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特許無効審判

2022-800045

ネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示素子

審判番号
2022-800045
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2010-223730
登録番号
5678554
請求日
2022年05月19日
審決日
2024年08月06日
公報発行日
2025年03月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ジャンスー ハーチェン ディスプレイ テクノロジー カンパニー,リミテッド
  • 【請求人代理人】森下 夏樹
  • 【請求人代理人】山本 健策
  • 【請求人代理人】福永 聡
  • 【請求人代理人】石川 大輔
  • 【請求人代理人】橋本 賢大
  • 【被請求人】DIC 株式会社
  • 【被請求人代理人】設▲楽▼ 隆一
  • 【被請求人代理人】長谷川 芳樹
  • 【被請求人代理人】清水 義憲
  • 【被請求人代理人】今村 玲英子
  • 【被請求人代理人】松阪 絵里佳
  • 【被請求人代理人】吉住 和之
  • 【被請求人代理人】中塚 岳
審判長/審判官
  • 審判長 門前 浩一
  • 審判官 瀬下 浩一
  • 審判官 村守 宏文
分類
P1113.113-YAA(C09K) / P1113.121-YAA(C09K) / P1113.536-YAA(C09K) / P1113.537-YAA(C09K) / P1113.55 -YAA(C09K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法17条の2第3項特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第134条の2第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第134条の2第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第3項、特許法第134条の2第6項、特許法第134条の2第3項、特許法第17条の2第5項、特許法第131条の2第2項
データ出所
審決公報(XML)

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上記当事者間の特許第5678554号発明「ネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示素子」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第5678554号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の〔1-10〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続経緯 1 本件特許に係る出願は、平成22年10月1日に出願され、平成27年1月16日に特許第5678554号として設定登録(請求項の数10)がされたものである。 2 本件無効審判事件(無効2022-800045号) 本件無効審判事件における手続の経緯は、以下のとおりである。 令和4年 5月19日 本件無効審判請求(請求項1~10に係る特許に対して) 同年 6月15日付け 答弁指令 同年 8月18日 審判事件答弁書及び訂正請求書(被請求人) 同年10月 5日付け 弁駁指令 同年11月11日 上申書(請求人、期間延長の求め) 同年 同月29日付け 通知書(期間延長の承認) 同年12月26日 弁駁書(請求人、以下、「第1弁駁書」という。) 令和5年 1月13日 手続補正書(請求人) 同年 4月11日付け 審理事項通知 同年 6月 6日 口頭審理陳述要領書(被請求人) 同年 同月 7日 口頭審理陳述要領書(請求人) 同年 同月21日 口頭審理 同年 7月 5日 上申書(請求人) 同年 同月18日 上申書(被請求人) 同年 8月29日付け 無効理由通知書 同年 9月 5日付け 職権審理結果通知書 同年10月11日 訂正請求書及び意見書(被請求人) 同年10月31日 意見書(請求人) 同年11月 8日付け 第2弁駁指令 令和6年 1月 4日 弁駁書(請求人、以下、「第2弁駁書」という。) なお、令和4年8月18日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法第134条の2第6項の規定により取り下げられたものとみなす。 3 別件無効審判事件(無効2022-800082号) 別件無効審判事件における手続の経緯は、以下のとおりである。 令和4年10月19日 石家庄▲誠▼志永▲華顕▼示材料有限公司により、無効審判請求(請求項1~5、8に係る特許に対して) 同年11月10日付け 手続中止通知書 令和6年 3月22日 審判請求取下書 第2 本件訂正について 令和5年10月11日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正の内容を「本件訂正」という。)について検討する。 1 請求の趣旨 令和5年10月11日にされた本件訂正請求に係る請求の趣旨は、「特許第5678554号の明細書及び特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める」というものである。 2 訂正事項 本件訂正は、以下の訂正事項1~5からなるものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「B1及びB2はそれぞれ独立的に (a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個の-CH2-は-O-及び/又は-S-に置換されてもよい。) (b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。) (c) 1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基 からなる群より選ばれる基を表し、」とあるのを、「B1及びB2はそれぞれ独立的に (a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個の-CH2-は-O-及び/又は-S-に置換されてもよい。) (b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。) からなる群より選ばれる基を表し、」と訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「上記の基(a)、基(b)又は基(c)はCN又はハロゲンで置換されていてもよく、」とあるのを、「上記の基(a)又は基(b)はCNで置換されていてもよく、」と訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「一般式(I)で表される化合物の含有量が5から35質量%であり、一般式(II)で表される化合物の含有量が5から35質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が10から80質量%であり、」とあるのを、「一般式(I)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が30から80質量%であり、」と訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に 「ネマチック液晶組成物。」とあるのを、 「ネマチック液晶組成物。 ただし、以下の式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。 【化22】 [図:0001419606000001.jpg] (式(1)中、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aは独立して、1-ピラン-2,5-ジイル、1,4-シクロへキシレン、または1,4-フェニレンであり、少なくとも1つの環Aは1-ピラン-2,5-ジイルであり、Z1は独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;mは、1、2、または3である。) 【化23】 [図:0001419606000002.jpg] (式(1-1)および式(1-2)中、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシまたは炭素数2から12のアルケニルであり;X1およびX2は独立して、フッ素または塩素であり;環Aおよび環Bは独立して、1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-フェニレンである。)」と訂正する。 (5)訂正事項5 明細書の段落【0066】に 【化20】 [図:0001419606000003.jpg] とあるうち、二か所の「(I-B)」との記載をいずれも「(IV-E)」と、二か所の「(I-A)」との記載をいずれも「(IV-F)」と訂正する。 3 一群の請求項について 訂正前の請求項2乃至10は、請求項1を直接又は間接的に引用する。そして、訂正前の請求項1を訂正すると、訂正前の請求項2乃至10もこれと連動して訂正される。 したがって、請求項1~10は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。 4 訂正の適否について (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、一般式(III)におけるBl及びB2の選択肢である基(a)、基(b)及び基(c)から、基(c)の選択肢を削除するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無 基(c)の選択肢を削除することは、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件に適合するといえる。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1により、訂正前の一般式(III)で表される化合物のうちのB1及びB2が表す基(c)を有するものは、一般式(III)で表される化合物に含まれなくなり、訂正後の「一般式(III)で表される化合物の含有量が10から80質量%であり」の規定から外れるので、基(c)を有するものの含有量は規定されないものとなる。ここで、訂正後の一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計の下限は20質量%、上限は70質量%であるから、訂正後の一般式(III)で表される化合物と訂正前の一般式(III)で表される化合物のうちのB1及びB2が表す基(c)を有するものの含有量の下限は30質量%、上限は80質量%となり、訂正前の一般式(III)で表される化合物の含有量の範囲に含まれることとなる。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、請求項1の液晶組成物に第三成分として含まれる化合物である一般式(III)のB1及びB2が表す基(a)、基(b)又は基(c)について、「上記の基(a)、基(b)又は基(c)はCN又はハロゲンで置換されていてもよい」とあるのを、前記訂正事項1において基(c)の選択肢が削除されたことを受け、さらに選択肢であるハロゲンを削除して、「上記の基(a)又は基(b)はCNで置換されていてもよい」と訂正するものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるといえる。 また、請求項1において、一般式(I)で表される化合物は第一成分であると特定され、一般式(II)で表される化合物は第二成分として特定され、一般式(III)で表される化合物は第三成分として特定されているから、一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物は、別成分として特定することが意図されていると解されるところ、訂正前は、第三成分として含まれる化合物である一般式(III)で表される化合物が、第三成分として含まれる化合物である一般式(III)で表される化合物とは別の成分として特定されている第1の成分として含まれる化合物である一般式(I)で表される化合物及び第2の成分として含まれる化合物である一般式(II)で表される化合物と重複し得たことから、一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物とは別の成分であることが明瞭でなかったものを、訂正により一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物とは別の成分であることを明瞭にするものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無 本件明細書段落【0033】には、一般式(II1)のB1及びB2が表す基(a)、基(b)又は基(c)について、「分子内に存在する環構造中に置換したハロゲンは1個が好ましく、0個がさらに好ましい。」との記載がある。また、実施例1~7に記載された一般式(III)で表される化合物はすべて、環構造がハロゲンで置換されていない。 したがって、訂正事項2のうち、請求項1において、基(c)の選択肢を削除する部分は、前記訂正事項1と同様に明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、請求項1において、基(a)又は基(b)が「ハロゲンで置換」されてもよいとする選択肢を削除する部分は、明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件に適合するといえる。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2により、訂正前の一般式(III)で表される化合物のうちのB1及びB2が表す基(a)又は基(b)がハロゲンで置換されたものは、一般式(III)で表される化合物に含まれなくなって訂正後の「一般式(III)で表される化合物の含有量が10から80質量%であり」の規定から外れてその含有量は一見すると規定されなくなってしまっているが、訂正後の一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計の下限は20質量%、上限は70質量%であるから、訂正後の一般式(III)で表される化合物と訂正前の一般式(III)で表される化合物のうちのB1及びB2が表す基(a)又は基(b)がハロゲンで置換されたものの含有量の下限は30質量%、上限は80質量%となり、訂正前の一般式(III)で表される化合物の含有量の範囲から拡張・変更されていないことが理解できる。 そうすると、訂正事項2は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に規定する要件に適合するといえる。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、請求項1の液晶組成物の組成比について、「一般式(I)で表される化合物の含有量が5から35質量%であり、一般式(II)で表される化合物の含有量が5から35質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が10から80質量%であり、」とあるのを、「一般式(I)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が30から80質量%であり、」と訂正するもので、訂正前の各化合物の含有量の数値範囲をより狭い範囲に限定するものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無 本件明細書には、「一般式(I)で表される化合物の含有率は5から35質量%であるが、10から30質量%の範囲であることがより好ましい」(段落【0024】)、「一般式(II)の含有率は5から35質量%の範囲であることが好ましいが、10から30質量%の範囲であることがより好ましい」(段落【0028】)、「一般式(III)の含有率は10から80質量%の範囲であることが好ましいが、20から70質量%の範囲であることがより好ましく、35から65質量%の範囲であることが特に好ましい・・・低い粘度を重視する場合は、これらの含有率が多いことが好ましく、その下限値は10質量%である、20質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、35質量%が特に好ましい。」(段落【0032】)との記載がある。これらの段落には、一般式(I)で表される化合物の含有量の下限値として10質量%がより好ましいこと、一般式(II)で表される化合物の含有量の下限値として10質量%がより好ましいこと、一般式(III)で表される化合物の含有量の下限値として30質量%がより好ましいことが、それぞれ記載されている。 したがって、訂正事項3は、明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件に適合するといえる。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に規定する要件に適合するといえる。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、甲4に記載された式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、甲5に記載された式(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び甲5に記載された式(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を請求項1に係る発明から除くものである。 したがって、訂正事項4は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無 訂正事項4は、甲4に記載された式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、甲5に記載された式(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び甲5に記載された式(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除くものであり、これらの液晶組成物を除くことは、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項4は、明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件に適合するといえる。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に規定する要件に適合するといえる。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的について 訂正事項5は、比較例3について記載した本件明細書の段落【0066】において、【化20】中の一般式に付された二か所の「(I-B)」との記載をいずれも「(IV-E)」と、二か所の「(I-A)」との記載をいずれも「(IV-F)」と訂正するものである。 上記段落に続いて比較例3について説明する本件明細書の段落【0067】には、「比較例3は一般式(I)で表される化合物に換え、一般式(IV-E)及び(IV-F)で表される化合物を含有したネマチック液晶組成物である。」との記載がある。【化20】中の一般式のうち、「(I-B)」及び「(I-A)」との符号は、「一般式(I)で表される化合物」を意味すると解されるところ、段落【0067】の記載と対比すると、【化20】中の一般式の符号のうち、「(I-B)」及び「(I-A)」は誤記であることが明らかである。そして、【化20】に「(I-B)」として記載された化合物の一般式は、本件明細書の段落【0037】に記載された【化10】中の一般式のうち「(IV-E)」と、【化20】に「(I-A)」として記載された化合物の一般式は、【化10】中の一般式のうち「(IV-F)」と一致する。 したがって、訂正事項5は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無 訂正事項5は、上記アのとおり誤記または誤訳の訂正を目的とするものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に規定する要件に適合するといえる。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項5は、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に規定する要件に適合するといえる。 エ 関係する請求項についての説明 訂正事項5は本件明細書の段落【0066】に係るものであり、同段落は請求項1の液晶組成物と対比するための比較例に関する記載である。したがって、訂正事項5は請求項1に対応するものであり、上記(2)の一群の請求項に対応するものである。 5 訂正についての請求人の主張及び当審の判断 (1)請求人は以下のとおり主張する。 進歩性の拒絶理由(無効理由)を回避するための除くクレームへの補正(訂正)が新規事項の追加に当たるかは、引用発明との関係にも着目した上で、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるかを判断すべきところ、訂正事項4は進歩性回避のための除くクレームへの訂正であり、本件明細書全体の記載を統合しても、甲4の式(1)化合物、甲5の式(1-1)で表される化合物、又は、式(1-2)で表される化合物を含む液晶組成物を除くことの技術的意義は不明であるから、訂正事項4は新規事項を追加するものである(第2弁駁書7頁1行~18頁13行)。 しかしながら、本件訂正4により、甲4の式(1)化合物、甲5の式(1-1)で表される化合物、又は、式(1-2)で表される化合物を含む液晶組成物を除いたことにより、訂正後の本件発明1は、これらの液晶組成物を包含しないことになったのだから、その技術的意義は明確である。 そして、特許法134条の2第1項に基づき特許請求の範囲を訂正するときは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内でしなければならず、実質上、特許請求の範囲を拡張し、変更するものであってはならないとされている(同条9項、同法126条5項及び6項)ところ、それに加えて、進歩性の無効理由を回避するための除くクレームへの訂正である場合には、引用発明との関係にも着目するとすべき根拠はない。 さらに、本件訂正4が願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではないことは上記4(4)のとおりである。 よって、上記主張は採用できない。 (2)また、請求人は以下のとおり主張する。 本件訂正は、請求項1の基(c)を削除し、組成物の成分の合計量が100%を越えないように一般式(III)で表される化合物の含有量の下限を35から30重量%に変更し、そして式(1)、(1-1)および(1-2)の化合物を含む組成物を除外していることにおいて、令和4年8月18日付け訂正請求書における訂正(旧訂正)後の特許請求の範囲と相違するが、本件訂正と旧訂正はそれ以外の点においては同一であるから、旧訂正に対する訂正要件違反の理由が本件訂正にも該当するから、本件訂正も旧訂正と同様に、訂正要件に違反している。そのため、本件訂正についても、旧訂正について請求人が主張した理由が存在する(第2弁駁書18頁20行~19頁10行)。 しかしながら、請求人も認めるとおり、本件訂正と旧訂正とは異なっている上、旧訂正について請求人が主張した理由のどの部分が本件訂正について妥当するのか請求人は明らかにしていないから、上記主張は判然としない。 もっとも、確定訂正事項の内容から、請求人は以下の主張をするものとも解される。 ア 「CN又はハロゲンで置換されていてもよく」を、「CNで置換されていてもよく」とする訂正は、ハロゲン化している化合物が粘度を上昇させるものであるという技術事項を導入するものである。 イ 本件訂正前は、ハロゲン化合物とノンハロゲン化合物の合計量の上限が80質量%であったのに対して、「CN又はハロゲンで置換されていてもよく」を、「CNで置換されていてもよく」とする訂正により、ハロゲン化合物とノンハロゲン化合物の合計量の上限が100質量%になり、請求項の範囲を拡張することになる。 ウ 明細書の【0066】に記載の【化20】の、二か所の「(I-B)」との記載を「(IV-E)」とし、二か所の「(I-A)」との記載を「(IV-F)」とする訂正は、訂正要件を満たしていない。 そこで検討するに、前記アについては、「CN又はハロゲンで置換されていてもよく、」を、「CNで置換されていてもよく」とする訂正は、単に「CN又はハロゲン」との選択肢のうちの「ハロゲン」を削除するものにすぎず、かかる削除が、ハロゲン化している化合物が粘度を上昇させるものであるという技術事項を導入するものであるなどとは到底いうことができない。また、上記「ハロゲン」を削除することが新規事項を追加するものではないことは前記4(2)のとおりである。 よって、前記アの主張は失当である。 次に、前記イに関し、前記4(1)ウで検討したとおり、「CN又はハロゲンで置換されていてもよく」を、「CNで置換されていてもよく」とする訂正により、ハロゲン化合物とノンハロゲン化合物の合計量の上限は80質量%のままであるから、前記イの主張は失当である。 またウについて、請求人が指摘する【0066】の訂正は「誤記または誤訳の訂正」を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲の拡張・変更に当たらないことは前記4(5)のとおりであり、請求人の主張ウは失当である。 6 本件訂正についての小括 以上のように、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、第2号又は第3号を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、明細書及び特許請求の範囲を訂正明細書及び訂正特許請求の範囲の記載のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 第3 本件発明について 上記第2のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明10」ということがある。)は、令和5年10月11日に提出された訂正請求書に添付の訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 第一成分として、一般式(I) 【化5】 [図:0001419606000004.jpg] (式中、R1は炭素数1から10のアルキル基を表し、これらの基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-及び/又は-S-に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、R2は炭素数1から10のアルキル基又はアルコキシル基を表し、これらの基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-及び/又は-S-に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、mは0、1又は2を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、第二成分として、一般式(II) 【化6】 [図:0001419606000005.jpg] (式中、R3は炭素数1から10のアルキル基を表し、これらの基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-及び/又は-S-に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、R4は炭素数1から10のアルキル基又はアルコキシル基を表し、これらの基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-及び/又は-S-に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよい。)