特許拒絶査定不服審判
2024-007801
生体内埋め込み型医療装置
- 審判番号
- 2024-007801
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-208774
- 請求日
- 2024年05月10日
- 審決日
- 2026年05月20日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社村田製作所
- 【請求人代理人】弁理士法人 楓国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 栗山 卓也
- 審判官 土田 嘉一
- 審判官 佐々木 佳祐
- 分類
- P18 .121-WZ (A61N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2022-208774「生体内埋め込み型医療装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 3月22日出願公開、特開2023- 40095〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年) 4月16日(優先権主張 2018年 9月27日 日本国)を国際出願日とする特願2020-547937号の一部を令和 4年12月26日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 5年 8月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 5年12月13日提出:手続補正書、意見書
令和 6年 2月 5日付け:拒絶査定
令和 6年 5月10日提出:審判請求書、手続補正書
令和 7年 8月26日付け:拒絶理由通知書
令和 7年11月 4日提出:手続補正書、意見書
第2 本願発明
本願の請求項1~13に係る発明は、令和 7年11月 4日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
生体適合材によって形成され、密閉された内部空間を形成する筐体と、
前記内部空間に配置され、共振用のキャパシタンスとともに共振回路を構成して、外部の電界又は磁界からなる電磁界と相互に作用して電磁界共鳴フィールドを形成して電力を受電する受電コイルと、
前記内部空間に配置され、前記受電コイルを通して受電された電力を蓄電する蓄電デバイスと、
前記内部空間に配置され、前記受電コイルで受電した電力又は前記蓄電デバイスに蓄電された電力を用いて、少なくとも信号処理を行う電子回路と、
を備え、
前記共振用のキャパシタンスは、前記受電コイルに等価回路的に直列接続されることで、前記受電コイルとともに前記共振回路を構成し、
前記筐体の、前記電磁界共鳴フィールドが形成される領域の少なくとも一部は、非金属系の生体適合材で形成され、
前記筐体は、受電用の主面を有する箱状であり、
前記受電コイルは、平面型で巻回形のコイル導体を備え、前記巻回形の開口面が前記受電用の主面に平行に、前記筐体の前記内部空間に配置され、
前記筐体の前記受電用の主面に直交する方向に、前記受電用の主面、前記受電コイル、前記電子回路における受電回路が順に配置されており、
前記内部空間に配置され、前記電磁界共鳴フィールドが形成される領域に磁性材を備え、
前記受電コイルと前記磁性材とは隣接し、
前記共振回路を構成することで前記受電コイルによる前記電磁界共鳴フィールドを形成した電力の受電を行う、
生体内埋め込み型医療装置。」
第3 当審において通知した拒絶理由の概要
当審が令和 7年 8月26日付けの拒絶理由通知書において通知した理由は、以下の理由を含むものである。
本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.米国特許出願公開第2009/0171420号明細書
第4 引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献1
(1)上記引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。また、付記した訳文は、当審が作成した。)。
ア 「[0031] The implantable medical device also includes metal housing component 80 made of a biocompatible metal (such as platinum, niobium, titanium, tantalum, or an alloys of one or more of these metals) that cooperates with the ceramic housing component 10 to form a hermetic enclosure.」
([0031]この植込み型医療機器は、生体適合性のある金属(白金、ニオブ、チタン、タンタル、又はこれら1種以上の金属の合金など)からなる金属ハウジング部材80も備えており、この金属ハウジング部材80は、セラミックハウジング部材10と協働して気密筐体を形成する。)
