特許無効審判
2022-800088
ネマチック液晶組成物
- 審判番号
- 2022-800088
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2014-178048
- 登録番号
- 5939287
- 請求日
- 2022年11月17日
- 審決日
- 2023年08月30日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】石家庄▲誠▼志永▲華顕▼示材料有限公司
- 【請求人代理人】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
- 【被請求人】DIC 株式会社
- 【被請求人代理人】設▲楽▼ 隆一
- 【被請求人代理人】長谷川 芳樹
- 【被請求人代理人】清水 義憲
- 【被請求人代理人】今村 玲英子
- 【被請求人代理人】佐藤 慧太
- 【被請求人代理人】松阪 絵里佳
- 【被請求人代理人】吉住 和之
- 【被請求人代理人】中塚 岳
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 亀ヶ谷 明久
- 分類
- P1123.536-Y (C09K) / P1123.537-Y (C09K) / P1123.121-Y (C09K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第123条第1項第4号、特許法第169条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5939287号発明「ネマチック液晶組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、平成19年9月28日の出願である特願2007-254122号の一部を平成25年4月26日に新たな特許出願とした特願2013-93783号の一部を平成26年9月2日に新たな特許出願としたものであって、平成28年5月27日に特許第5939287号として設定登録(請求項の数9)がされたものである。
本件特許無効審判事件における手続の経緯は、以下のとおりである。
令和4年11月17日 本件無効審判請求(請求項1~4に係る特許に対して)
令和5年 2月 8日 審判事件答弁書(被請求人)
同年 3月23日付け 審理事項通知
同年 5月17日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 5月23日 口頭審理陳述要領書(請求人)
同年 6月 6日 口頭審理
第2 本件発明
本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
第一成分として式(1)
【化1】
[図:0001406463000001.jpg]
で表される化合物を含有し、第二成分として誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物を含有し、一般式(5)及び一般式(5-3)
【化2】
[図:0001406463000002.jpg]
【化3】
[図:0001406463000003.jpg]
(式中、R7~R8はそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基又はアルコキシル基を表し、環Eは1,4-フェニレン基を表し、L8は単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又はCF2O-を表し、rは0を表し、X6~X7はそれぞれ独立してH又はFを表す。)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種又は2種以上含有し、ネマチック相-等方性液体相転移温度が60℃~120℃であり、固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度が-80℃~-20℃であり、屈折率異方性Δnが0.05~0.15であり、誘電率異方性Δεが-1.5~-8.0であることを特徴とするネマチック液晶組成物。
【請求項2】
一般式(4)
【化4】
[図:0001406463000004.jpg]
(式中、R5~R6はそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基又はアルコキシル基を表し、環A~環Cはそれぞれ独立的してトランス-1,4-シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基を表すが、これらの基中のH原子はそれぞれ独立してCH3、F又はClで置換されていても良く、L5~L6はそれぞれ独立して単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又はCF2O-を表し、qは0~2を表す。但し、式(1)で表される化合物を除く。)で表される化合物を1種又は2種以上含有することを特徴とする請求項1記載のネマチック液晶組成物。
【請求項3】
一般式(4)で表される化合物として、一般式(4-1)~(4-7)
【化5】
[図:0001406463000005.jpg]
(式中、R5~R6はそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基又はアルコキシル基を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上含有することを特徴とする請求項2に記載のネマチック液晶組成物。
【請求項4】
構造式(1)で表される化合物を5~25%含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のネマチック液晶組成物。」
第3 請求人、被請求人の主張の概要
1 証拠の一覧
(1)請求人が提示した証拠は以下のとおり。以下、甲第2-1号証を「甲2-1」などという。
甲1:特許第5939287号公報(本件特許公報)
甲2-1:国際公開第2006/099949号
甲2-2:特表2008-535958号公報(甲2-1の訳文)
甲3-1:国際公開第2006/002952号
甲3-2:特表2008-505235号公報(甲3-1の訳文)
甲4:特開2006-328395号公報
甲5:特開2005-320511号公報
甲6:本件特許の登録原簿の写し
(2)被請求人が提示した証拠は以下のとおり。以下、乙第1号証を「乙1」などという。
乙1:特開2004-203987号公報
乙2:特開2004-334034号公報
2 主張の概要
(1)請求人の主張
ア 本件発明1~4に係る記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきでものである。
イ 本件発明1~4に係る特許明細書の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
ウ 本件発明1~4は、甲2-1に記載された発明、甲3-1に記載された発明又は甲4に記載された発明、並びに、甲2-1、甲3-1、甲4及び甲5に記載された事項に基づいて出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
第4 当審による無効理由の整理
無効理由の一覧
無効理由1-1:サポート要件違反であるとの無効理由
無効理由1-2:実施可能要件違反であるとの無効理由
無効理由2-1:甲2-1の例10及び甲2の記載事項に基づく進歩性欠如の無効理由
無効理由2-2:甲3-1の例M8及び甲3の記載事項に基づく進歩性欠如の無効理由
無効理由2-3:甲4の例20及び甲4の記載事項に基づく進歩性欠如の無効理由
無効理由2-4:甲2の例10及び甲5の記載事項に基づく進歩性欠如の無効理由
無効理由2-5:甲3の例M8及び甲5の記載事項に基づく進歩性欠如の無効理由
無効理由2-6:甲4の例20及び甲5の記載事項に基づく進歩性欠如の無効理由
(2)被請求人の主張
本件発明1~4について、無効理由1-1~2-6はいずれも理由がない。
第5 引用例の記載事項
1 各甲号証には以下の記載がある。
2 甲2-1の記載事項
甲2-1には次の記載がある。なお、便宜上、当該甲2-1の記載の摘示にあたっては、パテントファミリーである甲2-2を訳文として使用し、当該公報の対応箇所を示すこととした。
2a「【請求項1】
極性化合物の混合物に基づく液晶媒体であって、これが、式I
【化1】
[図:0001406463000006.jpg]
式中、
R11およびR12は、各々、互いに独立して、H、15個までのC原子を有し、非置換であるか、CNもしくはCF3により単置換されているか、またはハロゲンにより少なくとも単置換されているアルキル基またはアルケニル基を示し、ここでさらに、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH2基は、O原子が互いに直接結合しないように、
【化2】
[図:0001406463000007.jpg]
により置換されていてもよく、
A1およびA2は、各々、互いに独立して、
a)1つまたは2つの隣接していないCH2基が-O-または-S-により置換されていてもよい、1,4-シクロヘキセニレンまたは1,4-シクロヘキシレン基、
b)1つまたは2つのCH基がNにより置換されていてもよい、1,4-フェニレン基、
c)ピペリジン-1,4-ジイル、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル、フェナントレン-2,7-ジイルおよびフルオレン-2,7-ジイルからなる群からの基
を示し、
ここで、基a)、b)およびc)は、ハロゲン原子により単置換または多置換されていてもよく、
Z1およびZ2は、各々、互いに独立して、-CO-O-、-O-CO-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-C2F4-、-CH2CF2-、-CF2CH2-、-CF=CF-、-CH=CF-、-CF=CH-、-CH=CH-、-C≡C-または単結合を示し、
mおよびnは、各々、互いに独立して、0、1または2を示す、
で表される少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする、前記液晶媒体。
【請求項2】
さらに、式IIAおよび/またはIIB:
【化3】
[図:0001406463000008.jpg]
式中、
R2は、15個までのC原子を有し、非置換であるか、CNもしくはCF3により単置換されているか、またはハロゲンにより少なくとも単置換されているアルキル基またはアルケニル基を示し、ここでさらに、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH2基は、各々、互いに独立して、O原子が互いに直接結合しないように、
【化4】
[図:0001406463000009.jpg]
により置換されていてもよく、
pは、1または2を示し、
vは、1~6を示す、
で表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の液晶媒体。
【請求項3】
さらに、式III
【化5】
[図:0001406463000010.jpg]
式中、
R31およびR32は、各々、互いに独立して、12個までのC原子を有する直鎖状アルキル、アルケニル、アルキルアルコキシまたはアルコキシ基を示し、および
【化6】
[図:0001406463000011.jpg]
である、
で表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の液晶媒体。」
2b「【0015】
本発明は、ECBまたはIPS効果に基づいており、上記に示した欠点を有しないか、または有しても低下した程度のみであり、同時に極めて高い比抵抗値を有する、特にモニターおよびTV用途のためのMLCディスプレイを提供する目的を有する。
ここで、この目的は、式Iで表される少なくとも1種の化合物を含むネマティック液晶混合物をこれらのディスプレイ素子において用いる場合に達成することができることが、見出された。
・・・
【0017】
本発明の混合物は、容量性しきい値についての極めて好ましい値、保持比についての比較的高い値および同時に極めて良好な低温安定性、並びに極めて低い回転粘度を示す。本発明の混合物はさらに、透明点および回転粘度の良好な比率並びに高い負の誘電異方性により区別される。」
2c「【0033】
j)さらに、式IIIa~IIIf:
【化16】
[図:0001406463000012.jpg]
【0034】
式中、
