特許拒絶査定不服審判
2016-005079
モバイルデバイスを使用して従業員の健康を監視するためのシステム、コンピュータ媒体、およびコンピュータにより実行される方法
- 審判番号
- 2016-005079
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-519273外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年04月06日
- 審決日
- 2017年08月03日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サウジ アラビアン オイル カンパニー
- 【請求人代理人】渡邉 一平
- 【請求人代理人】小池 成
- 分類
- P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-519273「モバイルデバイスを使用して従業員の健康を監視するためのシステム、コンピュータ媒体、およびコンピュータにより実行される方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月10日国際公開、WO2013/006644、平成26年 9月25日国内公表、特表2014-524800〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成24年7月3日(パリ条約による優先権主張 2011年7月5日 米国(US),2012年6月14日 米国(US),2012年6月14日 米国(US),2012年6月14日 米国(US),2012年6月14日 米国(US),2012年6月14日 米国(US),2012年6月14日 米国(US),2012年6月14日 米国(US),2012年6月14日 米国(US),2012年6月26日 米国(US),2012年6月26日 米国(US),2012年6月26日 米国(US),2012年7月2日 米国(US))を国際出願日とする出願であって,平成27年4月3日付けで拒絶理由が通知され,同年7月2日に手続補正がなされ,同年12月2日付けで拒絶査定がなされ,平成28年4月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同時に手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。
第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正後の本願発明(下線は補正箇所を示す。)
本件補正により,補正前の特許請求の範囲の請求項1は,
「 【請求項1】
従業員の健康を監視するためのシステムであって,前記システムは,
前記従業員が業務に従事している間に,前記従業員上に,または近辺に提供されるように構成された1組の1つ以上の健康センサであって,前記1つ以上の健康センサが,前記センサによって感知された特性に対応する健康データを出力するように構成され,前記1つ以上の健康センサが,前記従業員のバイオメトリック特性を感知するように構成された少なくとも1つ以上のバイオメトリックセンサと,前記従業員のバイオメカニック特性を感知するように構成されたバイオメカニックセンサとを備える,1組の1つ以上の健康センサと,
前記従業員の少なくとも1つのバイオメトリックまたはバイオメカニック特性を感知するように,その中に一体化された前記1つ以上の健康センサのうちの少なくとも1つを備えるモバイル通信デバイスであって,
前記1組の1つ以上の健康センサから,収集された前記健康データが,前記従業員の健康プロファイルを決定するために使用され,前記健康プロファイルが,収集された前記健康データに少なくとも部分的に基づいて決定された前記従業員の健康特性,健康状態,健康の危険性,および健康計画のうちの少なくとも1つ,ならびに1つ以上の予測された健康問題を含み,前記1つ以上の予測された健康問題は,現在は前記従業員が経験していないが,前記健康データに基づき,将来前記従業員が経験するであろう実際の健康問題に発展すると予測される潜在的な健康問題として,前記健康データに基づき決定される健康問題を含む,前記健康データを収集し,
収集された前記健康データに少なくとも部分的に基づいて決定された前記従業員の前記健康プロファイルの前記健康特性,前記健康状態,前記健康の危険性,および前記健康計画のうちの少なくとも1つを含んでおり,前記従業員が前記モバイル通信デバイスの前記グラフィカルユーザインターフェースを介して前記1つ以上の予測された健康問題について警告され,前記1つ以上の予測された健康問題が実際の健康問題に発展する前に前記1つ以上の予測された健康問題に対処する機会が提供されるように,前記1つ以上の予測された健康問題を示すコンテンツを含んでいる健康レポートを,前記モバイル通信デバイスの,グラフィカルユーザインターフェースを介して表示するように構成された,モバイル通信デバイスと,を備える,システム。」
と補正された。
本件補正は,補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「1つ以上の予測された健康問題」について,「前記1つ以上の予測された健康問題は,現在は前記従業員が経験していないが,前記健康データに基づき,将来前記従業員が経験するであろう実際の健康問題に発展すると予測される潜在的な健康問題として,前記健康データに基づき決定される健康問題を含む」として,「1つ以上の予測された健康問題」の予測される時期と予測の基となるものを限定した補正を含むものである。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含む。
そこで,本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
補正発明は,以下のとおり当審にて,分節しA)~L)の見出しを付けた。
「A) 従業員の健康を監視するためのシステムであって,前記システムは,
B) 前記従業員が業務に従事している間に,前記従業員上に,または近辺に提供されるように構成された1組の1つ以上の健康センサであって,
C) 前記1つ以上の健康センサが,前記センサによって感知された特性に対応する健康データを出力するように構成され,
