特許拒絶査定不服審判
2016-002325
データ処理装置、データ送信方法、コンピュータプログラム、及びデータサーバ
- 審判番号
- 2016-002325
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-115603外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年02月16日
- 審決日
- 2017年09月22日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】国立大学法人京都大学
- 【請求人代理人】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
- 【請求人】パテネット株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (H04L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第164条第3項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-115603「データ処理装置,データ送信方法,コンピュータプログラム,及びデータサーバ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月 5日出願公開,特開2017- 5412〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本願は,平成27年6月8日の出願であって,
平成27年7月6日付けで審査請求がなされ,平成27年8月31日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成27年11月5日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成27年11月19日付けで審査官により拒絶査定がなされ,これに対して平成28年2月16日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成28年3月1日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成28年5月10日付けで当審により拒絶理由が通知され,これに対して平成28年7月19日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされ,平成28年9月30日付けで当審により拒絶理由が通知され,これに対して平成28年12月5付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされ,平成29年3月29日付けで当審により拒絶理由が通知され,平成29年6月1日付けで意見書の提出がなされたものである。
第2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成28年12月5日付けの手続補正により補正された,特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものである。
「データを圧縮及び暗号化し他の装置に送信するデータ処理装置であって,
前記データを分割して,複数の分割データを生成するデータ分割部と,
前記複数の分割データそれぞれを可逆圧縮することにより複数の圧縮データを生成するデータ圧縮部と,
複数の乱数データを順次生成し,この複数の乱数データを用いて暗号化するアルゴリズムを用いて,前記複数の圧縮データを暗号化することにより複数の暗号データを生成するデータ暗号化部と,
前記複数の暗号データを前記他の装置に送信する送信制御部と,
を備え,
前記データ暗号化部は,
前記複数の乱数データを順次生成するごとに,前記複数の乱数データを用いた前記複数の圧縮データの暗号化を順次開始し,前記複数の暗号データそれぞれを生成する期間が,生成される順番が隣り合う暗号データ間において互いに重複するように,前記複数の暗号データを生成し,
前記複数の暗号データの内の最初に生成される暗号データを生成する期間の間に,最後に生成される暗号データを生成する期間が開始されるように,前記複数の暗号データを生成し,
前記送信制御部は,
前記複数の暗号データのそれぞれにおいて,生成される順番が隣り合って前後する暗号データ間で,前の暗号データの生成が終了すると後の暗号データの生成の終了を待たずに前記前の暗号データが前記他の装置に送信されるように,前記複数の暗号データの送信をし,
前記複数の乱数データは,当該複数の乱数データを生成する生成期間において生成され 生成される順番が隣り合って先後する2つの乱数データの生成期間の内,先に生成される乱数データの生成期間の終了直後に,後に生成される乱数データの生成期間が開始されることで,前記複数の乱数データを用いた前記複数の圧縮データの暗号化を順次開始する際における暗号化を開始する各タイミングが,前記複数の乱数データそれぞれの生成期間に対応して順次遅れている
データ処理装置。」
第3.引用刊行物に記載の事項
1.当審による平成29年3月29日付けの拒絶理由(以下,これを「当審拒絶理由」という)に引用刊行物1として引用された,本願の出願前に既に公知である,米国特許公開第2014/0317060号明細書(2014年10月23日公開)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。
A.「[0027] FIG.4 shows a diagram 400 illustrating the actions of multiple (e.g., three) chunk workers 310, 420, 435 processing a data file object 320 in parallel. The first worker 310, streams data from the data file object 320 to create a first chunk or segment 330. First worker 310 compresses, encrypts, and uploads 340 the chunk 330 to a backup server. At the same time, a second worker 420 streams data from the data file object 320 to create a second chunk 350. The second worker 420 compresses, encrypts, and uploads 360 the second chunk 350 to the backup server. At the same time, a third worker 435 streams data from the data file object 320 to create a third chunk 370. The third worker 435 compresses, encrypts, and uploads 380 the third chunk 370 to the backup server. Once each worker completes uploading their respective chunk, the worker proceeds to repeat the process for a new chunk of the data file object 320. For example, once the first worker 310 has completed uploading at 340, the first worker 310 streams data from the file object 320 to create a fourth chunk 450. The first worker 310 compresses, encrypts, and uploads 455 the fourth chunk 450. This process is repeated by each worker in parallel until the entire file object 320 is streamed, compressed, encrypted, and uploaded to the backup server. Uploading can be performed using the subject matter illustrated in FIG.1.」
