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特許異議申立

2020-700414

鉄心製品の製造方法及び鉄心製品

審判番号
2020-700414
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-144338
登録番号
6626934
請求日
2020年06月16日
審決日
2021年08月25日
公報発行日
2022年06月24日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】株式会社三井ハイテック
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】石坂 泰紀
  • 【権利者代理人】松澤 寿昭
  • 【異議申立人】中野 圭二
審判長/審判官
  • 審判長 佐々木 芳枝
  • 審判官 柿崎 拓
  • 審判官 田合 弘幸
分類
P1651.113-ZDA(H02K) / P1651.121-ZDA(H02K) / P1651.536-ZDA(H02K) / P1651.537-ZDA(H02K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法36条6項2号特許法113条2号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第4号、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6626934号発明「鉄心製品の製造方法及び鉄心製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6626934号の明細書、特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕、3について訂正することを認める。 特許第6626934号の請求項3に係る特許を取り消す。 同請求項1ないし2に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6626934号の請求項1~3に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成30年7月31日に出願され、令和元年12月6日にその特許権の設定登録がされ、令和元年12月25日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和2年 6月16日 : 特許異議申立人 中野 圭二(以下、「特許異議申立人」という。)による請求項1~3に係る特許に対する特許異議の申立て 令和2年 8月31日付け: 取消理由通知書 令和2年10月21日 : 特許権者との面接 令和2年11月 5日付け: 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和2年11月18日付け: 手続補正指令書(方式) 令和2年12月15日付け: 特許権者による手続補正書の提出 令和3年 3月24日付け: 取消理由通知書(決定の予告) なお、令和3年1月13日付けで通知書(訂正請求があった旨の通知)を特許異議申立人に送付したが、特許異議申立人による意見書の提出はされていない。また、令和3年3月24日付け取消理由通知書(決定の予告)により、特許権者に取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者による意見書の提出はされていない。 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 特許権者が令和2年11月5日にした訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである(下線は、訂正箇所を当審で付したものである。)。 (1)訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「高さ方向に延びるように」とあるのを、「中心軸の延在方向に延びるように、」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「鉄心本体に設けられた樹脂注入部」とあるのを、「複数の打抜部材が積層された積層体に設けられた樹脂注入部」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「・・・溶接して鉄心製品を構成することとを含み」とあるのを、「前記樹脂注入部に溶融樹脂を注入することの後に、・・・溶接して鉄心製品を構成することとを含み」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「前記鉄心本体を溶接して鉄心製品を構成する」とあるのを、「前記積層体の周面を・・・溶接して鉄心製品を構成する」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「溶接」とあるのを、「レーザ溶接」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。 (6)訂正事項6 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「前記溶接ビードと前記樹脂注入部との間に設定されるバッファ領域」とあるのを、「前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。 (7)訂正事項7 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「前記鉄心本体を溶接することを含む」とあるのを、「前記積層体の周面を・・・溶接することを含む」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。 (8)訂正事項8 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「高さ方向に延びる樹脂注入部が設けられた」とあるのを、「中心軸の延在方向に延びる樹脂注入部が設けられ、」と訂正する。 (9)訂正事項9 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「樹脂注入部が設けられた鉄心本体」とあるのを、「樹脂注入部が設けられ、複数の打抜部材が積層されて構成された積層体」と訂正する。 (10)訂正事項10 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「前記鉄心本体の周面に形成された溶接ビード」とあるのを、「前記積層体の周面に形成された溶接ビード」と訂正する。 (11)訂正事項11 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「前記溶接ビードと前記樹脂注入部との間に設定されるバッファ領域」とあるのを、「前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域」と訂正する。 (12)訂正事項12 本件訂正前の明細書の段落【0008】に記載された「【図9】図9は、溶接ビードと磁石挿入孔のバッファ領域との関係の他の例を説明するための上面図である。」を削除する。 (13)訂正事項13 本件訂正前の明細書の段落【0066】を削除する。 (14)訂正事項14 本件訂正前の明細書の段落【0067】の「(2)」を「(1)」と訂正し、同段落【0068】の「(3)」を「(2)」と訂正し、同段落【0069】の「(4)」を「(3)」と訂正し、同段落【0070】の「(5)」を「(4)」と訂正し、同段落【0071】の「(6)」を「(5)」と訂正し、同段落【0072】の「(7)」を「(6)」と訂正し、同段落【0073】の「(8)」を「(7)」と訂正し、同段落【0074】の「(9)」を「(8)」と訂正し、同段落【0075】の「(10)」を「(9)」と訂正し、同段落【0076】の「(11)」を「(10)」と訂正し、同段落【0077】の「(12)」を「(11)」と訂正する。 (15)訂正事項15 本件訂正前の明細書の段落【0081】の「R1,R2・・・バッファ領域」を「R1・・・バッファ領域」と訂正する。 (16)訂正事項16 本件訂正前の図面の図9を削除する。 <一群の請求項について> ここで、本件訂正前の請求項1~2について、請求項2は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1~7によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~2に対応する本件訂正後の請求項1~2は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。したがって、訂正事項1~7に係る訂正は、一群の請求項[1~2]に対して請求されたものである。 そして、訂正事項8~11に係る訂正は、請求項3に対して請求されたものであり、明細書又は図面に係る訂正事項12~16は、一群の請求項[1~2]及び請求項3について請求されたものである。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1に係る訂正は、本件訂正前の請求項1の記載において、樹脂注入部が延びる方向について不明瞭であった「高さ」方向を、「中心軸の延在」方向とすることにより明瞭にしようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、本件特許の明細書の段落【0015】の記載及び図面に基づき、磁石挿入孔16(樹脂注入部)が中心軸Axの延在方向に延びることが把握できるから、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。