特許拒絶査定不服審判
2023-005574
シート貼付装置およびシート貼付方法
- 審判番号
- 2023-005574
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-183935外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年04月06日
- 審決日
- 2024年06月05日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-WZ (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-183935「シート貼付装置およびシート貼付方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 5月23日出願公開、特開2023- 71273〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和3年11月11日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 4年 9月 9日付け:拒絶理由通知書
令和 4年11月10日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年12月28日付け:拒絶査定(原査定)
令和 5年 4月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 6年 1月12日付け:拒絶理由通知書
令和 6年 3月14日 :意見書の提出
2 本願発明
令和5年4月6日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
接着シートを供給する駆動機器を有する供給手段と、
前記供給手段で供給された前記接着シートを被着体の被着面に押圧して貼付する押圧ローラを有する押圧手段とを備えたシート貼付装置において、
前記押圧手段は、前記押圧ローラおよび前記被着体の前記被着面に交差する第1方向への相対移動により、前記接着シートの供給方向における先方部を前記押圧ローラで前記被着面に押圧して貼付する第1貼付動作と、前記押圧ローラおよび前記被着体の前記被着面に沿う第2方向への相対移動により、前記接着シートにおける前記先方部以外の後方部を前記押圧ローラで前記被着面に押圧して貼付する第2貼付動作とを行い、
前記押圧ローラは、前記第1貼付動作が行われた際、前記被着面に押し付けられる部分が変形してシート押圧領域を形成するように設けられ、
前記供給手段は、前記第1貼付動作が行われた際に、前記接着シートの供給方向における先端縁が前記シート押圧領域内に収まるように前記駆動機器を停止させ、前記第1貼付動作の前段で前記接着シートを所定の位置に供給しておく貼付前供給動作を行うことを特徴とするシート貼付装置。」
3 拒絶の理由
令和6年1月12日付けで当審が通知した拒絶理由のうち、理由1(新規性)は、次のとおりのものである。
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
引用文献1:特開2021-48378号公報(原査定で引用された引用文献2)
4 引用文献の記載等
(1)引用文献1の記載と引用発明
ア 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、合議体が付与した。以下、同じ。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、シート貼付装置およびシート貼付方法に関する。」
「【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態におけるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は、前記所定平面に直交する軸とする。さらに、本実施形態では、Y軸と平行な図1の手前方向から観た場合を基準とし、方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」がY軸と平行な図1中手前方向で「後」がその逆方向とする。
【0010】
