特許無効審判
2013-800072
有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料、それを利用した有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料
- 審判番号
- 2013-800072
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2008-212714外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2013年04月24日
- 審決日
- 2017年02月20日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P1113.121-YAA(C09K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第9項、特許法第41条、特許法第181条第2項、特許法第134条の2第6項、特許法第134条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第4866885号「有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料、それを利用した有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料」の特許無効審判事件についてされた平成25年12月17日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成26年(行ケ)第10027号、平成27年 2月25日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第4866885号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。
本件の請求項1、4、5、10-14に係る発明についての特許に対する審判請求は、成り立たない。
本件の請求項2、3、6-9に係る発明についての特許に対する審判請求は、不適法であるから、却下する。
審判費用は、14分し、請求人がその8、被請求人がその6をそれぞれ負担すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
1(1) 被請求人は、発明の名称を「有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料、それを利用した有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子用材料」とする、特許第4866885号(以下、「本件特許」という。)の特許権者である。
(2) 本件特許は、平成16年12月13日(特許法第41条に規定される特許出願等に基づく優先権主張:平成15年12月19日)にされた特許出願の一部を平成20年 8月21日に新たな特許出願としたものに係るものであって、平成23年11月18日に特許権の設定の登録がされた。
2(1) 請求人は、平成25年 4月24日、本件特許の請求項1ないし14に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする旨の審決を求める本件審判を請求したところ、被請求人は、同年 7月16日、答弁書を提出するとともに訂正請求書を提出し、本件特許に係る明細書及び特許請求の範囲の訂正(以下、「本件訂正1」という。)を請求した。
(2) 審判長は、平成25年 8月22日付けで両当事者に対し口頭審理の審理事項を通知し、これに対し、請求人は同年 9月10日、被請求人は同月24日、それぞれ口頭審理陳述要領書を提出した。
(3) 平成25年10月 1日、口頭審理が行われた。その後、請求人は同年10月15日、被請求人は同月30日、それぞれ上申書を提出した。
(4) 特許庁は、平成25年12月17日、「訂正を認める。本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決(以下、「原審決」という。)をし、その謄本は、同月27日、請求人に送達された。
3(1) 請求人は、平成26年 1月24日、原審決を不服として知的財産高等裁判所に訴えを提起した(平成26年(行ケ)第10027号)。同裁判所は、平成27年 2月25日、「特許庁が無効2013-800072号事件について平成25年12月17日にした審決を取り消す。」旨の判決を言い渡した。
(2) 被請求人は、前記判決に対する上告受理の申立てを行ったところ、最高裁判所は、平成28年 4月 8日、前記申立てを不受理とする旨の決定をし、前記判決は確定した。
4(1) 前記判決が確定したことから、特許法第181条第2項の規定により更に審理を行うことになったところ、被請求人は、平成28年 4月15日、同法第134条の3に基づく申立てをしたので、審判長は、被請求人に対し、同月25日付けで同条に規定する訂正請求のための期間を指定する通知をした。
(2) 被請求人は、平成28年 5月 9日、訂正請求書を提出し、本件特許に係る明細書及び特許請求の範囲の訂正(以下、「本件訂正2」という。なお、本件訂正1は、特許法第134条の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなされる。)を請求するとともに、同月17日、手続補正書を、同月30日、上申書を、それぞれ提出した。
(3) 請求人は、平成28年 7月 4日、弁駁書を提出した。
(4) 審判長は、平成28年 9月 1日付けで両当事者に対し口頭審理の審理事項を通知し、これに対し、請求人、被請求人ともに同年10月 7日、口頭審理陳述要領書を提出した。さらに、被請求人は、同年10月21日、上申書を提出した。
(5)平成28年10月21日、口頭審理が行われた。その後、被請求人は同年11月14日、請求人は同月16日、それぞれ上申書を提出した。
第2 平成28年 5月 9日付け訂正請求書による訂正(本件訂正2)の可否について
本件訂正2は、特許法第134条の2第3項及び同法同条第9項で準用する同法第126条第4項の規定に従い、一群の請求項(請求項1-14)ごとに請求されたものであるところ、当審は、本件訂正の請求を認容すべきものと判断する。
その理由は以下のとおりである。
1 訂正事項
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「下記一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。
【化1】
(式中、A1及びA2は、それぞれ独立に、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-フェナンスリル基、2-フェナンスリル基、3-フェナンスリル基、4-フェナンスリル基、9-フェナンスリル基、3-メチル-2-ナフチル基、4-メチル-1-ナフチル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基である。
Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、核炭素数6~50の芳香族炭化水素環基であるか、Ar1及びAr2の一方が水素原子で他方が核炭素数6~50の芳香族炭化水素環基である。
R1~R8は、それぞれ独立に、水素原子、核炭素数6~50の芳香族炭化水素環基、炭素数1~50のアルキル基、炭素数3~50のシクロアルキル基である(ただし、A1及び/またはA2が1-ナフチル基または2-ナフチル基の場合、R1~R8は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~50のアルキル基である)。
R9及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、核炭素数6~50の芳香族炭化水素環基、炭素数1~50のアルキル基、炭素数3~50のシクロアルキル基であり、いずれもアルケニル基であることはない。
