特許拒絶査定不服審判
2016-002519
バックコンタクトソーラーセル
- 審判番号
- 2016-002519
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-213291外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年02月19日
- 審決日
- 2017年03月22日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サンパワー コーポレイション
- 【請求人代理人】龍華国際特許業務法人
- 分類
- P18 .113-WZ (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-213291「バックコンタクトソーラーセル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 2日出願公開、特開2015- 62232〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は、2010年12月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年3月4日 米国、2010年12月17日 米国)を国際出願日とする特願2012-556055号の一部を平成26年10月20日に新たな特許出願としたものであって、平成27年8月3日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年10月7日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月2日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は同月10日に請求人に送達された。これに対して、平成28年2月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、当審において、同年9月16日付けで拒絶理由を通知し,応答期間内である平成29年1月16日に意見書及び手続補正書が提出されたところである。
2 本願発明
この出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年1月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
基板の上に配置された材料層と、
前記材料層内に配置されたトレンチと
前記材料層と前記基板との間に直に配置される誘電体膜と、
を備え、
前記トレンチは、前記材料層のN型領域およびP型領域を分離し、
前記P型領域は、前記トレンチに直に隣接する部分におけるドーパント濃度が前記P型領域の中心部におけるドーパント濃度と実質的に等しく、
前記トレンチは、前記材料層により被覆されていない前記基板の表面が前記材料層により被覆されている前記基板の表面より前記基板の内部に位置するように、前記材料層を貫通して前記基板の途中まで配置され、
前記材料層により被覆されていない前記基板の表面は、テクスチャ化表面を含み、
前記誘電体膜の前記トレンチに直に隣接する部分の全てが、前記P型領域または前記N型領域により被覆されている、バックコンタクトソーラーセル。」
3 引用文献
(1)引用文献1の記載事項
当審において通知した拒絶の理由に引用された国際公開第2009/151809号 (以下「引用文献1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。なお、下線は当審で付与したものであり、原文の引用後に日本語訳(当審訳)を記載する。
ア 5頁13行から6頁19行まで
「FIG. 1 schematically shows a sectional view of a solar cell structure in accordance with an embodiment of the present invention. In the example of FIG. 1 , the solar cell is a backside contact solar cell in that its doped regions 101 and 102 are on the backside 106 opposite to the front side 105. The front side 105 faces the sun during normal operation. The doped regions 101 and 102 are formed on a thin dielectric layer 113. The dielectric layer 113 may be formed to a thickness of 5 Angstroms to 40 Angstroms. In one embodiment, the dielectric layer 113 comprises silicon dioxide thermally grown on the surface of the substrate 103 to a thickness of 20 Angstroms. The dielectric layer 113 may also comprise silicon nitride. The dielectric layer 113 advantageously allows for surface passivation. The polysilicon of the doped regions 101 and 102 applies an electric field across the dielectric layer 113, which repels minority carriers and accumulates majority carriers at the dielectric interface.
In the example of FIG. 1 , the doped region 101 is a P-type doped region, while the doped region 102 is an N-type doped region. A substrate 103 comprises an N-type silicon wafer in this example. As can be appreciated, the substrate 103 may also comprise a P-type silicon or other wafer with appropriate changes to the rest of the structure. There are several P-type and N-type doped regions in any given solar cell but only one of each is shown in FIG. 1 for clarity of illustration.