図1において、シート貼付装置EAは、接着シートASを繰り出す繰出手段10と、繰出手段10で繰り出される接着シートASを当該接着シートASの繰出方向先端部AS1から順次被着体WKに押圧して貼付する押圧手段としての押圧ローラ20と、被着体WKに接着シートASの繰出方向先端部AS1を押圧ローラ20で貼付した状態で、当該接着シートASの未貼付部AS2の弛みASSを除去する弛み除去手段30とを備え、被着体WKとシート貼付装置EAとを相対移動させる支持手段40の上方に配置されている。
【0011】
繰出手段10は、剥離シートRLの一方の面に接着シートASが仮着された原反RSを支持する支持ローラ11と、原反RSを案内するガイドローラ12と、剥離縁13Aで剥離シートRLを折り返し、当該剥離シートRLから接着シートASを剥離する剥離手段としての剥離板13と、駆動機器としての回動モータ14Aの図示しない出力軸に支持され、ピンチローラ14Bとで剥離シートRLを挟み込む駆動ローラ14と、図示しない駆動機器の出力軸に支持され、シート貼付装置EAの自動運転が行われている間、ピンチローラ14Bとの間に存在する剥離シートRLに常に所定の張力を付与し、当該剥離シートRLを回収する回収ローラ15とを備えている。
【0012】
弛み除去手段30は、駆動機器としての回動モータ31Aの図示しない出力軸に支持され、ピンチローラ31Bとで原反RSを挟み込む弛み除去ローラ31を備え、繰出手段10が接着シートASを繰り出す繰出方向D1の反対方向である反繰出方向D2に、当該接着シートASを移動させて弛みASSを除去する構成になっている。
【0013】
支持手段40は、駆動機器としてのリニアモータ41と、リニアモータ41のスライダ41Aに支持された駆動機器としての直動モータ42と、直動モータ42の出力軸42Aに支持され、減圧ポンプや真空エジェクタ等の図示しない減圧手段によって吸着保持が可能な支持面43Aを有するテーブル43とを備えている。
【0014】
以上のシート貼付装置EAの動作を説明する。
先ず、図1(A)中実線で示す初期位置に各部材が配置されたシート貼付装置EAに対し、当該シート貼付装置EAの使用者(以下、単に「使用者」という)が同図のように原反RSをセットした後、図示しない操作パネルやパーソナルコンピュータ等の操作手段を介して自動運転開始の信号を入力する。すると、繰出手段10および弛み除去手段30が回動モータ14A、31Aを駆動し、原反RSを繰り出し、図1(A)中実線で示すように、先頭の接着シートASの繰出方向先端部AS1が剥離板13の剥離縁13Aで剥離され、当該繰出方向先端部AS1が押圧ローラ20の最下部に位置すると、回動モータ14A、31Aの駆動を停止する。
【0015】
次いで、使用者または、多関節ロボットやベルトコンベア等の図示しない搬送手段が、図1(A)中実線で示すように、被着体WKを支持面43A上の所定の位置に載置すると、支持手段40が図示しない減圧手段を駆動し、支持面43Aでの被着体WKの吸着保持を開始する。その後、支持手段40がリニアモータ41を駆動し、図1(A)中二点鎖線で示すように、テーブル43を左方に移動させ、被着体WKの左端縁が押圧ローラ20の最下部を所定距離通過すると、支持手段40がリニアモータ41の駆動を停止する。次に、支持手段40が直動モータ42を駆動し、図1(B)に示すように、テーブル43を上昇させ、被着体WKを接着シートASに接近させることで、当該接着シートASの繰出方向先端部AS1を押圧ローラ20で押圧して貼付する。このとき、図1(B)中実線で示すように、接着シートASの未貼付部AS2に弛みASSが生じる場合があるが、本実施形態の場合、弛み除去手段30が回動モータ31Aを駆動し、原反RSを巻き戻して接着シートASを反繰出方向D2に移動させて弛みASSを除去する。なお、原反RSを巻き戻す際、剥離板13が反繰出方向D2に移動する構成を採用してもよいし、回動モータ14Aが剥離シートRLを反繰出方向D2に送り出す構成を採用してもよいが、剥離シートRLに伸縮性があれば、それら構成を採用しなくてもよい。
【0016】
そして、支持手段40がリニアモータ41を駆動し、テーブル43を左方に移動させるとともに、当該テーブル43の移動速度に合わせて繰出手段10および弛み除去手段30が回動モータ14A、31Aを駆動し、原反RSを繰り出す。これにより、図1(B)中二点鎖線で示すように、接着シートASが剥離板13の剥離縁13Aで剥離シートRLから剥離され、押圧ローラ20によって被着体WKに押圧されて貼付される。次いで、先頭の接着シートAS全体が被着体WKに貼付され、次の接着シートASの繰出方向先端部AS1が押圧ローラ20の最下部に位置すると、繰出手段10および弛み除去手段30が回動モータ14A、31Aの駆動を停止する。