D) 前記1つ以上の健康センサが,前記従業員のバイオメトリック特性を感知するように構成された少なくとも1つ以上のバイオメトリックセンサと,前記従業員のバイオメカニック特性を感知するように構成されたバイオメカニックセンサとを備える,1組の1つ以上の健康センサと,
E) 前記従業員の少なくとも1つのバイオメトリックまたはバイオメカニック特性を感知するように,その中に一体化された前記1つ以上の健康センサのうちの少なくとも1つを備えるモバイル通信デバイスであって,
F) 前記1組の1つ以上の健康センサから,収集された前記健康データが,前記従業員の健康プロファイルを決定するために使用され,
G) 前記健康プロファイルが,収集された前記健康データに少なくとも部分的に基づいて決定された前記従業員の健康特性,健康状態,健康の危険性,および健康計画のうちの少なくとも1つ,ならびに1つ以上の予測された健康問題を含み,
H) 前記1つ以上の予測された健康問題は,現在は前記従業員が経験していないが,前記健康データに基づき,将来前記従業員が経験するであろう実際の健康問題に発展すると予測される潜在的な健康問題として,前記健康データに基づき決定される健康問題を含む,
I) 前記健康データを収集し,
J) 収集された前記健康データに少なくとも部分的に基づいて決定された前記従業員の前記健康プロファイルの前記健康特性,前記健康状態,前記健康の危険性,および前記健康計画のうちの少なくとも1つを含んでおり,
K) 前記従業員が前記モバイル通信デバイスの前記グラフィカルユーザインターフェースを介して前記1つ以上の予測された健康問題について警告され,前記1つ以上の予測された健康問題が実際の健康問題に発展する前に前記1つ以上の予測された健康問題に対処する機会が提供されるように,前記1つ以上の予測された健康問題を示すコンテンツを含んでいる健康レポートを,前記モバイル通信デバイスの,グラフィカルユーザインターフェースを介して表示するように構成された,モバイル通信デバイスと,
L) を備える,システム。」
2 引用文献およびその記載事項(下線は当審で付与した。)
(1) 本願の優先権主張日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された文献である特表2003-521972号公報(以下,「引用文献1)という。)には,「生理学的監視装置およびこれと関連する計算・表示・通信装置」について次の事項が記載されている。
(1-ア)
「【特許請求の範囲】
・・・
【請求項6】 人の生理学的パラメータを無線式に管理するシステムであって,システムは,
着用可能な生理学的監視モジュールを備えており,モジュールは,それを着用している人の生理学的パラメータを測定するように作動可能であり,モジュールは,測定されたパラメータを表しているデータを送信する無線通信送信装置を有しており,
モジュールを着用している人を監視する,人が携帯するポータブル式の,マイクロプロセッサをベースにした装置を更に備えており,ポータブル式装置は表示装置,メモリ,マイクロプロセッサ,および,装置をオペレータ制御する手段を有しており,ポータブル装置は無線受信装置を有しており,かつ,監視モジュールから送信されたデータを受信するように作動可能であり,ポータブル式装置は,生理学的パラメータが所定の基準に適合していない場合には,装置を携帯している人に通知するように作動可能である,システム。
・・・
【請求項9】 前記着用可能な生理学的監視モジュールは心搏度数監視モジュールである,請求項6に記載のシステム。」
(1-イ)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は一般に生理学的監視装置に関するものであり,特に,個人向けディジタル介助装置(PDA)のような片手で把持する計算機と接続および/または通信する生理学的監視装置に関連している。
【0002】
【従来の技術】
ポータブル式電子計算機はますます普及している。これら装置としては,パーム(PALMTM)演算システムを利用したオーガナイザやウインドウズ(WindowsTM)CEベースの演算システムを利用したオーガナイザのような個人向けディジタル介助装置(PDA)が挙げられる。これら装置には,モバイル電話機,電子書籍,ラップトップコンピュータ,手の平サイズコンピュータ,ある種のポケットベル(登録商標),任天堂ゲームボーイ(NintendoTMGameboyTM)等のような計算能力を有している上記以外のポータブル式電子装置も含まれる。
多様なタイプの利用者の間でPDAが普及し,PDAが広く受け入れられることで,大型の据付型ベースによって利用されるPDAの補機を提供する機会が増えている。また,PDAは汎用計算装置として機能することもある。この能力で,PDAは多様な補機と相互接続されて,必要な計算処理を提供し,補機用の諸機能を制御し,表示することができるため,単独利用型装置と比較して,補機の経費を低減することができる。一例として,複数タイプのPDAと互換性があるディジタルカメラモジュールが入手できる。カメラモジュールをPDAを相互接続すると,PDAのボタンと表示装置はカメラ諸機能部を制御し,それらと通信するよう作動し,カメラモジュール自体を制御したり,カメラモジュール自体に表示したりする必要を排除する。PDAの内部計算能力が利用されるため,カメラモジュールの内蔵計算能力の必要性も回避される。この結果,カメラモジュールは同じぐらいの能力の単独利用型カメラよりも小型かつ廉価となる。
【0003】
人間の患者の多様な生理学的パラメータを監視することを目的とした,多様なタイプの生理学的監視装置が健康医療分野で採用されている。これら生理学的監視装置により,健康医療の専門家はもとより個人ユーザも同様に,特定の生理学的パラメータの現況を正確に判定し,或る期間に亘ってパラメータを監視することができる。この情報は健康管理やフィットネス管理と医学治療で極めて有用である。従来,生理学的監視装置は非常に高額であり,よって,同装置の利用は主として医療施設に限られていた。電子機器類の経費が下落するにつれて,より廉価な生理学的監視装置が家庭で利用されるようになっている。
