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特許拒絶査定不服審判

2015-006723

磁気抵抗磁界センサー

審判番号
2015-006723
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-101197外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2015年04月09日
審決日
2016年10月25日
公報発行日
2017年04月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-101197「磁気抵抗磁界センサー」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月22日出願公開、特開2013-165295〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 1 手続の経緯 本願は、平成16年3月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年3月14日、フランス、2003年9月16日、フランス)を国際出願日とする特願2006-505711号(以下「原出願」という。)の一部を平成23年3月30日の新たな特許出願とした特願2011-76732号の一部を平成25年5月13日に新たに特許出願したものであって、平成25年5月13日付けで審査請求がなされるとともに上申書の提出がなされ、平成26年3月28日付けで拒絶理由の通知がなされ、同年9月8日付けで意見書及び手続補正書の提出がなされ、同年12月2日付けで拒絶査定がなされた。これに対して平成27年4月9日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書の提出がなされ、同年4月16日付けで手続補正書の提出がなされたものである。 2 補正の適否について 平成27年4月9日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項2ないし7を削除するものである。 そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当し、また、同法第17条の2第3項及び第4項それぞれの規定に適合するものである。 3 本願発明 上記2のとおり、本件補正は、請求項の削除を目的とするものであり、本件補正の前後で特許請求の範囲の請求項1の内容に変更はないから、本願の請求項1に係る発明は、原査定の理由により拒絶すべきものであるか否かについて検討する。 そして、本願の請求項1に係る発明は、平成27年4月9日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。 「磁界の強度を計測するための磁気抵抗磁界センサーであって、 前記磁気抵抗磁界センサーは、基板(7)、および基準要素(2)と分離要素(3)と磁界感知要素(4)とをこの順序で積層して形成された積層体(1)を備え、前記基準要素(2)および前記感知要素(4)は、それぞれ、第1方向および第2方向において第1磁気異方性(5)および第2磁気異方性(6)を有し、前記感知要素(4)は第1強磁性材料層(FM1)と第1反強磁性材料層(AF1)とを積層して形成された重畳体を備え、前記基準要素(2)は第2強磁性材料層(FM2)と第2反強磁性材料層(AF2)とを積層して形成された重畳体を備え、前記両重畳体は、測定すべき磁界の方向に向いた成分が測定すべき磁界の強度に対して可逆的に変化すると共に調整可能磁界範囲において直線的に変化する磁気モーメントを得るように構成され、 前記積層体(1)は、前記感知要素(4)の磁化方向(10)が前記基準要素(2)の磁化方向に対して変化し、かつ計測すべき磁界の強度に関連して前記積層体(1)の電気抵抗の変化を誘起するように、計測すべき磁界の影響下にあり、 前記分離要素(3)は電気絶縁材料層(S)を備え、 前記磁気抵抗磁界センサーの全体感度(S)を電気的な感度(Se)と磁気的な感度(Sm)とに分解したとき、前記磁気抵抗磁界センサーの全体感度(S)は、S=Se×Smで表され、Seは前記電気絶縁材料層(S)の厚みに依存し、Smは前記第1強磁性材料層(FM1)の厚みに依存し、 前記磁気抵抗磁界センサーの電気的な感度(Se)はSe=(Rp-RAP)/2で表され、前記磁気抵抗磁界センサーの磁気的な感度(Sm)はSm=1/Hexで表され、ここで、RPとRAPは、それぞれ前記基準要素(2)と前記感知要素(4)の磁化の平行整列および反平行整列した時の電気抵抗であり、Hexは前記感知要素(4)における有効交換磁界である、磁気抵抗磁界センサー。」 