特許拒絶査定不服審判
2015-002216
周囲温度の知覚に影響を与える色の照明システム
- 審判番号
- 2015-002216
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-516904外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年02月05日
- 審決日
- 2016年12月26日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィ
- 【請求人代理人】特許業務法人M&Sパートナーズ
- 分類
- P18 .121-WZ (A61N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-516904「周囲温度の知覚に影響を与える色の照明システム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月29日国際公開、WO2010/150138、平成24年12月10日国内公表、特表2012-531235〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯・本願発明
本願は、2010(平成22)年6月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年6月24日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成23年12月27日付けで手続補正がされ、その後、平成26年2月14日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月21日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、さらに同年6月9日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年8月28日に意見書の提出とともに手続補正がなされたが、同年12月9日付けで同年8月28日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定された。
これに対して、平成27年2月5日に拒絶査定に対する審判請求と同時に手続補正がなされ、平成28年3月1日付けで当審から拒絶の理由が通知され、同年9月9日に意見書の提出とともに誤訳訂正がなされたものである。
そして、本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成28年9月9日付けで誤訳訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1の記載は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
照明を制御するための方法であり、前記方法は:
既定の感覚情報に基づいて、光の色の複数の群から特定の群を選択するステップであって、前記光の色は主要波長及び色飽和に基づいて群に分けられており、それぞれの色の群が、ユーザの体温調節に影響を与えるように構成される、ステップ;
前記選択された色の群による少なくとも1つの光源から発光される光の前記主要波長を制御するための制御シグナルを生成する、ステップ;
前記生成された制御シグナルを前記少なくとも1つの光源に伝達するステップであって、前記選択された色の群の光を発光させ、それにより、前記既定の感覚情報に基づき前記少なくとも1つの光源により発光される前記選択された色の群の光に暴露される前記ユーザの前記体温調節に影響を与える、ステップ;及び
前記制御シグナルを、空調制御システムを制御するように構成される空調制御装置へ交信するステップであって、前記制御シグナルが、前記既定の感覚情報に関連して前記空調制御装置に放出空気の熱を下げるか上げるかさせるステップを含み、
前記既定の感覚情報は、周囲温度に対するユーザの感覚に基づく主観的な感覚情報であって、暑い又は寒いのいずれか一つであり、前記ユーザによって入力される、
ことを特徴とする方法。」(以下「本願発明」という)
2 当審が通知した拒絶の理由
一方、当審が平成28年3月1日付けで通知した拒絶の理由の「理由1」の概要は、以下のとおりである。
本件出願の請求項1ないし14に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
刊行物1:特開2005-128976号公報
刊行物2:特開平6-76959号公報
刊行物3:特開平7-94146号公報(周知文献)
刊行物4:特開平4-254141号公報(周知文献)
3 刊行物の記載事項
(1)当審が通知した上記拒絶の理由で引用した特開2005-128976号公報(以下「刊行物1」という)には、図1~28とともに次の事項が記載されている。
a 「【0001】
本発明は、家庭内に設置されている少なくとも一つ以上の家電機器を、ユーザの動作・状況により制御する身体装着型機器制御装置および機器制御システムに関するものである。」
b 「【0050】
