特許異議申立
2025-700857
遠隔操作装置およびマルチオペレーションシステム
- 審判番号
- 2025-700857
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-068984
- 登録番号
- 7651362
- 請求日
- 2025年09月02日
- 審決日
- 2025年11月27日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】西松建設株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人MIP
- 【権利者】ジオマシンエンジニアリング株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人MIP
- 【異議申立人】原口 正和
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 寺谷 大亮
- 審判官 衣鳩 文彦
- 分類
- P1651.121-Y (H04Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7651362号発明「遠隔操作装置およびマルチオペレーションシステム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7651362号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7651362号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和3年4月15日に出願され、令和7年3月17日にその特許権の設定登録がされ、同年3月26日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~9に係る特許に対し、令和7年9月2日に特許異議申立人 原口 正和(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明9」といい、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
建設機械を遠隔から操作するための装置であって、
複数の操作レバーと、
複数の操作ペダルと、
建設機械の種類を選択するための選択手段と、
前記選択手段により選択された種類の建設機械と通信する通信手段と、
前記複数の操作レバーおよび前記複数の操作ペダルの少なくとも1つから入力された操作情報の送信を通信手段に対して指示する制御手段と、
前記通信手段により前記建設機械から受信した該建設機械の動作情報を出力する出力手段と
を含む、遠隔操作装置。
【請求項2】
前記出力手段は、前記選択手段により選択された前記種類の建設機械の操作内容を表示する、請求項1に記載の遠隔操作装置。
【請求項3】
前記出力手段は、操作した前記操作レバーもしくは前記操作ペダルまたはその両方の操作量を表示する、請求項2に記載の遠隔操作装置。
【請求項4】
前記選択手段は、選択した前記種類を切り替える場合、該種類の選択を解除した後に、指定された他の種類を選択する、請求項1~3のいずれか1項に記載の遠隔操作装置。
【請求項5】
前記出力手段は、前記他の種類に切り替えられた場合に、該他の種類の建設機械の操作内容の表示に切り替える、請求項4に記載の遠隔操作装置。
【請求項6】
複数の種類の建設機械が備える複数の装置のうちの同時に使用しない2以上の装置は、同一のグループにグループ化され、各グループに対して1 つずつアドレス情報が割り当てられ、
前記通信手段は、前記グループ内の2以上の装置のうちの使用する1の装置とのみ前記アドレス情報を使用して通信を確立する、請求項1~5のいずれか1項に記載の遠隔操作装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記建設機械の種類に応じた前記複数の操作レバーおよび前記複数の操作ペダルの操作量に関する設定情報を保持し、選択された種類の設定情報に基づき、前記操作情報を調整し、調整した該操作情報の送信を指示する、請求項1~6のいずれか1項に記載の遠隔操作装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の遠隔操作装置と、複数の種類の建設機械とを含む、マルチオペレーションシステム。
【請求項9】
