特許異議申立
2025-700708
積層体用シーラントフィルム、積層体及び包装容器
- 審判番号
- 2025-700708
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-038339
- 登録番号
- 7632716
- 請求日
- 2025年07月09日
- 審決日
- 2025年12月23日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【権利者代理人】岡村 和郎
- 【権利者代理人】伏見 俊介
- 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 岩谷 一臣
- 審判官 神山 茂樹
- 審判官 宮地 匡人
- 分類
- P1651.121-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7632716号発明「積層体用シーラントフィルム、積層体及び包装容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7632716号の請求項1~22に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7632716号(以下「本件特許」という。)の請求項1~22に係る特許についての出願は、令和5年8月29日を出願日とする特願2023-139319号の一部を、令和6年3月12日に新たな特許出願とした特願2024-38339号に係るものであって、令和7年2月10日にその特許権の設定登録がされ、令和7年2月19日に特許掲載公報が発行された。その後、令和7年7月9日に特許異議申立人 弁理士法人朝日奈特許事務所(以下「申立人」という。)により、その請求項1~22に係る特許に対して本件特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~22に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明22」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~22に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
樹脂材料の総量に対するポリプロピレンの含有割合が80質量%以上である積層体に用いるシーラントフィルムであって、
前記積層体に用いた際、当該積層体の表面のうち一方に位置する第1層と、前記第1層に接する第2層と、を少なくとも備え、
前記第1層は、当該第1層の総量に対して51質量%以上90質量%以下の第1マトリックス樹脂成分と、第1分散成分とを含み、前記第1マトリックス樹脂成分に前記第1分散成分が分散した海島構造を有し、
前記第2層は、当該第2層の総量に対して51質量%以上85質量%以下の第2マトリックス樹脂成分と、第2分散成分とを含み、前記第2マトリックス樹脂成分に前記第2分散成分が分散した海島構造を有し、
前記第1マトリックス樹脂成分が、プロピレン-エチレンランダム共重合体からなり、
前記第1分散成分が、前記第1層の総量に対して少なくとも5質量%以上のポリエチレンを含み、
前記第2マトリックス樹脂成分が、ブロックポリプロピレンからなり、
前記第2分散成分が、前記第2層の総量に対して少なくとも5質量%以上のポリエチレンを含む、積層体用シーラントフィルム。
【請求項2】
前記ブロックポリプロピレンは、プロピレン単独重合体と、ブロックエラストマーとを少なくとも含み、前記プロピレン単独重合体に前記ブロックエラストマーが分散した海島構造を有する、請求項1に記載の積層体用シーラントフィルム。
【請求項3】
前記ブロックエラストマーは、エチレン-プロピレンエラストマーからなる、請求項2に記載の積層体用シーラントフィルム。
【請求項4】
前記第2層の総量に対する前記第2分散成分の含有割合が、15質量%以上49質量%以下である、請求項1に記載の積層体用シーラントフィルム。
【請求項5】
前記第1層の総量に対する前記第1分散成分の含有割合が、10質量%以上49質量%以下である、請求項4に記載の積層体用シーラントフィルム。
【請求項6】
前記第1層の総量に対する前記第1分散成分の含有割合が、前記第2層の総量に対する前記第2分散成分の含有割合よりも少ない、請求項5に記載の積層体用シーラントフィルム。
【請求項7】
前記第2分散成分が、第2エラストマーをさらに含む、請求項1に記載の積層体用シーラントフィルム。
【請求項8】
前記第2エラストマーは、プロピレン-エチレンエラストマーまたはエチレン-αオレフィンエラストマーからなる、請求項7に記載の積層体用シーラントフィルム。
【請求項9】
前記第2分散成分において、前記ポリエチレンの含有量に対する前記第2エラストマーの含有量の比が、0.5以上1.0未満である、請求項7に記載の積層体用シーラントフィルム。
【請求項10】
前記第1分散成分が、第1エラストマーをさらに含む、請求項1に記載の積層体用シーラントフィルム。
【請求項11】
前記第1分散成分において、前記ポリエチレンの含有量に対する前記第1エラストマーの含有量の比が、0.5以上1.0未満である、請求項10に記載の積層体用シーラントフィルム。
【請求項12】
前記第1層の厚みに対する前記第2層の厚みの比が、3.0以上である、請求項1に記載の積層体用シーラントフィルム。
【請求項13】
前記第2層が、50μm以上の厚みを有する、請求項12に記載の積層体用シーラントフィルム。
【請求項14】
前記第2分散成分の前記ポリエチレンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)又は低密度ポリエチレン(LDPE)を含む、請求項1に記載の積層体用シーラントフィルム。
