特許異議申立
2024-700517
リモコン装置
- 審判番号
- 2024-700517
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-180750
- 登録番号
- 7390586
- 請求日
- 2024年06月03日
- 審決日
- 2025年06月10日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人北斗特許事務所
- 【異議申立人】関 豊美子
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 寺谷 大亮
- 審判官 衣鳩 文彦
- 分類
- P1651.121-YAA(H04Q) / P1651.537-YAA(H04Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7390586号発明「リモコン装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7390586号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
特許第7390586号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7390586号の請求項1に係る特許についての出願は、令和元年9月30日に出願され、令和5年11月24日にその特許権の設定登録がされ、同年12月4日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年6月3日に特許異議申立人 関 豊美子(以下「申立人」という。)による特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立ての経緯は、概略次のとおりである。
令和6年 6月 3日 :申立人による特許異議申立書の提出
8月20日付け:取消理由通知書
10月21日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
10月31日付け:手続補正指令書(方式)
12月 2日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
12月 9日付け:訂正請求があった旨の通知
令和7年 1月 9日 :申立人による意見書の提出
1月28日付け:取消理由通知書(決定の予告)
4月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
4月16日付け:手続補正指令書(方式)
5月19日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
なお、令和6年10月21日の訂正請求書(同年12月2日に手続補正)による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、すでに申立人に意見書の提出の機会が与えられており、令和7年5月19日に提出された手続補正書(方式)により補正された、同年4月1日の訂正請求書(以下、補正された訂正請求書を「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求によって、以下の第2の1のとおり、特許請求の範囲が相当程度減縮され、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となるものと合議体は判断し、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときに該当するといえるから、申立人に再度の意見書の提出の機会を与えていない。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(なお、下線は訂正箇所を示す。)
訂正事項
特許請求の範囲の請求項1の
「赤外線を発する二個の赤外線素子と、前記二個の赤外線素子を収納するケースと、を備え、前記ケースは、一部に、前記二個の赤外線素子が発する赤外線が透過する一の赤外線透過部を有し、前記赤外線素子より発せられる赤外線は指向性を有するものであり、前記赤外線素子より発せられる赤外線の一の向きを発信向きとし、前記二個の赤外線素子から前記発信向きに発せられた赤外線が、前記二個の赤外線素子より発せられた直後は互いに近づき、その後、互いに遠ざかるように、前記二個の赤外線素子が配置されており、前記ケースは、縦面に取り付けられる背面部と、正面部と、上面部と、を有し、前記発信向きは、前記背面部と平行か、又は、前記背面部から前記正面部に向かう成分を有し、前記上面部の長手方向の一端部に前記赤外線透過部が配置され、前記上面部の長手方向の他端部に操作部が配置されている、リモコン装置。」
という記載を、
「赤外線を発する二個の赤外線素子と、前記二個の赤外線素子を収納するケースと、前記ケースに収納される基板と、を備え、前記ケースは、一部に、前記二個の赤外線素子が発する赤外線が透過する一の赤外線透過部を有し、前記赤外線素子より発せられる赤外線は指向性を有するものであり、前記赤外線素子より発せられる赤外線の一の向きを発信向きとし、前記二個の赤外線素子から前記発信向きに発せられた赤外線が、前記二個の赤外線素子より発せられた直後は互いに近づき、その後、互いに遠ざかるように、前記二個の赤外線素子が配置されており、前記ケースは、縦面に取り付けられる背面部と、正面部と、上面部と、を有し、前記上面部の長手方向の一端部に前記赤外線透過部が配置され、前記上面部の長手方向の他端部に操作部が配置されており、前記赤外線透過部と前記操作部とは、前記上面部において前記上面部の短手方向の中央部を通りかつ前記上面部の長手方向と平行な一直線を含む位置に位置しており、前記基板は前記正面部側の面及び前記背面部側の面を有し、前記赤外線素子は、前記発信向きが前記背面部と平行か又は前記背面部から前記正面部に向かう成分を有するように前記基板の前記背面部側の面に実装されている、リモコン装置。」
という記載に訂正する。
2 訂正の適否
(1)訂正の目的
訂正事項は、次のア~ウの内容を含むものである。
ア 赤外線透過部及び操作部の上面部における位置について、「前記上面部において前記上面部の短手方向の中央部を通りかつ前記上面部の長手方向と平行な一直線を含む位置に位置しており、」と限定する訂正
イ 赤外線素子が実装される部材と赤外線素子の位置について、「前記ケースに収納される基板と、」を備えること、「前記基板は前記正面部側の面及び前記背面部側の面を有」することを限定した上で、「前記赤外線素子は、前記発信向きが前記背面部と平行か又は前記背面部から前記正面部に向かう成分を有するように前記基板の前記背面部側の面に実装されている、」と限定する訂正
ウ 「前記発信向きは、前記背面部と平行か、又は、前記背面部から前記正面部に向かう成分を有し、」を削除する訂正