イ 「[0034] The mechanical and electrical components of the implantable medical device are placed within the enclosure prior to connecting the housing components. In this illustrated embodiment, the medical device components include secondary coil 30 which is used for receiving transcutaneously transferred energy from an extracorporeal primary coil charging device. Exemplary external devices that can be used to transfer energy (and/or data) to the medical device housings described herein can be found in co-pending U.S. patent application Ser. No. 12/180,996, filed Jul. 28, 2008, which is hereby incorporated by reference herein. Coil 30 is shown as a planar winding made from conductive traces on a printed circuit board. Alternative embodiments include discrete wire windings either in a planar geometry or a coil/bobbin geometry. Such discrete wire windings have highly conductive properties and may include silver wire, copper wire, copper magnetic wire, Litz wire, woven wire, gold alloy, or other suitable materials known in the art. Located behind (i.e., distal to) the winding is magnetic flux shield/diverter 40 which serves to provide a lower reluctance magnetic return to the primary coil thereby increasing the transfer of energy as well as shielding implantable electronics 50 from the large magnetic fields. The magnetic material of flux shield 40 generally has a high magnetic permeability, and may be, for example without limitation, ferrite, Metglas(R) (Metglas Inc, Conway, S.C., U.S.A), Mμ metal (Mμ Shield Co., Manchester, N.H., U.S.A), Wave-XTM (ARC Technologies, Inc. Amesbury, Mass., U.S.A.), or other suitable material. Spacer 35, which in some embodiments in made of plastic, is disposed between coil 30 and magnetic flux shield/diverter 40 and serves to capture coil 30 and flux diverter 40 and maintain their spacing from electronics 50. In some embodiments spacer 35 is an internal frame (or chassis) that mechanically locates/protects several of the internal components. Spacer 35 may additionally facilitate manufacturing by offering a basis for a stand-alone subassembly. For example, charge coil 30, electronic components 50, and/or other components can be mechanically affixed to spacer element 35 prior to installation inside the titanium-ceramic housing).」