(図4は,並列に,データ・ファイル・オブジェクト320を処理するための,多数の(例えば,3つ)チャンク・ワーカ310,420,435の動作を説明するための,図表400を示している。第1ワーカ310は,第1のチャンク,或いは,セグメント330を生成するため,データ・ファイル・オブジェクト320から,データが流れてくる。第1ワーカは,チャンク330を,圧縮し,暗号化し,バックアップサーバに,アップロード340する。同時に,第2ワーカ420は,第2のチャンク350を生成するため,データ・ファイル・オブジェクト320から,データが流れてくる。第2ワーカ420は,第2チャンク350を,圧縮し,暗号化し,バックアップサーバに,アップロード360する。同時に,第3ワーカ435は,第3のチャンク370を生成するため,データ・ファイル・オブジェクト320から,データが流れてくる。第3ワーカ435は,第3のチャンク370を,圧縮し,暗号化し,バックアップサーバに,アップロード380する。一度,それぞれのワーカが,それら,それぞれのチャンクを,アップロードすることを完了すると,ワーカは,データ・ファイル・オブジェクト320の,新しいチャンクのための処理を繰り返すことを続行する。例えば,一度,第1ワーカ310は,340で,アップロードすることを完了すると,第1ワーカ310は,第4のチャンク450を生成するため,データ・ファイル・オブジェクト320から,データが流れてくる。第1ワーカは,第4のチャンク450を,圧縮し,暗号化し,バックアップサーバに,アップロード455する。このプロセスは,全てのファイル・オブジェクト320が,流され,圧縮され,暗号化され,そして,バックアップサーバにアップロードされるまで,それぞれのワーカによって,並列に繰り返される。アップロードすることは,図1に説明されているアイデアを用いることで実行され得る。<当審にて訳出>)
2.当審拒絶理由に,引用刊行物2として引用された,本願の出願前に既に公知である,特表2009-516976号公報(公表日;平成21年4月23日)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。
B.「【0004】
一般に,ストリーム暗号は,入力ストリームを,生成された鍵ストリームと合成する。鍵ストリームは,特定の暗号鍵又は暗号鍵組に基づいて疑似乱数的に生成される。鍵ストリームの順次生成は一般に,データ・ブロックのブロック暗号化よりも複雑でない動作であるので,ストリーム暗号は,ブロック暗号よりもかなり高速であり,必要なハードウェア構成部分はかなり少なくなる。」
3.当審拒絶理由に,引用刊行物3として引用された,本願の出願前に既に公知である,特開2004-286788号公報(平成16年10月14日公開)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。
C.「【0054】
(発明の実施の形態)
以下で説明する本発明の実施形態においては,「wビットの数値表現による乱数」の列を生成するために,有限体上の非線型変換として,所定の写像h(・)と所定の整数q (0≦q≦2w-1)とを用いて
g(a,b) = 2b2 + h(a)b + q (mod 2w)
により定義される写像g(・,・)を用いる。
【0055】
写像h(・)としては,恒等写像
h(a) = a
を用いることができる。
【0056】
また,所定のマスク値MASKを利用することにより,与えられた値aの数値表現の所定のビットをクリアする演算
h(a) = a and MASK
や,所定のビットを反転する演算
h(a) = a xor MASK
を採用してもよい。
【0057】
さらに,最下位の2ビットを値01に変換する演算
h(a) = (a and (not 3)) or 1
などを採用することができる。」
D.「【0068】
ついで,初期化部103は,当該受け付けられたs1,s2,…,sn,…,smを,整数列x1,x2,…,xn,…,xmとして変換部104に与える(ステップS202)」,
E.「【0070】
さらに,変換部104は,当該与えられた整数列x1,x2,…,xn,…,xmのそれぞれに対して上記の非線型変換g(・,・)により定義される変換を施してwビットの整数の列y1,y2,…,yn,…,ymを得る(ステップS203)。」
F.「【0080】
ついで,回転部105は,当該y1,y2,…,yn,…,ymをwmビットのビット列と見て,これ,もしくは,これの一部に対して所定の回転演算を行って,得られたwmビットのビット列からwビットの整数の列z1,z2,…,zn,…,zmを得る(ステップS205)。」
G.「【0088】
所定の回数繰り返された場合(ステップS206;Yes)最後に得られたz1,z2,…,znを,乱数列r1,r2,…,rnとして出力して(ステップS207),乱数列の生成を終了する。」
H.「【0112】
(暗号化復号化装置)
上記の乱数生成装置を利用すれば,暗号化や復号化を実現することができる。図6は,このような暗号化や復号化を行う暗号化装置および復号化装置の概要構成を示す模式図である。
【0113】
暗号化装置601と,復号化装置651と,は,s1,…,sn,…,smを共通鍵とする。そして,それぞれが備える生成部602,652は,いずれも,同じ構成(計算手法)による乱数発生装置201を有し,この共通鍵s1,…,sn,…,smを入力として受け付ける。すると,同じ乱数r1,…,rnが出力されることとなる。
【0114】
この乱数を用いて,暗号化装置601においては,メッセージ受付部603が受け付けた伝送メッセージの整数列p1,p2,…,pi,…を,XOR部604が,p1 xor r1,p2 xor r2,…,pi xor r((i+n-1) mod n) + 1,…のように変換して,これを暗号化済メッセージの整数列e1,e2,…,ei,…として出力する。
【0115】
ここで,xorは上述したように排他的論理和演算を意味し,a mod nはaをnで割った余りを意味する。
【0116】
一方,復号化装置651のメッセージ受付部653は,暗号化済メッセージの整数列e1,e2,…,ei,…を受け付け,XOR部654がe1 xor r1,e2 xor r2,…,ei xor r((i+n-1) mod n) + 1,…のように変換して,これを復号化済メッセージの整数列f1,f2,…,fi,…として出力する。
【0117】
ここで,
fi=ei xor r((i+n-1)modn)+1
=(pi xor r((i+n-1)modn)+1) xor r((i+n-1)modn)+1
=pi
であるから,復号化済メッセージの整数列ともとの伝送メッセージの整数列とは同じものであり,暗号化ならびに復号化ができることが示された。
【0118】
なお,処理の対象となるメッセージの長さは,n以下とすることもできる。その場合には,上記の((i+n-1) mod n) + 1はiに置き換えることができる。このようにすれば,同じ乱数列を繰り返し利用するよりも,さらに秘匿性を高めることができる。
【0119】
上記のように,暗号化装置601と復号化装置651とは全く同じ構成であるので,1つの装置をある場合は暗号化装置601として,ある場合は復号化装置651として,それぞれ利用することができる。」
4.当審拒絶理由に,引用刊行物4として引用された,本願の出願前に既に公知である,国際公開第02/082715号(2002年10月17日公開)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。
I.「実施の形態 3 .