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、第三成分として、一般式(III) 【化7】 [図:0001419606000006.jpg] (式中、R5及びR6はそれぞれ独立的に炭素数1から10のアルキル基又はアルコキシル基を表し、これらの基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-及び/又は-S-に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、B1及びB2はそれぞれ独立的に (a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個の-CH2-は-O-及び/又は-S-に置換されてもよい。) (b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。) からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)又は基(b)はCNで置換されていてもよく、Y1及びY2はそれぞれ独立的に-CH2CH2-、-CH=CH-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-CF2CF2-、-CF=CF-、-CH2O-、-OCH2-、-OCH(CH3)-、-CH(CH3)O-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-C≡C-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-COS-、-SCO-又は単結合を表し、Y2及びB2が複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよく、pは0、1又は2を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、 一般式(I)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が30から80質量%であり、 一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計が20から70質量%であり、 一般式(III)で表される化合物として一般式(III-F) 【化10】 [図:0001419606000007.jpg] (式中、R11は炭素数1から5のアルキル基を表し、R12は炭素数1から5のアルキル基又はアルコキシル基を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上含有することを特徴とする誘電率異方性が負のネマチック液晶組成物。 ただし、以下の式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。 【化22】 [図:0001419606000008.jpg] (式(1)中、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aは独立して、1-ピラン-2,5-ジイル、1,4-シクロへキシレン、または1,4-フェニレンであり、少なくとも1つの環Aは1-ピラン-2,5-ジイルであり、Z1は独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;mは、1、2、または3である。) 【化23】 [図:0001419606000009.jpg] (式(1-1)および式(1-2)中、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシまたは炭素数2から12のアルケニルであり;X1およびX2は独立して、フッ素または塩素であり;環Aおよび環Bは独立して、1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-フェニレンである。) 【請求項2】 一般式(I)で表される化合物として一般式(I-A)及び一般式(I-B) 【化8】 [図:0001419606000010.jpg] (式中、R7及びR8はそれぞれ独立的にR1と同じ意味を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上含有する請求項1に記載のネマチック液晶組成物。 【請求項3】 一般式(II)で表される化合物として一般式(II-A) 【化9】 [図:0001419606000011.jpg] (式中、R9及びR10はそれぞれ独立的にR1と同じ意味を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上含有する請求項1又は2に記載のネマチック液晶組成物。 【請求項4】 一般式(III)で表される化合物として一般式(III-A)~(III-E)及び(III-G)~一般式(III-J) 【化10】 [図:0001419606000012.jpg] (式中、R11は炭素数1から5のアルキル基を表し、R12は炭素数1から5のアルキル基又はアルコキシル基を表す。)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する請求項1から3のいずれか1項に記載のネマチック液晶組成物。 【請求項5】 一般式(IV-A)から一般式(IV-O) 【化11】 [図:0001419606000013.jpg] (式中、R13及びR14はそれぞれ独立的にR1と同じ意味を表す。)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を含有する請求項1から4のいずれか1項に記載のネマチック液晶組成物。 【請求項6】 アルケニル基を有する化合物を含有しない請求項1から5のいずれか一項に記載のネマチック液晶組成物。 【請求項7】 25℃における誘電率異方性Δεが-2.0から-6.0の範囲であり、25℃における屈折率異方性Δnが0.08から0.13の範囲であり、20℃における粘度(η)が10から30 mPa・sの範囲であり、ネマチック相-等方性液体相転移温度(Tni)が60℃から120℃の範囲である請求項1から6のいずれか一項に記載のネマチック液晶組成物。 【請求項8】 請求項1から7のいずれか一項に記載のネマチック液晶組成物を用いた液晶表示素子。 【請求項9】 請求項1から8のいずれか一項に記載のネマチック液晶組成物を用いたアクティブマトリックス駆動用液晶表示素子。 【請求項10】 請求項1から8のいずれか一項に記載のネマチック液晶組成物を用いたVAモード、PSVAモード、IPSモード又はECBモード用液晶表示素子。」 以下、【請求項1】の「一般式(I) 【化5】 [図:0001419606000014.jpg] (式中、R1は炭素数1から10のアルキル基を表し、これらの基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-及び/又は-S-に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、R2は炭素数1から10のアルキル基又はアルコキシル基を表し、これらの基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-及び/又は-S-に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、mは0、1又は2を表す。)で表される化合物」を単に「一般式(I)で表される化合物」と、 「一般式(II) 【化6】 [図:0001419606000015.jpg] (式中、R3は炭素数1から10のアルキル基を表し、これらの基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-及び/又は-S-に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、R4は炭素数1から10のアルキル基又はアルコキシル基を表し、これらの基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-及び/又は-S-に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよい。)で表される化合物」を単に「一般式(II)で表される化合物」と、 「一般式(III) 【化7】 [図:0001419606000016.jpg] (式中、R5及びR6はそれぞれ独立的に炭素数1から10のアルキル基又はアルコキシル基を表し、これらの基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-及び/又は-S-に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、B1及びB2はそれぞれ独立的に (a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個の-CH2-は-O-及び/又は-S-に置換されてもよい。) (b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上の-CH=は-N=に置換されてもよい。) からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)又は基(b)はCNで置換されていてもよく、Y1及びY2はそれぞれ独立的に-CH2CH2-、-CH=CH-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH(CH3)CH(CH3)-、-CF2CF2-、-CF=CF-、-CH2O-、-OCH2-、-OCH(CH3)-、-CH(CH3)O-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-C≡C-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-COS-、-SCO-又は単結合を表し、Y2及びB2が複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよく、pは0、1又は2を表す。)で表される化合物」を単に「一般式(III)で表される化合物」と、 「一般式(III-F) 【化10】 [図:0001419606000017.jpg] (式中、R11は炭素数1から5のアルキル基を表し、R12は炭素数1から5のアルキル基又はアルコキシル基を表す。)で表される化合物」を単に「一般式(III-F)で表される化合物」と 、 「ただし、以下の式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。 【化22】 [図:0001419606000018.jpg] (式(1)中、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aは独立して、1-ピラン-2,5-ジイル、1,4-シクロへキシレン、または1,4-フェニレンであり、少なくとも1つの環Aは1-ピラン-2,5-ジイルであり、Z1は独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;mは、1、2、または3である。) 【化23】 [図:0001419606000019.jpg] (式(1-1)および式(1-2)中、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシまたは炭素数2から12のアルケニルであり;X1およびX2は独立して、フッ素または塩素であり;環Aおよび環Bは独立して、1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-フェニレンである。)」を単に「ただし、以下の式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。」と記載することとする。 そうすることにより、請求項1を以下のとおりとする。 「第一成分として、一般式(I)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、第二成分として、一般式(II)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、第三成分として、一般式(III)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、 一般式(I)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が30から80質量%であり、 一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計が20から70質量%であり、 一般式(III)で表される化合物として一般式(III-F)で表される化合物を1種又は2種以上含有することを特徴とする誘電率異方性が負のネマチック液晶組成物。 ただし、以下の式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。」 第4 請求人の主張の概要 1 証拠の一覧 請求人の提示した証拠は、以下のとおり。以下、甲第1号証の1を「甲1の1」などという。 (1)審判請求書とともに提出された証拠 甲1の1:国際公開第2010/072370号 甲1の2:特表2012-513483号公報(甲1の1の公表公報) 甲2 :国際公開2010/084823号 甲3 :特開2009-35630号公報 甲4 :国際公開2010/032587号 甲5 :特開2009-270080号公報 甲6 :国際公開2010/067662号 甲7 :本件特許の平成26年11月21日付手続補正書 甲8 :本件特許の平成26年11月21日付意見書 甲9 :特許庁審査基準第IV部第2章新規事項を追加する補正 甲10:特開2008-144135号公報 甲11:物理教育第65巻第1号(2017)p.20~25 (2)第1弁駁書とともに提出された証拠 甲12:特許法逐条解説第22版、p.467~476、表紙 甲13:審判便覧第19版「38-03」 甲14:国際公開第2010/084810号 甲15:特開2010-163559号公報 甲16:国際公開第2010/082558号 甲17:国際公開第2020/047206号 甲18:国際公開第2020/032612号 甲19:特開2010-059306号公報 甲20:特開2010-59221号公報 甲21:国際公開第2010/024164号 甲22:国際公開第2009/154080号 甲23:本件の審査段階の平成26年10月1日付け拒絶理由通知 甲24:特開2006-037054号公報 甲25:特開2001-354967号公報 甲26:特許庁審査基準、第II部第2章第3節明確性要件 (3)口頭審理陳述要領書とともに提出された証拠 甲27:審判便覧38-03P訂正要件(改定H30.9) 甲28:特許庁審査基準第 IV部第4章目的外補正(特許法第17条の2第5項) 甲29:知的財産裔等裁判所平成30年(行ケ)第10133号審決取消請求事件令和元年7月18日判決 甲30:特開2011-89013号公報 甲31:本件特許(特許第5678554号)の登録原簿 (4)令和5年7月5日提出の上申書とともに提出された証拠 甲32:特許庁審査基準第II部第2章第2節サポート要件、平成27年10月、特許庁 (5)第2弁駁書とともに提出された証拠 甲33:加藤 志麻子、「除くクレームによる補正一除き得を許さない、適切な審査、審理についての提言」、「清水節先生古稀記念論文集多様化する知的財産権訴訟の未来へ」、令和5年10月6日、第309~325ページ 甲34:知財高裁判決・平成20年(行ケ)第10254号 2 無効理由の整理 請求人が主張する無効理由及び令和5年8月29日付け無効理由通知で通知した無効理由を整理すると以下のとおりである。 (1)当審が検討対象とする無効理由 ア 審判請求書において主張された理由 (ア)無効理由1-1 請求項1の一般式(III)で表される化合物の含有量に係るサポート要件違反(特許法第36条第6項第1号)。 (イ)無効理由1-2 請求項1の一般式(III-F)で表される化合物の含有量の下限値がないことに係るサポート要件違反(特許法第36条第6項第1号)。 (ウ)無効理由1-3 請求項1の一般式(I)で表される化合物の含有量、一般式(II)で表される化合物の含有量、一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物の合計含有量並びに一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物の合計含有量に係るサポート要件違反(特許法第36条第6項第1号)。 (エ)無効理由1-4 実施例のものの誘電率異方性及び粘度が比較例よりも悪いことに係るサポート要件違反(特許法第36条第6項第1号)。 (オ)無効理由1-5 請求項1の一般式(IV)で表される化合物を含むものに係るサポート要件違反(特許法第36条第6項第1号)。 (カ)無効理由1-6 比較例3に係るサポート要件違反(特許法第36条第6項第1号)。 (キ)無効理由1-7 請求項1の一般式(III)で表される化合物がアルケニル基を含むことに係るサポート要件違反(特許法第36条第6項第1号)。 (ク)無効理由2-1 請求項1の一般式(III)で表される化合物の含有量に係る実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号)。 (ケ)無効理由2-2 請求項1の一般式(III-F)で表される化合物の含有量の下限値がないことに係る実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号)。 (コ)無効理由2-3 請求項1の一般式(I)で表される化合物の含有量、一般式(II)で表される化合物の含有量、一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物の合計含有量並びに一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物の合計含有量に係る実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号)。 (サ)無効理由2-4 実施例のものの誘電率異方性及び粘度が比較例よりも悪いことに係る実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号)。 (シ)無効理由2-5 請求項1の一般式(IV)で表される化合物を含むものに係る実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号)。 (ス)無効理由2-6 比較例3に係る実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号)。 (セ)無効理由2-7 請求項1の一般式(III)で表される化合物がアルケニル基を含むことに係る実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号)。 (ソ)無効理由3 甲1に記載された発明に基づく本件発明1~10の新規性欠如(特許法第29条第1項第3号)。 (タ)無効理由4-1 甲1に記載された発明、又は、甲1に記載された発明、並びに、甲2、甲4、甲5及び甲11に記載された事項に基づく本件発明1~10の進歩性欠如(特許法第29条第2項)。 (チ)無効理由4-2 甲2に記載された発明、又は、甲2に記載された発明、並びに、甲1、甲4、甲5、甲10及び甲11に記載された事項に基づく本件発明1~10の進歩性欠如(特許法第29条第2項)。 (ツ)無効理由4-3 甲3に記載された発明、又は、甲3に記載された発明、並びに、甲1、甲4、甲5、甲10及び甲11に記載された事項に基づく本件発明1~10の進歩性欠如(特許法第29条第2項)。 (テ)無効理由4-4 甲4に記載された発明、又は、甲4に記載された発明、並びに、甲1、甲10、甲11及び乙2に記載された事項に基づく本件発明1~10の進歩性欠如(特許法第29条第2項)。 (ト)無効理由4-5 甲5に記載された発明、又は、甲5に記載された発明、並びに、甲1、甲10、甲11及び乙2に記載された事項に基づく本件発明1~10の進歩性欠如(特許法第29条第2項)。 (ナ)無効理由4-6 甲6に記載された発明、又は、甲6に記載された発明、並びに、甲1、甲10及び甲11に記載された事項に基づく本件発明1~10の進歩性欠如(特許法第29条第2項)。 (ニ)無効理由5-1 請求項1の一般式(III-F)で表される化合物の含有量の下限値がないことに係る明確性要件違反(特許法第36条第6項第2号)。 (ヌ)無効理由5-2 請求項1の一般式(III)で表される化合物がアルケニル基を含むことに係る明確性要件違反(特許法第36条第6項第2号)。 (ネ)理由6 請求項1の一般式(III-F)で表される化合物を必須成分とする甲7の補正に係る新規事項追加(特許法第17条の2第3項)。 イ 第1弁駁書において主張された理由 (ア)無効理由1-8 請求項1の一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物の合計含有量が100%を超えることに係るサポート要件違反(特許法第36条第6項第1号)。 (イ)無効理由2-8 請求項1の一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物の合計含有量が100%を超えることに係る実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号)。 (ウ)無効理由5-3 請求項1の一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表される化合物及び一般式(III)で表され化合物の合計含有量が100%を超えることに係る明確性要件違反(特許法第36条第6項第2号)。 (2)当審が検討対象外とした無効理由 ア 第1弁駁書において主張された理由 (ア)無効理由4-7 甲1に記載された発明、並びに、甲3~甲6、甲11及び甲14~甲22に記載された事項に基づく本件発明1~10の進歩性欠如(特許法第29条第2項)。 (イ)無効理由4-8 甲22に記載された発明に基づく本件発明1~10の進歩性欠如(特許法第29条第2項)。 (ウ)無効理由4-9 甲24に記載された発明及び甲25に記載された事項に基づく本件発明1~10の進歩性欠如(特許法第29条第2項)。 イ 補正許否の決定 当審は、令和5年6月21日の口頭審理において、無効理由4-7~4-9を追加する審判請求の理由の補正を特許法第131条の2第2項に該当しないとして許可しない旨の補正許否の決定をした。 第5 被請求人の主張の概要 1 証拠の一覧 被請求人の提示した証拠は、以下のとおり。以下、乙第1号証を「乙1」などという。 (1)口頭審理陳述要領書とともに提出された証拠 乙1:「液晶便覧」、平成12年10月30日、液晶便覧編集委員会、312頁 乙2:特開平9-328443号公報 ここで、乙2は、前記第1 3の別件無効審判事件において、甲第7号証として提示されている証拠方法でもある。 (2)令和5年10月11日提出の意見書とともに提出した証拠 乙3:実験報告書、2023年9月22日作成、被請求人作業員;栗沢和樹 乙4:国際公開2012/020642号 2 被請求人の主張 被請求人は、本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、上記請求人の主張する無効理由は、いずれも理由がないと主張し、主張を裏付ける証拠として、乙第1~4号証を提出した。 第6 証拠方法の記載事項 本件出願前に頒布された引用例である各甲号証には以下の記載がある。 1 甲1の1(甲1の2)の記載事項 甲1の1には訳文として甲1の2が提示されており、甲1の2には次の記載がある。 1a「【請求項1】 極性化合物の混合物を基礎とし負の誘電異方性を有する液晶媒体であって、式Iの少なくとも1種類の化合物を含むことを特徴とする液晶媒体。 【化1】 [図:0001419606000020.jpg] (式中、 R1およびR1*は、それぞれ互いに独立に、1~6個のC原子を有するアルキル基を表し、および aは、0または1を表す。) 【請求項2】 式IIA、IIBおよびIICの化合物群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶媒体。 【化2】 [図:0001419606000021.jpg] (式中、 R2A、R2BおよびR2Cは、それぞれ互いに独立に、H、15個までのC原子を有するアルキル基を表し、該基は無置換であるか、CNまたはCF3で一置換されているか、または、ハロゲンで少なくとも一置換されており、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH2基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、-O-、-S-、 【化3】 [図:0001419606000022.jpg] -C≡C-、-CF2O-、-OCF2-、-OC-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、 L1~4は、それぞれ互いに独立に、FまたはClを表し、 Z2およびZ2’は、それぞれ互いに独立に、単結合、-CH2CH2-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-COO-、-OCO-、-C2F4-、-CF=CF-、-CH=CHCH2O-を表し、 pは、1または2を表し、 qは、0または1を表し、および vは、1~6を表す。) 【請求項3】 式IIIの1種類以上の化合物を追加的に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 【化4】 [図:0001419606000023.jpg] (式中、 R31およびR32は、それぞれ互いに独立に、12個までのC原子を有する直鎖状のアルキル、アルコキシアルキルまたはアルコキシ基を表し、および 【化5】 [図:0001419606000024.jpg] Z3は、単結合、-CH2CH2-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-COO-、-OCO-、-C2F4-、-C4H8-、-CF=CF-を表す。) ・・・ 【請求項11】 電気光学的ディスプレイにおける請求項1~9のいずれか一項に記載の液晶媒体の使用。 【請求項12】 誘電体として請求項1~9のいずれか一項に記載の液晶媒体を含有することを特徴とし、アクティブマトリクスアドレスを有する電気光学的ディスプレイ。 【請求項13】 VA、PS-VA、PALC、FFSまたはIPSディスプレイであること特徴とする請求項12に記載の電気光学的ディスプレイ。」 1b「【0026】 本発明は、特に、モニターおよびテレビ用途向けで、ECB効果またはIPSまたはFFS効果に基づき、上述の不具合を有していないか、低減された程度にのみ有する液晶混合物を提供する目的に基づいている。特に、モニターおよびテレビ用には、また、液晶混合物が極めて高温および極めて低温においても動作し、同時に短い応答時間を有し、同時に改善された信頼性のある挙動を有し、特に、長時間の動作後に画像の固着を有さないか著しく低減されていることが保証されなければならない。 ・・・ 【0031】 好ましくは、本発明による混合物は、60℃以上、好ましくは65℃以上、特には70℃以上の透明点を有する非常に広いネマチック相範囲、容量閾値に対する非常に好ましい値、保持率に対する比較的高い値と同時に、-30℃および-40℃における非常に良好な低温安定性、ならびに、非常に低い回転粘度および短い応答時間を示す。更に、本発明による混合物は、回転粘度γ1の改良に加え、応答時間を改良するための弾性定数K33の増加が観測され、混合物は改善された信頼性ある挙動を示すと言う事実によって際立っている。 ・・・ 【0031】 好ましくは、本発明による混合物は、60℃以上、好ましくは65℃以上、特には70℃以上の透明点を有する非常に広いネマチック相範囲、容量閾値に対する非常に好ましい値、保持率に対する比較的高い値と同時に、-30℃および-40℃における非常に良好な低温安定性、ならびに、非常に低い回転粘度および短い応答時間を示す。更に、本発明による混合物は、回転粘度γ1の改良に加え、応答時間を改良するための弾性定数K33の増加が観測され、混合物は改善された信頼性ある挙動を示すと言う事実によって際立っている。 【0032】 本発明による混合物の幾つかの好ましい実施形態を下に示す。 ・・・ 【0035】 c)混合物全体における式Iの化合物の割合が3重量%以上、好ましくは、10重量%以上、特に好ましくは、15重量%以上である液晶媒体。3~50%、好ましくは、25~35%の1種類以上の式Iの化合物を含む液晶媒体が特に好ましい。aが0である式Iの化合物は、好ましくは、15~35%の量で混合物中に存在する。aが1である式Iの化合物は、好ましくは、3~30%の量で混合物中に存在する。 ・・・ 【0045】 e)式IIA、IIBおよびIICの化合物群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含む液晶媒体: 【0046】 【化8】 [図:0001419606000025.jpg] ・・・ 【0052】 式IIA、IIBおよびIICの好ましい化合物を下に示す: 【0053】 【化10】 [図:0001419606000026.jpg] 【0054】 【化11】 [図:0001419606000027.jpg] 【0055】 【化12】 [図:0001419606000028.jpg] 【0056】 【化13】 [図:0001419606000029.jpg] 【0057】 【化14】 [図:0001419606000030.jpg] 【0058】 【化15】 [図:0001419606000031.jpg] ・・・ 【0060】 ・・・ 式中、alkylおよびalkyl*は、それぞれ互いに独立に、1~6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表す。 【0061】 本発明による特に好ましい混合物は、式IIA-2、IIA-8、IIA-14、IIA-29、IIA-35、IIB-2、IIB-11、IIB-16およびIIC-1の1種類以上の化合物を含む。混合物全体における式IIAおよび/またはIIBの化合物の割合は、好ましくは、少なくとも20重量%である。 ・・・ 【0086】 k)式B-1~B-3の1種類以上のビフェニル類を追加的に含む液晶媒体: 【0087】 【化29】 [図:0001419606000032.jpg] 式中、 alkylおよびalkyl*は、それぞれ互いに独立に、1~6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、および alkenylおよびalkenyl*は、それぞれ互いに独立に、2~6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。 