特許異議申立
2015-700038
炭化珪素半導体装置
- 審判番号
- 2015-700038
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-232666
- 登録番号
- 特許第5694119号(P5694119)
- 請求日
- 2015年09月29日
- 審決日
- 2017年06月27日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱電機株式会社
- 【権利者代理人】吉竹 英俊
- 【権利者代理人】有田 貴弘
- 【異議申立人】宮口 聡
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 匡明
- 審判官 飯田 清司
- 審判官 加藤 浩一
- 分類
- P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5694119号発明「炭化珪素半導体装置」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5694119号の明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。
特許第5694119号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
特許第5694119号の請求項1ないし11に係る特許についての出願は,平成23年10月24日(優先権主張 平成22年11月25日)に特許出願がなされ,平成27年2月13日にその特許権の設定登録がなされ,その後,その特許について,特許異議申立人宮口聡により特許異議の申立てがなされ,平成28年4月19日付けで取消理由の通知がなされ,同年6月20日付けで特許権者から意見書の提出及び訂正請求がなされ,その訂正の請求に対して特許異議申立人宮口聡から同年9月27日付けで意見書の提出がなされ,平成29年1月6日付けで特許権者に取消理由(決定の予告)の通知がなされ,同年3月10日付けで特許権者から意見書の提出及び訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)がなされ,当審から申立人に対し通知書を送付し期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,申立人からの意見書の提出はなかった。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のアないしオのとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に,
「前記ソース電極と前記層間絶縁膜との間,並びに前記ゲートパッドと前記ゲート電極との間のそれぞれに介在するバリアメタル層とを備えた炭化珪素半導体装置。」
と記載されているのを,
「前記ソース電極と前記層間絶縁膜との間,並びに前記ゲートパッドと前記ゲート電極との間のそれぞれに介在し,少なくともTiを含むバリアメタル層とを備え,周囲温度が125℃で前記ゲート電極と前記ソース電極との間に-20Vの電圧を印加し,試験時間が240時間のHTGBマイナス試験において,前記ゲート電極と前記ソース電極との間のしきい値電圧の初期値からの低下量が2V以内である炭化珪素半導体装置。」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2,3,5ないし9,11も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に,
「前記バリアメタル層は,少なくともTiを含む金属層である」
と記載されているのを,
「前記バリアメタル層は,前記ソース電極と前記層間絶縁膜との間において前記層間絶縁膜の上面から側面にかけて形成される」
に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3,5ないし9,11も同様に訂正する)。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に,
「前記半導体層上に配設されたp型ポリシリコンおよびn型ポリシリコンから成る温度センスダイオードと,前記p型ポリシリコンに接続するアノード電極と,前記n型ポリシリコンに接続するカソード電極とをさらに備え,前記バリアメタル層は,前記p型ポリシリコンと前記アノード電極との間ならびに前記n型ポリシリコンと前記カソード電極との間にも配設されている請求項1から請求項3のいずれか一項記載の炭化珪素半導体装置。」
と記載されているのを,