4 引用文献 (1)引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である、特表2003-502876号公報(以下、「引用文献1」という。)には、下記の事項が記載されている。 A 「【0002】 【発明の背景】 磁気デバイスは当該技術分野において周知である。巨大磁気抵抗(GMR)デバイス及びスピントンネル磁気抵抗(TMR)デバイスなどのスピンバルブ構造体が最近詳細に研究され、莫大な発表件数の首題であった。GMRデバイス及びTMRデバイスは、1つの非磁性材料分離層によって分離された2つの強磁性層を含む基礎構成スタック(積み重ね体)として構成される。一連のこの種構成体は磁気デバイスの基礎GMRスタック又は基礎TMRスタック、或いは、GMR構造体またはTMR構造体と称する。この種の構造は磁気抵抗特性を備え、GMR効果またはTMR効果を現す。分離層は、GMRデバイスでは非強磁性金属層であり、TMRデバイスでは非金属層、好ましくは非金属絶縁層である。分離層上には、2つの強磁性層の間の磁気結合体が在る。TMRデバイスの絶縁層では、2つの強磁性層の間における電子の量子力学的トンネル作用発生確率が大きい。2つの強磁性層のうちの一方はいわゆるフリー(自由)層であり、もう一方はいわゆるピン止め(された)又はハード(固定)層である。フリー層は、ピン止め層の磁化方向を変えるために必要な磁界強度よりも小さい、好ましくは実質的にかなり小さい磁界強度を持つ磁界を印加することによってその磁化方向が変更可能な層である。従って、ピン止め層の磁化方向は、どちらかと言えば固定していることが好ましいが、自由層の磁化方向は印加された外部磁界の下で全く容易に変更可能である。 【0003】 ハード層は、ハード磁気材料または反強磁性(AF)層に対するバイアスを交換することによってピン止めされた比較的ソフトな磁気材料で構成され得るか、又は、 適切な中間非磁気結合層によって反平行方向に結合された複数の磁性層によって構成される人工反強磁性体(AAF)で構成され得る。AAFは、更に堅固になり、かつAAFの単一評価磁化方向を画定するように、AF層によってバイアス可能である。」 B 「【0018】 本発明の第1の態様における磁気特性の感知システムが開示される。前記システムは平衡構成された1組の磁気デバイスを含み、前記デバイスの各々は、実質的にそれらの間に非磁性材料による少なくとも1つの分離層を備えた少なくとも第1の強磁性層と第2の強磁性層を含む層構造体であり、前記構造体は少なくとも磁気抵抗効果をを発揮し、ここに前記デバイスの少なくとも1つの第1の強磁性層の磁化方向は、約35kA/m以上の値の外部磁界内において不可逆である。外部磁界の値も約40又は50又は60kA/m以上であり得る。外部の磁界も、約35kA/mから約2MA/mまでの範囲、又は、約200MA/mの値さえ持つことがあり得る。第1の強磁性層は固定(ピン止め)されている、即ち、ハードな強磁性層であることが好ましい。 【0019】 本発明にかかる感知システムのデバイスにおける強磁性層は幾つかの層で構成可能であり、他の中間層が層のスタック(積重ね)内に存在しても差し支えない。本発明の実施形態において、感知システムにおける少なくとも1つのデバイスは人工反強磁性(AAF)構造を有する。AAFは、外部磁界の無い状態において強磁性層が逆平行配向に帰着する交換結合を有する交代強磁性および非磁性層を含む磁気多層構造である。この種の結果は、材料およびAAF多層スタック(積重ね)の層の厚さを適切に選定することによって達成可能である。AAFの強磁性層の各々は、他の強磁性材料のサブシステムによって構成されても差し支えない。また、感知システムは、交換バイアスされたAAF磁性多層構造を含むこともあり得る。交換バイアスされたAAFは、IrMn、FeMn、NiMn、PtMn、または、NiOタイプ材料の交換バイアス層を含むことが可能であり、前記交換バイアス層はAAF構造体に隣接または接触する。」 