特許拒絶査定不服審判
2014-014089
ビデオで監視される印刷機
- 審判番号
- 2014-014089
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2009-118603外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2014年07月18日
- 審決日
- 2016年11月15日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
- 【請求人代理人】宮崎 昭夫
- 【請求人代理人】緒方 雅昭
- 分類
- P18 .121-WZ (B41F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2009-118603「ビデオで監視される印刷機」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月26日出願公開、特開2009-274443〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件出願は、平成21年5月15日(パリ条約による優先権主張2008年5月15日、ドイツ連邦共和国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成24年10月19日付け :拒絶理由の通知
平成25年 1月23日付け :意見書、手続補正書の提出
平成25年 8月30日付け :拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知
平成25年12月 4日付け :意見書、手続補正書の提出
平成26年 3月14日付け :拒絶査定(謄本送達日同月18日)
平成26年 7月18日付け :審判請求書、手続補正書の提出
平成26年12月17日付け :上申書の提出
平成27年 4月23日付け :拒絶理由の通知
平成27年 7月28日付け :意見書、手続補正書の提出
平成27年12月10日付け :拒絶理由の通知
平成28年 3月15日付け :意見書、手続補正書の提出
平成28年 6月29日付け :拒絶理由の通知
平成28年10月 5日付け :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成28年10月5日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「被印刷体処理機械(2)でのプロセスが少なくとも1つのカメラ(12,13,14)で撮影され、撮影された前記プロセスがコンピュータ(15)に保存される、被印刷体処理機械でのプロセスを表示する方法において、
前記被印刷体処理機械(2)には、機械状態を検出するためのセンサ(18)が設けられ、操作員によって、ビデオシーケンス(19)の作成および保存を引き起こす機械状態が選択され、該機械状態が検出されることに応じて、前記カメラ(12,13,14)によって撮影された前記プロセスが、連続的な画像ストリームであるビデオシーケンス(19)として作成されて保存され、
特定の機械状態が発生した場合、前記機械状態を記録した前記コンピュータ(15)上の前記ビデオシーケンス(19)が上書きされないようにされるか、前記ビデオシーケンス(19)のさらなる作成および保存が停止されるか、または、そのいずれもが実行され、
画像が再生される時に、該画像と結び付いた前記機械状態も自動的に表示されることを特徴とする、被印刷体処理機械でのプロセスを表示する方法。」
第3 当審拒絶理由の概要
平成28年6月29日付け拒絶理由通知書で通知した拒絶理由の理由2の概要は、「平成28年3月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される、請求項1に係る発明は、特開2005-56098号公報(以下「引用例1」という。)に記載の発明、特開平11-77978号公報(以下「引用例2」という。)に記載の発明及び当業者に周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。」というものである。
第4 刊行物
(1)引用例1
平成28年6月29日付けの拒絶の理由で引用された引用例1には、以下の記載がある。
ア 「【0015】
以下本発明を、図2に示すごとく、外部装置として備えた複数台のPLC10・10を互いに連携させてターゲットシステム12をシーケンス制御可能とする制御システムにおいて、各PLC用の制御盤として使用するプログラム式の表示装置14に実施した一例に基づいて説明するがこれに限らず、表示装置14を単独で使用し、あるいは表示機能を備えた各種のパソコン応用装置に対しても略同様に実施できることは勿論である。」