Ar1、Ar2、R9及びR10は、それぞれ複数であってもよい。
ただし、一般式(1)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。)」とあるのを、「下記一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。
【化1】
(式中、A1は、2-ナフチル基、9-フェナンスリル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基である。
A2は、1-ナフチル基、2-ナフチル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基である。
Ar1は水素原子であり、Ar2は、フェニル基、2-ナフチル基、2-ビフェニル基から選ばれる芳香族炭化水素環基である。
R1~R10は、水素原子である。
ただし、一般式(1)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。)」と訂正する。
イ 訂正事項2
請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
請求項3を削除する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「一般式(1)において、前記Ar1及びAr2がそれぞれ独立に、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基及び9-フェナンスリル基のいずれかであるか、Ar1及びAr2の一方が水素原子で他方がフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基及び9-フェナンスリル基のいずれかである請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。」とあるのを、「一般式(1)において、前記Ar1が水素であり、Ar2がフェニル基である請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。」と訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「前記非対称アントラセン誘導体が、4位に置換基を有するナフタレン-1-イル基及び/又は核炭素数12~20の縮合芳香族炭化水素環基を有する請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。」とあるのを、「前記非対称アントラセン誘導体が、4位に置換基を有するナフタレン-1-イル基を有する請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。」と訂正する。
カ 訂正事項6
請求項6を削除する。
キ 訂正事項7
請求項7を削除する。
ク 訂正事項8
請求項8を削除する。
ケ 訂正事項9
請求項9を削除する。
2 訂正の適否に係る判断
(1)特許法第134条の2第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とするか否かについて
ア 訂正事項1
訂正事項1は、A1、A2、Ar1及びR1~R10について、それぞれ、訂正前の請求項1に明示的に記載された選択肢のうちの特定のものに限定するとともに、Ar2について、訂正前の発明における「核炭素数6~50の芳香族炭化水素基」を、実施例に記載のあるフェニル基、2-ナフチル基、2-ビフェニル基に限定し、これらの限定によって、Ar1、Ar2、R9及びR10がそれぞれ1つの基(単数)になったことに伴い、「Ar1、Ar2、R9及びR10は、それぞれ複数であってもよい」の事項を削除することにより特許請求の範囲を減縮しているものと認められる。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることができる。
イ 訂正事項4
訂正事項4は、「Ar1及びAr2がそれぞれ独立に、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基及び9-フェナンスリル基のいずれかであるか、」との選択肢を削除するとともに、訂正前の「Ar1及びAr2の一方が水素原子で他方がフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基及び9-フェナンスリル基のいずれかである」との事項を「Ar1が水素であり、Ar2がフェニル基である」に限定することにより特許請求の範囲を減縮しているものと認められる。
したがって、訂正事項4に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることができる。
ウ 訂正事項5
訂正事項5は、非対称アントラセン誘導体が有する基について、許容されていた選択肢の中から、「4位に置換基を有するナフタレン-1-イル基」に限定することにより特許請求の範囲を減縮しているものと認められる。
したがって、訂正事項5に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることができる。
エ 訂正事項2、3、6-9
訂正事項2、3、6-9は、請求項を削除することにより特許請求の範囲を減縮しているものと認められる。
したがって、訂正事項2、3、6-9に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることができる。
(2)特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するか否かについて
ア 訂正事項1
訂正事項1は、本件特許明細書の段落【0013】、【0014】、【0016】、【0017】、【0028】及び実施例1~5の範囲内でするものであって(特に、実施例1~5で用いられている非対称アントラセン誘導体は、下記のとおりであって、
いずれの化合物も、A1は、2-ナフチル基、9-フェナンスリル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基であり、A2は、1-ナフチル基、2-ナフチル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基であり、Ar1は水素原子であり、Ar2は、フェニル基、2-ナフチル基、2-ビフェニル基から選ばれる芳香族炭化水素環基であり、R1~R10は、水素原子である。)、しかも、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものに該当しないので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
イ 訂正事項4
訂正事項4は、訂正前に許容されていた選択肢の中で限定するものであるから、訂正後に許容される選択肢も当然に願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内のものであって、しかも、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものに該当しないので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ 訂正事項5
訂正事項5は、非対称アントラセン誘導体が有する基について、許容されていた選択肢の中で限定するものであるから、訂正後に許容される選択肢も当然に願書に添付された明細書に記載された事項の範囲内のものであって、しかも、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものに該当しないので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
エ 訂正事項2、3、6-9