前記複数の種類の建設機械のうちの選択された種類の建設機械は、前記遠隔操作装置との通信が所定の期間途切れた場合、所定の処置を実施する、請求項8に記載のマルチオペレーションシステム。」
第3 申立ての理由の概要
令和7年9月2日に申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要、及び証拠方法は次のとおりである。
1 申立ての理由の概要
申立理由1(進歩性)
本件特許発明1~9は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証~甲第4号証に記載された周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、これらの特許は特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。
2 証拠方法
甲第1号証:特開2000-296985号公報
甲第2号証:特開2010-53609号公報
甲第3号証:デジコン編集部,「5Gを活用した建機の遠隔操縦。日立建機ら3社が実証実験を開始」,〔online〕,2021年2月24日,株式会社オプティム,[令和7年8月21日検索],インターネット<URL:https://digital-construction.jp/news/97>
甲第4号証:特開2014-33384号公報
以下、「甲第1号証」~「甲第4号証」を、それぞれ「甲1」~「甲4」という。
第4 甲号証の記載
1 甲1に記載された事項及び甲1発明
(1)甲1に記載された事項
甲1には、次の事項が記載されている。(下線は、強調のため当審で付したものである。以下同様。)
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クローラクレーン等の産業機械の遠隔操作用送信機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】産業機械、例えば、クローラクレーンは、地上から作業員が遠隔操作装置の送信機を操作することにより、荷物の吊り上げ作業、吊り上げ作業に先立つアウトリガの張り出し作業、あるいは、作業場所への移動作業等が行われる。一般的に使用されている送信機は、送信機ケースの前面に多数の操作キーが配列され、各キーの表面あるいは近傍には、各キーに割り当てられている機能が表示されている。送信機の操作者は、送信機のモードを、荷物を上げる作業を行うためのクレーンモード、アウトリガを張り出すためのアウトリガモード、クレーンを移動させるための走行モードの何れかに切り換え、各モード毎に割り当てられた操作キーを操作することにより、クレーンを遠隔操作している。
【0003】送信機によりクレーンを遠隔操作している作業員は、操作している操作キーを直接に目視することにより、また、操作キーの操作に伴って実際に作動する機械の動きから、意図している操作が実際に行われているか否かを確認している。」
「【0012】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、本発明は、複数の操作モードを備えた産業機械の遠隔操作用送信機において、送信機ケースの表面に配列した複数の操作部材と、液晶表示器等の表示画面とを有し、前記表示画面には、複数の操作モードから選択された一つの操作モードを表示できることを特徴としている。
【0013】ここで、前記複数の操作モードには、初期値の設定、変更等に関する初期モードと、産業機械の作業操作に関する作業モードが含まれる。
【0014】前記初期モードには、ユーザ向け設定モード、サービス向け設定モードおよびメーカ向け設定モードのうちの少なくとも一つのモードが含まれる。当該初期モードが選択された状態においては、前記表示画面に、当該送信機の初期設定値を表示できるようにすることが望ましい。
【0015】前記作業モードには、クレーンモード、アウトリガモードおよび走行モードのうちの少なくとも一つのモードが含まれる。
【0016】次に、本発明では、前記表示画面には、操作されている前記操作部材を特定することのできる表示が行われることを特徴としている。
【0017】さらに、前記表示画面には、操作対象の産業機械における被制御部材の制御量が表示されることを特徴としている。
【0018】さらにまた、前記表示画面には、エラー発生時に、当該エラー内容の説明文が表示されることを特徴としている。