C 「【0037】 外部磁界内において磁気デバイスの磁化方向が不可逆であるという用語は、外部界磁の影響の下で磁化方向は変更可能であるが、一旦外部界磁が消去(スイッチオフ)されると、磁化方向は、実質的に外部界磁が印加される以前の元の位置に戻ることを意味する。また、外部界磁に曝された状態の下において、磁化方向は実質的に不変の状態を維持することも可能である。従って、磁化方向の変更可能性は可逆的である。室温において当該デバイスを評価している状態において、1分間または数分間程度の評価期間に亙り、この不可逆特性は明白である。」 D 「【0049】 ・・・中略・・・ 図5は、本発明に従って使用可能な磁気抵抗センサデバイスの一部の構造を示す。図5における矢印MFはフリー強磁性層Fの異方軸の方向を表し、矢印MPは固定(ピン止め)された強磁性層Pの磁化方向を表す。層FとPは非強磁性層Lによって分離されている。エレメントは基板S上に装備される。矢印56は、第2層Pの磁化方向に平行な測定されるべき磁界Hの成分を表す。磁気抵抗デバイス41、42、43、44において、層Fの感応強磁性材料の容易に磁化される方向は、強磁性層Pの磁化方向に実質的に垂直に伸延する。センサデバイスの製造に際して、強磁性層(F及びP)の磁化方向は、ブリッジの2つの隣接(結線図)ブランチにおける2つのエレメントは、外部磁界に対して反対に感度を持つように設定される。層は、例えばスパッタ堆積、MBE(分子線エピタキシ)、又は、イオンビーム堆積など様々な既知の方法によって堆積可能である。堆積に際して、当該層の磁気方向を決定する磁界が印加される。更に、各磁気抵抗センサエレメントにおいて、強磁性層Fの磁化は、もう一方の強磁性層Pの磁化方向に実質的に垂直であるように調節される。これらのステップの結果として、小さい磁界測定のために一切の補助磁界を必要としないこと、センサは実質的にヒステリシスを持たないこと、及び、センサの直線性が強化されることが達成される。」 E 図5には、基板Sの上に、フリー強磁性層F、非強磁性層からなる分離層L、固定(ピン止め)された強磁性層Pの順に各層が積層された構成が記載されている。 F ここで、上記引用文献1の記載事項について検討する。 ア 磁気抵抗センサデバイスの積層構成 上記Eから、磁気抵抗センサデバイスは、基板Sの上に、フリー強磁性層F、非強磁性層からなる分離層L、固定(ピン止め)された強磁性層Pの順に各層が積層された構成であることが、引用文献1の図5に記載されている。 イ フリー強磁性層Fと固定(ピン止め)された強磁性層Pの磁化方向 上記Cには、「強磁性層Fの磁化は、もう一方の強磁性層Pの磁化方向に実質的に垂直であるように調節される」ことが記載されているので、引用文献1には、フリー強磁性層Fの磁化方向と固定(ピン止め)された強磁性層Pの磁化方向とは垂直であることが記載されている。 G 引用発明 よって、引用文献1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「基板Sの上に、フリー強磁性層F、非強磁性層からなる分離層L、固定(ピン止め)された強磁性層Pの順に各層が積層された磁気抵抗センサデバイスであって、 前記フリー強磁性層Fの磁化方向と前記固定(ピン止め)された強磁性層Pの磁化方向とは垂直である磁気抵抗センサデバイス。」 (2)引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平11-214767号公報(以下、「引用文献2」という。)には、下記の事項が記載されている。 H 「【0007】 【発明が解決しようとする課題】ところで、スピンバルブ膜を磁気ヘッドに応用する場合は、再生信号の線形性を確保するため、自由層と固定層の磁化方向を90度(直交)に設定している。この場合、記録媒体からの信号磁界の方向に対して、自由層の磁化方向は垂直に、固定層の磁化方向は水平に向になる。」 I 「【0015】 【発明の実施の形態】以下、この発明に係わる磁気抵抗効果素子及びその製造方法を、スピンバルブ型MRヘッドに適用した場合の一実施形態について説明する。 【0016】図1は、この実施形態のスピンバルブ型MRヘッドに用いられるスピンバルブ膜の構成を示す概略断面図である。