「炭化珪素半導体である半導体層上に配設されたゲート絶縁膜と前記ゲート絶縁膜上に配設されたゲート電極および前記半導体層の上部に形成された不純物領域であるソース領域を含む主トランジスタセルと,前記ゲート電極上を覆う層間絶縁膜と,前記ソース領域に接続すると共に前記層間絶縁膜上に延在するアルミニウムを含むソース電極と,前記ゲート電極に接続するゲートパッドと,前記ソース電極と前記層間絶縁膜との間,並びに前記ゲートパッドと前記ゲート電極との間のそれぞれに介在し,少なくともTiを含むバリアメタル層とを備え,前記半導体層上に配設されたp型ポリシリコンおよびn型ポリシリコンから成る温度センスダイオードと,前記p型ポリシリコンに接続するアノード電極と,前記n型ポリシリコンに接続するカソード電極とをさらに備え,前記バリアメタル層は,前記p型ポリシリコンと前記アノード電極との間ならびに前記n型ポリシリコンと前記カソード電極との間にも配設されている炭化珪素半導体装置。」
に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5ないし11も同様に訂正する)。
エ 訂正事項4
発明の詳細な説明の段落【0009】に,
「前記ソース電極と前記層間絶縁膜との間,並びに前記ゲートパッドと前記ゲート電極との間のそれぞれに介在し,アルミニウムの拡散を抑制するバリアメタル層とを備えるものである。」
と記載されているのを,
「前記ソース電極と前記層間絶縁膜との間,並びに前記ゲートパッドと前記ゲート電極との間のそれぞれに介在し,少なくともTiを含むバリアメタル層とを備え,周囲温度が125℃で前記ゲート電極と前記ソース電極の間に-20Vの電圧を印加し,試験時間が240時間のHTGBマイナス試験において,前記ゲート電極と前記ソース電極との間のしきい値電圧の初期値からの低下量が2V以内であるものである。」
に訂正する。
オ 訂正事項5
発明の詳細な説明の段落【0010】に,
「ソース電極と層間絶縁膜との間,並びにゲートパッドとゲート電極との間に,アルミニウムの拡散を抑制するバリアメタル層を介在させることにより,」
と記載されているのを,
「ソース電極と層間絶縁膜との間,並びにゲートパッドとゲート電極との間のそれぞれに介在し,少なくともTiを含むバリアメタル層を設け,周囲温度が125℃でゲート電極とソース電極の間に-20Vの電圧を印加し,試験時間が240時間のHTGBマイナス試験において,ゲート電極とソース電極の間のしきい値電圧の初期値からの低下量が2V以内とすることにより,」
に訂正する。
(2)訂正の目的の適否,特許請求の範囲の拡張・変更の存否,新規事項の有無,及び一群の請求項について
ア 訂正事項1について
訂正事項1は,請求項1の炭化珪素半導体装置について,「周囲温度が125℃で前記ゲート電極と前記ソース電極との間に-20Vの電圧を印加し,試験時間が240時間のHTGBマイナス試験において,前記ゲート電極と前記ソース電極との間のしきい値電圧の初期値からの低下量が2V以内である」ことをさらに特定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。また,上記特定された事項は,本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の段落【0017】及び【0018】に記載されているから,訂正事項1は新規事項の追加に該当しない。
イ 訂正事項2にいついて
訂正事項2は,請求項2の「バリアメタル層」について,「前記ソース電極と前記層間絶縁膜との間において前記層間絶縁膜の上面から側面にかけて形成され」た構成をさらに特定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。また,上記特定された事項は,本件特許明細書の段落【0015】及び図2(a)に記載されているから,訂正事項2は新規事項の追加に該当しない。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3は,請求項1を引用する請求項4を独立形式とし,引用しないものとすることを目的とするものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,また,新規事項の追加にも該当しない。
エ 訂正事項4について
訂正事項1に伴い,発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,また,新規事項の追加にも該当しない。
オ 訂正事項5について
訂正事項1に伴い,発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,また,新規事項の追加にも該当しない。
カ 一群の請求項について
本件訂正請求による訂正は,請求項1と,請求項1を直接あるいは間接に引用する全ての請求項である請求項2ないし11を対象とするものであるから,上記訂正事項1ないし5に係る各訂正は,一群の請求項ごとに請求されたものである。
(3)小括