【0019】このように、本発明の産業機械の遠隔操作用送信機では、表示画面に、作業モード表示、操作しているキーがどのキーであるのかの表示、アクセルレバー等の被制御部材の制御量の表示、エラー内容の説明文の表示、あるいは初期設定値が表示される。よって、表示画面の表示を目視することにより、操作が容易となり、また、キー等の誤操作も少なく、しかも、発生したエラー内容、送信機の初期設定値の確認等を送信機の側で行うことのできる産業機械の遠隔操作用送信機を実現できる。
【0020】ここで、制御対象の産業機械の動作状態を表す情報を受信する受信手段を有し、前記表示画面には、当該受信手段で受信した情報を表示できるようにすることが望ましい。例えば、クレーン本体側における過負荷防止装置、過負荷制限装置等発生している吊り上げ実荷重値、定格総荷重等の情報を、送信機側で受信して、表示画面に表示できるようにすれば、操作者はクレーン本体の所まで行って、このような情報を確認する必要が無くなるので、便利になる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下に、図面を参照して、本発明を適用したクレーンの遠隔操作用送信機の一実施例を説明する。
【0022】図1および図2は、それぞれ、本例のクレーンの遠隔操作用送信機の斜視図および操作面を表す正面図である。これらの図を参照して説明すると、遠隔操作用送信機1は、操作部2と、把手部3と、これらを連結している連結部4から基本的に構成されている。操作部2は、その矩形の表面が操作面5とされており、ここには、液晶表示器6の表示画面7と、各種の操作ボタン、レバー等の操作部材とが配列されている。また、操作部2の側面には爪状のアクセル操作レバー11が突出している。把手部3は内部が駆動用電源である電池装着部となっており、把手部の端部に開閉可能に取り付けた電池カバー31を開けて、ここに複数本の乾電池を装着可能となっている。
【0023】操作部5に配列されている操作ボタン、レバーは次の通りである。
51:スタートリセットボタン
52:ストップ/非常停止ボタン
53:微速/モードボタン
54:フック格納/設定ボタン
55:ホーンボタン
56:電源ボタン
57:旋回操作レバー
58:ブーム伸縮操作レバー
59:フック巻上・巻下操作レバー
60:ブーム起伏操作レバー
本例の遠隔操作用送信機1における表示画面7の表示内容の一覧を表1に示す。」
「【0025】なお、クレーン(図示せず)の側には、受信機内蔵のコントロールボックス(図示せず)が取り付けられており、送信機1からの送信指令を受信し、指令内容に応じた制御動作が実行される。基本的な遠隔操作のための機構は、一般的に使用されているクレーン用の遠隔操作装置(ラジコン、リモコン)と同様であるので、詳細説明は省略する。」
「【0040】次に、メーカ用初期モードについて説明する。このモードはメーカ向けのものであり、以下に述べるような項目を変更可能であり、一度設定された内容は記憶保持され、作業の都度設定する必要がない。」
「【0044】まず、図7(b)に示す画面表示において、フック格納/設定ボタン54を押すことにより、表示画面が図8(a)の使用機種選択画面に切り替わる。フック巻上・巻下操作レバー59によりカーソルCLを上下に移動させることにより、使用機種を次のうちから選択できる。勿論、それ以外の機種を選択できるように設定することもできる。
「キャブ」:キャブバッククレーン
「ミニクロ1」:アウトリガ1本につき1本シリンダの小型クローラクレーン
「ミニクロ1A」:小型クローラクレーンの一つの種類
「ミニクロ2」:アウトリガ1本につき2本シリンダの小型クローラクレーン
「クローラ」:クローラクレーン
・・・(中略)・・・
(作業モード)次に、作業モードは、通常は「クレーンモード」に設定されている。微速/モードボタン53を所定の時間、例えば2秒間押すと、図9に示すようなモード切り換え画面になる。この画面状態において、フック巻上・巻下操作レバー59を操作して、カーソルを設定したモードの横に移動し、次に、フック格納/設定ボタン54を押すと、選択した作業モードが設定される。
(クレーンモード)クレーンモードを使用モードとして選択すると、クレーン操作を行うことができる。クレーンモードが使用モードとして選択されると、表示画面7上には、「クレーンモード」の文字若しくは、クレーンを表すマークが表示される。また、クレーン操作中においては、クレーン操作のために操作される各種スイッチに対応するマーク、および操作方向等が表示画面7上に表示される。」
「【0056】
・・・(中略)・・・
