特許異議申立
2025-700664
エーテル/エステル複合ポリウレタンフォーム化粧品
- 審判番号
- 2025-700664
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-566285
- 登録番号
- 7604737
- 請求日
- 2025年06月24日
- 審決日
- 2025年09月30日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】コスマックス、インコーポレイテッド
- 【権利者代理人】加藤 和詳
- 【異議申立人】池田 抄太郎
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 宮田 透
- 審判官 冨永 保
- 分類
- P1651.113-Y (A61K) / P1651.121-Y (A61K) / P1651.537-Y (A61K) / P1651.536-Y (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7604737号発明「エーテル/エステル複合ポリウレタンフォーム化粧品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7604737号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7604737号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)11月21日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2018年10月30日 韓国(KR))を国際出願日とする出願であって、令和6年12月16日に特許権の設定登録がされ、同年12月24日に特許掲載公報が発行され、その全請求項に係る発明の特許に対し、令和7年6月24日付けで池田 抄太郎(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年7月31日に申立人より手続補正書(方式)が提出されたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~6に係る発明(以下請求項の番号順に「本件発明1」等といい、併せて「本件発明」ということがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される以下に示すとおりのものである。
「【請求項1】
化粧料組成物を含浸したポリウレタンフォームを含む化粧品であって、
前記ポリウレタンフォームのポリウレタンは、エーテル基とエステル基をモル比で4:6~6:4の比率で含み、
前記化粧料組成物は、水含量が20~30wt%であり、貯蔵弾性率(G’)の曲線と損失弾性率(G’’)の曲線との交点における限界せん断応力値が3Pa~15Paであることを特徴とする化粧品。
【請求項2】
前記化粧料組成物は、1Paのせん断応力下で3≦G’/G’’≦10であることを特徴とする、請求項1に記載の化粧品。
【請求項3】
前記化粧料組成物は油相成分および水相成分を含み、
水相成分に対する油相成分の重量比は0.9~1.1の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の化粧品。
【請求項4】
前記化粧料組成物は主乳化剤および補助乳化剤を含み、前記主乳化剤および補助乳化剤は重量比で3:1~4:1の比率であり、前記主乳化剤は、ラウリルPEG-10トリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンおよびセチルPEG/PPG-10/1ジメチコンからなる群より選択された少なくとも1種の物質を含み、前記補助乳化剤は、PEG-10ジメチコンおよびソルビタンイソステアレートのうち少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の化粧品。
【請求項5】
前記ポリウレタンフォームの含浸後の硬度は20~35であることを特徴とする、請求項1に記載の化粧品。
【請求項6】
前記ポリウレタンフォームの含浸前を基準にした含浸前後の硬度変化率は45%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の化粧品。」
第3 特許異議申立理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付して下記(6)に示す甲第1号証~甲第13号証(枝番を含む。以下「甲1」などという。)を提出し、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由として、下記(1)~(5)に示す特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張している。申立理由の概要は、申立書の全体の記載からみて、以下のとおりと認められる。
(1)申立理由1(新規性欠如)
本件特許の請求項1~3、5及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性欠如)