そして、前記ア及びイの内容は、いずれも特許請求の範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、前記ウの内容は、前記イの内容により、重複した記載となる記載を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
よって、訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(2)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項は、前記(1)のとおり、特許請求の範囲を減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定を満たす。
(3)新規事項追加の有無
本件特許の願書に添付した明細書には、次の事項が記載されている。
「【図面の簡単な説明】
【0009】
・・・(略)・・・
【図2】図2Aは、同上のリモコン装置の平面図である。図2Bは、同上のリモコン装置の正面図である。図2Cは、同上のリモコン装置の下面図である。図2Dは、同上のリモコン装置の背面図である。図2Eは、同上のリモコン装置の側面図である。
【図3】図3は、同上のリモコン装置の分解斜視図である。
・・・(略)・・・
【図8】図8は、同上のリモコン装置の取付部材及び第2ケース体を除いた裏面図である。」
「【0035】
図2A及び図2Bに示すように、ケース2は、一部に、赤外線が透過する一の赤外線透過部20を有する。図3に示すように、赤外線透過部20は、赤外線が透過しない材料により形成されたケース2の一部に形成される、開口200を有する。本実施形態では、赤外線透過部20は、上面部23に配置されている。具体的には、開口200は、上面部23の一部に形成されている。開口200は、上面部23の長手方向の一端部に形成される。開口200には、赤外線透過部材201が配置される。赤外線透過部材201は、ケース2から抜け止めされた状態で、ケース2に取り付けられる。赤外線透過部材201は、赤外線が透過する材料により形成されるもので、本実施形態では赤外線が透過する合成樹脂により形成される。
【0036】
(2.2.2)操作部
リモコン装置12は、操作部3を有する。操作部3は、便器装置1における局部洗浄機能、便器洗浄機能等の各種の機能を発揮するために、使用者に操作される。操作部3は、押しボタンにより構成される。操作部3は、正面部22及び上面部23に配置されている。
【0037】 (省略)
【0038】
上面部23の操作部3に対応する部分には、操作部用開口231が形成される。操作部用開口231には、操作部材31が配置される。操作部材31は、ケース2から抜け止めされた状態で、ケース2の内外方向に移動可能に配置される。操作部材31により、上面部23の操作部3としての押しボタンが構成される。」
「【0040】
(2.2.3)基板、カバー及び基板支持部
リモコン装置12は、基板5を有する。基板5は、ケース2に収納される。本実施形態では、リモコン装置12は、基板5として、第1基板51及び第2基板52を有する。第1基板51は、上面部23の下側において上面部23に沿って配置される。第2基板52は、正面部22の裏側において正面部22に沿って配置される。」
「【0050】
図7A及び図7Bに示すように、第2基板52は、矩形状をしているが、正面部22より小さい。第2基板52の正面部22側の面のうち、操作部3に対応する部分には、押しボタンスイッチ56が実装されている。第2基板52に実装される押しボタンスイッチ56は、第1基板51に実装される押しボタンスイッチ53と同様のものであるが、異なるものであってもよい。第2基板52に実装された押しボタンスイッチ56は、使用者により化粧シート28の操作部3に対応する部分281が押し操作されることにより、正面部22の操作部3に対応する部分221を介して押されて、オンになる。」
「【0052】
図7B及び図8に示すように、赤外線素子8は、第2基板52に実装される。リモコン装置12は、少なくとも二個の赤外線素子81,82を有する。本実施形態では、二個の赤外線素子81,82が第2基板52に実装されている。二個の赤外線素子81,82が発する赤外線は、一の赤外線透過部20を透過する。」
「【0057】
また、二個の赤外線素子81,82の発信向きは、背面部21と平行か、又は、背面部21から正面部22に向かう成分を有する。すなわち、二個の赤外線素子81,82の発信向きは、正面部22から背面部21に向かう成分は有しない。赤外線素子8の発信向きが正面部22から背面部21に向かう成分を有すると、赤外線素子8から発せられた赤外線の大部分がトイレルーム9の側壁91に向けて向かい、側壁91にて反射するが、反射が多くなると減衰が大きくなるため、好ましくない。そこで、二個の赤外線素子81,82の発信向きは、背面部21と平行か、又は、背面部21から正面部22に向かう成分を有するように形成される。」
また、本件特許の願書に添付した図面の図2A、図3及び図8は次のとおりである。
「【図2A】
[図:0001426812000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001426812000002.jpg]
」
「【図8】
[図:0001426812000003.jpg]
」
図2A及び図3より、赤外線透過部20と操作部3が、リモコン装置12のケース2の上面部23において上面部の短手方向の中央部を通りかつ上面部23の長手方向と平行な一直線を含む位置に位置していることが見てとれる。(前記(1)アの内容)
また、【0040】の「リモコン装置12は、基板5を有する。基板5は、ケース2に収納される。」、及び「基板5として、第1基板51及び第2基板52を有する。」との記載、【0050】の「第2基板52の正面部22側の面」との記載、並びに図3より、第2基板52は、正面部側の面及び背面部側の面を有することが理解できる。また、【0052】の「二個の赤外線素子81,82が第2基板52に実装されている。」との記載、図3、及び図8より、赤外線素子8は、第2基板52の背面部側の面に実装されていることが理解できる。さらに、【0057】には「二個の赤外線素子81,82の発信向きは、背面部21と平行か、又は、背面部21から正面部22に向かう成分を有する」と記載されている。(前記(1)イの内容)
そして、前記(1)ウの内容は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そうすると、訂正事項における前記(1)ア~ウの内容は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、新規事項を追加するものではない。
よって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定を満たす。