【0017】
その後、テーブル43が押圧ローラ20の左方所定位置に到達すると、支持手段40がリニアモータ41の駆動を停止した後、図示しない減圧手段の駆動を停止し、支持面43Aでの被着体WKの吸着保持を解除する。次に、使用者または図示しない搬送手段が、接着シートASが貼付された被着体WKを次工程に搬送すると、支持手段40がリニアモータ41および直動モータ42を駆動し、テーブル43を初期位置に復帰させ、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0018】
以上のような実施形態によれば、被着体WKに接着シートASの繰出方向先端部AS1を貼付した状態で、当該接着シートASの未貼付部AS2の弛みASSを除去するので、接着シートASの弛みASSによる貼付不良を防止することができる。」
「【0025】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、繰出手段は、接着シートを繰り出すものであれば、出願当初の技術常識に照らし合わせ、その技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(他の手段および工程についての説明は省略する)。
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダおよびロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
前記実施形態において、ローラ等の回転部材が採用されている場合、当該回転部材を回転駆動させる駆動機器を備えてもよいし、回転部材の表面や回転部材自体をゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成してもよいし、回転部材の表面や回転部材自体を変形しない部材で構成してもよいし、ローラの代わりに回転するまたは回転しないシャフトやブレード等の他の部材を採用してもよいし、押圧ローラや押圧ヘッド等の押圧手段や押圧部材といった被押圧物を押圧するものが採用されている場合、上記で例示したものに代えてまたは併用して、ローラ、丸棒、ブレード材、ゴム、樹脂、スポンジ等の部材を採用したり、大気やガス等の気体の吹き付けにより押圧する構成を採用したりしてもよいし、押圧するものをゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成してもよいし、変形しない部材で構成してもよいし、剥離板や剥離ローラ等の剥離手段や剥離部材といった被剥離物を剥離するものが採用されている場合、上記で例示したものに代えてまたは併用して、板状部材、丸棒、ローラ等の部材を採用してもよいし、剥離するものをゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成してもよいし、変形しない部材で構成してもよいし、・・・」
「【図1】
[図:0001412873000001.jpg]
」
イ 引用文献1に記載された技術的事項
上記アから、引用文献1には、以下の技術的事項が開示されているといえる。
(ア)引用文献1には、「接着シートASを繰り出す繰出手段10と、前記繰出手段10で繰り出される前記接着シートASを被着体WKに押圧して貼付する押圧ローラ20を有する押圧手段と、弛み除去手段30とを備え、繰出手段10および弛み除去手段30は、それぞれ回動モータ14A、回動モータ31Aを有するシート貼付装置EA」が記載されているといえる。(段落【0010】~【0012】、【図1】(A))。
(イ)引用文献1には、「繰出手段10で繰り出される接着シートASを当該接着シートASの繰出方向先端部AS1から順次被着体WKに押圧して貼付する押圧手段としての押圧ローラ20」(段落【0010】)、「すると、繰出手段10および弛み除去手段30が回動モータ14A、31Aを駆動し、原反RSを繰り出し、図1(A)中実線で示すように、先頭の接着シートASの繰出方向先端部AS1が剥離板13の剥離縁13Aで剥離され、当該繰出方向先端部AS1が押圧ローラ20の最下部に位置すると、回動モータ14A、31Aの駆動を停止する。」(段落【0014】)、「図1(A)中二点鎖線で示すように、テーブル43を左方に移動させ、被着体WKの左端縁が押圧ローラ20の最下部を所定距離通過すると、支持手段40がリニアモータ41の駆動を停止する。次に、支持手段40が直動モータ42を駆動し、図1(B)に示すように、テーブル43を上昇させ、被着体WKを接着シートASに接近させることで、当該接着シートASの繰出方向先端部AS1を押圧ローラ20で押圧して貼付する。」(段落【0015】)と記載されている。