【0088】 混合物全体における式B-1~B-3のビフェニル類の割合は、好ましくは、少なくとも3重量%、特に5重量%以上である。 【0089】 式B-1~B-3の化合物のなかでも、式B-2の化合物が特に好ましい。 【0090】 特に好ましいビフェニル類は以下である: 【0091】 【化30】 [図:0001419606000033.jpg] 式中、alkyl*は、1~6個のC原子を有するアルキル基を表す。本発明による媒体は、特に好ましくは、式B-1aおよび/またはB-2cの1種類以上の化合物を含む。」 1c「【0159】 以下の略称を使用する: (n、m、z:それぞれ互いに独立に、1、2、3、4、5または6;(O)CmH2m+1はOCmH2m+1またはCmH2m+1を意味する)。 【0160】 【表1】 [図:0001419606000034.jpg] ・・・ 【0163】 【表4】 [図:0001419606000035.jpg] ・・・ 【0166】 【表7】 [図:0001419606000036.jpg] 」 1d「【0190】 以下の例は、本発明を制限することなく、本発明を説明することを意図している。上および下において、 V0は20℃における容量閾電圧(V)を表し、 Δnは20℃および589nmで測定される光学異方性を表し、 Δεは20℃および1kHzでの誘電異方性を表し、 cl.p.は透明点(℃)を表し、 K1は20℃における「スプレイ」変形の弾性定数(pN)を表し、 K3は20℃における「ベンド」変形の弾性定数(pN)を表し、 γ1は20℃で測定される回転粘度(mPa・s)を表し、磁界中での回転法で決定され、 LTSは低温安定性(ネマチック相)を表し、試験用セル中で決定される。 【0191】 閾電圧の測定用に使用されるディスプレイは、20μm離れている2枚の平坦で平行な外板と、液晶のホメオトロピック配向をもたらすSE-1211(日産化学社製)の配向層が外板の内側上にオーバーレイされた電極層とを有している。 【0192】 他に明言しない限り、本出願における全ての濃度は対応する混合物または混合物成分に関する。全ての物理的特性は、「メルク液晶、液晶の物理的特性」1997年11月刊、ドイツ国メルク社に記載される通りに決定され、他に明らかに示さない限り、20℃の温度を適用する。 【実施例】 【0193】 <混合物例> <例1> 【0194】 【表24】 [図:0001419606000037.jpg] 」 2 甲2の記載事項 甲2には次の記載がある。 2a「[請求項1] 第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第三成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する液晶組成物。 [図:0001419606000038.jpg] ここで、R1、R2、R3、およびR4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;R5およびR6は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニル、アクリレート、メタクリレート、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、オキシラン、オキセタン、またはビニルケトンであり、少なくとも1つのR5およびR6は、アクリレート、メタクリレート、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、オキシラン、オキセタン、またはビニルケトンであり;環Aは独立して、1,4-シクロへキシレンまたは1,4-フェニレンであり;環Bおよび環Cは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、3-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;環Dおよび環Eは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2-メチル-1,4-フェニレン、3-メチル-1,4-フェニレン、または2,6-ナフタレンであり;Z1は独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;Z2およびZ3は独立して、単結合、炭素数1から12のアルキレン、または任意の-CH2-が-O-で置き換えられた炭素数1から12のアルキレンであり;kおよびjは独立して、1、2、または3であり;mは、0、1、または2である。 [請求項2] 第一成分が式(1-1)から式(1-7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1に記載の液晶組成物。 [図:0001419606000039.jpg] ここで、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。 ・・・ [請求項9] 第二成分が式(2-1)から式(2-12)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1から8のいずれか1項に記載の液晶組成物。 [図:0001419606000040.jpg] ここで、R3およびR4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。 ・・・ [請求項21] 第三成分を除く液晶組成物の重量に基づいて、第一成分の割合が10重量%から60重量%の範囲であり、第二成分の割合が5重量%から50重量%の範囲であり、そして第三成分を除く液晶組成物100重量部に対して、第三成分の割合が0.05重量部から10重量部の範囲である請求項1から20のいずれか1項に記載の液晶組成物。 ・・・ [請求項34] 請求項1から33のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。 [請求項35] 液晶表示素子の動作モードが、VAモード、IPSモード、またはPSAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である請求項34に記載の液晶表示素子。」 2b「[0016] 2. 第一成分が式(1-1)から式(1-7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項1に記載の液晶組成物。 [図:0001419606000041.jpg] ここで、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。 ・・・ [0054] 第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類であり、0(ゼロ)は、値がほぼゼロであることを意味する。 [0055] [図:0001419606000042.jpg] [0056] 成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。化合物(1)は誘電率異方性の絶対値を上げ、そして下限温度を下げる。化合物(2)は粘度を下げる、または上限温度を上げる。化合物(4-1)、化合物(4-2)、および化合物(4-3)は誘電率異方性の絶対値を上げる。」 ・・・ [0062] 第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。R1、R2、R3およびR4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR1またはR2は、紫外線または熱に対する安定性などを上げるために炭素数1から12のアルキルであり、誘電率異方性の絶対値を上げるために炭素数1から12のアルコキシである。好ましいR3またはR4は、紫外線または熱に対する安定性などを上げるために炭素数1から12のアルキルであり、下限温度を下げるために炭素数2から12のアルケニルである。R5およびR6は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニル、アクリレート、メタクリレート、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、オキシラン、オキセタン、またはビニルケトンであり、少なくとも1つのR5およびR6はアクリレート、メタクリレート、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、オキシラン、オキセタン、またはビニルケトンである。好ましいR5またはR6は、アクリレートまたはメタクリレートである。 2c「[実施例] [0093] 組成物および組成物に含有させる化合物の特性を評価するために、組成物およびこの化合物を測定目的物とする。測定目的物が組成物のときはそのままを試料として測定し、得られた値を記載した。試料が化合物のときは、この化合物(15重量%)を母液晶(85重量%)に混合することによって測定用試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。 (外挿値)={(測定用試料の測定値)-0.85×(母液晶の測定値)}/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更した。この外挿法によって化合物に関する上限温度、光学異方性、粘度および誘電率異方性の値を求めた。 [0094] 母液晶の成分とその割合は下記のとおりである。 [図:0001419606000043.jpg] [0095] 特性の測定は下記の方法にしたがった。それらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED-2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。 [0096] ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。 [0097] ネマチック相の下限温度(TC;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、-10℃、-20℃、-30℃、および-40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が-20℃ではネマチック相のままであり、-30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、TCを≦-20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。 [0098] 粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定にはE型回転粘度計を用いた。 [0099] 光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n∥は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n∥-n⊥、の式から計算した。 [0100] 誘電率異方性(Δε;25℃で測定):誘電率異方性の値は、Δε=ε∥-ε⊥、の式から計算した。誘電率(ε∥およびε⊥)は次のように測定した。 1)誘電率(ε∥)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε∥)を測定した。 2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。 [0101] しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に印加する電圧(60Hz、矩形波)は0Vから20Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧-透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が10%になったときの電圧である。 [0102] 電圧保持率(VHR-1;25℃;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。 [0103] 電圧保持率(VHR-2;80℃;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。 [0104] 電圧保持率(VHR-3;25℃;%):紫外線を照射したあと、電圧保持率を測定し、紫外線に対する安定性を評価した。大きなVHR-3を有する組成物は紫外線に対して大きな安定性を有する。測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そしてセルギャップは5μmである。この素子に試料を注入し、光を20分間照射した。光源は超高圧水銀ランプUSH-500D(ウシオ電機製)であり、素子と光源の間隔は20cmである。VHR-3の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。VHR-3は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。 [0105] 電圧保持率(VHR-4;25℃;%):試料を注入したTN素子を80℃の恒温槽内で500時間加熱したあと、電圧保持率を測定し、熱に対する安定性を評価した。大きなVHR-4を有する組成物は熱に対して大きな安定性を有する。VHR-4の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。 [0106] 応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が3.2μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のPVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子にしきい値電圧を若干超える程度の電圧を約1分間印加し、次に5.6Vの電圧を印加しながら23.5mW/cm2の紫外線を約8分間照射した。この素子に矩形波(60Hz、10V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である。応答時間は透過率0%から90%に変化するのに要した時間立ち上がり時間(rise time;ミリ秒)である。 [0107] 比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。 [0108] ガスクロマト分析:測定には島津製作所製のGC-14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2mL/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1重量%)に調製したあと、その1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC-R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。 [0109] 試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリカラムCBP1-M50-025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。 [0110] 組成物に含有される液晶性化合物の割合は、次のような方法で算出してよい。液晶性化合物はガスクロマトグラフで検出することができる。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は液晶性化合物の割合(モル数)に相当する。上に記載したキャピラリカラムを用いたときは、各々の液晶性化合物の補正係数を1とみなしてよい。したがって、液晶性化合物の割合(重量%)は、ピークの面積比から算出する。 [0111] 実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は下記の実施例によって限定されない。比較例および実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。 表3において、1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(-)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)であり、液晶組成物にはこの他に不純物が含まれている。最後に、組成物の特性値をまとめた。 [0112] [図:0001419606000044.jpg] ・・・ [0132] [実施例19] 3-HH1OB(2F,3F)-O2 (1-6-1) 6% 3-HBB(2F,3F)-O2 (1-7-1) 6% 5-HBB(2F,3F)-O2 (1-7-1) 6% V-HH-3 (2-1-1) 32% 1V-HH-3 (2-1-1) 7% 3-HB-O2 (2-2-1) 3% 1V-HBB-2 (2-6-1) 4% 2-BB(F)B-3 (2-7-1) 5% 3-Dh2B(2F,3F)-O2 (4-2-2-1) 9% 3-Dh1OB(2F,3F)-O2 (4-2-3-1) 6% 3-DhH1OB(2F,3F)-O2(4-2-6-1) 6% 3-H2Cro(7F,8F)-5 (4-3-1-2) 3% 3-H1OCro(7F,8F)-5 (4-3-1-3) 4% 3-HHCro(7F,8F)-5 (4-3-3-1) 3% 上記組成物100重量部に本発明の第三成分である下記化合物を0.3重量部添加した MAC-BB(F)B-MAC (3-19-1) NI=72.0℃;Tc≦-20℃;Δn=0.093;Δε=-2.9;τ=3.6ms;VHR-1=99.0%;VHR-2=98.1%.」 3 甲3の記載事項 甲3には次の記載がある。 3a「【請求項1】 第一成分として式(1)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物を含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物。 [図:0001419606000045.jpg] ここで、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシまたは炭素数2から12のアルケニルであり;R3は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;Z1は、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはメチレンオキシであり;X1およびX2は独立して、フッ素または塩素であり;sは0または1である。 ・・・ 【請求項12】 第五成分として式(5)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項1から11のいずれか1項に記載の液晶組成物。 [図:0001419606000046.jpg] ここで、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシまたは炭素数2から12のアルケニルであり;環Eは、1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-フェニレンであり;Z1は、単結合、エチレン、カルボニルオキシまたはメチレンオキシであり;X1およびX2は独立して、フッ素または塩素であり;nは1または2である。 【請求項13】 第五成分が、式(5-1)から式(5-4)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である請求項12に記載の液晶組成物。 [図:0001419606000047.jpg] ここで、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシまたは炭素数2から12のアルケニルである。 ・・・ 【請求項18】 請求項1から17のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。 【請求項19】 液晶表示素子の動作モードが、VAモードまたはIPSモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である請求項18に記載の液晶表示素子。」 3b「【0011】 本発明の長所は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。本発明の1つの側面は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の側面は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。他の側面は、大きな光学異方性、負に大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。 ・・・ 【0038】 第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類である。 【0039】 [図:0001419606000048.jpg] 【0040】 成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。化合物(1)は誘電率異方性の絶対値を上げる。化合物(2)は光学異方性を上げ、そして粘度を下げる。化合物(3)は上限温度を上げる。化合物(4)は光学異方性を下げ、そして粘度を下げる。化合物(5)は下限温度を下げ、そして誘電率異方性の絶対値を上げる。 ・・・ 【0060】 好ましい化合物(1)は化合物(1-1-1)から化合物(1-4)である。さらに好ましい化合物(1)は化合物(1-1-1)、化合物(1-1-3)、化合物(1-2-1)、化合物(1-2-3)である。特に好ましい化合物(1)は化合物(1-1-1)および化合物(1-2-1)である。好ましい化合物(2)は化合物(2-1)である。好ましい化合物(3)は化合物(3-1-1)から化合物(3-8)である。さらに好ましい化合物(3)は化合物(3-1-1)、化合物(3-2-1)、化合物(3-3-1)および化合物(3-4-1)である。特に好ましい化合物(3)は化合物(3-1-1)および化合物(3-2-1)である。好ましい化合物(4)は化合物(4-1)および化合物(4-2)である。さらに好ましい化合物(4)は化合物(4-1)である。好ましい化合物(5)は化合物(5-1-1)から化合物(5-10)である。さらに好ましい化合物(5)は化合物(5-1-1)、化合物(5-2-1)、化合物(5-3-1)および化合物(5-4-1)である。 【0061】 ・・・ 【0065】 [図:0001419606000049.jpg] 」 3d「【実施例】 【0077】 試料が組成物のときはそのまま測定し、得られた値を記載した。試料が化合物のときは、この化合物(15重量%)を母液晶(85重量%)に混合することによって試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法よって化合物の特性値を算出した。(外挿値)={(試料の測定値)-0.85×(母液晶の測定値)}/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更した。この外挿法によって化合物に関する上限温度、光学異方性、粘度および誘電率異方性の値を求めた。 【0078】 母液晶の組成は下記のとおりである。組成の%は、それぞれ重量%である。 [図:0001419606000050.jpg] 【0079】 特性値の測定は下記の方法にしたがった。それらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED-2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。 【0080】 ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。 【0081】 ネマチック相の下限温度(TC;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、-10℃、-20℃、-30℃、および-40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が-20℃ではネマチック相のままであり、-30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、TCを≦-20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。 【0082】 粘度(η;20℃で測定;mPa・s):測定にはE型回転粘度計を用いた。 【0083】 光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n∥は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n∥-n⊥、の式から計算した。 【0084】 誘電率異方性(Δε;25℃で測定):誘電率異方性の値は、Δε=ε∥-ε⊥、の式から計算した。誘電率(ε∥およびε⊥)は次のように測定した。 1)誘電率(ε∥)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。 この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε∥)を測定した。 2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミドを塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。 【0085】 しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子をUV硬化の接着剤を用いて密閉した。この素子に印加する電圧(60Hz、矩形波)は0Vから20Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧-透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が10%になったときの電圧である。 【0086】 電圧保持率(VHR-1;25℃;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。 【0087】 電圧保持率(VHR-2;80℃;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。 【0088】 電圧保持率(VHR-3;25℃;%):紫外線を照射したあと、電圧保持率を測定し、紫外線に対する安定性を評価した。大きなVHR-3を有する組成物は紫外線に対して大きな安定性を有する。測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そしてセルギャップは5μmである。この素子に試料を注入し、光を20分間照射した。光源は超高圧水銀ランプUSH-500D(ウシオ電機製)であり、素子と光源の間隔は20cmである。VHR-3の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。VHR-3は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。 【0089】 電圧保持率(VHR-4;25℃;%):試料を注入したTN素子を80℃の恒温槽内で500時間加熱したあと、電圧保持率を測定し、熱に対する安定性を評価した。大きなVHR-4を有する組成物は熱に対して大きな安定性を有する。VHR-4の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。 【0090】 応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子をUV硬化の接着剤を用いて密閉した。この素子に矩形波(60Hz、10V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である。応答時間は透過率90%から10%に変化するのに要した時間(立ち下がり時間;fall time;ミリ秒)である。 【0091】 比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。 【0092】 ガスクロマト分析:測定には島津製作所製のGC-14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2mL/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1重量%)に調製したあと、その1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC-R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。 【0093】 試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリカラムCBP1-M50-025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。 【0094】 組成物に含有される液晶性化合物の割合は、次のような方法で算出してよい。液晶性化合物はガスクロマトグラフで検出することができる。