本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明に基づいて、又は甲1に記載の発明に周知技術 (甲1~甲8、甲13)を組み合わせることで当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(サポート要件違反)
本件明細書をみても、本件発明1に規定される、3つの変数の数値範囲を満たすことで課題を解決できるものであることを当業者は認識することはできない。したがって、本件発明1~6はサポート要件を満たさない。
よって、本件発明1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
具体的な理由の概要は、次に示す(i)~(vi)のとおりである。
(i)本件明細書から、「限界せん断応力値」を3~15Paとすることにより得られる効果を理解することができず、その技術的意義を理解することができない。
(ii)本件明細書から、エーテルとエステルとのモル比率を4:6~6:4とすることにより、その範囲の全体にわたって所望の効果を理解することができず、その技術的意義を理解することができない。
(iii)本件明細書から、化粧料組成物の水含量を20~30wt%とすることにより得られる効果を理解することができず、その技術的意義を理解することができない。
(iv)本件明細書からは、3つの変数、すなわち「ポリウレタンのエーテルとエステルの比率」、化粧料組成物の「限界せん断応力値」、及び化粧料組成物の「水含有量」について、それぞれの数値範囲の内外によってどのような効果の違いが生じるのかを理解することができず、これらの数値範囲を特定することによって得られる技術的意義も不明である。
(v)本件明細書の実施例の「E.官能評価」は、採点における評価基準が具体的に記載されていないから、本件発明1に規定された水含有量、限界せん断応力値、エーテル基/エステル基比率の数値範囲内であれば所望の効果が得られることを当業者は認識することができず、本件発明の課題が解決できることを認識できない。
(vi)本件発明は、本件明細書の実施例以外の水含有量、限界せん断応力値、エーテル基/エステル基比率(例えば、20重量%、23重量%、又は10.1Pa及び15Pa)を用いた場合の作用効果を予測することが困難であり、本件発明1の全体にわたって十分な作用効果が示されることを認識することができない。
(4)申立理由4(実施可能要件違反)
本件明細書の実施例以外の組成の化粧料組成物を作るためには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤が必要であり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1に係る化粧品を作れるように記載されているとはいえない。また、本件発明は、本件明細書の実施例以外の水含有量、限界せん断応力値、及びエーテル基/エステル基比率を用いた場合の作用効果を予測することが困難であり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1に係る化粧品を使用できるように記載されているとはいえない。
また、本件明細書には、ポリウレタンフォームのポリウレタンのエーテル:エステルのモル比率、化粧料組成物の水含量、限界せん断応力の3つの変数の数値範囲について技術的意義を理解することができず、さらに、これらの3つの変数の数値範囲の一部を満たす実施例しか存在しないため、全体にわたって十分な作用効果が示されることを認識することができない。
したがって、本件発明1~6は、実施可能要件を満たさない。
よって、本件発明1~6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)申立理由5(明確性要件違反)
限界せん断応力値の測定方法や測定条件について何ら特定されていない本件発明1において、限界せん断応力値は、一義的に定まるものではなく、その値の数値範囲によって定められる発明の範囲が不明確である。
したがって、本件発明1~6は明確でない。
よって、本件発明1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(6)証拠方法
提出された証拠方法は次のとおりである。
甲1:韓国公開特許第10-2018-0026125号公報
甲2:韓国公開特許第10-2016-0106000号公報
甲3:国際公開第2017/209484号
甲3の2:特表2019-504681号公報
甲4:国際公開第2018/151460号
甲4の2:特表2020-507413号公報
甲5:韓国特許第10-1779571号公報
甲6:特表2014-518263号公報
甲7:国際公開第2018/178550号
甲7の2:特表2020-515595号公報
甲8:特開2015-168635号公報
甲9:欧州特許出願第18938925.7号の2021年7月8日付け拡張欧州サーチレポート
甲10:米国特許出願第17/059,958号の2022年2月3日付けオフィスアクション
甲11:Hyun-hwi Lee、試験レポート、2025年6月20日
