶縁膜の界面とその近傍に入り込むのを防ぐことができる。また、酸化物半導体膜に接するように窒素の比率が低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を形成することで、バリア性の高い材料を用いた絶縁膜が直接酸化物半導体膜に接するのを防ぐことができる。
【0036】
本実施の形態では、スパッタ法で形成された膜厚50nmの窒化珪素膜上に、スパッタ法で形成された膜厚100nmの酸化珪素膜を積層させた構造を有する、ゲート絶縁膜102を形成する。
【0037】
次いで、ゲート絶縁膜102上に酸化物半導体膜を形成する。酸化物半導体膜は、酸化物半導体をターゲットとして用い、スパッタ法により成膜する。また、酸化物半導体膜は、希ガス(例えばアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(例えばアルゴン)及び酸素雰囲気下においてスパッタ法により形成することができる。
・・・ 中 略 ・・・
【0042】
次いで、図1(A)に示すように、酸化物半導体膜をエッチングなどにより所望の形状に加工(パターニング)し、ゲート電極101と重なる位置において、ゲート絶縁膜102上に島状の酸化物半導体膜103を形成する。
・・・ 中 略 ・・・
【0046】
次いで、図1(C)に示すように、島状の酸化物半導体膜104上に、ソース電極ドレイン電極用の導電膜を形成する。本実施の形態では、酸化物半導体膜104との接触抵抗が低いチタン、タングステンまたはモリブデンなどの金属材料を用いた導電膜105a上に、電気陰性度が低い金属、金属化合物または合金を用いた導電膜105bを形成する。」
(イ)引用例1発明について
上記(ア)の記載から、引用例1には、実質的に次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「基板100と、
基板上に形成されたゲート電極101と、
ゲート電極上に形成された、ゲート絶縁膜102の一部を構成する窒化珪素膜と、
窒化珪素膜上に形成された、ゲート絶縁膜102の一部を構成する酸化珪素膜と、
ゲート絶縁膜102上に形成された、島状の酸化物半導体膜104と、
島状の酸化物半導体膜104上に形成されたソース電極106およびドレイン電極107とを有し、
バリア性の高い絶縁膜である、窒化珪素膜は、水分または水素などの雰囲気中不純物、或いは基板内に含まれるアルカリ金属、重金属などの不純物が、酸化物半導体膜内、ゲート絶縁膜102内、或いは、酸化物半導体膜と他の絶縁膜の界面とその近傍に入り込むのを防ぎ、
ゲート絶縁膜102は、水分や、水素などの不純物を極力含まないことを特徴とするボトムゲート型の薄膜トランジスタ。」
イ 引用例2について
(ア)引用例2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2010-114413号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
a「【0076】
パッシベーション膜26Bは、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)およびタンタル(Ta)のうち少なくとも1種を含む酸化物、窒化物あるいは酸窒化物により構成されている。これにより、このTFT20Bでは、大気中の水素による酸化物半導体中の酸素の還元を抑えると共に、酸化物半導体層から酸素などの脱離を抑えることが可能となっている。
【0077】
パッシベーション膜26Bは、中でも、アルミニウムの酸窒化物あるいは窒化物により構成されていることが好ましい。より高い効果を得ることが可能となるからである。
【0078】
パッシベーション膜26Bの密度は、例えば、3.0g/cm3以上4.0g/cm3以下であることが好ましい。製造工程中あるいは大気中の水素による酸化物半導体の還元、熱処理による酸化物半導体中の酸素の脱離を防ぐバリア機能を高めることが可能となるからである。一般的にパッシベーション膜は、密度が高いほうが酸素や水素の透過性を軽減できるので保護膜として優れたものとなる。因みに、理想的な酸化アルミニウム(Al2O3)バルクの密度が4.0g/cm3である。」
(イ)引用例2記載事項について