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項第1号,第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第4項,及び,同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので,訂正後の請求項〔1-11〕について訂正を認める。
3 特許異議の申立てについて
(1)本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし11に係る発明(以下「本件特許発明1ないし本件特許発明11」という。)は,本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
炭化珪素半導体である半導体層上に配設されたゲート絶縁膜と前記ゲート絶縁膜上に配設されたゲート電極および前記半導体層の上部に形成された不純物領域であるソース領域を含む主トランジスタセルと,
前記ゲート電極上を覆う層間絶縁膜と,
前記ソース領域に接続すると共に前記層間絶縁膜上に延在するアルミニウムを含むソース電極と,
前記ゲート電極に接続するゲートパッドと,
前記ソース電極と前記層間絶縁膜との間,並びに前記ゲートパッドと前記ゲート電極との間のそれぞれに介在し,少なくともTiを含むバリアメタル層と
を備え,
周囲温度が125℃で前記ゲート電極と前記ソース電極との間に-20Vの電圧を印加し,試験時間が240時間のHTGBマイナス試験において,前記ゲート電極と前記ソース電極との間のしきい値電圧の初期値からの低下量が2V以内である
炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記バリアメタル層は,前記ソース電極と前記層間絶縁膜との間において前記層間絶縁膜の上面から側面にかけて形成される
請求項1記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記主トランジスタセルと共通のゲート電極および前記主トランジスタセルとは個別のアルミニウムを含むソース電極を有する電流センスセルをさらに備え,
前記バリアメタル層は,前記電流センスセルのソース電極と前記層間絶縁膜との間にも配設されている
請求項1または請求項2記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
炭化珪素半導体である半導体層上に配設されたゲート絶縁膜と前記ゲート絶縁膜上に配設されたゲート電極および前記半導体層の上部に形成された不純物領域であるソース領域を含む主トランジスタセルと,
前記ゲート電極上を覆う層間絶縁膜と,
前記ソース領域に接続すると共に前記層間絶縁膜上に延在するアルミニウムを含むソース電極と,
前記ゲート電極に接続するゲートパッドと,
前記ソース電極と前記層間絶縁膜との間,並びに前記ゲートパッドと前記ゲート電極との間のそれぞれに介在し,少なくともTiを含むバリアメタル層と
を備え,
前記半導体層上に配設されたp型ポリシリコンおよびn型ポリシリコンから成る温度センスダイオードと,
前記p型ポリシリコンに接続するアノード電極と,
前記n型ポリシリコンに接続するカソード電極とをさらに備え,
前記バリアメタル層は,前記p型ポリシリコンと前記アノード電極との間ならびに前記n型ポリシリコンと前記カソード電極との間にも配設されている
炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記バリアメタル層は,厚さ40nm以上のTi層である
請求項1から請求項4のいずれか一項記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記バリアメタル層は,厚さ90nm以上のTiN層である
請求項1から請求項4のいずれか一項記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記バリアメタル層は,厚さ130nm以上のTiSi層である
請求項1から請求項4のいずれか一項記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記バリアメタル層は,TiSi層およびTi層から成る二層構造である
請求項1から請求項4のいずれか一項記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記バリアメタル層は,TiN層およびTi層から成る二層構造である
請求項1から請求項4のいずれか一項記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
前記バリアメタル層は,TiSi層,TiN層,TiSi層とTi層との二層構造,およびTiN層とTi層との二層構造のいずれかである
請求項4記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項11】
