特許拒絶査定不服審判
2024-006125
美容器
- 審判番号
- 2024-006125
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-056054
- 請求日
- 2024年04月11日
- 審決日
- 2025年07月29日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヤーマン株式会社
- 【請求人代理人】園田・小林弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 平瀬 知明
- 審判官 安井 寿儀
- 審判官 三森 雄介
- 分類
- P18 .121-Z (A61N) / P18 .56 -Z (A61N) / P18 .575-Z (A61N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 56054「美容器」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年10月 1日出願公開、特開2020-156559〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年 3月25日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 4年10月24日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 2月28日提出:意見書及び手続補正書
同年 6月 9日付け:拒絶理由通知書
同年10月19日提出:意見書及び手続補正書
令和 6年 1月19日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
同年 4月11日提出:審判請求書及び手続補正書
同年 8月26日提出:上申書
第2 令和6年4月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年4月11日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由](補正の適否の判断)
1 本件補正の内容
(1)本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「使用者の肌面に対して交流電流を印加する美容器であって、
2以上の電極を備えて該電極間に前記交流電流を印加する電極部と、
前記交流電流が印加される前記2以上の電極の間に110kHzないし200kHzの範囲の周波数の前記交流電流を出力する交流電流発生部と、を備え、
前記2以上の電極間の距離が2nmないし10nmであって、前記電極の抵抗値が10Ω以下で前記交流電流を印加することによって、肌面に電気刺激及び温感作用を同時に付与する、
ことを特徴とする美容器。」
ここで、本件補正のうち、「前記2以上の電極間の距離が2nmないし10nmであって、」の記載は、本願明細書段落【0058】の記載、本件補正と同日に提出された審判請求書の「3.(2)補正の主旨及び根拠」の記載、及び、令和 6年 8月26日に提出された上申書の記載から、「前記2以上の電極間の距離が2mmないし10mmであって、」の明らかな誤記である。
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、次のとおりのものと認める。
「使用者の肌面に対して交流電流を印加する美容器であって、
2以上の電極を備えて該電極間に前記交流電流を印加する電極部と、
前記交流電流が印加される前記2以上の電極の間に110kHzないし200kHzの範囲の周波数の前記交流電流を出力する交流電流発生部と、を備え、
前記2以上の電極間の距離が2mmないし10mmであって、前記電極の抵抗値が10Ω以下で前記交流電流を印加することによって、肌面に電気刺激及び温感作用を同時に付与する、
ことを特徴とする美容器。」
(2)本件補正前の、令和5年10月19日の手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「使用者の肌面に対して交流電流を印加する美容器であって、
2以上の電極を備えて該電極間に該交流電流を印加する電極部と、
肌面に電気刺激及び温感作用を同時に付与するための100kHzないし200kHzの範囲の周波数の該交流電流を該電極間に出力する交流電流発生部とを備える
ことを特徴とする美容器。」
2 本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、交流電流発生部が出力する周波数の範囲を「100kHzないし200kHz」から「110kHzないし200kHz」と減縮するとともに、電極について「2以上の電極間の距離が2mmないし10mm」であること及び「電極の抵抗値が10Ω以下」であることの限定を付加するものである。
よって、本件補正は、本件補正前の請求項1を限定する補正であるとともに、本件補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件
本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としているから、本件補正発明が特許法第17条の2第6項にて準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か)について、以下検討する。
ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)のとおりである。
イ 引用文献の記載事項及び引用発明
(ア)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、国際公開第2015/068621号(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、「・・・」は省略を示す。また、下線は当審にて付与した。)
(a)「[0038] 以下、本発明の実施の形態の美容器について、図面に示した実施の形態を用いて説明する。図1から図3に示すように、本発明の実施の形態の美容器10は、縦長で前後の厚みが左右の幅よりやや小さい、正面視長円形の筒状の全体形状とされている。美容器10は、ヘッド部40に設けられた電極44から微弱電流を流して、使用者の肌などのマッサージ効果を高めるものである。
[0039] 美容器10には、その上方寄りに、後述する電極44を備えたヘッド部40が設けられ、一方、下方寄りには、美容器10の使用の際に使用者が把持する部位である把持部20が設けられている。・・・」
(b)「[0041] 図1および図2に示されるように、ヘッド部40の正面側には、平面状に形成されるとともに正面視において長円形状の電極部16が設けられている。電極部16には、後述するように8つの電極44と9つのLED50が配設されている。・・・」
(c)「[0042] 次に、ヘッド部40の詳細について説明する。前述したように、ヘッド部40の電極部16には、8つの電極44と9つのLED50が配設されている。電極44は上下に等間隔に、縦2列横4列に配設されている。これらの電極44は、ヘッド部40先端寄りにおいて、正方形の各頂点の位置に配設される電極44a,44b,44c,44dからなる第一電極群41と、ヘッド部40基端寄りにおいて、正方形の各頂点の位置に配設される電極44e,44f,44g,44hからなる第2電極群42とを構成している。・・・」