([0034]植込み型医療機器の機械的及び電気的構成要素は、筐体部品を接続する前に筐体内に配置される。図示されたこの実施形態において、医療機器の構成要素には、体外にある一次コイル充電装置から経皮的に伝送されるエネルギーを受信するために使用される二次コイル30が含まれる。本明細書に記載された医療機器ハウジングにエネルギー(及び/又はデータ)を転送するために使用可能な代表的な外部装置については、2008年7月28日に出願された共同出願中の米国特許出願第12/180,996号に記載されており、同出願はここに参照により組み込まれる。コイル30は、プリント基板上の導電性トレースからなる平面状の巻線として示されている。別の実施形態としては、平面形状又はコイル/ボビン形状のいずれかである個別のワイヤ巻線が含まれる。このような個別のワイヤ巻線は高い導電性を有し、銀線、銅線、銅磁性線、リッツ線、編組線、金合金、又は当業者に周知のその他の適切な材料を含むことができる。巻線の後方(すなわち、遠位側)には、磁束シールド/ダイバータ40が配置されており、これは一次コイルに対して低リラクタンスの磁気帰路を提供することでエネルギー伝達効率を高めるほか、植込み型電子機器50を強力な磁場から遮蔽する役割を果たす。磁束シールド40の磁性材料は、一般に高い透磁率を有し、例えば、フェライト、Metglas(R)(Metglas Inc、米国サウスカロライナ州コンウェイ)、Mμメタル(Mμ Shield Co.、米国ニューハンプシャー州マンチェスター)、Wave-XTM(ARC Technologies,Inc.(米国マサチューセッツ州エイムズベリー))、又はその他の適切な材料である。一部の実施形態においてプラスチック製であるスペーサ35は、コイル30と磁束シールド/ダイバータ40との間に配置され、コイル30及び磁束ダイバータ40を保持し、電子機器50からの間隔を維持する役割を果たす。いくつかの実施形態において、スペーサ35は、複数の内部構成要素を機械的に位置決め/保護する内部フレーム(又はシャーシ)である。スペーサ35は、独立したサブアセンブリの基盤を提供することにより、製造をさらに容易にする場合がある。例えば、充電コイル30、電子部品50、及び/又はその他の構成要素は、チタン・セラミック製ハウジング内部への設置に先立ち、スペーサ要素35に機械的に固定することができる。)
ウ 「[0035] The medical device implant electronics 50 are located on a board located behind (distal to) the magnetic flux shield/diverter 40. The medical device implant electronics 50 may, e.g., control therapy and/or diagnostic processes of the implant. For example, the implant electronics may include a rectifier and a charging circuit which allows a coupled AC voltage to be converted to a DC voltage in order to charge implantable rechargeable battery 70. The implant electronics may also include telemetry components to allow data and control signals to be bi-directionally communicated between the implanted medical device and an external device or system.」
([0035]医療用インプラント電子回路50は、磁束シールド/ダイバータ40の後方(遠位側)に配置された基板上に設けられている。医療用インプラント電子回路50は、例えば、インプラントの治療及び/又は診断プロセスを制御することができる。例えば、インプラント電子回路は、整流器及び充電回路を含み、これによって結合された交流電圧を直流電圧に変換し、埋め込み型充電式電池70を充電することができる。また、この埋め込み型電子回路には、埋め込まれた医療機器と外部の装置又はシステムとの間で、データ及び制御信号を双方向に通信させるためのテレメトリー構成要素が含まれる場合がある。)
エ 「[0036] Behind, or distal to, electronics board 50 is compliant liner 60 which houses rechargeable power source 70.」
([0036]電子基板50の後方、すなわち遠位側には、充電式電源70を収容する弾性ライナー60が配置されている。)
オ 「[0042] FIG. 3 illustrates an alternative embodiment which represents a lighter weight device, in which proximal ceramic housing 10 of FIG. 1 is replaced with proximal biocompatible metal housing component 110. A ceramic window 120 is disposed in an opening in the metal housing component 110 which allows for the magnetic flux associated with inductively coupled charging and/or radio frequency telemetry to efficiently pass through the hermetically sealed enclosure proximal face without inducing eddy currents.」