(4)独立特許要件
本件においては、訂正前の請求項1について特許異議の申立てがされているので、訂正事項に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の適用はない。
(5)まとめ
前記(1)~(4)のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであり、さらに、本件訂正について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の適用はない。
よって、本件訂正は適法になされたものであり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
赤外線を発する二個の赤外線素子と、
前記二個の赤外線素子を収納するケースと、
前記ケースに収納される基板と、を備え、
前記ケースは、一部に、前記二個の赤外線素子が発する赤外線が透過する一の赤外線透過部を有し、
前記赤外線素子より発せられる赤外線は指向性を有するものであり、前記赤外線素子より発せられる赤外線の一の向きを発信向きとし、
前記二個の赤外線素子から前記発信向きに発せられた赤外線が、前記二個の赤外線素子より発せられた直後は互いに近づき、その後、互いに遠ざかるように、前記二個の赤外線素子が配置されており、
前記ケースは、縦面に取り付けられる背面部と、正面部と、上面部と、を有し、
前記上面部の長手方向の一端部に前記赤外線透過部が配置され、前記上面部の長手方向の他端部に操作部が配置されており、
前記赤外線透過部と前記操作部とは、前記上面部において前記上面部の短手方向の中央部を通りかつ前記上面部の長手方向と平行な一直線を含む位置に位置しており、
前記基板は前記正面部側の面及び前記背面部側の面を有し、
前記赤外線素子は、前記発信向きが前記背面部と平行か又は前記背面部から前記正面部に向かう成分を有するように前記基板の前記背面部側の面に実装されている、
リモコン装置。」
第4 特許異議申立理由について
申立人は、証拠方法として、以下2の甲第1号証~甲第4号証(以下「甲1」~「甲4」という。)を提出し、以下1の理由により、本件の請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨、申し立てている。
1 申立理由
(1)申立理由1(進歩性)
本件特許の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明、及び甲2~甲4記載事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(明確性要件)
本件特許の請求項1についての特許は、以下の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
本件特許の請求項1に係る発明は、「前記上面部の長手方向の一端部に前記赤外線透過部が配置され、前記上面部の長手方向の他端部に操作部が配置されている、」について、ケースの上面部の長手方向のうち、一端部と他端部との境界(赤外線透過部と操作部とが配置される箇所)について不明確である。
2 証拠方法
甲第1号証:特開2014-190113号公報
甲第2号証:特開2006-141876号公報
甲第3号証:特開2001-103010号公報
甲第4号証:特開2009-256919号公報
3 また、申立人は、令和7年1月9日に提出した意見書において、次の参考資料を提出している。
参考資料1:特開2005-204270号公報(以下「参考資料1」という。)
参考資料2:特開2019-129481号公報(以下「参考資料2」という。)
第5 取消理由(決定の予告)の概要
令和6年10月21日の訂正請求書(同年12月2日に手続補正)により訂正された請求項1に係る特許に対して、当審において令和7年1月28日付けの取消理由通知書(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
理由1(進歩性)
請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明並びに甲2及び甲3に記載された周知技術、甲4に記載された事項並びに周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
なお、甲1~甲4は、前記第4の2の証拠方法である。
第6 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 各甲号証に記載された事項、甲1発明
(1)甲1
ア 甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は強調のため当審において付与したものである(以下同様。)。
「【0001】
本発明は、トイレルーム壁面などに配置される衛生洗浄装置用のリモートコントローラ関する。」
「【0011】
以下、本実施形態にかかる局所洗浄便座操作用リモコンについて図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る衛生洗浄装置用リモートコントローラを備えたトイレルームの斜視図である。図2は、本実施形態に係る衛生洗浄装置用リモートコントローラを示す斜視図である。図3は、本実施形態に係る衛生洗浄装置用リモートコントローラを示す背面図であり、図4は、本実施形態に係る衛生洗浄装置用リモートコントローラを示す拡大図である。
なお、本実施形態に係るリモートコントローラは、本願明細書においては、壁面に取付けた状態のリモートコントローラの上側を天面、壁面に相対する面を背面、壁面の反対側に位置する面を正面として説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るリモートコントローラ1は、トイレルームの壁面Wに取り付けられ、トイレルームに設置された衛生洗浄装置100を操作するための衛生洗浄装置用リモートコントローラである。
【0013】
ここで、衛生洗浄装置100は、便器800の上面に設置されており、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200および便蓋300は、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の「おしり」の洗浄(おしり洗浄)や女性局部の洗浄(ビデ洗浄)などを実現する身体洗浄機能部などが内蔵されている。なお、図1に表した衛生洗浄装置100では、洗浄ノズル410がボウル801内に進出した状態を表している。
【0014】
