特許異議申立
2017-700209
空気調和システムおよび植物栽培装置
- 審判番号
- 2017-700209
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-234529
- 登録番号
- 特許第5985348号(P5985348)
- 請求日
- 2017年03月02日
- 審決日
- 2017年08月30日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】学校法人玉川学園
- 【権利者代理人】特許業務法人エム・アイ・ピー
- 【権利者】西松建設株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人エム・アイ・ピー
- 【権利者】東京冷化機工業株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人エム・アイ・ピー
- 【異議申立人】大坪 隆司
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 博之
- 審判官 前川 慎喜
- 審判官 藤田 都志行
- 分類
- P1651.121-YAA(A01G) / P1651.572-YAA(A01G) / P1651.574-YAA(A01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5985348号発明「空気調和システムおよび植物栽培装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5985348号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第5985348号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5985348号の請求項1ないし5に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成24年10月24日に特許出願され、平成28年8月12日にその特許権の設定登録がされた。
その後、その特許に対し、特許異議申立人大坪隆司(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成29年4月25日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年6月9日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、その後申立人に対し平成29年6月28日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を送付し期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは応答がなかったものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正内容
本件訂正請求による訂正内容は、以下の(1)及び(2)のとおりである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、
「栽培室内に栽培棚とともに設置される空気調和システムであって、
前記栽培棚の周囲を前記栽培棚の各段の棚上の各開口部以外からは空気が流れないように、かつ前記各段の棚上は閉鎖されないように閉鎖し、前記栽培棚の長手方向の位置に配置されて前記栽培室を2つの空間に仕切る隔壁と、
前記隔壁に設けられ、一方の空間に存在する空気を吸引し、圧縮して他方の空間へ供給することにより、2つの空間に圧力差を生じさせる空気圧縮手段とを含み、
生じた前記圧力差により、前記栽培棚の複数の棚上の各開口部を通して前記他方の空間から前記一方の空間へ流れる空気流を各前記棚上に形成させる、空気調和システム。」(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)
に訂正する。
(2) 訂正事項2
明細書の課題を解決するための手段の欄の段落【0005】の記載を、
「本発明は、上記課題を解決するために、栽培室内に栽培棚とともに設置される空気調和システムであって、前記栽培棚の周囲を前記栽培棚の各段の棚上の各開口部以外からは空気が流れないように、かつ前記各段の棚上は閉鎖されないように閉鎖し、前記栽培棚の長手方向の位置に配置されて前記栽培室を2つの空間に仕切る隔壁と、前記隔壁に設けられ、一方の空間に存在する空気を吸引し、圧縮して他方の空間へ供給することにより、2つの空間に圧力差を生じさせる空気圧縮手段とを含み、生じた前記圧力差により、前記栽培棚の複数の棚上の各開口部を通して前記他方の空間から前記一方の空間へ流れる空気流を各前記棚上に形成させる、空気調和システムが提供される。」
に訂正する。
2 訂正の適否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1の
「前記栽培棚の周囲を閉鎖し、前記栽培室を2つの空間に仕切る隔壁」を、「前記栽培棚の周囲を前記栽培棚の各段の棚上の各開口部以外からは空気が流れないように、かつ前記各段の棚上は閉鎖されないように閉鎖し、前記栽培棚の長手方向の位置に配置されて前記栽培室を2つの空間に仕切る隔壁」に減縮する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1について、「隔壁」が「前記栽培棚の周囲を前記栽培棚の各段の棚上の各開口部以外からは空気が流れないように、かつ前記各段の棚上は閉鎖されないように閉鎖し、前記栽培棚の長手方向の位置に配置されて前記栽培室を2つの空間に仕切る」ことは、
本件特許の明細書に、
「隔壁18は、・・・棚11の各段の棚上の各開口部20以外からは空気が流れないように閉鎖する。」(段落【0018】)、
「また、図2に示すように、各段の棚上は、隔壁18によって閉鎖されない・・・」(段落【0021】。)、
「隔壁18は、栽培棚11の長手方向のいずれの位置に配設されていてもよいが、図2に示すように、栽培棚11の周囲を閉鎖し、図1に示すように、栽培室10を2つの空間に仕切る。」(段落【0017】)、
と記載されているものである。
以上のように、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の拡張・変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、明細書の記載を訂正事項1の内容に整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3) 一群の請求項について
本件訂正請求は、「請求の趣旨」、及び「訂正の理由」の「一群の請求項についての説明」に記載されているとおり、一群の請求項である請求項[1~5]について訂正することを求めるものである。
(4) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する特許法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