また、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2に係る訂正は、本件訂正前の請求項1の記載において、樹脂注入部が設けられる対象であった「鉄心本体」を、概念的により下位の、「鉄心製品」における「複数の打抜部材が積層された積層体」に具体的に特定し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件特許の明細書の段落【0012】、【0015】、【0018】の記載及び図面に基づき、複数の打抜部材Wが積み重ねられた積層体10に磁石挿入孔16(樹脂注入部)が設けられることが把握できるから、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。また、訂正事項2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3に係る訂正は、本件訂正前の請求項1における「・・・溶接して鉄心製品を構成することとを含み」の記載を「前記樹脂注入部に溶融樹脂を注入することの後に、・・・溶接して鉄心製品を構成することとを含み」とすることにより、「溶接して鉄心製品を構成すること」が、「樹脂注入部に溶融樹脂を注入することの後に」行われることを明瞭にしようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、本件特許の明細書の段落【0052】~【0060】の記載及び図面に基づき、積層体10の磁石挿入孔16(樹脂注入部)に溶融樹脂を注入することの後に溶接することが把握できるから、訂正事項3に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。また、訂正事項3に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4に係る訂正は、本件訂正前の請求項1の記載において、「溶接して鉄心製品を構成すること」の対象であった「鉄心本体」を、概念的により下位の、「鉄心製品」における「積層体の周面」に具体的に特定し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件特許の明細書の段落【0026】、【0057】、【0074】の記載及び図面に基づき、積層体10の周面を溶接して回転体6(鉄心製品)を構成することが把握できるから、訂正事項4に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。また、訂正事項4に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5に係る訂正は、本件訂正前の請求項1の記載における「溶接」の手法を概念的により下位の「レーザ溶接」に具体的に特定し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件特許の明細書の段落【0047】、【0057】、【0059】の記載及び図面に基づき、溶接はレーザ溶接であり、レーザ溶接して回転体6(鉄心製品)を構成すること、溶接ビードがレーザ溶接によって形成されること、及び積層体10の周面をレーザ溶接することが把握できるから、訂正事項5に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。また、訂正事項5に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)訂正事項6について 訂正事項6に係る訂正は、本件訂正前の請求項1の記載において、定義の明瞭でない「バッファ領域」が、「前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定された」ものであることを明瞭にしようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、本件特許の明細書の段落【0058】、【0061】、【0062】及び図面に基づき、バッファ領域R1が磁石挿入孔16(樹脂注入部)を囲むように設定されることが把握でき、また、磁石挿入孔16に永久磁石12を樹脂封止する際、溶融樹脂の有機成分が磁石挿入孔16の周囲に拡がることがあり、その有機成分が拡がる領域に溶接ビードB1が重なって有機成分が発泡してしまうことを避けるために溶接ビードB1が到達しないような領域がバッファ領域R1であることを踏まえれば、バッファ領域R1が磁石挿入孔16への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が磁石挿入孔16の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたものであることも当業者は当然に把握できるから、訂正事項6に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。また、訂正事項6に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (7)訂正事項7について 訂正事項7に係る訂正は、本件訂正前の請求項1の記載において、「溶接すること」の対象であった「鉄心本体」を、概念的により下位の、「鉄心製品」における「積層体の周面」に具体的に特定し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件特許の明細書の段落【0026】、【0057】、【0074】の記載及び図面に基づき、積層体10の周面を溶接することが把握できるから、訂正事項7に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。また、訂正事項7に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (8)訂正事項8について 訂正事項8に係る訂正は、本件訂正前の請求項3の記載において、樹脂注入部が延びる方向について不明瞭であった「高さ」方向を、「中心軸の延在」方向とすることにより明瞭にしようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、前記(1)で示したとおり、訂正事項8に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (9)訂正事項9について 訂正事項9に係る訂正は、本件訂正前の請求項3の記載において、樹脂注入部が設けられる対象であった「鉄心本体」を、概念的により下位の、「鉄心製品」における「複数の打抜部材が積層された積層体」に具体的に特定し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、前記(2)で示したとおり、訂正事項9に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (10)訂正事項10について 訂正事項10に係る訂正は、本件訂正前の請求項3の記載において、溶接ビードが形成される箇所であった「鉄心本体」の周面を、概念的により下位の、「鉄心製品」における「積層体」の周面に具体的に特定し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、本件特許の明細書の段落【0026】、【0057】、【0074】の記載及び図面に基づき、積層体10の周面に溶接ビードが形成されることが把握できるから、訂正事項10に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。また、訂正事項10に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (11)訂正事項11について 訂正事項11に係る訂正は、本件訂正前の請求項3の記載において、定義の明瞭でない「バッファ領域」が、「前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定された」ものであることを明瞭にしようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、前記(6)で示したとおり、訂正事項11に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (12)訂正事項12~13、15~16について 訂正事項12~13、15~16に係る訂正は、訂正事項6及び訂正事項11により不明瞭であった「バッファ領域」の定義を明瞭にしようとしたことにあわせて、本件訂正前の明細書又は図面におけるバッファ領域R2に関する記載を削除したもので、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするもので、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (13)訂正事項14について 訂正事項14に係る訂正は、訂正事項13によって明細書の段落【0066】が削除されたことに伴い、明細書の後続の段落【0067】~【0077】に関して、各段落の冒頭に記載されている括弧内の数字を繰り上げるための訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするもので、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3.