【請求項15】
前記第2分散成分の前記ポリエチレンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる、請求項1に記載の積層体用シーラントフィルム。
【請求項16】
前記第2層に接する第3層をさらに備え、
前記第3層は、当該第3層の総量に対して51質量%以上85質量%以下の第3マトリックス樹脂成分と、第3分散成分とを含み、前記第3マトリックス樹脂成分に前記第3分散成分が分散した海島構造を有し、
前記第3マトリックス樹脂成分が、前記ブロックポリプロピレンからなる、請求項2に記載の積層体用シーラントフィルム。
【請求項17】
前記第3分散成分が、ポリエチレン及び第3エラストマーのうち、いずれか一方又は両方を含む、請求項16に記載の積層体用シーラントフィルム。
【請求項18】
厚みが、30μm以上200μm以下である、請求項1に記載の積層体用シーラントフィルム。
【請求項19】
包装材料に用いる積層体であって、
少なくとも、第1基材とシーラント層とを備え、
前記シーラント層は、請求項1に記載の積層体用シーラントフィルムからなり、
樹脂材料の総量に対するポリプロピレンの含有割合が80質量%以上である、積層体。
【請求項20】
第1基材と前記シーラント層との間に、第2基材をさらに備える、請求項19に記載の積層体。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の積層体を備える包装容器。
【請求項22】
ボイル又はレトルトパウチである、請求項21に記載の包装容器。」
第3 申立理由の概要
申立人は、以下の甲第1号証~甲第5号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲5」という。)を提出して、以下の申立理由(進歩性)により請求項1~22に係る特許を取り消すべきである旨主張する。
1 証拠方法
甲1:特開2022-52832号公報
甲2:国際公開第2022/234761号
甲3:特開2020-157514号公報
甲4:特開2020-157515号公報
甲5:特開2020-157720号公報
2 申立理由(進歩性)
本件発明1~22は、甲1~甲5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~22に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1 甲号証の記載事項等
(1)甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。また、「・・・」は記載事項の省略を示す。以下同様。)。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール層と1層以上の支持層を有する積層構成とする積層フィルムであって、200℃熱処理剥離後の破断伸度がフィルム長手方向で350%以上、フィルム幅方向で280%以上、破断強度がフィルム長手方向およびフィルム幅方向ともに20MPa以上である積層フィルム。
・・・
【請求項4】
少なくとも1層の前記支持層が、エチレン・プロピレンブロック共重合体(a)70~97重量%とポリエチレン系樹脂(b)3~30重量%を混合した樹脂組成物である請求項1から3のいずれかに記載の積層フィルム。
・・・
【請求項7】
積層フィルムの厚さが15~100μmある請求項1から6のいずれかに記載の積層フィルム。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた開封性と開封時の裂けを抑制した積層フィルムに関する。
【背景技術】
・・・
【0003】
・・・易開封性の包装体としては、種々のものが提案されており、イージーピールと呼ばれる包装体は、開封性を付与したシーラントフィルムを用いるものであって、ゼリー・ヨーグルト・プリンなどのデザートや米飯、総菜などのカップ容器の蓋材、ハム・ベーコンなどの畜肉加工品のパックなどに広範に用いられている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、容器の蓋材などに使用する際、蓋材としての打ち抜き性と開封時に蓋裂け等の発生がなく正常に、簡単に開封できる積層フィルムを提供することにある。」
「【発明の効果】
【0008】
本発明の積層フィルムは、蓋材として打抜き性と開封時に蓋裂けの発生がなく正常に開封でき、また適度な力で容易に開封することができる。さらに二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、印刷紙、金属箔などから選ばれる少なくとも1層を、前記積層フィルムの支持層側に積層することで、蓋材として打抜き性と開封時の蓋裂け発生がなく正常に開封できる包装体を得ることができる。」
「【0018】
該触媒を用いたプロピレン・エチレンブロック共重合体(a)の具体的製造方法としては、製膜性および耐蓋裂け性、破断強度の観点から、第1工程で実質的に不活性溶剤の不存在下にプロピレンを主体としたモノマを重合して重合体部分(a1成分)を生成する。次いで、第2工程で、気相中での重合により、エチレン共重合体部分(a2成分)を生成して得られるブロック共重合体の、a2成分の含有量は10~30重量%が好ましく(但し、a1成分とa2成分の合計を100重量%とする)、より好ましくは15~25重量%である。a2成分の含有量が10重量%未満ではヒートシール層との界面接着力に劣ることがあり、またフィルムの伸度が下がって耐蓋裂け性に劣る場合があり、含有量が30重量%を超えると破断強度に劣る場合がある。」
「【0023】