なお、この膜をスピンバルブ型MRヘッドとして構成した場合には、このスピンバルブ膜に電流を流すための一対の電極などが配置される。 【0017】図1に示すスピンバルブ膜の成膜にはスパッタ法を用い、成膜中に基板面内方向に磁界を印加しながら、図示しないガラス基板上に順次膜を形成した。その構成は、下地膜21としてCu、第1の反強磁性膜22としてFeMn(50-50at%)、第1の強磁性膜(自由層)23としてNiFe(82-18at%)、非磁性中間層24としてCu、第2の強磁性膜(固定層)25としてNiFe(82-18at%)、第2の反強磁性膜26としてIrMn(22-78at%)、保護膜27としてTaを用いた(図中、カッコ内に物質名を示す)。」 J よって、引用文献2には、下記の事項が記載されていると認められる。 「第1の反強磁性膜と第1の強磁性膜(自由層)を積層し、第2の強磁性膜(固定層)25と第2の反強磁性膜を積層し、再生信号の線形性を確保するため、自由層と固定層の磁化方向を90度(直交)に設定した磁気抵抗効果素子。」 (3)引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2003-67904号公報(以下、「引用文献3」という。)には、下記の事項が記載されている。 K 「【0013】さらに、上記第一の反強磁性層により上記第一の強磁性層に付与される一方向磁気異方性の向きと、上記第二の反強磁性層により上記第二の強磁性層に付与される一方向磁気異方性の向きあるいは上記第三の反強磁性層により上記フラックスガイドに付与される一方向磁気異方性の向きが、大略直交しており、かつ、上記第一の反強磁性層と上記第二の反強磁性層と上記第三の反強磁性層において一方向磁気異方性が消失する温度(ブロッキング温度)をそれぞれTB1、TB2、TB3とした場合、TB1>TB2=TB3であるようにした。」 L 「【0018】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1に、本発明の実施の形態の第一例である、磁気抵抗効果型磁気ヘッドの断面図を示す。ヘッド作製手順の概略を以下に説明する。基板100に、下部シールド110と下部ギャップ120を形成した後、磁気抵抗効果膜130を成膜し、フォトリソグラフィとイオンミリングを用いて所望の形状にパターニングする。次に、磁気抵抗効果膜130の両端部にリフトオフ法を用いて硬磁性膜140と電極150を形成する。更に、上部ギャップ160と上部シールド170を形成する。磁気抵抗効果膜130の詳細な膜構成は、下地層131/第一の反強磁性層132/第一の強磁性層133/非磁性導電層134/第二の強磁性層135/第二の反強磁性層136/保護層137である。第一の強磁性層133はいわゆる固定層に、第二の強磁性層135は自由層に相当する。また、第一の反強磁性層132は、第一の強磁性層133(固定層)の磁化方向を一方向に固着させるのに用いている。一方、第二の反強磁性層136は、第二の強磁性層135(自由層)に比較的小さな縦バイアス磁界を印加しているに過ぎず、第二の強磁性層135の磁化方向は、外部磁界によって容易に回転する。」 M 「【0028】・・・中略・・・ 強磁性層には、再生出力に大きく作用する磁気抵抗効果膜の抵抗変化率が大きくなるよう、フェルミエネルギーにおけるスピン分極率が高いFe、Co、Niを主成分とする材料を用いる。この組成や膜厚については、抵抗変化率の他に、低磁歪、低保磁力、反強磁性層から付与される大きな結合磁界、再生波形の対称性を確保する為に適宜調整することが望ましい。」 N よって、引用文献3には、下記の事項が記載されていると認められる。 「第一の反強磁性層と第一の強磁性層を積層し、第二の強磁性層と第二の反強磁性層を積層して、第一の反強磁性層により第一の強磁性層に付与される一方向磁気異方性の向きと第二の反強磁性層により第二の強磁性層に付与される一方向磁気異方性の向きを大略直交させ、強磁性層の組成や膜厚を適宜調整して抵抗変化率や結合磁界等を調整する磁気抵抗効果膜。」 (4)引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平11-134620号公報(以下、「引用文献4」という。)には、下記の事項が記載されている。 