甲12:J-PlatPat、特許出願第2020-566285号の審判請求書の照会結果
甲13:Applied Rheology,(2011),Vol.21,Issue 3,pp.35200-1~6
第4 当審の判断
当審合議体は、本件特許の請求項1~6に係る特許は、申立人が申し立てた申立理由によっては、取り消すことはできないものと判断する。その理由は以下のとおりである。
なお、以下において、下線は特に注釈がない限り当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。
1 甲1~甲13の記載事項
(1)甲1
甲1には以下の記載がある(訳文で示す。)。
甲1a)「請求項1
化粧料組成物を含浸材に含浸された化粧品において、
前記含浸材は、ポリオールを含んで製造される化粧料組成物含浸用軟質ポリウレタンフォームであり、
前記ポリオールは、i)炭化水素ポリオール、ii)植物油、iii)ダイマー酸、及びiv)炭化水素ポリオール、植物油、及びダイマー酸の混合物からなる群より選択される少なくとも1つを含み、
前記ポリオールは、炭素と炭素の二重結合を有し、前記二重結合の一部または全部が付加反応によって改質されたことを特徴とする、化粧品。」
甲1b)「[0008] 化粧料組成物を含浸させる発泡ウレタンフォームとして、エーテルタイプのポリウレタンフォームを殆ど用いている。しかしながら、エーテルタイプのポリウレタンフォームは、エステル結合を含んでいるポリオールを利用したエステルタイプのポリウレタンに比べて、引張強度、硬度と伸率及び難燃性が劣る。エステルタイプのポリウレタンフォームは均一なセル組織を有しており、耐薬品特性に優れて酸化に強い。しかしながら、エーテルタイプのポリウレタンフォームとは異なり、加水分解される性質があるため、耐水性が弱いことが短所として知られており、実際、このような理由により化粧料組成物を含浸させる用途としては極めて制限的に用いている実情である。
[0009] 化粧料組成物の物性及び含有成分の差異によってエーテル系ポリオール及びエステル系ポリオールを混合し、適切なウレタンフォーム含浸材を選択するための努力が行われていた。しかしながら、ポリオール間の相溶性が良くないという問題があった。」
甲1c)「発明が解決しようとする課題
[0012] 前記のような問題を解決するために、本発明は、耐久性が改善され、変形なく使用できる、軟質ウレタンフォームを提供することを目的とする。
・・・
[0014] また、本発明は、化粧料組成物を含浸させるための新たな含浸材及びそれを含む化粧品を提供することを目的とする。」
甲1d)「[0019] 本発明者らは、エステル(ester)ウレタンフォームとエーテル(ether)ウレタンフォームが有している利点を共に利用できる軟質ウレタンフォームを開発するための研究を長い間行い、本発明を完成するに至った。特に、本発明者らは、含浸材に含浸される化粧料組成物の物性に応じて含浸効率が影響され得るということを確認し、ポリオール間の相溶性が良くないことからエーテルポリオールとエステルポリオールとの間の混合を利用したウレタンフォーム含浸材の開発に困難性があるという点を乗り越えることができる新たな素材の開発のために努力した。
[0020] 本発明者らは、従来の化粧品業界では全く試みなかった、新たなタイプの改質された(reforming)ポリオールを利用して軟質ウレタンフォームを開発するに至った。」
甲1e)「[0022] 好ましくは、本発明の改質された軟質ウレタンフォームは、特に、化粧料組成物を担持するための含浸材に好ましく利用できる。
[0023] 化粧品製造業界では、水分と油分とを共に有している化粧品を担持しなければならない特性、塗布具を利用して含浸材を持続的に圧迫する特性、外部圧迫や圧力にもかかわらず一定形態を維持しなければならない特性、化粧品含浸材の摩耗や崩壊があってはならない特性により、化粧料組成物含浸用ウレタンフォームを製造するためのポリオールを選択するのに限界があった。」
甲1f)「[0064] 本明細書における前記含浸という用語は、化粧料組成物を製造する業界で一般的に用いられている意味で用いられており、具体的に、スポンジのように内部にポア(pore)が形成されている材質に内容物を担持させることを意味する。
[0065] 前記担持との意味は、任意の物質(例えば、液状、ゲル形態の化粧料だけでなく、高粘度の化粧料を含んでもよい)を入れて保管できる能力を意味する。」
甲1g)「[0089] 前記化粧料組成物は、軟質ポリウレタンフォームに含浸され得る程度の粘度であれば、特に限定されるものではないものの、例えば、1,000~10,000cPsの粘度を有する化粧料組成物が含浸されてもよい。」
甲1h)「[0119] 実施例2.ポリブタジエン系炭化水素ポリオールとヒマシ油を利用したポリウレタンフォームの発泡過程