本発明における支持層は、上記エチレン・プロピレンブロック共重合体(a)70~97重量%と、ポリエチレン系樹脂(b)として、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマーもしくは直鎖状低密度ポリエチレンの一種以上の樹脂組成物3~30重量%、を混合した樹脂組成物からなることが好ましい。ポリエチレン系樹脂(b)の混合量が3重量%未満では耐蓋裂け性に劣ることがあり、30重量%を超えると製膜時のフィルム巻取り時にシワが入りやすくなることがあり、製膜性に劣ることがあり、蓋材として打ち抜き性に劣ることがある。」
「【0030】
また、ヒートシール層の樹脂の混合率は、エチレン・プロピレンランダム共重合体が50~70重量%、ポリエチレン系樹脂(c)としての、直鎖状低密度ポリエチレンが10~30重量%、高密度ポリエチレンが5~20重量%、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマーが5~20重量%(但し、混合樹脂組成の総量は100重量%とする)であることが好ましい。蓋材として用いたときにヒートシール層が凝集破壊して、ヒートシール強度が10~20N/15mmの範囲となって、開封時の糸引きがなく、開封性が良好なフィルムが得られる。」
「【0062】
実施例1
支持層として、エチレン・プロピレンブロック共重合体(BPP-1)95重量%、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)5重量%、を混合した樹脂組成物を用いた。ヒートシール層として、エチレン・プロピレンランダム共重合体(PP-1)60重量%、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)20重量%、高密度ポリエチレン(PE-1)10重量%、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)10重量%、を混合した樹脂組成物を用いた。それらを2種2層無延伸フィルム成型機の押出機2台に各々投入し、支持層を260℃、ヒートシール層を200℃の押出温度で溶融混練後、230℃の2種2層Tダイより押出し、40℃のキャスティングロールで急冷し積層フィルムを成形し、支持層にコロナ放電処理を施した。得られた積層フィルムの厚さは50μmで、ヒートシール層の厚さが10μmであった。製膜性は良好で、キャスト時のエッジまくれはなく、巻取り時のシワ発生もなく安定して巻き取ることができた。本発明の積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
・・・
【0066】
実施例5
支持層をエチレン・プロピレンブロック共重合体(BPP-1)80重量%とエチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)10重量%、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)10重量%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。本発明の積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
・・・
【表1】
[図:0001431156000001.jpg]
」
(2)甲1発明
上記(1)の記載から、甲1には、特許請求の範囲に記載されている発明の具体的な実施例の一つの実施例5として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「支持層として、エチレン・プロピレンブロック共重合体(BPP-1)80重量%、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)10重量%、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)10重量%を混合した樹脂組成物を用い、ヒートシール層として、エチレン・プロピレンランダム共重合体(PP-1)60重量%、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)20重量%、高密度ポリエチレン(PE-1)10重量%、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)10重量%、を混合した樹脂組成物を用い、それらを2種2層無延伸フィルム成型機の押出機2台に各々投入し、支持層を260℃、ヒートシール層を200℃の押出温度で溶融混練後、230℃の2種2層Tダイより押出し、40℃のキャスティングロールで急冷し積層フィルムを成形し、支持層にコロナ放電処理を施して得られた積層フィルム。」
2 申立理由についての判断
(1)本件発明1について
ア 対比
・甲1発明の「ヒートシール層」、「支持層」は、それぞれ、本件発明1の「第1層」、「第2層」に相当する。
・甲1発明の「積層フィルム」は、「支持層」と「ヒートシール層」を「2種2層無延伸フィルム成型機の押出機2台に各々投入し、」「2種2層Tダイより押出し」たものであるから、その製造工程からみて、両層は接していると理解される。また、甲1発明の「ヒートシール層」は、「積層フィルム」の表面のうち一方に位置しているのは当然である。そうすると、甲1発明の「積層フィルム」は、本件発明1の「積層体に用いた際、当該積層体の表面のうち一方に位置する第1層と、前記第1層に接する第2層と、を少なくとも備え」た「積層体用シーラントフィルム」に相当する。