alkylおよびalkyl*は、各々、互いに独立して、1~6個のC原子を有する直
鎖状アルキル基を示し、
alkenylおよびalkenyl*は、各々、互いに独立して、2~6個のC原子を有する直鎖状アルケニル基を示す、
から選択された1種または2種以上の化合物を含む、液晶媒体。
【0035】
本発明の媒体は、好ましくは、式IIIa、式IIIbおよび/または式IIIeで表される少なくとも1種の化合物を含む。」
2d「【0062】
以下の例は、本発明を、これを限定せずに説明することを意図する。本明細書中、百分率は、重量パーセントである;すべての温度を、摂氏度で示す。
式Iで表される化合物に加えて、本発明の混合物は、好ましくは以下に示す化合物の1種または2種以上を含む。
【0063】
以下の略語を用いる:(nおよびm=1~6;z=1~6)
【化29】
[図:0001406463000013.jpg]
【0064】
【化30】
[図:0001406463000014.jpg]
・・・
【0067】
【化33】
[図:0001406463000015.jpg]
・・・
【0079】
以下の例は、本発明を、これを限定せずに説明することを意図する。本明細書中、
V0は、20℃における容量性のしきい値電圧[V]を示し、
Δnは、20℃および589nmにおいて測定した光学異方性を示し、
Δεは、20℃および1kHzにおける誘電異方性を示し、
cp.は、透明点[℃]を示し、
γ1は、20℃において測定した回転粘度[mPa・s]を示し、
LTSは、試験セルにおいて決定された低温安定性を示す。
・・・
【0090】
例10
【表10】
[図:0001406463000016.jpg]
」
3 甲3-1の記載事項
甲3-1には次の記載がある。なお、便宜上、当該甲3-1の記載の摘示にあたっては、パテントファミリーである甲3-2を訳文として使用し、当該公報の対応箇所を示すこととした。
3a「【請求項1】
6~45の範囲のγ1/Δn2の比の値、60℃を越える透明点および-2.3以下のΔεを有することを特徴とする、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。
・・・
【請求項11】
式IA、IBおよび/またはIIの化合物の少なくとも2つを含有することを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の液晶媒体。
【化1】
[図:0001406463000017.jpg]
(式中、
R1およびR2は、互いに独立して、それぞれ無置換、CNまたはCF3でモノ置換、またはハロゲンで少なくともモノ置換されている15個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、但し、これらの基において1または2以上のCH2基は、独立して、O原子同士が直接結合しないようにして、-O-、-S-、
【化2】
[図:0001406463000018.jpg]
-C≡C-、-CF2O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-または-O-CO-O-で置換されていても良く、
vは1~6を表す。)
【請求項12】
さらに、式IIIの化合物を1種以上含有することを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の液晶媒体。
【化3】
[図:0001406463000019.jpg]
(式中、R31およびR32は、互いに独立して、12個までの炭素原子を有する直鎖アルキル、アルキルアルコキシまたはアルコキシ基を表し、
【化4】
[図:0001406463000020.jpg]
を表し、
Zは、単結合、-C2H4-、-CH=CH-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-C2F4-、-CHFCF2-、-CF=CF-、-CH=CF-、-CF=CH-、-CH2-を表す。)」
3b「【0021】
本発明の混合物は、ECBディスプレイでの短い応答時間、広いネマチック相および比較的高い電圧保有率(HR)によって特徴づけられる。このタイプのγ1/Δn2比を有する発明の混合物は、さらに非常に好ましい容量性しきい値と同時に非常に良い低温安定性を示す。」
3c「【0063】
i)式IIIa~IIIjから選ばれる化合物をさらに含有する液晶媒体。
【0064】
【化7】
[図:0001406463000021.jpg]
【0065】
【化8】
[図:0001406463000022.jpg]
式中、alkylおよびalkyl*は、互いに独立してそれぞれ1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、および
alkenylおよびalkenyl*は、互いに独立してそれぞれ2~6個の炭素原子を有する直鎖アルケニル基、好ましくはビニル、1E-アルケニルまたは3E-アルケニルを表す。
【0066】
発明の媒体は、好ましくは、式IIIa、式IIIbおよび/または式IIIeの化合物の少なくとも1つ、好ましくは5重量%を越え、特に10重量%を越え、非常に好ましくは20重量%を越える量で含有する。」
3d「【0165】
次の略号を使用する(nおよびm=1~6、z=1~6)。
【0166】
【化44】
[図:0001406463000023.jpg]
【0167】
【化45】
[図:0001406463000024.jpg]
【0168】
【化46】
[図:0001406463000025.jpg]
・・・
【0170】
【化48】
[図:0001406463000026.jpg]
・・・
【0172】
【化50】
[図:0001406463000027.jpg]
・・・
【0194】
次の例は、制限することなく本発明を説明することを意図するものである。例において、液晶物質の融点T(C,N)、スメクチック(S)からネマチック(N)への遷移T(S,N)および透明点T(N,I)は、摂氏度により示される。
【0195】
さらに、
V0は、20℃におけるしきい電圧、容量性(V)を表し、
Δnは、20℃にて589nmで測定された光学異方性を表し、
Δεは、20℃、1kHzでの誘電異方性を表し、
cp.は、透明点(℃)を表し、
γ1は、20℃で測定した回転粘度(mPa・s)を表し、
LTSは、テストセルの中で試験された低温安定性を表し、
HR(20)は、20℃での電圧保持率[%]を表し、
HR(100)は、100℃にて5分後の電圧保持率[%]を表し、
HR(UV)は、UV暴露の後の電圧保持率[%]を表す。
・・・
【0206】
【表8】
[図:0001406463000028.jpg]
」
4 甲4の記載事項
甲4には次の記載がある。
4a「【請求項1】
極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体であって、
下記式Iで示される少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする液晶媒体。
【化1】
[図:0001406463000029.jpg]
(式中、
R11およびR12は、互いに独立して、H、または無置換、CNもしくはCF3によるモノ置換またはハロゲンによる少なくともモノ置換された15個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基であり、但し、これらの基において1または2以上のCH2基は、O原子同士が直接結合しないようにして、-O-、-S-、
【化2】
[図:0001406463000030.jpg]
、-C≡C-、-CF2O-、-CO-O-または-O-CO-で置換されていても良く、
【化3】
[図:0001406463000031.jpg]
は、
a)1,4-シクロヘキセニレンまたは1,4-シクロへキシレン基(ここで、1または2個の非隣接CH2基は、-O-または-S-で置換されていてもよい)、
b)1,4-フェニレン基(ここで、1または2個のCH基は、Nで置換されていてもよい)、または
c)ピペリジン-1,4-ジイル、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル、フェナントレン-2,7-ジイルおよびフルオレン-2,7-ジイルからなる群より選ばれる基
を表し、ここで、基a)、b)およびc)はハロゲン原子によってモノ置換またはポリ置換されていてもよく、
L1-6は、互いに独立して、L1からL6の少なくとも2つの基がFを示すということを条件として、HまたはFを表す。)
【請求項2】
下記式IIAおよび/またはIIBの化合物の1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1記載の液晶媒体。
【化4】
[図:0001406463000032.jpg]
(式中、
R2は、無置換、CNもしくはCF3によるモノ置換またはハロゲンによる少なくともモノ置換された15個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基であり、但し、これらの基において1または2以上のCH2基は、互いに独立して、O原子同士が直接結合しないようにして、-O-、-S-、
【化5】
[図:0001406463000033.jpg]
、-C≡C-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-または-O-CO-O-で置換されていても良く、
pは、1または2を表し、
vは、1から6を表す。)
【請求項3】
下記式IIIの化合物の1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1または2記載の液晶媒体。
【化6】
[図:0001406463000034.jpg]
(式中、
R31およびR32は、互いに独立して、12個までの炭素原子を有する直鎖アルキル、アルケニル、アルキルアルコキシまたはアルコキシ基を表し、
【化7】
[図:0001406463000035.jpg]
は、
【化8】
[図:0001406463000036.jpg]
を表す。)」
4b「【0017】
本発明は、モニターおよびTV用途だけではなく、携帯電話用およびナビゲーションシステム用途のMLCディスプレイであって、それらがECBまたはIPS効果に基づき、前述の不都合を有していないか、有していたとしてもより少ない程度であり、そして同時に、非常に高い比抵抗値を有するものを提供するという目的を有する。特に、それらは極端な高温および極端な低温で働く携帯電話およびナビゲーションシステム用途として保証されなければならない。」
4c「【0044】
・・・
j)式IIIa~IIIfから選ばれる化合物の1種または2種以上をさらに含む液晶媒体。
【0045】
【化12】
[図:0001406463000037.jpg]
【0046】
式中、「alkyl」および「alkyl*」は、互いに独立して、1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を表し、
「alkenyl」および「alkenyl*」は、互いに独立して、2~6個の炭素原子を有する直鎖アルケニル基を表す。
【0047】
本発明の媒体は、好ましくは、式IIIa、式IIIbおよび/または式IIIeの化合物の少なくとも1種を含有する。」
4d「【0096】
次の略号を使用する(nおよびm=1~6、z=1~6)。
【0097】
【化22】
[図:0001406463000038.jpg]
【0098】
【化23】
[図:0001406463000039.jpg]
・・・
【0101】
【化26】
[図:0001406463000040.jpg]
【0102】
【化27】
[図:0001406463000041.jpg]
・・・
【0116】
次の例は、制限することなく本発明を説明することを意図するものである。上記および下記において、
V0は、20℃におけるしきい電圧、容量性(V)を表し、
Δnは、20℃にて589nmで測定された光学異方性を表し、
Δεは、20℃、1kHzでの誘電異方性を表し、
cp.は、透明点(℃)を表し、
γ1は、20℃で測定した回転粘度(mPa・s)を表し、
LTSは、テストセルの中で試験された低温安定性(ネマチック相)を表す。
・・・
【0127】
【表10】
[図:0001406463000042.jpg]
」
5 甲5の記載事項
甲5には次の記載がある。
5a「【請求項1】
第一成分として式(1-1)~式(1-4)のそれぞれで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有し、第二成分として式(2-1)~式(2-3)のそれぞれで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物:
[図:0001406463000043.jpg]
[図:0001406463000044.jpg]
ここに、R1はアルキルまたはアルケニルであり;R2はアルコキシであり;R3はアルキル、アルケニルまたはアルコキシであり;そしてこれらの基において、アルキルおよびアルコキシの炭素数は1~10であり、アルケニルの炭素数は2~10である。」
5b「【0008】
本発明の目的は、ネマチック相の広い温度範囲、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗などの特性のうち複数の特性を充足する液晶組成物を提供することにある。複数の特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物とすることも課題の1つである。そして、本発明のもう1つの目的は、この組成物を含有し、そして大きな電圧保持率を有する液晶表示素子を提供することである。この素子における重要な課題は、小さな粘度、0.050~0.130の光学異方性、-6.5~-2.0の誘電率異方性などの特性を有する組成物を含有し、そしてVAモード、IPSモードなどに適したAM素子を提供することである。
・・・
【0043】
次に、成分である化合物の主要な特性、および化合物が組成物に及ぼす主要な効果を説明する。化合物(1-1)~化合物(1-4)、化合物(2-1)~化合物(2-3)、化合物(3-1)~化合物(3-5)、および化合物(4-1)~化合物(4-5)の主要な特性を表2にまとめた。この表において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、そしてSは小さいまたは低いを意味する。0(ゼロ)は誘電率異方性がほぼゼロである(または極めて小さい)ことを意味する。L、MおよびSは、これらの化合物における相対的な評価である。そして、1)は誘電率異方性が負であることを示す。なお、粘度、光学異方性および誘電率異方性については、同一の液晶組成物にそれぞれの化合物を添加して物性を測定し、外挿法によって得られた値に関する評価である。
【0044】
<表2> 化合物の特性
[図:0001406463000045.jpg]
【0045】
第一成分である化合物(1-1)~化合物(1-4)の構造の特徴は、結合基として-OCF2C2H4-を有し、環構造の基の1つとして2,3-ジフルオロフェニレンを有し、そして末端基としてアルコキシを有することである。本発明の液晶組成物において、第一成分は、誘電率異方性を負に大きくし、そして下限温度を下げることを主目的として用いられる。第二成分である化合物(2-1)~化合物(2-3)の特徴は、その構造中にフッ素原子を含まないことである。第二成分は粘度を小さくし、上限温度を調節し、そして下限温度を下げることを主目的として用いられる。第三成分である化合物(3-1)~化合物(3-5)の構造の特徴は、環状の基の1つとして2-フルオロフェニレンまたは3-フルオロフェニレンを有し、そして末端基としてアルコキシを有することである。本発明の液晶組成物において、第三成分は上限温度を調節し、そして特に下限温度を下げることを主目的として用いられる。第四成分である化合物(4-1)~化合物(4-5)の構造の特徴は、環構造の基の1つとして2,3-ジフルオロフェニレンを有し、そして末端基としてアルコキシ基を有することである。本発明の液晶組成物において、第四成分は誘電率異方性を負に大きくすることを主目的として用いられる。」
5c「【0081】
次に、本発明の組成物を実施例により詳細に説明する。実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表す。表3において、1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は好ましい化合物の番号に対応する。(-)の記号はその他の化合物を意味する。化合物の割合(百分率)は、組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。各実施例の最後に組成物の特性値を示す。
【0082】
化合物をR-(A1)-Z1-……-Zn-(An)-Xで表すときの表記方法を次に示す。
<表3> 記号を用いた化合物の表記方法
[図:0001406463000046.jpg]
【0083】
特性値の測定は次の方法にしたがった。これらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED-2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。
(1)ネマチック相の上限温度(NI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略することがある。
【0084】
(2)ネマチック相の下限温度(TC;℃)
ネマチック相を有する試料を0℃、-10℃、-20℃、-30℃、および-40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が-20℃ではネマチック相のままであり、-30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、TCを<-20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0085】
(3)光学異方性(Δn;25℃で測定)
波長が589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行った。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n∥は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n∥-n⊥、の式から計算した。
【0086】
(4)粘度(η;20℃で測定;mPa・s)
測定にはE型粘度計を用いた。
【0087】
(5)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
(5-1)垂直配向の処理
よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板から、間隔(セルギャップ)が20μmであるVA素子を組み立てた。
(5-2)水平配向の処理
類似の方法でガラス基板にポリイミドの配向膜を調製した。ラビング処理をしたあと、2枚のガラス基板の間隔が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子を組み立てた。
(5-3)測定
VA素子に試料を入れ、0.5ボルト(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε∥)を測定した。TN素子に試料を入れ、0.5ボルト(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε∥-ε⊥の式から計算した。負の誘電率異方性を有する組成物をこの方法によって測定した。
【0088】
(6)電圧保持率(VHR;25℃と100℃で測定;%)
ポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が6μmであるTN素子に試料を入れた。25℃のTN素子に印加した電圧の波形を陰極線オシロスコープで観測し、単位周期において電圧曲線と横軸との間の面積を求めた。TN素子を取り除いたあと印加した電圧の波形から同様にして面積を求めた。2つの面積の値を比較して電圧保持率を算出した。このようにして得られた電圧保持率をVHR-1で示した。次に、このTN素子を100℃、250時間加熱した。25℃に戻したあと、同様な方法で電圧保持率を測定した。このようにして加熱後に得られた電圧保持率をVHR-2で示した。この加熱テストは、素子を長時間使用するテストの代わりに行った。
・・・
【0090】
[比較例2]
特許文献2の特開2003-2858公報(ファミリー:US 6,544,604B)の実施例54の組成物を調合し、上記の方法により特性値を測定した。この組成物は本発明の第一成分の化合物(1-2)、第二成分の化合物(2-1)および第四成分の化合物(4-3)~化合物(4-4)を含有する。
3-HBOCF22B(2F,3F)-O2 (1-2) 14%
3-HH-2 (2-1) 5%
3-HH-4 (2-1) 6%
3-HH-O1 (2-1) 4%
3-HH-O3 (2-1) 5%
5-HH-O1 (2-1) 4%
3-HB(2F,3F)-O2 (4-3) 12%
5-HB(2F,3F)-O2 (4-3) 11%
5-HHB(2F,3F)-O2 (4-4) 15%
3-HHB(2F,3F)-2 - 24%
NI=78.6℃;Tc<-10℃;Δn=0.080;Δε=-3.3;
η=24.4mPa・s.
・・・
【0093】
[実施例3]
以下の組成を有する液晶組成物を作成した。
3-HBOCF22B(2F,3F)-O2 (1-2) 11%
5-HBOCF22B(2F,3F)-O2 (1-2) 11%
3-HH-4 (2-1) 10%
3-HH-5 (2-1) 6%
5-HH-V (2-1) 6%
3-HHB-3 (2-3) 6%
3-HB(3F)-O2 (3-1) 5%
3-HHB(3F)-O2 (3-2) 5%
3-HB(2F,3F)-O2 (4-3) 10%
5-HB(2F,3F)-O2 (4-3) 10%
3-HHB(2F,3F)-O2 (4-4) 11%
5-HHB(2F,3F)-O2 (4-4) 11%
この組成物は以下の特性値を示した。
NI=89.5℃;Tc<-30℃;Δn=0.087;Δε=-3.3;
η=22.9mPa・s;VHR-1=99.3%.
この液晶組成物は比較例2に対して、Δεが同程度であり、NIが高く、粘度が小さく、Tcが低い。NI、粘度およびTcで比較例に対して優れている。」
6 乙1の記載事項
乙1には次の記載がある。
「【0003】
このような液晶表示装置は、ネマチック液晶組成物を電極付きガラス基板の間隙に含有させたものであり、液晶注入方法として下記に示すいくつかの方法が知られている。
(1)一方のガラス基板上に液晶を滴下し、その上にポリエチレンビーズ,シリカビーズ等の電気絶縁性のスペーサを介して、真空下でもう一枚のガラス基板を重ね合わせる方法(滴下法)。(下記特許文献1参照)
(2)予め、二枚のガラス基板に間隙を設けた液晶セルに注入口の外に注入口と反対の位置に通じる穴を設け、注入口を液晶に浸し、一方の口から真空引きして液晶を吸い上げる方法(直接注入法)。(下記特許文献2参照)
(3)注入口を設けた液晶セルと液晶を入れた液晶皿を真空可能なの容器に入れ、この容器を真空にした後注入口を液晶に浸し、排気系の容器を大気圧に戻す過程で圧力差を利用する方法(真空封入法)である(下記特許文献3参照)。
・・・
【0005】
・・・ただし、液晶材料を低粘度化すると、揮発性も高くなるため、液晶注入プロセスを考慮した液晶材料選択が必要である。すなわち、いずれの液晶注入方法も、量産性に最も向いている液晶注入方法であるが、液晶表示装置内を高真空にするため、液晶材料自身が高真空に曝され、揮発性の液晶材料が使用することはできない液晶注入方法である。
【0006】
したがって、テレビのモニターとしての液晶表示装置の量産に際しては、いずれの液晶注入方法でも揮発しにくい液晶材料を開発することが課題となる。
・・・
【0017】
・・・しかしながら、実際には多成分からなる液晶組成物をこの真空下に放置すると、揮発する場合が多々生じていた。・・・
【0018】
・・・また、ビシクロヘキサンを主骨格とする液晶化合物でも、両末端の側鎖がアルキル鎖やアルコキシ鎖のアルキル鎖を長くして蒸気圧を調整することができる。」
7 乙2の記載事項
乙2には次の記載がある。
「【0056】
低分子量成分を15%含む混合液晶において、最高到達真空度0.01~20Pa下で3時間、真空放置した時、注入装置(真空槽12)内の液晶量と低分子成分揮発率の関係は、図5に示すような結果となることがわかった。すなわち、注入装置内の液晶が少量であると、低分子成分揮発率[=(1-揮発後の低分子含有率/初期の低分子含有率)]が高くなる。これは、液晶が少量の場合、注入装置内の低分子成分の蒸気圧が低く、真空放置した時に混合液晶に含まれる低分子成分が次第に揮発することによるものと考えられる。これに対し、注入装置内の液晶量が160g以上になると、混合液晶の組成変動は全くと言ってよいほど見られない。」
第6 無効理由1-1についての当審の判断