小括 前記のとおり、訂正事項1~16に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。なお、本件においては、本件訂正前の全ての請求項1~3について特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 したがって、明細書、特許請求の範囲及び図面を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲及び訂正図面のとおり、本件訂正後の請求項[1-2]、3について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~3に係る発明(以下、請求項順に「本件特許発明1」などといい、これらの発明をまとめて「本件特許発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 [本件特許発明1] 中心軸の延在方向に延びるように、複数の打抜部材が積層された積層体に設けられた樹脂注入部に溶融樹脂を注入することと、 前記樹脂注入部に溶融樹脂を注入することの後に、前記積層体の周面をレーザ溶接して鉄心製品を構成することとを含み、 前記鉄心製品を構成することは、レーザ溶接によって形成される溶接ビードが、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達しないように、前記積層体の周面をレーザ溶接することを含む、鉄心製品の製造方法。 [本件特許発明2] 前記溶接ビードと前記樹脂注入部との間は0.5mm以上離間している、請求項1に記載の方法。 [本件特許発明3] 中心軸の延在方向に延びる樹脂注入部が設けられ、複数の打抜部材が積層されて構成された積層体と、 前記樹脂注入部に形成された樹脂部と、 前記積層体の周面に形成された溶接ビードとを備え、 前記溶接ビードは、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達していない、鉄心製品。 第4 取消理由(決定の予告)の概要 本件訂正後の請求項1~3に係る特許のうち、請求項3に係る特許に対して、当審が令和3年3月24日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 1(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載に不備があり、本件特許発明3が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。 2(進歩性)本件特許発明3は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第6号証(特開2018-82539号公報)に記載された発明、甲第6号証に記載された技術的事項、及び電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証(国際公開第2011/114414号)に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第5 当審の判断 1.引用文献の記載 (1)甲第1号証の記載 特許異議申立人が提出した甲第1号証(特開2006-204068号公報)には以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下、同様である。)。 ア「【0016】 図1及び図2に模式的に示すように、本発明の一実施の形態に係る永久磁石の樹脂封止装置10は、複数の鉄心片が積層され中央に軸孔11を備えた回転子積層鉄心12に形成された複数(本実施の形態では8個)の磁石挿入孔13に挿入された永久磁石14を、樹脂部材の一例である熱硬化性樹脂15を磁石挿入孔13に注入して固定する装置である。」 イ「【0040】 次に、永久磁石の樹脂封止装置10を用いた本発明の一実施の形態に係る永久磁石の樹脂封止方法について、主として図10を参照しながら説明する。 (a)前工程から送られてきた、永久磁石14が磁石挿入孔13に挿入され搬送トレイ16にセットされた回転子積層鉄心12を別途搬送手段等を用いて下型17上に搬送し、上型21(以下、キャビティブロック74も含む)に対して位置決めして固定する(回転子積層鉄心の供給作業)。」 ウ「【0044】 このように、熱硬化性樹脂15の原料18を加熱して(約170℃近傍)、溶かして回転子積層鉄心12の上面から磁石挿入孔13内に充填するので、熱硬化性樹脂15が磁石挿入孔13内に容易に入る。」 エ 前記ア及び図1によると、磁石挿入孔13は、軸孔11の延びる方向と同じ方向に延びているから、磁石挿入孔13は、軸孔11の延びる方向と同じ方向に延びるように、複数の鉄心片が積層された回転子積層鉄心12に形成されたものである。 オ 前記イ及び前記ウによると、永久磁石の樹脂封止方法は、磁石挿入孔13に溶かした熱硬化性樹脂15の原料18を充填することを含むものである。 (2)甲第1号証に記載された発明 前記(1)アないしオの記載及び図面を総合すると、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 [甲1発明] 「軸孔11の延びる方向と同じ方向に延びるように、複数の鉄心片が積層された回転子積層鉄心12に形成された磁石挿入孔13に溶かした熱硬化性樹脂15の原料18を充填することを含む、永久磁石の樹脂封止方法。」 (3)甲第6号証の記載 特許異議申立人が提出し、前記第4の取消理由(決定の予告)で引用した甲第6号証には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ア「【0021】 <第1実施形態> [固定子積層鉄心の構成] まず、図1及び図2を参照して、固定子積層鉄心1の構成について説明する。固定子積層鉄心1は、固定子(ステータ)の一部である。固定子が回転子(ロータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。」 イ「【0023】 固定子積層鉄心1は、複数の打抜部材B1(鉄心部材)が積み重ねられた積層体10によって構成されている。打抜部材B1は、金属板(例えば、電磁鋼板)が所定形状に打ち抜かれた板状体である。当該金属板の厚さは、完全に均一ではなく、僅かに変動している。そのため、複数の打抜部材B1が積層されてなる積層体10には、図2に示されるように、積厚に偏りが生ずる場合がある。積層体10の積厚に偏りが存在すると、積層体10の端面(図2においては上端面)が斜めに傾斜した状態となる。」 ウ「【0030】 各溶接部15はそれぞれ、積層体10の外周面であって各耳金部13の頂点近傍に形成されている。各溶接部15は、積層体10の一端面から他端面にかけて中心軸Ax1方向(積層方向)に延びる溶接ビードであり、複数の打抜部材B1を接合している。積層体10の外周面には、少なくとも一つの溶接部15が形成されていてもよい。複数の単位ブロックが積層されて積層体10が構成されている場合、各溶接部15は、積層体10の一端面から他端面にかけて全体的に延びているのではなく、各単位ブロック同士の境界部分を接合する複数の溶接スポットであってもよい。すなわち、この場合、複数の溶接スポットは、各単位ブロック同士の境界部分に位置するように互いに離間しながら中心軸Ax方向に並んでいる。」 エ「【0032】 次に、図3に示される加圧装置100(積層鉄心の製造装置)により積層体10を加圧する(図5のステップS12)。ここで、加圧装置100について説明する。加圧装置100は、一対の挟持部材101,102と、保持部103と、昇降機構104と、溶接機105と、コントローラ106(制御部)とを備える。」 オ「【0041】 次に、挟持部材101,102によって積層体10が加圧された状態で、図4に示されるように、積層体10の外周面であって各耳金部13の頂点近傍を溶接機105によって溶接する(図5のステップS13)。具体的には、コントローラ106が駆動機構105cに指示して、溶接トーチ105aの先端が耳金部13の頂点近傍に対面した状態を保持したまま、溶接トーチ105aを積層体10の上端面から下端面に向けて移動させる。このとき同時に、コントローラ106が供給機構105bに指示して、ワイヤを溶接トーチ105aに供給させる。これにより、積層体10の外周面であって各耳金部13の頂点近傍に、中心軸Ax方向(積層方向)に延びる溶接部15(溶接ビード)が形成される。」 カ「【0046】 <第2実施形態> [回転子積層鉄心の構成] 続いて、図6及び図7を参照して、回転子積層鉄心2の構成について説明する。回転子積層鉄心2は、回転子(ロータ)の一部である。回転子は、回転子積層鉄心2に端面板及びシャフトが取り付けられてなる。回転子が固定子(ステータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。回転子積層鉄心2は、図6に示されるように、積層体20と、複数の永久磁石22と、複数の樹脂材料23とを備える。 【0047】 積層体20は、円筒状を呈している。すなわち、積層体20の中央部には、中心軸Ax2に沿って延びるように積層体20を貫通する軸孔20aが設けられている。積層体20は、複数の打抜部材B2(鉄心部材)が積み重ねられて構成されている。打抜部材B2は、金属板(例えば、電磁鋼板)が所定形状に打ち抜かれた板状体である。当該金属板の厚さは、完全に均一ではなく、僅かに変動している。そのため、複数の打抜部材B2が積層されてなる積層体20には、図7に示されるように、積厚に偏りが生ずる場合がある。積層体20の積厚に偏りが存在すると、積層体20の端面(図7においては上端面)が斜めに傾斜した状態となる。」 