イ 「【0022】
表示装置14は、図3および図4に例示する如く、略矩形状に形成した本体ケース22における正面側に、例えば液晶表示デバイスをディスプレイ24として使用した表示画面26を配置するとともに、その表示画面26に密着させてタッチパネル28を配設する。一方、本体ケース22の内部に図4に例示する表示制御回路30を収納することにより、表示画面26上にPLC10における制御状態に対応した表示を行うと同時に、タッチパネル28を介した表示画面26に対する指先による指示動作は、タッチパネルコントローラ32によりその指示座標および指示時期が解析され、後記する各種のデータ処理に使用される。
【0023】
表示制御回路30の構成はパソコン装置と基本的に略同一であって、バスラインを介してCPU34やROM36・RAM37を含む各種のメモリあるいはグラフィックコントローラ38を接続し、CPU34によるデータ処理結果はグラフィックコントローラ38を介してビデオRAM40に展開されるとともに、対応する内容がディスプレイ24の表示画面26上に表示される。
【0024】
本発明にあっては更に、ビデオカメラの様な動画像の撮像手段42と、マイクの様な音響の集音手段44とをターゲットシステム12における制御箇所の様な常時の監視を必要とする場所に対応させて配置することにより、たとえばアラーム発生時における現場の状況やモータの異音のような通常と異なる状態に関する情報を収集可能とする。そして、撮像手段42から出力される映像信号を映像処理回路46を介してデジタル化し動画像データ50とする一方、集音手段44から出力される音響信号を音響処理回路48を介してデジタル化し音響データ52として各々取り込むとともに、所定時間分のデータをRAM37やハードディスクの様なメモリ上に一時記憶可能とする。なお各種データの記憶方法としては、メモリに余裕がある場合は全てのデータを記憶させることも可能であるし、制限がある場合は記憶可能時間を予め設定し、始めに記憶させたデータから順次に消去させながら、必要部分のみを選択的に保存させるなど、従来の各種方法が利用できることは勿論である。
【0025】
また、後記する処理指示語を用いてPLC10における制御状態を常に監視しておき、ターゲットシステム12に備えたセンサ21の検出状態に対応する状態データが、例えばタンクレベルや温度が上限値を超える様な制御異常が発生した場合は勿論、通常の動作時にあっても所定の時間間隔の様な所定の条件が満足されると、その条件が満足されたのち或いはその前後における例えば数分ないしは10分程度の所定時間、状態データの変化履歴を含む付加データ54をメモリ上に順次に保存する。
【0026】
そのとき、状態データの変化履歴の取り込み期間に対応させて動画像データ53と音響データ50を取り込み、動画像データ52のフレーム変化に対応させて図5の様に音響データ52と付加データ54を圧縮保存させて1つのファイル56を構成する。これにより、動画像データ52の再生時にそれと同期して、音響データ52と状態データの変化履歴が再現できるようにしている。なお同時に記憶させる付加データ54としては、日付けと時刻、あるいはアラームなどの発生されたイベント内容を特定する情報、選択された単位画面の種類あるいはタッチパネル28のタッチ情報など、その内容は限定されるものではない。」
ウ 「【0028】
更に、状態データあるいは付加データ54にインデックスを設けてデータベース化し、特定のキーワードあるいは特定の状態データの値の大小等を検索キーとして、その情報と一体に記憶されている動画像データ52あるいは音響データ50の記憶位置を間接的に検索できるようにしている。」
エ 「【0034】
本発明は上記の様にして記憶した情報を、表示画面26上で再生表示する構成にその特徴を有する。例えば、図3はアラームが発生してシステムが停止したオフライン時に自動的に表示される単位画面の一例であって、画面左上に動画像の表示区画58を設け、その下に、動画像の再生・停止および早送りキーを備えた操作部60と、キーワードの入力窓62を備える。」
オ 「【0036】
更に表示画面26の右半分には、動画像が記録された日付や時刻に加えて、動画像の表示に同期した状態データの変化が表示される付加データの表示区画64が形成され、更に図示しないスピーカで音響データ50が表示されるのである。なおこの状態情報の表示は、数値や記号の様なPLC10から取り出されたままで加工がされていない生またはそれに近いデータを直接表示することも可能であるし、図3で例示する様にグラフ化するなど図形に変形して表示することもできる。」