前記ソース領域における前記ソース電極との接続部分に形成された,前記半導体層と金属との化合物層をさらに備える
請求項1から請求項10のいずれか一項記載の炭化珪素半導体装置。」
(2)取消理由の概要
平成29年1月6日付けで通知した取消理由(決定の予告)は,本件特許発明1,5及び11は,刊行物である甲1に記載された発明であるから,本件発明1,5及び11係る特許は,特許法第29条第1項の規定に違反して特許されたものであって取り消されるべきものである。
また,本件特許発明1,2,5ないし9及び11は,刊行物である甲1に記載された発明及び刊行物である甲2ないし甲4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許発明3は,刊行物である甲1に記載された発明及び刊行物である甲2ないし甲5の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許発明1ないし3,5ないし9及び11に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであって取り消されるべきものである。
甲1:ECSTransactions,Vol.6 No.2
pp.213-219(2007)
甲2:特開2001-237159号公報
甲3:特開平6-244287号公報
甲4:特開平3-3270号公報
甲5:特開2010-258328号公報
甲6:特開2003-68759号公報
(3)甲1ないし甲6の記載及び甲1発明について
ア 甲1の記載事項
甲1には,以下の記載がある。
(ア)「Actual ILD Penetration on 4H-SiC DMOS
Description and Analysis of Failure
Six vertically structured n+ polycrystalline Si(poly-Si) gate n-channel power MOSFETs(DMOS) fabricated on 4H-SiC were subjected to a storage life test at 500℃ in an Ar ambient. As shown in Fig.1,the devices incorporated a 2-μm-thick Al interconnect with a 50-nm-thick Ti bottom layer and a 1-μm-thick layered SG/PSG ILD grown by APCVD(2). The notations SG and PSG stand for undoped and phosphorusdoped silicate glass, respectively. 」(第213頁28行~35行)
(当審訳:「4H-SiC DMOS上の実際のILD挿入
故障の説明及び分析
4H-SiC で作成される六方晶構造n+多結晶Si(ポリSi)ゲートn-チャネルパワーMOSFET(DMOS)は,アルゴン雰囲気の500℃,保管寿命試験を受けた。図1に示すように,デバイスは,厚さ50ナノメートルのTi最下層と相互接続された厚さ2-μmのAlと,APCVD(2)によって成長した厚さ1-μmの積層されたSG/PSG ILDとが合体されている。SGとPSGの表記は,それぞれ,ドープされていないかリンでドープされていることを表す。」)
(イ)4H-SiC 上のDMOSデバイスの構造が記載された図1には,図1(a)に保管寿命試験前の上面写真,図1(b)に上面写真におけるA-A’の断面図,図1(c)に上面写真におけるB-B’の断面図,図1(d)に上面写真におけるC-C’の断面図が記載されている。
(ウ)図1(a)のDMOSデバイスの上面写真には,左側にDMOSデバイスの略3分の1の面積を占める「S」と記載された領域が形成され,右側にDMOSデバイスの略3分の1の面積を占める「G」と記載された領域が形成された構成が記載されている。
(エ)図1(c)の断面図には,中央部において,SiC 上に,Gate oxide(40nm),Poly-Si(350nm),ILD(1μm),Ti/Al(50/2000nm)がこの順に積層され,右側部において,SiC 上に,Gate oxide,Poly-Si,NiSix,Ti/Alがこの順に積層され,左側部において,SiC 上に,Field oxide,ILD,Ti/Alがこの順に積層され,Ti/Alは左側部と中央部は連続しているが,右側部は中央部から分離している構造が記載されている。
(オ)図1(d)の断面図には,中央部において,SiC 上に,n+領域,NiSix,Ti/Alがこの順に積層され,左側部において,SiC 上に,Field oxide,ILD,Ti/Alがこの順に積層され,左側部のTi/Alは,ILDを上面から右側面にかけて覆い,中央部のTi/Alに連続して形成されているが,右側部のTi/Alとは分離している構造が記載されている。
(カ)図1(b)の断面図には,SiC 上に,Poly-Si,ILD,Ti/Alがこの順に積層され,ILDの上面から側面にかけてTi/Alが形成された部分を「E」とした構造が記載され,図3(a)には,該「E」の部分として,ILDの上面とILDの側面がなす角は90度より大きいため,ILDの側面がILDの上面に対して垂直面ではなく傾斜面になており,Ti/AlがILDの上面からILDの該傾斜面となっている側面上に実際に積層されている走査電子顕微鏡写真が記載されている。
(キ)ここで,Ti/Alの接続について検討すると,図1(d)に記載された中央部のTi/Alは,NiSixを介してSiC上部に形成されたn+領域に接続され,図1(c)に記載された右側部のTi/Alは,NiSixを介してPoly-Siに接続され,図1(c)に記載されたILDはPoly-Siを上面から側面にかけて覆う構成が記載されている。
イ 甲1発明
上記アの記載事項から,甲1には,下記の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「SiC上にGate oxide,Poly-Siが順に形成され,また,前記SiC上部にn+領域が形成されたDMOSデバイスであって,
前記Poly-Si上面を覆うILDが形成され,
前記ILD上に形成されたTi/AlはNiSixを介して前記n+領域に接続され,
前記Poly-Si上に形成されたTi/AlはNiSixを介して前記Poly-Siに接続され,
前記ILD上に形成されたTi/Alと前記Poly-Si上に形成されたTi/Alとは,厚さ50nmのTi最下層と相互接続された厚さ2μmのAlからなり,両Ti/Alは分離している,
DMOSデバイス。」
ウ 甲2の記載事項
甲2には,以下の記載がある。
「【0003】配線金属層は,主にAlを主成分としたアルミ配線層が一般的である。アルミ配線層がトランジスタ素子を形成するSiと接続される部分では,下地にバリア層が必要である。このバリア層によりAlのスパイク現象やSiの析出防止ができる。また,配線金属層の最上面は反射防止膜を形成する必要がある。この反射防止膜によりリソグラフィ工程におけるハレーションの防止ができる。
【0004】前者のバリア層は,例えばTiN/Ti積層であり,後者の反射防止膜は,例えばTiN層である。このような積層構造の配線金属層をウェハ全面に形成しておき,長期間保管することになると,TiN層の応力の集積が進む。」
エ 甲3の記載事項
甲3には,以下の記載がある。
「【0030】バリアメタル層23Aは,アルミニウム合金層23B下に形成されている。バリアメタル層23Aを形成することで第1の接続孔24に,単結晶珪素の析出による接触抵抗値の増加が生じないようにすることができる。また,アルミニウム合金層23BとP型半導体基板21とのシリコンが相互拡散して第1の接続孔24部分にアルミスパイクが発生しないように作用している。バリアメタル層23Aは,スパッタ法で堆積したチタン層と反応性スパッタ法で堆積した窒化チタン層の二層で構成している。チタン層の厚さは10~40nm程度で,窒化チタン層の厚さは40~150nm程度である。」
オ 甲4の記載事項
甲4には,以下の記載がある。
「バリア性を改善して上記問題を解決する手段としてはチタン層31をチタンシリサイド(TiSi2)に置き換えて,チタンシリサイド(TiSi2)/チタンナイトライド(TiN)の積層膜をバリアメタル層として用いるものが知られている。」(第3頁左上欄14行~19行)
カ 周知技術
上記ウ及びオの記載事項から,下記の事項は周知技術であると認められる。
「半導体デバイスでは,配線金属としてアルミ配線が用いられるが,その際,Alのスパイク現象等を防止するために下地としてバリア層が必要であること,及びバリア層としてTiN/Ti積層が利用されること。」
キ 甲5の記載事項
甲5には,以下の記載がある。
(ア)「【0008】
SiCやGaNを用いたパワーMOSFETではMOSFETの移動度がシリコンと比較して低いために,さまざまな工夫をして,それを克服するような検討が重ねられている。
・・・中略・・・・
【0009】
ところが,これらの手段は,そのどの方法においても,上述で議論した負荷短絡耐量において大きな問題が発生する。すなわち,上記のどの手段においてもMOSFETの抵抗を小さくすることが,短絡電流値の増加を招くという点である。
・・・中略・・・
【0010】
このような状況を回避するためには,上述のように電流制限機能を備えることが必須となる。図11や図12はその一例である電流制限の保護機能付MOSFETの回路図である。すなわち,図11に示すように,主トランジスタ3とは別に主電流をモニタするセンストランジスタ4のソース側にセンス抵抗5を挿入する。
・・・中略・・・