キ「【0049】 積層体20には、複数の磁石挿入孔21(貫通孔)が形成されている図6に示される形態では、積層体20には8個の磁石挿入孔21が形成されている。磁石挿入孔21は、図7に示されるように、中心軸Ax2(積層方向)に沿って延びると共に積層体20を貫通している。」 ク「【0054】 樹脂材料23は、永久磁石22が挿入された後の磁石挿入孔21内に充填されている。樹脂材料23は、永久磁石22を磁石挿入孔21内において固定する機能と、上下方向で隣り合う打抜部材B2同士を接合する機能とを有する。樹脂材料23としては、例えば熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂と、硬化開始剤と、添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。添加剤としては、フィラー、難燃剤、応力低下剤などが挙げられる。なお、樹脂材料23として熱可塑性樹脂を使用してもよい。」 ケ「【0055】 [回転子積層鉄心の製造方法] 続いて、図8~図10を参照して、回転子積層鉄心2の製造方法について説明する。まず、図示しない打抜装置を用いて、帯状の金属板(電磁鋼板)を所定形状に打ち抜いて打抜部材B2を形成しつつ、複数の打抜部材B2を積み重ねて、積層体20を形成する(図10のステップS21)。 次に、積層体20の各磁石挿入孔21内に永久磁石22を挿入する(図10のステップS22)。 【0056】 次に、図8に示される樹脂充填装置200(積層鉄心の製造装置)により積層体20を加圧する(図10のステップS23)。ここで、樹脂充填装置200について説明する。樹脂充填装置200は、一対の挟持部材201,202と、複数の直動ガイド207と、保持部203と、昇降機構204と、充填機205と、コントローラ206(制御部)とを備える。」 コ「【0066】 次に、挟持部材201,202によって積層体20が加圧された状態で、図9に示されるように、各磁石挿入孔21内に樹脂を充填する(図10のステップS24)。具体的には、まず、各樹脂流路202b内に樹脂ペレットPを配置する。樹脂ペレットPは、円柱形状を呈する固体状の樹脂である。続いて、各樹脂流路202bにそれぞれプランジャ205aを挿入する。この状態で、コントローラ206がヒータ202c及び駆動機構205bに指示して、樹脂ペレットPを溶融させつつ、溶融状態の樹脂をプランジャ205aによって樹脂流路202bから磁石挿入孔21内に押し出させる。各磁石挿入孔21内に充填された溶融樹脂が固化することにより、各永久磁石22が樹脂材料23によって各磁石挿入孔21内に固定される。 【0067】 以上により、回転子積層鉄心2が得られる。その後、軸孔20aにシャフトを挿通して固定し、回転子積層鉄心2の両端面に対して端面板をそれぞれ配置する。こうして、回転子積層鉄心2と、シャフトと、端面板とを備える回転子が得られる。」 サ「【0074】 固定子積層鉄心1を製造する際に、積層体10の貫通孔に樹脂を充填する工程が存在する場合には、第2実施形態に係る樹脂充填装置200を用いて樹脂充填処理を実施してもよい。回転子積層鉄心2を製造する際に、積層体20に溶接を施す工程が存在する場合には、第1実施形態に係る加圧装置100を用いて溶接処理を実施してもよい。」 シ 前記カの段落【0047】、前記キ及び図面によると、積層体20は、中心軸Ax2に沿って延びる磁石挿入孔21が形成されるもので、複数の打抜部材B2が積層されて構成されたものである。また、磁石挿入孔21は、中心軸Ax2に沿って延びるように、複数の打抜部材B2が積層された積層体20に形成されたものである。 ス 前記カの段落【0046】、前記ク、前記ケ、前記コの段落【0066】及び図面によると、樹脂材料23は、磁石挿入孔21に充填されるものである。また、回転子積層鉄心2の製造方法は、磁石挿入孔21に溶融樹脂を充填する工程を含むものである。 セ 前記サ及び前記シによると、回転子積層鉄心2について、複数の打抜部材B2が積層されて構成されている積層体20に溶接を施す工程が存在する場合には、加圧装置100を用いて溶接処理を実施してもよいものである。また、回転子積層鉄心2の製造方法は、加圧装置100を用いて溶接処理を実施してもよい、積層体20に溶接を施す工程が存在する場合を含むものである。 (4)甲第6号証に記載された発明及び技術的事項 前記(3)カないしセの記載及び図面を総合すると、甲第6号証には次の発明(以下、「甲6発明1」及び「甲6発明2」という。)が記載されている。 [甲6発明1] 「中心軸Ax2に沿って延びるように、複数の打抜部材B2が積層された積層体20に形成された磁石挿入孔21に溶融樹脂を充填する工程と、 加圧装置100を用いて溶接処理を実施してもよい、積層体20に溶接を施す工程が存在する場合とを含む回転子積層鉄心2の製造方法。」 [甲6発明2] 「中心軸Ax2に沿って延びる磁石挿入孔21が形成され、複数の打抜部材B2が積層されて構成された積層体20と、 前記磁石挿入孔21に充填された樹脂材料23とを備え、 複数の打抜部材B2が積層されて構成されている積層体20に溶接を施す工程が存在する場合には、加圧装置100を用いて溶接処理を実施してもよい、回転子積層鉄心2。」 また、前記(3)アないしオ並びにサの記載及び図面を総合すると、甲第6号証には次の技術的事項(以下、「甲6記載技術」という。)が記載されている。 [甲6記載技術] 「積層体10の外周面であって各耳金部13の頂点近傍に形成された溶接ビードを備える固定子積層鉄心1を製造するための加圧装置100であって、回転子積層鉄心2を製造する際に加圧装置100を用いて溶接処理を実施してもよいこと。」 (5)甲第2号証の記載 特許異議申立人が提出し、前記第4の取消理由(決定の予告)で引用した甲第2号証には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ア「[0021] 以下,本発明にかかるロータを具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,電磁鋼板が複数枚積層された積層鋼板からなるコアをシャフトに固定したインナーロータに,本発明を適用したものである。 イ「[0023] 本形態のロータ100は,図1および図2に示すように,平板状の電磁鋼板21が複数枚積層されたコア11と,コア11に固定されたシャフト12とを備えている。コア11には,各所に永久磁石14が埋め込まれている。すなわち,ロータ100は,永久磁石埋め込み型(IPM型)でインナーロータ型のモータに利用されるものである。 [0024] また,コア11には,図1に示したように,積層方向に貫通する複数の貫通孔23,24,25,26が形成されている。すなわち,各電磁鋼板21には,各貫通孔23,24,25,26に相当する貫通孔が形成されており,各電磁鋼板21の貫通孔の位置が揃うように積層されている。 [0025] これらの貫通孔のうち最も外周側には,複数の磁石用貫通孔23が配置されている。各磁石用貫通孔23には,コア11を積層方向に貫通する永久磁石14が埋め込まれている。磁石用貫通孔23は,ほぼ全方位にわたってバランスよく配置されている。なお,本形態のコア11には,磁石用貫通孔23が全部で16箇所に形成されている。」 ウ「[0031] また,コア11の外周には,図1中の左右位置の2箇所に,積層方向に沿って延びる溝31が形成されている。この溝31は,図2に示したように積層方向に沿って上端から下端まで形成されている。つまり,各電磁鋼板21には,溝31に相当する切欠きが形成されており,各電磁鋼板21の切欠きの位置が揃うように積層されている。 [0032] さらに,溝31の積層方向の両端部には,溶接痕である外周側溶接部32,33が形成されている。このうち,外周側溶接部32は,コア11の積層方向の上面から5~10mm程度にわたって形成されている。本形態では,上側端面の電磁鋼板21Uを含む,10~20枚分の電磁鋼板21の厚さ(電磁鋼板21の1枚分の厚さは約0.5mm)に相当する。なお,図2は,電磁鋼板21の積層状態を略示しており,外周側溶接部32は3枚程度の電磁鋼板21を接合しているのみであるが,実際にはそれ以上の電磁鋼板21が外周側溶接部32によって接合される。この外周側溶接部32は,積層方向の上側の端部に位置する電磁鋼板21(本明細書でいう積層方向の「端部」に位置する電磁鋼板は,コア11の端面となる電磁鋼板のみではなく,端面の電磁鋼板を含む複数枚の電磁鋼板を意味する)について,溝31側面を溶接によって深さ1mm程度溶かし,隣り合う電磁鋼板21同士が溶け合って一体化したことを示している。 [0033] また,外周側溶接部33は,コア11の積層方向の下面から5~10mm程度にわたって形成されている。本形態では,下側端面の電磁鋼板21Lを含む,10~20枚分の電磁鋼板21の厚さに相当する。この外周側溶接部33は,積層方向の下側の端部に位置する電磁鋼板21について,溝31側面を溶接によって深さ1mm程度溶かし,隣り合う電磁鋼板21同士が溶け合って一体化したことを示している。」 (6)甲第2号証に記載された技術的事項 前記(5)アないしウの記載及び図面を総合すると、甲第2号証には次の技術的事項(以下、「甲2記載技術」という。)が記載されている。 「インナーロータの積層された電磁鋼板21を接合するために、コア11の外周に形成された溝31側面を溶接によって深さ1mm程度溶かし、隣り合う電磁鋼板21同士が溶け合って一体化し、溝31の積層方向の両端部には、溶接痕である外周側溶接部32、33が形成されていること。」 (7)甲第3号証の記載 特許異議申立人が提出した甲第3号証(「プラスチック成形加工入門」昭和59年12月5日 日刊工業新聞社)には以下の事項が記載されている。 