健康関連の生理学的監視装置の一例が,モールト(Mault)らに付与された同時係属中の米国特許出願連続番号第09/630,398号に開示されている間接カロリーメータであり,同出願はその全体が本明細書中に引例として挙がっている。間接カロリーメータにより,患者は,或る期間,カロリーメータに呼気を通すことで自分の現在の代謝率を判定することができる。前述の出願にも説明されているように,この代謝率情報は体重管理と健康管理に有益である。別なタイプの生理学的監視装置としては,EKG監視装置,電子心音監視装置,万歩計のような運動監視装置,体脂肪測定装置,心拍率監視装置,体温監視装置,肺活量測定器,血圧監視装置,血中酸素和監視装置,血糖監視装置がある。通例は,生理学的監視装置は自己制御と自己表示とを備え,必要ならば計算能力も備えている単独利用型装置である。この結果,これら生理学的監視装置は高額かつ潜在的に嵩高となるきらいがある。
【0004】
【発明が解決するべき課題】
現在の生理学的監視装置は,通例は,互いに通信し合うことは無く,また,どのようなタイプであれ中央計算装置と通信することは無い。ヘルスケアの専門家または患者個人が生理学的パラメータを経時的に測定または監視する場合,個々の監視装置からの出力を記録してから,患者の医療記録にデータを手動で転送する必要があるのが典型的である。これは労力を要し,データを記録および転送する際に誤差が生じる可能性を導く。このプロセスは,長期間に亘って生理学的パラメータが監視される場合には,特に煩雑となることがある。例えば,糖尿病患者は自らの血糖値を1日に何度も検査することが必要である。このデータは記録されて,医者または他の健康分野の専門家と一緒に判断し,共有することができる。しかし,通常の患者は血糖値を定時記録することにうんざりさせられることとなり,そのため,お粗末な成果しか得られないかもしれない。
【0005】
【課題を解決する手段】
本発明は,PDAのような計算装置とのインターフェイス機能を果たすよう設計された多様な生理学的監視モジュールを含む。実施例によっては,この組み合わせにより,PDAを高額の電子制御装置,表示装置,通例は生理学的監視装置として具現された処理回路のうちのあるものの代用とすることができる。代わりに,それらの能力をPDAが提供する。また,PDAは1つ以上の生理学的監視装置モジュールから試験用データを記憶し,健康とフィットネスの追跡処理ばかりか多様なソフトウエア応用例についてもデータを利用できるようにするのが好ましい。本発明の別な実施形態では,生理学的監視装置モジュールは,1個以上のセンサーからのデータを記憶するメモリのような記憶手段を備えている。試験中と試験後のいずれであれ,記憶手段からのデータはPDAに転送されて,処理,表示,記憶される。本発明の別な実施形態では,PDAはメモリモジュールのようなモジュールを受容する補機スロットを備えているタイプのものである。この実施形態では,生理学的監視装置モジュールも,メモリモジュールを受容する補機スロットを備えている。メモリモジュールはここでは,生理学的監視装置とPDAとの間でデータを転送するために使用される。
【0006】
【発明の実施の形態】
概略
本発明は,代謝,体重,体脂肪率,心搏度数,心電図(EKG),血圧,血中酸素和,体温のようなユーザの健康特性を測定するのに使用する生理学的監視装置に関連しているとともに,監視装置からの信号を受信し,記録し,処理し,計算し,表示し,かつ/または,送信するように機能する,監視装置に付随する計算装置とに関連している。計算装置は,個人向けディジタル介助装置(PDA)のようなポータブル式コンピュータばかりか非ポータブル式コンピュータを含め,どのような形態を呈していてもかまわない。ポータブル式コンピュータの範疇には,セルラー電話,電子書籍,ポケットベル,時計,オーガナイザーのような内蔵計算能力を備えたあらゆる携帯型装置が含まれる。この範疇にはまた,現在入手できるものはもとより,今後開発されそうな着用可能な装置で,宝石類,ボタン,眼鏡の形態を呈しているようなものも含まれる。PDAは単体装置である必要は無く,代わりに,その構成部品が分散型であってもよい。一例として,表示装置は眼鏡に組み込まれ,その他は腕時計に組み込まれるものでもよい。言及を簡単にするために,本願では主としてPDAについて述べるが,その他の計算装置も全て同様に利用することができる。「汎用専門人員向けディジタル介助装置」という語も本明細書中で使用される。これは,メモリにロードされる多様なソフトウエアを作動させることができるPDAについて述べたものである。この範疇から排除されるものとして,専用装置とプログラミング不能装置とがある。
【0007】
本発明の第1の好ましい実施形態によれば,生理学的監視装置は,PDAとの連結などによりPDAと相互接続するように設計されたモジュールである。PDAは多様な差込み接続式モジュールを受容するようにしたタイプであるのが好ましいが,その各々はPDAに特定のアプリケーションプログラムを供与することができる。代替例として,アプリケーションソフトウエアはPDAのメモリに記憶されるか,他の方法で記憶される。本発明に関連して使用される生理学的監視装置モジュールは,生理学的監視装置の一部を形成しているセンサーに接続部を組み入れており,生理学的監視装置のセンサーとPDAとの間のインターフェイスとして機能する電子系統を備えていてもよい。この実施形態では,PDAおよび監視装置モジュールは,連結させると,一体型装置を形成する。モジュールはPDAの補機用スロットに挿入されてもよいし,或いは,PDAのハウジング部を把持してもよいし,これら以外のいかなる方法であれ相互接続することができる。」
(1-ウ)
「【0010】
本発明の1つの好ましい実施形態では,生理学的監視装置モジュールはメモリモジュールを代表する形状因子を採っており,監視装置モジュールがPDAまたは他の計算装置の補機用のスロットに,直接的であれアダプタを介在させてであれ,いずれかの態様で挿入されるようにしている。この実施形態では,監視装置モジュールは必要に応じてユーザの肉体に装着または設置されて,特定の生理学的パラメータを測定することができる。補機クリップを利用して,監視装置モジュールを個人の肉体または衣服と相互接続してもよい。測定を行った後,監視装置モジュールを当人から取外し,或いは,補機クリップから除去し,PDAに挿入して,データをダウンロードして処理する。代替例として,監視装置モジュールはそれ自体の小型表示装置および/または各種制御装置を備えていてもよい。また別な代替例として,監視装置モジュールは内蔵型無線通信能力を備えており,モジュールがPDAまたは他の計算装置と継続的または間欠的に通信することができるようになっていてもよい。監視装置モジュールは1個以上のコンピュータチップとして形成され,必要なセンサー,メモリ,チップの一部を形成している通信ハードウエアを備えていてもよい。例えば,単一チップは監視装置モジュールとして機能するのに必要な全てのハードウエアを備えていてもよいし,直接的であれアダプタを介在させてであれ,いずれかの態様でPDAの補機用スロットに嵌合するような形状であってもよい。無線通信回路は,メモリおよび/または検知ハードウエアと一緒にチップ上に形成されていてもよい。