(エラー表示制御)次に、本例の送信機1では、エラーが発生した場合には、表示制御に割り込みが掛かり、発生したエラー内容の説明文と、処置法とが画面7上に表示される。例えば、図20(a)のような表示が行われる。この図において(A)の枠には、図20(b)~(f)の上段に記載のエラー内容が文章で表示される。また、(B)の枠には、図20(b)~(f)の下段に記載のエラー処置法が文章で表示されると共に、図20(g)に示すメッセージも表示される。この下段の枠(B)の表示領域には、例えば、左から右に移動しながら、エラー対処法および図20(g)のメッセージが繰り返し表示される。
【0057】なお、表1に示すその他のモードについても、設定されたモードの表示、操作されたレバー等の表示が、表示画面7上に行われる。
(その他の実施の形態)上記の例は、クレーンに関するものであるが、その他の産業機械の無線機としても本発明を同様に適用できる。例えば、高所作業車、重量物運搬台車、あるいはパワーショベル等の建設機械の遠隔操作用送信機に対しても本発明を適用できる。」
「【0059】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の産業機械の遠隔操作用送信機では、液晶表示器等の表示画面を備えており、この画面上に、モード表示、操作状況等の各種の情報を視覚表示するようにしている。従って、表示画面を見ることにより動作状態等を容易にしかも正確に認識できる。よって、誤操作を防止でき、また、送信機操作が容易になるという効果が得られる。」
「【図1】
[図:0001430045000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001430045000002.jpg]
」
(2)甲1発明
前記(1)より、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、甲1発明をa~lに分説し、「構成a」などのようにして、以下参照する。
「a 複数の操作モードを備えた産業機械の遠隔操作用送信機であって、(【0012】)
b 複数の操作部材と、液晶表示器の表示画面とを有し、(【0012】)
c クレーンの遠隔操作用送信機は、操作部2と、把手部3と、これらを連結している連結部4から構成され、操作部2は、液晶表示器6の表示画面7と、各種の操作ボタン、レバー等の操作部材とが配列され、また、アクセル操作レバー11が突出しており、(【0022】)
d レバーは、旋回操作レバー、ブーム伸縮操作レバー、フック巻上・巻下操作レバー、ブーム起伏操作レバーであり、(【0023】)
e 前記複数の操作モードには、初期値の設定、変更等に関する初期モードと、産業機械の作業操作に関する作業モードが含まれ、(【0013】)
f 前記初期モードには、メーカ向け設定モードが含まれ、(【0014】)
g 前記作業モードには、クレーンモード、アウトリガモードおよび走行モードのうちの少なくとも一つのモードが含まれ、(【0015】)
h メーカ用初期モードについて、フック巻上・巻下操作レバー59により使用機種を、「キャブ」:キャブバッククレーン、「ミニクロ1」:アウトリガ1本につき1本シリンダの小型クローラクレーン、「ミニクロ1A」:小型クローラクレーンの一つの種類、「ミニクロ2」:アウトリガ1本につき2本シリンダの小型クローラクレーン、「クローラ」:クローラクレーン、から選択でき、(【0040】、【0044】)
i クレーンモードを使用モードとして選択すると、クレーン操作を行うことができるものであり、(【0044】)
j クレーンの側には、受信機内蔵のコントロールボックスが取り付けられており、送信機1からの送信指令を受信し、指令内容に応じた制御動作が実行され、(【0025】)
k 制御対象の産業機械の動作状態を表す情報を受信する受信手段を有し、前記表示画面には、当該受信手段で受信した情報を表示できる(【0020】)
l 遠隔操作用送信機」
2 甲2に記載された事項及び甲2記載事項
(1)甲2に記載された事項
甲2には、次の事項が記載されている。
「【0040】
以下、本発明における無線による重機遠隔操作システムの実施形態の一例を詳細に説明する。」
「【0057】