(d)「[0043] 第一電極群41は前述したように正方形の各頂点の位置に配設された電極44a,44b,44c,44dから構成されている。・・・また、これらの電極44a,44b,44c,44dは、正方形の各頂点の隣り合う位置に配設された他の電極との間隔が、それぞれ約6mmとされている。第2電極群42についても、第一電極群41と同様に、同じ形状・間隔で形成されている。・・・」
(e)「[0045] 次に、このように構成された美容器10の作用・効果について説明する。前述したように、各電極44からは90kHzの電流を流すことが可能である。使用者の肌への通電時においては、一般的に、低い低周波になるほど電極と肌との接触部位においてインピーダンスが高くなり、また電気信号を感じる時間的割合が長くなる傾向にあり、その結果、肌への刺激が大きくなり易い。しかしながら本美容器10では、このように90kHzの高周波を用いることにより、肌への刺激を低減させるようにしている。・・・また、このような高周波により一定の温熱効果を与えることもできる。この温熱効果により「脂肪燃焼」と「新陳代謝」を促進させる効果を期待することができる
[0046] そして、以上のような効果は、第二電極群42についても同様にもたらされる。よって、第一電極群41および第二電極群42の広い範囲において、使用者の肌に吸い付くような感覚および温熱効果を与えることができる。なお、本美容器10では90kHzの高周波を用いたが、これに限られず、本発明の実施の形態の美容器10では80kHz~100kHzの範囲内で別の周波数を用いることもできる。」
(f)「[図1]
[図:0001427534000001.jpg]
」
(g)「[図7]
[図:0001427534000002.jpg]
」
(イ)引用発明
したがって、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「ヘッド部40に設けられた電極44から微弱電流を流して、使用者の肌などのマッサージ効果を高める美容器10であって、
美容器10には、8つの電極44が配設されたヘッド部40が設けられ、
各電極44からは90kHzの電流を流すことが可能であり、90kHzの高周波を用いることにより、肌への刺激を低減させ、一定の温熱効果を与えることができ、
隣り合う位置に配設された他の電極との間隔が、それぞれ約6mmとされている、
美容器10。」
ウ 対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明の「ヘッド部40に設けられた電極44から微弱電流を流して、使用者の肌などのマッサージ効果を高める美容器10」は、微弱電流が交流電流であることは引用文献1の図7の記載や技術常識から明らかであるから、本件補正発明の「使用者の肌面に対して交流電流を印加する美容器」に相当する。
(2)引用発明の「8つの電極44が配設されたヘッド部40」は、交流電流を流すから、本件補正発明の「2以上の電極を備えて該電極間に前記交流電流を印加する電極部」に相当する。
(3)引用発明の「他の電極との間隔が、それぞれ約6mm」であることは、本件補正発明の「前記2以上の電極間の距離が2mmないし10mm」であることに相当する。
(4)引用発明の「各電極44からは90kHzの電流を流すことが可能であり、90kHzの高周波を用いることにより、肌への刺激を低減させ、一定の温熱効果を与える」ことは、本件補正発明の「前記交流電流を印加することによって、肌面に電気刺激及び温感作用を同時に付与する」ことに相当する。
してみれば、両者は
「使用者の肌面に対して交流電流を印加する美容器であって、
2以上の電極を備えて該電極間に前記交流電流を印加する電極部を備え、
前記2以上の電極間の距離が2mmないし10mmであって、前記交流電流を印加することによって、肌面に電気刺激及び温感作用を同時に付与する、
美容器。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)本件補正発明は「前記交流電流が印加される前記2以上の電極の間に110kHzないし200kHzの範囲の周波数の前記交流電流を出力する交流電流発生部」を有するのに対し、引用発明の各電極44からは90kHzの電流を流すことが可能である点。
(相違点2)本件補正発明は「電極の抵抗値が10Ω以下」であるのに対し、引用発明はそのように特定されていない点。
エ 判断
(ア)上記相違点1について検討する。
引用文献1の段落[0046]には、美容器10が用いる高周波について、90kHzに限られず別の周波数を用いることもできる旨記載されている。
そして、例えば特開2013-78432号公報の段落【0002】、【0015】~【0017】等に記載されているように、高周波を用いて温熱効果を与える美容器において周波数を110kHz~200kHzの範囲に設定することは通常のことであるから、引用発明において美容器10が用いる周波数を110kHzないし200kHzとすることで、上記相違点1に係る本件補正発明の事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
なお、上記段落[0046]に記載された「80kHz~100kHzの範囲内」は、美容器10が用いることができる周波数の例示にすぎず、110kHz~200kHzの範囲を用いることが通常のことであるから、阻害要因はない。
(イ)上記相違点2について検討する。
高周波を用いて温熱効果を与える美容器において、肌面に効率良く電流を伝えるために、電極に用いられる素材の抵抗値を低くすることは技術常識である。また、美容器の電極に用いる材料として10Ω以下のものは一般的であるから、引用発明を実施するに際し電極に用いる材料を抵抗値が10Ω以下のものとすることは、当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎない。
(ウ)効果について
本件補正発明が奏する効果は、引用発明及び技術常識から当業者が予想し得る範囲のものにすぎない。
オ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 むすび(補正の却下の決定について)
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~6に係る発明は、本件補正前の、令和5年10月19日の手続補正による特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対し、令和6年1月19日付けでなされた原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりである。
(進歩性)本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討したとおり、本件補正発明の発明特定事項を全て含み、更に、交流電流発生部が出力する周波数の範囲を「110kHzないし200kHz」から「100kHzないし200kHz」に拡張するとともに、電極について「2以上の電極間の距離が2mmないし10mm」であること及び「電極の抵抗値が10Ω以下」であることの限定事項を削除したものである。
してみれば、本件補正発明は、上記第2の[理由]3で検討したとおり、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正発明から限定事項を削除した本願発明は、同様の理由により、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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