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は液晶性化合物の割合(モル数)に相当する。上に記載したキャピラリカラムを用いたときは、各々の液晶性化合物の補正係数を1とみなしてよい。したがって、液晶性化合物の割合(重量%)は、ピークの面積比から算出する。 【0095】 実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は下記の実施例によって限定されない。比較例および実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。 表3において、1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は好ましい化合物の番号に対応する。(-)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)であり、液晶組成物にはこの他に不純物が含有している。最後に、組成物の特性値をまとめた。 【0096】 [図:0001419606000051.jpg] ・・・ 【0105】 [実施例8] 3-ChB(2F,3F)-O2 (1-1-1) 9% 5-ChB(2F,3F)-O2 (1-1-1) 11% 2-HChB(2F,3F)-O2 (1-2-1) 6% 3-HChB(2F,3F)-O2 (1-2-1) 8% V-HChB(2F,3F)-O2 (1-2-1) 4% 5-BB-1 (2-1) 5% V2-BB-1 (2-1) 5% V-HHB-1 (3-1-1) 9% 5-HBB(F)B-3 (3-4-1) 4% 3-HH-V (4-1) 19% 3-H1OB(2F,3F)-O2 (5-5) 5% 3-HB(2F,3CL)-O2 (5-8) 5% 3-HHB(2F,3CL)-O2 (5-9) 5% 3-HBB(2F,3CL)-O2 (5-10) 5% NI=75.0℃;Tc≦-20℃;Δn=0.106;Δε=-3.1;η=20.9mPa・s.」 4 甲4の記載事項 甲4には次の記載がある。 4a「[請求項1] 第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物。 [図:0001419606000052.jpg] ここで、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aは独立して、1-ピラン-2,5-ジイル、1,4-シクロへキシレン、または1,4-フェニレンであり、少なくとも1つの環Aは1-ピラン-2,5-ジイルであり;環Bは独立して、1,4-シクロへキシレンまたは1,4-フェニレンであり;Z1は独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;mは、1、2、または3である。 ・・・ [請求項6] 第二成分が式(2-1)および式(2-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1から5のいずれか1項に記載の液晶組成物。 [図:0001419606000053.jpg] ここで、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。 ・・・ [請求項10] 液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が5重量%から50重量%の範囲であり、そして第二成分の割合が5重量%から50重量%の範囲である請求項1から9のいずれか1項に記載の液晶組成物。 ・・・ [請求項12] 第三成分が式(3-1)から式(3-10)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項11に記載の液晶組成物。 [図:0001419606000054.jpg] ここで、R3およびR4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。 ・・・ [請求項17] 液晶組成物の全重量に基づいて、第三成分の割合が30重量%から70重量%の範囲である請求項11から16のいずれか1項に記載の液晶組成物。 [請求項18] 第四成分として式(4-1)および式(4-2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項1から17のいずれか1項に記載の液晶組成物。 [図:0001419606000055.jpg] ここで、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Eおよび環Fは独立して、1,4-シクロへキシレンまたは1,4-フェニレンであり;Z1およびZ3は独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;Z2は独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり;X1およびX2は独立して、フッ素または塩素であり;kは、1、2、または3であり;pおよびqは独立して、0、1、2、または3であり、そしてpとqとの和が3以下である。 [請求項19] 第四成分が、式(4-1-1)から式(4-1-7)、および式(4-2-1)から式(4-2-4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項18に記載の液晶組成物。 [図:0001419606000056.jpg] ・・・ [請求項22] 液晶組成物の全重量に基づいて、第四成分の割合が5重量%から50重量%の範囲である請求項18から21のいずれか1項に記載の液晶組成物。 ・・・ [請求項24] 請求項1から23のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。 [請求項25] 液晶表示素子の動作モードが、VAモード、IPSモード、またはPSAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である請求項24に記載の液晶表示素子。」 4b「[0009] 本発明の1つの目的は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。他の目的は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の目的は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。別の目的は、小さな光学異方性、または大きな光学異方性である適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。 課題を解決するための手段 [0010] 第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物、およびこの組成物を含有する液晶表示素子である。 ・・・ [0011] 本発明の長所は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。本発明の1つの側面は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の側面は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。他の側面は、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。 ・・・ [0045] [図:0001419606000057.jpg] [0046] 成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。化合物(1)は誘電率異方性の絶対値を上げ、そして下限温度を下げる。化合物(2)は誘電率異方性の絶対値を上げ、そして光学異方性を上げる。化合物(3)は粘度を下げる、または上限温度を上げる。化合物(4-1)は下限温度を下げる。化合物(4-2)は誘電率異方性の絶対値を上げる。 ・・・ [0062] 第五に、成分化合物の具体的な例を示す。下記の好ましい化合物において、R5は、炭素数1から12を有する直鎖のアルキルまたは炭素数1から12を有する直鎖のアルコキシである。R6およびR7は独立して、炭素数1から12を有する直鎖のアルキルまたは炭素数2から12を有する直鎖のアルケニルである。これらの化合物において1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。 ・・・ [0065] [図:0001419606000058.jpg] 」 4c「[実施例] [0079] 試料が組成物のときはそのまま測定し、得られた値を記載した。試料が化合物のときは、この化合物(15重量%)を母液晶(85重量%)に混合することによって試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。(外挿値)={(試料の測定値)-0.85×(母液晶の測定値)}/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更した。この外挿法によって化合物に関する上限温度、光学異方性、粘度および誘電率異方性の値を求めた。 [0080] 母液晶の成分は下記のとおりである。各成分の割合は、重量%である。 [図:0001419606000059.jpg] [0081] 特性の測定は下記の方法にしたがった。それらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED-2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。 [0082] ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。 [0083] ネマチック相の下限温度(TC;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、-10℃、-20℃、-30℃、および-40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が-20℃ではネマチック相のままであり、-30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、TCを≦-20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。 [0084] 粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定にはE型回転粘度計を用いた。 [0085] 光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n∥は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n∥-n⊥、の式から計算した。 [0086] 誘電率異方性(Δε;25℃で測定):誘電率異方性の値は、Δε=ε∥-ε⊥、の式から計算した。誘電率(ε∥およびε⊥)は次のように測定した。 1)誘電率(ε∥)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε∥)を測定した。 2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。 [0087] しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子をUV硬化の接着剤を用いて密閉した。この素子に印加する電圧(60Hz、矩形波)は0Vから20Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧-透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が10%になったときの電圧である。 [0088] 電圧保持率(VHR-1;25℃;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。 [0089] 電圧保持率(VHR-2;80℃;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。 [0090] 電圧保持率(VHR-3;25℃;%):紫外線を照射したあと、電圧保持率を測定し、紫外線に対する安定性を評価した。大きなVHR-3を有する組成物は紫外線に対して大きな安定性を有する。測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そしてセルギャップは5μmである。この素子に試料を注入し、光を20分間照射した。光源は超高圧水銀ランプUSH-500D(ウシオ電機製)であり、素子と光源の間隔は20cmである。VHR-3の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。VHR-3は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。 [0091] 電圧保持率(VHR-4;25℃;%):試料を注入したTN素子を80℃の恒温槽内で500時間加熱したあと、電圧保持率を測定し、熱に対する安定性を評価した。大きなVHR-4を有する組成物は熱に対して大きな安定性を有する。VHR-4の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。 [0092] 応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子をUV硬化の接着剤を用いて密閉した。この素子に矩形波(60Hz、10V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である。応答時間は透過率90%から10%に変化するのに要した時間(立ち下がり時間;fall time;ミリ秒)である。 [0093] 比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。 [0094] ガスクロマト分析:測定には島津製作所製のGC-14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2mL/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1重量%)に調製したあと、その1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC-R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。 [0095] 試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリカラムCBP1-M50-025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。 [0096] 組成物に含有される液晶性化合物の割合は、次のような方法で算出してよい。液晶性化合物はガスクロマトグラフで検出することができる。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は液晶性化合物の割合(モル数)に相当する。上に記載したキャピラリカラムを用いたときは、各々の液晶性化合物の補正係数を1とみなしてよい。したがって、液晶性化合物の割合(重量%)は、ピークの面積比から算出する。 [0097] 実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は下記の実施例によって限定されない。比較例および実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。 表3において、1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は好ましい化合物の番号に対応する。(-)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)であり、液晶組成物にはこの他に不純物を有している。最後に、組成物の特性値をまとめた。 [0098] [図:0001419606000060.jpg] ・・・ [0105] 3-HDhB(2F,3F)-O2 (1-5-1) 10% 5-HDhB(2F,3F)-O2 (1-5-1) 4% 3-H1OB(2F,3F)-O2 (2-1-1) 4% 5-H1OB(2F,3F)-O2 (2-1-1) 4% V-HH-3 (3-1-1) 32% 1V-HH-3 (3-1-1) 8% V2-BB-1 (3-3-1) 6% V2-HHB-1 (3-4-1) 5% 2-HBB(2F,3F)-O2 (4-1-5-1) 5% 3-HBB(2F,3F)-O2 (4-1-5-1) 11% 2-Cro(7F,8F)2H-3 (4-2-2-1) 3% 2O-Cro(7F,8F)2H-3 (4-2-2-1) 3% 3-HH1OCro(7F,8F)-5 (4-2-3-3) 5% NI= 77.2℃;Tc≦-20℃;Δn=0.088;η=11.3mPa・s;Δε=-2.7;VHR-1=99.2%;VHR-2=98.2%;VHR-3=98.0%.」 5 甲5の記載事項 甲5には次の記載がある。 5a「【請求項1】 第一成分として式(1-1)および式(1-2)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2-1)から式(2-3)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物。 [図:0001419606000061.jpg] [図:0001419606000062.jpg] ここで、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシまたは炭素数2から12のアルケニルであり;R3およびR4は独立して、炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の-CH2-は-O-で置き換えられてもよく;X1およびX2は独立して、フッ素または塩素であり;環A、環B、環Cおよび環Dは独立して、1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-フェニレンであり;環Eおよび環Gは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または3-フルオロ-1,4-フェニレンであり;環Fは1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、3-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;Z1は単結合またはカルボニルオキシである。 ・・・ 【請求項7】 第三成分として式(3)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する請求項1から6のいずれか1項に記載の液晶組成物。 [図:0001419606000063.jpg] ここで、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシまたは炭素数2から12のアルケニルであり;環Iは独立して、1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-フェニレンであり;Z2は、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはメチレンオキシであり;X3およびX4は独立して、フッ素または塩素であり;nは1または2である。 【請求項8】 第三成分が、式(3-1)から式(3-12)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である請求項7に記載の液晶組成物。 [図:0001419606000064.jpg] ここで、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシまたは炭素数2から12のアルケニルである。 ・・・ 【請求項12】 液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の含有割合が5重量%から50重量%の範囲であり、第二成分の含有割合が35重量%から70重量%の範囲であり、第三成分の割合が5重量%から40重量%の範囲である請求項7から11のいずれか1項に記載の液晶組成物。 ・・・ 【請求項14】 請求項1から13のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。 【請求項15】 液晶表示素子の動作モードが、VAモードまたはIPSモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である請求項14に記載の液晶表示素子。 【請求項16】 液晶表示素子の動作モードがPSAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である請求項14に記載の液晶表示素子。」 5b「【0009】 本発明の1つの目的は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。他の目的は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の目的は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。別の目的は、大きな光学異方性、負に大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明は、第一成分として式(1-1)および式(1-2)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2-1)から式(2-3)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物、およびこの組成物を含有する液晶表示素子である。 ・・・ 【0011】 本発明の長所は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。本発明の1つの側面は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の側面は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。他の側面は、大きな光学異方性、負に大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。 ・・・ 【0036】 第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類である。 【0037】 [図:0001419606000065.jpg] 【0038】 成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。化合物(1-1)は誘電率異方性の絶対値を上げる。化合物(1-2)は誘電率異方性の絶対値を上げ、上限温度を上げる。化合物(2-1)は粘性を下げる。化合物(2-2)は下限温度を下げ、そして粘性を下げる。化合物(2-3)は上限温度を上げ、光学異方性を上げ、そして粘性を下げる。化合物(3)は下限温度を下げ、そして誘電率異方性の絶対値を上げる。 ・・・ 【0052】 好ましい化合物(1-1)は、化合物(1-1-1)から化合物(1-1-8)である。さらに好ましい化合物(1-1)は、化合物(1-1-1)、化合物(1-1-5)である。特に好ましい化合物(1-1)は、化合物(1-1-5)である。好ましい化合物(1-2)は、化合物(1-2-1)から化合物(1-2-16)である。さらに好ましい化合物(1-2)は、化合物(1-2-1)、化合物(1-2-5)、化合物(1-2-9)、および化合物(1-2-13)である。特に好ましい化合物(1-2)は、化合物(1-2-1)および化合物(1-2-13)である。好ましい化合物(2-1)は、化合物(2-1-1)から化合物(2-1-3)である。さらに好ましい化合物(2-1)は、化合物(2-1-1)である。好ましい化合物(2-2)は、化合物(2-2-1)から化合物(2-2-4)である。さらに好ましい化合物(2-2)は化合物(2-2-1)である。好ましい化合物(2-3)は、化合物(2-3-1)から化合物(2-3-4)である。さらに好ましい化合物(2-3)は化合物(2-3-3)である。好ましい化合物(3)は、化合物(3-1-1)から化合物(3-12-1)である。さらに好ましい化合物(3)は、化合物(3-1-1)から化合物(3-5-1)、化合物(3-7-1)から化合物(3-9-1)、化合物(3-11-1)、および化合物(3-12-1)である。特に好ましい化合物(3)は、化合物(3-1-1)、化合物(3-4-1)、化合物(3-7-1)、化合物(3-9-1)、および化合物(3-12-1)である。 ・・・ 【0059】 [図:0001419606000066.jpg] 」 5c「【実施例】 【0073】 試料が組成物のときはそのまま測定し、得られた値を記載した。試料が化合物のときは、この化合物(15重量%)を母液晶(85重量%)に混合することによって試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。(外挿値)={(試料の測定値)-0.85×(母液晶の測定値)}/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更した。この外挿法によって化合物に関する上限温度、光学異方性、粘度および誘電率異方性の値を求めた。 【0074】 母液晶の組成は下記のとおりである。組成の%は、それぞれ重量%である。 [図:0001419606000067.jpg] 【0075】 特性値の測定は下記の方法にしたがった。それらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED-2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。 【0076】 ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。 【0077】 ネマチック相の下限温度(TC;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、-10℃、-20℃、-30℃、および-40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が-20℃ではネマチック相のままであり、-30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、TCを≦-20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。 【0078】 粘度(η;20℃で測定;mPa・s):測定にはE型回転粘度計を用いた。 【0079】 光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n∥は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n∥-n⊥、の式から計算した。 【0080】 誘電率異方性(Δε;25℃で測定):誘電率異方性の値は、Δε=ε∥-ε⊥、の式から計算した。誘電率(ε∥およびε⊥)は次のように測定した。 1)誘電率(ε∥)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε∥)を測定した。 2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。 【0081】 しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子をUV硬化の接着剤を用いて密閉した。この素子に印加する電圧(60Hz、矩形波)は0Vから20Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧-透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が10%になったときの電圧である。 【0082】 電圧保持率(VHR-1;25℃;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。 【0083】 電圧保持率(VHR-2;80℃;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。 【0084】 電圧保持率(VHR-3;25℃;%):紫外線を照射したあと、電圧保持率を測定し、紫外線に対する安定性を評価した。大きなVHR-3を有する組成物は紫外線に対して大きな安定性を有する。測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そしてセルギャップは5μmである。この素子に試料を注入し、光を20分間照射した。光源は超高圧水銀ランプUSH-500D(ウシオ電機製)であり、素子と光源の間隔は20cmである。VHR-3の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。VHR-3は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。 【0085】 電圧保持率(VHR-4;25℃;%):試料を注入したTN素子を80℃の恒温槽内で500時間加熱したあと、電圧保持率を測定し、熱に対する安定性を評価した。