図1に示すように、貯蔵施設10の外に、操作室50が設置されている。操作室50の中には、上述した貯蔵施設カメラ102~136よって撮影された貯蔵施設画像と、車載カメラ92、94によって撮影された車載カメラ画像と、を表示可能な大型の表示画面202(表示部)を備える表示装置200が設置えられている(図5と図7も参照)。なお、本実施形態では、表示画面202には、画面A~Dの4つの画面が表示される(図7も参照)。この表示装置200の正面側(表示画面202側)には、重機を操作する重機操作部、本実施形態では、ブルドーザ80を遠隔操作するブルドーザ操作部180と、ショベルカー90を遠隔操作するショベルカー操作部190(図5も参照)と、が設けられている。」
「【0062】
つぎに、ショベルカー90を遠隔操作するショベルカー操作部190について、説明する。
【0063】
図5は、ショベルカー操作部190と表示装置200とを示す斜視図である。図5に示すように、オペレータが着座するシート192の左右前方に操作レバー194R,194Lが配置され、足元にブレーキやアクセルなどの操作ペダル(図示略)が配置されている。そして、オペレータは、表示装置200の表示画面202に表示された撮影画像を見ながら、主に操作レバー194R,194L及び操作ペダル(図示略)を操作して、ショベルカー90を無線によって遠隔操作するシステムとなっている。また、右斜め前方には、ショベルカー90から送られてきた各種情報等を表示するモニターや各種操作を行なうため各種ボタンが設けられた操作パネル196が配置されている。
【0064】
更に足元には、作業情報(詳細は後述する)を入力するための入力部としての入力装置250が設置されている。入力装置250には、オペレータが足で踏んで操作する複数の入力ペダル252が設けられている。
【0065】
なお、ブルドーザ80を遠隔操作するブルドーザ操作部180(図1参照)の基本的な構成は、このショベルカー操作部190と同様であるので、詳しい説明は省略する。」
「【図1】
[図:0001430045000003.jpg]
」
「【図5】
[図:0001430045000004.jpg]
」
(2)甲2記載事項
前記(1)より、甲2には、次の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「無線による重機遠隔操作システムにおける重機を操作する重機操作部において、作業情報を入力するための入力部として、オペレータが足で踏んで操作する複数の入力ペダルを設けること」
3 甲3に記載された事項
甲3には、次の事項が記載されている。
「
[図:0001430045000005.jpg]
[図:0001430045000006.jpg]
」
4 甲4に記載された事項
甲4には、次の事項が記載されている。
「【0003】
図5は、マスタルータ(各図において「Master」と表記)が1台、バックアップルータ(各図において「Backup」と表記)が3台で仮想ルータ「#1」を構成する例を示している。
VRRPでは、仮想ルータを構成する各ルータ装置1にプライオリティ(優先度:各図において「Priority」と表記)が設定されており、プライオリティの値が最も高いルータ装置1がマスタルータ(Master)となり、他のルータ装置1がバックアップルータ(Backup)となる。図5においては、ルータ装置1の中で最も高いプライオリティ(Priority=250)のルータ装置「A」がマスタルータとなる。この仮想ルータでは、仮想ルータ(図5では、仮想ルータ「#1」)毎に共通して使用する仮想IPアドレスおよび仮想MACアドレスを持つ。
【0004】
そして、マスタルータは、所定の時間間隔で、マスタルータ自身の正常性確認等のためのVRRPパケット(以下、「アドバタイズメント(Advertisement)」と称する)を各バックアップルータに送信する。各バックアップルータは、所定時間経ってもマスタルータからアドバタイズメントを受信できなかった場合に、マスタルータに障害等が発生したと判定し、バックアップルータの中で、最もプライオリティの値の高いルータ装置1(図5においては、ルータ装置「B」)が、マスタルータに移行し処理を引き継ぐ。そして、マスタルータが引き継がれても、それまでと同じように仮想ルータ(仮想IPアドレス)宛にパケットが送信されることで、そのパケットが新しいマスタルータに転送され通信を継続することができる。」
「【図5】
[図:0001430045000007.jpg]
」
第5 申立理由1(進歩性)についての当審の判断
1 本件特許発明1について
(1)本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
ア 「建設機械を遠隔から操作するための装置であって、」「遠隔操作装置」について