ア「プラスチックは非常に大きい分子量の有機化合物を主体とするものであることを述べたが、この分子量の非常に大きい有機化合物(高分子、ポリマーと呼ぶ)に必要に応じて充てん材、補強材、可塑剤などを配合し、自由に成形加工し目的の性能が得られるようにしたものがプラスチックである。」(第1部「2.ポリマーの構造と改質」第1行~第4行) イ「プラスチックは熱硬化性と熱可塑性とに大別される。」(第1部「3.プラスチック成形材料」「3・1 どんなプラスチックがあるか」第12行) (8)甲第4号証の記載 特許異議申立人が提出した甲第4号証(特開2006-255732号公報)には以下の事項が記載されている。 ア「【0001】 本発明は、自動車の車体パネルに代表されるような金属板の接合方法に関し、特にレーザ溶接と接着剤による接合とを併用した金属板の接合方法に関するものである。」 イ「【0004】 そこで、接合部の剛性向上や水密性向上等の補助的機能も兼ねて、上記のようなレーザ溶接に加えて接着剤やシール材による接合を併用することが行われている。具体的には、接合強度の向上を図るためにレーザ溶接と接着剤等を併用することを前提として、接合箇所を極力減らしながら設計自由度を上げるべく、接着剤を塗布した面上にレーザ溶接を施す技術が特許文献1で提案されている。」 ウ「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 特許文献1に記載の技術では、接着剤を介在させた金属板同士の接合部位に重ねてレーザ溶接を施す方式であるため、レーザ光の照射により熱を加えると有機物である接着剤からガスが発生して、そのガスが溶融金属の内外に入り込んでポロシティとなり、接合強度がかえって低下するおそれがある。特にこの傾向は、母材である金属板がめっき鋼板等の表面処理鋼板である場合に一層顕著となる。」 エ「【課題を解決するための手段】 【0007】 請求項1に記載の発明は、二枚の金属板同士を重ね合わせて接合するにあたり、少なくともいずれか一方の金属板の接合面に発泡性熱硬化型接着剤を塗布した上で金属板同士を重ね合わせ、その重ね合わせ部位のうち上記発泡性熱硬化型接着剤の塗布位置から所定距離離れた位置にレーザ溶接を施し、レーザ溶接に伴って発生する熱により発泡性熱硬化型接着剤を発泡・硬化させて接合することを特徴とする。」 (9)甲第5号証の記載 特許異議申立人が提出した甲第5号証(「溶接・接合工学概論」平成11年8月25日 理工学社)には以下の事項が記載されている。 ア「溶融金属が凝固中に過飽和になったガスは、気泡になって大気中に逃げるが、逃げ遅れたガスは、凝固した溶接金属内で空洞となって残留し、気孔となる。」(第83ページ第1行~第8行) イ「気孔の発生を防止するには次のような対策が必要である。 ○1(当審注:丸の中にアラビア数字の1)母材の溶接面に付着した水分・油脂・塗料・さびなどを溶接前に取り除く。」(第83ページ第10行~第11行) 2.本件特許発明1,2について 前記第4に示したように、令和3年3月24日付け取消理由通知書(決定の予告)において、本件訂正後の請求項1,2に係る特許に対して、取消理由は通知されていない。そこで、この取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について検討する。 (1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について ア 発明の詳細な説明の記載について 本件訂正後の明細書(以下、単に「本件特許明細書」という。)における発明の詳細な説明の段落【0004】によると、本件特許発明が解決しようとする課題は、鉄心本体における溶接ビードの状態を良好に維持することができる鉄心製品の製造方法及び鉄心製品を提供することであると解され、その課題を解決するための手段として、発明の詳細な説明の段落【0017】、【0025】、【0057】、【0058】、【0061】、【0062】には、溶接ビードB1,B2が、磁石挿入孔16を囲むように設定されるバッファ領域R1と重ならないように、積層体10及び端面板3の外周面にレーザを照射することが記載されている。そして、磁石挿入孔16に永久磁石12を樹脂封止する際、溶融樹脂の有機成分が磁石挿入孔16の周囲に拡がることがあるところ、バッファ領域R1は、この有機成分が拡がる領域に溶接ビードB1,B2が重ならないように設定されるものと解されるから、溶融樹脂の有機成分が磁石挿入孔16の周囲に拡がった領域を囲むように設定されるものである。 さらに、発明の詳細な説明の段落【0074】に「あるいは、回転子1は端面板を含んでいなくてもよい。この場合、例えば、複数の打抜部材Wを接合するように、積層体10に対して溶接が行われる。」と記載されていることも考慮すると、発明の詳細な説明には、前記した課題を解決するための手段として、溶接ビードB1,B2が、磁石挿入孔16を囲むように設定され、かつ溶融樹脂の有機成分が磁石挿入孔16の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域R1と重ならないように、積層体10の外周面にレーザを照射することが示されているといえる。 イ 本件特許発明1について (ア)本件特許発明1は「レーザ溶接によって形成される溶接ビードが、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達しないように、前記積層体の周面をレーザ溶接する」という発明特定事項を備えるものであり、この発明特定事項を備える本件特許発明1は、前記アに示した、発明の詳細な説明に示されている課題を解決するための手段が反映されたものであるから、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、当業者が前記アに示した課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (イ)特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、特許異議申立書の「3(4)エ(エ)」において、図8に記載のバッファ領域R1と、図9に記載のバッファ領域R2との間に共通した技術的思想を見い出すことができないから、本件特許発明1には、課題を解決するための手段が反映されていない旨、及びバッファ領域の範囲に一切限定がないから、課題を解決できる「所定の範囲」を超えた範囲になっている旨を主張しているが、本件訂正請求により、図9及び図9に関する記載が削除され、また、請求項1に記載されたバッファ領域について「前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定された」との限定が付加されたため、バッファ領域が、前記アに示した課題を解決するために設定されるものであることが明らかになったといえる。 また、特許異議申立人は、特許異議申立書の「3(4)エ(オ)」において、発明の詳細な説明において、溶接トーチM15,M25から照射されるレーザの方向、当該レーザが照射される位置、当該レーザの強度等が説明されていないから、「前記溶接ビードが前記バッファ領域に到達しないように、前記鉄心本体を溶接する」構成は、発明の詳細な説明に開示されている構成であるとはいえない旨を主張しているが、前記アに示したように、発明の詳細な説明には、課題を解決するための手段として、溶接ビードB1,B2がバッファ領域R1と重ならないように、積層体10の外周面にレーザを照射することが示されており、この記載に接した当業者であれば、レーザの照射により形成される溶接ビードがバッファ領域R1と重ならないように、レーザの方向、照射位置、強度等の条件を調整可能であることは明らかである。すると、これらの具体的な条件が発明の詳細な説明に記載されていないことをもって、本件特許発明1が、前記アに示した課題を解決できないものであるとはいない。 よって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。 (ウ)小括 したがって、本件特許発明1は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たすものである。 ウ 本件特許発明2について 請求項2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明2は、前記イで検討した本件特許発明1と同様に、前記アに示した、発明の詳細な説明に示されている課題を解決するための手段が反映されたものであるから、本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、当業者が前記アに示した課題を解決できると認識できる範囲のものである。 したがって、本件特許発明2は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たすものである。 (2)特許法第36条第6項第2号(明確性)について ア 本件特許発明1について (ア)「前記積層体の周面をレーザ溶接して鉄心製品を構成する」について 本件特許発明1における「前記積層体の周面をレーザ溶接して鉄心製品を構成する」という事項において、「前記積層体」とは、前記された「複数の打抜部材が積層された積層体」を意味するから、本件特許発明1の「前記積層体の周面をレーザ溶接して鉄心製品を構成する」という事項が、「複数の打抜部材が積層された積層体」の周面をレーザ溶接して鉄心製品を構成することを意味していることは明らかである。 このことは、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0074】に「あるいは、回転子1は端面板を含んでいなくてもよい。この場合、例えば、複数の打抜部材Wを接合するように、積層体10に対して溶接が行われる。」