カ 上記ア、イ、エの記載から、引用例1には、「複数台のPLCを互いに連携させてターゲットシステムをシーケンス制御可能とする制御システム」で、「使用する」とともに、「表示制御回路を収納」し、「表示制御回路の構成はパソコン装置と基本的に略同一」である「表示装置」において、「ビデオカメラの様な動画像の撮像手段をターゲットシステムにおける制御箇所の様な常時の監視を必要とする場所に対応させて配置」し、「撮像手段から出力される映像信号を映像処理回路を介してデジタル化し動画像データ」として、「メモリ上に一時記憶可能」とし、「画面左上に動画像の表示区画を設け」、「表示画面上で再生表示する」方法が記載されているといえる。
上記アないしカの記載を総合すると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「複数台のPLCを互いに連携させてターゲットシステムをシーケンス制御可能とする制御システムで使用するとともに、表示制御回路を収納し、表示制御回路の構成はパソコン装置と基本的に略同一である表示装置において、ビデオカメラの様な動画像の撮像手段をターゲットシステムにおける制御箇所の様な常時の監視を必要とする場所に対応させて配置し、撮像手段から出力される映像信号を映像処理回路を介してデジタル化し動画像データとして、メモリ上に一時記憶可能として、画面左上に動画像の表示区画を設け、表示画面上で再生表示する方法において、
ターゲットシステムに備えたセンサの検出状態に対応する状態データが、例えばタンクレベルや温度が上限値を超える様な制御異常が発生した場合、その条件が満足されたのち或いはその前後における例えば数分ないしは10分程度の所定時間、状態データの変化履歴を含む付加データをメモリ上に順次に保存し、
状態データの変化履歴の取り込み期間に対応させて動画像データを取り込み、保存させて1つのファイルを構成し、
データベース化して、特定のキーワードあるいは特定の状態データの値の大小等を検索キーとして、その情報と一体に記憶されている動画像データを検索できるようにし、
表示画面の右半分には、動画像の表示に同期した状態データの変化が表示される付加データの表示区画が形成される方法。」
(2)引用例2
平成28年6月29日付けの拒絶の理由で引用した引用例2には、以下の記載がある。
ア 「【0009】本発明は、多数のユニットから成り、各ユニットが互いにインターロックを取り協調的に制御される比較的大規模な機械の制御シスシムにおいて、1)突発的に生じる故障に対しても対応することができ、2)インターロックが関与する複雑な故障に対しても真の故障原因を特定することができ、3)必要に応じて、人間のオペレータを介在させることなく自動的に故障原因を判定し、また対処法を提示することができるメンテナンス支援システムを提案することを課題とする。」
イ 「【0016】
【発明の実施の形態】図1に、新聞輪転機に適用した本発明に係るシステムのブロックダイヤグラムを示す。給紙部,印刷部,ウェブパス部折機で構成される新聞輪転機の各ユニット毎に制御用PLC1が設置され、それらはPLCリンク6により通信回線でリンクされている。インターフェース用PLC2が制御用PLC1にリンクされ、該インターフェース用PLC2はコンピュータ3に接続されている。該コンピュータ3は表示装置4と入力装置5を備えている。」
(上記の「ウェブパス部折機」との記載について、引用例2【0007】に「ウェブパス部、折機」という記載があること、及び【図1】から「ウェブパス部」と「折機」とが個別にあることが看て取れることから、「ウェブパス部、折機」の誤記であると認められる。)
ウ 「【0018】コンピュータ内にはオペレーティングシステム30、推論エンジン32、ルールベース,データベース,ケースベースを含むエキスパートシステムのためのファイル33及び入力フィルタ34等のソフトウェアが組み込まれている。コンピュータは、さらに該エキスパートシステムにおけるルールベース,データベース,ケースベースへの項目の追加や修正等を行うための入力装置を備える。オペレーティングシステム30はインターフェース用PLC2からのデータの取り込みや表示装置4への表示データの出力、入力装置5からのデータやコマンドの入力、推論エンジン32とのデータのやり取りや入力フィルタ34へのインターフェース用PLC2からの信号データのやり取りを制御する。いずれかの制御用PLC1が検出した異常は信号データとしてPLCリンク6とインターフェース用PLC2を介してコンピュータ3に取り込まれる。」