訂正事項2、3、6-9は、請求項の削除であり、何ら新規事項を追加するものでなく、しかも、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものに該当しないので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
3 訂正に係るまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の各規定に適合するものである。
よって、本件訂正を認める。
第3 本件特許請求の範囲の記載
上記「第2」のとおり、本件訂正の請求は適法なものであるから、本件無効審判の請求の対象となっている請求項1-14の記載は、以下のとおりとなった。
「【請求項1】
下記一般式(1)で表される非対称アントラセン誘導体からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。
【化1】
(式中、A1は、2-ナフチル基、9-フェナンスリル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基である。
A2は、1-ナフチル基、2-ナフチル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基である。
Ar1は水素原子であり、Ar2は、フェニル基、2-ナフチル基、2-ビフェニル基から選ばれる芳香族炭化水素環基である。
R1~R10は、水素原子である。
ただし、一般式(1)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】
一般式(1)において、前記Ar1が水素であり、Ar2がフェニル基である請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。
【請求項5】
前記非対称アントラセン誘導体が、4位に置換基を有するナフタレン-1-イル基を有する請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料。
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】
陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光帯域が、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料を単独もしくは混合物の成分として含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記発光層が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料を単独もしくは混合物の成分として含有する請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記有機薄膜層が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料をホスト材料として含有する請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記発光層が、さらにアリールアミン化合物を含有する請求項10~12のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記発光層が、さらにスチリルアミン化合物を含有する請求項10~12のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。」
(以下、本件特許の請求項1ないし14に係る発明を、項番に従い、「本件発明1」ないし「本件発明14」という。)
第4 両当事者の主張の概要と証拠方法
1 両当事者の主張
(1) 請求の趣旨
特許第4866885号の請求項1乃至14に記載された各発明について特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める(なお、本件訂正2によって、請求項2、3、6-9が削除されたことから、平成28年7月4日付け弁駁書においては、「請求項1、4、5、10、11、12、13及び14に記載された各発明について特許を無効とする」との審決が求められている。)。
(2) 答弁の趣旨
本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。
2 証拠方法
両当事者から提出された証拠方法は以下のとおりである(以下、各証拠につき、甲第1号証を「甲1」などと略して記載する。)。
(1) 請求人から提出された証拠
甲1:国際公開第03/087023号
甲2:特開2000-182776号公報
甲3:特開2001-97897号公報
甲4:特許第3148176号公報
甲5:国際公開第01/021729号
甲6:特開平11-167991号
甲7:特開平11-307255号公報
甲8:R&D Review of Toyota CRDL,Vol.36,No.3(2001.9)p57
甲9:豊田中央研究所R&Dレビュー、Vol.33,No.2(1998.6)p3~22
(以上、審判請求書に添付して提出)
甲10:特開2001-284050号公報
甲11:米国特許第5935721号明細書(部分訳添付)
甲12:特開平6-1973号公報
甲13:城戸淳二監修「有機EL材料とディスプレイ」、2001年2月28日、株式会社シーエムシー発行、p3~26及びp82~102
(以上、平成25年9月10日付け口頭審理陳述要領書に添付して提出)
(2) 被請求人から提出された証拠
乙1:森竜雄著「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい有機ELの本」2010年5月20日(初版3刷)、日刊工業新聞社発行、p67~92
(以上、答弁書に添付して提出)
乙2:城戸淳二監修「有機EL材料とディスプレイ」、2001年2月28日、株式会社シーエムシー発行、p27~39
乙3:城戸淳二監修「有機EL材料とディスプレイ」、2001年2月28日、株式会社シーエムシー発行、p148~160
乙4:別件の特許無効審判事件(無効2008-800045号)において請求人が提示した2008年9月1日付け実験報告書
乙5:乙第4号証に係る無効審判事件の審決取消訴訟(平成21年(行ケ)10096号)において請求人が提出した第1準備書面
乙6:被請求人従業者西村和樹の陳述書
(以上、平成25年9月24日付け口頭審理陳述要領書に添付して提出)
乙7:H.Aziz et al,”Degradation in tris(8-hydroxyquioline)aluminum(ALQ3)-based organic light emitting devices(OLEDs)”,Organic Light-Emitting Materials and Devices IV,Proc.SPIE,Vol.4105,(2001),p251~255(部分訳添付)
(以上、平成25年10月30日付け上申書に添付して提出)
乙8:知的財産高等裁判所 平成27年2月25日判決(平成26年(行ケ)第10027号)
乙9:東芝レビュー、Vol.67、No.9(2012)、p56~57
乙10:佐藤佳晴監修「有機EL技術と材料開発」、2010年5月21日、株式会社シーエムシー出版発行、p34~35
乙11:被請求人従業者伊藤裕勝の陳述書
(以上、平成28年5月30日付け上申書に添付して提出)
乙12:高部眞規子著「実務詳説 特許関連訴訟」、2011年1月15日、社団法人金融財政事情研究会発行、p296~299
乙13:判例時報2137号、2012年3月11日、p111~123
乙14:審査ハンドブック 3205及び3206
乙15:判例タイムズ1229号、2007年3月15日、p306~316
乙16:知的財産高等裁判所 平成27年2月26日判決(平成25年(行ケ)第10115号)
乙17:知的財産高等裁判所 平成20年3月27日判決(平成19年(行ケ)第10106号)
乙18:時任静士他著「有機ELディスプレイ」、2004年8月20日、株式会社オーム社発行、p40~45