図25は,実施の形態 3の秘匿処理部の暗号化方式及び復号化方式を 示す図である。 図25の左側は送信側の暗号化装置を示している。図25の右側は受信側の複号化装置を示している。
図25が図15と異なる点は,データ秘匿用関数f8で作成した乱数列を一時記憶する乱数列記憶部(バッファ)を備えている点である。乱数列記憶部は,データ秘匿用関数f8で作成された乱数列を予め記憶しておくものである。即ち,データ秘匿用関数f8は,乱数列を生成するための情報が整い次第,乱数列の生成を開始し,乱数列記憶部に乱数列を出力する。 乱数列記憶部は,メッセージ(平文)が到着するまで乱数列を一時的に保存しておき,メッセージ(平文)の入力に同期させて記憶した乱数列を出力する。
一方,復号する場合には,データ秘匿用関数#8は,乱数列を生成するための情報が整い次第,乱数列の生成を開始し,乱数列記憶部に乱数列を出力する。乱数列記憶部は,メッセージ(平文)が到着するまで乱数列を一時的に保存しておき,暗号文の入力に同期させて乱数列記憶部に記憶した乱数列を出力する。
このように,図25の左側に示す暗号化装置の特徴は,データ秘匿用関数f8による乱数列の生成と,メッセージと乱数列の演算とを非同期に行うことを特徴とする。即ち,データ秘匿用関数f8は,平文と乱数列との演算より前に乱数列を生成し,乱数列記憶部に予め保存しておくことが特徴である。
また,図25の右側に示す複号化装置は,データ秘匿用関数f8による乱数列の生成と,暗号文と乱数列との演算とを非同期に行うことを特徴とする。即ち,データ秘匿用関数f8は,暗号文の入力より前に乱数 列の生成を開始して,生成した乱数列を乱数列記憶部に予め保存しておくことを特徴とする。
図25の暗号化装置と復号化装置は,例えば,ISO/IEC10116で定義されたブロック#号の利用モードの1つであるOFB(output feedback)モードの暗号化・復号化を行うものである。あるいは,その変形モードを用いる場合でもよい。あるいは,平文或いは暗号文なしで乱数列を生成できるモードを用いる場合であればよい。しかし,図25の暗号化装置と復号化装置は,平文或いは暗号文なしで先に乱数列を生成するものなので,平文或いは暗号文を入力して乱数列を生成するモードを用いることはできない。
なお,平文とは,暗号化するデータを意味し,必ずしも,人間が読み書きできるものに限らない。例えば,テキストデータ,文字データは平文である。また,音声データ,画像データ,符号化データ,圧縮データ等も暗号化されるデータであれば平文である。
また,暗号文とは,暗号化されたデータを意味する。テキストデータ,文字データ,音声データ,画像データ,符号化データ,圧縮データ等の暗号化される前の平文のデータ形式は問わない。」(29頁4行~30頁19行)
J.「図33は,暗号化部422の他の構成を示す図である。
図33は,複数のバッファを設けてスイツチSWにより切り替える場 合を示している。スイッチSWは,例えば,論理チャネル識別子により切り替えることができる。即ち,論理チャネルがn個ある場合に,バッファをn個設けることにより,各論理チャネル毎に乱数列を予め準備しておくことができる。
図34は,バッファをn個設け,排他的論理和演算回路をn個設けた場合を示している。
図35の場合は,バッファをn個設け,暗号器を複数個設けた場合を示している。
このように,論理チャネル毎にバッファ等を複数個準備しておくことにより,チャネル毎の秘匿処理を高速に行うことが可能になる。
なお,図示していないが,復号化部も図33,図34,図35のように,チャネル毎に複数のバッファ等を備えるようにしても構わない。また,更に,完全性認証子付加部432,完全性確認部433においても図33,図34,図35のように,チャネル毎に複数のバッファを設けるようにしても構わない。
実施の形態3における構成は,図27に示すものに限られるものではなく,例えば,図4,図5,図6,図7,図8,図10,図11等に示したような構成をとるようにしても構わない。例えば,図4に示したように,秘匿処理と完全性保証処理とを1つのモジュールで行っても構わない。また,暗号化と復号化とを1つのモジュールで行っても構わない。また,完全性認証付加と完全性確認とを1つのモジュールで行つても構わない。また,各モジュールを複数備えるようにしても構わない。なお,バッファ620,621,660,661は,先入れ先出しメモリでなくてもよく,シフトメモリ,アドレスマップッドメモリ,キャッシュメモリ,レジスタであってもよい。
また,バッファ620,621,660,661がCPU29からアクセスされる場合は,メモリアドレスによりアクセスされてもよいし,入出力アドレスによりアクセスされてもよい。
また,実施の形態3で説明した暗号化装置,復号化装置,完全性認証子付加部 装置),完全性確認部(装置),完全性認証子生成部(装置)は,無線通信装置に用いられるものに限らず,有線通信装置,コンピュータ,その他の電子機器にも用いることができる。」(41頁16行~42頁23行)
5.当審拒絶理由に,引用刊行物5として引用された,本願の出願前に既に公知である,特開2003-288012号公報(平成15年10月10日公開)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。