と記載されていることとも整合するものであり、発明の詳細な説明の記載を考慮しても、本件特許発明1の「前記積層体の周面をレーザ溶接して鉄心製品を構成する」という事項が不明確になるものではない。 (イ)「レーザ溶接によって形成される溶接ビードが、・・・バッファ領域に到達しないように、前記積層体の周面をレーザ溶接すること」について 本件特許発明1における「レーザ溶接によって形成される溶接ビードが、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達しないように、前記積層体の周面をレーザ溶接すること」という事項は、レーザ溶接によって形成される溶接ビードが、バッファ領域に到達しないように、積層体の周面をレーザ溶接することを特定し、また、このバッファ領域が樹脂注入部を囲むように設定され且つ樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されるものであることを特定するものであって、その意味は明らかである。 このことは、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0017】、【0025】、【0057】、【0058】、【0061】、【0062】、【0074】の記載とも整合するものであり、発明の詳細な説明の記載を考慮しても、本件特許発明1の「レーザ溶接によって形成される溶接ビードが、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達しないように、前記積層体の周面をレーザ溶接すること」という事項が不明確になるものではない。 (ウ)特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、特許異議申立書の「3(4)オ(イ)」において、複数の打抜部材W間を溶接ビードによって接合することについては、発明の詳細な説明のどこにも開示されていないから「前記鉄心本体を溶接して鉄心製品を構成すること」は明確であるとはいえない旨を主張しているが、前記(ア)に示したように、発明の詳細な説明の段落【0074】には、複数の打抜部材Wを接合するように、積層体10に対して溶接が行われることが記載されており、発明の詳細な説明の記載を考慮しても、本件特許発明1における溶接される対象が不明確になることはない。 また、特許異議申立人は、特許異議申立書の「3(4)オ(ウ)」において、図8に記載のバッファ領域R1を設定する基準と、図9に記載のバッファ領域R2を設定する基準が異なっているので、バッファ領域の技術的意義を明らかにすることができない旨、及び請求項1に記載された「溶接ビードが、・・・バッファ領域に到達しないように」することと図9の記載とが整合しないため、請求項1の記載の技術的意義が明確でない旨を主張しているが、本件訂正請求により、図9及び図9に関する記載が削除され、また、請求項1に記載されたバッファ領域について「前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定された」との限定が付加されたため、バッファ領域がどのようなものかが明らかになったといえる。 さらに、特許異議申立人は、特許異議申立書の「3(4)オ(ウ)」において、発明の詳細な説明には、レーザの方向、当該レーザが照射される位置、当該レーザの強度等の制御パラメータを適切な値に設定するための具体的なデータが記載されていないから、「溶接によって形成される溶接ビードが、前記溶接ビードと前記樹脂注入部との間に設定されるバッファ領域に到達しないように、前記鉄心本体を溶接すること」がいかなる構成であるか不明である旨を主張しているが、発明の詳細な説明に、レーザの方向、当該レーザが照射される位置、当該レーザの強度等の具体的なデータが記載されていないことをもって、本件特許発明1の発明特定事項が不明確になるものではない。 また、特許異議申立人は、特許異議申立書の「3(4)オ(ウ)」において、バッファ領域には「所定の範囲」があるにもかかわらず、範囲を特定していないから発明が不明確である旨を主張しているが、本件訂正請求により、請求項1に記載されたバッファ領域について「前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定された」との限定が付加されたため、バッファ領域の範囲が明らかになったといえる。 よって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)を満たすものである。 イ 本件特許発明2について 請求項2は、請求項1を引用するものであり、また、請求項2に記載された事項に不明確な点はないから、本件特許発明2は、前記アで検討した本件特許発明1と同様に明確である。 したがって、本件特許発明2は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)を満たすものである。 (3)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について ア 本件特許発明1について (ア)発明の詳細な説明には、前記(1)アに示したように、溶接ビードB1,B2が、磁石挿入孔16を囲むように設定され、かつ溶融樹脂の有機成分が磁石挿入孔16の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域R1と重ならないように、積層体10の外周面にレーザを照射することが示されているといえる。 そして、この記載に触れた当業者であれば、磁石挿入孔16の周囲に拡がった溶融樹脂の有機成分と、溶接ビードB1,B2とが重ならないような適切な範囲のバッファ領域R1を過度の試行錯誤を要することなく設定できるものといえ、また、レーザの方向、照射位置、強度等の条件についても、過度の試行錯誤を要することなく、溶接ビードB1,B2がバッファ領域R1と重ならないような適切な条件に調整可能であるといえる。 すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1の方法を使用することができる程度に記載されているといえる。 (イ)特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、特許異議申立書の「3(4)カ(イ)」において、有機成分の拡がり幅が不明であるから、バッファ領域が不明である旨、及び発明の詳細な説明には、バッファ領域の「所定の範囲」についての記載がない旨を主張しているが、溶融樹脂の有機成分が拡がる幅は、当業者であれば、実験、シミュレーション等により過度の試行錯誤を要することなく、把握可能であり、また、この把握可能な有機成分の拡がる幅に基づいて、適切な範囲のバッファ領域を設定できるものといえる。 また、特許異議申立人は、特許異議申立書の「3(4)カ(イ)」において、発明の詳細な説明には、レーザの方向、照射位置、強度等を例示していない旨を主張しているが、前記(ア)に示したように、発明の詳細な説明には、溶接ビードB1,B2がバッファ領域R1と重ならないように、積層体10の外周面にレーザを照射することが示されており、この記載に触れた当業者であれば、レーザの照射により形成される溶接ビードがバッファ領域R1と重ならないように、レーザの方向、照射位置、強度等の条件を過度の試行錯誤を要することなく調整可能であるといえる。 よって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。 (ウ)小括 したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されている。 イ 本件特許発明2について 請求項2は、請求項1を引用するものであり、また、請求項2に記載された事項を実施することに過度な試行錯誤は要しないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、前記アで検討した本件特許発明1の方法と同様に、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明2の方法を使用することができる程度に記載されているといえる。 したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明2を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されている。 (4)甲1発明を主引用発明とした特許法第29条第2項(進歩性)について ア 本件特許発明1について (ア)本件特許発明1と甲1発明との対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「軸孔11の延びる方向と同じ方向」は、回転子積層鉄心12における中心の軸が延びる方向と同じ方向であるといえるから、本件特許発明1の「中心軸の延在方向」に相当する。また、甲1発明の「鉄心片」は、通常、電磁鋼板を打ち抜いて形成されるから、本件特許発明1の「打抜部材」に相当し、以下同様に、「回転子積層鉄心12」は「積層体」に、「形成された」は「設けられた」に相当する。さらに、甲1発明の「磁石挿入孔13」は、溶かした熱硬化性樹脂15の原料18が充填されるから、本件特許発明1の「樹脂注入部」に相当し、以下同様に「溶かした熱硬化性樹脂15の原料18」は「溶融樹脂」に、「充填する」は「注入する」に相当する。 さらに、甲1発明の「永久磁石の樹脂封止方法」は、回転子積層鉄心12の製造に用いられるものであるから、本件特許発明1の「鉄心製品の製造方法」に相当する。 以上のことから、本件特許発明1と甲1発明とは、次の[一致点1-1]で一致し、[相違点1-1]において、相違する。 [一致点1-1] 「中心軸の延在方向に延びるように、複数の打抜部材が積層された積層体に設けられた樹脂注入部に溶融樹脂を注入することを含む、鉄心製品の製造方法。」 [相違点1-1] 本件特許発明1は、「前記樹脂注入部に溶融樹脂を注入することの後に、前記積層体の周面をレーザ溶接して鉄心製品を構成することとを含み、前記鉄心製品を構成することは、レーザ溶接によって形成される溶接ビードが、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達しないように、前記積層体の周面をレーザ溶接することを含む」のに対し、甲1発明においては、回転子積層鉄心12の周面をレーザ溶接するのか不明であり、また、溶接をする際、バッファ領域を設定しているとはいえない点。 (イ)相違点の判断 上記相違点1-1について検討する。 本件特許発明1は、本件特許に係る明細書の段落【0061】、【0062】の記載を参照すると、溶融樹脂の有機成分が磁石挿入孔(樹脂注入部)の周囲に拡がることがあり、この有機成分が拡がる領域に溶接ビードが重なると、該有機成分が発泡して溶接ビードに空孔が生じてしまうため、「前記樹脂注入部に溶融樹脂を注入することの後に、前記積層体の周面をレーザ溶接」する際、「レーザ溶接によって形成される溶接ビードが、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達しないように、前記積層体の周面をレーザ溶接する」ものである。 しかしながら、甲1発明は、「回転子積層鉄心12に形成された磁石挿入孔13に溶かした熱硬化性樹脂15の原料18を充填する」ものではあるものの、甲第1号証には、回転子積層鉄心12を溶接することや、磁石挿入孔13の周囲から溶接ビードと重なる領域まで溶かした熱硬化性樹脂15の原料18が拡がることについて、何ら記載も示唆もされていない。すると、甲1発明において、磁石挿入孔13の周囲に拡がる溶かした熱硬化性樹脂15の原料18と、溶接ビードとが重なることは、当業者といえども、想定し得ないものであるから、磁石挿入孔13を囲み、且つ溶かした熱硬化性樹脂15の原料18が該磁石挿入孔13の周囲に拡がった領域を囲むようにバッファ領域を設定し、溶接ビードが該バッファ領域に到達しないように、回転子積層鉄心12の周面を溶接するという事項を採用する動機付けはないといえる。 また、甲第2号証には、甲2記載事項によると、コア11の外周に形成された溝31側面を溶接し、溶接痕である外周側溶接部32、33を形成することが記載されているが、磁石用貫通孔23に溶融樹脂を注入することについて、何ら記載も示唆もされていない。すると、仮に、甲1発明において、回転子積層鉄心12の外周を溶接することが、甲2記載事項に基づき、当業者が容易に想到し得るものであったとしても、甲1発明の「回転子積層鉄心12に形成された磁石挿入孔13に溶かした熱硬化性樹脂15の原料18を充填する」ことと、回転子積層鉄心12の外周を溶接することのどちらを先に行うかは不明であり、この溶接の際、磁石挿入孔13の周囲から溶接ビードと重なる領域まで溶かした熱硬化性樹脂15の原料18が拡がっていることを想定できるものではない。 さらに、甲第3号証の記載(前記1(7)ア及びイ参照。)から、プラスチックに有機化合物が含まれることが把握でき、甲第4号証の記載(前記1(8)ア~エ参照。)から、接着剤を介在させた金属板同士の接合部位に重ねてレーザ溶接を施す方式では、レーザ光の照射により熱を加えると有機物である接着剤からガスが発生して、そのガスが溶融金属に入り込んで、接合強度が低下することが把握でき、甲第5号証の記載(前記1(9)ア及びイ参照。)から、溶融金属の凝固中に過飽和になったガスが溶接金属内に残留し、気孔となることが把握できるとしても、回転子積層鉄心の外周を溶接する際、磁石挿入孔の周囲から溶接ビードと重なる領域まで溶融樹脂が拡がっていることについては、いずれの文献にも記載も示唆もされていない。 そうすると、甲第2号証~甲第5号証の記載を考慮しても、甲1発明において、磁石挿入孔13を囲み、且つ溶かした熱硬化性樹脂15の原料18が該磁石挿入孔13の周囲に拡がった領域を囲むようにバッファ領域を設定し、溶接ビードが該バッファ領域に到達しないように、回転子積層鉄心12の周面を溶接するという事項を採用することは、当業者といえども、容易に想到し得るものではない。 (ウ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲1発明、甲第2号証に記載された事項、甲第3号証に記載された事項、甲第4号証に記載された事項及び甲第5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2について 請求項2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明2も「前記樹脂注入部に溶融樹脂を注入することの後に、前記積層体の周面をレーザ溶接して鉄心製品を構成することとを含み、前記鉄心製品を構成することは、レーザ溶接によって形成される溶接ビードが、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達しないように、前記積層体の周面をレーザ溶接することを含む」いう発明特定事項を備えるものであるから、本件特許発明2は、前記アで検討した本件特許発明1と同じ理由により、甲1発明、甲第2号証に記載された事項、甲第3号証に記載された事項、甲第4号証に記載された事項及び甲第5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)甲6発明を主引用発明とした特許法第29条第1項第3号(新規性)及び同条第2項(進歩性)について ア 本件特許発明1について (ア)本件特許発明1と甲6発明1との対比 本件特許発明1と甲6発明1とを対比する。 甲6発明1の「中心軸Ax2に沿って延びる」は、本件特許発明1の「中心軸の延在方向に延びる」に相当し、以下同様に、「打抜部材B2」は「打抜部材」に、「積層体20」は「積層体」に、「形成された」は「設けられた」に相当する。また、甲6発明1の「磁石挿入孔21」は、溶融樹脂が充填されるから、本件特許発明1の「樹脂注入部」に相当し、同様に、「溶融樹脂を充填する工程」は「溶融樹脂を注入すること」に相当する。 さらに、甲6発明1の「回転子積層鉄心2」は、本件特許発明1の「鉄心製品」に相当する。また、甲6発明1の「積層体20に溶接を施す工程」は、積層体20を溶接して回転子積層鉄心2を製造するものであるから、本件特許発明1の「前記積層体の周面をレーザ溶接して鉄心製品を構成すること」とは、「前記積層体を溶接して鉄心製品を構成すること」である点において共通する。同様に、甲6発明1の「積層体20に溶接を施す工程」と、本件特許発明1の「前記鉄心製品を構成することは、レーザ溶接によって形成される溶接ビードが、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達しないように、前記積層体の周面をレーザ溶接すること」とは、「前記鉄心製品を構成することは、前記積層体を溶接すること」である点において共通する。 以上のことから、本件特許発明1と甲6発明1とは、次の[一致点1-2]で一致し、[相違点1-2]において、相違する。 [一致点1-2] 「中心軸の延在方向に延びるように、複数の打抜部材が積層された積層体に設けられた樹脂注入部に溶融樹脂を注入することと、 前記積層体を溶接して鉄心製品を構成することとを含み、 前記鉄心製品を構成することは、前記積層体を溶接することを含む、鉄心製品の製造方法。」 [相違点1-2] 積層体を溶接して鉄心製品を構成することについて、本件特許発明1は、「前記樹脂注入部に溶融樹脂を注入することの後に」、「周面」を「レーザ」溶接し、「レーザ溶接によって形成される溶接ビードが、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達しないように」溶接するものであるのに対し、甲6発明1においては、「加圧装置100を用いて溶接処理を実施してもよい」ものの、「溶融樹脂を充填する工程」の後に行われるのかや、積層体20の周面を溶接するのかや、レーザ溶接を用いるのかが不明であり、また、溶接をする際、バッファ領域を設定しているとはいえない点。 (イ)相違点の判断 上記相違点1-2について検討する。 本件特許発明1は、本件特許に係る明細書の段落【0061】、【0062】の記載を参照すると、溶融樹脂の有機成分が磁石挿入孔(樹脂注入部)の周囲に拡がることがあり、この有機成分が拡がる領域に溶接ビードが重なると、該有機成分が発泡して溶接ビードに空孔が生じてしまうため、「前記樹脂注入部に溶融樹脂を注入することの後に、前記積層体の周面をレーザ溶接」する際、「レーザ溶接によって形成される溶接ビードが、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達しないように、前記積層体の周面をレーザ溶接する」ものである。 しかしながら、甲6発明1は、「複数の打抜部材B2が積層された積層体20に形成された磁石挿入孔21に溶融樹脂を充填する工程」と「加圧装置100を用いて溶接処理を実施してもよい、積層体20に溶接を施す工程が存在する場合」とを含むものではあるものの、甲第6号証の記載をみても、該「溶融樹脂を充填する工程」と該「積層体20に溶接を施す工程」のどちらを先に行うかは不明であり、また、甲第6号証には、磁石挿入孔21を囲み、且つ溶融樹脂が該磁石挿入孔21の周囲に拡がった領域を囲むようにバッファ領域を設定し、溶接ビードが該バッファ領域に到達しないように、積層体20の周面をレーザ溶接するという事項について、何ら記載も示唆もされていない。 