1 無効理由1-1における請求人の主張の概要
一般式(5)及び一般式(5-3)で表わされる式は、下記の4つである。
【化11】
[図:0001406463000047.jpg]
【化12】
[図:0001406463000048.jpg]
【化13】
[図:0001406463000049.jpg]
【化14】
[図:0001406463000050.jpg]
本発明1の実施例は、段落【0034】の表1、段落【0036】の表2、及び段落【0038】の表3であるが、これらの組成中に、【化11】、【化12】、及び【化14】は、存在しない。
したがって、【化11】、【化12】、及び【化14】は、特許法第36条第6項第1号(サポート要件)を満たしておらず、特許法第123条第1項第4号により無効とされるべきである。
2 本件発明1~4の課題
本件発明の課題は、本件特許明細書の【0007】及び明細書全体の記載からみて、液晶テレビ用途に適した高速応答かつ耐光性と低温安定性に優れた誘電率異方性が負の液晶組成物を提供することにあると認められる。
3 判断
ここで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例からみて、一般式(5)で表される化合物として【化13】に相当する5-Ph-Ph-1又は一般式(5-3)で表される化合物として3-Cy-2-Ph5-O2を含むものが前記課題を解決できることが理解でき、一般式(5)及び一般式(5-3)で表される化合物の末端がFで置換されたフェニル基を有するもの及び未置換のフェニル基を有するもののいずれも前記課題を解決できるといえるから、一般式(5)及び一般式(5-3)で表される化合物を含んでいれば、前記課題を解決できるといえる。
また、2つのFで置換された3-Cy-2-Ph5-O2を含むものが前記課題を解決できれば、同じく2つのFで置換されたフェニル基Ph5を有する【化14】も前記課題を解決できると推認でき、それらと同様の性質を有すると推認できる1つのFで置換された【化11】及び【化12】を含むものも前記課題を解決できるといえる。
そうすると、本件発明1~4は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できる範囲にあると認められる。
したがって、本件発明1~4は、特許法第36条第6項第1号で規定する要件を満たすものである。
4 請求人の主張及び当審の判断について
(1)請求人は、審判請求書において「一般式(5)及び一般式(5-3)で表わされる式は、下記の4つである。
【化11】(当審注:前記1と同じであるため、省略)
【化12】(当審注:前記1と同じであるため、省略)
【化13】(当審注:前記1と同じであるため、省略)
【化14】(当審注:前記1と同じであるため、省略)
本発明1の実施例は、段落【0034】の表1、段落【0036】の表2、及び段落【0038】の表3であるが、これらの組成中に、【化11】、【化12】、及び【化14】は、存在しない。」
また、請求人は、令和5年5月23日付けの口頭審理陳述要領書において「これによれば、被請求人が、明細書のどの部分により本件発明1がサポートされているかについて証明する責任があるが、被請求人は、「物性値を調整するために加えられているもので(明細書【0020】)、所望の物性及び組み合わせる他の成分に応じて、請求人のいう【化11】~【化14】の何れかの化合物が用いられるのは明らかである。」という抽象論で逃げているだけで証明責任を全うしているとは言えない。
・・・
明細書第10頁の表1の実施例1には、「Ph5」の構造を持つ組成物が全く存在していない。また、第12頁の表3の実施例3~5には、「Ph5」の構造を持つ組成物が全く存在していない。
・・・
【化14】は、「Ph1,4-フェニレン基」と「Ph5」の構造を含むことを必須としているのであるから、実施例2の組成物は、【化14】と全く異なる組成物である。
実施例2の組成物から、当業者が如何にして【化14】を用いることになるのかを説明して、偏光フィルム判決が判示する「明細書のサポート要件の存在は特許出願人又は特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である。」ことの立証を特許権者である 被請求人が行うべきである。
・・・
1つでも発明特定事項である【化11】、【化12】、及び【化14】が実施例に記載されていれば、未だしも全く実施例に記載されていない発明特定事項で、あとは、「効果としての物性値」を得るように当業者が実験すれば、本件発明1は得られるとする主張は、被請求人自らが、 進歩性を否定しているように思える陳述である。」と主張する。
(2)しかしながら、本件発明1においては、「一般式(5)及び一般式(5-3)・・・で表される化合物群から選ばれる化合物を1種又は2種以上含有し、」と特定されているから、請求人のいう【化11】~【化14】のいずれかとなるということはできないから、請求人の主張は前提において誤っている。
また、本件明細書の実施例1には、「Ph5」の構造を持つ化合物が全く存在していないし、実施例2の化合物は、【化14】と全く異なる化合物であるが、前記3で検討したとおり、【化11】、【化12】、及び【化14】も前記課題を解決できると推認できるから、請求人の前記主張は採用できない。
第7 無効理由1-2についての当審の判断
1 無効理由1-2の概要
上記の【化13】で表される式は、測定した誘電率が-0.2であり、液晶業界では、中性誘電率として液晶組成物の中に添加することが周知であり、請求項1中第二成分として誘電率異方性Δεが負で、その絶対値が3よりも大きな化合物という条件を満たすことができない。
したがって、【化13】は、特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)を満たしておらず、特許法第123条第1項第4号により無効とされるべきである。
2 判断
前記の【化13】の化合物は本件発明1~4の「一般式(5)及び一般式(5-3)・・・から選ばれる化合物」であり、本件発明1~4の第二成分として誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物とは異なった特定がされた成分であるから、【化13】の化合物が第二成分として誘電率異方性Δεが負で、その絶対値が3よりも大きな化合物という条件を満たす必要はなく、【化13】の化合物が第二成分として誘電率異方性Δεが負で、その絶対値が3よりも大きな化合物という条件を満たさなくても、特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)を満たしていないとはいえない。
3 請求人の主張及び当審の判断について
(1)請求人は、令和5年5月23日付けの口頭審理陳述要領書において「「一般式(5)及び一般式(5-3)」は、第二成分であるから、「第二成分として誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3より大きな化合物」であるという条件を満たさなければならないことは文言上当然である。」と主張する。
(2)しかし、本件発明1においては、「含有し、」という文言が3回現れているが、この読点によって、文章が区切られていると理解できる。
(3)ここで、本件発明1における「第二成分」としての化合物と「一般式(5)及び一般式(5-3)」で表される化合物との関係について解釈するに、本件発明1において、請求項1の「第二成分として誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物を含有し・・・、一般式(5)及び一般式(5-3)・・・で表される化合物を・・・含有し」との記載から、第二成分と一般式(5)及び一般式(5-3)で表される化合物はそれぞれ異なる特定がされたものであると解される。
(4)実際、本件特許明細書の【0011】において「第二成分として誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物を含有するが、第二成分が、一般式(2)又は(3)・・・で表される化合物を表すことが好ましい。」と記載され、【0019】に「本発明の液晶組成物の物性値を調整するために、一般式(4)又は(5)で表される化合物を1種又は2種以上含有しても良い。」と記載され、【0024】に「一般式(5)で表される化合物は、一般式(5-1)~(5-6)で表される化合物であることがより好ましい。」と記載されるように、第二成分と一般式(5)及び一般式(5-3)で表される化合物は異なるものとして記載されている。
(5)以上から、第二成分と一般式(5)及び一般式(5-3)で表される化合物は異なる特定がされた成分であると解される。
そうすると、前記主張は「一般式(5)及び一般式(5-3)」は、第二成分であるという前提に誤りがあり、採用することはできない。
第8 無効理由2-1についての当審の判断
1 甲2発明の認定
甲2-1の例の混合物はネマチック液晶混合物であるから(摘記2b参照)、実施例10として「以下の組成からなり、以下の透明点、Δn(20℃および589nmにおいて測定した光学異方性)、Δε(20℃および1kHzにおける誘電異方性)、γ1(20℃において測定した回転粘度[mPa・s])を有するネマチック液晶組成物。
[図:0001406463000051.jpg]
」の発明が記載されているといえる(摘記2d参照。)
2 対比・判断
(1)本件発明1
ア 甲2発明との対比
甲2発明の「PY-3-O4」及び「PY-5-O4」は、表Aを参照すると(摘記2d参照)、本件発明1の「一般式(5)及び一般式(5-3)
【化2】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
【化3】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
(式中、R7~R8はそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基又はアルコキシル基を表し、環Eは1,4-フェニレン基を表し、L8は単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又はCF2O-を表し、rは0を表し、X6~X7はそれぞれ独立してH又はFを表す。)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種又は2種以上」に相当する。
甲2発明の「透明点[℃]:79.5」、「Δn[589nm,20℃]:0.0901」、「Δε[1kHz,20℃]:-3.9」及び「ネマチック液晶混合物」は、それぞれ、本件発明1の「ネマチック相-等方性液体相転移温度が60℃~120℃であり」、「屈折率異方性Δnが0.05~0.15であり」、「誘電率異方性Δεが-1.5~-8.0である」及び「ネマチック液晶組成物」に相当する、
そうすると、本件発明1と甲2発明は「一般式(5)及び一般式(5-3)
【化2】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
【化3】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
(式中、R7~R8はそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基又はアルコキシル基を表し、環Eは1,4-フェニレン基を表し、L8は単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又はCF2O-を表し、rは0を表し、X6~X7はそれぞれ独立してH又はFを表す。)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種又は2種以上含有し、ネマチック相-等方性液体相転移温度が60℃~120℃であり、屈折率異方性Δnが0.05~0.15であり、誘電率異方性Δεが-1.5~-8.0であることを特徴とするネマチック液晶組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
本件発明1は、第一成分として式(1)
【化1】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
で表される化合物を含有するのに対し、甲2発明はその化合物を含有しない点。
<相違点2-2>
本件発明1は第二成分として誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物を含有するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。