【0011】
当業者には自明となるだろうが,概ねどのようなタイプの生理学的監視装置が本発明に組み込まれていてもよい。生理学的監視装置の具体例としては,本件後段でより詳細に記載されることになるが,代謝率を測定するためのカロリーメータモジュール,呼気の流動と体積を測定するための肺活量計モジュール,運動量を測定するための万歩計モジュール,心搏度数モジュール,心電/心音モジュール,心臓関係のパラメータを測定するための脈搏酸素濃度計,体脂肪モジュール,血圧モジュール,体温モジュール,血糖モジュール,呼吸,妊娠関係の因子,骨密度,または,姿勢を測定するための超音波センサー,食品重量または体重モジュール等がある。上述の実施形態と代替例は勿論,それ以外の後述する実施形態は,各々が以下に記載する生理学的監視装置の各々に当てはまる。
本発明の多様な実施形態は体重管理システムまたは健康管理システムの一部として利用されるのが好ましいが,これらの多局面は同時係属中の予備特許出願連続番号第60/158,553号,60/167,276号,60/177,016号,60/194,126号,60/209,921号,60/201,902号,60/207,089号,60/207,051号に記載されている。システムの一部として,カロリー摂取量,静止時代謝,活動に基づく代謝消費量がトラッキングされる。例えば,通常はユーザにより実行されるPDAはカロリー消費と活動を記録するためのソフトウエアを備えている。本発明の多様な実施形態による生理学的監視装置は,このような健康管理システムと統合するのが好ましい。例えば,カロリーメータモジュールからのデータは基準カロリー消費量を決定するために使用することができる。これは食餌管理の非常に重要な要因である。PDAはユーザを周期的に促して,カロリーメータモジュールを利用して自らの静止時代謝を測定させることができる。測定から得たデータは自動的に健康管理プログラムに入力される。ソフトウエアはまた,より適切な時間までユーザが測定を延期することができるようにする。
【0012】
PDAは,全健康管理システムの一部として多用な生理学的モジュールを利用するようにユーザを促す,或いは,ユーザの記憶を呼び起こすのが好ましい。例えば,PDAは週1度の割合でユーザを促して体重計モジュールを使用させたり,体重計に既に記憶されているデータを転送させたりしてもよい。代替例として,PDAは,データを転送するために,また,各モジュールが最後に使用されたのがいつであるかを判定するために,無線送信範囲内で多様な生理学的監視装置に周期的に無線で問合せを行うことができる。
健康管理ソフトウエアは,多様なフィットネスプランをセットアップする能力や,そのプランの厳守状況を追跡する能力を備えていてもよい。例えば,特定のユーザは自らが毎週,或る回数だけ,或る距離を歩行または走行することを指定することができる。次いで,ソフトウエアがユーザを促して,スケジュールに従って,ユーザが特定の日にある距離を走行または歩行するべきであることを思い出させるようにしてもよい。人は万歩計モジュールを単独またはPDAと組にして使用して,走行中または歩行中の能力を測定する。このデータはPDAに転送され,ソフトウエアにより使用されて,人の能力がそれぞれの目標にどの程度まで逼迫しているかを判定する。健康管理またはフィットネス管理プログラムの一部として,血圧,心搏度数,または,血糖のような他の要因を追跡するのが好ましいことがあるかもしれない。PDAはユーザを促して,これらのパラメータを適時に測定することもできる。次いで,ユーザは適切なモジュールをPDAに挿入し,適切な試験を実施し,データを自動的にプログラムに転送させることができる。
健康管理ソフトウエアの別な局面として,PDAが遠隔計算装置および/または健康の専門家と通信するのが好ましい。例えば,PDAは無線通信能力を備えており,インターネットまたは他の手段により遠隔サーバーと無線通信することができるようにしてもよい。遠隔サーバーはPDAから受信されたデータを記憶および分析することができるとともに,その情報に基づいてフィードバックを供与することができる。PDAからの情報はまた,健康の専門家または健康管理アドバイザーによって考査されて,フィードバックが与えられるようにしてもよい。フィードバックは通信でPDAに戻されてもよいし,他の方法でユーザに連絡されてもよい。健康管理ソフトウエアはPDAのメモリ,差込み接続式モジュール,または,監視装置モジュールのメモリのいずれに駐在するようにしてもよい。」
(1-エ)
「【0023】
万歩計モジュール
ここで図7を参照しながら,本発明による万歩計モジュールを論じて行く。図7には走者が例示されており,そのベルトにはPDA80が紐で結わえられている。前段までに論じた実施形態と同様に,PDAはその上面に補機用のスロット82を備えている。万歩計モジュール84はPDA内に連結されている。代替の実施形態では,モジュールはPDAのハウジングを把持してもよいし,または,モジュールとPDAが何か別な方法で相互接続されてもよい。万歩計モジュール84は,多様な方向への加速を測定するための1軸式,2軸式,または,3軸式の加速度計,運動を検出する振り子,または,運動を検出する圧電センサーのような,万歩計のために現在使用されている何らかの原理に基づいて作動が可能となる。万歩計モジュールは運動情報または加速情報をPDAに通信し,PDAではその情報が処理されて,PDAが体験している運動を判定する。この情報から,走行距離,走行速度,その他の運動要因の合理的近似値を判定することができる。
【0024】
その最も簡略化したバージョンでは,万歩計モジュール84は加速度計または運動センサー,加速度計からの信号を緩衝処理および/または条件付けするのに十分な電子系統,PDAの補機用スロットの接点と嵌合する電気接点を備えているにすぎない。」
(1-オ)
「【0053】
その他のモジュール