甲1発明の「産業機械」(構成a)は、本件特許発明1の「建設機械」に相当し、甲1発明の「産業機械の遠隔操作用送信機」(構成a)は、「産業機械」を「遠隔操作」するものであるから、本件特許発明1の「建設機械を遠隔から操作するための装置」に相当する。
よって、本件特許発明1と甲1発明とは、「建設機械を遠隔から操作するための装置であって、」「遠隔操作装置」である点で一致する。
イ 「複数の操作レバーと、」「を含む、」について
甲1発明の「操作部2」に「配列」される「操作部材」である「レバー」(構成c)は、「旋回操作レバー、ブーム伸縮操作レバー、フック巻上・巻下操作レバー、ブーム起伏操作レバー」(構成d)であり、「遠隔操作用送信機」が「有」する(構成a、b)ものである。
よって、本件特許発明1と甲1発明とは、「複数の操作レバーと、」「を含む、」点で一致する。
ウ 「複数の操作ペダルと、」「を含む、」について
甲1発明では、当該事項は特定されていない。
エ 「建設機械の種類を選択するための選択手段と、」「を含む、」について
甲1発明は、「メーカ用初期モード」において、「フック巻上・巻下操作レバー59により使用機種を、「キャブ」:キャブバッククレーン、「ミニクロ1」:アウトリガ1本につき1本シリンダの小型クローラクレーン、「ミニクロ1A」:小型クローラクレーンの一つの種類、「ミニクロ2」:アウトリガ1本につき2本シリンダの小型クローラクレーン、「クローラ」:クローラクレーン、から選択でき」(構成h)るものであるから、クレーンの中から「使用機種」を「選択でき」るものである。
そして、「使用機種」を「選択」する「フック巻上・巻下操作レバー59」は、選択手段ということができるから、甲1発明は、選択手段を含んでいるということができる。
しかしながら、甲1発明は、クレーンの使用機種を選択するものであり、「建設機械の種類を選択する」ものとはいえない。
よって、本件特許発明1と甲1発明とは、「選択手段と、」「を含む、」点で共通する。
オ 「前記選択手段により選択された種類の建設機械と通信する通信手段と、」「を含む、」について
甲1発明において、「クレーン」は、「送信機1からの送信指令を受信し、指令内容に応じた制御動作」を「実行」する(構成j)するから、甲1発明の「遠隔操作用送信機」は、クレーンに対して「送信指令」を送信するものであり、送信する手段を有していることは明らかである。
また、「制御対象の産業機械の動作状態を表す情報を受信する受信手段を有」する(構成k)ものであり、「制御対象の産業機械」は、「送信指令」を送信する対象であるクレーンであると解される。
そうすると、甲1発明の「遠隔操作用送信機」は、クレーンとの間で送信と受信を行うから、「通信」するものということができ、上記「送信する手段」及び「受信手段」は、「通信する通信手段」ということができる。
よって、本件特許発明1と甲1発明とは、「建設機械と通信する通信手段と、」「を含む、」点で共通する。
しかしながら、選択手段は、建設機械の種類を選択するものではない(前記エ)から、通信手段は、「前記選択手段により選択された種類の」建設機械と通信するものではない。
カ 「前記複数の操作レバーおよび前記複数の操作ペダルの少なくとも1つから入力された操作情報の送信を通信手段に対して指示する制御手段と、」「を含む、」について
甲1発明の「レバー」は、「旋回操作レバー、ブーム伸縮操作レバー、フック巻上・巻下操作レバー、ブーム起伏操作レバーであ」り(構成d)、「クレーン」は、「送信機1からの送信指令を受信し、指令内容に応じた制御動作」を「実行」する(構成j)するから、レバーの操作情報をクレーンに送信しているといえる。
よって、本件特許発明1と甲1発明とは、「前記複数の操作レバーから入力された操作情報の送信」をする点で共通する。
他方、甲1発明は、「前記複数の操作ペダル」を含んでおらず、また、操作情報の送信を「通信手段に対して指示する制御手段と、」「を含む、」ことについて、明記されていない。
キ 「前記通信手段により前記建設機械から受信した該建設機械の動作情報を出力する出力手段と」「を含む、」について
甲1発明は、「制御対象の産業機械の動作状態を表す情報を受信する受信手段を有し、前記表示画面には、当該受信手段で受信した情報を表示できる」(構成k)ものであり、「表示画面」は、「液晶表示器」(構成b)に表示される画面であるから、甲1発明の「液晶表示器」は、本件特許発明1の「前記通信手段により前記建設機械から受信した該建設機械の動作情報を出力する出力手段」に相当する。