<相違点2-3>
本件発明1は固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度が-80℃~-20℃であるのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。
イ 相違点についての検討
<相違点2-1>について
甲2-1には、表Aを参照すると(摘記2d参照)、甲2発明の液晶混合物に含まれるCCH-34の上位概念としてIIIaの化合物(化学構造は前記第5 2(摘記2c)と同じであるため、省略)が記載されており(摘記2c参照)、式IIIaの化合物のalkylおよびalkyl*は、各々、互いに独立して、1~6個のC原子を有する直鎖状アルキル基を示し(摘記2c参照)、CCH-34はIIIaの化合物のalkylおよびalkyl*の一方が3個のC原子を有する直鎖状アルキルであり、他方が4個のC原子を有する直鎖状アルキルである。
ここで、本件発明1の液晶組成物に第一成分として含まれる式(1)
【化1】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
で表される化合物は、甲2-1に記載の式IIIaの化合物のalkylおよびalkyl*の一方が3個のC原子を有する直鎖状アルキルであり、他方が2個のC原子を有する直鎖状アルキルである。
そして、甲2発明の液晶混合物においてIIIaの化合物として、CCH-34の4個のC原子を有する直鎖状アルキルであるalkyl又はalkyl*に代えて、2個のC原子を有する直鎖状アルキルであるalkyl又はalkyl*のものを採用することに動機付けがあるかもしれない
しかし、本件発明1に係る特許の原出願日前の文献である乙1及び乙2には、分子量が低い化合物は揮発し易い性質があり、ビシクロヘキサンを主骨格とする液晶化合物であれば、両末端の側鎖であるアルキル基等を長くして蒸気圧を調整できることが記載されているから(前記第5 6及び7参照。)、本件発明1の液晶組成物に第一成分として含まれる一般式(1)のようなビシクロヘキサン化合物のうち両末端の側鎖が短い化合物は、揮発しやすいことが、本件出願前に周知であったといえる。
そうすると、当業者は、ビシクロヘキサンを主骨格とする化合物のアルキル側鎖を短くすれば、揮発性が高くなり、安定した液晶組成物を提供できなくなることを認識しているため、甲2-1のCCH-34の側鎖を短いものに置換しようとは考えず、すなわち、甲2発明におけるブチル基を側鎖とする「CCH-34」を、本件発明1に含まれる第一成分として式(1)
【化1】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
で表される化合物に相当する、より短いエチル基を側鎖とするCCH-23に置き換えることには、阻害要因があるといえる。
そうすると、甲2発明の液晶混合物において、本件発明1に含まれる第一成分として式(1)
【化1】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
で表される化合物を含むものとする動機付けがあるとはいえない。
<相違点2-2>について
甲2-1には甲2発明の液晶混合物において、誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物を含むことについて記載も示唆もないから、そのような化合物を含むものとする動機付けがあるとはいえない。
<相違点2-3>について
甲2-1には、甲2発明の液晶混合物が「極めて良好な低温安定性」が、具体的に、固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度が何℃のことを意味しているのか開示されていないし、液晶組成物の組成を調整するとその諸物性が変化することは技術常識であるところ、甲2発明の液晶混合物をどのように調整すれば、他の物性を損なうことなく「固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度を-80℃~20℃」にできるのかは、当業者といえども容易に理解できることではない。
そうすると、甲2発明のネマチック液晶組成物を固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度が-80℃~-20℃であるとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
ウ 請求人の主張及び当審の判断について
(ア)請求人は、<相違点2-1>について、審判請求書において「甲2-2の請求項3には、「さらに、式III【化4】式中、R31およびR32は、各々、互いに独立して、12個までのC原子を有する直鎖状アルキル、アルキルアルコキシまたはアルコキシ基を示し」と記載されている。すなわち、甲2は、本発明1の「3-Cy-Cy-2」を開示している。また、甲2の「CCH-34」の右末端基のブチレン基を、本発明1の「3-Cy-Cy-2」の右末端基のエチル基に置換えることが容易であり、液晶組成物での使用において区別せず、同じ技術効果を果たしている。また、「3-Cy-Cy-2」は本発明1においては、予想外の技術的効果は実現していない。」と主張する。
(イ)また、請求人は、<相違点2-1>について、令和5年5月23日付けの口頭審理陳述要領書において「エチル基がブチル基に対して揮発性が高いことは認める。しかし、乙2の表5に記載されているのは、エチル基やブチル基等の低分子成分揮発率であり、エチル基とブチル基の揮発性を定量的に比較する数値は記載されていない。乙1にも、エチル基とブチル基の揮発性を定量的に比較する数値は記載されていない。すなわち、被請求人の主張は、定性的な主張であり、定量的な相違を明確に示すものではない。
エチル基もブチル基も、アルキル基の中では共に低分子成分であり、揮発性も定量的には大きな違いがないと推定される点、及び液晶材料では、端末基をブチル基からエチル基に置き換えることが頻繁に行われている点から考えると、ブチル基をエチル基に置き換えることは当業者が容易になし得たことであると思料する。」と主張する。
(ウ)しかし、前記イ<相違点2-1>についてで検討したとおり、本件発明1の式(1)で表される化合物に相当する3-Cy-Cy-2は、甲2-1における式IIIの化合物においてR31およびR32が炭素数2のアルキル及び炭素数3のアルキルであり、式IIIの化合物におけるR31およびR32の多数の選択肢の1つに過ぎないから、甲2-1は、本発明1の式(1)「3-Cy-Cy-2」を開示しているとはいえない。
(エ)そして、定性的であっても、エチル基がブチル基に対して揮発性が高いといえれば、前記イ<相違点2-1>で検討したとおり、ブチル基をエチル基に置き換える動機付けがあるとはいえない。
(オ)また、請求人は、<相違点2-3>について、審判請求書において「甲2の例10には、本発明1の(C)のうち、「固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度が-80℃~-20℃」という液晶組成物の低温特性データが開示されていない。
しかし、この相違点については、甲2-2の段落【0017】に、
「本発明の混合物は、容量性しきい値についての極めて好ましい値、保持比についての比較的高い値および同時に極めて良好な低温安定性、並びに極めて低い回転粘度を示す。本発明の混合物はさらに、透明点および回転粘度の良好な比率並びに高い負の誘電異方性により区別される。」と記載されている。
すなわち、甲2の例10の液晶組成物は非常に良好な低温安定性を有するので、当業者は、その需要と用途に応じて、従来の液晶組成物の調整を行うことにより、本発明1を得ることができ、技術的効果も予想できる。」と主張する。
(カ)しかし、前記イ<相違点2-3>についてで検討したとおり、「固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度を-80℃~20℃」にできるのかは、当業者といえども容易に理解できることではない。
(キ)なお、請求人は、<相違点2-2>については何ら主張していないが、本件発明1の一般式(5)及び一般式(5-3)にあたる「PY-3-O4」及び「PY-5-O4」が、誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物であると判断していると解される。
(ク)しかし、甲2-1には、「PY-3-O4」及び「PY-5-O4」の化合物としての誘電率異方性Δεは記載されていないから、「PY-3-O4」及び「PY-5-O4」が誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物であることが記載されているとはいえない。
(ケ)ただし、同じ化合物が「第二成分」と「一般式(5)及び一般式(5-3)で表される化合物」を充足する場合は、いずれか一方のみを充足するという根拠がないため、双方を充足するものと解されるが、前記(ク)のとおり、化合物単独の誘電率異方性が立証されていないから、立証が不十分である。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲2-1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(2)本件発明2~4
本件発明2~4は、本件発明1を引用してさらに限定するものであり、上記本件発明1と甲2発明との<相違点2-1>~<相違点2-3>と同じ相違点を有するものであって、<相違点2-1>~<相違点2-3>については前記(1)イで検討したとおりであり、甲2-1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第9 無効理由2-2についての当審の判断
1 甲3発明の認定
甲3-1の例の混合物は広いネマチック相を有する液晶混合物であるから(摘記3b参照)、例M8として
「以下の組成からなり、以下の透明点、Δn(20℃にて589nmで測定された光学異方性)、Δε(20℃、1kHzでの誘電異方性)、γ1(20℃で測定した回転粘度(mPa・s))、V0(20℃におけるしきい電圧、容量性(V))及びLTS(テストセルの中で試験された低温安定性)を有するネマチック液晶混合物。
[図:0001406463000052.jpg]
」の発明が記載されているといえる(摘記3d参照。)
2 対比・判断
(1)本件発明1
ア 甲3発明との対比
甲3発明の「B-3O2FF」、「B-5O2FF」及び「PP-1-4」は、甲3の【0166】、【0167】、【0168】、【0170】及び【0172】を参照すると(摘記3d参照)、本件発明1の「一般式(5)及び一般式(5-3)
【化2】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
【化3】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
(式中、R7~R8はそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基又はアルコキシル基を表し、環Eは1,4-フェニレン基を表し、L8は単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又はCF2O-を表し、rは0を表し、X6~X7はそれぞれ独立してH又はFを表す。)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種又は2種以上」に相当する。
甲3発明の「透明点[℃]:72.0」、「Δn(20℃にて589nmで測定された光学異方性)[589nm,20℃]:0.0813」、「Δε(20℃、1kHzでの誘電異方性)[kHz,20℃]:-4.2」、「LTS(テストセルの中で試験された低温安定性):ネマチック>1000h at -30℃」及び「ネマチック液晶混合物」は、それぞれ、本件発明1の「ネマチック相-等方性液体相転移温度が60℃~120℃であり」、「屈折率異方性Δnが0.05~0.15であり」、「誘電率異方性Δεが-1.5~-8.0である」、「固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度が-80℃~-20℃であり」及び「ネマチック液晶組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明は「一般式(5)及び一般式(5-3)
【化2】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
【化3】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