当業者には自明となることであるが,他の生理学的監視装置が本発明に組み込まれてもよい。一例として,バイクコンピュータは,PDAと併用するためのモジュールとして構成される。連結用インターフェイスは自転車のハンドルバーに載置すると同時に,PDAが連結用インターフェイスに格納された状態になるように設計されていてもよい。PDAの表示装置上に表示される自転車速度および/または心搏度数のような生理学的パラメータを検知するために,多様なセンサーが設けられてもよい。代替例として,バイクコンピュータは,PDAの補機用のスロットに挿入されるような寸法および形状にされてもよいし,或いは,バイクコンピュータは,自転車による運動についてのデータの転送を目的としてPDAに移送されるメモリモジュールを備えていてもよい。
別な代替例として,1個のモジュールが多数機能を有していてもよい。例えば,心搏度数と体温モジュールは1個の装置に結合される。また,心搏度数鉗子装置と万歩計を,胸部の紐などで結合させてもよい。
【0054】
当業者には自明となるだろうが,本発明の実施形態のいずれかに関連して論じてきたいずれの代替例も,適宜,他の実施形態と併用することができる。他の代替例は当業者に自明となるだろう。一例として,監視装置モジュール間でデータを転送するために使用されるメモリモジュールは,多数の監視装置モジュールおよび/またはPDAと併用されて,いずれの装置からのデータでも,また,全部の装置からのデータでも記憶することができるため,多様な健康データについての記憶装置として作用する。また別な具体例として,PDAは,PDAおよび/または監視装置モジュールを制御するためのボタンを有しているように記載されている。しかし,ユーザは,触針,音声認識機能,ローラージョグセレクタ,トラックボール,対話式パッド,指運動センサー,または,いずれであれ好適な方法を利用してPDAと対話することができる。別な具体例として,PDAはユーザにより着用または携帯され,配線または無線で通信し,万歩計,心搏度数監視装置,体温監視装置のような多様な監視装置を備えていてもよい。このように,PDAは指令および管理センターとして機能する。」
(1-カ)
図12から,PDAの画面にグラフィカルユーザインターフェースを介して心電図を表示することができることが見てとれる。
(1-キ)
図12
上記(1-ア)~(1-キ)及び引用文献1全体を総合すると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「a) 代謝,体重,体脂肪率,心搏度数,心電図(EKG),血圧,血中酸素和,体温のようなユーザの健康特性を測定するのに使用する生理学的監視装置からの信号を受信し,記録し,処理し,計算し,表示し,かつ/または,送信するように機能する,個人向けディジタル介助装置(PDA)と,
b) PDAとの連結などによりPDAと相互接続するように設計されたモジュールであり,PDAの補機用スロットに挿入されてもよいし,或いは,PDAのハウジング部を把持してもよい,生理学的監視装置とを有し,
c) PDAおよび監視装置は,連結させると,一体型装置を形成するもので,
d) PDAは無線通信能力を備えており,遠隔サーバーと無線通信することができ,
PDAからの情報は健康の専門家または健康管理アドバイザーによって考査されて,フィードバックが通信でPDAに戻され,
e) 心搏度数監視装置と万歩計を含み,
f) 万歩計はPDA内に連結されており
g) 万歩計は,多様な方向への加速を測定するための加速度計,運動を検出する振り子,または,運動を検出する圧電センサーのようなもので,運動情報または加速情報をPDAに通信し,
h) PDAはユーザにより着用または携帯され,配線または無線で通信し,万歩計,心搏度数監視装置,体温監視装置のような多様な監視装置を備えていて,
i) PDAの画面にグラフィカルユーザインターフェースを介して心電図を表示することができる
j) PDA及び監視装置。」
(2)本願の優先権主張日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された文献である特開2004-113581号公報(以下,「引用文献2」という。)には,「健康管理装置」について,図面とともに次の事項が記載されている。
(2-ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,舌の状態より身体の健康状態を判断し,健康管理に役立てる健康管理装置に関する。」
(2-イ)
「【0034】
予測部は,記録部に蓄積された健康状態の時系列変化より,数時間後~数日後までの将来の健康状態を予測する。例えば,健康状態を段階的に「非常に良い」,「良い」,「悪い」,「非常に悪い」と判断した場合,将来の健康状態がこのうちのいずれになるかを予測判断するようにする。すなわち,健康状態の時系列変化からファジー処理により数時間(又は数日後)後の健康状態を予測するプログラムを予め制御装置に記憶させておく。そして,記録部に蓄積された健康状態の時系列変化を算出し,将来の健康状態を予測するプログラムに従って将来の健康状態を予測する。一般に,将来の健康状態を予測するプログラムは,健康状態の変化により数時間(数日)後の健康状態を予測する。また,時系列変化により,回復までの期間も算出できるようにしてもよい。
【0035】
そして,これらの健康状態の判断結果,舌情報,自覚体調,環境情報及び将来の健康状態は,メモリに記憶され,必要に応じてこれらの情報が所定の様式でモニター4に出力される。これをプリントアウトしたり,インターネットで送信できるようにしてもよい。所定の様式としては,棒グラフ,折れ線グラフ等のグラフ形式又は表形式が挙げられる。その様式の例を図2~図3に示す。図2は,横軸を日数とし,縦軸を健康状態の段階評価とした折れ線グラフであって,過去から現在までの健康状態の変化を実線で示し,将来の健康状態の予測を点線で示す。図3は,日々の舌の状態,健康状態,自己体調,環境を一覧で
きる表形式としている。」
(3)本願の優先権主張日前に頒布された文献である特開2002-183647号公報(以下,「引用文献3」という。)には,「検査異常発生予測装置,検査異常発生予測方法,検査異常発生予測テーブル作成方法およびそれらのプログラム記録媒体,並びに健康教育支援システム」について,図面とともに次の事項が記載されている。
(3-ア)