K.「【0102】こうすることで,回路を流用して,回路規模の増大を回避することができる。更に,演算回路122は,第1~第Lの暗号処理回路1231~123Lのうち,少なくとも2つの第k(1≦k≦L-1,kは整数)及び第(k+1)の暗号処理回路はパイプライン動作するようになっている。より具体的には,図18に示すように,所与の第1のタイミングにおいて,第kの暗号処理回路は,第nのデータブロックについて処理すると共に,第(k+1)の暗号処理回路は,第(n-1)のデータブロックについて処理し,第1のタイミングの次の第2のタイミングでは,第kの暗号処理回路は,第(n+1)のデータブロックについて処理すると共に,第(k+1)の暗号処理回路は,第1のタイミングにおける第kの暗号処理回路の処理結果を用いて処理する。
【0103】これにより,連続的にデータブロック単位で入力される入力データについて,SDESの暗号処理をより高速化することができる。
【0104】なお,図16においては暗号処理について説明したが,復号処理についても同様に実現することができる。」
L.「
」
6.本願の出願前に既に公知である,特開2010-232709号公報(平成22年10月14日,以下,これを「周知技術文献」という)には,関連する図面共に,次の事項が記載されている。
M.「【0078】
以上,第1の実施形態に係る暗号演算回路装置100および第2の実施形態に係る暗号演算回路装置200ではAESに代表されるブロック暗号アルゴリズムに適用した場合の例を示し,第3の実施形態に係る暗号演算回路装置300では公開鍵暗号アルゴリズムに適用した場合の例を示した。これらの実施形態以外にも,例えばストリーム暗号を用いる場合においても同様のパイプライン方式のレジスタ構成を取るハードウェア実装で暗号演算回路を実現する場合には本発明を適用することが可能である。」
第4.引用刊行物に記載の発明
1.上記Aの「FIG.4 shows a diagram 400 illustrating the actions of multiple (e.g., three) chunk workers 310, 420, 435 processing a data file object 320 in parallel(図4は,並列に,データ・ファイル・オブジェクト320を処理するための,多数の(例えば,3つ)チャンク・ワーカ310,420,435の動作を説明するための,図表400を示している)」という記載から,引用刊行物1には,
“複数のチャンク・ワーカを有するシステム”が記載されていることが読み取れる。
2.同じく,上記Aの「The first worker 310, streams data from the data file object 320 to create a first chunk or segment 330. First worker 310 compresses, encrypts, and uploads 340 the chunk 330 to a backup server. At the same time, a second worker 420 streams data from the data file object 320 to create a second chunk 350. The second worker 420 compresses, encrypts, and uploads 360 the second chunk 350 to the backup server. At the same time, a third worker 435 streams data from the data file object 320 to create a third chunk 370. The third worker 435 compresses, encrypts, and uploads 380 the third chunk 370 to the backup server(第1ワーカ310は,第1のチャンク,或いは,セグメント330を生成するため,データ・ファイル・オブジェクト320から,データが流れてくる。第1ワーカは,チャンク330を,圧縮し,暗号化し,バックアップサーバに,アップロード340する。同時に,第2ワーカ420は,第2のチャンク350を生成するため,データ・ファイル・オブジェクト320から,データが流れてくる。第2ワーカ420は,第2チャンク350を,圧縮し,暗号化し,バックアップサーバに,アップロード360する。同時に,第3ワーカ435は,第3のチャンク370を生成するため,データ・ファイル・オブジェクト320から,データが流れてくる。第3ワーカ435は,第3のチャンク370を,圧縮し,暗号化し,バックアップサーバに,アップロード380する。)」という記載,及び,同じく,上記Aの「 This process is repeated by each worker in parallel until the entire file object 320 is streamed, compressed, encrypted, and uploaded to the backup server(このプロセスは,全てのファイル・オブジェクト320が,流され,圧縮され,暗号化され,そして,バックアップサーバにアップロードされるまで,それぞれのワーカによって,並列に繰り返される)」という記載と,上記1において検討した事項から,「第1ワーカ」~「第3ワーカ」は,「チャンク・ワーカ」であるといえることから,引用刊行物1においては,
“複数のチャンク・ワーカのそれぞれは,並列に,データ・ファイル・オブジェクトから流れてくるデータからチャンクを生成し,前記チャンクを,それぞれ,圧縮し,暗号化して,バックアップサーバにアップロードする処理を行う”ものであることが読み取れる。