上記段落【0015】の記載から、引用文献1には、「被着体WKの左端縁が押圧ローラ20の最下部を所定距離通過した状態で、被着体WKが、テーブル43の上昇で、接着シートASに接近することで、接着シートASの繰出方向先端部AS1を押圧ローラ20で被着体WKに押圧して貼付すること」が記載されているといえる。また、このとき、押圧ローラ20と被着体WKは上下方向へ相対移動するといえる。
そうすると、引用文献1には、「押圧ローラ20は、押圧ローラ20及び被着体WKの上下方向への相対移動により、接着シートASの繰出方向先端部AS1を押圧ローラ20で被着体WKに押圧して貼付する動作を行うものであること」が記載されているといえる。
また、当該引用文献1の記載事項及び上記段落【0014】、【0015】の記載から、引用文献1には、「繰出手段10は、押圧ローラ20及び被着体WKの上下方向への相対移動による貼付することが行われた際に、接着シートASの繰出方向先端部AS1が押圧ローラ20の最下部に位置するように、回動モータ14A、31Aの駆動を停止させ」、「当該押圧ローラ20と被着体WKの上下方向への相対移動による貼付することを行う前に、接着シートASを所定の位置に供給しておくこと」が記載されているといえる。
(ウ)引用文献1には、上記段落【0014】、【0015】の記載に続けて、「そして、支持手段40がリニアモータ41を駆動し、テーブル43を左方に移動させるとともに、当該テーブル43の移動速度に合わせて繰出手段10および弛み除去手段30が回動モータ14A、31Aを駆動し、原反RSを繰り出す。これにより、図1(B)中二点鎖線で示すように、接着シートASが剥離板13の剥離縁13Aで剥離シートRLから剥離され、押圧ローラ20によって被着体WKに押圧されて貼付される。次いで、先頭の接着シートAS全体が被着体WKに貼付され、次の接着シートASの繰出方向先端部AS1が押圧ローラ20の最下部に位置すると、繰出手段10および弛み除去手段30が回動モータ14A、31Aの駆動を停止する。」(段落【0016】)と記載されている。
以上の記載から、引用文献1には、「接着シートASの繰出方向先端部AS1以外の部分を押圧ローラ20で被着体WKに押圧して貼付すること」が記載されているといえる。また、このとき、押圧ローラ20と被着体WKは水平方向へ相対移動することは明らかである。
そうすると、引用文献1には、「押圧ローラ20は、押圧ローラ20及び被着体WKの水平方向への相対移動により、接着シートASの繰出方向先端部AS1以外の部分を押圧ローラ20で被着体WKに押圧して貼付する動作を行うものであること」が記載されているといえる。
(エ)引用文献1には、「押圧ローラや押圧ヘッド等の押圧手段や押圧部材といった被押圧物を押圧するものが採用されている場合、上記で例示したものに代えてまたは併用して、ローラ、丸棒、ブレード材、ゴム、樹脂、スポンジ等の部材を採用したり、大気やガス等の気体の吹き付けにより押圧する構成を採用したりしてもよいし、押圧するものをゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成してもよいし、変形しない部材で構成してもよいし」(段落【0025】)と記載されている。
上記段落【0025】の記載から、引用文献1には、「押圧手段である押圧ローラは、ゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成されていること」が記載されているといえる。
(オ)以上をまとめると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「接着シートASを繰り出す繰出手段10と、
前記繰出手段10で繰り出される前記接着シートASを被着体WKに押圧して貼付する押圧ローラ20を有する押圧手段と、
弛み除去手段30とを備え、
繰出手段10および弛み除去手段30は、それぞれ回動モータ14A、回動モータ31Aを有するシート貼付装置EAにおいて、