[0120] 分子量2,800g/モル、官能基数2.5のポリブタジエン系炭化水素ポリオール(cis-1,4-ポリブタジエンポリオール/trans-1,4-ポリブタジエンポリオール/1,2-ポリブタジエンポリオールを0.2/0.6/0.2の重量比で混合)とヒマシ油(Castor oil)を利用した軟質ポリウレタンフォームの製造は、次のように行うことができる。先ず、ポリオール及びヒマシ油を常温で、下記表1に記載した含有量に従って適正比率で混合した後、撹拌して十分に均一な状態にする。これら混合物の撹拌過程で混入された気泡を除去し、ポリウレタン反応に影響を与える水分を除去するため、真空脱泡及び乾燥過程を経るようにする。このように得られたポリオール混合物を、下記表のような配合比で触媒と整泡剤及び発泡剤を添加して高速で約10秒間撹拌する。続いで、計量されたイソシアネート化合物(トルエンジイソシアネート(TDI T-80/T-65/T-100)を添加し、これもまた高速で10秒間撹拌した後、モールドに注入する。その後、発泡工程における反応の進行を確認するため、発泡による高さの上昇が停止する時間(rise time:RT)と、ゲル化による流動性喪失及び強度増加時間(gelation time:GT)を確認する。その後、発泡したフォームを24時間にかけて常温で後反応させ、その後、裁断してフォームを用途に適用する。必要に応じて、これらのフォームを網状に作るため、別の工程を実施してもよい。
[0121] 下記表1に、配合比とフォームの特性を例示する。含有量は重量%で表す。
[0122]
表1
[図:0001428028000001.jpg]
[0123] *イソシアネートとヒドロキシル基を有する水とポリオールの当量比をNCO indexとする。
[0125] 前記のような方法で軟質ウレタンフォームを製造した。ただし、ポリオール及びヒマシ油を混合しながら、t-ブチルペルベンゾエート過酸化物開始剤とアクリル酸アクリル単量体を下記表2に記載した含有量ほど追加して混合した後、撹拌し、十分に均一な状態にした。下記表2の改質過程を通じてウレタンフォーム用組成物のポリオールでブタジエンポリオール/ヒマシ油/水添ヒマシ油(70/25/5)混合物が得られた。
[0126]
表2
[図:0001428028000002.jpg]
[0128] [化粧料組成物の製造]
[0129] 実施例及び比較例の製造
[0130] 下記表3に記載された成分及び含有量で油中水型ファンデーションを製造した。
・・・
[0133] 油中水型ファンデーションは、次のように製造した:
[0134] 油相槽に油相成分と増粘剤を入れ、80℃に熱を加えて均一にした後、ピグメントを入れて分散させた。水相槽には水相成分を入れ、80℃に熱を加えて原料を完全に溶解させた後、ピグメントが分散されている油相槽に添加し、ホモミキサーで乳化して低粘度紫外線防止乳化物を製造した。40mlの安定性容器に内容物を満たした後、25°のチャンバに一日以上保管した後、ブルックフィールドLVII粘度計にスピンドル4番を利用して30rpmで1分間作動させた後、25℃で粘度を測定したとき、4,000cpsの粘度を示した。
[0135]
表3
[図:0001428028000003.jpg]
[0137] [軟質ウレタンフォームの含浸材]
[0138] 実験例1.化粧品含浸による効果
[0139] 前記表1及び2の組成で製造された軟質ウレタンフォームの表面外観は、目視で観察したところ、一般的に利用されるスポンジの外観とあまり変わらなく、化粧料含浸材として用いるのに良好であるものと確認された。
・・・
[0143] 化粧料組成物1、2を軟質ウレタンフォームに3週間にかけて含浸させた後、フォームの膨潤現象が誘発されるかについて確認した。
・・・
[0145]
表4
[図:0001428028000004.jpg]
[0147]
表5
[図:0001428028000005.jpg]
」(下線は原文どおり。)
(2)甲2
甲2には以下の記載がある(訳文で示す。)。
甲2a)「技術分野
[0001] 本発明は、化粧料組成物を担持するフォーム(foam)に関し、さらに詳しくは、エーテル系ポリオールとエステル系ポリオールとを混合発泡させてウレタンフォームとして成形することで化粧料組成物の充填性が良好で、且つ化粧料組成物を長期間にわたり均質に担持することができ、化粧料組成物を取る際に適量の化粧料組成物が排出されると同時に、化粧料組成物を入れた後にも優れた耐久性を維持する、化粧料組成物を担持するフォームに関する。
背景技術
・・・
[0006] ところで、前記エステルフォームは、強度に優れ、化粧料組成物との耐油性が非常に良好である一方で、クッション性と耐湿熱性、及び化粧料組成物との耐加水分解性が低く、また、柔軟性と柔らかさ、及びふんわり感に劣るといった問題があった。
[0007] 従って、化粧料組成物を含浸するフォームとしてエステルフォームの問題点を解決する必要があった。
[0008] このような課題を解決するために、化粧料組成物を担持するためのエーテルフォームが開発されており、前記エーテルフォームは、クッション性と通気性、ふんわり感、柔らかさ、柔軟性、耐湿熱性、及び化粧料組成物との耐加水分解性が良好であるものの、耐油性と強度に劣るといった問題があった。」
甲2b)「発明が解決しようとする課題