上記アないしウを総合すると、引用例2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「給紙部、印刷部、ウェブパス部、折機で構成される新聞輪転機の各ユニット毎に制御用PLCが設置され、それらはPLCリンクにより通信回線でリンクされ、インターフェース用PLCが制御用PLCにリンクされ、該インターフェース用PLCはコンピュータに接続され、
各ユニットが互いにインターロックを取り協調的に制御され、
いずれかの制御用PLCが検出した異常は信号データとしてPLCリンクとインターフェース用PLCを介してコンピュータに取り込まれる新聞輪転機。」
第5 対比
引用発明1の「ターゲットシステム」は本願発明の「機械」に相当する。
引用発明1の「ビデオカメラの様な動画像の撮像手段」は、本願発明の「カメラ」に相当する。
引用発明1の「ターゲットシステムにおける制御箇所の様な常時の監視を必要とする場所」では、何らかの「プロセス」が行われていることは自明であるから、「ビデオカメラの様な動画像の撮像手段をターゲットシステムにおける制御箇所の様な常時の監視を必要とする場所に対応させて配置し、撮像手段から出力される映像信号を映像処理回路を介してデジタル化し動画像データ」とすることは、本願発明の「プロセスが少なくとも1つのカメラ(12,13,14)で撮影され」ることに相当する。
引用発明1において、「表示装置」は、「表示制御回路を収納し、表示制御回路の構成はパソコン装置と基本的に略同一」であるから、引用発明1の「表示装置」は、本願発明の「コンピュータ」に相当する。
引用発明1の「メモリ上に一時記憶可能」とすること、及び「取り込み期間に対応させて動画像データを取り込み、保存」することは、本願発明の「撮影されたプロセスがコンピュータに保存される」ことに相当する。
引用発明1の「画面左上に動画像の表示区画を設け、表示画面上で再生表示する」ことは、本願発明の「機械でのプロセスを表示する」ことに相当する。
引用発明1の「ターゲットシステムに備えたセンサ」は、本願発明の「機械」に設けられた「機械状態を検出するためのセンサ(18)」に相当する。
引用発明1において、「センサの検出状態に対応する状態データ」を得ていることは自明であるが、このことは、本願発明の「機械状態が検出されること」に相当する。
引用発明1の「例えばタンクレベルや温度が上限値を超える様な制御異常が発生した場合」は、本願発明の「ビデオシーケンス(19)の作成および保存を引き起こす機械状態」に相当する。
引用発明1の「例えばタンクレベルや温度が上限値を超える様な制御異常が発生した場合、その条件が満足されたのち或いはその前後における例えば数分ないしは10分程度の所定時間、状態データの変化履歴を含む付加データをメモリ上に順次に保存し、状態データの変化履歴の取り込み期間に対応させて動画像データを取り込み、保存させて1つのファイルを構成」することは、本願発明の「機械状態が検出されることに応じて、前記カメラ(12,13,14)によって撮影された前記プロセスが、連続的な画像ストリームであるビデオシーケンス(19)として作成されて保存され」ることに相当する。
引用発明1の「画面左上に動画像の表示区画を設け、表示画面上で再生表示」し、「表示画面の右半分には、動画像の表示に同期した状態データの変化が表示される」ことは、本願発明の「画像が再生される時に、該画像と結び付いた前記機械状態も自動的に表示されること」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明1とは、
「機械でのプロセスが少なくとも1つのカメラ撮影され、撮影された前記プロセスがコンピュータに保存される、機械でのプロセスを表示する方法において、
前記機械には、機械状態を検出するためのセンサが設けられ、ビデオシーケンスの作成および保存を引き起こす機械状態が検出されることに応じて、前記カメラによって撮影された前記プロセスが、連続的な画像ストリームであるビデオシーケンスとして作成されて保存され、
画像が再生される時に、該画像と結び付いた前記機械状態も自動的に表示される、機械でのプロセスを表示する方法。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点1)
本願発明では、プロセスを撮影し、表示し、センサを設ける対象が「被印刷体処理機械」であるのに対し、引用発明1では、「機械」であって「被印刷体処理機械」に特定されていない点。
(相違点2)