押圧ローラ20は、ゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成されており、
押圧ローラ20は、押圧ローラ20及び被着体WKの上下方向への相対移動により、接着シートASの繰出方向先端部AS1を押圧ローラ20で被着体WKに押圧して貼付する動作と、押圧ローラ20及び被着体WKの水平方向への相対移動により、接着シートASの繰出方向先端部AS1以外の部分を押圧ローラ20で被着体WKに押圧して貼付する動作とを行い、
繰出手段10は、押圧ローラ20及び被着体WKの上下方向への相対移動による貼付することが行われた際に、接着シートASの繰出方向先端部AS1が押圧ローラ20の最下部に位置するように、回動モータ14A、31Aの駆動を停止させ、当該押圧ローラ20と被着体WKの上下方向への相対移動による貼付する動作の前に、接着シートASを所定の位置に供給しておくシート貼付装置EA。」
5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「シート貼付装置EA」、「接着シートAS」、「回動モータ14A、31A」、「被着体WK」、「押圧ローラ20」は、それぞれ、本願発明の「シート貼付装置」、「接着シート」、「駆動機器」、「被着体」、「押圧ローラ」に相当する。
引用文献1の段落【0014】の「繰出手段10および弛み除去手段30が回動モータ14A、31Aを駆動し、原反RSを繰り出し」との記載から、引用発明の「繰出手段10および弛み除去手段30」は、本願発明の「供給手段」に相当するといえる。
引用文献1の段落【0009】及び図1(A)を参照すると、引用発明の「上下方向」、「水平方向」は、それぞれZ軸方向、X軸方向であり、前者は被着体WKの被着面に交差する方向であり、後者は被着体WKの被着面に沿う方向である。
したがって、引用発明の「上下方向」、「水平方向」は、それぞれ本願発明の「前記被着面に交差する第1方向」、「前記被着面に沿う第2方向」に相当する。
(2)本願発明の「前記押圧手段は、前記押圧ローラおよび前記被着体の前記被着面に交差する第1方向への相対移動により、前記接着シートの供給方向における先方部を前記押圧ローラで前記被着面に押圧して貼付する第1貼付動作と、前記押圧ローラおよび前記被着体の前記被着面に沿う第2方向への相対移動により、前記接着シートにおける前記先方部以外の後方部を前記押圧ローラで前記被着面に押圧して貼付する第2貼付動作とを行い」と、引用発明の「押圧ローラ20は、押圧ローラ20及び被着体WKの上下方向への相対移動により、接着シートASの繰出方向先端部AS1を押圧ローラ20で被着体WKに押圧して貼付する動作と、押圧ローラ20及び被着体WKの水平方向への相対移動により、接着シートASの繰出方向先端部AS1以外の部分を押圧ローラ20で被着体WKに押圧して貼付する動作とを行い」とを対比する。
ア 引用発明において、「繰出手段10」は「接着シートASを繰り出す」ものであるところ、当該繰出手段10の繰出方向は接着シートASの供給方向であるといえる。そうすると、引用発明の「接着シートASの繰出方向先端部AS1」は、「接着シートAS」の供給方向における「先端部」と言い換えられるから、本願発明の「接着シートの供給方向の先方部」に相当する。
イ 上記(1)及びアを踏まえると、引用発明の「押圧ローラ20および被着体WKの上下方向への相対移動により、接着シートASの繰出方向先端部AS1を押圧ローラ20で被着体WKに押圧して貼付する動作」は、本願発明の「前記押圧ローラおよび前記被着体の前記被着面に交差する第1方向への相対移動により、前記接着シートの供給方向における先方部を前記押圧ローラで前記被着面に押圧して貼付する第1貼付動作」に相当する。
ウ また、引用発明は、「接着シートASの繰出方向先端部AS1以外の部分を押圧ローラ20で被着体WKに押圧して貼付する動作」を行うものであるところ、上記イを踏まえると、「接着シートASの繰出方向先端部AS1以外の部分」は、本願発明の「前記接着シートにおける前記先方部以外の後方部」に相当する。
したがって、引用発明の「押圧ローラ20及び被着体WKの水平方向への相対移動により、接着シートASの繰出方向先端部AS1以外の部分を押圧ローラ20で被着体WKに押圧して貼付する動作」は、本願発明の「前記押圧ローラおよび前記被着体の前記被着面に沿う第2方向への相対移動により、前記接着シートにおける前記先方部以外の後方部を前記押圧ローラで前記被着面に押圧して貼付する第2貼付動作」に相当する。