上記(ア)の記載から、引用例2には、実質的に次の事項(以下、「引用例2記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「製造工程中あるいは大気中の水素による酸化物半導体の還元、熱処理による酸化物半導体中の酸素の脱離を防ぐために、密度が高い方が酸素や水素の透過を軽減できる保護膜として優れているため、密度3.0g/cm3以上4.0g/cm3以下であるアルミニウムの酸窒化物をパッシベーション膜として用い、理想的な酸化アルミニウム(Al2O3)は密度が4.0g/cm3であること。」
ウ 引用例3について
(ア)本願の出願日前に公開された特開2012-23359号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
a 「【0028】
酸化物半導体膜403と接する第1の絶縁膜404及び第2の絶縁膜407には、酸素を含む絶縁膜を用いるのが望ましく、化学量論的組成比より酸素が多い領域(酸素過剰領域とも表記する)が含まれる膜であるのがより望ましい。酸化物半導体膜403と接する第1の絶縁膜404及び第2の絶縁膜407が酸素過剰領域を有することにより、酸化物半導体膜403から第1の絶縁膜404または第2の絶縁膜407への酸素の移動を防ぐことができる。また、第1の絶縁膜404または第2の絶縁膜407から酸化物半導体膜403への酸素の供給を行うこともできる。よって、第1の絶縁膜404および第2の絶縁膜407に挟持された酸化物半導体膜403を、十分な量の酸素を含有する膜とすることができる。
【0029】
なお、第1の絶縁膜404および第2の絶縁膜407としては、例えば酸化シリコン膜を用いることができる。酸化シリコンは、SiOxとも表記され、酸素が化学量論的組成比よりも過剰となるようxの値を設定するのが好ましい。例えば、xの値を2.0より大きくするのが好ましい。」
(イ)引用例3記載事項について
上記(ア)の記載から、引用例3には、実質的に次の事項(以下、「引用例3記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「酸化物半導体膜403を十分な量の酸素を含有する膜とするために、
酸化物半導体膜403と接する絶縁膜が酸素過剰領域を有し、酸化物半導体膜403から絶縁膜への酸素の移動を防ぐことができ、また、絶縁膜から酸化物半導体膜403への酸素の供給を行うこともできるように、
酸化物半導体膜403と接する絶縁膜である酸化シリコン膜を、酸素が化学量論的組成比よりも過剰となるようにすること。」
エ 対比・判断
(ア)本件補正発明と引用例1発明とを対比する。
a 引用例1発明の「ゲート電極101」、「ソース電極106」、「ドレイン電極107」、および、「ボトムゲート型の薄膜トランジスタ」は、それぞれ本件補正発明の「ゲート電極」、「ソース電極」、「ドレイン電極」、および、「半導体装置」に相当する。
b 引用例1発明の「基板100」は、液晶表示装置に用いられるものであるから(前記ア(ア)a【0027】)、その「基板100」はガラス基板を含むものであり、すると引用例1発明の「基板100」は、本件補正発明の「ガラス基板」に相当する。
c 引用例1発明の「ゲート絶縁膜102の一部を構成する窒化珪素膜」は「ゲート電極101上に」形成されているから、本件補正発明の「前記ゲート電極上に形成された金属酸化物からなる第1のゲート絶縁膜」と、「前記ゲート電極上に形成された」「第1のゲート絶縁膜」である点で共通する。
d 引用例1発明の「ゲート絶縁膜102の一部を構成する酸化珪素膜」は「窒化珪素膜上に」形成されており、また、「酸化珪素膜」は「窒化珪素膜」と組成の異なる膜であるから、「酸化珪素膜」は、本件補正発明の「前記第1のゲート絶縁膜上に形成された前記第1のゲート絶縁膜と組成が異なる第2のゲート絶縁膜」に相当する。
e 引用例1の「島状の酸化物半導体膜104」は、「ゲート電極上に形成された、ゲート絶縁膜102の一部を構成する窒化珪素膜」「上に形成された、ゲート絶縁膜102の一部を構成する酸化珪素膜」「上に形成された、島状の酸化物半導体膜104」であるから、「ゲート電極」と重畳する位置に設けられていると言える。
そうすると、引用例1発明の「島状の酸化物半導体膜104」は、本願発明の「前記第2のゲート絶縁膜上に形成され、前記ゲート電極と重畳する位置に設けられた酸化物半導体膜」に相当する。