大きなVHR-4を有する組成物は熱に対して大きな安定性を有する。VHR-4の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。 【0086】 応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子をUV硬化の接着剤を用いて密閉した。この素子に矩形波(60Hz、10V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である。応答時間は透過率90%から10%に変化するのに要した時間(立ち下がり時間;fall time;ミリ秒)である。 【0087】 比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。 【0088】 ガスクロマト分析:測定には島津製作所製のGC-14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2mL/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1重量%)に調製したあと、その1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC-R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。 【0089】 試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリカラムCBP1-M50-025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。 【0090】 組成物に含有される液晶性化合物の割合は、次のような方法で算出してよい。液晶性化合物はガスクロマトグラフで検出することができる。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は液晶性化合物の割合(モル数)に相当する。上に記載したキャピラリカラムを用いたときは、各々の液晶性化合物の補正係数を1とみなしてよい。したがって、液晶性化合物の割合(重量%)は、ピークの面積比から算出する。 【0091】 実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は下記の実施例によって限定されない。比較例および実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。 表3において、1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は好ましい化合物の番号に対応する。(-)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)であり、液晶組成物にはこの他に不純物が含有している。最後に、組成物の特性値をまとめた。 【0092】 [図:0001419606000068.jpg] ・・・ 【0099】 [実施例6] 3-HO2OB(2F,3F)-O2 (1-1-1) 11% 3-BO2OB(2F,3Cl)-O2 (1-1-6) 2% 3-BO2OB(2Cl,3F)-O2 (1-1-7) 2% 3-HH-5 (2-1-1) 4% 3-HH-V1 (2-1-1) 10% V2-BB-1 (2-1-3) 15% 1V2-BB-1 (2-1-3) 10% 3-HHEH-3 (2-2-4) 5% 5-HBB(3F)B-3 (2-3-3) 5% 2-HBB(2F,3F)-O2 (3-9-1) 7% 3-HBB(2F,3F)-O2 (3-9-1) 7% V-HBB(2F,3F)-O2 (3-9-1) 7% V2-HBB(2F,3F)-O2 (3-9-1) 7% 3-HH1OB(2F,3F)-O2 (3-12-1) 8% NI=75.0℃;Tc≦-30℃;Δn=0.129;Δε=-3.0;η=20.0mPa・s.」 6 甲6の記載事項 甲6には次の記載がある。 6a「[請求項1] 第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物。 [図:0001419606000069.jpg] ここで、R1は、炭素数2から12のアルケニルであり;R2およびR3は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aは独立して、1,4-シクロへキシレン、または1,4-フェニレンであり;Z1は独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;X1およびX2は、一方がフッ素であり、他方が塩素であり;mおよびkは独立して、1、2、または3である。 ・・・ [請求項9] 第三成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の液晶組成物。 [図:0001419606000070.jpg] ここで、R4およびR5は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Bおよび環Cは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、3-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;Z2は独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり;jは、1、2、または3である。 [請求項10] 第三成分が式(3-1)から式(3-12)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項9に記載の液晶組成物。 [図:0001419606000071.jpg] ここで、R4およびR5は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。 ・・・ [請求項15] 液晶組成物の全重量に基づいて、第三成分の割合が20重量%から70重量%の範囲である請求項9から14のいずれか1項に記載の液晶組成物。 [請求項16] 第四成分として式(4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項1から15のいずれか1項に記載の液晶組成物。 [図:0001419606000072.jpg] ここで、R2は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;R6は、炭素数1から12のアルキルであり;環Dは独立して、1,4-シクロへキシレンまたは1,4-フェニレンであり;Z1は独立して、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり;pは、1、2、または3である。 [請求項17] 第四成分が、式(4-1)から式(4-7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項16に記載の液晶組成物。 [図:0001419606000073.jpg] ここで、R2は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;R6は、炭素数1から12のアルキルである。 ・・・ [請求項22] 液晶組成物の全重量に基づいて、第四成分の割合が5重量%から50重量%の範囲である請求項16から21のいずれか1項に記載の液晶組成物。 ・・・ [請求項32] 請求項1から31のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。 [請求項33] 液晶表示素子の動作モードが、VAモード、IPSモード、またはPSAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である請求項32に記載の液晶表示素子。」 6b「[0011] 本発明の長所は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。本発明の1つの側面は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の側面は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。他の側面は、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。 ・・・ [0052] 第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類であり、0(ゼロ)は値がほぼゼロであることを意味する。 [0053] [図:0001419606000074.jpg] [0054] 成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。化合物(1)は誘電率異方性の絶対値を上げる。化合物(2)は誘電率異方性の絶対値を上げ、そして下限温度を下げる。化合物(3)は粘度を下げる、または上限温度を上げる。化合物(4)は下限温度を下げる。 ・・・ [0059] 第四成分の好ましい割合は、下限温度を下げるために5重量%以上であり、粘度を下げるために50重量%以下である。さらに好ましい割合は5重量%から45重量%の範囲である。特に好ましい割合は10重量%から40重量%の範囲である。」 6c「[実施例] [0086] 組成物および組成物に含有させる化合物の特性を評価するために、組成物およびこの化合物を測定目的物とする。測定目的物が組成物のときはそのままを試料として測定し、得られた値を記載した。測定目的物が化合物のときは、この化合物(15重量%)を母液晶(85重量%)に混合することによって測定用試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。(外挿値)={(測定用試料の測定値)-0.85×(母液晶の測定値)}/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更した。この外挿法によって化合物に関する上限温度、光学異方性、粘度および誘電率異方性の値を求めた。 [0087] 母液晶の成分は下記のとおりである。 [図:0001419606000075.jpg] [0088] 特性の測定は下記の方法にしたがった。それらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED-2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。 [0089] ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。 [0090] ネマチック相の下限温度(TC;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、-10℃、-20℃、-30℃、および-40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が-20℃ではネマチック相のままであり、-30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、TCを≦-20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。 [0091] 粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定にはE型回転粘度計を用いた。 [0092] 光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n∥は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n∥-n⊥、の式から計算した。 [0093] 誘電率異方性(Δε;25℃で測定):誘電率異方性の値は、Δε=ε∥-ε⊥、の式から計算した。誘電率(ε∥およびε⊥)は次のように測定した。 1)誘電率(ε∥)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε∥)を測定した。 2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。 [0094] しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子をUV硬化の接着剤を用いて密閉した。この素子に印加する電圧(60Hz、矩形波)は0Vから20Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧-透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が10%になったときの電圧である。 [0095] 電圧保持率(VHR-1;25℃;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。 [0096] 電圧保持率(VHR-2;80℃;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。 [0097] 電圧保持率(VHR-3;25℃;%):紫外線を照射したあと、電圧保持率を測定し、紫外線に対する安定性を評価した。大きなVHR-3を有する組成物は紫外線に対して大きな安定性を有する。測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そしてセルギャップは5μmである。この素子に試料を注入し、光を20分間照射した。光源は超高圧水銀ランプUSH-500D(ウシオ電機製)であり、素子と光源の間隔は20cmである。VHR-3の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。VHR-3は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。 [0098] 電圧保持率(VHR-4;25℃;%):試料を注入したTN素子を80℃の恒温槽内で500時間加熱したあと、電圧保持率を測定し、熱に対する安定性を評価した。大きなVHR-4を有する組成物は熱に対して大きな安定性を有する。VHR-4の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。 [0099] 応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子をUV硬化の接着剤を用いて密閉した。この素子に矩形波(60Hz、10V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である。応答時間は透過率90%から10%に変化するのに要した時間(立ち下がり時間;fall time;ミリ秒)である。 [0100] 比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。 [0101] ガスクロマト分析:測定には島津製作所製のGC-14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2mL/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1重量%)に調製したあと、その1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC-R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。 [0102] 試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリカラムCBP1-M50-025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。 [0103] 組成物に含有される液晶性化合物の割合は、次のような方法で算出してよい。液晶性化合物はガスクロマトグラフで検出することができる。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は液晶性化合物の割合(モル数)に相当する。上に記載したキャピラリカラムを用いたときは、各々の液晶性化合物の補正係数を1とみなしてよい。したがって、液晶性化合物の割合(重量%)は、ピークの面積比から算出する。 [0104] 実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は下記の実施例によって限定されない。比較例および実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。 表3において、1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(-)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)であり、液晶組成物にはこの他に不純物が含まれている。最後に、組成物の特性値をまとめた。 [0105] [図:0001419606000076.jpg] ・・・ [0111] [実施例3] V-H1OB(2F,3F)-O2 (1-3-1) 4% V2-H1OB(2F,3F)-O2 (1-3-1) 4% V-HH2B(2F,3F)-O2 (1-5-1) 5% V2-HH2B(2F,3F)-O2 (1-5-1) 5% 3-HB(2F,3Cl)-O2 (2-1-1) 5% 3-HBB(2F,3Cl)-O2 (2-3-1) 2% 5-HBB(2F,3Cl)-O2 (2-3-1) 3% V-HH-3 (3-1-1) 28% 3-HH-4 (3-1-1) 10% V2-BB-1 (3-3-1) 4% 5-HBB(F)B-2 (3-12-1) 4% 5-HBB(F)B-3 (3-12-1) 3% 3-HB(2F,3F)-O2 (4-1-1) 5% 5-HB(2F,3F)-O2 (4-1-1) 5% 3-HH1OB(2F,3F)-O2 (4-6-1) 5% 4-HH1OB(2F,3F)-O2 (4-6-1) 3% 5-HH1OB(2F,3F)-O2 (4-6-1) 5% NI=74.6℃;Tc≦-20℃;Δn=0.086;η=15.2mPa・s;Δε=-3.4;τ=5.9ms;VHR-1=99.0%;VHR-2=98.1%;VHR-3=98.2%.」 7 甲10の記載事項 甲10には次の記載がある。 10a「【0018】 本発明は、フッ素含有化合物のうちのシクロヘキシル基を一個含む化合物の含量を制限し、または末端基にアルケニル基を有する中性化合物の含量を制限することによって、液晶組成物とイオン不純物との反応を減らすことができる。これにより、液晶表示装置の電圧保持率の低下を防止し、さらに液晶組成物の屈折率異方性がイオン不純物によって変わることを防止し、線残像特性を改善できる。」 8 甲11の記載事項 11a「〇経産省・用語法:「重さ,重量」=「質量(mass)」」(第23ページ左欄第20行) 9 乙1の記載事項 乙1には次の記載がある。 12a「 [図:0001419606000077.jpg] 」(第312ページ第16~最終行) 10 乙2の記載事項 乙2には次の記載がある。 13a「【0005】こうした目的にかなうような、減粘効果に優れ且つ屈折率異方性の比較的大きい液晶性化合物としては例えば、一般式(II) 【0006】 【化2】 [図:0001419606000078.jpg] 【0007】(式中、Ra及びRbは直鎖状アルキル基を表わす。)で表わされるビフェニル誘導体が知られており、現在よく用いられている。しかしながら、この一般式(II)の化合物の減粘効果は、表示品質の向上に伴う液晶材料の粘性低下の要求には応え難くなってきているのが実情である。また、一般式(II)の化合物は液晶性があまり高くなく、その添加によるネマチック相上限温度の降下が著しいという問題点を有する。 【0008】液晶化合物においてその側鎖アルキル基に二重結合を導入してアルケニルとすることにより粘性の低下や、ネマチック相上限温度の上昇といった効果が得られる場合があることが知られている。そこで本発明者らは一般式(II)の化合物において片側の側鎖をアルケニル基に変換した一般式(III) 【0009】 【化3】 [図:0001419606000079.jpg] 【0010】(式中、Rcは直鎖状アルキル基を表わし、lは2以上の整数を表わし、Rdは水素原子又はアルキル基を表わす。)のビフェニル誘導体を合成し、その減粘剤としての効果を検討した。しかしながら、一般式(III)の化合物は液晶組成物に添加した場合のネマチック相上限温度に関しては若干の効果が見られたものの、予想に反して粘性においては一般式(II)の化合物より劣っていた。」 12b「(実施例2) 液晶組成物の調製 特にアクティブマトリックス駆動用として好適なホスト液晶(H) 【0062】 【化21】 [図:0001419606000080.jpg] 【0063】を調製した。この(H)の物性値は以下の通りである。 ネマチック相上限温度(TN-I): 116.7℃ 粘度(20℃): 19.8cp 応答時間(τr=τd): 21.5m秒 屈折率異方性(Δn): 0.090 ここで、粘度は20℃における測定値、応答時間は厚さ4.5μmのTNセルに封入した場合に、立ち上がり時間(τr)と立ち下がり時間(τd)が等しくなる電圧印加時の測定値である。 【0064】このホスト液晶(H)70%及び実施例1で得た式(Ia) 【0065】 【化22】 [図:0001419606000081.jpg] 【0066】30%からなる液晶組成物(M-a)を調製した。このとき、(M-a)の物性値は以下の通りであった。 TN-I: 76.4℃ 粘度(20℃): 13.1cp 応答時間(τr=τd): 12.0m秒 屈折率異方性(Δn): 0.113 このように、ネマチック相上限温度(TN-I)は降下しているけれども、その粘度は大幅に低下し、応答時間も大幅に改善されていることがわかる。また、屈折率異方性も25%も大きくすることができた。従って、一般式(I)の化合物は低粘性高速応答性液晶組成物の構成成分として非常に有用であることがわかる。 (比較例1)実施例2において、式(Ia)の化合物に換えて、両側鎖が直鎖状アルキル基である本発明外の一般式(II)で表わされる化合物の中で代表的な化合物の一つである式(IIa) 【0067】 【化23】 [図:0001419606000082.jpg] 【0068】30重量%及びホスト液晶(H)70重量%からなる液晶組成物(MR-1)を調製した。この物性値は以下の通りであった。 TN-I: 70.2℃ 粘度(20℃): 14.3cp 応答時間(τr=τd): 13.3m秒 屈折率異方性(Δn): 0.107 このように、式(IIa)の化合物もホスト液晶(H)に添加することによりその粘性及び応答性を大幅に改善させているけれども、本発明の式(Ia)と比較するとその改善効果は少し劣っている。さらに(MR-1)のTN-Iは(M-1)よりも約6゜も低く、式(IIa)の化合物は式(Ia)の化合物よりもネマチック相上限温度の降下の度合いが大きくなってしまっていることがわかる。また、屈折率異方性も(M-1)ほど大きくすることができない。 (比較例2)実施例2において、式(Ia)の化合物に換えて、片方の側鎖がアルケニル基である本発明外の一般式(III)で表わされる化合物のうち、代表的な化合物の一つである式(IIIa) 【0069】 【化24】 [図:0001419606000083.jpg] 【0070】30%及びホスト液晶(H)70%からなる液晶組成物(MR-2)を調製した。この物性値は以下の通りであった。 TN-I: 71.2℃ 粘度(20℃): 18.9cp 応答時間(τr=τd): 15.0m秒 屈折率異方性(Δn): 0.108 以上から(MR-2)のTN-Iは(MR-1)よりわずかに高いけれども、本発明に係わる(M-1)と比較するとかなり低く、応答時間や粘性の改善効果においては(MR-2)のほうがはるかに劣っていることがわかる。 【0071】従って、本発明の一般式(I)の化合物は従来から知られているビフェニル系の減粘性液晶性化合物と比較して、その両側鎖にアルケニル基を導入することにより、予想もできなかったような優れた効果を示すことが明らかとなった。」 第7 サポート要件(無効理由1-1~1-8)について 1 サポート要件について 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである(知財高判平17.11.11(平17(行ケ)10042号))。 2 本件発明の課題 本件発明の課題は、本件明細書【0014】からみて、屈折率異方性(Δn)およびネマチック相-等方性液体相転移温度(Tni)を低減又は上昇させることなく、粘度が十分に低く、なおかつ、表示不良のないまたは抑制した誘電率異方性が負の液晶組成物を提供し、さらにそれを用いたVA型等の液晶表示素子を提供することにあると認める。 3 判断 本件明細書には、以下の記載がある。 「【0008】 一方、式(C)で表される化合物を用いた液晶組成物は既に開示されているが、Δnが小さい液晶組成物(特許文献2参照)や応答速度の改善のためにアルケニル基を分子内に有する化合物を添加したネマチック液晶組成物(特許文献3参照)であり、高Δnを実現するには更なる検討が必要であった。 【0009】 【化2】 [図:0001419606000084.jpg] 【0010】 また、式(D)で表される化合物を用いた液晶組成物は既に開示されている(特許文献4参照)が、アルケニル化合物を含む液晶組成物であるため、焼き付きや表示ムラ等の表示不良が発生する可能性があった。なお、アルケニル化合物を含む液晶組成物の表示不良への影響については既に開示されている(特許文献5)が、一般的にはアルケニル化合物の含有量が減ると液晶組成物の粘度が上昇し、高速応答の達成が困難になるため、表示不良のないまたは抑制と高速応答との両立が困難であった。 【0011】 従って、粘度が十分に低く、なおかつ、アルケニル化合物を含まない誘電率異方性が負の液晶組成物の開発が望まれていた。 【0012】 【化3】 [図:0001419606000085.jpg] ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0014】 本発明が解決しようとする課題は、屈折率異方性(Δn)およびネマチック相-等方性液体相転移温度(Tni)を低減又は上昇させることなく、粘度が十分に低く、なおかつ、表示不良のないまたは抑制した誘電率異方性が負の液晶組成物を提供し、さらにそれを用いたVA型等の液晶表示素子を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0015】 本発明者は、種々のフルオロベンゼン誘導体を検討し、特定の化合物を組み合わせることにより前記課題を解決することができることを見出し、本件発明を完成するに至った。」 「【0024】 本願発明における液晶組成物において、第一成分として、一般式(I)で表される化合物を1種又は2種以上を含有するが、1種から6種がより好ましく、2種から5種が特に好ましい。また、一般式(I)で表される化合物の含有率は5から35質量%であるが、10から30質量%の範囲であることがより好ましい。これらの化合物は絶対値の大きな負の誘電率異方性を有するが、含有量が多いと粘度を上昇させる傾向があるため、低い粘度を重視する場合、上限値は30質量%が好ましく、25質量%が好ましい。また、ネマチック状態の液晶相を駆動する表示素子の場合、スメクチック相が発現することは好ましくない。当該化合物の含有量が多いとスメクチック相-ネマチック相転移温度を上昇させてしまうことがあるため、低いスメクチック-ネマチック相転移温度を重視する場合はこれらの含有率の上限値は30質量%が好ましく、25質量%がより好ましい。絶対値の大きな負の誘電率異方性を重視する場合はこれらの含有率が多いことが好ましく、下限値は5質量%であるが、10質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、20質量%が特に好ましい。 ・・・ 【0028】 ・・・ 第二成分として、一般式(II)で表される化合物を1種又は2種以上を含有するが、2種から6種がより好ましく、3種から5種が特に好ましい。一般式(II)の含有率は5から35質量%の範囲であることが好ましいが、10から30質量%の範囲であることがより好ましい。これらの化合物は大きなΔn及び絶対値の大きな負のΔεを有するが、含有量が多いと粘度を上昇させる傾向があるため、低い粘度を重視する場合、これらの含有率が少ないことが好ましく、その上限値は30質量%が好ましく、25質量%がより好ましい。また、含有量が多いとスメクチック相-ネマチック相転移温度を上昇させてしまうことがあるため、低いスメクチック-ネマチック相転移温度を重視する場合はこれらの含有率の上限値は30質量%が好ましく、25質量%がより好ましい。絶対値の大きな負の誘電率異方性を重視する場合はこれらの含有率が多いことが好ましく、下限値は5質量%であるが、10質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、20質量%が特に好ましい。 ・・・ 【0031】 ・・・ 第三成分として、一般式(III)で表される化合物を1種又は2種以上を含有するが、1種から12種が好ましく、1種から8種がより好ましく、1種から6種が特に好ましい。 【0032】 一般式(III)の含有率は10から80質量%の範囲であることが好ましいが、20から70質量%の範囲であることがより好ましく、35から65質量%の範囲であることが特に好ましい。これらの化合物は、誘電率異方性の絶対値を大きくする効果はほとんどないものの、粘度を低くする効果がある。