図2に示すように、リモートコントローラ1は、ケース2の内部に基板を隠蔽した構成である。ケース2の正面および天面に、各種動作を入力するための正面釦3および天面釦7が設けられている。また、リモートコントローラ1は、赤外線によって衛生洗浄装置100に対する指示情報を送信するものであり、ケース2の天面には、赤外線発光素子からの送信信号を透過する材質からなる送信窓10が送信部として設けられている。なお、基板には、使用者による正面釦3および天面釦7に対する操作を検出するためのスイッチ(接点)と、このスイッチからの情報に基づいて、衛生洗浄装置100へ送信する指示信号を生成する制御部(マイクロコンピュータ)とが実装されている。」
「【0016】
また、天面釦7は、便座200および便蓋300の開閉を指示するための操作釦や、便器洗浄を実行するための操作釦である。
使用者は、これらの正面釦3および天面釦7を操作することで、衛生洗浄装置100に各種動作を指示することができる。
【0017】
図3に示すように、リモートコントローラ1は、その背面に、リモートコントローラ1の設定を行うための背面操作部20と、乾電池を覆うための乾電池蓋40と、リモートコントローラ1を壁面Wに取り付けるための取付凹部30と、を有している。」
「【図1】
[図:0001426812000004.jpg]
」
「【図2】
[図:0001426812000005.jpg]
」
「【図3】
[図:0001426812000006.jpg]
」
イ 前記アより読みとれる事項
(ア)【図2】より、リモートコントローラ1のケース2の天面は、長方形の形状を有することが見てとれる。そして、長方形の形状の長辺の方向は、一般に長手方向と称され、長方形の形状の短辺の方向は、短手方向と称されることは周知である。
(イ)送信窓10は、ケース2の天面に設けられる(【0014】)。
そして、前記(ア)を踏まえれば、【図2】より、一の送信窓10が、ケース2の天面の長手方向の一方の端部に設けられていることが見てとれる。
(ウ)天面釦7は、ケース2の天面に配置される(【0014】)。
そして、前記(ア)を踏まえれば、【図2】より、リモートコントローラ1は、ケース2の天面の長手方向において、送信窓10とは逆の端部に配置されている天面釦7を有することが見てとれる。
また、天面釦7は、天面の短手方向の一方の端部に配置されていることが見てとれる。
ウ 甲1発明
したがって、前記ア、イより、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、甲1発明をa~jに分説し、「構成a」のようにして以下参照する。
「a リモートコントローラ1は、ケース2の内部に基板を隠蔽した構成であり、ケース2の正面および天面に、各種動作を入力するための正面釦3および天面釦7が設けられ、赤外線によって衛生洗浄装置100に対する指示情報を送信するものであり、(【0014】)
b ケース2の天面には、赤外線発光素子からの送信信号を透過する材質からなる送信窓10が送信部として設けられており、(【0014】)
c 一の送信窓10が、ケース2の天面の長手方向の一方の端部に設けられており、(前記イ、【図2】)
d 基板には、使用者による正面釦3および天面釦7に対する操作を検出するためのスイッチ(接点)と、このスイッチからの情報に基づいて、衛生洗浄装置100へ送信する指示信号を生成する制御部(マイクロコンピュータ)とが実装され、(【0014】)
e 天面釦7は、操作釦であり、(【0016】)
f ケース2の天面の長手方向において、送信窓10とは逆の端部に配置されている天面釦7を有し、天面釦7は、天面の短手方向の一方の端部に配置され、(前記イ、【図2】)
g リモートコントローラ1は、その背面に、リモートコントローラ1の設定を行うための背面操作部20と、乾電池を覆うための乾電池蓋40と、リモートコントローラ1を壁面Wに取り付けるための取付凹部30と、を有し、(【0017】)
h リモートコントローラ1は、壁面Wに取り付けられ、(【0012】)
i 背面は、壁面に相対する面である(【0011】)
j リモートコントローラ1」
(2)甲2
ア 甲2には、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、浴室用赤外線リモコン装置の改良に関する。」
「【0015】
図3は、本発明装置の外観構成図を示している。図4は、この装置の分解斜視図を示している。これらの図では、本発明装置Aは、バスサウンドユニットに適用されている。バスサウンドユニットAは、赤外線透過窓Wと操作部11とを設けた前面パネル1と、その前面パネル1の裏面側に、カバーCを介して、重ねて配置されるボディ2とを備え、浴室の壁面などに埋設あるいはネジ止めされる構造になっており、前面パネル1には、操作スイッチSW(後述)を設けた操作部11を中央に設け、その左右に密閉型スピーカSPを分離して配置している。なお、17は、前面パネル1に設けられ、密閉型スピーカSPを露出させるスピーカ露出窓である。」
「【0020】
図2は、同時に提案される本発明装置の構造的特徴を示すものである。
【0021】
この図に示す回路基板Bは、赤外線透過窓W側に向けて赤外線LEDランプL1,L2を実装した発光部回路基板B1、スイッチSWの電極部B21などの回路部品を実装した主回路基板B2とで構成され、発光部回路基板B1は、主回路基板B2の中央部を刳り貫き、ボディ2の内奥側に後退させて配設されており、発光部回路基板B1と主回路基板B2とは配線lで接続されている。なお、B4は、主回路基板B2をボディ2内で支持するための支柱である。
【0022】
また、カバーCには、スピーカSPを前面パネル1のスピーカ露出窓から露出するための開口14と、操作スイッチSWの押圧を対応した主回路基板B2の電極部B21に伝達するスイッチ操作伝達板15と、赤外線を通過させる赤外線通過孔16とが形成されている。
【0023】
前面パネル1の適所には、赤外線通過孔16に対応させて、赤外線透過窓Wが構成されており、この赤外線透過窓Wは、前面パネル1のうち、赤外線LEDランプL1,L2からの赤外線の照射範囲に切欠部12を形成し、その切欠部12に透光性板13を嵌め込んで構成されている。
【0024】
また、赤外線LEDランプL1,L2は、それぞれの光軸が交差するように互い異なる向きに傾けて実装されており、これにより、LEDランプの実装時の高さを低くして、赤外線の届く範囲を広くしている。」
「【図2】
[図:0001426812000007.jpg]
」
「【図3】
[図:0001426812000008.jpg]
」
イ 甲2記載事項
【図2】より、「赤外線LEDランプ」(【0021】)である「L1,L2」から延びている矢印は、交差した後、互いに遠ざかるような方向を向いていることが見てとれる。
そして、【図2】は、「赤外線LEDランプL1,L2は、それぞれの光軸が交差するように互い異なる向きに傾けて実装され」(【0024】)たものであるから、当該矢印は、赤外線LEDランプL1,L2それぞれの「光軸」であると認められる。