[0010] 従って、本発明は、前記において説明した従来の諸問題点を解決するために発明されたものであって、本発明は、エーテル系ポリオールとエステル系ポリオールとを混合発泡させてウレタンフォームとして成形することで化粧料組成物の充填性が良好で、且つ化粧料組成物を長期間にわたり均質に担持することができ、化粧料組成物を取る際に適量の化粧料組成物が排出されると同時に、化粧料組成物を入れた後にも優れた耐久性を維持する、化粧料組成物を担持するフォームを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0011] 本発明の目的を達成するための実施例として、エーテル系ポリオールとエステル系ポリオールとを混合発泡させてウレタンフォームとして成形して化粧料組成物を担持するフォームを構成する。
発明の効果
[0012] 前記のような本発明は、クッション性と通気性、ふんわり感、柔らかさ、柔軟性、耐湿熱性、及び化粧料組成物との耐加水分解性が良好であり、また強度と化粧料組成物との耐油性にも非常に優れていることから、化粧料組成物の充填性が良好で、且つ化粧料組成物を長期間にわたり均質に担持することができ、化粧料組成物を取る際に適量の化粧料組成物が排出され、化粧料組成物を入れた後にも優れた耐久性を維持することができる。」
甲2c)「[0023] 本発明の粘度は、1,000~5,000cps又は15,000~60,000cpsの粘度を有する化粧料組成物フォームであって、アスカー(ASKER)硬度計F型(Type F)による硬度が1~100であるウレタンフォームを含む化粧料組成物フォームを提供する。
[0024] そのとき、硬度は化粧料組成物を含浸する前の硬度である。本化粧料組成物フォームは、化粧料組成物の粘度に応じて硬度及び1インチあたりの気孔数(ppi)のうち少なくとも1つを調整したウレタンフォームを含むことで、安定に化粧料組成物を担持することができ、さらに手軽に化粧料組成物を使用及び携帯できるようにする。
[0025] 本発明において、粘度は、粘度測定機器で測定してもよく、例えば、本明細書における粘度はLVDV II+PRO又はRVDV III ULTRA、スピンドルNO.63又はスピンドルNO.64、速度5RPM又は12RPMで測定した数値であって、これに制限されるものではない。
[0026] 本発明において、化粧料組成物が低粘度である場合、具体的には化粧料組成物の粘度が1,000~5,000cps(centi poise)、より具体的には1,500~4,000cps、さらに具体的には2,000~3,000cpsである場合、アスカー(ASKER)硬度計F型(Type F)による硬度が、50~100、具体的には60~90、より具体的には70~80であるウレタンフォームを担体として用いてもよい。硬度が50未満であるウレタンフォームは、低粘度の化粧料組成物を安定に担持することができず、化粧料組成物が分離又は沈殿するおそれがあり、硬度が100を超えるウレタンフォームは、低粘度の化粧料組成物を取り出す際に、化粧料組成物を容易に排出することができないおそれがある。
・・・
[0030] 本発明において、化粧料組成物が高粘度である場合、具体的には化粧料組成物の粘度が15,000~60,000cps(centi poise)、より具体的には20,000~55,000cps、さらに具体的には30,000~50,000cpsである場合、アスカー(ASKER)硬度計F型(Type F)による硬度が、含浸前に1~50未満、具体的には5~45未満、より具体的には10~40未満、さらに具体的には15~35であるウレタンフォームを担体として用いてもよい。
[0031] 硬度が1未満であるウレタンフォームは、高粘度の化粧料組成物を取る際に化粧料組成物を過度に排出するおそれがあり、硬度が50以上であるウレタンフォームは、高粘度の化粧料組成物を均一に含浸することができないおそれがある。」
甲2d)「[0050] *実験例1
[0051] (化粧料組成物の粘度によるウレタンフォーム担体の安定性の評価)
[0052] 製造例1~2を実施例1(本発明)と比較例1(エーテル系ウレタンフォーム)及び比較例2(エステル系ウレタンフォーム)のウレタンフォームに含浸させ、その安定性を評価した。それぞれ充填能、担持能、排出能を評価し、充填能は、化粧料20gが充填される時間、担持能は、化粧料20gを充填して容器内の担持体が保有している化粧料の量、排出能は、担持体に担持された化粧料をパフを利用して1回の塗布時に取られる化粧料の量を測定したものである。その結果は、以下の表のとおりである。
[0053]
表3
[図:0001428028000006.jpg]
」(下線は原文どおり。)
甲2e)「[0063] 以上のように、本発明のエーテル系ポリオールとエステル系ポリオールとを混合発泡して成形したウレタンフォームは、エーテル系又はエステル系ウレタンフォームに比べてクッション性と通気性、ふんわり感、柔らかさ、柔軟性、耐湿熱性、及び化粧料組成物との耐加水分解性が良好であり、また強度と化粧料組成物との耐油性にも非常に優れていることから、化粧料組成物の充填性が良好で、且つ化粧料組成物を長期間にわたり均質に担持することができ、化粧料組成物を取る際に適量の化粧料組成物が排出され、化粧料組成物を入れた後にも優れた耐久性を維持することができる。」
(3)甲3
甲3には以下の記載がある(訳文で示す。)。