低い粘度を重視する場合は、これらの含有率が多いことが好ましく、その下限値は10質量%である、20質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、35質量%が特に好ましい。Δεの絶対値を大きくすることを重視する場合はこれらの含有率が少ないことが好ましく、その上限値は80質量%であるが、65質量%がより好ましく、50質量%が特に好ましい。」 上記記載から、以下の事項を理解できる。 (1)本件発明は、従来の式(C)で表される化合物(本件発明の第一成分に相当)を用いた公知の液晶組成物は、Δnが小さい液晶組成物や応答速度の改善のためにアルケニル基を分子内に有する化合物を添加したネマチック液晶組成物であり、高Δnを実現するには更なる検討が必要であったこと、従来の式(D)で表される化合物(本件発明の第二成分に相当)を用いた公知の液晶組成物はアルケニル化合物を含む液晶組成物であるため、焼き付きや表示ムラ等の表示不良が発生する可能性があったこと、一般的にはアルケニル化合物の含有量が減ると液晶組成物の粘度が上昇し、高速応答の達成が困難になるため、表示不良のないまたは抑制と高速応答との両立が困難であったことから、粘度が十分に低く、なおかつ、アルケニル化合物を含まない誘電率異方性が負の液晶組成物の開発が望まれていたことを踏まえ、屈折率異方性(Δn)およびネマチック相-等方性液体相転移温度(Tni)を低減又は上昇させることなく、粘度が十分に低く、なおかつ、表示不良のないまたは抑制した誘電率異方性が負の液晶組成物を提供することを解決しようとするものであること。 (2)「本発明者」は、種々のフルオロベンゼン誘導体を検討、特定の化合物を組み合わせることにより前記課題を解決することができることを見出して、本件発明を完成したこと。 (3)一般式(I)で表される化合物に関し、当該化合物は絶対値の大きな負の誘電率異方性を有するところ、含有量が多いと粘度を上昇させる傾向があるため、上限値は35質量%であるが、低い粘度を重視する場合、上限値は30質量%が好ましいこと、低いスメクチック-ネマチック相転移温度を重視する場合、上限値は30質量%が好ましいこと、絶対値の大きな負の誘電率異方性を重視する場合は含有率が多いことが好ましく、下限値は10質量%が好ましいこと。 (4)一般式(II)で表される化合物に関し、当該化合物は大きなΔn及び絶対値の大きな負のΔεを有するところ、含有量が多いと粘度を上昇させる傾向があるため、上限値は35質量%であるが、低い粘度を重視する場合、含有率が少ないことが好ましく、その上限値は30質量%が好ましいこと、含有量が多いとスメクチック相-ネマチック相転移温度を上昇させてしまうことがあるため、低いスメクチック-ネマチック相転移温度を重視する場合はこれらの含有率の上限値は30質量%が好ましく、下限値は10質量%が好ましいこと。 (5)一般式(III)で表される化合物に関し、当該化合物は誘電率異方性の絶対値を大きくする効果はほとんどないものの、粘度を低くする効果があり、低い粘度を重視する場合は、含有率が多いことが好ましく、より好ましくはその下限値は30質量%であること、Δεの絶対値を大きくすることを重視する場合はこれらの含有率が少ないことが好ましく、その上限値は80質量%であること。 前記(1)~(5)によれば、本件発明のネマチック液晶組成物は、本件発明の第一成分又は第二成分に相当する化合物を用いた従来の液晶組成物では、粘度が十分に低く、なおかつアルケニル基を含まない誘電率異方性が負の液晶組成物を得ることが困難であったことを踏まえ、その組成を、屈折率異方性、粘度、誘電率異方性等の観点から調整したものであり、重視する特性にしたがって調整しうるものであると解される。 ここで、実施例1~7をみると、実施例1~3、6、7は、絶対値の大きな負の誘電率異方性を有する一般式(I)で表される化合物、又は一般式(II)で表される化合物を比較的多く(一般式(I)で表される化合物を20から33質量%、一般式(II)で表される化合物を12から32質量%、一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物の合計量有量は45から55質量%)含んでいるから「絶対値の大きな負の誘電率異方性を重視」した具体例であると解され、一方、実施例4及び5は、一般式(III)で表される化合物を比較的多く(62質量%)含んでおり「低い粘度を重視」した具体例であると解されるところ、実際の実験結果は、前者は誘電率異方性の絶対値が比較的高く、後者は粘度が比較的低くなっている。 また、一般式(I)で表される化合物の含有量、一般式(II)で表される化合物の含有量又は、一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物の合計量がある値よりも少ないと誘電率異方性の絶対値が急激に悪化するとか、一般式(III)で表される化合物の含有量がある値よりも少ないと粘度が急激に悪化するといった格別の事情も見当たらない。 そして、これら実施例の記載は、上記(1)~(5)から理解される事項が具体的に裏付けられているといえる。 そうすると、本件明細書の記載に接した当業者であれば、一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表される化合物の含有量がそれぞれ10から35質量%、一般式(I)で表される化合物及び一般式(II)で表される化合物の合計量が20から70質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が30から80質量%である本件発明1は、どの特性を重視するかによって個々の特性の絶対値の高低はあるものの、一定程度で上記課題を解決することを理解するといえる。 よって、本件明細書の前記記載を特許請求の範囲にまで一般化拡張し得るといえ、サポート要件に違反しているとはいえない。 4 請求人の主張について 請求人は、前記第4の2(1)のとおり、サポート要件に関し、無効理由1-1~1-8があると主張する。 しかしながら、無効理由1-1は本件訂正前の一般式(I)及び(II)で表される化合物が一般式(III)で表される化合物にも相当することに基づくものであって,本件訂正発明には妥当しない。 また、無効理由1-2~1-7について、本件明細書の記載に接した当業者であれば本件発明1は、どの特性を重視するかによって個々の特性の絶対値の高低はあるものの、一定程度で上記課題を解決することを理解するといえることは前記3のとおりであり、無効理由1-2~1-7はいずれも理由がない。 さらに、無効理由1-8に関し、本件訂正発明では、一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物の合計含有量が100%を超えることはないので,妥当しない。 よって、請求人の主張はいずれも失当である。 5 小括 以上のとおり、本件明細書の記載を特許請求の範囲にまで一般化拡張し得るといえるから、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2~10は、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしていないとはいえない。 第8 実施可能要件(無効理由2-1~2-8)について 1 実施可能要件について 物の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が,明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要する。また、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載があることを要する(知財高判令3.6.28(令2(行ケ)10009号)。 2 判断 本件発明1~7は、本件出願前公知の液晶化合物を所定の含有割合で含有する液晶組成物であり、本件発明8~10は当該液晶組成物を用いた液晶表示素子であり、具体的に液晶組成物を製造した実施例もあるから、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、本件発明1~7に係る液晶組成物及び本件発明8~10に係る液晶表示素子を作ることができ、液晶組成物や液晶表示素子として使用できることは明らかである。 3 請求人の主張について 請求人は、前記第4の2(1)のとおり、実施可能要件に関し、無効理由2-1~2-8があると主張する。 しかしながら、無効理由2-1は本件訂正前の一般式(I)及び(II)で表される化合物が一般式(III)で表される化合物にも相当することに基づくものであって,本件訂正発明には妥当しない。 また、無効理由2-2~2-7について、当業者は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、本件発明1~7に係る液晶組成物及び本件発明8~10に係る液晶表示素子を作ることができ、液晶組成物や液晶表示素子として使用できることは明らかであることは前記2のとおりであり、無効理由2-2~2-7はいずれも理由がない。 さらに、無効理由2-8に関し、本件訂正発明では、一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物の合計含有量が100%を超えることはないので,妥当しない。 よって、請求人の主張はいずれも失当である。 4 小括 以上のとおり、発明の詳細な説明は、当業者が、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものと認められ、本件は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。 第9 新規性(無効理由3)及び進歩性(無効理由4-1~4-6)について 1 本件発明の技術的意義について 上記第7の3によれば、本件発明のネマチック液晶組成物は、本件発明の第一成分又は第二成分に相当する化合物を用いた従来の液晶組成物では、粘度が十分に低く、なおかつアルケニル基を含まない誘電率異方性が負の液晶組成物を得ることが困難であったことを踏まえ、その組成を、屈折率異方性、粘度、誘電率異方性等の観点から調整したものである。 そうであれば、本件発明のネマチック液.晶組成物の組成は、屈折率異方性、粘度、誘電率異方性等に着目して調整されたものであるという技術的意義を有する。 2 無効理由3及び4-1について (1)甲1発明の認定 甲1の1には、混合物例の物理的特性は、非常に広いネマチック相範囲を示し(摘記1b参照)、「メルク液晶、液晶の物理的特性」1997年11月刊、ドイツ国メルク社に記載される通りに決定されることが、記載されているから(摘記1d参照)、混合物例の<例1>として「CY-3-O2 24.00%、CY-5-O2 7.00%、CCY-3-O2 5.00%、CPY-2-O2 7.00%、CPY-3-O2 9.00%、CCP-3-3 10.00%、CCP-3-1 8.00%、BCH-32 5.00%、CCH-34 9.00%及びCCH-23 16.00%からなり、透明点[℃]:79、20℃および589nmで測定される光学異方性Δn[589nm,20℃]:0.0945、20℃および1kHzでの誘電異方性Δε[1kHz,20℃]:-3.0、ε∥[1kHz,20℃]:3.4、ε⊥[1kHz,20℃]:6.4,20℃で測定される回転粘度γ1[mPa・s,20℃]:114、20℃における容量閾電圧V0[20℃; V}:2.37であり、非常に広いネマチック相範囲を示す液晶媒体。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる(摘記1b、1d参照)。 (2)対比・判断 ア 本件発明1 (ア)甲1発明との対比 甲1発明の「CPY-2-O2」及び「CPY-3-O2」は、甲1の<表A>の記載からみて(摘記1c参照)、本件発明1の「第二成分として、一般式(II)で表される化合物」に含まれ、甲1発明の「CPY-2-O2 7.00%、CPY-3-O2 9.00%」は、その合計含有量は16.00%であるから、本件発明1の「一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり」に相当する。 甲1発明の「CCP-3-3」、「CCP-3-1」、「BCH-32」、「CCH-34」び「CCH-23」は、甲1の<表A>の記載からみて(摘記1c参照)、本件発明1の「第三成分として、一般式(III)で表される化合物」に含まれ、甲1発明の「CCP-3-3 10.00%、CCP-3-1 8.00%、BCH-32 5.00%、CCH-34 9.00%及びCCH-23 16.00%」は、その合計含有量は48.00%であるから、本件発明1の「一般式(III)で表される化合物の含有量が30から80質量%であり」に相当する。 甲1発明の「20℃および1kHzでの誘電異方性Δε[1kHz,20℃]:-3.0」及び「非常に広いネマチック相範囲を示す液晶媒体」は本件発明1の「誘電率異方性が負のネマチック液晶組成物」に相当する。 甲1発明の「液晶媒体」は、本件発明1で除かれる式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する組成物ではないから、本件発明1の「ただし、以下の式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。」を充足する。 そうすると、本件発明1と甲1発明は「第二成分として、一般式(II)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、第三成分として、一般式(III)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、 一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が30から80質量%である、 誘電率異方性が負のネマチック液晶組成物。 ただし、以下の式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-1> 本件発明1は、第一成分として、一般式(I)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、 一般式(I)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、 一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計が20から70質量%であるのに対し、甲1発明は一般式(I)で表される化合物を含有しない点。 <相違点1-2> 一般式(III)で表される化合物として、本件発明1は一般式(III-F)で表される化合物を1種又は2種以上含有するのに対し、甲1発明では一般式(III-F)で表される化合物を含有しない点。 (イ)相違点についての検討 a <相違点1-1>について (a)第一成分として、一般式(I)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、 一般式(I)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計が20から70質量%である点は、甲1発明に含まれない新たな成分を特定量追加することであるから、実質的な相違点である。 これに対して、甲1の1には、甲1発明の液晶媒体において、実施形態e)として、「IIA、IIBおよびIICの化合物群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含む」ことが記載され、このうち「IIA」として列記された「IIA-26」は本件発明1の「一般式(I)で表される化合物」に相当する。 (b)しかしながら、「IIA、IIBおよびIIC」の化合物として列挙された多数の化合物(IIAについて41個、IIBについて16個、IICについて1個)のうち「一般式(I)で表される化合物」にあたるものは「IIA-26」ただ1つしかなく、甲1の1全体の記載をみても、これらの化合物の中から特にIIA-26の化合物を選択する動機付けはない。ましてや、屈折率異方性、粘度、誘電率異方性等の観点からIIA-26を選択し、各成分の配合量を本件発明1の規定のとおりに調整することなど、甲1には記載も示唆もされていない。 (c)また、誘電率異方性の絶対値を上げる効果を有する化合物として、甲2には式(1)で表される化合物、甲3には式(5)で表される化合物、甲5には式(3)で表される化合物が記載され、それらの一例として記載された式(1-3)、(1-6)で表される化合物(甲2[0016])式(5-5)、(5-7)で表される化合物(甲3[0065])、式(3-5)、(3-12)で表される化合物(甲5[請求項8])は、「一般式(I)で表される化合物」にあたる。 しかしながら、いずれの化合物も「一般式(I)で表される化合物」でない化合物とともに列挙されているに過ぎず、特に「一般式(I)で表される化合物」が誘電率異方性の絶対値を上げる効果に優れるといった記載はなく、甲1発明において、これらの文献に記載されたこれらの化合物を配合することの動機付けは見当たらない。 (d)甲4には、化合物(1)又は化合物(2)を含有する、負の誘電率異方性を有する液晶組成物が記載され(摘記4a参照)、化合物(2)が誘電異方性の絶対値を上げることが記載されている(摘記4b参照)。化合物(2)の好ましい例としてあげられた化合物は、いずれも本件発明の「一般式(I)で表される化合物」にあたる([0062]、[0065])。 しかしながら、甲4では、式(2)で表される化合物の他に式(1)で表される化合物、式4-2)で表される化合物も誘電率異方性の絶対値を上げる化合物であると記載され、しかも式(2)で表される化合物は必ず式(1)で表される化合物とともに使用される。 そうすると、甲1発明において、甲4に記載された式(2)で表される化合物のみを選択して取りだして甲1発明において使用することが動機付けられるとはいえないし、ましてや、屈折率異方性、粘度、誘電率異方性等の観点から上記化合物(2)を使用し、この際、各成分の配合量を本件発明1の規定のとおりに調整することなど動機づけられない。 (e)そうすると、甲1~5をみても、相違点1-1に係る事項が当業者にとって容易に想到しうるものであったとはいえないし、その他の証拠をみても、同様である。 b <相違点1-2>について (a)一般式(III)で表される化合物として、本件発明1は一般式(III-F)で表される化合物を1種又は2種以上含有する点は、甲1発明に含まれない新たな成分を追加することであるから、実質的な相違点である。 (b)次に、相違点1-2に係る事項が当業者によって容易に想到しうるものであったかについて検討する。 上記1のとおり、本件発明のネマチック液晶組成物は、本件発明の第一成分又は第二成分に相当する化合物を用いた従来の液晶組成物では、粘度が十分に低く、なおかつアルケニル基を含まない誘電率異方性が負の液晶組成物を得ることが困難であったことを踏まえたものである。 これに対して、甲1には、式B-1~B-3の1種類以上のビフェニル類を追加的に含むことが記載され、このうち、式B-1の化合物は、本件発明1の「一般式(III-F)で表される化合物」に相当するが、当該化合物は、アルケニル基を含む式B-2、B-3で表される化合物とともに列挙されており、B-1~B-3のうち、特にアルケニル基を含む化合物ではない式B-1の化合物が好ましいといった記載はない。 そうすると、甲1発明において、化合物B-1~B-3のうち特に化合物B-1を選択して使用することの動機付けがあるとはいえない。 また、粘度を下げる化合物として、甲2には式(2-3)の化合物が、甲3には式(2)の化合物が、甲4には式(3-3)の化合物が記載されているが、これらはいずれもアルケニル基を含み得、特にアルケニル基を含まない化合物が好ましいといった記載はない。 そうすると、甲1発明において、甲2に記載された式(2-3)の化合物、甲3に記載された式(2)の化合物、又は甲4に記載された式(3-3)の化合物のうち、特にアルケニル基を含まない化合物を選択してこれらを使用することの動機付けがあるとはいえない。 したがって、甲1~4をみても、相違点1-2に係る事項が当業者にとって容易に想到しうるものであったとはいえないし、他の証拠をみても、同様である。 (ウ)請求人の主張について ・請求人の主張 請求人は、以下のとおり主張する。 a 「(1)甲1において、式Iの化合物を必須成分としながら、e)とk)との実施形態とはそれぞれ、その必須成分に対して好適な追加態様として明記されており(甲1-2の0045、0086段落等参照)、甲1には、式Iの化合物とe)とを合わせて含む組成物、および式Iの化合物とe)とk)とを合わせて含む組成物はいずれも、先行技術として明確に開示されていると解される。 (2)e)については、式IIA、IIBおよびIICの化合物群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含む態様が開示され(甲1-2の0045、0046段落等参照)、すなわち、式Iの化合物に対して好適に追加する態様e)として、限られるただ7種類の組合せのうち、式IIAおよびIIBの組み合わせはその1種類として明確に開示されている。 (3)(1)および(2)から、甲1には、式Iの化合物と、式IIAおよびIIBの化合物との組み合わせは、先行技術として開示されていることが明らかである。この点、同時含有の点を指摘する被請求人の主張には理由がない。 (4)さらに、式IIAの化合物の一例として式IIA-26が、式IIBの化合物の一例として式IIB-2が明記されている(甲1-2の0056段落、0058段落等参照)。加えて、甲1-2の0061段落には、IIB-2は好ましい化合物として記載されている。 (5)甲1のk)には、一般式III-Fの化合物に該当するB-1(ビフェニル類)を(4)に対しても追加的に含むことが明記されている。 (6)よって、甲1には、式Iの化合物、式IIA-26の化合物及び式IIB-2の化合物、ならびに式B-1を同時に含有し得る液晶組成物が先行技術として記載されている。」(第1弁駁書39頁21行~40頁7行) b 「甲第1号証には(以下甲1-2の段落を示す。)、【0029】段落に「負の誘電異方性の混合物の考え方」との記載があるし、【0031】段落に「非常に低い回転粘度」との記載があり、そのためにIIA-26の化合物を追加的に含む実施形態e)が記載され、その含有割合も【0061】段落にあるように「少なくとも20重量%」と記載されており、訂正後の一般式(1)で表される化合物を「10から35重量%」と相違するものではないし、「絶対値の大きな負の誘電率異方性を得てかつ粘度を低くする目的」との点でも示唆があるものであるから、一般式(I)に関する被請求人の主張は甲第1号証の記載に基づくものではなく、失当である。 また、B-1を「追加的に含む」ことが甲第1号証に記載されており、少なくとも示唆されていることはすでに主張した通りであるが、「絶対値の大きな負の誘電率異方性を得てかつ粘度を低くする目的」については、実施形態k)として記載されているB-1にも当てはまるから、B-1すなわち本件特許発明または本件訂正発明における式III-Fに該当する化合物を追加的に含むことについて、甲第1号証に少なくとも示唆されているものと評価し得る。」(第1弁駁書43頁18~29行) ・当審の判断 確かに甲1-2には、IIA-26の化合物、IIB-2の化合物及びB-1の化合物が記載されているものの、同一文献に記載されているからといってこれらの化合物を組み合わせて使用することまでも記載されているとはいえないから、甲1には、式Iの化合物、式IIA-26の化合物及び式IIB-2の化合物、ならびに式B-1を同時に含有し得る液晶組成物が先行技術として記載されているとの主張は理由がない。 かえって、甲1-2全体の記載をみても、特にIIA-26の化合物を選択する動機付けがないこと、化合物B-1~B-3のうち特に化合物B-1を選択して使用することの動機付けとがないことは、上記(イ)のとおりであり、このことは、甲1に、請求人が上記bで指摘する記載があったとしても何ら左右されない。 よって、上記主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明、並びに、甲2~甲6、甲10、甲11及び甲14~甲22に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件発明2~10 本件発明2~10は、本件発明1を引用してさらに限定するものであり、上記本件発明1と甲1発明との<相違点1-1>及び<相違点1-2>と同じ相違点を有するものであって、<相違点1-1>及び<相違点1-2>については前記(1)イで検討したとおりであり、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明、並びに、甲2~甲6、甲10、甲11及び甲14~甲22に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 3 無効理由4-2について (1)甲2発明の認定 甲2の液晶組成物はネマチック相を有しているから(摘記2c参照)、甲2には実施例19の液晶組成物として「 3-HH1OB(2F,3F)-O2 (1-6-1) 6% 3-HBB(2F,3F)-O2 (1-7-1) 6% 5-HBB(2F,3F)-O2 (1-7-1) 6% V-HH-3 (2-1-1) 32% 1V-HH-3 (2-1-1) 7% 3-HB-O2 (2-2-1) 3% 1V-HBB-2 (2-6-1) 4% 2-BB(F)B-3 (2-7-1) 5% 3-Dh2B(2F,3F)-O2 (4-2-2-1) 9% 3-Dh1OB(2F,3F)-O2 (4-2-3-1) 6% 3-DhH1OB(2F,3F)-O2(4-2-6-1) 6% 3-H2Cro(7F,8F)-5 (4-3-1-2) 3% 3-H1OCro(7F,8F)-5 (4-3-1-3) 4% 3-HHCro(7F,8F)-5 (4-3-3-1) 3%からなる組成物100重量部に下記化合物を0.3重量部添加した、液晶組成物。 MAC-BB(F)B-MAC (3-19-1) ネマチック相の上限温度NI=72.0℃;ネマチック相の下限温度Tc≦-20℃;光学異方性(屈折率異方性;25℃で測定)Δn=0.093;誘電率異方性(25℃で測定)Δε=-2.9;応答時間(25℃で測定)τ=3.6ms;電圧保持率(25℃)VHR-1=99.0%;電圧保持率(80℃)VHR-2=98.1%」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる(摘記2c参照)。 (2)対比・判断 ア 本件発明1 (ア)甲2発明との対比 甲2発明の「3-HH1OB(2F,3F)-O2」は、表3を参照すると(摘記2c参照)、本件発明1の「第一成分として、一般式(I)で表される化合物」に含まれる。 甲2発明の「3-HBB(2F,3F)-O2」及び「5-HBB(2F,3F)-O2」は、表3を参照すると(摘記2c参照)、いずれも、本件発明1の「第二成分として、一般式(II)で表される化合物」に含まれるから、本件発明1の「一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり」を充足する。 甲2発明の「1V-HH-3」、「3-HB-O2」及び「1V-HBB-2」は、表3を参照すると(摘記2c参照)、いずれも、いずれも、本件発明1の「第三成分として、一般式(III)で表される化合物」に含まれる。 甲2発明の「誘電率異方性(25℃で測定)Δε=-2.9」は本件発明1の「誘電率異方性が負の」に相当する。 甲2発明の「液晶組成物」は、本件発明1で除かれる式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物をを含有する組成物ではないから、本件発明1の「ただし、以下の式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。」を充足する。 そうすると、本件発明1と甲2発明は「第一成分として、一般式(I)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、第二成分として、一般式(II)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、第三成分として、一般式(III)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、 一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%である、誘電率異方性が負のネマチック液晶組成物。 ただし、以下の式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2-1> 本件発明1は、一般式(I)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計が20から70質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が35から80質量%であるのに対し、甲2発明は、一般式(I)で表される化合物の含有量が6質量%であり、一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計が18質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が14質量%である点。 <相違点2-2> 本件発明1は一般式(III)で表される化合物として一般式(III-F)で表される化合物を1種又は2種以上含有するのに対し、甲2発明はその化合物を含有しない点。 (イ)相違点についての検討 <相違点2-1>について 前記1によれば、本件発明のネマチック液晶組成物の組成は、液晶組成物の、屈折率異方性、粘度、誘電率異方性等の観点から、一般式(I)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計が20から70質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が35から80質量%であると調整されたものであるといえる。 