O 「【0014】固定層の異方性方向を回転させず所期の方向に向けたまま、フリー磁性層の異方性方向をそれと直交させるためには、固定層の熱処理温度よりも50℃以下の温度でフリー磁性層の異方性を回転させる必要がある。フリー磁性層のブロッキング温度TB1を固定層の磁界中熱処理よりも50℃低くすることで、磁界をトラック幅方向に印可し、反強磁性層のブロッキング温度TB1の直上で熱処理する工程により、固定層の異方性方向を所期の方向に向けたまま、フリー磁性層の異方性方向をそれと直交させることができる。」 P 「【0016】また、この反強磁性層の発生する交換結合磁界をHex1は、フリー磁性層の誘導磁気異方性よりも十分大きい必要があるため、Hex1>20Oeが望ましい。 【0017】交換結合磁界の大きさは磁界センサの感度を決めるため、その制御が重要になる。反強磁性層と強磁性層間に薄い非磁性金属からなる界面制御層を積層することで、交換結合磁界は容易に制御できる。そこで本発明では、順に積層された第一の反強磁性層、界面制御層、フリー磁性層、トンネルバリア層、固定磁性層、第二の反強磁性層を有し、前記フリー磁性層が前記界面制御層を介して全面で前記第一の反強磁性層と密着しており、前記第一の反強磁性層の交換結合磁界により前記フリー磁性層の磁気異方性がトラック幅方向に向き、前記第二の反強磁性層の交換結合磁界により固定磁性層の磁気異方性がMR高さ方向に向くことを特徴とする。」 Q 「【0020】 【発明の実施の形態】本発明の第一の実施形態を図1に示す。この強磁性トンネル接合素子センサは、基板11上に形成された下電極12、下地層13の上に、適当な大きさ形状にパターン化された第1の反強磁性層14、フリー磁性層15を積層し、トンネルバリア層16、固定磁性層17、第2の反強磁性層18が積層された構造である。第2の反強磁性層の上には上電極19が設けられている。」 R よって、引用文献4には、下記の事項が記載されていると認められる。 「第1の反強磁性層とフリー磁性層を積層し、固定磁性層と第2の反強磁性層を積層して、フリー磁性層の異方性方向を固定層の異方性方向と直交させ、反強磁性層の発生する交換結合磁界を制御して磁界センサの感度を決める強磁性トンネル接合素子センサ。」 5 対比 (1)本願発明と引用発明との対応関係について ア 引用発明の磁気抵抗センサデバイスの「フリー強磁性層F、非強磁性層からなる分離層L、固定(ピン止め)された強磁性層P」からなる構造体は、引用文献1によれば上記Bから「前記構造体は少なくとも磁気抵抗効果」を発揮するものであるところ、磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗センサデバイスでは、「フリー強磁性層」は外部からの磁界を感知するために利用されるものである。 よって、引用発明の「フリー強磁性層F」は、下記の相違点を除いて本願発明の「磁界感知要素(4)」の「第1強磁性材料層(FM1)」に相当し、引用発明の「非強磁性層からなる分離層L」は、下記の相違点を除いて本願発明の「分離要素(3)」に相当し、引用発明の「固定(ピン止め)された強磁性層P」は、下記の相違点を除いて本願発明の「基準要素(2)」の「第2強磁性材料層(FM2)」に相当し、本願発明と引用発明は、「磁界の強度を計測するための磁気抵抗磁界センサーであって、前記磁気抵抗磁界センサーは、基板(7)、および基準要素(2)と分離要素(3)と磁界感知要素(4)とをこの順序で積層して形成された積層体(1)を備え」たものである点で、共通している。 イ 引用文献1には、上記Dから「図5における矢印MFはフリー強磁性層Fの異方軸の方向を表し、矢印MPは固定(ピン止め)された強磁性層Pの磁化方向を表す。」と記載されていることから、引用発明の「フリー強磁性層F」および「固定(ピン止め)された強磁性層P」は、それぞれ、矢印MFの方向および矢印MPの方向において磁気異方性を有していると認められる。 よって、本願発明と引用発明は、「前記基準要素(2)および前記感知要素(4)は、それぞれ、第1方向および第2方向において第1磁気異方性(5)および第2磁気異方性(6)を有し」たものである点で、共通している。 ウ 磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗センサデバイスでは、「フリー強磁性層」は外部からの磁界の強さにより磁化方向が変化することで外部の磁界を感知するものであるところ、磁気抵抗効果を利用する引用発明では、「フリー強磁性層F」の磁化方向と「固定(ピン止め)された強磁性層P」の磁化方向に基づいて抵抗値が変化するものと認められる。 