([0042]図3は、より軽量な装置を示す別の実施形態を示しており、図1の近位側セラミックハウジング10が、近位側の生体適合性金属ハウジング部材110に置き換えられている。セラミック窓120は、金属ハウジング部材110の開口部に配置されており、これにより、誘導結合充電及び/又は無線周波数テレメトリーに関連する磁束が、渦電流を誘起することなく、気密に封止された筐体の近位面を効率的に通過できるようになる。)
カ 図3「
[図:0001436584000001.jpg]
」
(2)上記(1)の記載から次の事項が認定される。
ア [0034]の「植込み型医療機器の機械的及び電気的構成要素は、筐体部品を接続する前に筐体内に配置される」との記載から、引用文献1における筐体は、構成要素が配置される内部空間を形成する。
イ [0031]、[0042]及び図3の記載から、生体適合性のある金属からなる金属ハウジング部材80、生体適合性金属ハウジング部材110及びセラミック窓120からなる筐体は、箱状である。
ウ [0042]、図3の記載から、「セラミック窓120」、「コイル30」及び「医療用インプラント電子回路50」は、筐体の近位面に直交する方向に順に並んでいる。
2 引用発明
上記1(1)、(2)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「生体適合性のある金属からなる金属ハウジング部材80を備えており、この金属ハウジング部材80は、セラミック窓120が開口部に配置された生体適合性金属ハウジング部材110とともに内部空間を形成する箱状の気密筐体を形成し、
筐体の内部空間には、
体外にある一次コイル充電装置から経皮的に伝送されるエネルギーを受信するために使用される平面形状のワイヤ巻線のコイル30と、
コイル30の後方に配置され、エネルギー伝達効率を高めるほか、医療用インプラント電子回路50を強力な磁場から遮蔽する役割を果たす磁性材料からなる磁束シールド40と、
コイル30と磁束シールド40との間に配置され、複数の内部構成要素を機械的に位置決めするプラスチック製であるスペーサ35と、
磁束シールド40の後方に配置され、インプラントの治療及び/又は診断プロセスを制御することができ、整流器及び充電回路を含み、結合された交流電圧を直流電圧に変換し、埋め込み型充電式電池70を充電するものであり、外部の装置又はシステムとの間で制御信号を通信する医療用インプラント電子回路50と、
医療用インプラント電子回路50の後方に配置された埋め込み型充電式電池70とを有し、
セラミック窓120により、磁束が、渦電流を誘起することなく、気密に封止された筐体の近位面を効率的に通過できるようになっており、
セラミック窓120、コイル30及び医療用インプラント電子回路50は、筐体の近位面に直交する方向に順に並んでいる、
植込み型医療機器。」
第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「生体適合性のある金属からなる金属ハウジング部材80を備えており、この金属ハウジング部材80は、セラミック窓120が開口部に配置された生体適合性金属ハウジング部材110と内部空間を形成する」「気密筐体」は、その構造、機能からみて、本願発明の「生体適合材によって形成され、密閉された内部空間を形成する筐体」に相当する。
引用発明の「筐体の内部空間に」「有」する「体外にある一次コイル充電装置から経皮的に伝送されるエネルギーを受信するために使用される平面形状のワイヤ巻線のコイル30」と、本願発明の「前記内部空間に配置され、共振用のキャパシタンスとともに共振回路を構成して、外部の電界又は磁界からなる電磁界と相互に作用して電磁界共鳴フィールドを形成して電力を受電する受電コイル」とは、その構造及び機能からみて、前記内部空間に配置され、外部の電界又は磁界からなる電磁界と相互に作用して電磁界共鳴フィールドを形成して電力を受電する受電コイルである点の限りにおいて一致する。
引用発明の「結合された交流電圧を直流電圧に変換し」て「充電」される「筐体の内部空間に」「有」する「充電式電源70」は、その機能からみて、本願発明の「前記内部空間に配置され、前記受電コイルを通して受電された電力を蓄電する蓄電デバイス」に相当する。
引用発明の「インプラントの治療及び/又は診断プロセスを制御することができ、整流器及び充電回路を含み、結合された交流電圧を直流電圧に変換し」、「外部の装置又はシステムとの間で制御信号を通信する」「筐体の内部空間に」「有」する「医療用インプラント電子回路50」は、その機能からみて、本願発明の「前記内部空間に配置され、前記受電コイルで受電した電力又は前記蓄電デバイスに蓄電された電力を用いて、少なくとも信号処理を行う電子回路」に相当する。
引用発明の「気密筐体」の一部を構成する、「磁束が」「通過」する「セラミック窓120」は、セラミック窓120がその性質からみて「非金属系の生体適合材」と表現できることを踏まえれば、本願発明の「前記筐体の、前記電磁界共鳴フィールドが形成される領域の少なくとも一部は、非金属系の生体適合材で形成され」る構造に相当する。
引用発明の「セラミック窓120により、磁束が」「効率的に通過できるようになる」「筐体の近位面」は、本願発明の「筐体」が「有する」「受電用の主面」に相当する。