そうすると、甲2には、次の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「赤外線リモコン装置であって、(【0001】)
赤外線透過窓W側に向けて赤外線LEDランプL1,L2を実装し、(【0021】)
赤外線透過窓Wは、透光性板13を嵌め込んで構成され、(【0023】)
赤外線LEDランプL1,L2は、それぞれの光軸が交差するように互い異なる向きに傾けて実装して、赤外線の届く範囲を広くするものであり、(【0024】)
それぞれの光軸は、交差した後、互いに遠ざかるような方向を向いている(【図2】)こと」
(3)甲3
ア 甲3には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】 光信号の波長を透過する光信号透過窓及び光信号透過窓を介し光軸を中心にして所定の光通信角度範囲で光信号を送信または受信することが可能な光信号素子を二次元的に複数配置した基板を有する光通信部と、前記光通信部を設置する筺体とを備え、前記複数の光信号素子は基板上に各光軸が前方一か所でほぼ交わるように凹状に配置され、前記光信号透過窓は各光軸がほぼ交わる近辺でかつ前記基板の前方に配置されたことを特徴とする光通信装置。」
「【0010】本発明によれば、光信号を透過する光信号透過窓の領域(通信開口面積)を小さくし、光通信部に対して光通信角度範囲以外から入射される外乱光の影響を少なくすることができる。このため、広い光通信角度範囲をもちながら、光通信部の小型化や信頼性の高い光通信が可能になる。」
「【0017】図1は本発明の一実施例である光通信装置の構成を示すブロック図である。1は光通信装置を示し、光通信装置1は赤外線リモコン機器やIrDA赤外通信機器などに適用される。2は光通信を送信または受信する光信号素子を実装した基板からなる光通信部を示す。光通信部2の詳細構成については図2及び図3で説明する。
【0018】3は光通信部2の各光信号素子を制御する光通信制御部を示し、光通信制御部3は、光信号素子を発光素子として発光駆動する発光駆動回路、光信号素子が受光素子として受光した光信号をノイズ除去して増幅駆動する増幅回路などから構成される。4は通信データを処理するデータ処理部を示し、CPU、各種記憶媒体などから構成され、通信データを光信号または光信号を通信データに変換する。5は光通信を実行するための各種指示や通信データを入出力する入出力部を示し、入力部として小型キースイッチ、タッチパネル、出力部としてLCD(液晶表示ディスプレイ)、ELディスプレイなどで構成される。
【0019】図2は本発明の一実施例である光通信部の部品配置を示す図である。図2において、21は光軸を中心にして所定の光通信角度範囲で光信号を送信または受信することが可能な光信号素子を示し、発光素子と受光素子とが一体成型されたモジュールに構成されている。発光素子としてはIrDA赤外LED、受光素子としてはPINフォトダイオードが用いられる。
【0020】22は光通信素子21を実装する基板であり、ガラスエポキシ基板などで構成される。23は光信号である赤外光の波長を透過する樹脂またはガラスフィルタで形成された光信号透過窓(光通信窓)を示し、光信号透過窓23は、通信角度を狭くしない程度に小さく設計することで、外乱光の影響を抑制する役割ももつ。
【0021】本実施例では、光信号素子21の数は3個であり、それぞれの通信角度はIrDA規格に準じた±15°の場合である。各光信号素子21は30°の角度を付けて光信号透過窓23に対して凹状に配置する。つまり、基板22に3個の光信号素子21を通信角度分だけ光軸を順次シフトし、その各光軸が前方一か所でほぼ交わるように凹状に配置する。この実施例は、光通信素子の通信角度が±15°の場合であるが、そのほかの通信角度であってもよい。
【0022】光信号透過窓23は、各光軸がほぼ交わる近辺でかつ光通信部2の前部に配置される。この結果、通信角度範囲以外の視野角が極力持たないため、外乱光の影響が受けにくくなる。
【0023】24は基板22及び光信号透過部23を配置する筺体を示し、アルミダイキャスト、樹脂などで構成される。25は周囲の外乱光を遮光する遮光部を示し、遮光部25は、光信号透過窓23の外側かつ光信号素子21が光信号を送信または受信する光通信角度範囲に沿って筺体24に設置される。
【0024】本実施例では、遮光部25は、赤外光を透過しない金属や樹脂などの板状のもので構成されている。好ましくは外乱光の赤外光を反射しにくいように、反射防止多層膜や艶消し塗装などによる反射防止処理を施すのが好ましい。
また、遮光部25は板状のものでなく、筒状のものや、筺体24を変形した構造でもよい。
【0025】図2に示すように、基板22を光信号透過窓23から距離αだけ内部に配置することで、光信号素子21が外乱光の影響を受けにくい構造にする。
図4に示すように、凸型に光信号素子21が配置されている場合、距離αが大きくなればなるほど、光信号透過窓23の大きさ、または遮光部25の通信開口面積は大きくなるが、凹型に配置することで、小さくすることができる。」
「【0027】図3は本発明の他の実施例である光通信部の部品配置を示す図である。図3に示すように、光通信部2は、複数の光信号素子21が配列された基板22をその各光軸が前方一か所でほぼ交わるように凹状に複数配置されている。また、図3において、
(1)複数の光信号素子を、その各光軸が平行になるように基板に配置すれば、光通信部2の発光強度や受信感度が向上する。
(2)複数の光信号素子を配列した複数の基板を、各基板上の光信号素子の光軸が前方で交わるように凹型に配置すれば、基板前方に配置する光信号透過窓23の大きさを小さくすることができる。結果、光通信部2は三次元的に小さくすることができる。また、光信号素子の配列、及びその基板の配置を共に凹型にすることにより、光信号透過窓の大きさを最小にすることができる。」
「【図2】
[図:0001426812000009.jpg]
」
「【図3】
[図:0001426812000010.jpg]
」
イ 甲3記載事項
【図2】、【図3】より、「光信号素子」である「21」の光軸は、交わった後、互いに遠ざかる方向を向いていることが見てとれる。
よって、甲3には、次の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「赤外線リモコン機器に適用される光通信装置1であって、(【0017】)
複数の光信号素子は基板上に各光軸が前方一か所でほぼ交わるように凹状に配置され、前記光信号透過窓は各光軸がほぼ交わる近辺でかつ前記基板の前方に配置され、(【請求項1】)
広い光通信角度範囲をもつものであり、(【0010】)
各光軸は、交わった後、互いに遠ざかる方向を向いている(【図2】、【図3】)こと」
(4)甲4
ア 甲4には、次の事項が記載されている。
「【0009】
本実施形態は、トイレルームの後方に便器2を備えており、便器2内には内装機器として局部洗浄装置本体1aが内装されている。局部洗浄装置にはリモコン3aが付属されており、該リモコン3aはトイレルームのいずれかの壁に沿って配設されている。」