エ 上記ア~ウをまとめると、本願発明と引用発明は、「前記押圧手段は、前記押圧ローラおよび前記被着体の前記被着面に交差する第1方向への相対移動により、前記接着シートの供給方向における先方部を前記押圧ローラで前記被着面に押圧して貼付する第1貼付動作と、前記押圧ローラおよび前記被着体の前記被着面に沿う第2方向への相対移動により、前記接着シートにおける前記先方部以外の後方部を前記押圧ローラで前記被着面に押圧して貼付する第2貼付動作とを行」う点で一致する。
(3)本願発明の「前記供給手段は、前記第1貼付動作が行われた際に、前記接着シートの供給方向における先端縁が前記シート押圧領域内に収まるように前記駆動機器を停止させ、前記第1貼付動作の前段で前記接着シートを所定の位置に供給しておく貼付前供給動作を行う」ことと、引用発明の「繰出手段10は、押圧ローラ20及び被着体WKの上下方向への相対移動による貼付することが行われた際に、接着シートASの繰出方向先端部AS1が押圧ローラ20の最下部に位置するように、回動モータ14A、31Aの駆動を停止させ、当該押圧ローラ20と被着体WKの上下方向への相対移動による貼付する動作の前に、接着シートASを所定の位置に供給しておく」こととを対比する。
上記(2)ア、イを踏まえると、引用発明における「当該押圧ローラ20と被着体WKの上下方向への相対移動による貼付する動作の前に」、接着シートASを所定の位置に供給しておくことは、本願発明の「前記第1貼付動作の前段で」前記接着シートを所定の位置に供給しておくことに相当するといえる。
したがって、本願発明と引用発明は、「前記供給手段は、前記駆動機器を停止させ、前記第1貼付動作の前段で前記接着シートを所定の位置に供給しておく貼付前供給動作を行う」点で共通する。
(4)したがって、本願発明と引用発明との一致点と相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「接着シートを供給する駆動機器を有する供給手段と、
前記供給手段で供給された前記接着シートを被着体の被着面に押圧して貼付する押圧ローラを有する押圧手段とを備えたシート貼付装置において、
前記押圧手段は、前記押圧ローラおよび前記被着体の前記被着面に交差する第1方向への相対移動により、前記接着シートの供給方向における先方部を前記押圧ローラで前記被着面に押圧して貼付する第1貼付動作と、前記押圧ローラおよび前記被着体の前記被着面に沿う第2方向への相対移動により、前記接着シートにおける前記先方部以外の後方部を前記押圧ローラで前記被着面に押圧して貼付する第2貼付動作とを行い、
前記供給手段は、前記駆動機器を停止させ、前記第1貼付動作の前段で前記接着シートを所定の位置に供給しておく貼付前供給動作を行うシート貼付装置。」
<相違点1>
本願発明では、「前記押圧ローラは、前記第1貼付動作が行われた際、前記被着面に押し付けられる部分が変形してシート押圧領域を形成するように設けられ」るのに対し、引用発明では、「押圧ローラ20は、ゴムや樹脂等の変形可能な部材で構成されて」いるものの、「押圧ローラ20」は、「接着シートASの繰出方向先端部AS1を押圧ローラ20で被着体WKの被着面に押圧して貼付する動作」(第1貼付動作)が行われた際、「(被着体WKの)被着面に押し付けられる部分が変形してシート押圧領域を形成するように設けられ」るものであるかは不明である点。
<相違点2>
「供給手段」が行う「貼付前供給動作」における駆動機器を停止させることについて、本願発明では、「前記供給手段は、前記第1貼付動作が行われた際に、前記接着シートの供給方向における先端縁が前記シート押圧領域内に収まるように前記駆動機器を停止させ、前記第1貼付動作の前段で前記接着シートを所定の位置に供給しておく貼付前供給動作を行う」ものであるのに対し、引用発明では、「繰出手段10は、押圧ローラ20及び被着体WKの上下方向への相対移動による貼付することが行われた際に、接着シートASの繰出方向先端部AS1が押圧ローラ20の最下部に位置するように、回動モータ14A、31Aの駆動を停止させ」るものの、接着シートASの繰出方向における先端縁がどの領域内に収まるように、回動モータ14A、31Aの駆動を停止させるのかについては不明である点。
6 判断