3.同じく,上記Aの「each worker completes uploading their respective chunk, the worker proceeds to repeat the process for a new chunk of the data file object 320(それぞれのワーカが,それら,それぞれのチャンクを,アップロードすることを完了すると,ワーカは,データ・ファイル・オブジェクト320の,新しいチャンクのための処理を繰り返すことを続行する)」という記載と,上記2.において検討した事項から,引用刊行物1においては,
“それぞれのチャンク・ワーカにおいて,1つのチャンクの生成,暗号化,アップロードが完了する毎に,新しいチャンクのための処理を繰り返すことを続行する”ものであることが読み取れ,当該“新しいチャンクのための処理を繰り返すことを続行する”ことは,“チャンクの処理が終了する毎に,データ・チャンク・オブジェクトからのデータが存在し続ける間は,続行される”ものであることは,明らかであるから,このことを踏まえると,引用刊行物1においては,
“それぞれのワーカで行われる処理は,1つのチャンクの生成,暗号化,アップロードが完了する毎に,新たなチャンクのための処理が繰り返し続行される”ことが読み取れる。
4.上記1.~3.において検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。
「複数のチャンク・ワーカを有し,
複数のチャンク・ワーカのそれぞれは,並列に,データ・ファイル・オブジェクトから流れてくるデータからチャンクを生成し,
前記チャンクを,それぞれ,圧縮し,暗号化して,バックアップサーバにアップロードする処理を行い,
それぞれの前記チャンク・ワーカで行われる前記処理は,1つのチャンクの生成,暗号化,アップロードが完了する毎に,新たなチャンクのための処理が繰り返し続行される,
システム。」
第5.本願発明と引用発明との対比
1.引用発明における「chunk(チャンク)」とは,「ヘッダーを持つ,ひとまとまりのデータ」という意味であるから,本願発明における「分割データ」に相当する。
2.引用発明における「チャンク・ワーカ」は,「データ・ファイル・オブジェクト」からの「データ」から,「チャンク」を生成しているのであるから,当該「チャンク・ワーカ」が,「チャンク生成機能」,或いは,「チャンク生成手段」を有していることは明らかであり,上記1.において検討した事項を踏まえると,引用発明における「チャンク生成機能」,或いは,「チャンク生成手段」が,本願発明における「データ分割部」に相当する。
3.引用発明における「チャンク・ワーカ」は,更に,生成した「チャンク」を「圧縮」するものであるから,当該「チャンク・ワーカ」が,「チャンク圧縮機能」,或いは,「チャンク圧縮手段」を有していることは明らかである。
そして,引用発明においては,「チャンク」は,元の「データ」を,「バックアップサーバ」に,バックアップするために生成されるものであるから,再度,元のデータに復元されることを前提としていることも明らかである。
そうすると,引用発明における「チャンク」の「圧縮」は,元に戻すことを前提としたものであるから,「可逆圧縮」である。
よって,引用発明における「チャンク圧縮機能」,或いは,「チャンク圧縮手段」が,本願発明における「データ圧縮部」に相当する。
4.引用発明における「チャンク・ワーカ」は,更に,「圧縮」された「チャンク」を「暗号化」するものであるから,当該「チャンク・ワーカ」が,「暗号化機能」,或いは,「暗号化手段」を有していることは明らかである。
したがって,引用発明における「暗号化機能」,或いは,「暗号化手段」と,
本願発明における「データ暗号化部」とは,
“圧縮データ暗号化手段”である点で共通する。
5.引用発明において,「チャンク・ワーカ」は,「暗号化」した「チャンク」を,「バックアップサーバ」に,「アップロード」しているので,当該「バックアップサーバ」に,「アップロード」するための「アップロード機能」,或いは,「アップロード手段」を有していることは明らかであり,当該「バックアップサーバ」に,当該「チャンク」を「アップロード」するということは,当該「バックアップサーバ」に,当該「チャンク」を送信することに他ならないので,引用発明における「チャンク・ワーカ」は,「チャンク」を送信するための,「送信機能」,或いは,「送信手段」を有するものであるといえる。
そうすると,引用発明における「送信機能」,或いは,「送信手段」が,本願発明における「送信制御部」に相当し,
引用発明における「チャンク・ワーカ」,及び,「バックアップサーバ」が,本願発明における「データ処理装置」,及び,「他の装置」に,それぞれ,相当する。
6.以上,上記1.~5.において検討した事項を踏まえると,
引用発明における「複数のチャンク・ワーカ」が,
本願発明における「データを圧縮及び暗号化し他の装置に送信するデータ処理装置」に相当し,
引用発明における「チャンク生成機能」,或いは,「チャンク生成手段」が,
本願発明における「データを分割して,複数の分割データを生成するデータ分割部」に相当し,
引用発明における「チャンク圧縮機能」,或いは,「チャンク圧縮手段」が,
本願発明における「複数の分割データそれぞれを可逆圧縮することにより複数の圧縮データを生成するデータ圧縮部」に相当し,
引用発明における「暗号化機能」,或いは,「暗号化手段」と,