(式中、R7~R8はそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基又はアルコキシル基を表し、環Eは1,4-フェニレン基を表し、L8は単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又はCF2O-を表し、rは0を表し、X6~X7はそれぞれ独立してH又はFを表す。)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種又は2種以上含有し、ネマチック相-等方性液体相転移温度が60℃~120℃であり、屈折率異方性Δnが0.05~0.15であり、誘電率異方性Δεが-1.5~-8.0であることを特徴とするネマチック液晶組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3-1>
本件発明1は、第一成分として式(1)
【化1】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
で表される化合物を含有するのに対し、甲3発明はその化合物を含有しない点。
<相違点3-2>
本件発明1は第二成分として誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物を含有するのに対し、甲3発明はそのような特定がない点。
イ 相違点についての検討
<相違点3-1>について
甲3-1には、【0168】を参照すると(摘記3d参照)、甲3発明の液晶混合物に含まれるCC-3-V1の上位概念としてIIIeの化合物(化学構造は前記第5 3(摘記3c)と同じであるため、省略)が記載されており(摘記3c参照)、さらに、その上位概念として
式III
【化5】(当審注:前記第5 3(摘記3a)と同じであるため、省略)
式中、
R31およびR32は、各々、互いに独立して、12個までのC原子を有する直鎖状アルキル、アルケニル、アルキルアルコキシまたはアルコキシ基を示し、および
【化6】(当審注:前記第5 3(摘記3a)と同じであるため、省略)
である、で表される化合物が記載されており(摘記3a参照)、その中で好ましい化合物として前記IIIeの化合物とともに、IIIa及びIIIbの化合物が記載され(摘記3c参照)、式IIIa、式IIIb及び式IIIeの化合物のalkylおよびalkyl*は、各々、互いに独立して、1~6個のC原子を有する直鎖状アルキル基を示す(摘記3c参照)。
ここで、本件発明1の液晶組成物に第一成分として含まれる式(1)
【化1】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
で表される化合物は、甲3-1に記載の式IIIaの化合物のalkylおよびalkyl*の一方が3個のC原子を有する直鎖状アルキルであり、他方が2個のC原子を有する直鎖状アルキルである。
そうすると、甲3発明の液晶混合物においてIIIeの化合物であるCC-3-V1に代えて、IIIで表される化合物としてIIIe同じく好ましいとされるIIIaの化合物を採用するとしても、互いに独立して、1~6個のC原子を有する直鎖状アルキル基を示すalkylおよびalkyl*の一方が3個のC原子を有する直鎖状アルキルであり、他方が2個のC原子を有する直鎖状アルキルであるものとすることにまで動機付けがあるとはいえない。
<相違点3-2>について
甲3-1には甲3発明の液晶混合物において、誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物を含むことについて記載も示唆もないから、そのような化合物を含むものとする動機付けがあるとはいえない。
ウ 請求人の主張及び当審の判断について
(ア)請求人は、<相違点3-1>について、審判請求書において「甲3の段落【0064】には、
【化19】
[図:0001406463000053.jpg]
が記載されている。これは、式IIIaの構造を開示している。すなわち、甲3は、本発明1の「3-Cy-Cy-2」を開示している。ここで、甲3の「CC-3-V1」の右末端基のプロピレン基を、本発明1の「3-Cy-Cy-2」の右末端基のエチル基に置換えることが容易であり、液晶組成物での使用において区別されておらず、同じ技術効果を果たしている、また、「3-Cy-Cy-2」は本発明1においては、予想外の技術的効果は奏していない。」と主張する。
(イ)しかし、前記イ<相違点3-1>についてで検討したとおり、本件発明1の式(1)で表される化合物に相当する3-Cy-Cy-2は、甲3-1における式IIIaの化合物においてalkylおよびalkyl*の一方が3個のC原子を有する直鎖状アルキルであり、他方が2個のC原子を有する直鎖状アルキルであり、式IIIaの化合物におけるalkylおよびalkyl*の多数の選択肢の1つに過ぎないから、甲3-1は、本発明1の式(1)「3-Cy-Cy-2」を開示しているとはいえない。
そして、前記イ<相違点3-1>についてで検討したとおりIIIaの化合物において1~6個のC原子を有する直鎖状アルキル基を示すalkylおよびalkyl*の一方が3個のC原子を有する直鎖状アルキルであり、他方が2個のC原子を有する直鎖状アルキルであるものとすることにまで動機付けがあるとはいえない。
(ウ)なお、請求人は、<相違点3-2>については何ら主張していないが、本件発明1の一般式(5)及び一般式(5-3)にあたる「B-3O2FF」、「B-5O2FF」及び「PP-1-4」が、誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物であると判断していると認められる。
(エ)しかし、甲3-1には、「B-3O2FF」、「B-5O2FF」及び「PP-1-4」の誘電率異方性Δεは記載されていないから、「B-3O2FF」、「B-5O2FF」及び「PP-1-4」が誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物であることが記載されているとはいえない。
(オ)そして、前記第7 3(2)~(5)で検討したとおり、第二成分と一般式(5)及び一般式(5-3)で表される化合物は、それぞれ異なるものであると解されるから、「B-3O2FF」、「B-5O2FF」及び「PP-1-4」は本件発明1の一般式(5)及び一般式(5-3)にあたるが、誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物ということはできない。
(カ)ただし、同じ化合物が「第二成分」と「一般式(5)及び一般式(5-3)で表される化合物」を充足する場合は、いずれか一方のみを充足するという根拠がないため、双方を充足するものと解されるが、化合物単独の誘電率異方性が立証されていないから、立証が不十分である。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲3-1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(2)本件発明2~4
本件発明2~4は、本件発明1を引用してさらに限定するものであり、上記本件発明1と甲3発明との<相違点3-1>及び<相違点3-2>と同じ相違点を有するものであって、<相違点3-1>及び<相違点3-2>については前記(1)イで検討したとおりであり、甲3-1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第10 無効理由2-3についての当審の判断
1 甲4発明の認定
甲4の例の混合物はネマチック液晶組成物であるから(摘記4b参照)、例M20としてに「以下の組成からなり、以下の透明点、Δn(20℃にて589nmで測定された光学異方性)、Δε(20℃、1kHzでの誘電異方性)、γ1(20℃で測定した回転粘度(mPa・s))、V0(20℃におけるしきい電圧、容量性(V))及びLTS(テストセルの中で試験された低温安定性(ネマチック相))を有するネマチック液晶混合物。
[図:0001406463000054.jpg]
」の発明が記載されているといえる(摘記4d参照。)
2 対比・判断
(1)本件発明1
ア 甲4発明との対比
甲4発明の「PY-3-O4」及び「PY-5-O4」は、甲4の【0097】、【0098】、【0101】及び【0102】を参照すると(摘記4d参照)、本件発明1の「一般式(5)及び一般式(5-3)
【化2】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
【化3】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
(式中、R7~R8はそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基又はアルコキシル基を表し、環Eは1,4-フェニレン基を表し、L8は単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又はCF2O-を表し、rは0を表し、X6~X7はそれぞれ独立してH又はFを表す。)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種又は2種以上」に相当する。
甲4発明の「透明点[℃]:85」、「Δε(20℃、1kHzでの誘電異方性)[kHz,20℃]:-4.2」、「LTSセル[-40℃](テストセルの中で試験された低温安定性):>1000h」及び「ネマチック液晶混合物」は、それぞれ、本件発明1の「ネマチック相-等方性液体相転移温度が60℃~120℃であり」、「誘電率異方性Δεが-1.5~-8.0である」、「固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度が-80℃~-20℃であり」及び「ネマチック液晶組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲4発明は「一般式(5)及び一般式(5-3)
【化2】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
【化3】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
(式中、R7~R8はそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基又はアルコキシル基を表し、環Eは1,4-フェニレン基を表し、L8は単結合、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-又はCF2O-を表し、rは0を表し、X6~X7はそれぞれ独立してH又はFを表す。)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種又は2種以上含有し、ネマチック相-等方性液体相転移温度が60℃~120℃であり、誘電率異方性Δεが-1.5~-8.0であることを特徴とするネマチック液晶組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点4-1>
本件発明は、第一成分として式(1)
【化1】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
で表される化合物を含有するのに対し、甲4発明はその化合物を含有しない点。
<相違点4-2>
本件発明1は第二成分として誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物を含有するのに対し、甲4発明2はそのような特定がない点。
<相違点4-3>
本件発明1は、屈折率異方性Δnが0.05~0.15であるのに対し、甲4発明はΔn(20℃にて589nmで測定された光学異方性)[589nm,20℃]:0.1589である点。
イ 相違点についての検討
<相違点4-1>について
甲4には、【0098】を参照すると(摘記4d参照)、甲4発明の液晶混合物に含まれるCC-5-Vの上位概念としてIIIeの化合物(化学構造は前記第5 4(摘記4c)と同じであるため、省略)が記載されており(摘記4c参照)、さらに、その上位概念として
式III
【化5】(当審注:前記第5 4(摘記4a)と同じであるため、省略)
式中、
R31およびR32は、各々、互いに独立して、12個までのC原子を有する直鎖状アルキル、アルケニル、アルキルアルコキシまたはアルコキシ基を表し、および
【化6】(当審注:前記第5 4(摘記4a)と同じであるため、省略)