(以上、平成28年10月7日付け口頭審理陳述要領書に添付して提出)
乙19:無効2013-800072口頭審理説明資料
(以上、平成28年10月21日付け上申書に添付して提出)
乙20:被請求人従業者伊藤裕勝の陳述書(第2回口頭審理調書の「審判長」の「1」によれば、「平成28年10月21日付けで被請求人が提出した上申書の添付資料を乙第19号証とする」とあることから、乙第19号証として提出された当該陳述書は、項番を一つずらし、「乙第20号証」と読み替える。)
乙21:被請求人従業者伊藤裕勝の陳述書(同様の理由により、当該陳述書を「乙第21号証」に読み替える。)
(以上、平成28年11月14日付け上申書(2)に添付して提出)
第5 請求人が主張する無効理由
請求人が主張する無効理由は、無効理由1、2であるところ、第2回口頭審理調書の「請求人」の「4」によれば、「審判請求書における無効理由2についての主張を取り下げる」ことが確認されている。したがって、以下では、無効理由1のみについて判断していくところ、無効理由1は、以下のとおりであると認められる。
[無効理由1]
本件特許の請求項1、4、5、10-14に係る発明は、甲1に記載された発明を主たる引用発明とし、甲2ないし甲5の知見を組み合わせること及び必要に応じてさらに甲6ないし甲9の当業者の周知技術並びに甲10ないし甲13の当業者の周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたものである。
第6 当審の判断
当審は、
請求項1、4、5、10-14に係る発明についての特許につき、請求人が主張する無効理由について理由がない、
と判断する。以下、詳述する。
(1)甲1に記載の事項
(1a)請求の範囲
「 1 .下記一般式 (A)で表される新規芳香族化合物。
A-Ar-B (A)
〔式中、Arは、置換もしくは無置換のアントラセンディール基である。Bは、 アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2~60の複素環基又は置換もしくは無置換の炭素数5~6 0のアリール基である。Aは、下記一般式(1)~(11)から選ばれる基であり、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基により置換されていてもよい。但し、Bがアリールァミノ基で置換されている場合は、Aはアリールアミノ基で置換されたフェニル基ではない。
(式中、Ar1~Αr3は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリール基、Ar4は置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリーレン基、Ar5は置換もしくは無置換の炭素数6~30の3価の芳香族残基である。R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、 置換もしくは無置換の炭素数2~40のアルケニル 基、置換もしくは無置換の炭素数5~40のシクロアルキル基、 置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5~40の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数2~40の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数7~40のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~40のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2~30のアルコシキカルボニル基、置換もしくは無置換の炭素数3~40のシリル基、又はカルボキシル基である。また、Αr1 とAr2及びR1とR2は、それぞれ独立に、互いに結合し環状構造を形成してもよい。) 〕」
「5.有機エレクトロルミネッセンス素子用材料である請求項1~4のいずれかに記載の新規芳香族化合物。」
(1b)2頁下から7行~3頁1行
「本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、発光輝度及び発光効率が高く、色純度が高く、青色系に発光し、さらに高温安定性に優れ長寿命の有機EL素子を提供可能な新規芳香族化合物及びそれを利用した有機EL素子を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、高ガラス転移温度であり、かつ非対称な分子構造を保有する化合物を有機EL素子の有機薄膜層の材料として用いることにより、前記の課題を解決することを見出し本発明を解決するに至った。」
(1c)7頁下から2行~11頁8行
「上記一般式(A)又は(B)において、Bは、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2~60の複素環基又は置換もしくは無置換の炭素数5~60のアリール基であり、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2~60の複素環基又はアルケニル基もしくはアリ一ルアミノ基が1置換した炭素数5~60のアリール基であると好ましい。
Bの置換基であるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1,3-ブタンジェニル基、1-メチルビニル基、スチリル基、2,2-ジフェニルビニル基、2,2-ジトリルビニル基、1,2-ジトリルビニル基、1-メチルアリル基、1-ジメチルアリル基、2-メチルアリル基、1-フェニルアリル基、2-フェニルアリル基、3-フェニルアリル基、3,3-ジフェニルアリル基、1,2-ジメチルアリル基、1-フェニル-1-ブテニル基、3-フェニル-1-ブテニル基等が挙げられる。
Bの置換基であるアリールアミノ基としては、例えば、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アントラニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジナフチルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基、フェニルメチルアミノ基、ピレニルフェニルアミノ基、ビフェニルアミノ基、ビフェニルナフチルアミノ基等が挙げられる。
Bの置換又は無置換の複素環基としては、例えば、1-ピロリル基、2-ピロリル基、3-ピロリル基、ピラジニル基、2-ピリジニル基、3-ピリジニル基 、4-ピリジニル基、1-インドリル基、2-インドリル基、3-インドリル基 、4-インドリル基、5-インドリル基、6-インドリル基、7-インドリル基 、1-イソインドリル基、2-イソインドリル基、3-イソインドリル基、4-イソインドリル基、5-イソインドリル基、6-イソインドリル基、7-イソインドリル基、2-フリル基、3-フリル基、2-ベンゾフラニル基、3-ベンゾフラニル基、4-べンゾフラニル基、5-べンゾフラニル基、6-ベンゾフラニル基、7-べンゾフラニル基、1-イソべンゾフラニル基、3-イソベンゾフラニル基、4-イソべンゾフラニル基、5-イソべンゾフラニル基、6-イソベンゾフラニル基、7-イソべンゾフラニル基、2-キノリル基、3-キノリル基、4-キノリル基、5-キノリル基、6-キノリル基、7-キノリル基、8-キノリル基、1-イソキノリル基、3-イソキノリル基、4-イソキノリル基、5-イソキノリル基、6-イソキノリル基、7-イソキノリル基、8-イソキノリル基、2-キノキサリニル基、5-キノキサリニル基、6-キノキサリニル基、1-カルバゾリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基、9-カルバゾリル基、1-フェナンスリジニル基、2-フェナンスリジニル基、3-フェナンスリジニル基、4-フェナンスリジニル基、6-フェナンスリジニル基、7-フェナンスリジニル基、8-フェナンスリジニル基、9-フェナンスリジニル基、10-フェナンスリジニル基、1-アクリジニル基、2-アクリジニル基、3-アクリジニル基、4-アクリジニル基、9-アクリジニル基、1,7-フェナンスロリン-2-イル基、1,7-フェナンスロリン-3-イル基、1,7-フェナンスロリン-4-イル基、1,7-フェナンスロリン-5-イル基、1,7-フェナンスロリン-6-イル基、1,7-フェナンスロリン-8-イル基、1,7-フェナンスロリン-9-イル基、1,7-フェナンスロリン-10-イル基、1,8-フェナンスロリン-2-イル基、1,8-フェナンスロリン-3-イル基、1,8-フェナンスロリン-4-イル基、1,8-フェナンスロリン-5-イル基、1,8-フェナンスロリン-6-イル基、1,8-フェナンスロリン-7-イル基、1,8-フェナンスロリン-9-イル基、1,8-フェナンスロリ ン-10-イル基、1,9-フェナンスロリン-2-イル基、1,9-フェナンスロリン-3-イル基、1,9-フェナンスロリン-4-イル基、1,9-フェナンスロリン-5-イル基、1,9-フェナンスロリン-6-イル基、1,9-フェナンスロリン-7-イル基、1,9-フェナンスロリン-8-イル基、1,9-フェナンスロリン-10-イル基、1,10-フェナンスロリン-2-イル基、1,10-フェナンスロリン-3-イル基、1,10-フェナンスロリン-4-イル基、1,10-フェナンスロリン-5-イル基、2,9-フェナンスロリン-1-イル基、2,9-フェナンスロリン-3-イル基、2,9-フェナンスロリン-4-イル基、2,9-フェナンスロリン-5-イル基、2,9-フェナンスロリン-6-イル基、2,9-フェナンスロリン-7-イル基、2,9-フェナンスロリン-8-イル基、2,9-フェナンスロリン-10-イル基、2,8-フェナンスロリン-1-イル基、2,8-フェナンスロリン-3-イル基、2,8-フェナンスロリン-4-イル基、2,8-フェナンスロリン-5-イル基、2,8-フェナンスロリン-6-イル基、2,8-フェナンスロリン-7-イル基、2,8-フェナンスロリン-9-イル基、2,8-フェナンスロリン-10-イル基、2,7-フェナンスロリン-1-イル基、2,7-フェナンスロリン-3-イル基、2,7-フェナンスロリン-4-イル基、2,7-フェナンスロリン-5-イル基、1,7-フェナンスロリン-6-イル基、2,7-フェナンスロリン-8-イ ル基、2,7-フェナンスロリン-9-イル基、2,7-フェナンスロリン-10-イル基、1-フェナジニル基 、2-フェナジニル基、1-フェノチアジニル基、2-フェノチアジニル基、3-フェノチアジニル基、4-フェノチアジニル基、10-フェノチアジニル基、1-フェノキサジニル基、2-フェノキサジニル基、3-フェノキサジニル基、4-フェノキサジニル基、10-フェノキサジニル基、2-オキサゾリル基、4-オキサゾリル基、5-オキサゾリル基、2-オキサジアゾリル基、5-オキサジアゾリル基、3-フラザニル基、2-チエニル基、3-チエニル基、2-メチルピロール-1-イル基、2-メチルピロール-3-イル基、2-メチルピロール-4-イル基、2-メチルピロール-5-イル基、3-メチルピロール-1-イル基、3-メチルピロール-2-イル基、3-メチルピロール-4-イル基、3-メチルピロール-5-イル基、2-t-ブチルピロール-4-イル基、3-(2-フェニルプロピル)ピロール-1-イル基、2-メチル-1-インドリル基、4-メチル-1-インドリル基、2-メチル-3-インドリル基、4-メチル-3-インドリル基、2-t-ブチル1-インドリル基、 4-t-ブチル1-インドリル基、2-t-ブチル3-インドリル基、4-t-ブチル3-インドリル基等が挙げられ、前記置換基を含み炭素数2~60のものである。
Bのアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンスリル基、ピレニル基、コロニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ピローリル基、フラニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、オキサジアゾリル基、ジフェニルアントラニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ベンゾキノリル基、フルオランテニル基、アセナフトフルオランテニル基等が挙げられ、前記置換基を含み炭素数5~60のものである。」
(1d)30頁下から2行~33頁
「本発明の一般式(A)及び(B)で表される新規芳香族化合物の具体例を以下に示すが、これら例示化合物に限定されるものではない。
」
(1e)53頁11行~57頁下から1行
「実施例1
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして膜厚60nmのΝ,N’-ビス(N,N,-ジフェニル-4-アミノフェニル)-N,N-β-ナフチル-4,4’-ジアミノ-1 ,1’-ビフェニル膜(TPD232膜)を成膜した。このTPD232膜は、正孔注入層として機能する。続けて、このTPD232膜上に膜厚20nmのN,N,N‘,N’-テトラキス(4-ビフェニル)-4,4’-ベンジジン膜(BPTPD膜)を成膜した。このBPTPD膜は正孔輸送層として機能する。さらに、BPTPD膜上に膜厚40nmの上記化合物(A1)を蒸着し成膜した。この膜は、発光層として機能する。この膜上に膜厚10nmの下記Alq膜を成膜した。このAlq膜は、電子注入層として機能する。この後還元性ドーパントであるLi(Li源:サエスゲッタ一社製)とAlqを二元蒸着させ、電子注入層(陰極)としてAlq:Li膜(膜厚10nm)を形成した。このAlq:Li膜上に金属Alを蒸着させ金属陰極を形成し有機EL素子を形成した。
この素子は直流電 6Vで発光輝度176cd/m2、発光効率2.2cd/Aの青色発光が得られた。
さらにこの素子を封止後、100℃の恒温槽に500時間放置した後、倍率20倍の実体顕微鏡によつて発光面に輝点又は色の変化が生じているなどで欠陥が生じているかを観察し評価する高温保存試験を行った。以上の結果を表1に示す。
実施例2~10
実施例1において、化合物(A1)の代わりに表1に記載した化合物を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。これらの素子の電圧、発光輝度、発光効率、発光色、化合物のガラス転移温度Tg及び高温保存試験結果を表1に示した。
比較例1
実施例1において、化合物(A1)の代わりに米国特許第5935721号明細書に記載のアリールアントラセン化合物である下記(C1)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。この素子の電圧、発光輝度、発光効率、発光色、化合物のガラス転移温度Tg及び高温保存試験結果を表1に示した。
」
「
※高温保存試験結果においては、発光面に輝点又は色の変化が生じているなどにより欠陥が生じていない場合を良好とし、輝点、色の変化が生じている場合を結晶化とした。Tgの欄におけるNDはDSC(示差走査熱量測定)により観測されなかったということである。
表1に示したように、対称性の良いC1を用いた比較例1では、結晶化が生じ発光面に欠陥が生じ、発光色も青緑色であり青色の純度が優れていない。また、比較例2及び3における化合物C2及びC3は分子構造の左右が非対象であるが、結晶化が生じており、Tgが低いためであると考えられる。本発明の化合物は 非対称でありかつTgが比較的高いため、高温保存試験の結果は良好であった。
実施例11