f 引用例1発明の「ソース電極106」および「ドレイン電極107」は、「島状の酸化物半導体膜104上に」形成されており、また、「ボトムゲート型の薄膜トランジスタ」は「ボトムゲート型の薄膜トランジスタ」が導通した際に、「ソース電極106」と「ドレイン電極107」は「島状の酸化物半導体膜104」を介して電気が流れるから、引用例1発明の「ソース電極106」、「ドレイン電極107」および「島状の酸化物半導体膜104」は、本件補正発明の「前記酸化物半導体膜と電気的に接続されたソース電極及びドレイン電極」と同様の構成を有していると認められる。
そうすると、本件補正発明と引用例1発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。
[一致点]
「ガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極上に形成された第1のゲート絶縁膜と、
前記第1のゲート絶縁膜上に形成された前記第1のゲート絶縁膜と組成が異なる第2のゲート絶縁膜と、
前記第2のゲート絶縁膜上に形成され、前記ゲート電極と重畳する位置に設けられた酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と電気的に接続されたソース電極及びドレイン電極と、を有する半導体装置。」
[相違点1]
本件補正発明の「第1のゲート絶縁膜」は、「表面から3nm以下の領域において、前記ガラス基板中に含まれるナトリウムの濃度が、1×1018atoms/cm3以下であ」り、また、「金属酸化物」である「酸化アルミニウム」からなっており、さらに、「前記酸化アルミニウムの密度は3.2g/cm3以上であり、前記酸化アルミニウムの水の放出量は1.0×1015atoms/cm3以下であり、前記酸化アルミニウムの水素の放出量は1.0×1015atoms/cm3以下であ」るのに対して、引用例1発明の「窒化珪素膜」はナトリウムの濃度について具体的な記載が無く、また、酸化アルミニウムからなっていない点。
[相違点2]
本件補正発明の「第2のゲート絶縁膜」は、「前記酸化物半導体膜と接する部分において少なくとも化学量論的組成比を超える量の酸素が存在する」のに対して、引用例1発明の「酸化珪素膜」はそのようになっていない点。
(イ)以下、上記相違点について検討する。
[相違点1]について
引用例2に記載されているように、製造工程中あるいは大気中の水素による酸化物半導体の還元、熱処理による酸化物半導体中の酸素の脱離を防ぐために、密度が高い方が酸素や水素の透過を軽減できる保護膜として優れているため、密度の高い酸化アルミニウム(Al2O3)をパッシベーション膜としてもちいることは、公知の技術である。
そして、引用例1には、「ゲート絶縁膜102は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、酸化アルミニウムまたは酸化タンタルを単層で又は積層させて形成することができる。」(【0035】)と記載されており、引用例1発明の「バリア性の高い絶縁膜である、窒化珪素膜」に換えて、同じくバリア性の高い絶縁膜である「酸化アルミニウム膜」とすることは、当業者が適宜為し得る事項である。
その際に、引用例2に記載されているように、酸素や水素の透過を軽減できる保護膜として、より密度の高い膜とすることが望ましいことは明らかであるから、本件補正発明と同様の、「前記酸化アルミニウムの密度は3.2g/cm3以上」とすることは、容易に想起する事項である。
さらに、引用例1発明の「ゲート絶縁膜102」は、「水分や、水素などの不純物を極力含まないこと」としているから、引用例1発明の「窒化珪素膜」を「酸化アルミニウム膜」としたときに、「酸化アルミニウム膜」を「水分や、水素などの不純物を極力含まない」ようにすることは当然行われることであり、その際「水分や、水素などの不純物を極力含まない」「酸化アルミニウム膜」からの「水の放出量」を1.0×1015atoms/cm3以下とし、「水素の放出量」を1.0×1015atoms/cm3以下とすることは、当業者が容易に為し得る事項である。
加えて、引用例1発明の「窒化珪素膜」は、「基板内に含まれるアルカリ金属」(本件補正発明の「ナトリウム」に相当する。)が、「酸化物半導体膜内、ゲート絶縁膜102内、或いは、酸化物半導体膜と他の絶縁膜の界面とその近傍に入り込むのを防」いでいるから、引用例1発明の「窒化珪素膜」を「酸化アルミニウム膜」としたときに、「酸化アルミニウム膜」も「基板内に含まれるアルカリ金属」が、「酸化物半導体膜内、ゲート絶縁膜102内、或いは、酸化物半導体膜と他の絶縁膜の界面とその近傍に入り込むのを防」ぐように構成されると認められるから、その結果、本件補正発明と同様に「酸化アルミニウム」の「表面から3nm以下の領域において、前記ガラス基板中に含まれるナトリウムの濃度が、1×1018atoms/cm3以下」とすることは、当業者が容易に為し得る事項である。