「【0011】
本実施形態の局部洗浄装置のリモコン3aは図1及び図2に示すように、正面視略矩形状のリモコンケーシング31の上部に無線の発信部32を備え、リモコンケーシング31の前面に操作ボタンが複数個配置されている。リモコン3a用の無線には赤外線を用いており、発信部32として赤外線LEDを用いており、これらはリモコンケーシング31の内部に備える本体基板33に取り付けられる。
【0012】
この発信部32は一対の発信部321,322を備えており、一方の発信部32を第一発信部321とし、他方の発信部32を第二発信部322とする。各発信部321,322はそれぞれ、リモコンケーシング31の上端面の両端から若干内側に位置すると共に、リモコンケーシング31内部に埋没するように取り付けられている。」
「【0014】
本実施形態においては、第一発信部321及び第二発信部322は、各発信部321,322から発せられた無線信号が進むにつれて互いの距離が広がるように傾斜を有すると共に、リモコンケーシング31の前面に向けて無線信号が進む方向にやや傾斜を有するように設置されている。
【0015】
このリモコン3aは、トイレルームのいずれかの壁面に沿って上下に決められた向きで配設されるもので、本実施形態では略矩形状をしたリモコンケーシング31の正面視における上辺及び下辺が水平になるようにして位置させた状態で、リモコンケーシング31後面を壁面に取り付ける。なお、リモコンケーシング31に配設される前記複数の操作ボタンは、正面視において左から停止ボタン34、おしり洗浄ボタン35、ビデ洗浄ボタン36であり、各操作ボタンを操作することで各機能を発揮させるための無線信号を局部洗浄装置本体1aに送信する。」
「【0017】
このように構成されたリモコン3aの発信部32から発せられた無線信号は、図4(a)及び(b)に示すように、平面視でトイレルームの後方に備わる便器2の後部上面に露出した受信部11に向かって進むと共に、天井に向かって上方に進む。天井に対して鋭角で入射した無線信号は、反射して下方に方向を変えるが、依然として平面視で便器2の後部上面に露出した受信部11側に向かって進み、その後受信部11によって受信される。このことは、強い無線信号を有する断面中央部を受信部11に届かせることができる作用に加えて、天井や床や壁との間で繰り返し反射することによって減衰してしまう前に受信部11に無線信号を届かせることができるので、無線信号の移動距離や反射回数(本実施形態では最少の1回)を少なくするという作用も奏する。したがって、リモコン3aからの無線信号をより確実に受信部11に届かせることができる。」
「【0019】
以上、局部洗浄装置のリモコン3aに基づいて本発明の便器装置1のリモコン3を説明したが、内装機器は局部洗浄装置に限定されるものではなく、暖房便座や脱臭装置等、様々な装置が内装機器として用いられる。またなお、本実施形態では便器2内に内装機器を内装しているが、特に内装する必要はなく、便器2後部の上面に載置してもよく、特に限定されない。また、発信部32として赤外線LEDを使用したが特に限定されない。さらに、本実施例では、第一発信部321は左斜め上方に発信方向を向けると共に、第二発信部322は右斜め上方に発信方向を向けて設置したが、特に限定されるものではなく、第一発信部321を右斜め上方に発信方向を向けると共に、第二発信部322を左斜め上方に発信方向を向けて各無線信号を交差させるように発信させてもよい。また、第一発信部321と第二発信部322とを縦に(すなわち上下に)並ぶように設けてもよく、例えば、第一発信部321をリモコンケーシング31の上端部に設け、第二発信部322をリモコンケーシング31の前面の前記第一発信部321の下方に位置する部分に設けてもよい。また、第一発信部321と第二発信部322とを略同じ箇所に設けてもよく、一対の発信部321、322を設ける箇所は特に限定されない。」
「【図1】
[図:0001426812000011.jpg]
」
「【図2】
[図:0001426812000012.jpg]
」
「【図3】
[図:0001426812000013.jpg]
」
イ 甲4記載事項
前記アより、甲4には、次の技術的事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「トイレルームの壁に沿って配設され、発信部32として赤外線LEDを用いた局部洗浄装置のリモコン3aにおいて、(【0009】、【0011】)
赤外線LEDは、リモコンケーシング31の内部に備える本体基板33に取り付けられ、(【0011】)
第一発信部321及び第二発信部322は、リモコンケーシング31の前面に向けて無線信号が進む方向にやや傾斜を有するように設置(【0014】)すること」
2 周知技術
甲3記載事項(前記1(3)イ)における「光通信装置1」は、「赤外線リモコン機器に適用される」ものであるから、「光信号素子」は、赤外線を送信する素子である。
また、「複数の光信号素子」が「二個の光信号素子」を含むことは明らかである。
そうすると、甲2記載事項、甲3記載事項より、次の技術(以下「周知技術」という。)は、本件特許出願時、周知であったと認められる。
「赤外線リモコン装置であって、それぞれの光軸が、交差した後、互いに遠ざかるような方向を向くように、二個の赤外線素子を配置することで、赤外線の届く範囲を広くすること」
3 周知事項
(1)参考資料1及び参考資料2には、それぞれ次の事項が記載されている。
ア 参考資料1
「【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態であるリモコンについて説明する。なお、本実施形態のリモコンは、衛生洗浄装置の遠隔操作用として、トイレルーム壁面に取付けて使用することから、本願明細書においては、壁面に取付けた状態にあるリモコンの上側を天面、壁面に相対する面を背面、壁面の反対側に位置する面を正面として説明を行う。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態であるリモコンを示す図であり、平面図、正面図、背面図、右側面図である。リモコンは、正面、天面、底面および左右側面からなる六面体構造で形成されており、正面および天面は金属製の表面パネル(以下「表面ケース」という。)で一体的に形成され、底面、背面および左右側面を樹脂成形された樹脂基台(以下「樹脂基台」という。)で一体的に形成されている。
【0021】
図1において、Aはリモコン正面、Bはリモコン天面、Cはリモコン背面であり、1は天面部赤外線発光フィルタ、2はリモコン天面部操作部、3はリモコン正面部操作部、4はリモコン背面部操作部、5はリモコン背面部表示部、6は電池カバー、7は金属製の表面ケース、8は樹脂基台である。また、このリモコンを、トイレルーム壁面に取り付けられたハンガー(後述する図14,図15参照)に着脱自在に取り付けるため、リモコン背面Cの左右端部付近にそれぞれ溝状の取付け部142が1つずつ設けられている。」