これに対して、甲2発明の3-HH1OB(2F,3F)-O2は甲2における「第一成分」のうち式(1-6)で表される化合物として、また、3-HBB(2F,3F)-O2及び5-HBB(2F,3F)-O2は甲2における「第一成分」のうち式(1-7)で表される化合物として配合されたものであるところ、当該「第一成分」の好ましい配合割合は10重量%以上60重量%以下である(摘記2a、2b参照)。しかしながら、甲2には、式(1-6)で表される化合物と式(1-7)で表される化合物のそれぞれの配合割合を調整することについては記載も示唆もない。 また、甲2発明の1V-HH-3は甲2における「第二成分」のうち式(2-1)で表される化合物として、3-HB-O2は「第二成分」のうち式(2-2)で表される化合物として、1V-HBB-2は式(2-6)で表される化合物として配合されたものであり、当該第二成分の割合は5重量%以上50重量%以下であることが記載されている(摘記2a、2b参照)。しかしながら、当該「第二成分」は式(2-1)~式(2-12)で表される化合物であり得るところ、実際甲2発明も、「第二成分」として、上記3つの化合物以外に、式(2-1)化合物であるV-HH―3、式(2-7)化合物である2-BB(F)B-3も含んでおり、「第二成分」のうち特に本件発明の一般式(III)で表される化合物に相当する、1V-HH-3、3-HB-O2、1V-HBB-2の配合量を調整することについては記載も示唆もない。 そうすると、甲2発明の液晶組成物において、本件発明1の第二成分に相当する式(1-7)で表される化合物の含有量を10から35質量%とし、本件発明1の第一成分に相当する式(1-3)で表される化合物及び式(1-6)で表される化合物との合計含有量を20から70質量%とし、本件発明1の第三成分に相当する式(2-1)~式(2-7)で表される化合物の含有量を35から80質量%とする動機付けがあるとはいえない。 また、他の証拠をみても、甲2発明の液晶組成物において、各成分の配合量を調整し、本件発明1の上記相違点2-1に係る組成とすることの動機付けがあるとはいえない。 よって、相違点2-1に係る事項は当業者が容易に想到し得たものではない。 <相違点2-2>について 甲2発明のV-HH-3、1V-HH-3、3-HB-O2、1V-HBB-2、2-BB(F)B-3は「第二成分」として配合されたものであるところ、甲2には、第二成分として式(2-3)で表される化合物が記載されている(摘記2a参照)。 ここで、式(2-3)において、R3およびR4がともに炭素数1から5のアルキルであるか、一方が炭素数1から5のアルキルであり他方が炭素数1から5のアルコキシである場合、本件発明1の「一般式(III-F)で表される化合物」に相当する。 しかし、甲2には、甲2発明の液晶組成物において「第二成分」としてのV-HH-3、1V-HH-3、3-HB-O2、1V-HBB-2、2-BB(F)B-3に代えて、あるいはこれに加えて、「第二成分」である式(2-1)~式(2-12)で表される化合物の中から式(2-3)で表される化合物を選択し、さらに、R3およびR4としていずれも炭素数1から5のアルキルである化合物又は一方が炭素数1から5のアルキルであり他方が炭素数1から5のアルコキシである化合物を選択することの記載はない。 この点、上記1によれば、本件発明のネマチック液晶組成物は、従来、粘度が十分に低く、なおかつアルケニル基を含まない誘電率異方性が負の液晶組成物を得ることが困難であったことを踏まえ、屈折率異方性、粘度、誘電率異方性等の観点から調整したものであるところ、甲2にはそのような観点から、「第二成分」として式(2-3)で表される化合物のうち、R3およびR4としていずれも炭素数1から5のアルキルである化合物又は一方が炭素数1から5のアルキルであり他方が炭素数1から5のアルコキシである化合物を選択することなど記載も示唆もされていない。 そうすると、上記相違点2-2に係る事項は当業者が容易に想到しうるものではなく、このことは、他の証拠をみても、同様である。 (ウ)請求人の主張について ・請求人の主張 請求人は以下のとおり主張する。 a 「式(I)及び(II)の含有量を区別して、それぞれ10から60質量%とすることができないとしても、第一成分の並列的な下位概念として、(I)及び(II)を同時含有する場合、式(I)及び(II)の化合物が合わせて、好適的に10から60質量%であることが理解することができる。そうすると、当業者は、式(I)と式(II)の化合物の含有率はそれぞれ5から30質量%であり得ることを難もなく導き出すことができる。」(第1弁駁書71頁4~10行) b 「本件訂正明細書の実施例1~6において使用される成分I~IIIの含有率からも窺えるが、IIIの含有量は、他の成分の含有量が定まることにより、直ちに定まるものである。また、比較例1~4の成分IIIの含有率はいずれもその範囲に属することからも、IIIの含有量自体に特別な技術的意義を有するものではないと解され得る。」(第1弁駁書71頁25~29行) c 「R3またはR4は、紫外線または熱に対する安定性などを上げるために炭素数1から12のアルキルであり、下限温度を下げるために炭素数2から12のアルケニルである。」と記載されている。 また、本件訂正発明の効果として、「熱、光、水等に対し、化学的安定であ」ることがあげられていることから、甲2には、紫外線または熱に対する安定性などを上げるために、アルケニルではなくアルキル基を選択することが明示されているといえる。また、液晶組成物として望まれる安定性に関する当該技術的効果は、新規的なものではなく、出願時から周知であることから、当業者は、所定の安定性効果を得るために、甲2の0062段落の記載を参酌すれば、式(2-3)の化合物を選択しようとする動機付けが記載されているというべきであり、示唆があるというべきである。」(第1弁駁書73頁14~21行) d 「表示不良の問題を解消するという技術的観点に着眼した場合、甲1及び甲10の開示から、アルケニル化合物の含有量をなるべく減らすこと、さらに、全般回避することが開示されているといえる。」(令和5年7月5日付け上申書22頁、脚注7) e 「甲2の[0058]及び実施例19の開示は、緊密した技術的関連性があり、両者を併せて参酌したところ、第一成分として(1-6-1)及び(1-7-1)を含む場合、(1-6-1)及び(1-7-1)の好適な範囲はそれぞれ、第一成分の好適な範囲の半分であることに直ちに想到し得る。」(同上申書22頁脚注9)。 ・当審の判断 上記a及びeについて、そもそも甲2には、「第一成分」として式(1-1)~式(1-7)で表される化合物が記載されており、甲2発明ではそのうち式(1-6)で表される化合物と式(1-7)で表される化合物が配合されているにすぎず、特に式(1-6)で表される化合物と式(1-7)で表される化合物を同量程度配合するなどの記載もないのだから、「第一成分」の好ましい配合割合が10重量%以上60重量%以下であるからといって、式(1-6)で表される化合物と式(1-7)で表される化合物の含有率がそれぞれ5から30質量%であり得るなどということはできない。 また、bについて、確かに他の成分(式(I)で表される化合物と式(II)で表される化合物の化合物)の含有量が決まれば式(III)で表される化合物の含有量も決まるかもしれないが、仮にそうであっても、上記のとおり式(I)で表される化合物及び式(II)で表される化合物の配合量が本件発明1の規定を満たすとはいえないのだから、相違点2-1に係る事項が当業者が容易に想到し得るものであると結論づけられることはない。 なお、上記1のとおり、本件発明の技術的意義は、ネマチック液晶組成物の組成が、屈折率異方性、粘度、誘電率異方性に着目して調整されたものであるということにあるのだから、比較例1~4の式(III)で表される化合物の含有率が本件発明の所定の範囲に属するからといって、当該化合物が技術的意義を有しないということにもならない。 さらに、上記c、dに関し、そもそも上記のとおり、式(I)で表される化合物及び式(II)で表される化合物の配合量が本件発明1の規定を満たすとはいえないのだから、仮に、甲2に「R3またはR4は、紫外線または熱に対する安定性などを上げるために炭素数1から12のアルキルであり、下限温度を下げるために炭素数2から12のアルケニルである。」と記載されており、本件訂正発明の効果として、「熱、光、水等に対し、化学的安定であ」ることがあげられており、あるいは、複数の文献にアルケニル化合物の含有量をなるべく減らすことが開示されていたとしても、これらのことにより、相違点2-1に係る事項が、当業者が容易に想到しうるものであるということにはならない。 なお、確かに甲2には「R3またはR4は、紫外線または熱に対する安定性などを上げるために炭素数1から12のアルキルであり、下限温度を下げるために炭素数2から12のアルケニルである。」と記載されているが、アルキルの方が好ましい旨の記載はなく、各実施例では、R3またはR4がアルケニルである化合物も多数使用されていることからみれば、甲2においてアルケニルではなくアルキル基を選択することが明示されているとはいえないし、請求人が指摘する各証拠をみても、甲2にかかる事項が記載されているとみるに足りる根拠はない。 よって、請求人の前記主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明、並びに、甲1、甲4,甲5、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件発明2~10 本件発明2~10は、本件発明1を引用してさらに限定するものであり、上記本件発明1と甲2発明との<相違点2-1>及び<相違点2-2>と同じ相違点を有するものであって、<相違点2-1>及び<相違点2-2>については前記(1)イで検討したとおりであり、甲2に記載された発明、並びに、甲1、甲4,甲5、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 4 無効理由4-3について (1)甲3発明の認定 甲3に記載の実施例の液晶組成物は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度を充足するものであるから(摘記3b参照)、実施例8として「 3-ChB(2F,3F)-O2 (1-1-1) 9% 5-ChB(2F,3F)-O2 (1-1-1) 11% 2-HChB(2F,3F)-O2 (1-2-1) 6% 3-HChB(2F,3F)-O2 (1-2-1) 8% V-HChB(2F,3F)-O2 (1-2-1) 4% 5-BB-1 (2-1) 5% V2-BB-1 (2-1) 5% V-HHB-1 (3-1-1) 9% 5-HBB(F)B-3 (3-4-1) 4% 3-HH-V (4-1) 19% 3-H1OB(2F,3F)-O2 (5-5) 5% 3-HB(2F,3CL)-O2 (5-8) 5% 3-HHB(2F,3CL)-O2 (5-9) 5% 3-HBB(2F,3CL)-O2 (5-10) 5%からなり、 ネマチック相の上限温度NI=75.0℃;ネマチック相の下限温度Tc≦-20℃;光学異方性(屈折率異方性;25℃で測定)Δn=0.106;誘電率異方性(25℃で測定)Δε=-3.1;粘度(20℃で測定)η=20.9mPa・s.であるネマチック液晶組成物。」の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる(摘記3c参照)。 (2)対比・判断 ア 本件発明1 (ア)甲3発明との対比 甲3発明の「5-BB-1」は、表3を参照すると(摘記3c参照)、本件発明1の「第三成分として、一般式(III)で表される化合物」に含まれ、かつ、本件特許発明1の「一般式(III)で表される化合物として一般式(III-F)に相当する。 甲3発明の「3-H1OB(2F,3F)-O2」は、表3を参照すると(摘記3c参照)、それぞれ、本件発明1の「第一成分として、一般式(I)で表される化合物」に相当する。 甲3発明の「誘電率異方性(25℃で測定)Δε=-3.1は本件発明1の「誘電率異方性が負の」に相当する。 甲3発明の「ネマチック液晶組成物」は、本件発明1で除かれる式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物ではないから、本件発明1の「ただし、以下の式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。」を充足する。 そうすると、本件発明1と甲3発明は「第一成分として、一般式(I)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、 第三成分として、一般式(III)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、 一般式(III)で表される化合物として一般式(III-F)で表される化合物を1種又は2種以上含有する誘電率異方性が負のネマチック液晶組成物 ただし、以下の式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。 【化22】(当審注:前記第3と同じであるため、省略)。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3-1> 本件発明1は、第二成分として、一般式(II)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、一般式(I)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が30から80質量%であり、一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計が20から70質量%であるのに対し、甲3発明は、一般式(II)で表される化合物を含有せず、一般式(I)で表される化合物の含有量が5質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が5質量%である点。 (イ)相違点についての検討 前記1によれば、本件発明のネマチック液晶組成物の組成は、液晶組成物の、屈折率異方性、粘度、誘電率異方性等の観点から、一般式(I)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計が20から70質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が35から80質量%であると調整されたものであるといえる。 これに対して、甲3には甲3に記載の液晶混合物に式(5-1)から式(5-4)で表される化合物である第五成分をさらに含有してもよいことが記載されており(摘記3a参照)、そのうち式(5-4)で表される化合物は、R1およびR2のいずれもが炭素数1から10のアルキル、またはR1が炭素数1から10のアルキルでR2が炭素数1から10のアルキルまたは炭素数1から10のアルコキシルであるとき、本件発明1の第二成分に相当するものである。 また、甲3発明の3-H1OB(2F,3F)-O2(本件発明1の第一成分に相当)も甲3における「第五成分」として配合されたものと解されるところ、当該「第五成分」の好ましい割合は、5重量%から50重量%であることが記載されている(摘記3a参照)。 しかしながら甲3には、第五成分として特に、式(5-4)で表される化合物のうちR1およびR2のいずれもが炭素数1から10のアルキル、またはR1が炭素数1から10のアルキルでR2が炭素数1から10のアルキルまたは炭素数1から10のアルコキシルである化合物を選んで配合することや、そのような化合物と3-H1OB(2F,3F)-O2の各配合量を調整することなど記載されておらず、ましてや、液晶組成物の、屈折率異方性、粘度、誘電率異方性等の観点から、各成分の配合量を本件発明1に規定のとおりに調整することなど、記載も示唆もされていない。 そうすると、上記相違点に係る事項は当業者が容易に想到しうるものではなく、他の証拠をみても同様である。 (ウ)請求人の主張について ・請求人の主張 請求人は以下のとおり主張する。 a 「甲3の段落【0046】には、「第五成分の好ましい割合は、誘電率異方性の絶対値を上げるために、5重量%以上であ」り、「さらに好ましい割合は5重量%から45重量%の範囲である。特に好ましい割合は10重量%から40重量%の範囲である。」であるとの記載に基づき、実施例8に使用された20重量%の第五成分に対して、さらに含有量を増やしてよい余地があることが明示されているし、また、被請求人による認定の相違点2のうち、本件訂正特許の式(II)で表される化合物については、甲3発明の実施例8には3-HBB(2F,3Cl)-O2であることに対して、本件訂正特許の構成要件Bがフェニレン基の置換基がフルオロとクロロではなくジフルオロである点のみで相違することから、当業者にとってそもそも設計事項的な変更範囲に該当するし、また、例えば、甲1発明に関する弁駁内容で既述した通り、誘電率異方性の絶対値を上げるために、ヘキシレン基-フェニレン基-ジフルオロ置換フェニレン基という共通骨格を有する化合物を採用することに容易になし得る。よって、同じく甲3の他の実施例4にも使用された3-HBB(2F,3F)-O2(5-4-1)を適用して含有量を調整することに何ら困難性もなく、当業者にとって適宜に成し得る事項と言える。」(第一弁駁書74頁26行~75頁7行) b 「(5-4-1)と、(5-5)又は(5-7)とを同時に含有する場合、被請求人は、各化合物に相当する化合物の含有量を区別して、「5重量%から50重量%の範囲」、…とすることはできないと指摘されている。…(5-4-1)と、(5-5)又は(5-7)とを合わせて開示の割合で含有すると理解され得るため、本件訂正発明1の式(I)で表される化合物に相当する甲3の(5-5)又は(5-7)と、本件訂正発明1の式(II)で表される化合物に相当する甲3の(5-4-1)との含有量を、それぞれ、2.5重量%から25重量%の範囲にすることは、甲3における各成分の好適な含有量及び実施例に関する記載から、教示されている事項といえる。本件訂正発明1の、式(I)又は(II)で表される化合物の含有量は、当該教示された範囲と大幅重複しており、当該教示から適宜に成し得る事項といえる。」(第一弁駁書77頁2~11行) c 「甲3の実施例8には、(5-10)として3-HBB(2F,3CL)-O2が開示されており、その塩素をフッ素に置き換えることは、当業者にとって何ら困難性を要することなく常套手段にすぎない。…ヘキシレン基-フェニレン基-ジフルオロ置換フェニレン基の主要骨格を有する化合物(本件特許の式(II)の化合物)は、誘電率異方性の絶対値を上げ、屈折率異方性を上げる成分として、10~35質量%で添加することは周知である(「要領書」の第53~59頁)ことから、…少なくとも当業者が適宜になし得る設計事項である。(令和5年7月5日付け上申書23頁脚注10)。 d 「本件特許の式(III)の化合物に相当する化合物として、甲3には、少なくとも第二成分及び第四成分が、粘度を下げる成分として開示されており(【0016】、【0024】、【0040】)、その効果を奏するために好適な含有量がそれぞれ「5重量%から20重量%」、「10重量%から35重量%」で開示されており、また、甲3の全実施例には、第二成分及び第四成分を同時に使用されていることから、液晶組成物のうち、粘度を下げる成分として、好適な含有量は、少なくとも、両者の足し合わせで15重量%から55重量%であることに、何ら困難性も要することなく到達し得る事項である」(同上申書23頁脚注11)。 ・当審の判断 前記1によれば、本件発明のネマチック液晶組成物の組成は、液晶組成物の、屈折率異方性、粘度、誘電率異方性等の観点から、一般式(I)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計が20から70質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が35から80質量%であると調整されたものであるのに対して、甲3には、液晶組成物の、屈折率異方性、粘度、誘電率異方性等の観点から、各成分の配合量を本件発明1に規定のとおりに調整することなど、記載も示唆もされていないことは上記(イ)のとおりである。 仮に、甲3発明において「第五成分」の含有量を増やしてよい余地があるともいえたとしても、また、甲3発明である実施例8のうち「3-HBB(2F,3Cl)-O2」をヘキシレン基-フェニレン基-ジフルオロ置換フェニレン基なる骨格を有する化合物に代えることが容易になし得たとしても、さらに、甲3には、少なくとも第二成分及び第四成分が、粘度を下げる成分として開示されており、その効果を奏するために好適な含有量がそれぞれ「5重量%から20重量%」、「10重量%から35重量%」で開示されていたとしても、それら各事項によって、相違点3-1に係る事項が容易に想到しうるということにはならない。 また、上記(b)に関し、(5-4-1)と、(5-5)又は(5-7)とを同時に含有する場合、これらを合わせた含有量が「5重量%から50重量%の範囲」であれば(5-4-1)と(5-5)又は(5-7)との含有量を、それぞれ、「2.5重量%から25重量%」とすることは、教示されているとする根拠は何らない。 よって、上記主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、本件発明1は、甲3に記載された発明、並びに、甲1、甲4、甲5、甲10及び甲11に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件発明2~10 本件発明2~10は、本件発明1を引用してさらに限定するものであり、上記本件発明1と甲3発明との<相違点3-1>と同じ相違点を有するものであって、<相違点3>については前記(1)イで検討したとおりであり、甲3に記載された発明、並びに、甲1、甲4、甲5、甲10及び甲11に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 5 無効理由4-4について (1)甲4発明の認定 甲4に記載の実施例の液晶組成物は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度を充足するものであるから(摘記4b参照)、実施例5として「 3-HDhB(2F,3F)-O2 (1-5-1) 10% 5-HDhB(2F,3F)-O2 (1-5-1) 4% 3-H1OB(2F,3F)-O2 (2-1-1) 4% 5-H1OB(2F,3F)-O2 (2-1-1) 4% V-HH-3 (3-1-1) 32% 1V-HH-3 (3-1-1) 8% V2-BB-1 (3-3-1) 6% V2-HHB-1 (3-4-1) 5% 2-HBB(2F,3F)-O2 (4-1-5-1) 5% 3-HBB(2F,3F)-O2 (4-1-5-1) 11% 2-Cro(7F,8F)2H-3 (4-2-2-1) 3% 2O-Cro(7F,8F)2H-3 (4-2-2-1) 3% 3-HH1OCro(7F,8F)-5 (4-2-3-3) 5%からなり、 ネマチック相の上限温度NI=77.2℃;ネマチック相の下限温度Tc≦-20℃;光学異方性(屈折率異方性;25℃で測定)Δn=0.088;粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;)η=11.3mPa・s;誘電率異方性(25℃で測定)Δε=-2.7;電圧保持率(25℃)VHR-1=99.2%;電圧保持率(80℃)VHR-2=98.2%;電圧保持率(25℃)VHR-3=98.0%であるネマチック液晶組成物。」の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる(摘記4c参照)。 (2)対比・判断 ア 本件発明1 (ア)甲4発明との対比 ア 甲4発明との対比 甲4発明の「3-H1OB(2F,3F)-O2」及び「5-H1OB(2F,3F)-O2」は、表3を参照すると(摘記4c参照)、いずれも、本件発明1の「第一成分として、一般式(I)で表される化合物」に含まれる。 甲4発明の「1V-HH-3」は、表3を参照すると(摘記4c参照)、本件発明1の「第三成分として、一般式(III)で表される化合物」に含まれる。 甲4発明の「2-HBB(2F,3F)-O2」及び「3-HBB(2F,3F)-O2」は、表3を参照すると(摘記4c参照)、いずれも、本件発明1の「第二成分として、一般式(II)で表される化合物」に含まれる。 甲4発明の「 3-H1OB(2F,3F)-O2 (2-1-1) 4% 5-H1OB(2F,3F)-O2 (2-1-1) 4%」及び「 2-HBB(2F,3F)-O2 (4-1-5-1) 5% 3-HBB(2F,3F)-O2 (4-1-5-1) 11%」 は、本件発明1の「一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり」及び「一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計が20から70質量%であり」を充足する。 甲4発明の「誘電率異方性(25℃で測定)Δε=-2.7」は本件発明1の「誘電率異方性が負の」に相当する。 甲4発明の「ネマチック液晶組成物」は、本件発明1で除かれる(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含まないから、本件発明1の「(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲4発明は、「第一成分として、一般式(I)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、第二成分として、一般式(II)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、第三成分として、一般式(III)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、 一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、 一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計が20から70質量%である、誘電率異方性が負のネマチック液晶組成物。 ただし、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4-1> 本件発明1は一般式(I)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が30から80質量%であるのに対し、甲4発明は一般式(I)で表される化合物の含有量が8%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が8%である点。 <相違点4-2> 本件発明1は一般式(III)で表される化合物として一般式(III-F)で表される化合物を含有するのに対し、甲4発明はその化合物を含有しない点。 <相違点4-3> 本件発明1は、式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物を除くのに対し、甲4発明は3-HDhB(2F,3F)-O2(1-5-1)及び5-HDhB(2F,3F)-O2(1-5-1)のような式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物である点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、相違点4-3から検討する。 甲4は、「ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物」を目的(課題)とするところ[(0009])、甲4の[0045]には、化合物の特性として以下の記載がある(摘記4b参照)。 表省略 この表から、式(1)で表される化合物は、中程度ないし高い上限温度、適切な光学異方性、中程度ないし大きな負の誘電率異方性、大きな比抵抗のという特性を有することが理解できる。 また、甲4の請求項1~25のいずれにおいても、「式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物」が第一成分として規定され、甲4に記載される全ての実施例が、式(1)で表される化合物を必ず含んでいる。 そうすると、甲4は、上記課題を解決するための手段として式(1)で表される化合物を配合することを開示していると理解できるのであって、そうであれば、甲4発明の液晶組成物から式(1)で表される化合物を除くことなど動機づけられず、むしろ阻害要因が存在するといえる。 そして、このことは、他の証拠をみても覆らない。 (ウ)請求人の主張について 請求人は以下のとおり主張する。 a 「式(1)で表される化合物が請求項の第一成分とされていたとしても、このことは直接的に式(1)で表される化合物が甲4発明の課題を解決するための必須の化合物となるわけではない。」(第2弁駁書20頁21~23行) b 「甲4発明の課題は、上限温度、粘度、光学異方性、誘電率異方性、比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物を提供することである。そうすると、甲4に接した当業者は、式(2)及び式(4-1)の化合物は式(1)と同程度またはそれ以上の効果を発揮するものであるので、甲4発明の課題との関係で、式(1)の化合物を式(2)及び式(4-1)の化合物で代替することには何ら差し障りはないと考える。 そうすると、式(1)で表される化合物は必須成分に該当し得ず、甲4発明において式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物を除くことに何ら阻害要因はなく、甲4発明から式(1)で表される化合物を除き訂正発明1の構成に容易に想到し得る。」