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,健康診断結果から将来検査異常が起こる危険性を予測する方法,および危険予測に基づき疾病の発症を予防するための健康教育を支援するシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】健康教育では,受診者が将来発症の可能性のある疾病を予測して,それを予防するための知識を与えることが,効果的である。従来,健康教育,保健指導を目的として,将来異常が発生する検査項目を予測する方法,およびその方法に基づく装置,システムに関する発明は,特開平5-250423(特願平4-51336)「健康増進データ出力装置」,特公平6-38798(特願昭63-295043)「健康診断面接支援システム」,特公平7-86891(特願平1-303176)「医学/保健用情報処理システム」において述べられているが,これらの発明における異常発生の予測は,過去の検査値データの時系列をもとに単純に予測するか,あるいは,医師,保健婦等の健診スタッフが作成した判定ルールを知識ベースとして持ち,それにより予測する方法である。」
(4)本願の優先権主張日前に頒布された文献である特表2003-525676号公報(以下,「引用文献4」という。)には,「健康分析および異常状態の予測」について,図面とともに次の事項が記載されている。
(4-ア)
「【請求項18】 患者の健康状態を追跡するためのシステムであって,
複数の健康記録信号を受け取るように構築された入力デバイスであって,各健康記録信号が,異なる時に測定された,患者の健康状態に関する正常範囲内にあると見なされる所定の健康指示パラメータの測定記録を含む,入力デバイスと,
前記健康記録信号を記憶することのできるメモリ・デバイスと,
前記健康記録信号を分析して,所定の健康指示パラメータにおける考えられる傾向が異常範囲内の値をとることを見積り,前記パラメータが前記異常範囲内の値をとるであろうと前記傾向が示すときに将来異常指示信号を提供するように構成されたプロセッサと,
を備えるシステム。
【請求項19】 前記健康記録信号,前記見積られた考えられる傾向,および前記将来異常指示信号を許可済みユーザに提供するように構築された出力デバイスをさらに備える,請求項18に記載のシステム。
【請求項20】 プロセッサがさらに,推奨される医療処置計画を前記将来異常指示信号に基づいて決定するように構成された,請求項19に記載のシステム。
【請求項21】 前記出力デバイスが前記医療処置計画を許可済みユーザに提供する,請求項20に記載のシステム。」
3 対比・判断
ア 補正発明のA),L)の特定事項について
引用発明の「a) 代謝,体重,体脂肪率,心搏度数,心電図(EKG),血圧,血中酸素和,体温のようなユーザの健康特性を測定するのに使用する生理学的監視装置からの信号を受信し,記録し,処理し,計算し,表示し,かつ/または,送信するように機能する,個人向けディジタル介助装置(PDA)」は,「d) 無線通信能力を備えており,遠隔サーバーと無線通信することができ,
PDAからの情報は健康の専門家または健康管理アドバイザーによって考査されて,フィードバックが通信でPDAに戻され」る健康を監視するものであり,「c) PDAおよび監視装置は,連結させると,一体型装置を形成するもので」あることから,引用発明の「j) PDA及び監視装置。」は,補正発明の「A) 健康を監視するためのシステム」,「L) システム。」に相当する。
イ 補正発明のB)の特定事項について
引用発明の「e) 心搏度数監視装置と万歩計」は,ユーザーが携帯し,健康状態の把握に用いる一組のセンサといえるから,補正発明の「B) 前記従業員が業務に従事している間に,前記従業員上に,または近辺に提供されるように構成された1組の1つ以上の健康センサ」とは,「人の近辺に提供されるように構成された1組の1つ以上の健康センサ」で一致する。
ウ 補正発明のC),D)の特定事項について
ウー1 引用発明の「g) 万歩計」は,「g) 多様な方向への加速を測定するための加速度計,運動を検出する振り子,または,運動を検出する圧電センサーのようなもの」であるから,「g) 運動情報または加速情報」は,センサである万歩計により感知された特性であり,健康を監視するためのデータといえる。
そして,「g) 運動情報または加速情報」は,「g) PDAに通信」されることから,「g) 万歩計」が,「g) 運動情報または加速情報」を,「g) PDA」に出力するように構成されているといえる。
さらに, 引用発明の「f) 万歩計」は「f) PDA内に連結されており」「h) PDAはユーザにより着用または携帯され」ることから,万歩計は着用または携帯しているユーザーのバイオメカニック特性を感知するように構成されたバイオメカニックセンサといえる。
ウー2 引用発明の「a) 個人向けディジタル介助装置(PDA)」は「a) 心搏度数のようなユーザの健康特性を測定するのに使用する生理学的監視装置からの信号を受信するのであるから,「a) 心搏度数」は,センサである「h) 心搏度数監視装置」により感知された特性であり,健康を監視するためのデータといえる。
そして,「h) 心搏度数監視装置」が,「a) 心搏度数」を「個人向けディジタル介助装置(PDA)」に出力するように構成されているといえる。
さらに,引用発明の「e) 心搏度数監視装置」は,生体から「a) 心搏度数」「a) のようなユーザの健康特性を測定するのに使用する生理学的監視装置」であり,「a) 心搏度数」を出力するもので,「a) 心搏度数」はバイオメトリック特性といえるから,引用発明の「e) 心搏度数監視装置」は,バイオメトリック特性を感知するように構成されたバイオメトリックセンサといえる。
ウー3 上記イ,ウー1,ウー2に照らせば,引用発明の「e) 心搏度数監視装置と万歩計」は,補正発明の「C) 前記1つ以上の健康センサが,前記センサによって感知された特性に対応する健康データを出力するように構成され,
D) 前記1つ以上の健康センサが,バイオメトリック特性を感知するように構成された少なくとも1つ以上のバイオメトリックセンサと,バイオメカニック特性を感知するように構成されたバイオメカニックセンサとを備える,1組の1つ以上の健康センサ」に相当する。
エ 補正発明のE),I)の特定事項について
エー1 引用発明の「d) PDA」は「d) 無線通信能力を備えており,遠隔サーバーと無線通信することができ」るものであるから,補正発明の「モバイル通信デバイス」に相当する。
エー2 引用発明の「c) PDAおよび監視装置は,連結させると,一体型装置を形成するもので」あり,監視装置である「f) 万歩計」は「f) PDA内に連結されて」いることから,引用発明の「f)PDA」と「万歩計」は一体型装置を形成している。
エー3 上記イ,ウー3,エー1,エー2に照らせば,