である、で表される化合物が記載されており(摘記4a参照)、その中で好ましい化合物として前記IIIeの化合物とともに、IIIa及びIIIbの化合物が記載され(摘記4c参照)、式IIIa、式IIIb及び式IIIeの化合物のalkylおよびalkyl*は、各々、互いに独立して、1~6個のC原子を有する直鎖状アルキル基を示す(摘記4c参照)。
ここで、本件発明1の液晶組成物に第一成分として含まれる式(1)
【化1】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
で表される化合物は、甲4に記載の式IIIaの化合物のalkylおよびalkyl*の一方が3個のC原子を有する直鎖状アルキルであり、他方が2個のC原子を有する直鎖状アルキルである。
そうすると、甲4発明の液晶混合物においてIIIeの化合物であるCC-3-V1に代えて、IIIで表される化合物としてIIIe同じく好ましいとされるIIIaの化合物を採用するとしても、互いに独立して、1~6個のC原子を有する直鎖状アルキル基を示すalkylおよびalkyl*の一方が3個のC原子を有する直鎖状アルキルであり、他方が2個のC原子を有する直鎖状アルキルであるものとすることにまで動機付けがあるとはいえない。
<相違点4-2>について
甲4には甲4発明の液晶混合物において、誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物を含むことについて記載も示唆もないから、そのような化合物を含むものとする動機付けがあるとはいえない。
<相違点4-3>について
液晶組成物の組成を調整するとその諸物性が変化することは技術常識であるところ、甲4発明の液晶混合物をどのように調整すれば、他の物性を損なうことなく、Δnを本件発明1で規定された「0.05~0.15」の範囲にできるのかは、当業者といえども容易に理解できることではない。
したがって、甲4発明において、液晶組成物の屈折率異方性Δnを0.05~0.15の数値範囲とすることは、当業者が容易に想到することであるとないえない。
ウ 請求人の主張及び当審の判断について
(ア)請求人は、<相違点4-1>について、審判請求書において「甲4の段落【0045】には、
【化19】
[図:0001406463000055.jpg]
が記載されおり、式IIIaの構造を開示している。すなわち、甲4は、本発明1の「3-Cy-Cy-2」を開示している。ここで、甲4の「CC-5-V」を本発明1の「3-Cy-Cy-2」に置換することが容易であり、液晶組成物での使用において区別されておらず、同じ技術効果を果たしている、また、「3-Cy-Cy-2」は本発明1においては、予想外の技術的効果は奏していない。」と主張する。
(イ)しかし、前記イ<相違点4-1>についてで検討したとおり、本件発明1の式(1)で表される化合物に相当する3-Cy-Cy-2は、甲4における式IIIaの化合物においてalkylおよびalkyl*の一方が3個のC原子を有する直鎖状アルキルであり、他方が2個のC原子を有する直鎖状アルキルであり、式IIIaの化合物におけるalkylおよびalkyl*の多数の選択肢の1つに過ぎないから、甲4は、本発明1の式(1)「3-Cy-Cy-2」を開示しているとはいえない。
そして、前記イ<相違点4-1>についてで検討したとおりIIIaの化合物において1~6個のC原子を有する直鎖状アルキル基を示すalkylおよびalkyl*の一方が3個のC原子を有する直鎖状アルキルであり、他方が2個のC原子を有する直鎖状アルキルであるものとすることにまで動機付けがあるとはいえない。
(ウ)請求人は、<相違点4-3>について、審判請求書において「甲4の例20においては、液晶組成物のΔnが0.1589であり、本発明1の数値限定である0.05-0.15の範囲内に入っていないが、数値はとても近いので、当業者は、その需要と用途に応じて、従来の液晶組成物の調整を行うことにより、本発明1を相当し得ることができ、技術的効果も予想できる。」と主張する。
(エ)しかし、前記イ<相違点4-3>についてで検討したとおり、甲4発明のΔnを本件発明1で規定された「0.05~0.15」の範囲にできるのかは、当業者といえども容易に理解できることではない。
(オ)なお、請求人は、<相違点4-2>については何ら主張していないが、本件発明1の一般式(5)及び一般式(5-3)にあたる「PY-3-O4」及び「PY-5-O4」が、誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物であると判断していると認められる。
(カ)しかし、甲4には、「PY-3-O4」及び「PY-5-O4」の誘電率異方性Δεは記載されていないから、「PY-3-O4」及び「PY-5-O4」が誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物であることが記載されているとはいえない。
(キ)そして、前記第7 3(2)~(5)で検討したとおり、第二成分と一般式(5)及び一般式(5-3)で表される化合物は、それぞれ異なるものであると解されるから、「B-3O2FF」、「B-5O2FF」及び「PP-1-4」は本件発明1の一般式(5)及び一般式(5-3)にあたるが、誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物ではない。
(ク)ただし、同じ化合物が「第二成分」と「一般式(5)及び一般式(5-3)で表される化合物」を充足する場合は、いずれか一方のみを充足するという根拠がないため、双方を充足するものと解されるが、請求人は、化合物単独の誘電率異方性の値を立証していないから、立証が不十分である。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(2)本件発明2~4
本件発明2~4は、本件発明1を引用してさらに限定するものであり、上記本件発明1と甲4発明との<相違点4-1>~<相違点4-3>と同じ相違点を有するものであって、<相違点4-1>~<相違点4-3>については前記(1)イで検討したとおりであり、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第11 無効理由2-4についての当審の判断
1 甲2発明の認定
前記第8 1のとおり。
2 対比・判断
(1)本件発明1
ア 甲2発明との対比
本件発明1と甲2発明との対比、一致点及び相違点は、前記第8 2(1)アのとおり。
イ 相違点についての検討
<相違点2-1>について
甲2には、表Aを参照すると(摘記2d参照)、甲2発明の液晶混合物に含まれるCCH-34の上位概念としてIIIaの化合物(化学構造は前記第5 2(摘記2c)と同じであるため、省略)が記載されており(摘記2c参照)、式IIIaの化合物のalkylおよびalkyl*は、各々、互いに独立して、1~6個のC原子を有する直鎖状アルキル基を示し(摘記2c参照)、CCH-34はIIIaの化合物のalkylおよびalkyl*の一方が3個のC原子を有する直鎖状アルキルであり、他方が4個のC原子を有する直鎖状アルキルである。
ここで、本件発明1の液晶組成物に第一成分として含まれる式(1)
【化1】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
で表される化合物は、甲2に記載の式IIIaの化合物のalkylおよびalkyl*の一方が3個のC原子を有する直鎖状アルキルであり、他方が2個のC原子を有する直鎖状アルキルである。
一方、甲5には、甲5に記載の液晶組成物に含まれる成分として式(2-1)で表される化合物(化学構造は前記第5 5(摘記5a)と同じであるため、省略)が記載されており、式(2-1)のR1はアルキルまたはアルケニルであり;R3はアルキル、アルケニルまたはアルコキシであり;そしてこれらの基において、アルキルおよびアルコキシの炭素数は1~10であり、アルケニルの炭素数は2~10であり、甲2に記載の式IIIaの化合物と重複するものである。
そして、甲5の<表3>を参照すると(摘記5c参照)、甲5に記載の比較例2の液晶組成物において式(2-1)で表される化合物として、そのR1及びR3の一方が炭素数3のアルキルであり、他方が炭素数2のアルキルである、3-HH-2が記載されており、3-HH-2は本件発明1の液晶組成物に第一成分として含まれる式(1)で表される化合物に相当するものである。
しかし、甲2発明の液晶混合物において、CCH-34に代えて、甲5に記載の液晶組成物の成分である3-HH-2を採用する動機付けがあるとはいえない。
仮に、甲2発明の液晶混合物において、CCH-34に代えて、その上位概念である式IIIaの化合物と重複する式(2-1)で表される化合物を採用するかもしれないとしても、甲5には式(2-1)の化合物は粘度を小さくすることが記載されており(摘記5b参照)、また、甲5には比較例2は3-HH-4や3-HH-5を含む実施例3のものより粘度が大きいことが記載されているから(摘記5c参照)、甲2発明の液晶混合物において、甲5に記載の液晶組成物のように粘度を低くしようとしたとして、実施例3に含まれる3-HH-4や3-HH-5を採用しようとする動機付けまではあるかもしれないが、実施例3のものより粘度が大きい比較例2に含まれる3-HH-2を採用する動機付けがあるとはいえない。
<相違点2-2>について
甲2には甲2発明の液晶混合物において、誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物を含むことについて記載も示唆もないから、そのような化合物を含むものとする動機付けがあるとはいえない。
<相違点2-3>について
甲2には、甲2発明の液晶混合物が「極めて良好な低温安定性」が、具体的に、固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度が何℃のことを意味しているのか開示されていないし、液晶組成物の組成を調整するとその諸物性が変化することは技術常識であるところ、甲2発明の液晶混合物をどのように調整すれば、他の物性を損なうことなく「固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度を-80℃~20℃」にできるのかは、当業者といえども容易に理解できることではない。
そうすると、甲2発明のネマチック液晶組成物を固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度が-80℃~-20℃であるとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
ウ 請求人の主張及び当審の判断について
(ア)請求人は、<相違点2-1>について、審判請求書において「甲5は、本発明1の「3-Cy-Cy-2」の化合物及びそれを用いて実現可能な技術効果を開示している。当業者にとっては、甲2の「CCH-34」と甲5の「3-HH-2」(3-Cy-Cy-2に対応)を置換えて、本発明1の「3-Cy-Cy-2」を得ることは通常の技術で行われる程度のものである。また、「3-Cy-Cy-2」は本発明1においては、予想外の技術的効果は実現していない。」と主張する。
(イ)しかし、前記イ<相違点2-1>についてで検討したとおり、甲2発明のCCH-34に代えて、甲5に記載の3-HH-2を採用する動機付けがあるとはいえない。
(ウ)また、請求人は、<相違点2-3>について、審判請求書において「甲2の例10では、液晶組成物の低温特性データが開示されていない。この相違点について、甲2の段落【0017】には、「本発明の混合物は、容量性しきい値についての極めて好ましい値、保持比についての比較的高い値および同時に極めて良好な低温安定性、並びに極めて低い回転粘度を示す。本発明の混合物はさらに、透明点および回転粘度の良好な比率並びに高い負の誘電異方性により区別される。」と記載されている。
すなわち、甲2の例10の液晶組成物は、非常に良好な低温安定性を有し、また、甲5の実施例が、低温安定性を実現可能な液晶化合物の構造と、それを用いた液晶組成物の具体的な技術案を開示しているので、当業者は、その需要と用途に応じて、甲2と甲5を組み合わせて、液晶組成物の調整を行うことにより、本発明1を容易に想到し得る。また、その技術的効果も容易に予想できる。」と主張する。
(エ)しかし、前記イ<相違点2-3>についてで検討したとおり、「固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度を-80℃~20℃」にできるのかは、当業者といえども容易に理解できることではないし、甲5の実施例が、低温安定性を実現可能な液晶化合物の構造と、それを用いた液晶組成物の具体的な技術案を開示しているとしても同様である。