したがって、相違点1-2は、実質的な相違点である。 さらに、甲第6号証には、磁石挿入孔21に溶融樹脂を充填する工程の後に、積層体20を溶接することや、磁石挿入孔21の周囲から溶接ビードと重なる領域まで溶融樹脂が拡がることについて、何ら記載も示唆もされていないから、甲6発明1において、磁石挿入孔21を囲み、且つ溶融樹脂が該磁石挿入孔21の周囲に拡がった領域を囲むようにバッファ領域を設定し、溶接ビードが該バッファ領域に到達しないように、積層体20の周面をレーザ溶接するという事項を採用する動機付けはないといえる。 したがって、甲6発明1において、本件特許発明1の相違点1-2に係る発明特定事項を採用することは、当業者といえども、容易に想到し得るものではない。 (ウ)小括 よって、本件特許発明1は、甲第6号証に記載された発明ではなく、また、甲6発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2について 請求項2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明2も「前記樹脂注入部に溶融樹脂を注入することの後に」、「周面」を「レーザ」溶接し、「レーザ溶接によって形成される溶接ビードが、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達しないように」溶接するという発明特定事項を備えるものであるから、本件特許発明2は、前記アで検討した本件特許発明1と同じ理由により、甲第6号証に記載された発明ではなく、また、甲6発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3.本件特許発明3について (1)特許法第36条第6項第2号(明確性)について 本件訂正後の請求項3の「前記溶接ビードは、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達していない」の記載に関して、「鉄心製品」という物の発明である本件特許発明3において、本件特許の明細書又は図面を参酌しても、前記記載のように定義されるバッファ領域が設定された「鉄心製品」であるのか否かを把握することができず、当該記載で物の発明である「鉄心製品」のどのような構造や性質等を特定しようとしているのかが不明であり、物としての「鉄心製品」において、「前記溶接ビードは、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達していない」か否かをどのように判断するのかが不明である。 よって、本件特許発明3は、明確でない。 (2)特許法第29条第2項(進歩性)について ア 本件特許発明3と甲6発明2との対比 本件特許発明3と甲6発明2とを対比する。 甲6発明2の「中心軸Ax2に沿って延びる」は、本件特許発明3の「中心軸の延在方向に延びる」に相当し、甲6発明2の「磁石挿入孔21」は、孔内に磁石とともに樹脂材料が充填されることになるから、本件特許発明3の「樹脂注入部」に相当する。また、甲6発明2の「形成され」は、本件特許発明3の「設けられ」に相当し、以下同様に、「打抜部材B2」は「打抜部材」に、「積層体20」は「積層体」に、「充填された」は「形成された」に、「樹脂材料23」は「樹脂部」に、「回転子積層鉄心2」は「鉄心製品」に、それぞれ相当する。 以上のことから、本件特許発明3と甲6発明2とは、次の[一致点2]で一致し、[相違点2]において、相違する。 [一致点2] 「中心軸の延在方向に延びる樹脂注入部が設けられ、複数の打抜部材が積層されて構成された積層体と、 前記樹脂注入部に形成された樹脂部と、 を備えた鉄心製品。」 [相違点2] 鉄心本体の溶接に関して、本件特許発明3においては、「前記積層体の周面に形成された溶接ビード」を備え、「前記溶接ビードは、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達していない」ことが特定されているのに対し、甲6発明2においては、「複数の打抜部材B2が積層されて構成されている積層体20に溶接を施す工程が存在する場合には、加圧装置100を用いて溶接処理を実施してもよい」ものの、溶接ビードの態様及びバッファ領域について不明である点。 イ 相違点の判断 請求項3の「前記溶接ビードは、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達していない」の記載は、前記(1)のとおり物の発明である鉄心製品のどのような構造や性質等を特定しようとしているのかが不明な記載であるが、本件特許発明3のバッファ領域は、樹脂注入部を囲む領域で、溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が周囲に拡がった領域を囲んでいる任意の領域、すなわち溶融樹脂の有機成分が周囲に拡がった領域そのものであるものも含まれるとして、上記相違点2について検討する。 甲6発明2において、回転子積層鉄心への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が周囲に拡がった領域については、回転子積層鉄心の周面から当該溶融樹脂が漏れ出すような状況は効率の低下につながり得ることから、当該周囲に拡がった領域の大きさをできる限り小さくすることが望ましく、当該周囲に拡がった領域が回転子積層鉄心の周面近傍まで達しないのが通常であるといえる。 そして、強度向上等のために回転子積層鉄心を溶接することは当業者が適宜行うものであり、甲6発明2において、加圧装置100を用いて溶接処理を実施する際に、甲6発明2が回転子積層鉄心であることを踏まえて、積層体の外周面を溶接する甲6記載技術を参照すれば、積層体20の外周面に溶接ビードを形成することは当業者が容易に想到し得たものである。その際、磁石挿入孔である樹脂注入部の形状や性質に影響が及ばないように溶接をすることは当業者が当然に考慮できたことにすぎず、例えば、甲2記載技術のように1mm程度の僅かな深さを溶かして溶接するよう構成することに格別の困難性は認められない。 そうすると、甲6発明2において溶接を行う際、甲2記載技術のように溶接し、溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が周囲に拡がった領域、すなわちバッファ領域と、溶接ビードとが接していないとすること、つまり、「前記溶接ビードは、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達していない」とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 特許権者は、令和2年11月5日付けの意見書において、「訂正後の請求項3に係る発明の技術的思想は、溶融樹脂の注入に際して樹脂注入部の周囲に拡がる有機成分に溶接ビードが接することで、溶接ビードに空孔が生じてしまうことから、溶接ビードを樹脂注入部から離して空孔の発生を避けることにある(段落0061を参照)。しかしながら、甲第6号証は、磁石挿入孔21に溶融樹脂を注入することは開示しているものの、溶融樹脂の有機成分の拡がりについて何ら記載も示唆もしていない。そのため、甲第6号証は、溶融樹脂の有機成分の拡がりを前提とするバッファ領域についても何ら記載も示唆もしていない。 また、甲第2号証はそもそも、溶融樹脂の注入に関して何ら記載も示唆もしていない。 そのため、甲6発明に、甲6記載技術又は甲2記載技術を適用したとしても、本願発明の技術的思想(前記溶接ビードは、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達していない)に到達したはずであるとはいえない。」と主張する。 この点に関しては、前記(1)のとおり、請求項3の「前記溶接ビードは、前記樹脂注入部を囲むように設定され且つ前記樹脂注入部への溶融樹脂の注入に際して溶融樹脂の有機成分が前記樹脂注入部の周囲に拡がった領域を囲むように設定されたバッファ領域に到達していない」の記載は、物の発明である鉄心製品のどのような構造や性質等を特定しようとしているのかが不明な記載であり、請求人の主張する本願発明の技術的思想が反映された構成であるとはいえず、前記のとおり、甲6発明2において、甲6記載技術及び甲2記載技術に鑑み、本件特許発明3の前記相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たものである。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 ウ 小括 したがって、甲6発明2において、甲6記載技術及び甲2記載技術に鑑み、本件特許発明3の前記相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たものである。 第6 むすび 以上のとおり、本件特許発明3は、明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、請求項3に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものであり、また、本件特許発明3は、甲6発明2、甲6記載技術、及び甲2記載技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 請求項1~2に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。また、他に請求項1~2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700414

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