【0015】
以下に添付図面を参照して,この発明にかかる半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。図1は,本発明にかかる半導体装置の構成の一例を示す断面図である。この実施例では主トランジスタがトレンチMOSFETの場合で,電流モニタする電流センスMOS36が主トランジスタ35と分離されて,同一半導体基板上に形成されている。」
(イ)図11には,主トランジスタ3のゲートとセンストランジスタ4のゲートを接続して,共通のゲート電圧が供給される回路図が記載されている。
(ウ)以上の記載から,甲5には以下の事項が記載されていると認められる。
「SiCを用いたパワーMOSFETでは,電流制限機能を備えることが必須であり,そのために,主トランジスタの主電流をモニタする電流センストランジスタを主トランジスタと同一半導体基板上に形成し,主トランジスタのゲートと電流センストランジスタのゲートに共通のゲート電圧を印加すること。」
ク 甲6の記載事項
甲6には,以下の記載がある。
「【0033】感温ダイオード8は,高不純物濃度のn型層28の上に形成された層間膜22の上において,多結晶シリコンからなるn型領域8aおよびp型領域8bを接合して形成されたものであり,複数(本実施例では2つ)設けられている。このn型層28は,ソース層16と同様に第1不純物領域14の上に形成されたものであるが,ソース層16とは電気的,空間的に分離されている。複数の感温ダイオード8は,Al配線26を介して,温度測定用端子G2からソース端子Sに向けて順方向に,直列に接続されている。」
(4)判断
ア 本件特許発明1と甲1発明の対比
(ア)甲1発明の「SiC」,「Gate oxide」,「Poly-Si」,「n+領域」,「ILD」は,本件特許発明4の「炭化珪素半導体である半導体層」,「ゲート絶縁膜」,「ゲート電極」,「半導体層の上部に形成された不純物領域であるソース領域」,「層間絶縁膜」に相当しており,甲1発明の「DMOSデバイス」は,SiC上に形成されたDMOSデバイスであるから,「炭化珪素半導体装置」と呼び得るものである。
(イ)上記(ア)の記載事項から,甲1発明は,「炭化珪素半導体である半導体層上に配設されたゲート絶縁膜と前記ゲート絶縁膜上に配設されたゲート電極および前記半導体層の上部に形成された不純物領域であるソース領域を含む主トランジスタセル」を含むものであることは明らかである。
(ウ)甲1発明の「ILD上に形成されたTi/Al」は,ソース領域である「n+領域」に接続され,アルミニウムを含むものであるから,本件特許発明1の「前記ソース領域に接続すると共に前記層間絶縁膜上に延在するアルミニウムを含むソース電極」に相当する。
(エ)甲1発明の「Poly-Si上に形成されたTi/Al」は,Poly-Siに接続されており,導電膜といえるものでもある。また,本件特許発明1の「ゲートパッド」も導電膜といえるものでもある。よって,本件発明1と甲1発明とは,「前記ゲート電極に接続する導電膜」を有している点で共通している。
(オ)以上の対応関係から,本件特許発明1と甲1発明とは,下記(カ)の点で一致し,下記(キ)ないし(ケ)の点で相違する。
(カ)一致点
「炭化珪素半導体である半導体層上に配設されたゲート絶縁膜と前記ゲート絶縁膜上に配設されたゲート電極および前記半導体層の上部に形成された不純物領域であるソース領域を含む主トランジスタセルと,
前記ゲート電極上を覆う層間絶縁膜と,
前記ソース領域に接続すると共に前記層間絶縁膜上に延在するアルミニウムを含むソース電極と,
前記ゲート電極に接続する導電膜と
を備えた炭化珪素半導体装置。」
(キ)相違点1
本件特許発明1は,「前記ゲート電極に接続するゲートパッド」を備えているのに対し,甲1発明は,Poly-Siに接続される「Poly-Si上に形成されたTi/Al」を備えている点。
(ク)相違点2
本件特許発明1は,「前記ソース電極と前記層間絶縁膜との間,並びに前記ゲートパッドと前記ゲート電極との間のそれぞれに介在し,少なくともTiを含むバリアメタル層」を備えているのに対し,甲1発明は,「ILD上に形成されたTi/Al」と「ILD」の間,「Poly-Si上に形成されたTi/Al」と「Poly-Si」の間にはバリアメタル層を備えていない点。
(ケ)相違点3
本件特許発明1は,「周囲温度が125℃で前記ゲート電極と前記ソース電極との間に-20Vの電圧を印加し,試験時間が240時間のHTGBマイナス試験において,前記ゲート電極と前記ソース電極との間のしきい値電圧の初期値からの低下量が2V以内である」のに対し,甲1発明はそのようものであるか定かではない点。
イ 本件特許発明1ないし3,5ないし9,11についての判断
(ア)本件特許発明1について
相違点3について検討する。