The doped regions 101 and 102 may comprise doped polysilicon formed to a thickness of about 2000 Angstroms by low pressure chemical vapor deposition (LPCVD). The doped region 101 may comprise polysilicon doped with a P-type dopant (e.g., boron) and the doped region 102 may comprise polysilicon doped with an N-type dopant (e.g., phosphorus). The polysiiicon may be deposited over the thin dielectric layer 113 and then doped by diffusion. The polysilicon may also be pre-doped prior to deposition on the dielectric layer 113. Polysilicon is the preferred material for the doped regions 101 and 102 for its compatibility with high temperature processing, allowing for increased thermal budget.」
(図1は、本発明の実施形態に係る太陽電池構造を示す概略断面図である。図1に示す太陽電池の例は、裏面コンタクト型太陽電池であり、ドーピング領域101および102は、正面105とは反対側の裏面106に設けられている。正面105は、通常動作時は、太陽に向いている面である。ドーピング領域101および102は、薄い誘電体層113の上に形成されている。誘電体層113は、5オングストロームから40オングストロームの厚みに形成されるとしてよい。一実施形態によると、誘電体層113は、基板103の表面の上に厚み20オングストロームまで熱的に成長した二酸化シリコンを含む。誘電体層113はまた、窒化シリコンを含むとしてもよい。誘電体層113は、表面を保護するという利点を持つ。ドーピング領域101および102を形成するポリシリコンが誘電体層113に電界を印加すると、少数キャリアが反発し、誘電体界面には多数キャリアが蓄積される。
図1に示した例によると、ドーピング領域101はP型ドーピング領域で、ドーピング領域102はN型ドーピング領域である。本例では、基板103はN型シリコンウェハを含む。また、想到の範囲内ではあるが、基板103は、P型シリコンウェハまたはその他のウェハを含むとしてもよい。この場合、太陽電池構造の残りの構成要素も適切に変更されるとしてよい。任意の所与の太陽電池にはP型およびN型のドーピング領域が複数設け
られているが、図示の便宜上、図1では各領域を1つのみ示している。
ドーピング領域101および102は、減圧化学気相成長(LPCVD)法で約2000オングストロームの厚みに形成されたドーピングポリシリコンから成ってもよい。ドーピング領域101は、P型ドーパント(例えば、ホウ素)でドーピングされたポリシリコンを含み、ドーピング領域102は、N型ドーパント(例えば、リン)でドーピングされたポリシリコンを含むとしてよい。ポリシリコンを薄い誘電体層113の上方に成膜して、その後に拡散によりドーピングを実行するとしてよい。また、誘電体層113の上に成膜する前に、ポリシリコンに事前にドーピングを施しておくとしてもよい。ポリシリコンがドーピング領域101および102の形成材料として好まれるのは、高温処理が実行可能で、サーマルバジェットを大きくできるためである。)
イ 6頁20行から7頁12行まで
「As shown in FIG. 1 , the doped regions 101 and 102 are separated by a trench 104, which serves as a gap between the doped regions 10t and 102.」
The trench 104 may be formed by laser trenching or conventional etching, for example. In one embodiment, the trench 104 is about 100 microns wide. The trench 104 may be formed before or after a diffusion step that dopes the polysilicon doped regions 101 and 102. If the trench 104 is formed before the diffusion step, the passivation region 112 may comprise an N-type passivation region formed during the diffusion step.」
In one embodiment, the trench 104 is formed using a process that not only forms the trench 104 but also forms a randomly textured surface 114 on the surface of the trench 104. The randomly textured surface 114 improves solar radiation collection of light incident on the back of the solar cell, i.e. a bifacial configuration. A wet etch process comprising potassium hydroxide and isopropyl alcohol may be used to form the trench 104 and to texture the surface 114 with random pyramids. The trench 104 may be formed to dig 1 to 10 microns (e.g., 3 microns) into the substrate 103.」
(図1に示すように、ドーピング領域101および102は、トレンチ104によって分離されている。トレンチ104は、ドーピング領域101とドーピング領域102との間の間隙として機能する。
トレンチ104は、例えば、レーザトレンチ形成法または従来のエッチングを用いて形成されるとしてよい。一実施形態によると、トレンチ104は、幅が約100ミクロンである。トレンチ104は、ポリシリコンドーピング領域101および102にドーピングを実行するための拡散工程の前後に形成されるとしてよい。拡散工程の前にトレンチ104を形成する場合、パッシベーション領域112は、拡散工程で形成されるN型のパッシベーション領域を含むとしてよい。