本願発明における「複数の乱数データを順次生成し,この複数の乱数データを用いて暗号化するアルゴリズムを用いて,前記複数の圧縮データを暗号化することにより複数の暗号データを生成するデータ暗号化部」とは,
“圧縮データを暗号化して,複数の暗号データを生成する圧縮データ暗号化手段”である点で共通し,
引用発明における「送信機能」,或いは,「送信手段」が,
本願発明における「複数の暗号データを前記他の装置に送信する送信制御部」に相当する。
7.引用発明において,「チャンク・ワーカ」は,複数存在し,当該複数の「チャンク・ワーカ」が,並列の処理を行っている。
そうすると,例えば,2つの「チャンク・ワーカ」のそれぞれに,ほぼ同時に,「データ・ファイル・オブジェクト」から「データ」が流れてきた場合,一方の「チャンク・ワーカ」の「データ」に対する処理と,他方の「チャンク・ワーカ」の「データ」に対する処理とが,「互いに重複するように」行われていることは明らかであるから,
引用発明においても,“圧縮されたチャンクから,暗号化されたチャンクを生成するタイミングが,暗号化されるチャンク間で,重複するように,暗号化されたチャンクを生成する”ものであるといえる。
よって,引用発明において,“圧縮されたチャンクから,暗号化されたチャンクを生成するタイミングが,暗号化されるチャンク間で,重複するように,暗号化されたチャンクを生成する”ことと,
本願発明において,「前記複数の乱数データを順次生成するごとに,前記複数の乱数データを用いた前記複数の圧縮データの暗号化を順次開始し,前記複数の暗号データそれぞれを生成する期間が,生成される順番が隣り合う暗号データ間において互いに重複するように,前記複数の暗号データを生成」することとは,
“複数の暗号データを生成する期間が,生成される前記複数の暗号データ間において,互いに重複するように,前記複数の暗号データを生成する”ものである点で共通する。
8.上記7.において検討したとおり,引用発明においては,複数の「チャンク・ワーカ」は,並列に処理を行っているので,それぞれの「チャンク」の暗号化処理は,ほぼ同時に開始されるものである。
そうすると,それぞれの「チャンク」の暗号化処理に,若干のずれが生じるとしても, 引用発明においては,“最初に暗号化が開始されたチャンクの処理中に,他の全てのチャンクの処理が開始される”ものであることは明らかである。
よって,引用発明において,“最初に暗号化が開始されたチャンクの処理中に,他の全てのチャンクの処理が開始される”ことと,
本願発明において,「複数の暗号データの内の最初に生成される暗号データを生成する期間の間に,最後に生成される暗号データを生成する期間が開始されるように,前記複数の暗号データを生成」することとは,
“複数の暗号データの何れかの生成が開始されると当該暗号化データの生成期間内に,他の複数の暗号データの生成が開始される”ものである点で共通する。
9.上記7.,及び,8.において検討したとおり,引用発明において,複数の「チャンク・ワーカ」は,並列に処理を行っているので,各「チャンク・ワーカ」は,それぞれ,「チャンク」の暗号化が終了すれば,当該“暗号化されたチャンク”を,「バックアップサーバ」に,それぞれ,並列に「アップロード」するものである。
そうすると,引用発明においては,
“一のチャンク・ワーカは,チャンクの暗号化処理を終了すると,他のチャンク・ワーカの処理を待つことなく,並列に,暗号化されたチャンクを,バックアップサーバにアップロードする”
ものであることは,明らかであるから,上記5.において検討した事項を踏まえると,
引用発明において,“一のチャンク・ワーカは,チャンクの暗号化処理を終了すると,他のチャンク・ワーカの処理を待つことなく,並列に,暗号化されたチャンクを,バックアップサーバにアップロードする”ことと,
本願発明において,「前記送信制御部は,前記複数の暗号データのそれぞれにおいて,生成される順番が隣り合って前後する暗号データ間で,前の暗号データの生成が終了すると後の暗号データの生成の終了を待たずに前記前の暗号データが前記他の装置に送信されるように,前記複数の暗号データの送信をする」こととは,
“送信制御部は,複数の暗号データのそれぞれにおいて,一の暗号データの生成が終了すると,他の暗号データの生成の終了を待たずに,前記一の暗号データが,他の装置送信されるよう,前記複数の暗号データを送信する”ものである点で共通する。
10.以上,上記1.~9.において検討した事項から,本願発明と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。
[一致点]
データを圧縮及び暗号化し他の装置に送信するデータ処理装置であって,
前記データを分割して,複数の分割データを生成するデータ分割部と,
複数の分割データそれぞれを可逆圧縮することにより複数の圧縮データを生成するデータ圧縮部と,
前記圧縮データを暗号化して,複数の暗号データを生成する圧縮データ暗号化手段と,
前記複数の暗号データを前記他の装置に送信する送信制御部と,
を備え,
前記圧縮データ暗号化手段は,
前記複数の暗号データを生成する期間が,生成される前記複数の暗号データ間において,互いに重複するように,前記複数の暗号データを生成し,
前記複数の暗号データの何れかの生成が開始されると当該暗号化データの生成期間内に,他の複数の暗号データの生成が開始されるように,前記複数の暗号データを生成し,
前記送信制御部は,
複数の暗号データのそれぞれにおいて,一の暗号データの生成が終了すると,他の暗号データの生成の終了を待たずに,前記一の暗号データが,他の装置送信されるよう,前記複数の暗号データを送信する