「【0045】
図8は、リモコン天面に配する赤外線フィルタと操作部の関係を示す平面図である。このリモコンは、前述した側面に投光する赤外線投光部に加え、上方に投光する赤外線投光部を有する。図8において、1は天面部赤外線発光フィルタ、2はリモコン天面部操作部である。リモコン天面に配する天面部赤外線発光フィルタ(IR窓)1および天面部操作部2は共に同径の円形状であり、その中心点を揃えて配置間隔を均等にしている。」
「【図1】
[図:0001426812000014.jpg]
」
「【図8】
[図:0001426812000015.jpg]
」
イ 参考資料2
「【0014】
図1~図3に示したリモコン装置1は、横長の略直方体形状のリモコン本体10と、リモコン取付具40とを備えている。
【0015】
リモコン本体10の外面には種々のスイッチが配されている。具体的には、前方に向けて下り傾斜した上面10cに、大小洗浄用の2つの便器洗浄スイッチ18と、便座開閉スイッチ19と、便蓋開閉スイッチ20とが配されている。」
「【0020】
さらに、リモコン本体10の上面10cの左右両端から側面10eにいたる両角部には、無線信号発信部21が配設されている。なお、便器本体(不図示)には、無線信号発信部21から発信される信号を受信する受信部(不図示)が配設されている。」
「【図1】
[図:0001426812000016.jpg]
」
(2)周知事項
前記(1)アの、図1及び図8より、リモコン天面に設けられる天面部赤外線発光フィルタ1、リモコン天面部操作部2は、リモコン天面の短手方向の中央部を通っており、長手方向と平行な一直線を含む位置に位置していることが見てとれる。
また、前記(1)イの、図1より、リモコン本体10の上面10cに配置される無線信号発信部21、スイッチ18~20は、上面10cの短手方向の中央部を通っており、長手方向と平行な一直線を含む位置に位置していることが見てとれる。
そして、前記(1)アの「赤外線発光フィルタ1」、前記(1)イの「無線信号発信部21」は、いずれも本件発明の「赤外線透過部」に対応するから、「リモコンにおいて、赤外線透過部と前記操作部とを、前記上面部において前記上面部の短手方向の中央部を通りかつ前記上面部の長手方向と平行な一直線を含む位置に位置させること」(以下「周知事項」という。)は、本件特許出願時、周知であったと認められる。
4 本件発明と甲1発明との対比・判断
(1)対比
本件発明と甲1発明とを対比する。
ア 「赤外線を発する二個の赤外線素子と、前記二個の赤外線素子を収納するケースと、前記ケースに収納される基板と、を備え、」について
甲1発明の「赤外線発光素子」(構成b)は、本件発明の「赤外線素子」に相当し、甲1発明の「ケース2」(構成a)は、本件発明の「ケース」に相当する。
また、甲1発明は、「ケース2の内部に基板を隠蔽した構成であ」(構成a)るから、ケースに収納される基板を備えるものであり、「ケース2の天面に」、「赤外線発光素子からの送信信号を透過する材質からなる送信窓10が送信部として設けられて」(構成b)いるから、赤外線発光素子は、ケース2に収納されているといえる。
そうすると、本件発明と甲1発明とは、「赤外線を発する赤外線素子と、前記赤外線素子を収納するケースと、前記ケースに収納される基板と、を備え」る点で一致する。
他方、甲1発明では、「赤外線発光素子」の数について、特定されていない。
イ 「前記ケースは、一部に、前記二個の赤外線素子が発する赤外線が透過する一の赤外線透過部を有し、」について
甲1発明の「送信窓10」は、「赤外線発光素子からの送信信号を透過」(構成b)するものであるから、本件発明の「赤外線透過部」に相当する。
よって、本件発明と甲1発明とは、「前記ケースは、一部に、前記赤外線素子が発する赤外線が透過する一の赤外線透過部を有し」ている点で一致する。
他方、前記アと同様に、甲1発明では、「赤外線発光素子」の数について、特定されていない。
ウ 「前記赤外線素子より発せられる赤外線は指向性を有するものであり、前記赤外線素子より発せられる赤外線の一の向きを発信向きとし、」、及び「前記二個の赤外線素子から前記発信向きに発せられた赤外線が、前記二個の赤外線素子より発せられた直後は互いに近づき、その後、互いに遠ざかるように、前記二個の赤外線素子が配置されており、」について
「赤外線発光素子」が指向性を有することは、技術常識と認められる。そして、当該指向性の向きを「発信向き」と称することは任意である。
よって、本件発明と甲1発明とは、「前記赤外線素子より発せられる赤外線は指向性を有するものであり、前記赤外線素子より発せられる赤外線の一の向きを発信向きとし」の点で一致するが、甲1発明では、「前記二個の赤外線素子から前記発信向きに発せられた赤外線が、前記二個の赤外線素子より発せられた直後は互いに近づき、その後、互いに遠ざかるように、前記二個の赤外線素子が配置されて」いることについて、特定されていない。
エ 「前記ケースは、縦面に取り付けられる背面部と、正面部と、上面部と、を有し、」について
甲1発明における「ケース2」の「天面」、「正面」(構成a)は、それぞれ、本件発明の「上面部」、「正面部」に相当する。
また、甲1発明の「壁面W」(構成g)は、本件発明の「縦面」に相当する。
そして、甲1発明において、「背面は、壁面に相対する面であ」(構成i)り、「リモートコントローラ1」は、「壁面Wに取り付けられ」(構成h)るから、甲1発明の「壁面に相対する面である」「背面」は、リモートコントローラ1のケース2が有する面であるということができる。
そうすると、甲1発明の「背面」は、本件発明の「縦面に取り付けられる背面部」に相当する。
よって、本件発明と甲1発明とは、「前記ケースは、縦面に取り付けられる背面部と、正面部と、上面部と、を有し」ている点で一致する。
オ 「前記上面部の長手方向の一端部に前記赤外線透過部が配置され、前記上面部の長手方向の他端部に操作部が配置されており、」について
甲1発明の「天面釦7」は、「各種動作を入力するための」(構成a)ものであるから、本件発明の「操作部」に相当する。
そして、甲1発明は、「一の送信窓10が、ケース2の天面の長手方向の一方の端部に設けられており」(構成c)、「ケース2の天面の長手方向において、送信窓10とは逆の端部に配置されている天面釦7を有する」(構成f)ものであり、ここで、「一方の端部」は「一端部」、「逆の端部」は「他端部」と称することができる。
よって、前記イ、エを踏まえれば、本件発明と甲1発明とは、「前記上面部の長手方向の一端部に前記赤外線透過部が配置され、前記上面部の長手方向の他端部に操作部が配置されて」いる点で一致する。
カ 「前記赤外線透過部と前記操作部とは、前記上面部において前記上面部の短手方向の中央部を通りかつ前記上面部の長手方向と平行な一直線を含む位置に位置しており、」について