よって、本件訂正請求による訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許の請求項1ないし5に係る発明
上記第2のとおり本件訂正請求による訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「本件訂正発明1」~「本件訂正発明5」という。)。
「【請求項1】
栽培室内に栽培棚とともに設置される空気調和システムであって、
前記栽培棚の周囲を前記栽培棚の各段の棚上の各開口部以外からは空気が流れないように、かつ前記各段の棚上は閉鎖されないように閉鎖し、前記栽培棚の長手方向の位置に配置されて前記栽培室を2つの空間に仕切る隔壁と、
前記隔壁に設けられ、一方の空間に存在する空気を吸引し、圧縮して他方の空間へ供給することにより、2つの空間に圧力差を生じさせる空気圧縮手段とを含み、
生じた前記圧力差により、前記栽培棚の複数の棚上の各開口部を通して前記他方の空間から前記一方の空間へ流れる空気流を各前記棚上に形成させる、空気調和システム。
【請求項2】
前記栽培室内には、前記栽培棚へ載置する栽培トレイと、前記栽培棚に載置された栽培トレイとを搬送するための2つの搬送装置が設置され、前記栽培室は、前記2つの搬送装置が移動するための2つのスペースを有し、前記2つのスペースは、前記2つの空間のそれぞれに存在し、前記各棚上に形成された空気の流路をつなぐヘッダーを形成する、請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
前記栽培室内を除湿するための除湿手段をさらに備える、請求項1または2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記栽培室内に浮遊する浮遊物を除去するための浮遊物除去手段をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【請求項5】
植物を植栽するための栽培トレイが載置される複数段の棚を有する栽培棚と、請求項1~4のいずれか1項に記載の空気調和システムとを含む、植物栽培装置。」
2 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし5に係る特許に対して平成29年4月25日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。
・特許法第29条第2項(進歩性欠如)(同法第113条第2号)
本件請求項1ないし5に係る発明は、甲第1号証記載の発明及び周知技術(甲第2ないし8号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
甲第1号証:特公昭61-30533号公報
甲第2号証:特開平5-71762号公報
甲第3号証:特開平11-98924号公報
甲第4号証:特開2001-16981号公報
甲第5号証:特開2011-212012号公報
甲第6号証:登録実用新案3026502号公報
甲第7号証:特開平8-140478号公報
甲第8号証:特開2011-144957号公報
3 取消理由についての判断
(1) 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、申立人の主張のとおり、以下の発明が記載されている(異議申立書7頁11行から最下行)。
「発芽育成室6内に栽培棚とともに設置される自動制御システムであって、
前記栽培棚の周囲を閉鎖し、前記発芽育成室6を育成室8と発芽室7に仕切る隔壁12と、
育成室8に存在する空気を吸引し、圧縮して発芽室7へ供給することにより、発芽室7と育成室8に圧力差を生じさせるファン11とを含み、
生じた前記圧力差により、前記栽培棚の複数の棚上の各開口部を通して前記発芽室7から前記育成室8へ流れる空気流を各前記棚上に形成させ、
前記栽培室は、前記栽培棚へ載置する受け皿と、前記栽培棚に載置された受け皿とを搬送するための2つのスペースを有し、前記2つのスペースは、発芽室7と育成室8のそれぞれに存在し、前記各棚上に形成された空気の流路をつなぐヘッダーを形成する、自動制御システム。」
(2) 本件訂正発明1について
ア 対比・検討
本件訂正発明1と上記(1)で特定した甲第1号証記載の発明を対比すると、少なくとも、本件訂正発明1は、「栽培棚の長手方向の位置に配置されて栽培室を2つの空間に仕切る」「隔壁」が、「栽培棚の周囲の閉鎖」について、「栽培棚の周囲を栽培棚の各段の棚上の各開口部以外からは空気が流れないように、かつ各段の棚上は閉鎖されないように閉鎖」するものであるのに対し、甲第1号証記載の発明の「発芽育成室6を育成室8と発芽室7に仕切る隔壁12」は、「栽培棚の周囲の閉鎖」について、このような特定を有していない点で相違しているが(以下「相違点」という。)、当該相違点は、甲第2号証ないし甲第8号証にも記載されておらず、当業者にとり周知の技術でもない。したがって、甲第1号証記載の発明において、上記相違点に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
イ 申立人の主張について
上記相違点に係る本件訂正発明1の構成である、「隔壁」が「前記栽培棚の周囲を前記栽培棚の各段の棚上の各開口部以外からは空気が流れないように、かつ前記各段の棚上は閉鎖されないように閉鎖し、前記栽培棚の長手方向の位置に配置されて前記栽培室を2つの空間に仕切る」ことは、上記第2で述べたように、本件訂正請求による訂正で減縮されたものである。
上記第1で述べたように、これについて期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは応答がなかった。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲第1号証記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 本件訂正発明2ないし5について
本件訂正発明2ないし5は本件訂正発明1を更に減縮あるいは引用するものであるから、上記(2)での検討と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4) 小括
以上のとおり、特許法第29条第2項(進歩性欠如)に係る取消理由によっては、訂正後の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
(5) 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立理由は、全て取消理由において採用したので、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。
第4 むすび
したがって、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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