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(旭硝子社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして膜厚60nmのTPD232を成膜した。 このTPD232膜は、正孔注入層として機能する。続けて、このTPD232膜上に膜厚20nm のBPTPD膜を成膜した。このBPTPD膜は正孔輸送層として 機能する。さらに、BPTPD膜上に膜厚40nmの上記化合物(A1) 蒸着し成膜した。この膜は、発光層として機能する。この時同時に下記スチリルアミ ン系の発光分子(D1)を7重量%添加した。この膜上に膜厚20nmのAlq膜を成膜した。このAlq膜は、電子注入層として機能する。この後還元性ド-パ ントであるLi(Li源:サエスゲッタ一社製)とAlqを二元蒸着させ、電子注入層(陰極)としてAlq:Li膜を形成した。この膜上に金属Alを蒸着させ金属陰極を形成し有機EL素子を形成した。
この素子は直流電圧5.5Vで発光輝度200cd/m2、発光効率5.5cd/Aの青色発光が得られた。また、初期輝度500cd/m2にて一定電流駆動を行ったところ輝度が半減する時間 (半減寿命)は3000時間であった。
比較例 4
実施例1において、化合物(A1)の代わりに米国特許第05935721号明細書に記載のアリールアントラセン化合物である上記(C1)を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製した。この素子の電圧、発光輝度、発光効率、発光色、化合物のガラス転移温度Tg及び高温保存試験結果を表1に示した。
この素子は、直流電圧5.5Vで発光輝度180cd/m2、発光効率5.0cd/Aの青色発光が得られた。また、初期輝度500cd/m2にて一定電流駆動を行ったところ輝度が半減する時間(半減寿命)は1500時間と短かった」
(2)甲1に記載された発明
ア 上記摘示事項(1a)を参照すると、甲1には、「下記一般式(A)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用材料である芳香族化合物。
A-Ar-B (A)
〔式中、Arは、置換もしくは無置換のアントラセンディール基である。Bは、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2~60の複素環基又は置換もしくは無置換の炭素数5~60のアリール基である。Aは、下記一般式(1)~(11)から選ばれる基であり、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基により置換されていてもよい。但し、Bがアリールアミノ基で置換されている場合は、Aはアリールアミノ基で置換されたフェニル基ではない。
(式中、Ar1~Ar3は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリール基、Ar4は置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリーレン基、Ar5は置換もしくは無置換の炭素数6~30の3価の芳香族残基である。R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~40のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数5~40のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5~40の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数2~40の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数7~40のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~40のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2~30のアルコシキカルボニル基、置換もしくは無置換の炭素数3~40のシリル基、又はカルボキシル基である。また、Ar1とAr2及びR1とR2は、それぞれ独立に、互いに結合し環状構造を形成してもよい。)」が記載されていると認められる。
イ 上記摘示事項(1b)によれば、甲1の芳香族化合物は、「発光輝度及び発光効率が高く、色純度が高く、青色系に発光」するものであり、また、上記摘示事項(1e)によれば、当該化合物は、実際、BPTPD膜(正孔輸送層)上に蒸着し成膜されて、発光層として機能していることからして、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料とは、具体的に、有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料であるといえる。
ウ 上記摘示事項(1b)によれば、甲1の芳香族化合物は、「非対称な分子構造を保有する化合物」であるといえる。
上記アないしウの検討事項より、甲1には、
「下記一般式(A)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料である非対称な分子構造を保有する芳香族化合物。
A-Ar-B (A)
〔式中、Arは、置換もしくは無置換のアントラセンディール基である。Bは、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2~60の複素環基又は置換もしくは無置換の炭素数5~60のアリール基である。Aは、下記一般式(1)~(11)から選ばれる基であり、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基により置換されていてもよい。但し、Bがアリールアミノ基で置換されている場合は、Aはアリールアミノ基で置換されたフェニル基ではない。
(式中、Ar1~Ar3は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリール基、Ar4は置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリーレン基、Ar5は置換もしくは無置換の炭素数6~30の3価の芳香族残基である。R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~40のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数5~40のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5~40の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数2~40の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数7~40のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~40のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2~30のアルコシキカルボニル基、置換もしくは無置換の炭素数3~40のシリル基、又はカルボキシル基である。また、Ar1とAr2及びR1とR2は、それぞれ独立に、互いに結合し環状構造を形成してもよい。)〕 」(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(3)対比・判断
(3-1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「下記一般式(A)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料である非対称な分子構造を保有する芳香族化合物。
A-Ar-B (A)」は、Arが、「置換もしくは無置換のアントラセンディール基」であるから、「アントラセン誘導体」であることは自明であり、したがって、本件発明1の「非対称アントラセン誘導体からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「非対称アントラセン誘導体からなる有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
アントラセン誘導体が、本件発明1では、「下記一般式(1)