よって、本件特許発明1と甲1発明とは、「前記通信手段により前記建設機械から受信した該建設機械の動作情報を出力する出力手段と」「を含む、」点で一致する。
ク 前記ア~キによれば、本件特許発明1と甲1発明とは、
「 建設機械を遠隔から操作するための装置であって、
複数の操作レバーと、
選択手段と、
建設機械と通信する通信手段と、
前記複数の操作レバーから入力された操作情報の送信をし、
前記通信手段により前記建設機械から受信した該建設機械の動作情報を出力する出力手段と
を含む、遠隔操作装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本件特許発明1は、「複数の操作ペダルと、」「を含む」のに対して、甲1発明は、当該事項を特定していない点(前記ウ、カ)
相違点2:「選択手段」について、本件特許発明1は、「建設機械の種類を選択する」ものであるのに対して、甲1発明は、クレーンの使用機種を選択するものである点(前記エ、オ)
相違点3:「操作情報の送信」において、本件特許発明1は、「通信手段に対して指示する制御手段と、」「を含む」のに対して、甲1発明は、当該事項を特定していない点(前記カ)
(2)判断
相違点1について検討する。
甲2には、「無線による重機遠隔操作システムにおける重機を操作する重機操作部において、作業情報を入力するための入力部として、オペレータが足で踏んで操作する複数の入力ペダルを設けること」(前記甲2記載事項)が記載されている。
しかしながら、甲1発明の「遠隔操作用送信機」は、「操作部2と、把手部3と、これらを連結している連結部4から構成され」る(構成c)ものであり、「把手」は手に握ることを意味するから、手に持って遠隔操作を行う送信機である。
そうすると、甲1発明は、手に持って遠隔操作を行うことを前提とするものであり、足で踏んで操作する複数の入力ペダルを設けることにより、手に持つことができなくなることは明らかであるから、甲1発明において、足で踏んで操作する複数の入力ペダルを設けることは想定されていないと認められる。
よって、甲1発明に甲2記載事項を適用する動機付けがあるとはいえず、むしろ阻害要因があるといえる。
また、甲3、甲4には、操作ペダルを含むことは記載されておらず、さらに、甲1発明において、操作ペダルを含むことが技術常識であるとはいえない。
よって、甲1発明において、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
(3)小括
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2~甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
2 特許異議申立書の主張について
申立人は、本件特許発明1と甲1発明との上記相違点1に係る構成について、以下のとおり主張する。
「(相違点1)について
遠隔操作装置において、操作レバーと同様に足踏みペダルを併用することが周知である(例えば、甲第2号証を参照)。したがって、当該装置にペダルを追加することは設計者が用途に応じて選択し得る通常的な設計事項に過ぎない。」(特許異議申立書12頁)
上記主張について検討する。
前記1(2)のとおり、甲1発明において、甲2に記載される操作ペダルを含むように構成する動機付けがあるとはいえず、むしろ阻害要因があるから、操作レバーと同様に足踏みペダルを併用することが周知であるとしても、甲1発明において、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。
3 本件特許発明2~9について
本件特許発明2~9は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項を付加したものである。
そうすると、本件特許発明2~9と甲1発明とは、少なくとも、前記1(1)クに示した相違点1~3において相違するものであり、相違点1は、前記1(2)のとおり、当業者が容易になし得たものではない。
したがって、本件特許発明2~9は、甲1発明及び甲2~甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
4 申立理由1のまとめ
よって、申立理由1は理由がない。
第6 まとめ
前記第5によれば、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700857