・甲1発明の「エチレン・プロピレンランダム共重合体(PP-1)60重量%」は、本件発明1の「第1層の総量に対して51質量%以上90質量%以下の第1マトリックス樹脂成分」である「プロピレン-エチレンランダム共重合体」に相当し、甲1発明の「直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)20重量%、高密度ポリエチレン(PE-1)10重量%」は、本件発明1の「前記第1層の総量に対して少なくとも5質量%以上のポリエチレンを含」む「第1分散成分」に相当する。そうすると、甲1発明の「ヒートシール層として、エチレン・プロピレンランダム共重合体(PP-1)60重量%、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)20重量%、高密度ポリエチレン(PE-1)10重量%、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)10重量%、を混合した樹脂組成物を用い」る構成は、本件発明1の「前記第1層は、当該第1層の総量に対して51質量%以上90質量%以下の第1マトリックス樹脂成分と、第1分散成分とを含み」、「前記第1マトリックス樹脂成分が、プロピレン-エチレンランダム共重合体からなり」、「前記第1分散成分が、前記第1層の総量に対して少なくとも5質量%以上のポリエチレンを含」む構成に相当する。
・甲1発明の「エチレン・プロピレンブロック共重合体(BPP-1)80重量%」は、本件発明1の「第2層の総量に対して51質量%以上85質量%以下の第2マトリックス樹脂成分」である「ブロックポリプロピレン」に相当し、甲1発明の「直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)10重量%」は、本件発明1の「第2層の総量に対して少なくとも5質量%以上のポリエチレンを含む」「第2分散成分」に相当する。そうすると、甲1発明の「ヒートシール層として、エチレン・プロピレンランダム共重合体(PP-1)60重量%、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)20重量%、高密度ポリエチレン(PE-1)10重量%、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)10重量%、を混合した樹脂組成物を用い」との構成は、本件発明1の「前記第2層は、当該第2層の総量に対して51質量%以上85質量%以下の第2マトリックス樹脂成分と、第2分散成分とを含み」、「前記第2マトリックス樹脂成分が、ブロックポリプロピレンからなり」、「前記第2分散成分が、前記第2層の総量に対して少なくとも5質量%以上のポリエチレンを含む」構成に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、少なくとも以下の相違点を含むものである。
<一致点>
「積層体に用いた際、当該積層体の表面のうち一方に位置する第1層と、前記第1層に接する第2層と、を少なくとも備え、
前記第1層は、当該第1層の総量に対して51質量%以上90質量%以下の第1マトリックス樹脂成分と、第1分散成分とを含み、
前記第2層は、当該第2層の総量に対して51質量%以上85質量%以下の第2マトリックス樹脂成分と、第2分散成分とを含み、
前記第1マトリックス樹脂成分が、プロピレン-エチレンランダム共重合体からなり、
前記第1分散成分が、前記第1層の総量に対して少なくとも5質量%以上のポリエチレンを含み、
前記第2マトリックス樹脂成分が、ブロックポリプロピレンからなり、
前記第2分散成分が、前記第2層の総量に対して少なくとも5質量%以上のポリエチレンを含む、積層体用シーラントフィルム。」
<相違点>
本件発明1において、「第1層」は、「前記第1マトリックス樹脂成分に前記第1分散成分が分散した海島構造を有し」、「第2層」は、「前記第2マトリックス樹脂成分に前記第2分散成分が分散した海島構造を有」するのに対し、甲1発明の「シーラント層」、「支持層」は、それぞれそのような海島構造を有するかどうか不明な点。
イ 相違点についての判断
甲1発明のヒートシール層を形成する樹脂は、エチレン・プロピレンランダム共重合体(PP-1)60重量%、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)20重量%、高密度ポリエチレン(PE-1)10重量%、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)10重量%を混合した樹脂組成物であり、基本的に非相溶である。しかし、相分離構造がどのようになるかは、ポリマー間の相溶性だけでなく、相溶化剤の有無、成形加工時に印加される圧力、流動場の影響等で変化するものである。また、相分離構造には、海島構造のほか多層構造や共連続構造等も存在している。そうすると、甲1発明のヒートシール層が海島構造であるかどうかは明らかではないし、出願人の提出したすべての証拠を見ても、その蓋然性が高いと判断するに足るものはない。
そうすると、甲1発明のヒートシール層を構成する樹脂層に関して海島構造を有するようにすることが当業者において容易に想到し得たということはできない。
ウ 小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2~22について
本件発明2~22は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加するものであるから、上記(1)イと同様の理由により、甲1発明及び甲2~5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)まとめ
上記のとおり、請求項1~22に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
第5 むすび
以上によれば、特許異議の申立理由及び証拠によっては、請求項1~22に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700708