甲3a)「[1] 本発明は、化粧料組成物含浸用ハイブリッド型発泡フォーム、及び前記ハイブリッド型発泡フォームを利用した化粧品キットに係り、さらに詳細には、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとのハイブリッド共重合体を含む化粧料組成物含浸用ハイブリッド型発泡フォーム、及び前記ハイブリッド型発泡フォームを含む化粧品キットに関する。
・・・
[4] ポリウレタンフォーム形成に利用されるポリヒドロキシ化合物の種類により、ポリエーテルポリオールフォーム及びポリエステルポリオールフォームに区別することができる。それぞれの長短所について述べれば、ポリエーテルポリオールフォームは、耐加水分解性に非常にすぐれ、弾性にすぐれ、低コストであるという長所を有するが、耐油性が弱いという短所がある。一方、ポリエステルポリオールフォームは、気泡調整が容易であり、耐磨耗性、内薬品性などが優れるという長所を有するが、加水分解を起こしやすく、高温での長期間保管時、崩壊現象が発生するという短所がある。」
甲3b)「発明の効果
[11] 本願の具現例において、前記化粧料組成物含浸用ハイブリッド型発泡フォームは、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールの単純な混合によって形成されるのではなく、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとのエーテル・エステルの化学的結合を形成する共重合反応によって形成されたハイブリッド型共重合体を含む。従って、前記ハイブリッド型発泡フォームは、共重合反応によって形成された化学的結合により、単一骨格構造のハイブリッド型共重合体を含むことにより、既存のポリエーテルポリオールフォーム及びポリエステルポリオールフォームがそれぞれ保有する短所を補完して改善された化粧料組成物含浸用発泡フォームとして機能することができる。具体的には、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとを単純に混合又はブレンディングして製造された発泡フォームの場合、相分離が示され、結果として、発泡フォームが不均一状態で存在し、ポリエーテルポリオールフォーム及びポリエステルポリオールフォームそれぞれに示される短所をそのまま保有することになるので、改善された発泡フォームを得難いという側面がある。一方、従来のウレタンフォーム(ポリエーテルポリオールフォーム又はポリエステルポリオールフォーム)と比較するとき、本願のハイブリッド型発泡フォームは、エーテル基とエステル基とを共重合形態で同時に保有するので、互いに界面相の安定化を付与し、干渉効果を排除し、最適のシナジー効果を示すことができる。すなわち、本願の具現例により、ポリエステルが保有する優秀な物性、並びにポリエーテルが保有する柔軟性及び耐加水分解性の長所を具現するのみならず、両者の組み合わせを介して、親油性及び親水性のバランスを調節し、使用される化粧料組成物の特徴によって担持することができる勾配程度を広げることができる。」
(4)甲4
甲4には以下の記載がある(訳文で示す。)。
甲4a)「[3] 近年、担持体に低粘度の化粧料組成物を担持させて携帯が簡便なように作られた化粧用具が開発された。このような化粧用具において低粘度の化粧料組成物は、多孔性担持体のポア内に位置するようになる。」
甲4b)「課題を解決するための手段
[6] 上記の本発明の目的は、化粧料を担持する担持体において、第1の接着面を有する第1の担持体と、前記第1の接着面と向かい合う第2の接着面を有する第2の担持体と、前記第1の担持体と前記第2の担持体との間に位置し、前記第1の接着面と前記第2の接着面とを接着させる接着層とを備え、前記接着層は、ポリオレフィン系材質及びポリエステル系材質のうち、少なくともいずれか1つからなることにより達成される。
・・・
[8] 前記第1の担持体と前記第2の担持体とは、ポリウレタン発泡体であり得る。」
甲4c)「[65] 第1の担持体10として、厚さ1mmのポリウレタンフォームを使用した。ポリウレタンフォームは、ポリエーテルとポリエステルとが5:5であり、ポリカーボネートジオールを含有して耐化学性が強化された湿式ウレタンフォームである。」
(5)甲5
甲5には以下の記載がある(訳文で示す。)。
甲5a)「技術分野
[0001] 本発明は、有機溶液、エマルジョン、ゲル、クリーム又は懸濁液などの液状の化粧料組成物を担持して用いる際に、吸収性や排出性、反発弾性力が高く、良好な感触を有する化粧用発泡フォームの製造方法及びその発泡フォームに関する。
背景技術
・・・
[0004] 近年、合成樹脂製を発泡させてなる発泡フォームが、充填能、担持能、及び排出能に優れており、このような考慮事項を満たすことが分かり、合成樹脂発泡フォーム、例えば、エステル系及びエーテル系発泡フォームが液状の化粧料組成物担持体として利用されている。
[0005] しかしながら、前記従来の液状の化粧料組成物担持体として利用される発泡フォームにおいて、エーテル系発泡フォームは、水分には強いものの油分には弱いため、腐食が生じて維持抵抗性が弱くなるといった問題があり、エステル系発泡フォームは、油分には強いものの水分には弱いため、腐食が生じて耐湿性が弱くなるといった問題があって、長時間にわたり担持体を用いると、破損する問題により機能を失ってしまい、使用できなくなるといった問題がある。