データ処理装置。
[相違点1]
“圧縮データ暗号化手段”に関して,
本願発明においては,「複数の乱数データを順次生成し,この複数の乱数データを用いて暗号化するアルゴリズムを用いて,前記複数の圧縮データを暗号化することにより複数の暗号データを生成する」ものであるのに対して,
引用発明においては,具体的な暗号化手法に関しては,特に言及されていない点。
[相違点2]
“複数の暗号データを生成する期間が,生成される前記複数の暗号データ間において,互いに重複するように,前記複数の暗号データを生成”することに関して,
本願発明においては,「複数の乱数データを順次生成するごとに,前記複数の乱数データを用いた前記複数の圧縮データの暗号化を順次開始し,前記複数の暗号データそれぞれを生成する期間が,生成される順番が隣り合う暗号データ間において互いに重複するように,前記複数の暗号データを生成」するものであるのに対して,
引用発明においては,「複数の乱数データを用いた前記複数の圧縮データの暗号化を順次開始し,複数の暗号データそれぞれを生成する期間が,生成される順番が隣り合う暗号データ間において互いに重複するよう」にする点については,特に言及がない点。
[相違点3]
“他の複数の暗号データの生成が開始される”ことに関して,
本願発明においては,「複数の暗号データの内の最初に生成される暗号データを生成する期間の間に,最後に生成される暗号データを生成する期間が開始されるように,前記複数の暗号データを生成」するものであるのに対して,
引用発明においては,「最初に生成される暗号データ」,「最後に生成される暗号データ」といった,「暗号データ」の「生成」の順序については,特に言及されていない点。
[相違点4]
“一の暗号データの生成が終了すると,他の暗号データの生成の終了を待たずに,前記一の暗号データが,他の装置送信される”ことに関して,
本願発明においては,「生成される順番が隣り合って前後する暗号データ間で,前の暗号データの生成が終了すると後の暗号データの生成の終了を待たずに前記前の暗号データが前記他の装置に送信される」ものであるのに対して,
引用発明においては,「順番が隣り合って前後する暗号データ間」についての言及がない点。
[相違点5]
本願発明においては,「前記複数の乱数データは,当該複数の乱数データを生成する生成期間において生成され 生成される順番が隣り合って先後する2つの乱数データの生成期間の内,先に生成される乱数データの生成期間の終了直後に,後に生成される乱数データの生成期間が開始されることで,前記複数の乱数データを用いた前記複数の圧縮データの暗号化を順次開始する際における暗号化を開始する各タイミングが,前記複数の乱数データそれぞれの生成期間に対応して順次遅れている」ものであるのに対して,
引用発明においては,「タイミング」についての言及がない点。
第6.相違点についての当審の判断
1.[相違点1]について
「乱数データを順次生成し,この複数の乱数データを用いて暗号化するアルゴリズムを用いて,前記複数の圧縮データを暗号化する」ことに関して,
“乱数データを順次生成して,当該乱数データを用いて,平文の暗号化を行う”といった,“暗号アルゴリズム”は,上記Bに引用した引用刊行物2の記載内容,上記C~Hに引用した引用刊行物3の記載内容,及び,上記Iに引用した引用刊行物3の記載内容にもあるとおり,本願の出願時点では,周知の技術事項であり,引用刊行物4には,「圧縮データ等の暗号化される前の平文のデータ形式は問わない」との記載もあることから,
引用発明において,“暗号アルゴリズム”として,引用刊行物2~引用刊行物4に記載の何れかの手法を採用することは,当業者が適宜選択し得る事項である。
よって,[相違点1]は,格別のものではない。
2.[相違点2]について
暗号化の処理において,「生成する期間が,生成される順番が隣り合う暗号データ間において互いに重複するよう」行うことは,当該技術分野においては周知の技術事項に過ぎない(必要であれば,上記K,Lに引用した引用刊行物5の記載内容を参照されたい)。また,そのような処理を,引用刊行物3,及び,引用刊行物4に記載の暗号アルゴリズムだけでなく,引用刊行物2に記載の暗号アルゴリズムにおいても適用できることも,当業者には周知の技術事項である(必要であれば,上記Mに引用した周知技術文献の記載内容を参照されたい)。
したがって,引用発明においても,“隣り合うチャンクを,暗号化する際に,その処理が重なり合うように構成する”ことは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点2]は,格別のものではない。
3.[相違点3]について
上記2.においても言及した,上記Lに引用した引用刊行物5の【図18】にもあるように,データの処理に順番を設け,最初の順番のデータの処理中に,最後の順番のデータの処理を開始するようなことは,当業者にとって周知の技術事項である。
したがって,引用発明おいても,引用刊行物5に記載された処理手法を採用すれば,「最初に生成される暗号データを生成する期間内に,最後に生成される暗号データを生成する期間を開始する」ように設定することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点3]は,格別のものではない。
4.[相違点4]について
上記K,Lに引用した引用刊行物5に記載の発明において,一つのデータの処理が終了した場合に,当該データが出力可能であれば,他のデータの処理の終了を待たずに出力し得ることは,当業者に周知の技術事項である。