引用発明の「f) 万歩計」が「PDA内に連結されておる」その「PDA」は,補正発明の「E) 少なくとも1つのバイオメカニック特性を感知するように,その中に一体化された前記1つ以上の健康センサのうちの少なくとも1つを備えるモバイル通信デバイス」に相当する。
エー4 さらに,引用発明の「a) 個人向けディジタル介助装置(PDA)」は」,「代謝,体重,体脂肪率,心搏度数,心電図(EKG),血圧,血中酸素和,体温のようなユーザの健康特性を測定するのに使用する生理学的監視装置からの信号を受信し,記録」するのであるから,健康を監視するためのデータを集めているといえる。
エー5 上記エー3,エー4より,引用発明の「f) 万歩計」が「PDA内に連結されておる」その「PDA」は,補正発明の「E) 少なくとも1つのバイオメカニック特性を感知するように,その中に一体化された前記1つ以上の健康センサのうちの少なくとも1つを備えるモバイル通信デバイスであって」,「I) 前記健康データを収集」するものに相当する。
オ 補正発明のF),G)の特定事項について
オ-1 上記エ-4に照らせば,引用発明の「d) PDAからの情報は健康の専門家または健康管理アドバイザーによって考査されて,フィードバックが通信でPDAに戻され」るために,「健康の専門家または健康管理アドバイザーに」送信する「PDAからの情報」は,心拍度数,体温,運動情報または加速情報等の健康特性情報を含んでひとまとまりとして決定されるプロファイルといえる。
オー2 上記エー5,オ-1より引用発明の「e) 心搏度数監視装置と万歩計を含み,「f) 万歩計はPDA内に連結されて」いる「d) PDAから」「d)健康の専門家または健康管理アドバイザーに」送信する情報は,
補正発明の「F) 前記1組の1つ以上の健康センサから,収集された前記健康データが,健康プロファイルを決定するために使用され」,「G) 前記健康プロファイルが,収集された前記健康データに少なくとも部分的に基づいて決定された健康特性を含」むものに相当する。
カ 補正発明のJ),K)の特定事項について
カー1 一般に健康診断において,検査情報を含む健康情報を用いて診断した結果の診断レポートに診断の根拠となった検査情報を含む健康情報が併せて記載されていることは,技術常識である。
そうすると上記オー1に照らせば,引用発明の,「d) PDAからの情報は健康の専門家,または健康管理アドバイザーによって考査されて」,「通信でPDAに戻され」る「フィードバック」が,上記プロファイルに含まれるユーザーの健康情報を含んでいるものであり,レポートといえることは自明である。
カー2 さらに,引用発明は「i)PDAの画面にグラフィカルユーザインターフェースを介して心電図を表示することができる」のであるから,上記「フィードバック」も表示できることは自明である。
カー3 上記オー1,カー1,カー2より,引用発明の「「d) PDAからの情報は健康の専門家または健康管理アドバイザーによって考査されて,フィードバックが通信でPDAに戻され」,「i) 画面にグラフィカルユーザインターフェースを介して表示することができる」」「PDA」」は,
補正発明の「J) 収集された前記健康データに少なくとも部分的に基づいて決定された前記健康プロファイルの前記健康特性,を含んでおり,
K) 前記モバイル通信デバイスの前記グラフィカルユーザインターフェースを介して健康レポートを,前記モバイル通信デバイスの,グラフィカルユーザインターフェースを介して表示するように構成された,モバイル通信デバイス」に相当する。
そうすると,補正発明と引用発明とは,
(一致点)
「健康を監視するためのシステムであって,前記システムは,
人の近辺に提供されるように構成された1組の1つ以上の健康センサであって,
前記1つ以上の健康センサが,前記センサによって感知された特性に対応する健康データを出力するように構成され,
前記1つ以上の健康センサが,バイオメトリック特性を感知するように構成された少なくとも1つ以上のバイオメトリックセンサと,バイオメカニック特性を感知するように構成されたバイオメカニックセンサとを備える,1組の1つ以上の健康センサと,
少なくとも1つのバイオメカニック特性を感知するように,その中に一体化された前記1つ以上の健康センサのうちの少なくとも1つを備えるモバイル通信デバイスであって,
前記1組の1つ以上の健康センサから,収集された前記健康データが,健康プロファイルを決定するために使用され,
前記健康プロファイルが,収集された前記健康データに少なくとも部分的に基づいて決定された健康特性を含む,
前記健康データを収集し,
収集された前記健康データに少なくとも部分的に基づいて決定された前記健康プロファイルの前記健康特性を含んでおり,
健康レポートを,前記モバイル通信デバイスの,グラフィカルユーザインターフェースを介して表示するように構成された,モバイル通信デバイスと,
を備える,システム。」
である点で一致し,以下の点で相違するといえる。
(相違点1)
健康を監視するためのシステムについて,補正発明では,「従業員が業務に従事している間に利用する」もので「従業員の健康情報」を検知するものであるのに対して,
引用発明では,「ユーザーにより着用または携帯される間」に利用するもので,「ユーザーの健康特性を測定する」ものである点。
(相違点2)
「健康プロファイル」について,補正発明では,「現在は前記従業員が経験していないが,前記健康データに基づき,将来前記利用者が経験するであろう実際の健康問題に発展すると予測される潜在的な健康問題として,前記健康データに基づき決定される健康問題を含む1つ以上の予測された健康問題」を含むのに対して,
引用発明では,そのような特定がされていない点。
(相違点3)
「健康レポート」について,補正発明では,「1つ以上の予測された健康問題について警告され,前記1つ以上の予測された健康問題が実際の健康問題に発展する前に前記1つ以上の予測された健康問題に対処する機会が提供されるように,前記1つ以上の予測された健康問題を示すコンテンツを含んでいる」のに対して,
引用発明では,そのような特定がされていない点。
(1)相違点1についての検討
従業員の健康を管理することは管理者が普通に行うことであり,そのために身体情報を管理するシステムを用いることも,周知の技術事項1である。
そして,従業員の健康を管理するために従業員の健康情報を業務に従事している間に検知監視しようとすることは,業務を管理する管理者としての自明の課題である。