(ク)なお、請求人は、<相違点2-2>については何ら主張していないが、前記第8 2(1)ウ(キ)~(ケ)で検討したとおりである。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(2)本件発明2~4
本件発明2~4は、本件発明1を引用してさらに限定するものであり、上記本件発明1と甲2発明との<相違点2-1>~<相違点2-3>と同じ相違点を有するものであって、<相違点2-1>~<相違点2-3>については前記(1)イで検討したとおりであり、甲2に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第12 無効理由2-5についての当審の判断
1 甲3発明の認定
前記第9 1のとおり。
2 対比・判断
(1)本件発明1
ア 甲3発明との対比
本件発明1と甲3発明との対比、一致点及び相違点は、前記第9 2(1)アのとおり。
イ 相違点についての検討
<相違点3-1>について
甲3には、【0168】を参照すると(摘記3d参照)、甲3発明の液晶混合物に含まれるCC-3-V1の上位概念としてIIIeの化合物(化学構造は前記第5 3(摘記3c)と同じであるため、省略)が記載されており(摘記3c参照)、さらに、その上位概念として
式III
【化5】(当審注:前記第5 3(摘記3a)と同じであるため、省略)
式中、
R31およびR32は、各々、互いに独立して、12個までのC原子を有する直鎖状アルキル、アルケニル、アルキルアルコキシまたはアルコキシ基を示し、および
【化6】(当審注:前記第5 3(摘記3a)と同じであるため、省略)
である、で表される化合物が記載されており(摘記3a参照)、その中で好ましい化合物として前記IIIeの化合物とともに、IIIa及びIIIbの化合物が記載され(摘記3c参照)、式IIIa、式IIIb及び式IIIeの化合物のalkylおよびalkyl*は、各々、互いに独立して、1~6個のC原子を有する直鎖状アルキル基を示す(摘記3c参照)。
ここで、本件発明1の液晶組成物に第一成分として含まれる式(1)
【化1】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
で表される化合物は、甲3に記載の式IIIaの化合物のalkylおよびalkyl*の一方が3個のC原子を有する直鎖状アルキルであり、他方が2個のC原子を有する直鎖状アルキルである。
一方、甲5には、甲5に記載の液晶組成物に含まれる成分として式(2-1)で表される化合物(化学構造は前記第5 5(摘記5a)と同じであるため、省略)が記載されており、式(2-1)のR1はアルキルまたはアルケニルであり;R3はアルキル、アルケニルまたはアルコキシであり;そしてこれらの基において、アルキルおよびアルコキシの炭素数は1~10であり、アルケニルの炭素数は2~10であり、甲3に記載の式IIIaの化合物と重複するものである。
そして、甲5の<表3>を参照すると(摘記5c参照)、甲5に記載の比較例2の液晶組成物において式(2-1)で表される化合物として、そのR1及びR3の一方が炭素数3のアルキルであり、他方が炭素数2のアルキルである、3-HH-2が記載されており、3-HH-2は本件発明1の液晶組成物に第一成分として含まれる式(1)で表される化合物に相当するものである。
しかし、甲3発明の液晶混合物において、CC-3-V1に代えて、甲5に記載の液晶組成物の成分である3-HH-2を採用する動機付けがあるとはいえない。
仮に、甲3発明の液晶混合物において、CC-3-V1に代えて、その上位概念であるIIIで表される化合物としてIIIe同じく好ましいとされるIIIaの化合物と重複する式(2-1)で表される化合物を採用するかもしれないとしても、甲5には式(2-1)の化合物は粘度を小さくすることが記載されており(摘記5b参照)、また、甲5には比較例2は3-HH-4や3-HH-5を含む実施例3のものより粘度が大きいことが記載されているから(摘記5c参照)、甲3発明の液晶混合物において、甲5に記載の液晶組成物のように粘度を低くしようとしたとして、実施例3に含まれる3-HH-4や3-HH-5を採用しようとする動機付けまではあるかもしれないが、実施例3のものより粘度が大きい比較例2に含まれる3-HH-2を採用する動機付けがあるとはいえない。
<相違点3-2>について
甲3には甲3発明の液晶混合物において、誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物を含むことについて記載も示唆もないから、そのような化合物を含むものとする動機付けがあるとはいえない。
ウ 請求人の主張及び当審の判断について
(ア)請求人は、<相違点3-1>について、審判請求書において「甲5は、本発明1の「3-Cy-Cy-2」の化合物及びそれを用いて実現可能な技術効果を開示している。当業者にとっては、甲3の「CC-3-V1」と甲5の「3-HH-2」(3-Cy-Cy-2に対応)を置換えて、本発明1の「3-Cy-Cy-2」を得ることは通常の技術で行われる程度のものである。また、「3-Cy-Cy-2」は本発明1においては、予想外の技術的効果は実現していない。」と主張する。
(イ)しかし、前記イ<相違点3-1>についてで検討したとおり、甲3発明のCC-3-V1に代えて、甲5に記載の3-HH-2を採用する動機付けがあるとはいえない。
(ク)なお、請求人は、<相違点3-2>については何ら主張していないが、前記第9 2(1)ウ(ウ)~(カ)で検討したとおりである。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲3に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(2)本件発明2~4
本件発明2~4は、本件発明1を引用してさらに限定するものであり、上記本件発明1と甲3発明との<相違点3-1>及び<相違点3-2>と同じ相違点を有するものであって、<相違点3-1>及び<相違点3-2>については前記(1)イで検討したとおりであり、甲3に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第13 無効理由2-6についての当審の判断
1 甲4発明の認定
前記第10 1のとおり。
2 対比・判断
(1)本件発明1
ア 甲4発明との対比
本件発明1と甲4発明との対比、一致点及び相違点は、前記第10 2(1)アのとおり。
イ 相違点についての検討
<相違点4-1>について
甲4には、【0098】を参照すると(摘記4d参照)、甲4発明の液晶混合物に含まれるCC-5-Vの上位概念としてIIIeの化合物(化学構造は前記第5 4(摘記4c)と同じであるため、省略)が記載されており(摘記3c参照)、さらに、その上位概念として
式III
【化5】(当審注:前記第5 4(摘記4a)と同じであるため、省略)
式中、
R31およびR32は、各々、互いに独立して、12個までのC原子を有する直鎖状アルキル、アルケニル、アルキルアルコキシまたはアルコキシ基を表し、および
【化6】(当審注:前記第5 4(摘記4a)と同じであるため、省略)
である、で表される化合物が記載されており(摘記4a参照)、その中で好ましい化合物として前記IIIeの化合物とともに、IIIa及びIIIbの化合物が記載され(摘記4c参照)、式IIIa、式IIIb及び式IIIeの化合物のalkylおよびalkyl*は、各々、互いに独立して、1~6個のC原子を有する直鎖状アルキル基を示す(摘記4c参照)。
ここで、本件発明1の液晶組成物に第一成分として含まれる式(1)
【化1】(当審注:前記第2と同じであるため、省略)
で表される化合物は、甲4に記載の式IIIaの化合物のalkylおよびalkyl*の一方が3個のC原子を有する直鎖状アルキルであり、他方が2個のC原子を有する直鎖状アルキルである。
一方、甲5には、甲5に記載の液晶組成物に含まれる成分として式(2-1)で表される化合物(化学構造は前記第5 5(摘記5a)と同じであるため、省略)が記載されており、式(2-1)のR1はアルキルまたはアルケニルであり;R3はアルキル、アルケニルまたはアルコキシであり;そしてこれらの基において、アルキルおよびアルコキシの炭素数は1~10であり、アルケニルの炭素数は2~10であり、甲4に記載の式IIIaの化合物と重複するものである。
そして、甲5の<表3>を参照すると(摘記5c参照)、甲5に記載の比較例2の液晶組成物において式(2-1)で表される化合物として、そのR1及びR3の一方が炭素数3のアルキルであり、他方が炭素数2のアルキルである、3-HH-2が記載されており、3-HH-2は本件発明1の液晶組成物に第一成分として含まれる式(1)で表される化合物に相当するものである。
しかし、甲4発明の液晶混合物において、CC-5-Vに代えて、甲5に記載の液晶組成物の成分である3-HH-2を採用する動機付けがあるとはいえない。
仮に、甲4発明の液晶混合物において、CC-5-Vに代えて、その上位概念であるIIIで表される化合物としてIIIe同じく好ましいとされるIIIaの化合物と重複する式(2-1)で表される化合物を採用するかもしれないとしても、甲5には式(2-1)の化合物は粘度を小さくすることが記載されており(摘記5b参照)、また、甲5には比較例2は3-HH-4や3-HH-5を含む実施例3のものより粘度が大きいことが記載されているから(摘記5c参照)、甲4発明の液晶混合物において、甲5に記載の液晶組成物のように粘度を低くしようとしたとして、実施例3に含まれる3-HH-4や3-HH-5を採用しようとする動機付けまではあるかもしれないが、実施例3のものより粘度が大きい比較例2に含まれる3-HH-2を採用する動機付けがあるとはいえない。
<相違点4-2>について
甲4には甲4発明の液晶混合物において、誘電率異方性Δεが負でその絶対値が3よりも大きな化合物を含むことについて記載も示唆もないから、そのような化合物を含むものとする動機付けがあるとはいえない。
<相違点4-3>について
液晶組成物の組成を調整するとその諸物性が変化することは技術常識であるところ、甲4発明の液晶混合物をどのように調整すれば、他の物性を損なうことなく、Δnを本件発明1で規定された「0.05~0.15」の範囲にできるのかは、当業者といえども容易に理解できることではない。
したがって、甲4発明において、液晶組成物の屈折率異方性Δnを0.05~0.15の数値範囲とすることは、当業者が容易に想到することであるとはいえない。
ウ 請求人の主張及び当審の判断について
(ア)請求人は、<相違点4-1>について、審判請求書において「甲5は、本発明1の「3-Cy-Cy-2」の化合物及びそれを用いて実現可能な技術効果を開示している。当業者にとっては、甲4の「CC-5-V」と甲5の「3-HH-2」(3-Cy-Cy-2に対応)を置換えて、本発明1の「3-Cy-Cy-2」を得ることは通常の技術で行われる程度のものである。また、「3-Cy-Cy-2」は本発明1においては、予想外の技術的効果は実現していない。」と主張する。
(イ)しかし、前記イ<相違点4-1>についてで検討したとおり、甲4発明のCC-5-Vに代えて、甲5に記載の3-HH-2を採用する動機付けがあるとはいえない。
(ウ)請求人は、<相違点4-3>について、審判請求書において、前記第10 2(1)ウ(ウ)と同じ主張をしているが、前記第10 2(1)ウ(エ)で検討したとおりである。
(エ)なお、請求人は、<相違点4-2>については何ら主張していないが、前記第10 2(1)ウ(オ)~(ク)で検討したとおりである。
したがって、請求人の前記主張は採用できない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲4に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(2)本件発明2~4
本件発明2~4は、本件発明1を引用してさらに限定するものであり、上記本件発明1と甲4発明との<相違点4-1>~<相違点4-3>と同じ相違点を有するものであって、<相違点4-1>~<相違点4-3>については前記(1)イで検討したとおりであり、甲4に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
第14 むすび
1 特許第5939287号の請求項1~4に係る特許についての審判請求は成り立たない。
2 審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人の負担とする。
3 よって、結論のとおり審決する。
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2022-800088