(1)相違点1について
引用発明は、「押圧ローラ20及び被着体WKの上下方向への相対移動により、接着シートASの繰出方向先端部AS1を押圧ローラ20で被着体WKに押圧して貼付する動作」が行われるものであるところ、引用発明において、押圧ローラ20は、「変形可能な部材で構成されて」いるから、当該「押圧ローラ20で被着体WKの被着面に押圧して貼付する動作」が行われた際、押圧ローラ20は、「接着シートASの繰出方向先端部AS1」を押圧することで、当然変形するといえる。その際、押圧ローラ20は、被着体WKに押し付けられる部分が変形して、押圧ローラ20に、接着シートASを押圧した領域が形成されるものであるといえる。
したがって、引用発明では、押圧ローラ20は、当該「押圧ローラ20で被着体WKに押圧して貼付する動作」が行われた際、被着体WKの被着面に押し付けられた部分が変形してシート押圧領域を形成するように設けられたものであるといえる。
よって、相違点1は、実質的なものではない。
(2)相違点2について
ア 本願発明において、「前記押圧ローラは、前記第1貼付動作が行われた際、前記被着面に押し付けられる部分が変形してシート押圧領域を形成するように設けられ」るものであるから、相違点2に係る「前記シート押圧領域」は、「押圧ローラ」が、「前記第1貼付動作が行われた際、前記被着面に押し付けられる部分」であるといえる。
イ 一方、引用発明は、「接着シートASの繰出方向先端部AS1を押圧ローラ20で被着体WKに押圧して貼付する」ものであって、「繰出手段10は、上記押圧ローラ20及び被着体WKの上下方向への相対移動による貼付することが行われた際に、接着シートASの繰出方向先端部AS1が押圧ローラ20の最下部に位置するように、回動モータ14A、31Aの駆動を停止させ」るものであるところ、上記(1)で検討したとおり、引用発明では、押圧ローラ20は、当該「押圧ローラ20で被着体WKに押圧して貼付する動作」が行われた際、被着体WKの被着面に押し付けられた部分が変形してシート押圧領域を形成するように設けられたものであるから、接着シートASの「繰出方向先端部AS1」は、上記押圧ローラ20及び被着体WKの上下方向への相対移動による貼付することが行われた際に、被着体WKに押し付けられる部分である、押圧ローラ20のシート押圧領域内に収まるように、回動モータ14A、31Aを停止させるものであるといえる。
ウ そこで、引用発明において、繰出手段10が、「回動モータ14A、31Aの駆動を停止させ」る際の接着シートASの繰出方向における「先端縁」がどうなるようにするかについて、検討する。
引用発明において、接着シートASの繰出方向における「先端縁」は上記「繰出方向先端部AS1」に含まれているといえるところ、上記「イ」で述べたとおり、引用発明の「繰出方向先端部AS1」がシート押圧領域内に収まる以上、当然に、「繰出方向先端部AS1」のうち「先端縁」も、シート押圧領域内に収まるものである。そもそも、当該「先端縁」が、押圧ローラ20の上記シート押圧領域内に収まるように、回動モータ14A、31Aを停止させるようにしないと、接着シートASの繰出方向における先端縁を被着体WKの被着面に押し付けることができず、接着シートASの繰出方向先端部AS1に未貼付部が残り、十分良好に貼付することができないことは明らかである。
したがって、引用発明は、繰出手段10(前記供給手段)が、「押圧ローラ20及び被着体WKの上下方向への相対移動により、接着シートASの繰出方向先端部AS1を押圧ローラ20で被着体WKの被着面に押圧して貼付する動作(前記第1貼付動作)」が行われた際に、接着シートAS(前記接着シート)の繰出方向(供給方向)における先端縁が「押圧ローラ20」が「被着体WK」の被着面に押し付けられる部分(前記シート押圧領域)内に収まるように回動モータ14A、31A(前記駆動機器)を停止させ、「押圧ローラ20及び被着体WKの上下方向への相対移動により、接着シートASの繰出方向先端部AS1を押圧ローラ20で被着体WKに押圧して貼付する動作」の前段で前記接着シートASを所定の位置に供給しておく貼付前供給動作を行うものであるといえる。
エ よって、相違点2は、実質的なものではない。
(3)以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明である。
7 請求人の意見書における主張について
令和6年3月14日に提出した意見書における請求人の主張については、以下のとおりである。