まず、ユーザは自分が希望する制御モードを制御目的入力手段111を介して入力する(ステップS50)。図22の例によれば、それらには「ACTIVE」(1111)、「RELAX」(1112)、「COOL」(1113)、「WARM」(1114)、「SLEEP」(1115)の5種類があり、選択された制御目的に応じて制御モードを切り替える(ステップS51)。これらの具体的制御内容は例えば図24の通りである。「ACTIVE」の場合は、照明の色温度を5000K程度(昼光色と電球色の照明で実現)にし、エアコンの風量を強くし、マッサージチェアに座ってマッサージをしている際には活性化を促すモード(強い刺激)でマッサージを行うなど、ユーザの交感神経活性化および覚醒を目的とした場合に選択するモードである。「RELAX」の場合は、照明の色温度を3000K程度(電球色の照明で実現)にし、エアコンの風量を弱くし、マッサージチェアに座ってマッサージをしている際にはリラックスを促すモード(弱い刺激)でマッサージを行うなど、ユーザの副交感神経活性化および入眠促進を目的とした場合に選択するモードである。「COOL」の場合はより冷房効果を高めたい場合に選択すべきモードで、設定温度を下げるだけでなく、青系の照明(青色LED照明と昼光色の照明など)を強くして視覚的に冷感のある環境にすることにより、実際の温度よりも涼しい感覚を得られる。一方、「WARM」の場合はより暖房効果を高めたい場合に選択するモードで、設定温度を上げるだけでなく、赤系の照明(赤色LED照明と電球色の照明など)を強くして視覚的に暖かみのある環境にすることにより、実際の温度よりも暖かい感覚を得られる。このように、照明により実際の温度よりも涼しい/暖かい感覚をユーザに与えることにより冷暖房コストの削減も期待できる。「SLEEP」の場合は、「RELAX」で眠気が増し、マッサージチェアからベッドへ移動した場合に選択するモードで、快適な睡眠環境を得ることを目的としたモードである。」
c 「【0055】
ユーザの意思をセンシングすることは難しいが、このようにしてユーザが自ら所望の制御モードを入力することで、正しい制御モードに切り替えるとともに、それぞれの制御モードにおいてユーザの自律神経指標などに応じて適切なパラメータ変更を施すことによって、より快適な環境を提供することができる。」
d 上記摘記事項a~cを、技術常識を踏まえて整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。
「家電機器をシステムが制御するための方法であり、前記方法は:
制御モードの選択により、青系の照明(青色LED照明と昼光色の照明など)や赤系の照明(赤色LED照明と電球色の照明など)を強くして、それぞれの青系や赤系の照明が、実際の温度よりも涼しい/暖かい感覚をユーザに与えるように構成され、
前記青系や赤系の照明を強くし、それにより、前記青系や赤系の照明により視覚的に冷感や暖かみのある環境にして、前記ユーザに実際の温度よりも涼しい/暖かい感覚を与え、
前記制御モードの選択によりエアコンの設定温度を下げたり上げたりし、
前記制御モードには、ユーザが所望するより冷房効果を高めたい「COOL」又はより暖房効果を高めたい「WARM」の選択入力が含まれており、前記ユーザによってシステムへ入力される、方法。」(以下「引用発明」という)
(2)当審が通知した上記拒絶の理由で引用した特開平6-76959号公報(以下「刊行物2」という)には、図1~4とともに次の事項が記載されている。
a 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、照明と空調とを総合的に考慮した照明・空調統合システムに関するものである。」
b 「【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。従来よりの研究において、光源の色温度における体感性について、定性的に図3に示すような関係が報告されている。すなわち、光源色温度を高くすれば、体感明度は明るく感じ、体感温度は涼しく感じる。また、光源色温度を低くすれば、体感明度は暗く感じ、体感温度は暖かく感じる。
【0009】以上のような人間の体感による明度,温度のあいまいさを利用し、夏場、冬場等の季節によって照明の色温度を変化させ、それに伴い、照明照度及び空調温度を従来より快適に、又一層の省エネ効果を追求するものである。図4は、照明・空調統合制御の概念図を示し、夏場の冷房時において、光源の色温度を上げることにより、体感温度が涼しく感じ、また体感明度が明るく感じることから、照明負荷の照度設定を下げることが可能となり、同時空調負荷の空調温度設定を上げることができる。
【0010】従って、照度設定を下げることで、照明負荷の低減を図ることができ、この照明負荷の低減に伴い照明発熱量が少なると同時に、空調温度設定を上げることで空調負荷の低減を図って省エネ効果を果たすことができる。同時に、快適性も追求することができる。また、冬場の暖房時において、光源色温度を下げることで、体感温度が暖かく感じ、また体感明度は暗く感じることから、照明負荷の照度設定を上げることで、照明の発熱量が増大し、且つ空調温度設定を下げることで、空調負荷の低減を図ることができる。」
c 「【0014】上述の色温度は、RGB制御とし(実用的には、白色、電球色等の組み合わせでも可)、調色、調光はRGB独自に設置したインバータバラストにて行う。空調制御も上述したように、バルブ、三方弁、コンプレッサのインバータ制御(制御精度を上げるために、PID制御が有効である。)等を行うようにしている。」
4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「家電機器をシステムが制御するための方法」は、「家庭内に設置されている」「家電機器を」「機器制御システム」が「制御する」(上記3(1)の記載事項a参照)ものであり、上記3(1)の記載事項bでは実施例として「照明」が用いられていることから、本願発明の「照明を制御するための方法」に相当することは明らかである。
引用発明の「制御モード」は、ユーザが所望するより冷房効果を高めたい「COOL」又はより暖房効果を高めたい「WARM」を適宜「選択入力」した情報であるから、本願発明の「周囲温度に対するユーザの感覚に基づく主観的な感覚情報であって、暑い又は寒いのいずれか一つ」である「既定の感覚情報」に相当するものと解される。