[0006] このような従来の問題点に鑑み、特許文献1の「液状化粧料担持用発泡フォームの製造方法及びその発泡フォーム」が提案され、前記先登録特許は、エステル系及びエーテル系発泡フォームを混合して形成したものであって、耐湿性や維持抵抗性がある程度向上改善されたものである。」
甲5b)「課題を解決するための手段
[0009] このような本発明は、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとの混合比5:5の混合物Aと、アクリル酸又はアクリル酸塩のいずれかと界面活性剤との重量比1:2の混合溶液とを、重量比1:0.1~0.2で混合して共重合合成したタイプであり、吸収率が500~700%、反発弾性率48~55%の物性を有する網状型且つ連続気泡構造であることを特徴とする、化粧用発泡フォームによって達成される。
・・・
[0027] 本発明によれば、前記ステップ(a)の混合比は、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとを5:5で混合する。そのとき、前記ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールの混合比が臨界値を超える場合は、最終的に生産される発泡フォームの気孔サイズが均一に形成されないという欠点があり、また、密度が十分に確保されないため、吸収率が低下するといった欠点がある。
[0028] これは、先に登録された韓国特許第1574493号のように、前記ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとを混合比3:7~4:6で形成すると、耐湿性と維持抵抗性を有する化合物の一方が高いため、重量比の高い側に機能が偏ってしまう問題があるためである。
[0029] 従って、本発明においては、耐湿性と維持抵抗性を平均的に維持するため、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとの混合比を5:5としている。」
甲5c)「[0042] [実施例1及び2]
[0043] (1)ポリエステルとポリエーテルとを混合比5:5で混合し、混合物Aを準備した。
[0044] (2)アクリル酸又はアクリル酸塩のいずれかと界面活性剤とを1:2で混合して溶解させた後、80~120℃に加熱しながら2~3時間撹拌して準備した。
[0045] (3)前記混合物Aと混合溶液とを重量比1:0.1~0.2で混合して混合物Bを製造し、80~120℃の温度に加熱しながら、6,000~8000rpmで90分~120分間撹拌して準備した。
[0046] (4)前記混合液B、発泡剤、触媒剤、及び硬化剤を配合割合に応じて混合撹拌タンクに順次添加し、その後、発泡させて製品化した。
・・・
[0048] [比較例1及び2]
[0049] ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとは、3:7(比較例1)及び4:6(比較例2)で準備した。
[0050]
表1
[図:0001428028000007.jpg]
[0051] 表1において、気孔数は、WI-QA-14(ASTM基準)方式で測定しており、吸収率は、製造された発泡フォームの試片を5cm×5cmのサイズで準備し、排出性は、70℃のオーブンで12時間ドライ(drying)させた後、初期重さ(A)を測定し、25℃の蒸溜水に24時間含浸保管した後、取り出して無塵ペーパーで表面の水気を拭き取った後、重さ(B)を測定した。最終的には、次(式1)を利用して計算した。
[0052] (式1)吸収度(%)=(B-A)/A×100
[0053] また、感触は、発泡フォームの試片を5cm×5cm、厚さ3cmのサイズで準備し、70℃のオーブンで10時間ドライ(drying)させた後、20名を対象に実施した。
[0054] 一方、担持力、排出力、充填力を測定した。充填能は、化粧料15gが充填される時間を測定した。担持能は、化粧料組成物15gを充填し、55℃で4週間放置した後、容器内の担体が保有している化粧料の量を測定した。排出力は、各発泡フォームからパフ及び手を用いて内容物をペイオフし、ペイオフされた量を測定した。その結果を下記表2に示す。
[0055]
表2
[図:0001428028000008.jpg]
[0056] 表1による化粧料組成物、及び平均数70~90ppiであり、5cm×5cm、高さ1.0cmの試験片を準備して試験した。
[0057] 表1及び表2に示された結果により、本発明において提供される化粧用発泡フォームの製造方法は、非常に優れた物性を有する発泡フォームを提供できることが分かり、柔軟性及び弾力性に優れ、感触と液状化粧料を充填する充填能に優れ、液状化粧料を長期間にわたり均質に保持する担持能に優れており、液状化粧料を取り出す際に、適量の化粧料が排出される排出能が高く、化粧料を担持した後にも優れた耐久性が維持可能であることが分かった。特に、吸収度が高く、多量の化粧料を担持することができ、また化粧料の担持が容易である利点などがある。」