甲1発明の「ILD上に形成されたTi/Al」及び「Poly-Si上に形成されたTi/Al」は,「厚さ50nmのTi最下層と相互接続された厚さ2μmのAl」からなるものであるから,甲1発明の「ILD上に形成されたTi/Al」では,ILDとAlとの間に厚さ50nmの「Ti」の層が介在した積層構造であり,甲1発明の「Poly-Si上に形成されたTi/Al」では,Poly-SiとAlとの間に厚さ50nmの「Ti」の層が介在したものといえることから,甲1発明においても,ILDとAlとの間に介在することになる「Ti」及びPoly-SiとAlとの間に介在することになる「Ti」は,「アルミ(Al)の拡散を抑制するバリアメタル層」としての機能を有するものであると認められるところ,「HTGBマイナス試験」の実施後における「しきい値電圧」の変動については,甲1ないし甲6には,記載も示唆もされていない。
そうすると,相違点3は実質的な相違点であるから,本件特許発明1は,甲1に記載された発明ではない。
そして,甲1発明において,ILDとAlとの間,「Ti」及びPoly-SiとAlとの間に,「アルミ(Al)の拡散を抑制するバリアメタル層」を介在させていたとしても,甲1発明を「周囲温度が125℃で前記ゲート電極と前記ソース電極との間に-20Vの電圧を印加し,試験時間が240時間のHTGBマイナス試験において,前記ゲート電極と前記ソース電極との間のしきい値電圧の初期値からの低下量が2V以内である」構成とすることは,当業者であっても甲1発明,甲1ないし甲6に記載された事項に基いて容易に発明できたとはいえない。
(イ)本件特許発明1の構成を全て含む本件特許発明2,3,5ないし9,11について
本件特許発明5及び11は,本件特許発明1を更に減縮したものであるから,上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により,甲1に記載された発明ではなく,さらに,上記甲1発明,甲1ないし甲6に記載された事項に基いて当業者が容易になし得るものでもない。
また,本件特許発明2,3,6ないし9も,本件特許発明1を更に減縮したものであるから,上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により,上記甲1発明,甲1ないし甲6に記載された事項に基いて当業者が容易になし得るものではない。
ウ 本件特許発明4と甲1発明の対比
(ア)甲1発明の「SiC」,「Gate oxide」,「Poly-Si」,「n+領域」,「ILD」は,本件特許発明4の「炭化珪素半導体である半導体層」,「ゲート絶縁膜」,「ゲート電極」,「半導体層の上部に形成された不純物領域であるソース領域」,「層間絶縁膜」に相当しており,甲1発明の「DMOSデバイス」は,SiC上に形成されたDMOSデバイスであるから,「炭化珪素半導体装置」と呼び得るものである。
(イ)上記(ア)の記載事項から,甲1発明は,「炭化珪素半導体である半導体層上に配設されたゲート絶縁膜と前記ゲート絶縁膜上に配設されたゲート電極および前記半導体層の上部に形成された不純物領域であるソース領域を含む主トランジスタセル」を含むものであることは明らかである。
(ウ)甲1発明の「ILD上に形成されたTi/Al」は,ソース領域である「n+領域」に接続され,アルミニウムを含むものであるから,本件特許発明4の「前記ソース領域に接続すると共に前記層間絶縁膜上に延在するアルミニウムを含むソース電極」に相当する。
(エ)甲1発明の「Poly-Si上に形成されたTi/Al」は,Poly-Siに接続されており,導電膜といえるものでもある。また,本件特許発明4の「ゲートパッド」も導電膜といえるものでもある。よって,本件発明1と甲1発明とは,「前記ゲート電極に接続する導電膜」を有している点で共通している。
(オ)以上の対応関係から,本件特許発明4と甲1発明とは,下記(カ)の点で一致し,下記(キ)ないし(ケ)の点で相違する。
(カ)一致点
「炭化珪素半導体である半導体層上に配設されたゲート絶縁膜と前記ゲート絶縁膜上に配設されたゲート電極および前記半導体層の上部に形成された不純物領域であるソース領域を含む主トランジスタセルと,
前記ゲート電極上を覆う層間絶縁膜と,
前記ソース領域に接続すると共に前記層間絶縁膜上に延在するアルミニウムを含むソース電極と,
前記ゲート電極に接続する導電膜と
を備えた炭化珪素半導体装置。」
(キ)相違点4
本件特許発明4は,「前記ゲート電極に接続するゲートパッド」を備えているのに対し,甲1発明は,Poly-Siに接続される「Poly-Si上に形成されたTi/Al」を備えている点。
(ク)相違点5
本件特許発明4は,「前記ソース電極と前記層間絶縁膜との間,並びに前記ゲートパッドと前記ゲート電極との間のそれぞれに介在し,少なくともTiを含むバリアメタル層」を備えているのに対し,甲1発明は,「ILD上に形成されたTi/Al」と「ILD」の間,「Poly-Si上に形成されたTi/Al」と「Poly-Si」の間にはバリアメタル層を備えていない点。