(式中、A1は、2-ナフチル基、9-フェナンスリル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基である。
A2は、1-ナフチル基、2-ナフチル基から選ばれる縮合芳香族炭化水素環基である。
Ar1は水素原子であり、Ar2は、フェニル基、2-ナフチル基、2-ビフェニル基から選ばれる芳香族炭化水素環基である。
R1~R10は、水素原子である。
ただし、一般式(1)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。)」で表されるものであるのに対し、甲1発明では、「下記一般式(A)
A-Ar-B (A)
〔式中、Arは、置換もしくは無置換のアントラセンディール基である。Bは、アルケニル基もしくはアリールアミノ基が1置換した炭素数2~60の複素環基又は置換もしくは無置換の炭素数5~60のアリール基である。Aは、下記一般式(1)~(11)から選ばれる基であり、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、又は置換もしくは無置換のフェニル基により置換されていてもよい。但し、Bがアリールアミノ基で置換されている場合は、Aはアリールアミノ基で置換されたフェニル基ではない。
(式中、Ar1~Ar3は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリール基、Ar4は置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリーレン基、Ar5は置換もしくは無置換の炭素数6~30の3価の芳香族残基である。R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2~40のアルケニル基、置換もしくは無置換の炭素数5~40のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5~40の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数2~40の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数7~40のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6~40のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数2~30のアルコシキカルボニル基、置換もしくは無置換の炭素数3~40のシリル基、又はカルボキシル基である。また、Ar1とAr2及びR1とR2は、それぞれ独立に、互いに結合し環状構造を形成してもよい。)」で表されるものである点。
<相違点>について
上記相違点について検討すると、上記摘示事項(1d)からして甲1発明の非対称な分子構造を保有する芳香族化合物も、実質的に、アントラセン誘導体の9位及び10位にAとBが置換したものが想定されているといえ、少なくとも、そのような化合物を含むことは明らかであるから、A-Ar-Bとは、実際、「
(ただし、一般式(1)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、該アントラセン上に示すX-Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。)」と表されるか、少なくとも当該構造を有するものを包含すると認められる。
そして、甲1発明において、Aが
であるとは、Aが無置換の「1-ナフチル基」又は「2-ナフチル基」であることを意味するから、本件発明1において、A1基が2-ナフチル基であり、Ar1基が水素原子であり、R9が水素原子である場合に重複する。
また、甲1発明において、Bは、「置換もしくは無置換の炭素数5~60のアリール基」であり得るところ、上記摘示事項(1c)によれば、アリール基には、ナフチル基(1-ナフチル基又は2-ナフチル基)が含まれることが理解される。さらに、アリール基として、「フェニル基」、「ビフェニル基」、「ターフェニル基」も選択し得るところ、フェニル基とは、無置換のフェニル基であり、ビフェニル基とは、フェニル基が置換したフェニル基であり、ターフェニル基とは、ビフェニル基が置換したフェニル基であることからして、甲1には、炭素数5~60のアリール基に置換し得る官能基の許容範囲が明記されていないが、Bで許容される「置換」には、少なくともフェニル基やビフェニル基が含まれることが推察される。そうであるならば、本件発明1において、A2が1-ナフチル基又は2-ナフチル基であり、Ar2がフェニル基(や2-ビフェニル基)であり、R10が水素原子である場合に、本件発明1と甲1発明は、アントラセン誘導体の10位がフェニル基(や2-ビフェニル基)で置換された1-ナフチル基又は2-ナフチル基である点で重複するといえる。
すなわち、甲1発明で、A-Ar-Bで表される芳香族化合物は、Arが、9位及び10位でA、Bに置換された「無置換のアントラセンディール基」であり、Aが「無置換の2-ナフチル基」であり、Bが「置換のナフチル基(1-ナフチル基又は2-ナフチル基)」であり、かつ、置換基として、フェニル基(や2-ビフェニル基)である態様も許容されていると認められ、また、少なくともこのような置換基を有するアントラセン誘導体が排除されていないと認められる。そして、そのようなアントラセン誘導体は、本件発明1の非対称アントラセン誘導体に相当する。よって、本件発明1のアントラセン誘導体は、その上位概念で表現された甲1発明に包含される下位概念で表現された発明に相当するものといえる。一方、甲1発明には、本件発明1のアントラセン誘導体に関しての具体的な開示はないので、新規性を有しており、本件発明は甲1発明の選択発明に相当するものである。
したがって、本件発明1の効果が甲1発明とは異質のもの又は同質であるが際だって優れたものであり、出願時の技術水準から当業者が予想することができたものでない場合に該当するかについて、以下に検討を行う。
<本件発明1の効果>について
本件発明1の効果は、本件特許明細書の【0011】に記載されているように、「発光効率が高く、長寿命である」点と認められる。一方、甲1発明の効果も、上記摘示事項(1b)にあるように、高発光効率及び長寿命の達成を目指すものであるから、両発明の効果は、同質であるといえるので、本件発明1が甲1発明に対して、有利な効果を有するといえるためには、際だって優れている必要がある。
そこで、被請求人は、本件発明1の効果を甲1発明との比較で示すべく、平成28年10月7日付け口頭審理陳述要領書、及び、平成28年11月13日付け上申書(2)において、本件特許明細書の実施例で用いられいる化合物AN7と、甲1の実施例で用いられている化合物A1及びA3(当該化合物A3は、上記摘示事項(1e)の表1によれば、甲1の実施例で用いられている化合物のうちで最も発光効率が高い化合物の一つである。)を用いて、素子構成が同一の有機EL素子を製造し、電流効率(=発光効率)と、初期輝度1000nitにおける90%寿命を測定し、その結果を開示した。その結果は、
である。そして、被請求人による平成28年10月7日付け口頭審理陳述要領書の21頁下から11~12行によると、「ここでいう電流効率が、本件訂正明細書に記載された発光効率と同じものを指すこと(すなわち、L/Jはcd/Aと同じである)」から、まず、電流効率についてみると、甲1発明の実施例で用いられている化合物A1及びA3は、本件発明1の実施例で用いられている化合物AN7の電流効率の、それぞれ87%、67%を示すことが理解される。よって、再実験等に用いられた共通の素子構成を前提とすれば、化合物AN7が化合物A1やA3よりも電流効率、すなわち、発光効率の面で良好な物性を有することが確認されているといえる。
さらに、本件特許明細書の【0097】【表1】を整理すると、