そして、引用発明の「制御モードの選択により、青系の照明(青色LED照明と昼光色の照明など)や赤系の照明(赤色LED照明と電球色の照明など)を強く」することは、当該青系の照明が青色LED照明と昼光色の照明などの群であり、当該赤系の照明が赤色LED照明と電球色の照明などの群であることから、本願発明の「既定の感覚情報に基づいて、光の色の複数の群から特定の群を選択するステップ」に相当する。また、当該青系の照明が青色LED照明と昼光色の照明などの群であること、及び、当該赤系の照明が赤色LED照明と電球色の照明などの群であり、例えば、昼光色と電球色とでは、主要波長のみならず、色飽和度も異なることは明らかであることから、青系の照明及び赤系の照明の光の色は、青系又は赤系の主要波長と、適宜の色飽和度(彩度)とが選択されて用いられていると解され、引用発明の「青系の照明や赤系の照明」の光の色は、本願発明のように「主要波長及び色飽和に基づいて群に分けられて」いることに相当する。さらに、引用発明の「それぞれの青系や赤系の照明が、実際の温度よりも涼しい/暖かい感覚をユーザに与える」ことが、本願発明の「それぞれの色の群が、ユーザの体温調節に影響を与える」ことに相当することも、当業者には自明である。
引用発明の「前記青系や赤系の照明を強く」することは、本願発明の「前記選択された色の群の光を発光させ」ることに相当し、また同様に、引用発明の「前記青系や赤系の照明により視覚的に冷感や暖かみのある環境にして、前記ユーザに実際の温度よりも涼しい/暖かい感覚を与え」ることは、青系や赤系の照明が、制御モードの選択により設定され、当然光源も有していることから、本願発明の「前記既定の感覚情報に基づき前記少なくとも1つの光源により発光される前記選択された色の群の光に暴露される前記ユーザの前記体温調節に影響を与える」ことに相当することも、当業者には自明である。
引用発明の「前記制御モードの選択によりエアコンの設定温度を下げたり上げたり」することは、本願発明の「前記既定の感覚情報に関連して前記空調制御装置に放出空気の熱を下げるか上げるかさせる」ことに相当することも明らかである。
そうすると、引用発明は、以下の点で本願発明と一致し、また相違する。
<一致点>
「照明を制御するための方法であり、前記方法は:
既定の感覚情報に基づいて、光の色の複数の群から特定の群を選択するステップであって、前記光の色は主要波長及び色飽和に基づいて群に分けられており、それぞれの色の群が、ユーザの体温調節に影響を与えるように構成される、ステップ;
前記選択された色の群の光を発光させ、それにより、前記既定の感覚情報に基づき前記少なくとも1つの光源により発光される前記選択された色の群の光に暴露される前記ユーザの前記体温調節に影響を与える、ステップ;及び
前記既定の感覚情報に関連して前記空調制御装置に放出空気の熱を下げるか上げるかさせるステップを含み、
前記既定の感覚情報は、周囲温度に対するユーザの感覚に基づく主観的な感覚情報であって、暑い又は寒いのいずれか一つであり、前記ユーザによって入力される、方法。」
<相違点>
本願発明が、「前記選択された色の群による少なくとも1つの光源から発光される光の前記主要波長を制御するための制御シグナルを生成する、ステップ;前記生成された制御シグナルを前記少なくとも1つの光源に伝達するステップ、及び前記制御シグナルを、空調制御システムを制御するように構成される空調制御装置へ交信するステップ」を含み、「前記制御シグナル」により光源及び空調制御システムを制御するのに対し、引用発明は、制御モードを入力して照明及びエアコンを制御するものではあるが、「制御シグナル」については不明である点。
5 当審の判断
相違点について検討する。
刊行物2には、照明と空調とを総合的に考慮した照明・空調統合システムについて、具体的に照明の制御をRGB制御、空調の制御をインバータ制御で行うことが開示されている。そして、このような周知のRGB制御及びインバータ制御において、制御シグナルを生成、送信して制御装置を稼働させることも技術常識にすぎない。
そうすると、引用発明の照明及びエアコンの制御において、選択された制御モードに適合する青系又は赤系の照明の主要波長を制御する制御シグナルを生成し、照明装置に伝達して照明の制御を行うこと及び当該制御シグナルをエアコンの制御装置に交信して、エアコンの設定温度を調整するように構成することは、当業者であれば容易に想到する事項であると認められる。
また、本願発明によってもたらされる効果も、引用発明、刊行物2に記載された事項及び技術常識から、当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものではない。
請求人は平成28年9月9日付け意見書において、「引用文献1、2及び4は、色彩又は色温度に基づいて、空調負荷の低減を図ることが開示されているだけであって、色飽和に関する記載はない。引用文献3においても、色度図の開示はあるが、色飽和に関する記載はない。色飽和については、請求項4に関する拒絶理由において、『色の分類手法として色飽和も周知のものである。』とのことであるが、色の分類手法として色飽和自体は周知であったとしても、色の群が、ユーザの体温調節に影響を与えるように、主要波長だけでなく色飽和にも基づいて分けられていることは、周知ではない。」(「2-4)本願発明と引用文献の発明との対比」を参照)と主張している。
しかし、上記刊行物1(上記意見書の「引用文献1」)に記載された引用発明においては、青系の照明として青色LED照明と昼光色の照明等が用いられ、赤系の照明として赤色LED照明と電球色の照明等が用いられており、青系色及び赤系色という色彩又は色温度に基づく分け方に加え、青色又は赤色LED照明、昼光色照明、電球色照明の選択もあり、それぞれ選択された色については色飽和度も設定されているものと認められる。そうすると、上記刊行物1に特に「色飽和」の明示がなくとも、引用発明の青系又は赤系の照明のそれぞれの群は、色温度及び色飽和に基づいて色が選択されていると解されるから、上記請求人の主張を採用することはできない。
6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、拒絶をすべきものである。
よって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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