(第2弁駮書22頁7~17行) ・当審の判断 上記(イ)のとおり甲4は、甲4の課題を解決するための手段として式(1)で表される化合物を配合することを開示しているのだから、式(1)で表される化合物が甲4発明の課題を解決するための必須の化合物となるわけではないとの主張は根拠がない。 また、確かに、甲4の「化合物の特性」なる表2からは、式(1)で表される化合物の特性が式(2)及び式(4-1)の化合物の特性と同程度の評価であることが読み取れなくもないが、その評価はL、M、Sとの定性的なものにすぎず、これらを実際に使用して液体組成物にしたときの具体的な比較がされているわけでもないから、表2の記載をもって当業者は、式(2)及び式(4-1)の化合物で代替することには何ら差し障りはないと考えるとはいえない。 かえって甲4はこのような評価を踏まえてもなお、化合物(1)を第一成分とすることを開示しているのだから、甲4の記載に接した当業者は、式(1)で表される化合物は甲4の課題を解決するために必須の成分であると理解するといえる。 よって、請求人の主張の前記主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、本件発明1は、<相違点4-1>及び<相違点4-2>について検討するまでもなく、甲4に記載された発明、並びに、甲10、甲11及び乙2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件発明2~10 本件発明2~10は、本件発明1を引用してさらに限定するものであり、上記本件発明1と甲3発明との<相違点4-3>と同じ相違点を有するものであって、<相違点4-3>については前記(1)イで検討したとおりであり、甲4に記載された発明、並びに、甲10、甲11及び乙2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 6 無効理由4-5について (1)甲5発明の認定 甲5に記載の実施例の液晶組成物は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度を充足するものであるから(摘記5b参照)、実施例6として「 3-HO2OB(2F,3F)-O2 (1-1-1) 11% 3-BO2OB(2F,3Cl)-O2 (1-1-6) 2% 3-BO2OB(2Cl,3F)-O2 (1-1-7) 2% 3-HH-5 (2-1-1) 4% 3-HH-V1 (2-1-1) 10% V2-BB-1 (2-1-3) 15% 1V2-BB-1 (2-1-3) 10% 3-HHEH-3 (2-2-4) 5% 5-HBB(3F)B-3 (2-3-3) 5% 2-HBB(2F,3F)-O2 (3-9-1) 7% 3-HBB(2F,3F)-O2 (3-9-1) 7% V-HBB(2F,3F)-O2 (3-9-1) 7% V2-HBB(2F,3F)-O2 (3-9-1) 7% 3-HH1OB(2F,3F)-O2 (3-12-1) 8%からなり、 ネマチック相の上限温度NI=75.0℃;ネマチック相の下限温度Tc≦-30℃;光学異方性(屈折率異方性;25℃で測定)Δn=0.129;誘電率異方性(25℃で測定)Δε=-3.0;粘度(20℃で測定)η=20.0mPa・s.であるネマチック液晶組成物。」の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されているといえる(摘記5c参照)。 (2)対比・判断 ア 本件発明1 (ア)甲5発明との対比 甲5発明の「3-HH-5」、「3-HH-V1」及び「3-HHEH-3」は、表3を参照すれば(摘記5b参照)、いずれも、本件発明1の「第三成分として、一般式(III)で表される化合物」に含まれる。 甲5発明の「2-HBB(2F,3F)-O2」及び「3-HBB(2F,3F)-O2」は、表3を参照すれば(摘記5b参照)、いずれも、本件発明1の「第二成分として、一般式(II)で表される化合物」に含まれる。 甲5発明の「3-HH1OB(2F,3F)-O2」は、表3を参照すれば(摘記5b参照)、本件発明1の「第一成分として、一般式(I)で表される化合物」に含まれる。 甲5発明の「 2-HBB(2F,3F)-O2 (3-9-1) 7% 3-HBB(2F,3F)-O2 (3-9-1) 7%」及び「 3-HH1OB(2F,3F)-O2 3-12-1) 8%」は、本件発明1の「一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり」及び「一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計が20から70質量%である」を充足する。 甲5発明の「誘電率異方性(25℃で測定)Δε=-3.0」は本件発明1の「誘電率異方性が負の」に相当する。 甲5発明の「ネマチック液晶組成物」は、本件発明1で除かれる式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物を含まないから、本件発明1の「ただし、以下の式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物」、「を含有する液晶組成物を除く。」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲5発明は「第一成分として、一般式(I)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、第二成分として、一般式(II)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、第三成分として、一般式(III)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、 一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計が20から70質量%である誘電率異方性が負のネマチック液晶組成物。 ただし、以下の式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物を含有する液晶組成物を除く。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点5-1> 本件発明1は、一般式(I)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が30から80質量%であるのに対し、甲5発明は、一般式(I)で表される化合物の含有量が8%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が19%である点。 <相違点5-2> 本件発明1は一般式(III)で表される化合物として一般式(III-F)で表される化合物を含有するのに対し、甲5発明はその化合物を含有しない点。 <相違点5-3> 本件発明1は、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除くのに対し、甲5発明は、3-HO2OB(2F,3F)-O2(1-1-1)、3-BO2OB(2F,3Cl)-O2(1-1-6)及び3-BO2OB(2Cl,3F)-O2(1-1-7)のような(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を含む点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み相違点5-3から検討する。 甲5は、「ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物」目的(課題)とするところ(【0009】)、甲5の【0037】には、化合物の特性として以下の記載がある(摘記5b参照)。 この表から、式(1-1)で表される化合物及び(1-2)で表される化合物は、中程度ないし大きな光学異方性、中程度ないし大きな負の誘電率異方性、大きな比抵抗という特性を有することが理解できる。 また、甲5の請求項1~16のいずれにおいても、「式(1-1)及び式(1-2)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物」が第一成分として規定され、甲5の全ての実施例が、式(1-1)で表される化合物か式(1-2)で表される化合物を必ず含んでいる。 そうすると、甲5は、上記課題を解決するための手段として式(1-1)で表される化合物又は式(1-2)で表される化合物を配合することを開示していると理解できるのであって、そうであれば、甲5発明の液晶組成物から式(1-1)で表される化合物を除くことなど動機づけられず、むしろ阻害要因が存在するといえる。 そして、このことは、他の証拠をみても覆らない。 (ウ)請求人の主張について ・請求人の主張 請求人は以下のとおり主張する。 a 「式(1-1)及び式(1-2)で表される化合物が請求項の第一成分とされていたとしても、このことは直接的に式(1-1)及び式(1-2)で表される化合物が甲5発明の課題を解決するための必須の化合物となるわけではない。」(第2弁駮書29頁16~19行) b 「甲5に接した当業者は、式(3)の化合物は式(1-1)及び式(1-2)と同程度の効果を発揮するものであるので、甲5発明の課題との関係で、式(1-1)及び式(1-2)の化合物を式(3)の化合物で代替することには何ら差し障りはないと考える。 そうすると、式(1-1)及び式(1-2)で表される化合物は必須成分に該当し得ず、甲5発明において式(1-1)及び式(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除くことに何ら阻害要因はなく、甲5発明から式(1-1)及び式(1-2)で表される化合物を除き訂正発明1の構成に容易に想到し得る。」(第2弁駁書31頁4~12行) ・当審の判断 上記(イ)のとおり甲5は、甲5の課題を解決するための手段として式(1-1)で表される化合物又は式(1-2)で表される化合物を配合することを開示しているのだから、式(1-1)及び式(1-2)で表される化合物が甲5発明の課題を解決するための必須の化合物が甲5発明の課題を解決するための必須の化合物となるわけではないとの主張は根拠がない。 また、確かに、甲5の「化合物の特性」なる表2からは、式(1-1)で表される化合物、式(1-2)で表される化合物の特性が式(3)で表される化合物の特性と同程度の評価であることが読み取れなくもないが、その評価はL、M、Sとの定性的なものにすぎず、これらを実際に使用して液体組成物にしたときの具体的な比較がされているわけではないから、表2の記載をもって当業者は、式(1-1)及び式(1-2)の化合物を式(3)の化合物で代替することには何ら差し障りはないと考えるとはいえない。かえって甲5はこのような評価を踏まえてもなお、式(1-1)で表される化合物又は式(1-2)で表される化合物を第一成分とすることを開示しているのだから、甲5の記載に接した当業者は,式(1-1)で表される化合物又は式(1-3)で表される化合物は甲5の課題を解決するために必須であると理解するといえる。 よって、請求人の主張の前記主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、本件発明1は、<相違点5-1>及び<相違点5-2>について検討するまでもなく、甲5に記載された発明、並びに、甲10、甲11及び乙2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件発明2~10 本件発明2~10は、本件発明1を引用してさらに限定するものであり、上記本件発明1と甲3発明との<相違点5-3>と同じ相違点を有するものであって、<相違点5-3>については前記(1)イで検討したとおりであり、甲5に記載された発明、並びに、甲10、甲11及び乙2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 7 無効理由4-6について (1)甲6発明の認定 甲6に記載の実施例の液晶組成物は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度を充足するものであるから(摘記6b参照)、実施例3として「 V-H1OB(2F,3F)-O2 (1-3-1) 4% V2-H1OB(2F,3F)-O2 (1-3-1) 4% V-HH2B(2F,3F)-O2 (1-5-1) 5% V2-HH2B(2F,3F)-O2 (1-5-1) 5% 3-HB(2F,3Cl)-O2 (2-1-1) 5% 3-HBB(2F,3Cl)-O2 (2-3-1) 2% 5-HBB(2F,3Cl)-O2 (2-3-1) 3% V-HH-3 (3-1-1) 28% 3-HH-4 (3-1-1) 10% V2-BB-1 (3-3-1) 4% 5-HBB(F)B-2 (3-12-1) 4% 5-HBB(F)B-3 (3-12-1) 3% 3-HB(2F,3F)-O2 (4-1-1) 5% 5-HB(2F,3F)-O2 (4-1-1) 5% 3-HH1OB(2F,3F)-O2 (4-6-1) 5% 4-HH1OB(2F,3F)-O2 (4-6-1) 3% 5-HH1OB(2F,3F)-O2 (4-6-1) 5%からなり、 ネマチック相の上限温度NI=74.6℃;ネマチック相の下限温度Tc≦-20℃;光学異方性(屈折率異方性;25℃で測定)Δn=0.086;粘度(バルク粘度;20℃で測定;mPa・s)η=15.2mPa・s;誘電率異方性(25℃で測定)Δε=-3.4;応答時間(25℃で測定;ms)τ=5.9ms;電圧保持率(25℃)VHR-1=99.0%;電圧保持率(80℃)VHR-2=98.1%;電圧保持率(25℃)VHR-3=98.2%であるネマチック液晶組成物。」の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されているといえる(摘記6c参照)。 (2)対比・判断 ア 本件発明1 (ア)甲6発明との対比 甲6発明の「3-HH-4」は、表3を参照すると(摘記6c参照)、本件発明1の「第三成分として、一般式(III)で表される化合物」に含まれる。 甲6発明の「3-HH1OB(2F,3F)-O2」、「4-HH1OB(2F,3F)-O2」及び「5-HH1OB(2F,3F)-O2」は、表3を参照すると(摘記6c参照)、いずれも、本件発明1の「第一成分として、一般式(I))で表される化合物」に含まれ、甲6発明の「 3-HH1OB(2F,3F)-O2 (4-6-1) 5% 4-HH1OB(2F,3F)-O2 (4-6-1) 3% 5-HH1OB(2F,3F)-O2 (4-6-1) 5%」は本件発明1の「一般式(I)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり」を充足する。 甲6発明の「Δε=-3.4」は本件発明の「誘電率異方性が負の」に相当する。 甲6発明の「ネマチック液晶組成物」は、本件発明1で除かれる式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含まないから、本件発明1の「ただし、以下の式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。)」を充足する。 そうすると、本件発明1と甲6発明は「第一成分として、一般式(I)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、 第三成分として、一般式(III)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、 一般式(I)で表される化合物の含有量が10から35質量%である誘電率異方性が負のネマチック液晶組成物。 ただし、以下の式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物、(1-1)で表される化合物を含有する液晶組成物、及び(1-2)で表される化合物を含有する液晶組成物を除く。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点6-1> 本件発明1は、第二成分として、一般式(II)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が30から80質量%であり、 一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計が20から70質量%であるのに対し、甲6発明は一般式(II)で表される化合物を含有せず、一般式(III)で表される化合物の含有量が10質量%であり、一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計が13%である点。 <相違点6-2> 本件発明1は、一般式(III)で表される化合物として一般式(III-F)で表される化合物を1種又は2種以上含有するのに対し、 甲6発明はその化合物を含有しない点。 (イ)相違点についての検討 <相違点6-1>について 前記1によれば、本件発明のネマチック液晶組成物の組成は、液晶組成物の、屈折率異方性、粘度、誘電率異方性等の観点から、一般式(I)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(II)で表される化合物の含有量が10から35質量%であり、一般式(I)及び(II)で表される化合物の含有量の合計が20から70質量%であり、一般式(III)で表される化合物の含有量が35から80質量%であると調整されたものであるといえる。 これに対して、甲6発明の3-HB(2F,3F)-O2、5-HB(2F,3F)-O2、3-HH1OB(2F,3F)-O2、4-HH1OB(2F,3F)-O2及び5-HH1OB(2F,3F)-O2は、甲6における「第四成分」として配合されたものであるところ、甲6には「第四成分」として、式(4-1)~(4-7)で表される化合物が記載され(摘記6a参照)、このうち式(4-7)で表される化合物は、R6が炭素数1から10のアルキルであり、R2が炭素数1から10のアルキル又はアルコキシである場合、本件発明1の一般式(II)で表される化合物に相当するものである。 しかしながら、甲6には、甲6発明で使用された上記「第四成分」のうち、3-HB(2F,3F)-O2(本件発明の一般式(I)、(II)、(III)で表される化合物のいずれにも相当しない)と、5-HB(2F,3F)-O2、3-HH1OB(2F,3F)-O2、4-HH1OB(2F,3F)-O2及び5-HH1OB(2F,3F)-O2(いずれも本件発明の一般式(I)の化合物に相当)を区別して配合量を調整することや、5-HB(2F,3F)-O2、3-HH1OB(2F,3F)-O2、4-HH1OB(2F,3F)-O2及び5-HH1OB(2F,3F)-O2の含有量はそのままにして、他の「第四成分」である式(4-7)で表される化合物のうち、R6が炭素数1から10のアルキルであり、R2が炭素数1から10のアルキル又はアルコキシである化合物を追加することなど記載も示唆もされていない。 そうすると、甲6発明の液晶組成物において、「第四成分」として式(4-7)で表される化合物のうち、R6が炭素数1から10のアルキルであり、R2が炭素数1から10のアルキル又はアルコキシである化合物を追加することは何ら動機づけられず、ましてや、当該化合物の含有量を10から35質量%とすることの動機付けがあるとはいえない。 また、他の証拠をみても、甲6発明の液晶組成物において、各成分の配合量を調整し、本件発明1の上記相違点6-1にかかる組成とすることの動機付けがあるとはいえない。 <相違点6-2>について 甲6発明のV2-BB-1は、甲6における「第三成分」として配合されたものであるところ、甲6には「第三成分」として、式(3-1)~(3-12)で表される化合物が記載され(…摘記箇所)、このうち式(3-3)で表される化合物は、R4及びR5のいずれもが炭素数1から10のアルキルである場合、又はいずれか一方が炭素数1から10のアルキルであり他方が炭素数1から10のアルコキシである場合、本件発明1の一般式(III-F)で表される化合物に相当する。 しかしながら、甲6には、甲6発明で使用された上記「第三成分」のうち、特に式(3-3)で表される化合物のうち、R4及びR5のいずれもが炭素数1から10のアルキルである化合物、又はいずれか一方が炭素数1から10のアルキルであり他方が炭素数1から10のアルコキシである化合物を配合することの記載はないし、かかる化合物を使用した実施例もない。 ここで、乙2には、液晶化合物においてビフェニル誘導体の両側の側鎖がアルキル基であるものがビフェニル誘導体の片側の側鎖がアルケニル基であるものより粘度を下げる旨の記載がある(摘記12a、12b参照)が、甲6には「第三成分」である化合物のうち特に式(3-3)で表される化合物が粘度を下げるといった記載もないのであるから、乙2の当該記載をもっても、甲6発明において、「第三成分」として、式(3-1)~(3-12)で表される化合物から式(3-3)で表される化合物を選択し、さらに、当該化合物のうち、R4及びR5のいずれもが炭素数1から10のアルキルであるか、又はいずれか一方が炭素数1から10のアルキルであり他方が炭素数1から10のアルコキシである化合物を選択することが動機づけられるとはいえない。 よって、相違点6-2に係る事項は、当業者が容易に想到しうるものではない。 (ウ)請求人の主張について ・請求人の主張 請求人は以下のとおり主張する。 a 「甲6の明細書の[0031]及び請求項17に記載されているように、第四成分が、式(4-1)から式(4-7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であることから、第四成分として、化合物(4-3)、(4-6)、(4-7)を合わせて包含し得る態様は、当該明細書の記載から一切排除されておらず、むしろ明記されているといえる。」(第一弁駁書88頁5~8行) b 「画像の固着問題を解消するために、アルケニル基を回避することは、技術常識若しくは周知であることは、上述した通りである。したがって、甲6の実施例に開示の化合物中のアルケニル基を、アルキル基やアルコキシ基に置き換えることは、当業者が適宜に成し得る事項であることが言うまでもない。」(第一弁駁書88頁5~8行) c 第四成分として、「式(4-1)から式(4-7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物」との開示については、決して式(4-1)から(4-7)で表される化合物のうちのいずれか1つを意味するものではなく、これら化合物の組合せを当然に包含することはいうまでもない。また、例えば、甲第6号証の実施例3には、複数の(4-1-1)の化合物と、複数の(4-6-1)の化合物とを併せて含有することが開示され、実施例5には、(4-2-1)の化合物と(4-4-1)の化合物を併せて含有することが開示され、実施例6には、(4-3-1)の化合物と(4-5-1)の化合物とを併せて含有することが開示されていることから、これら例示された(4-1)から(4-7)の化合物を積極的に組み合わせる動機付けを示しているほかにならない。」(令和5年7月5日付け上申書25頁脚注14) ・当審の判断 上記a及びcに関し、甲6には「第四成分」として式(4-1)から(4-7)の化合物が記載されているが、これらの化合物のうち特定の化合物を他と区別して取り扱う旨の記載はない。すなわち、甲6では単に「第四成分」として式(4-1)から式(4-7)で表される化合物が列挙されているにすぎないし、実施例に複数の「第四成分」を使用した例が記載されているといっても、式(4-7)で表される化合物を他の第四成分と組み合わせて用いる実施例が記載されているわけでもない。また、複数種類の第四成分を組み合わせた方がよいとの記載もない。 そうすると、化合物(4-3)、(4-6)、(4-7)を合わせて包含し得る態様は、明記されているとか、式(4-1)から(4-7)で表される化合物を積極的に組み合わせる動機付けを示しているということはできない。 また、上記のとおり甲6には(4-1)から(4-7)の化合物のうち特定の化合物を他と区別して取り扱う旨の記載はないのだから、甲6に式(II)の化合物の含有量が教示されているとはいえないし、仮に当該化合物を本件発明で規定される配合量で配合することが周知であったとしても、そのような配合量を甲6発明に適用する理由もない。 そうであれば、そもそも甲6発明において本件発明の式(II)の化合物を本件発明で特定される量で配合されることが容易ではないのだから、仮に上記bのとおり画像の固着問題を解消するために、アルケニル基を回避することは、技術常識若しくは周知であったとしても、このことは、上記の相違点6-1、6-2についての判断を何ら左右しない。 よって、上記主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、本件発明1は、甲6に記載された発明、並びに、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件発明2~10 本件発明2~10は、本件発明1を引用してさらに限定するものであり、上記本件発明1と甲6発明との<相違点6-1>及び<相違点6-2>と同じ相違点を有するものであって、<相違点6-1>及び<相違点6-2>については前記(1)イで検討したとおりであり、甲6に記載された発明、並びに、甲10及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 第10 明確性要件(無効理由5)について 1 明確性要件の考え方について 特許法36条6項2号の定める要件を充足するか否かは、すなわち、発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 以下、この観点に従って検討する。 2 判断 本件発明1~10は上記第3のとおりであって格別、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとすべき点は見当たらない。 3 請求人の主張について 請求人は、前記第4の2(1)のとおり、明確性要件に関し、無効理由5-1、5-2があると主張する。 しかしながら、発明が明確であるか否かは上記1の考え方に従うべきところ、5-1に関し、請求項1は一般式(III-F)で表される化合物を含有することを規定するのであって、その下限値がないからといって特許請求の範囲が不明確であるということにはならない。 また、一般式(III)の定義に不明確な点はなく、一般式(III)で表される化合物はかかる定義による化合物であることは明確であるから、5-2も理由がない。 よって、請求人の主張はいずれも失当である。 4 小括 以上のとおり、本件発明1~10は明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定に違背するものとはいえない。 第11 新規事項(無効理由6)について 1 補正事項 平成26年11月21日の手続補正による補正は、本件特許請求の範囲の請求項1の記載について、少なくとも、一般式(III)-Fで表される化合物を必須成分とするものである。 そこで、当該補正が、願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」といい、特許請求の範囲及び図面を併せて「当初明細書等」という。)、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものといえるか否か、すなわち、「当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである」か否か(知財高判平20.5.30、平18(行ケ)第10563号)について、以下検討する。 2 判断 本件明細書には、当初から第三成分として一般式(III-F)が記載されており、実施例1~7の全ての液晶組成物に一般式(III-F)で表される化合物が含まれている。 このように、一般式(III-F)で表される化合物を選択した液晶組成物は、当初明細書に記載されていたのであるから、前記補正は、新たな技術的事項を導入しないものであるといえる。 3 請求人の主張について 請求人は、前記第4の2(1)のとおり、新規事項追加に関し、一般式(III-F)で表される化合物を必須成分とする補正は新規事項の追加にあたると主張する。 請求人は、本件明細書には、一般式(I-III)で表される化合物を一般式(III)で表される化合物の中から必須成分として選択すること、及び式(I)、(II)、(III)および(III-F)と式(I)、(II)および(III)の特定の量の組み合わせが記載されていないことを問題にするようであるが、上記2のとおり、本件明細書には、一般式(III-F)で表される化合物が記載されており、実施例1~7の全ての組成物に一般式(III-F)で表される化合物が含まれていたのだから、一般式(I-III)で表される化合物を一般式(III)で表される化合物の中から必須成分として選択すること、及び式(I)、(II)、(III)および(III-F)と式(I)、(II)および(III)の特定の量の組み合わせについても、記載されていたあるいは記載されていたに等しいものといえる。 よって、上記主張は失当である。 4 小括 以上のとおり、前記補正は新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項で規定を満たすものでないとはいえない。 第12 結び 以上によれば、請求人が主張する無効理由及び証拠方法並びに令和5年8月29日付け無効理由通知における理由によっては、本件発明1~10についての特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-800045

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