[相違点2]について
引用例3に記載されているように、酸化物半導体膜を十分な量の酸素を含有する膜とするために、酸化物半導体膜と接する絶縁膜が酸素過剰領域を有し、酸化物半導体膜から絶縁膜への酸素の移動を防ぐことができ、また、絶縁膜から酸化物半導体膜への酸素の供給を行うこともできるように、酸化物半導体膜と接する絶縁膜である酸化シリコン膜を、酸素が化学量論的組成比よりも過剰となるようにすることは公知の技術である。
引用例1発明おいても、「島状の酸化物半導体膜104」を十分な量の酸素を含有する膜とすることが望ましいことは明らかであるから、そのために、「島状の酸化物半導体膜104」と接する「酸化珪素膜」を本件補正の「第2のゲート絶縁膜」と同様に、「前記酸化物半導体膜と接する部分において少なくとも化学量論的組成比を超える量の酸素が存在する」ようにすることは、当業者が容易に想起する事項である。
そして、上記相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用例1発明及び引用例2ないし3に記載された技術の構成に基づいて当業者が予測できる程度のもので、格別顕著なものということはできない。
(ウ)進歩性についての結論
したがって、本件補正発明は、引用例1発明及び引用例2ないし3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(3)むすび
「(2)進歩性について」で検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 補正却下の決定を踏まえた検討
1 本願発明
平成28年7月19日付の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年3月7日付の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「ガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極上に形成された金属酸化物からなる第1のゲート絶縁膜と、
前記第1のゲート絶縁膜上に形成された前記第1のゲート絶縁膜と組成が異なる第2のゲート絶縁膜と、
前記第2のゲート絶縁膜上に形成され、前記ゲート電極と重畳する位置に設けられた酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜と電気的に接続されたソース電極及びドレイン電極と、を有し、
前記第1のゲート絶縁膜の表面から3nm以下の領域において、前記ガラス基板中に含まれるナトリウムの濃度が、1×1018atoms/cm3以下であり、
前記金属酸化物は酸化アルミニウムであり、
前記酸化アルミニウムの密度は3.2g/cm3以上であり、
前記酸化アルミニウムの水の放出量は1.0×1015atoms/cm3以下であり、
前記酸化アルミニウムの水素の放出量は1.0×1015atoms/cm3以下であることを特徴とする半導体装置。」
2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1および2には、上記「第2 [理由]2(2)」「ア」および「イ」に記載したとおりの事項が記載されている。
3 対比・判断
本願発明は、上記「第2 [理由]」で検討した本件補正発明から、上記「第2 [理由]2(1)」に記載した補正事項イに係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2 [理由]2(2)」に記載したとおり、引用例1発明及び引用例2ないし3記載の公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明および引用例2記載の公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明および引用例2記載の公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-010876