(ケ)相違点6
本件特許発明4は,「前記半導体層上に配設されたp型ポリシリコンおよびn型ポリシリコンから成る温度センスダイオードと,前記p型ポリシリコンに接続するアノード電極と,前記n型ポリシリコンに接続するカソード電極とをさらに備え,前記バリアメタル層は,前記p型ポリシリコンと前記アノード電極との間ならびに前記n型ポリシリコンと前記カソード電極との間にも配設されている」のに対して,甲1発明はそのような構成を備えていない点。
エ 本件特許発明4ないし11についての判断
(ア)本件特許発明4について
相違点6について検討する。
パワー半導体デバイスにおいて,高温度による破壊から保護するために,FETが形成される同一基板上にn型領域8aとp型領域8bを接合した感温ダイオード8を形成し,Al配線で接続することは,甲6の段落【0033】に記載されている。
しかしながら,甲6には,温度ダイオードのp型領域8b上及びn型領域8a上にバリアメタル層を介してアノード電極及びカソード電極を形成することは,記載も示唆もされていない。また,上記相違点6に係る構成が,周知技術であるとも認められない。
そして,本件特許発明4は相違点6の構成により,本件特許明細書の段落【0060】に記載された,「温度センスダイオード120のp型ポリシリコン123とアノード電極121との接続部分,並びに,n型ポリシリコン124とカソード電極122との接続部分に,バリアメタル層9を介在させることにより,それらの接続部分における電気的コンタクトが改善される。その結果,温度センスダイオード120の温度特性が安定し,精度よくMOSFETチップ100の温度を検出でき,MOSFETの動作の安定化に寄与できる。」という格別の作用効果を奏するものである。
したがって,本件特許発明4は,甲1発明,甲1ないし甲6に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)本件特許発明4の構成を全て含む本件特許発明5ないし11について
本件特許発明5ないし11は,本件特許発明4を更に減縮したものであるから,上記本件特許発明4についての判断と同様の理由により,上記甲1発明,甲1ないし甲6に記載された事項に基いて当業者が容易になし得るものでもない。
オ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
異議申立人の平成28年9月28日を受付日とする意見書では,取消理由通知に通知していない異議申立書の証拠方法に提示した「甲第5号証」(特開2010-244977号公報)に,取消理由通知に通知した甲6の感温ダイオードを組み合わせた場合に,「ポリシリコンとアルミ電極との間にもバリア導体層が形成されるのが自然であり,本願発明の構成要件M:前記バリアメタル層は,前記p型ポリシリコンと前記アノード電極との間ならびに前記n型ポリシリコンと前記カソード電極との間にも配設することは容易想到できる」と主張している。
しかしながら,トランジスタでは層間絶縁膜を貫通してAlスパイクによる短絡防止のためにバリアメタル層が形成されているところ,ダイオードでは,例えばp型ポリシリコンとアノード電極との間には層間絶縁膜は存在しておらず,トランジスタにおいて必要とされるバリアメタル層がダイオードにおいても必要であるとは認められない。また,甲6には「前記バリアメタル層は,前記p型ポリシリコンと前記アノード電極との間ならびに前記n型ポリシリコンと前記カソード電極との間にも配設」することは開示も示唆もされていない。同様に,甲1ないし甲5,異議申立人が証拠方法として提示した「甲第4号証」(国際公開第2010/110246号パンフレット)及び「甲第5号証」(特開2010-244977号公報)にも,相違点6に係る構成は記載も示唆もされておらず,相違点6に係る構成が,周知技術であるとも認められない。
そして,本件特許発明4は,相違点6の構成により上記(ア)に記載した格別な作用効果を奏するものであり,この効果は,甲1発明,甲1ないし甲6,異議申立人が証拠方法として提示した「甲第4号証」及び「甲第5号証」に記載された事項から予測し得るものではないので,異議申立人の上記主張を採用することはできない。
なお,上記意見書の参考資料3(特開2010-129707号公報)に基づく異議申立人の主張は,申立理由の要旨を変更するものであるから,これについても採用することはできない。
カ 小括
以上のとおり,本件特許発明1ないし11は,甲1発明,甲1ないし甲6に記載された事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
5 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件請求項1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2015-700038