(1)ア 請求人は、「すなわち、引用発明では、押圧手段で被着体に接着シートの繰出方向先端部を貼付した際、当該接着シートの未貼付部に弛みが形成される傾向がある(引用文献1の段落0004、図1(B))という不具合に対し、被着体WKに接着シートASの繰出方向先端部AS1を押圧ローラ20で貼付した際に、弛み除去手段30が接着シートASを反繰出方向D2に移動させて、または押圧ローラ20および被着体WKを繰出方向D1に移動させて、弛みASSを除去するという解決手段が採用されている(同段落0015、0021、図1(B)(D))ものの、「貼付動作時の不具合」に係る着想については、記載も示唆も何もない。」(意見書1ページ下から20行目~下から13行目)と主張する。
また、請求人は、「そして、事項Bおよび事項Cについて、今般の拒絶理由で「引用発明が備えているといえる」とする理由付けこそ、本願が初めて開示した課題の着想そのものを出発点としているが、本願の出願前にはそのような着想がなかったために本願の図2に示すような不具合を発生するのであるから、当該理由付けは、本願発明を先に知った上での後付けである。」(意見書2ページ12~15行)と主張する。
しかしながら、上記「6 判断」は、上記6(3)のとおり、「本願発明は、引用発明である。」と判断するものであって、当該判断は、新規性についての判断であり、進歩性についての判断ではないから、引用文献1に、本願の課題の着想である、「貼付動作時の不具合」に係る着想について、記載も示唆も何もないことは、当該判断を左右するものではない。
よって、請求人の上記主張を採用することはできない。
イ 請求人は、「また、引用発明には、「先頭の接着シートASの繰出方向先端部AS1が剥離板13の剥離縁13Aで剥離され、当該繰出方向先端部AS1が押圧ローラ20の最下部に位置すると、回動モータ14A、31Aの駆動を停止する。」(段落0014)という動作説明がある。しかし、当該引用発明では、回動モータ14A、31Aを制御する制御機器のスキャンタイムや回動モータ14A、31Aの停止精度等によって、接着シートASの繰出方向先端部AS1の停止位置にばらつきが生じることにまでは着想が至っていない。そうすると、引用発明の動作説明では、押圧ローラ20の最下部に位置したことを受けて回動モータ14A、31Aの駆動を停止したとしても、接着シートASの繰出方向先端部AS1が必ずしも押圧ローラ20のシート押圧領域内に収まっているとは言えない。」(意見書1ページ下から12行目~下から4行目)と主張する。
しかしながら、仮に、引用発明において、「回動モータ14A、31Aを制御する制御機器のスキャンタイムや回動モータ14A、31Aの停止精度等によって、接着シートASの繰出方向先端部AS1の停止位置にばらつきが生じることにまでは着想が至っていない。」としても、上記6(2)で判断したとおりであるから、請求人の上記主張を採用することはできない。
ウ 請求人は、「このような引用発明において、押圧ローラ等の回転部材が変形可能な部材で構成されたとしても(段落0025)、それはせいぜい「被着体WKに接着シートASの繰出方向先端部AS1を押圧ローラ20で貼付した際に、押圧ローラ20の最下部から接着シートASの繰出方向先端部AS1を挟んで被着体WK上面までの距離に応じて無作為に押圧ローラ20が変形可能である」という客観事項を意味するだけであり、そこから本願発明の技術的な事項Bが一足飛びに見出されるとは考えにくい。そもそも当業者は、事項Cとする着想がない段階で事項Bの着想を得られるはずがなく、事項Bは事項Cとの関係において同時に着想していなければ技術的に意義がないから、今般の拒絶理由のように、両者の関係性を無視して事項Bおよび事項Cを各個ばらばらに論理付けすること自体妥当でない。」(意見書2ページ3~11行)と主張する。
しかしながら、上記6(1)では、相違点1は実質的なものではないと判断し、上記6(2)では、上記6(1)の判断を踏まえて、相違点2は実質的なものはないと判断しているから、上記6の判断は、相違点1(事項B)と相違点2(事項C)の関係性を無視して、相違点1(事項B)及び相違点2(事項C)を各個ばらばらに論理付けしたものではない。
よって、請求人の上記主張を採用することはできない。
8 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-005574