よって、本願発明と引用発明は、「前記積層体(1)は、前記感知要素(4)の磁化方向(10)が前記基準要素(2)の磁化方向に対して変化し、かつ計測すべき磁界の強度に関連して前記積層体(1)の電気抵抗の変化を誘起するように、計測すべき磁界の影響下にあり」とする点で、共通している。 (2)本願発明と引用発明の一致点について 上記の対応関係から、本願発明と引用発明は、 「磁界の強度を計測するための磁気抵抗磁界センサーであって、 前記磁気抵抗磁界センサーは、基板(7)、および基準要素(2)と分離要素(3)と磁界感知要素(4)とをこの順序で積層して形成された積層体(1)を備え、前記基準要素(2)および前記感知要素(4)は、それぞれ、第1方向および第2方向において第1磁気異方性(5)および第2磁気異方性(6)を有し、前記感知要素(4)は第1強磁性材料層(FM1)を備え、前記基準要素(2)は第2強磁性材料層(FM2)を備え、 前記積層体(1)は、前記感知要素(4)の磁化方向(10)が前記基準要素(2)の磁化方向に対して変化し、かつ計測すべき磁界の強度に関連して前記積層体(1)の電気抵抗の変化を誘起するように、計測すべき磁界の影響下にある、磁気抵抗磁界センサー。」 の点で一致している。 (3)本願発明と引用発明の相違点について 本願発明と引用発明とは、下記の点で相違する。 (相違点1) 本願発明の「感知要素(4)」は、「第1強磁性材料層(FM1)と第1反強磁性材料層(AF1)とを積層して形成された重畳体」で構成されているのに対し、引用発明は「フリー強磁性層F」で構成されている点。 (相違点2) 本願発明の「基準要素(2)」は、「第2強磁性材料層(FM2)と第2反強磁性材料層(AF2)とを積層して形成された重畳体」で構成されているのに対し、引用発明は「固定(ピン止め)された強磁性層P」で構成されている点。 (相違点3) 本願発明では、「前記両重畳体は、測定すべき磁界の方向に向いた成分が測定すべき磁界の強度に対して可逆的に変化すると共に調整可能磁界範囲において直線的に変化する磁気モーメントを得るように構成され」たものであるのに対し、引用発明は重畳体は有していない点。 (相違点4) 本願発明の「分離要素(3)」は、「電気絶縁材料層(S)」で構成されているのに対し、引用発明は「非強磁性層からなる分離層L」はどのような材料で構成されるのか定かではない点。 (相違点5) 本願発明は、「前記磁気抵抗磁界センサーの全体感度(S)を電気的な感度(Se)と磁気的な感度(Sm)とに分解したとき、前記磁気抵抗磁界センサーの全体感度(S)は、S=Se×Smで表され、Seは前記電気絶縁材料層(S)の厚みに依存し、Smは前記第1強磁性材料層(FM1)の厚みに依存し、前記磁気抵抗磁界センサーの電気的な感度(Se)はSe=(Rp-RAP)/2で表され、前記磁気抵抗磁界センサーの磁気的な感度(Sm)はSm=1/Hexで表され、ここで、RPとRAPは、それぞれ前記基準要素(2)と前記感知要素(4)の磁化の平行整列および反平行整列した時の電気抵抗であり、Hexは前記感知要素(4)における有効交換磁界である」のに対し、引用発明は感度について特定されていない点。 6 当審の判断 (1)相違点1及び2について 磁気抵抗センサデバイスの分野では、強磁性層であるフリー層(自由層)と反強磁性層を積層し、強磁性層である固定層と別の反強磁性層を積層して、強磁性層と反強磁性層を交換結合させ、フリー層の磁化方向と固定層の磁化方向を直交させる構成は、引用文献2乃至4に記載されているように周知技術であるところ、引用文献1には、段落【0003】に磁気デバイスの固定層(ハード層)が反強磁性(AF)層によりピン止めされる構成とされ得ること、段落【0019】に感知システムのデバイスにおいて強磁性層と交換結合する人工反強磁性(AAF)構造を有するものとすることが記載されている。 そうすると、引用文献1には、フリー強磁性層Fに反強磁性層を積層すること、及び固定(ピン止め)された強磁性層Pに別の反強磁性層を積層することは明記されていないものの、強磁性層と交換結合する反強磁性構造を有することが記載されていることを鑑みれば、引用発明では、フリー強磁性層Fは反強磁性層と積層されて重畳体とされ、固定(ピン止め)された強磁性層Pは別の反強磁性層と積層されて重畳体とされた構成を態様として含み得るものであるから、相違点1及び2は実質的な相違点とは認められない。 