本願発明では、「操作員によって、ビデオシーケンスの作成および保存を引き起こす機械状態が選択され」るのに対し、引用発明1ではそれについて特定されていない点。
(相違点3)
本願発明では、「特定の機械状態が発生した場合、前記機械状態を記録した前記コンピュータ上の前記ビデオシーケンスが上書きされないようにされるか、前記ビデオシーケンスのさらなる作成および保存が停止されるか、または、そのいずれもが実行され」るのに対し、引用発明1では、それについて特定されていない点。
第6 判断
上記相違点1ないし3について検討する。
(1)相違点1について
引用発明2の「給紙部、印刷部、ウェブパス部、折機で構成される新聞輪転機」は、本願発明の「被印刷体処理機械」に相当する。
そして、引用発明1と引用発明2とは、複数台のPLCを互いに連携させて制御するとともに、異常の発生を検知する点で共通している。当該共通点に着目して、引用発明1の「機械」として、引用発明2の「被印刷体処理機械」を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。
したがって、引用発明1及び引用発明2に基づいて、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
効果について検討しても、引用発明1及び2から予想可能な範囲のものである。
(2)相違点2について
「制御異常が発生した」ことを検出する際に、「制御異常」とする閾値を「操作員」が選択することは、当業者に周知の事項(以下「周知事項1」という。)である。
周知事項1が開示されている刊行物の例として、特開2000-76098号公報には、以下の記載がある。
「【0035】パネルコンピュータ1が動作可能になると、S2において、管理者は、パネルコンピュータ1を特別な手順で起動して、BIOSセットアップを指示する。これにより、パネルコンピュータ1の設定部23は、例えば、図4に示すように、BIOSセットアップ画面を表示して、各監視項目の有効/無効と、各監視項目で正常と判断する範囲とを、管理者に入力させる。なお、本実施形態では、当該BIOSセットアップは、通常使用時は、接続されないキーボード(図示せず)によって操作され、通常使用時には、操作できない。
【0036】この表示例では、温度に関する監視項目として、CPU温度の監視は、有効に設定されており、CPU温度が70〔℃〕を越えた場合、異常と判断するように設定される。また、パネルコンピュータ1内部の温度であるシステム温度の監視は、無効に設定されている。本実施形態では、異常と判断する温度は、各項目毎に調整可能であり、例えば、5℃単位で増減できる。」
「【0063】同様に、本実施形態では、各監視項目を異常と判断する範囲も、BIOSセットアップによって管理者のみ操作されるが、これに限らず、ユーザが当該範囲を設定可能でもよい。ただし、当該範囲の僅かな変更は、OSシャットダウンの頻度やシステムダウンの頻度に大きく影響する虞れがある。したがって、パネルコンピュータ1自体や、例えば、制御対象など、パネルコンピュータ1に接続された機器などを熟知した管理者によってのみ、当該範囲が操作される方がよい。」
同様に、周知事項1が開示されている刊行物の例として、特開平9-184069号公報には、以下の記載がある。
「【0116】尚、ステップS18における正常→異常への変化、または異常→正常の変化は、可変の閾値を用いて判断される。この閾値は、図23の上限値と下限値とに従って決定される。即ち、ある信号の値が異常であるか正常であるかの判断は、上記上限値と下限値の間にあれば、正常(又は異常)と判断される。この閾値は、図25の「閾値変更アイコン」を操作することにより変更することができる。エラー信号は、例えば、圧力信号などのようにアナログ値を有するものがあり、その信号の値に基づいて正常異常を判断する場合には、一義的に正常/異常を判定することは困難である。そこで、本実施形態では、閾値を変更可能にしている。閾値を変更する場合には、例えば図32のマップに示されているエラー信号をマウスなどで選択し、前述の「閾値変更アイコン」を操作すると、選択されたエラー信号の閾値をテーブル(図23)中で変更するようにする。」
同様に、周知事項1が開示されている刊行物の例として、特開2008-52577号公報には、以下の記載がある。
「【0034】