引用発明は,そもそも,複数の「チャンク・ワーカ」において,「チャンク」が処理される場合に,処理の終了した「チャンク」から,「バックアップサーバ」に,「アップロード」されるものであるから,引用発明において,引用刊行物5における処理手法を採用した場合に,“生成される順番が隣り合って前後するチャンク間で,前のチャンクの処理が終了すると後のチャンクの処理の終了を待たずに暗号化された前のチャンクを,バックアップサーバにアップロードする”よう構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点4]は,格別のものではない。
5.[相違点5]について
相違点5に係る本願発明における構成は,“パイプライン処理”の処理順序(タイミング)に関するものであって,当該“パイプライン処理”の処理順序(タイミング)自体は,当該技術分野においては,周知の技術事項であるから(必要であれば,上記K,Lに引用した引用刊行物5の記載内容,上記Mに引用した周知技術文献の記載内容を参照されたい),引用発明においても,「ワーカ」に,当該“パイプライン処理”の処理順序(タイミング)を導入することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,[相違点5]は,格別のものではない。
6.以上,上記1.~5.において検討したとおりであるから,[相違点1]~[相違点5]はいずれも格別のものではなく,そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。
(なお,審判請求人は,平成29年6月1日付けの意見書(以下,これを「意見書」という)において,当審拒絶理由について,本願発明と,引用発明との相違について,
「複数の「チャンク」を処理するだけの「チャンク・ワーカ」を用意すること」は,上記(i)-(iii)には該当しません。よって,「複数の「チャンク」を処理するだけの「チャンク・ワーカ」を用意すること」は,上記(iv)に該当します。
従いまして,引用刊行物1の引用発明において,複数の「チャンク」を処理するだけ「チャンク・ワーカ」を用意するように改変することはできず,「第1の「チャンク」を暗号化するタイミングで,最後の「チャンク」を暗号化することが可能である」ことに至ることもありません。」
「進歩性の判断において,引用刊行物1及び引用刊行物5を組み合わせたものに対して,引用刊行物6及び引用刊行物7に記載の技術を組み合わせることはできないと思料致します。」
「さらに,仮に,引用刊行物1の引用発明に引用刊行物5のパイプライン処理を組み合わせた場合,引用発明の「チャンク・ワーカ」は,データファイルオブジェクト320からデータをストリームし,「チャンク」を生成し,圧縮し,暗号化し,アップロードします。「チャンク・ワーカ」が行う処理に対してパイプライン処理を適用すれば,「データのストリーム」,「チャンクの生成」,「圧縮」,「暗号化」,及び「アップロード」の5種類の処理をパイプライン処理することとなります。
すると,引用刊行物1の引用発明にパイプライン処理を適用すれば,複数の「チャンク・ワーカ」は,「データのストリーム」の処理の期間ずつ各処理のタイミングがずれることとなります。
すると,パイプライン処理を適用した引用発明に,引用刊行物6及び引用刊行物7に記載の技術を組み合わせたとしても,本願発明が有する「生成される順番が隣り合って先後する2つの乱数データの生成期間の内,先に生成される乱数データの生成期間の終了直後に,後に生成される乱数データの生成期間が開始されることで,前記複数の乱数データを用いた前記複数の圧縮データの暗号化を順次開始する際における暗号化を開始する各タイミングが,前記複数の乱数データそれぞれの生成期間に対応して順次遅れている」という構成に到ることはあり得ません。」
「また,引用刊行物1には,上述しましたように,第1ワーカ310,第2ワーカ420,及び第3ワーカ435は,同時に,データファイルオブジェクト320からデータをストリームして,チャンク330,350,370を生成し,圧縮,暗号化してアップロードすることが記載されています。
このように,引用刊行物1の引用発明における複数の「チャンク・ワーカ」が同時に行う処理(データのストリーム,チャンクの生成,圧縮,暗号化,及びアップロード)に対して,複数の「チャンク・ワーカ」がタイミングをずらして前記処理を行うようにパイプライン処理を適用するには,何らかの示唆が必要と考えます。しかし,引用刊行物1には,そのような示唆はありません。
従いまして,引用刊行物1の引用発明の複数「チャンク・ワーカ」が同時に行う前記処理に対して,パイプライン処理を適用ことは,そもそもできないと考えます。」
等の主張を行っているが,パイプライン実装した処理を,並列実装に替えること,或いは,並列実装されているものを,パイプライン実装に替える点について,当該処理を行うシステムの構成に応じて,適宜変更可能であることは,当業者にとって,周知の技術事項であり,引用刊行物2~引用刊行物5は,周知技術を示すために引用したものであって,引用発明と,引用刊行物2~引用刊行物5に記載の周知技術と関係は,上記において示したとおりである。
そもそも,本願発明の元々の特徴は,特殊な乱数生成に関するものであったと理解しており,その構成を失った現状では,暗号処理における従来技術との格別の相違は見出せない。
よって,審判請求人の意見書における主張は,採用できない。)
第7.むすび
したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-002325