甲1発明は、「天面」に設けられる「送信窓10」と「天面釦7」(構成c、f)について、「天面釦7は、天面の短手方向の一方の端部に配置され」(構成f)るものであり、「前記赤外線透過部と前記操作部とは、前記上面部において前記上面部の短手方向の中央部を通りかつ前記上面部の長手方向と平行な一直線を含む位置に位置して」いることは特定されていない。
キ 「前記基板は前記正面部側の面及び前記背面部側の面を有し、」について
甲1発明では、「ケース2の内部に基板を隠蔽した構成」(構成a)であるが、「基板」が有する面の向きを特定していない。
ク 「前記赤外線素子は、前記発信向きが前記背面部と平行か又は前記背面部から前記正面部に向かう成分を有するように前記基板の前記背面部側の面に実装されている、」について
甲1発明では、当該事項は特定されていない。
ケ 「リモコン装置」について
甲1発明の「リモートコントローラ1」は、本件発明の「リモコン装置」に対応する。
コ 一致点、相違点
前記ア~ケより、本件発明と甲1発明とは、
「赤外線を発する赤外線素子と、
前記赤外線素子を収納するケースと、
前記ケースに収納される基板と、を備え、
前記ケースは、一部に、前記赤外線素子が発する赤外線が透過する一の赤外線透過部を有し、
前記赤外線素子より発せられる赤外線は指向性を有するものであり、前記赤外線素子より発せられる赤外線の一の向きを発信向きとし、
前記ケースは、縦面に取り付けられる背面部と、正面部と、上面部と、を有し、
前記上面部の長手方向の一端部に前記赤外線透過部が配置され、前記上面部の長手方向の他端部に操作部が配置されている、
リモコン装置」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1
本件発明は、「赤外線素子」が「二個」であるのに対して、甲1発明は、「赤外線発光素子」の数について特定していない点
相違点2
相違点1に関連して、本件発明は、「前記二個の赤外線素子から前記発信向きに発せられた赤外線が、前記二個の赤外線素子より発せられた直後は互いに近づき、その後、互いに遠ざかるように、前記二個の赤外線素子が配置されて」いるのに対して、甲1発明は、当該事項を特定していない点
相違点3
本件発明は、「前記赤外線透過部と前記操作部とは、前記上面部において前記上面部の短手方向の中央部を通りかつ前記上面部の長手方向と平行な一直線を含む位置に位置している、」のに対して、甲1発明は、「天面釦7は、天面の短手方向の一方の端部に配置され」ている点
相違点4
本件発明は、「前記基板は前記正面部側の面及び前記背面部側の面を有し、」ているのに対して、甲1発明は、基板が有する面の向きを特定していない点
相違点5
本件発明は、「前記赤外線素子は、前記発信向きが前記背面部と平行か又は前記背面部から前記正面部に向かう成分を有するように前記基板の前記背面部側の面に実装されている、」のに対して、甲1発明は、当該事項を特定していない点
(2)判断
事案に鑑み、相違点5について検討する。
甲4記載事項(前記1(4)イ)のうち、「リモコンケーシング31」は、本件発明の「ケース」に相当し、「前面に向けて無線信号が進む方向にやや傾斜を有する」ことは、本件発明の「背面部から前記正面部に向かう成分を有」することに相当する。
そして、甲1発明と甲4記載事項は、いずれも赤外線を用いたリモコンに係る技術であるから、甲1発明において「前記赤外線素子は、前記発信向きが前記背面部と平行か又は前記背面部から前記正面部に向かう成分を有するように前記基板に実装」することは、当業者が容易になし得た事項といえる。
しかしながら、甲4には、基板の背面部側の面に実装することについては記載されていない。
また、提出されたその他の証拠に記載されるものでもなく、基板の背面部側の面に実装することが当然であったとの技術常識も見当たらない。
そして、仮に赤外線発光素子を基板の背面部側の面に実装することが周知であったとしても、甲1発明において、甲4記載事項を適用して、赤外線発光素子を「前記発信向きは、前記背面部から前記正面部に向かう成分を有するように前記基板に実装」する構成とした上で、さらに、赤外線発光素子を基板の背面部側に実装することは、いわゆる「容易の容易」に該当するから、当業者が容易になし得たこととはいえない。
(3)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、甲1に記載された発明並びに甲2及び甲3に記載された周知技術、甲4に記載された事項並びに周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 特許異議申立理由について
1 申立理由1(進歩性)
申立理由1(進歩性)は甲1を主引例とするものであり、前記第6のとおり、本件発明は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、申立理由1は、理由がない。
2 申立理由2(明確性要件)
(1)本件特許の請求項1の「前記上面部の長手方向の一端部に前記赤外線透過部が配置され、前記上面部の長手方向の他端部に操作部が配置されている、」との記載について、「一端部」及び「他端部」は、「一方の端部」及び「他方の端部」を意味するものであり、「端部」とは、「はし。さき。」の「分けた一区分」を示すものである。
そうすると、請求項1の上記記載は、「前記赤外線透過部」が「前記上面部の長手方向の」一方の端部に配置され、「操作部」が「前記上面部の長手方向の」他方の端部に配置されていることを明確に理解でき、不明確な記載はない。
(2)申立人の主張
申立人は、「ケースの上面部の「他端部」については、」「本件明細書内には全く記載がな」く、また、「本件明細書には、赤外線透過部と操作部との間隔について全く説明がなされて」おらず、「本件に添付された図面を参酌しても、ケースの上面部の一端部と他端部との境界については不明である」から、「ケースの上面部の長手方向のうち、一端部と他端部との境界(赤外線透過部と操作部とが配置される箇所)について不明確である。」旨主張(特許異議申立書23~25頁)する。
しかしながら、請求項1の上記記載は、「赤外線透過部」と「操作部」とが、それぞれ、上面部の長手方向の一端部、他端部に配置されていることを特定するものとして明確であり、「一端部と他端部との境界」が不明確であることをもって、当該記載が不明確であるとすることはできない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
(3)小括
したがって、前記(1)、(2)によれば、申立理由2は、理由がない。
第8 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1に係る特許は、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700517