引用発明の「箱状の気密筐体」は、本願発明の「箱状であ」る「前記筐体」に相当する。
引用発明の「コイル30」が「平面形状のワイヤ巻線」であることは、本願発明の、「前記受電コイルは、平面型で巻回形のコイル導体を備え」ることに相当する。
引用発明の「医療用インプラント電子回路50」が含む「充電回路」は、その機能からみて、本願発明の「前記電子回路における受電回路」に相当する。
引用発明の「セラミック窓120、コイル30及び医療用インプラント電子回路50は、筐体の近位面に直交する方向に順に並んでいる」ことは、「充電回路」が「医療用インプラント電子回路50」に含まれるから、本願発明の「前記筐体の前記受電用の主面に直交する方向に、前記受電用の主面、前記受電コイル、前記電子回路における受電回路が順に配置されて」いることに相当する。
引用発明の「筐体の内部空間に」「有」する、「エネルギー伝達効率を高めるほか、植込み型電子機器50を強力な磁場から遮蔽する役割を果たす磁性材料からなる磁束シールド40」は、磁場の存在下に配置されることから、その機能、配置からみて、本願発明の「前記内部空間に配置され、前記電磁界共鳴フィールドが形成される領域に」「備え」られる「磁性材」に相当する。
引用発明の「植込み型医療機器」は、本願発明の「生体内埋め込み型医療装置」に相当する。
してみると、両者は、
「生体適合材によって形成され、密閉された内部空間を形成する筐体と、
前記内部空間に配置され、外部の電界又は磁界からなる電磁界と相互に作用して電磁界共鳴フィールドを形成して電力を受電する受電コイルと、
前記内部空間に配置され、前記受電コイルを通して受電された電力を蓄電する蓄電デバイスと、
前記内部空間に配置され、前記受電コイルで受電した電力又は前記蓄電デバイスに蓄電された電力を用いて、少なくとも信号処理を行う電子回路と、
を備え、
前記筐体の、前記電磁界共鳴フィールドが形成される領域の少なくとも一部は、非金属系の生体適合材で形成され、
前記筐体は、受電用の主面を有する箱状であり、
前記受電コイルは、平面型で巻回形のコイル導体を備え、前記筐体の前記内部空間に配置され、
前記筐体の前記受電用の主面に直交する方向に、前記受電用の主面、前記受電コイル、前記電子回路における受電回路が順に配置されており、
前記内部空間に配置され、前記電磁界共鳴フィールドが形成される領域に磁性材を備える、
生体内埋め込み型医療装置。」
の点で一致し、下記の点で相違する。
<相違点1>
本願発明は、「受電コイル」が「共振用のキャパシタンスとともに共振回路を構成して」おり、「前記共振用のキャパシタンスは、前記受電コイルに等価回路的に直列接続されることで、前記受電コイルとともに前記共振回路を構成」するものであり、「前記共振回路を構成することで前記受電コイルによる前記電磁界共鳴フィールドを形成した電力の受電を行う」のに対し、引用発明はそのような構成を有するか不明である点。
<相違点2>
本願発明は、前記受電コイルが「前記巻回形の開口面が前記受電用の主面に平行に、」前記筐体の前記内部空間に配置されるのに対し、引用発明はそのような構成を有するか不明である点。
<相違点3>
本願発明は、「前記受電コイルと前記磁性材とは隣接し」ているのに対し、引用発明は「コイル30」と「磁束シールド40」との間に「スペーサ35」が配置されている点。
第6 判断
1 相違点について
(1)相違点1について
引用発明は、平面形状のワイヤ巻線のコイル30により、体外にある一次コイル充電装置から経皮的に伝送されるエネルギーを受信するものであるところ、このような給電方式においては、受電側のコイルを、等価回路として共振用のキャパシタンスがインダクタンスと直列接続する回路とすることは技術常識であることを踏まえれば、引用発明におけるコイル30は、共振用のキャパシタンスとともに共振回路を構成していると解される。
そうすると、上記相違点1は実質的な相違点ではない。
(2)相違点2について
引用発明の筐体の内部空間において、コイル30を筐体の近位面に対してどのような配置とするかは、必要に応じて当業者が適宜決定する設計的事項であり、筐体の形状や使用形態から、コイル30を筐体の近位面に平行に配置することは、当業者が容易に想到し得たことである。
(3)相違点3について
コイルを用いて給電を行うシステムにおいて、受電コイルと磁性材とが隣接して配置される構成は、例えば、特開2013-192391号公報の段落【0064】~【0065】、【0094】、図6、9(一体となった位置決め部K21、22と磁気遮蔽材41が受電コイルL2に隣接する構成)や特開2016-226073号公報の段落【0038】(磁性体212により、給電コイルからの磁界を受電コイル211に効率良く集中させる機能を有する構成)等に記載されるとおり周知であるから、引用発明において、「スペーサ35」による位置決めの機能の代替として、又は磁界をコイル30に効率良く集中させるために、上記周知の構成のようにコイル30を磁束シールド40と隣接させる構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明の効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る以上のものではない。
2 小括
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-007801