一実施形態によると、トレンチ104を形成する処理は、トレンチ104を形成するだけでなく、トレンチ104の表面に不規則に粗面化した表面114を形成する。不規則に粗面化した表面114を設けることによって、太陽電池の裏面に入射した太陽光の集光率が改善される。つまり、両面構成が実現される。水酸化カリウムおよびイソプロピルアルコールを利用するウェットエッチングプロセスを用いて、トレンチ104を形成すると共に角錐を不規則に設けて表面114を粗面化するとしてよい。トレンチ104は、基板103を1~10ミクロン(例えば、3ミクロン)の深さまで削って形成されるとしてよい。)
ウ FIG.1
「
」
(2)引用発明
図1には、誘電体層113は、トレンチ104の形成により生じた間隙に接する誘電体層113の端部までドーピング領域101又は102により被覆されていることが見て取れるから、引用文献1には、図1に関する以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ドーピング領域101および102は、正面105とは反対側の裏面106に設けられ、正面105は、通常動作時は、太陽に向いている面であり、
ドーピング領域101および102は、薄い誘電体層113の上に形成され、
誘電体層113は、基板103の表面の上に厚み20オングストロームまで熱的に成長した二酸化シリコンを含み、
ドーピング領域101はP型ドーピング領域で、ドーピング領域102はN型ドーピング領域であり、基板103はN型シリコンウェハを含み、ドーピング領域101および102は、減圧化学気相成長法で約2000オングストロームの厚みに形成されたドーピングポリシリコンから成り、
トレンチ104は、ドーピング領域101とドーピング領域102との間の間隙として機能し、
トレンチ104を形成する処理は、トレンチ104を形成するだけでなく、トレンチ104の表面に不規則に粗面化した表面114を形成し、トレンチ104は、基板103を1~10ミクロン(例えば、3ミクロン)の深さまで削って形成され、
誘電体層113は、トレンチ104の形成により生じた間隙に接する誘電体層113の端部までドーピング領域101又は102により被覆されている、
裏面コンタクト型太陽電池。」
4 対比、判断
(1)本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明において、「P型」「ドーピング領域101」及び「N型」「ドーピング領域102」は、「ドーピングポリシリコン」から成るから、引用発明の「減圧化学気相成長法で約2000オングストロームの厚みに形成されたドーピングポリシリコン」は、本願発明1の「材料層」に相当し、引用発明1の「P型」「ドーピング領域101」及び「N型」「ドーピング領域102」は、それぞれ本願発明1の「材料層のN型領域およびP型領域」に相当する。
イ 引用発明において、「誘電体層113は、基板103の表面の上に」形成され、「ドーピング領域101および102は、薄い誘電体層113の上に形成され、」ているから、「基板103」の上に「誘電体層113」、さらにその上に「ドーピングポリシリコン」から成る「P型」「ドーピング領域101」及び「N型」「ドーピング領域102」が形成されているものである。してみると、引用発明の「誘電体層113」は、本願発明1の「前記材料層と前記基板との間に直に配置される誘電体膜」に相当する。また、引用発明の「基板103」の上の「誘電体層113」の上に形成される「減圧化学気相成長法で約2000オングストロームの厚みに形成されたドーピングポリシリコン」は、本願発明1の「基板の上に配置された材料層」に相当する。
ウ 引用発明の「減圧化学気相成長法」により成膜された膜のドーパント濃度は均一であることが技術常識であることから、引用発明の「P型ドーピング領域101」は、本願発明1の「前記トレンチに直に隣接する部分におけるドーパント濃度が前記P型領域の中心部におけるドーパント濃度と実質的に等し」いことに相当する構成を有するといえる。
エ 引用発明の「トレンチ104は、ドーピング領域101とドーピング領域102との間の間隙として機能し」ていることは、本願発明1の「前記トレンチは、前記材料層のN型領域およびP型領域を分離し」ていることに相当する。
オ 引用発明の「トレンチ104を形成する処理は、トレンチ104を形成するだけでなく、トレンチ104の表面に不規則に粗面化した表面114を形成」することは、本願発明1の「前記材料層により被覆されていない前記基板の表面は、テクスチャ化表面を含」むことに相当する。
カ 引用発明の「トレンチ104は、基板103を1~10ミクロン(例えば、3ミクロン)の深さまで削って形成され」ていることは、本願発明1の「前記トレンチは、前記材料層により被覆されていない前記基板の表面が前記材料層により被覆されている前記基板の表面より前記基板の内部に位置するように、前記材料層を貫通して前記基板の途中まで配置され」ていることに相当する。
キ 引用発明の「誘電体層113は、トレンチ104の形成により生じた間隙に接する誘電体層113の端部までドーピング領域101又は102により被覆されている」ことは、本願発明1の「前記誘電体膜の前記トレンチに直に隣接する部分の全てが、前記P型領域または前記N型領域により被覆されている」ことに相当する。
(2)判断
上記(1)の対比の結果、本願発明1は、引用発明と差異のないものであるから、本願発明1は引用発明である。
(3)平成29年1月16日付け意見書の主張について
審判請求人は、平成29年1月16日付け意見書にて、以下の主張をしている。
「一方、引用文献1には、本願の段落0033に示すような課題は開示も示唆もされていない。引用文献1の図7Aおよび図7Bに示される太陽電池の製造方法は、本願の図2A-2Eで示す太陽電池の製造方法と同一である。よって、この製造方法では、実際には、ドーパント源にテーパ状側壁が生じ、本願発明のように、誘電体膜のトレンチに直に隣接する部分の全てが、P型領域またはN型領域により被覆されている構成を実現することはできない。よって、本願の段落0033に示すようなP型ドーピング濃度の不均一性により、ソーラーセルの性能に望ましくない影響が及ぼされる可能性がある。」
しかしながら、引用文献1から認定された引用発明は、上記3(2)に記載のとおり、引用文献1の図1に関する発明であり、審判請求人が主張する「図7Aおよび図7Bに示される太陽電池」に関するものではない。
よって、審判請求人の前記主張は、引用発明に対するものではなく、採用することはできない。
5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明において検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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