図4(e)は、本発明の実施形態の一例による稼動状態を表示したグラフである。図3(d)と同様に、グラフの横軸に、統計処理部224から供給される図4(b)の各ロットの検査開始時刻からの経過時間を、縦軸に、センサ情報DB212から読み出した図4(c)の検査フローの各処理を実行したときの圧力センサ253から得たデータをプロットする。このグラフは画像処理部222によって作成され、表示部223によって表示される。さらに本例では、Zスコアの値がしきい値を超えたデータのグラフ上のプロットした点の形状(501)(502)を変更して、ユーザに異常を知らせる。また、モニタ230上にZスコアの値が設定した異常のしきい値を超えたという内容のメッセージ(503)を表示する。ユーザは、その異常の詳細を知りたい場合は、異常を示すプロット(501、502)をマウス又はキーボード231でポイントすると詳細の内容(504)がモニタ230上に表示される。なお、異常のしきい値は装置使用者が変更可能とする。ここで、各処理の圧力のばらつきを標準偏差とZスコアから計算して求めたが、公知の他の統計手法(平均値からの差、中央値からの差など)で求めることもできる。」
同様に、周知事項1が開示されている刊行物の例として、特開2001-272160号公報には、以下の記載がある。
「【0088】次に、図13の設定用サブメニューの「故障予測判定内容変更」枠をマウス92でクリックすると、マイクロコンピュータ77はディスプレイ89に図16の故障予測判定内容変更画面を表示する。この故障予測判定内容変更画面では、中央から左側に表示されているチャンネルナンバーのショーケースSC等の端末側制御装置6に対して、前記図9と同様の故障予測判定基準の変更設定が行える。即ち、この場合には各チャンネルナンバーを指定して当該ショーケースSC等に対する検査や修理結果を「機器交換」、「修理調整」、「異常無し」の三種類から選択して入力できると共に、修理内容もキーボード91を用いて入力可能とされている。更に、その下側には故障予測の判定基準の設定を変更するための「しきい値の学習選択」欄が表示される。」
引用発明1と周知事項1とは、「制御異常が発生した」ことを検出する点で共通するものである。したがって、引用発明1に対して、周知事項1を適用することは、当業者であれば容易に想到するものである。そして、引用発明1に周知事項1を適用すれば、操作員によって「例えばタンクレベルや温度が上限値を超える様な制御異常が発生した場合」とする閾値が選択されることとなるが、これはすなわち「操作員によって、ビデオシーケンス(19)の作成および保存を引き起こす機械状態が選択され」ることに相当する。
よって、引用発明1に対して周知事項1を適用して、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
効果について検討しても、引用発明1及び周知事項1から当業者が予想可能な範囲のものである。
(3)相違点3について
引用発明1の「ターゲットシステムに備えたセンサの検出状態に対応する状態データが、例えばタンクレベルや温度が上限値を超える様な制御異常が発生した場合」は、本願発明の「特定の機械状態が発生した場合」に相当し、引用発明1の「状態データの変化履歴の取り込み期間に対応させて動画像データを取り込み、保存させ」た「1つのファイル」は、本願発明の「機械状態を記録したコンピュータ上のビデオシーケンス」に相当する。
また、継続して保存が必要なデータが上書きされないようにすること(以下「周知事項2」という。)は、一般的に広くに行われている。
そして、引用発明1は「データベース化して、特定のキーワードあるいは特定の状態データの値の大小等を検索キーとして、その情報と一体に記憶されている動画像データを検索できる」ようにするものであるから、上記「ファイル」は「データベース」に継続して保存される必要があるデータであることは自明である。したがって、引用発明1において、上記周知技術2を適用して、上記「ファイル」が上書きされないようにすることは、当業者が容易に想到するものである。
よって、引用発明1に対して周知事項2を適用して、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
効果について検討しても、引用発明1及び周知事項2から当業者が予想可能な範囲のものである。
また、本願発明全体が奏する効果について検討しても、引用発明1、2及び周知事項1、2から当業者が予想できる範囲のものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、2および周知事項1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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