となり、本件特許明細書の実施例で用いられている化合物AN7以外の他の化合物は、化合物AN7よりも発光効率がやや劣るものの、いずれの化合物を用いた場合であっても、甲1の実施例で用いられている化合物A1を用いた場合に得られた87%を上回る90%以上の水準を維持している。このように、本件発明1の実施例で用いられている化合物を用いた場合、甲1発明の実施例で用いられている化合物を用いた場合と比較して、少なくとも遜色ない発光効率が得られるものと推察される。
次に、寿命についてみると、甲1発明の実施例で用いられている化合物A1及びA3の90%寿命は、本件発明1の実施例で用いられている化合物AN7の、それぞれ49%、5%を示すにすぎず、化合物AN7の寿命が遙かに長いことが見て取れる。また、本件特許明細書の実施例で用いられている他の化合物も、化合物AN7の半減寿命の79~117%を示すことからして、化合物A1及びA3より顕著に長寿命である。そして、甲1において、課題である寿命について化合物A1を用いた実験結果しか示されていないのは、化合物A1が一番長寿命であるか、少なくとも他の化合物に劣るものでないからと解するのが自然である。したがって、本件発明1の実施例で用いられている化合物を用いた場合、甲1発明の実施例で用いられている化合物を用いた場合と比較して、顕著に長寿命である蓋然性が高い。
また、本件発明1には、置換基の組合せの可能性から、具体的に12の化合物を包含すると認められるところ、そのうち、5つの化合物について、実施例で物性の確認がされており、また、それらと他の7つの化合物とは、骨格及び置換基の類似性からして、同程度の物性を示す蓋然性が高いので、実施例で確認されている結果をもって、本件発明1全体にわたり奏される効果を推認することができる。
とするならば、本件発明1の態様の各化合物は、甲1発明の態様の各化合物よりも発光効率で劣るものでなく、かつ、寿命で顕著に優れるものと推認することができる。
このように、本件発明1は、甲1発明と高発光効率、長寿命という同質の効果を有するものの、その効果の程度は際だって優れたものであり、しかも、出願時の技術水準から当業者が予想することができたものであるといえる証拠も見当たらない。
以上からして、本件発明1は、甲1発明と比較し、有利な効果を有すると認められる。
請求人は、平成28年11月16日付け上申書において、下記2点を主張している。
(a)寿命の評価に、本件特許明細書においては半減寿命が用いられているところ、乙第19号証等においては90%寿命が用いられており、評価手法が異なるから、本件発明1の作用効果の裏付けとならない。
(b)本件発明1の甲1発明に対する作用効果の評価は、共通の比較化合物であるジナフチルアントラセンを基準として、作用効果の改善度で評価すべきである。
まず、上記(a)について検討すると、乙20の14頁に示されているように、90%寿命と半減寿命は相間関係を有するといえること、及び、90%寿命の測定に、1271時間(2月弱)も時間がかかることから、半減寿命を求めることは実際的ではないので、90%寿命を用いて作用効果を評価することは妥当である。
次に、上記(b)について検討する。本件特許明細書では比較例1として、対称型のジナフチルアントラセンan1
を用いて、発光効率(cd/A)、及び、初期輝度1000nitにおける半減寿命(時間)を測定し、それぞれ、9.0cd/A、2200時間であったことが示されている。一方、甲1でも比較例1、4として、同一の対称型のジナフチルアントラセンC1
を用いて、発光効率(cd/A)と初期輝度500cd/m2における半減寿命(時間)を測定し、それぞれ、2.1cd/A又は5.5cd/A、3000時間であったことが示されている。そして、500cd/m2=500nitであり、また、被請求人による平成28年5月30日付け上申書の13頁1~3行によると、「寿命は初期輝度に反比例する」ことからして、甲1の比較例4の結果は、ジナフチルアントラセンC1の初期輝度1000nitにおける半減寿命は約1500時間であることと言い換えられると認められる。そうすると、本件特許明細書と甲1で、同一の化合物につき、発光効率と寿命が異なる結果が示されていることとなる。そして、これは、測定条件、具体的には、測定に用いた素子構成の差異に基づくものと推察される(上記摘示事項(1e)によれば、化合物A3の発光効率より化合物A1の発光効率が高くなっており、再実験等の結果と逆になっているが、被請求人による上記口頭審理陳述要領書の22頁7~10行に記載のとおり、「甲1の実施例1と実施例3の数値に逆転が生じているが、これは、甲1で用いられている素子構成と、乙11及び今回の再実験で用いられている素子構成が異なっていることが原因である」と認められる。)。
したがって、本件発明1の実施態様の化合物AN7と甲1発明の実施態様の化合物A1及びA3を素子構成を揃えて実験し直し、その結果(乙11及び今回の再実験)を用いることで、両発明の効果の差異を直接比較する方が、より正確に効果の差異が評価でき、妥当であることは明らかである〔実際、原審決に対する判決(平成26年(行ケ)第10027号)の47頁「ウ(ア)」欄において、乙6に相当する「陳述書(甲21)」の内容を踏まえた効果の有無の検討がされているように、本件において、効果の有無の検討を、追加実験を参照して行うことは許容されるといえる。〕。
したがって、上記主張を参酌しても、本件発明1が甲1発明と比較して有利な効果を有するとの結論を覆すことはできない。
そして、上記相違点及び効果についての検討結果を総合して勘案すれば、本件発明1は甲1発明に基づいて、当業者といえども、容易に発明することができたものであるとは認められない。
(3-2)本件発明4、5、10-14について
本件発明4、5、10は、本件発明1を引用し、また、本件発明11-14は、本件発明10を引用するものであるから、いずれの発明も、本件発明1を限定するものであるといえるところ、本件発明1が甲1発明に基いて容易に想到し得るものでないことは、上記(3-1)で検討済みである。
そして、それと同様の理由により、本件発明4、5、10-14も、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(4)当審の判断のまとめ
以上のとおり、本件発明1、4、5、10-14は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではなく、本件訂正後の請求項1、4、5、10-14に係る発明についての特許は、同法同条に違反して特許されたものでないから、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすべきものでない。
よって、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、4、5、10-14に係る発明についての特許は、請求人主張の理由及び証拠方法により無効とすべきものとすることはできない。
また、現時点において、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、4、5、10-14に係る発明についての特許を無効とすべき他の理由が存するものとも認められない。
そして、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項2、3、6-9に係る発明についての特許は、その発明を特定する技術事項が訂正により全部削除されたことによって、当該各特許に係る本件無効審判請求が不適法となり、却下すべきものである。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正後の請求項1、4、5、10-14に係る発明についての特許に対する本件無効審判請求は、成り立たない。
また、本件訂正後の請求項2、3、6-9に係る発明についての特許に対する本件無効審判請求は、却下すべきものである。
本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条及び同法第62条の規定により、14分し、請求人がその8、被請求人がその6をそれぞれ負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2013-800072