仮に、そうでないとしても、磁気抵抗センサデバイスの分野では、フリー強磁性層Fは反強磁性層と積層されて重畳体とし、固定(ピン止め)された強磁性層Pは別の反強磁性層と積層されて重畳体とすることは、上述したように周知技術であり、また、引用文献1にも強磁性層と反強磁性層との交換結合を用いることが記載されていることから、引用発明の「フリー強磁性層F」及び「固定(ピン止め)された強磁性層P」を相違点1及び相違点2に係る構成とすることは、当業者が普通に行い得るものである。 (2)相違点3について 磁気抵抗効果を利用する磁気抵抗センサデバイスでは、上記(1)に記載したように、フリー層と反強磁性層を積層して重畳体とし、固定層と別の反強磁性層を積層して重畳体とすることは周知技術であるところ、フリー層は外部から印加された測定すべき磁界の強さにより磁化方向が変化することで磁界を測定するものであり、印加された磁界が消去した場合にフリー層の磁化方向は、磁界が印加される前の元に方向に戻ることから可逆的に変化するものであり、このことは、フリー層が反強磁性層と積層された重畳体の場合、すなわち、引用発明のフリー強磁性層Fに反強磁性層を積層した重畳体であっても、同様に可逆的に変化するものである。 一方、引用発明の「固定(ピン止め)された強磁性層P」については、引用文献1の段落【0018】に、「第1の強磁性層の磁化方向は、約35kA/m以上の値の外部磁界内において不可逆である。」ことが記載されているが、段落【0037】には該「不可逆」について「外部磁界内において磁気デバイスの磁化方向が不可逆であるという用語は、外部界磁の影響の下で磁化方向は変更可能であるが、一旦外部界磁が消去(スイッチオフ)されると、磁化方向は、実質的に外部界磁が印加される以前の元の位置に戻ることを意味する。」と記載されていることを踏まえれば、引用発明の「固定(ピン止め)された強磁性層P」も「可逆的に変化する」するものである。そして、固定(ピン止め)された強磁性層Pに反強磁性層を積層した重畳体の場合には、固定(ピン止め)された強磁性層Pの磁化方向は反強磁性層との交換結合により変化しにくいものとなっているが、固定(ピン止め)された強磁性層Pの磁化方向が測定すべき磁界の印加により変化したとしても、印加した磁界が消失されれば、反強磁性層との交換結合により磁界が印加される以前の元の位置に戻ることになるので、可逆的に変化するものと認められる。 また、一般に、センサでは測定する対象に応じてセンサ感度等の調整が必要であり、引用文献3及び4の記載から、磁気抵抗効果を用いたセンサでは、強磁性層の組成や膜厚を適宜調整して、抵抗変化率や強磁性層と反強磁性層との交換結合を設定することでセンサ感度等の調整が実施されているものと認められる。そして、磁気抵抗センサデバイスにおいてセンサの直線性が重要であることは、引用文献1乃至4において、フリー層(自由層)の磁化方向と固定層(ピンド層)の磁化方向が垂直に設定されていること、引用文献1の段落【0049】に「強磁性層Fの磁化は、もう一方の強磁性層Pの磁化方向に実質的に垂直であるように調節される。これらのステップの結果として、・・・中略・・・センサの直線性が強化されることが達成される。」ことが記載されていることからも明らかであるから、磁気抵抗センサデバイスを構成するに際しては、測定対象の磁界範囲内でセンサの直線性が維持されるようにセンサ感度等の調整が行われるものと認められる。 そうすると、引用発明において、フリー強磁性層Fを反強磁性層と積層された重畳体とし、固定(ピン止め)された強磁性層Pを別の反強磁性層と積層されて重畳体とした場合において、それらの重畳体が、相違点3の「測定すべき磁界の方向に向いた成分が測定すべき磁界の強度に対して可逆的に変化すると共に調整可能磁界範囲において直線的に変化する磁気モーメントを得るように構成され」たものとすることは、引用文献1に接した当業者であれば、容易に想到し得たものである。 (3)相違点4について 磁気抵抗効果デバイスの1つであるTMRデバイスでは、フリー層と固定層の間に介在する分離層として絶縁層が用いられることは引用文献を示すまでもなく周知技術であり、引用文献1の段落【0003】には、磁気抵抗特性を備えたTMRデバイスにおいて、「分離層」に「非金属層、好ましくは非金属絶縁層」を用いることが記載されていることからも、引用発明の「非強磁性層からなる分離層L」を「非金属絶縁層」として、相違点4に係る構成とすることは、当業者が普通に行い得たものである。 (4)相違点5について 上記(2)に記載したように、センサでは測定する対象に応じてセンサ感度等の調整が必要であるところ、引用文献3及び4の記載より、磁気抵抗効果を用いたセンサでは、強磁性層の組成や膜厚を適宜調整して、抵抗変化率や強磁性層と反強磁性層との交換結合を設定することでセンサ感度等の調整が実施されているものと認められるから、引用発明を構成するに際しても、強磁性層の組成や膜厚を適宜調整して、抵抗変化率や強磁性層と反強磁性層との交換結合を設定し、磁気抵抗センサデバイスの感度の調整が行われているものと認められる。 そして、磁気抵抗効果の分野では、フリー層と固定層の間に介在した絶縁層の厚みが、フリー層と固定層の間の直列抵抗の大きさを左右するため、フリー層と固定層の磁化方向が平行な場合と反平行な場合の抵抗値の差に基づいて定義される抵抗変化率に影響を与えるものであること、及び、フリー層と反強磁性層とを交換結合させた場合、フリー層の膜厚が交換結合磁界に影響を与えるものであることは、引用文献を示すまでもなく周知技術である。 してみれば、引用発明の磁気抵抗センサデバイスは、非金属絶縁層で分離層Lを構成した際の非金属絶縁層の「厚み」により「抵抗変化率」を調整して「電気的な感度」を設定し、フリー強磁性層Fの「厚み」により「交換結合磁界」を調整して「磁気的な感度」を設定することで、必要とする「磁気抵抗センサデバイス全体の感度」を設定することは、当業者が適宜なし得る程度のものである。 そして、上記のように磁気抵抗センサデバイス全体の感度を設定する要素として、非金属絶縁層の「厚み」に依存した「抵抗変化率」による「電気的な感度」と、フリー強磁性層Fの「厚み」に依存した「交換結合磁界」による「磁界的な感度」とを特定するとともに、「抵抗変化率」が「0」の場合には磁界が変化してもセンサが変化を検出できずセンサ全体の感度が「0」であると見なせることから、磁気抵抗センサデバイスの「全体の感度」が、「電気的な感度」の要素と「磁界的な感度」の要素との「積」として、 「全体の感度」=「電気的な感度」×「磁界的な感度」 として表すことは、当業者が普通に行い得るものである。 また、同じ測定すべき磁界が印加された場合に、「抵抗変化率」が大きければ抵抗値の変化が大きくなるので「電気的な感度」は大きくなるものであり、「交換結合磁界」が大きければフリー強磁性層Fの磁化方向は変化しにくくなるので「磁気的な感度」は小さくなるものであること、さらに上述した事項の「全体の感度」、「電気的な感度」、「磁界的な感度」、「抵抗変化率」、「交換結合磁界」は、それぞれ、本願発明の「磁気抵抗磁界センサーの全体感度(S)」、「電気的な感度(Se)」、「磁気的な感度(Sm)」、「(Rp-RAP)」、「Hex」に対応するものと認められることから、相違点5は、引用発明の磁気抵抗センサデバイスの感度を調整するに際して設定される、非金属絶縁層の「厚み」及びフリー強磁性層Fの「厚み」に依存した「抵抗変化率」及び「交換結合磁界」により、「全体の感度」を特定したものに過ぎず、格別なものとはいえない。 (5)本願発明の作用効果について 本願発明の作用効果も、引用発明、引用文献1乃至引用文献4に記載された事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 7 まとめ 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明、引用文献1乃至引用文献4に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、原査定のとおり特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 8 結言 したがって、本願の請求項1に係る発明は、原査定のとおり特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2015-006723

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