してみると,健康を監視するためのシステムである引用発明に上記周知の技術事項1を採用し,相違点1における補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到するものである。
(2)相違点2についての検討
「健康プロファイル」として,「現在は前記従業員が経験していないが,前記健康データに基づき,将来前記利用者が経験するであろう実際の健康問題に発展すると予測される潜在的な健康問題として,前記健康データに基づき決定される健康問題」を含むことは周知の技術事項2である(例えば,引用文献2には,「【0034】予測部は,記録部に蓄積された健康状態の時系列変化より,数時間後~数日後までの将来の健康状態を・・・予測判断する・・・【0035】そして,これらの健康状態の判断結果,舌情報,自覚体調・・・及び将来の健康状態は,・・・所定の様式でモニター4に出力される。」と記載され,引用文献3には,「【0002】【従来の技術】・・・受診者が将来発症の可能性のある疾病を予測して・・・」と記載され,引用文献4には,「【請求項18】患者の健康状態を追跡するためのシステムであって,・・・所定の健康指示パラメータにおける考えられる傾向が異常範囲内の値をとることを見積り,・・・将来異常指示信号を提供する」と記載されている。)
そして,健康管理において,将来の健康状態を予測することは,健康の維持向上のための自明の課題といえる。
してみると,引用発明の「健康プロファイル」について上記周知の技術事項2を採用し,相違点2における補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到するものである。
(3)相違点3についての検討
「健康レポート」において,「1つ以上の予測された健康問題について警告され,前記1つ以上の予測された健康問題が実際の健康問題に発展する前に前記1つ以上の予測された健康問題に対処する機会が提供されるように,前記1つ以上の予測された健康問題を示すコンテンツを含んでいるもの」は周知の技術事項3である(例えば,引用文献3には,「【0002】【従来の技術】健康教育では,受診者が将来発症の可能性のある疾病を予測して,それを予防するための知識を与えることが,効果的である。」と記載され,引用文献4には,「【請求項18】患者の健康状態を追跡するためのシステムであって,・・・
・・・
【請求項21】・・・医療処置計画を許可済みユーザに提供する」と記載されている。)
そして,健康管理において,将来の健康問題を指摘し,その健康問題を予防するための知識を提供することは,医療分野において望まれる自明の課題といえる。
さらに,将来の健康問題を指摘することは,健康問題を警告することといえる。
してみると,引用発明の健康レポート」について上記周知の技術事項3を採用し,相違点3における補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到するものである。
(4)そして,補正発明の作用効果は,引用文献1記載の事項,及び周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず,格別顕著なものともいえない。
(5)したがって,補正発明は,引用発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1~33に係る発明は,平成27年7月2日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~33に記載された事項により特定されたものであって,その請求項1に係る発明は,次のとおりであると認める。
「【請求項1】
従業員の健康を監視するためのシステムであって,前記システムは,
前記従業員が業務に従事している間に,前記従業員上に,または近辺に提供されるように構成された1組の1つ以上の健康センサであって,前記1つ以上の健康センサが,前記センサによって感知された特性に対応する健康データを出力するように構成され,前記1つ以上の健康センサが,前記従業員のバイオメトリック特性を感知するように構成された少なくとも1つ以上のバイオメトリックセンサと,前記従業員のバイオメカニック特性を感知するように構成されたバイオメカニックセンサとを備える,1組の1つ以上の健康センサと,
前記従業員の少なくとも1つのバイオメトリックまたはバイオメカニック特性を感知するように,その中に一体化された前記1つ以上の健康センサのうちの少なくとも1つを備えるモバイル通信デバイスであって,
前記1組の1つ以上の健康センサから,収集された前記健康データが,前記従業員の健康プロファイルを決定するために使用され,前記健康プロファイルが,収集された前記健康データに少なくとも部分的に基づいて決定された前記従業員の健康特性,健康状態,健康の危険性,および健康計画のうちの少なくとも1つ,ならびに1つ以上の予測された健康問題を含む,前記健康データを収集し,
収集された前記健康データに少なくとも部分的に基づいて決定された前記従業員の前記健康プロファイルの前記健康特性,前記健康状態,前記健康の危険性,および前記健康計画のうちの少なくとも1つを含んでおり,前記従業員が前記1つ以上の予測された健康問題について警告され,前記1つ以上の予測された健康問題が実際の健康問題に発展する前に前記1つ以上の予測された健康問題に対処する機会が提供されるように,前記1つ以上の予測された健康問題を示すコンテンツを含んでいる健康レポートを,前記モバイル通信デバイスの,グラフィカルユーザインターフェースを介して表示するように構成された,モバイル通信デバイスと,を備える,システム。」(以下,「本願発明」という。)
2 引用文献およびその記載事項
本願優先権主張日前に頒布された引用文献1~4およびその記載事項は,上記「第2[理由] 2」に記載したとおりである。
3 当審の判断
補正発明は,本願発明を限定した構成を含むものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含む補正発明が,上記「第2[理由] 3」において検討したとおり,引用発明及び周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 まとめ
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その他の請求項について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-005079