(6)甲6
甲6には以下の記載がある。
甲6a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ウレタンフォーム(foam)に低粘度の油中水型(W/Oエマルジョン)化粧料組成物を含浸させ、これをエアーレスタイプの容器(airless container)に充填することにより、容易に分離する低粘度内容物の安定度を高め、ユーザーの使用利便性を増進させる低粘度化粧料組成物に関する。」
甲6b)「【0011】
本発明で使用される乳化剤としては、油中水型乳化物を製造することができるように親水性親油性バランス(Hydrophilic lipophilic balance、HLB)の範囲が1~6であるようなHLBが低い非イオン界面活性剤が適当であり、具体的には、・・・、ソルビタンセスキオレート(Sorbitan Sesquioleate)、・・・、PEG-10ジメチコン(PEG-10 Dimethicone)、・・・セチル PEG.PPG-10.1 ジメチコン(Cetyl PEG.PPG-10.1 Dimethicone)、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキクシエチルジメチコン(Lauryl PEG-9 Polydimethylsiloxyethyl Dimethicone)などから選択された1種以上を使用することができ、組成物の全体重量に対して0.01~10重量%の量で含有される。乳化剤が0.01重量%未満では、エマルジョンが形成されないか、または組成物の安定度が悪く、10重量%超過では、乳化剤自体のべたつきと固有な異臭がひどく発生することがあるからである。」
甲6c)「【0015】
本発明で使用される水相成分は、精製水、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール及びグリセリンの中から選択された1種以上を使用することができ、組成物の全体重量に対して20~60重量%の量で含有される。水相成分が20重量%未満では、粘度が過度に低くて剤形の安定度が低くなり、60重量%超過では、粘度が過度に高くなるという問題が発生するからである。」
甲6d)「【0023】
[参考例1~2]
本発明による油中水型乳化化粧料組成物のうちメーキャップ化粧料組成物を下記表1の組成として参考例1及び2を製造した。
まず、油性成分、紫外線遮断剤、乳化剤、粘増剤を混合し、80℃に加温撹拌し、均一に作った後、これにピグメントを混合して撹拌し、均一にした。別途のミキサーに水相成分を混合し、80℃に加温撹拌し、完全に溶解させた。80℃に加温して溶解させた水相成分を油相にゆっくり投入させ、ホモミキサーを利用して乳化させた。50℃まで冷却した後、皮膚保護成分及び香料などを投入し、冷却した。
【0024】
【表1】
[図:0001428028000009.jpg]
・・・
【0042】
[試験例6]発泡ウレタンフォームの硬度別排出力
上記参考例1の化粧料組成物(粘度4,000cps)15gを担持した直径48mm、厚さ10mmの発泡ウレタンフォームにパフ(puff)を412Paの圧力で1回接触させたとき、パフにつく化粧料の量(g)を「排出力」として測定した。上記発泡ウレタンフォームは、上記参考例1の化粧料組成物を含浸させた状態での硬度がアスカー硬度計F型を基準としてそれぞれ5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80である発泡ウレタンフォーム14個を使用し、排出力の結果を表7に示した。
【0043】
【表7】
[図:0001428028000010.jpg]
・・・
【0050】
[試験例8]紫外線遮断化粧料の粘度別発泡ウレタンフォームの排出力
上記参考例3~7のメーキャップ化粧料組成物15gを含浸させた状態でアスカー硬度計F型を基準として硬度40である48mm、厚さ10mmの発泡ウレタンフォームをパフで412Paの圧力で1回接触したとき、パフに排出される化粧料の量(g)を測定し、これを「排出力」として下記表10に結果を示した。
【0051】
【表10】
[図:0001428028000011.jpg]
」
(7)甲7
甲7には以下の記載がある(訳文で示す。)。
甲7a)「流体化粧組成物のための小型のパッキング用品の中には、特に含浸されたスポンジがある。これらの製品は、クッションの名称で知られ、それらの携帯性に対して消費者から高く評価された製品の新たなカテゴリーを構成する。例えばウレタンタイプの多孔質スポンジは、小型の筐体に載置され、文献WO2012/128589に記載されるように流体化粧組成物で含浸される。」(1頁26~最終行)
甲7b)「したがって、本発明の目的は、携帯使用、パッキングの可能化、及び最適な特性、特に良好な展延性を有する化粧組成物の使用を目的とした化粧用品を提供することである。そのような化粧用品は、特に、小型であり、デバイスの輸送及びその使用中の漏出又は流出のいずれの危険からもユーザーを保護しなくてはならない。
この目的のため、本発明によると、
i.筐体と、
ii.筐体に収容された貯蔵容器であって、チキソトロピック化粧組成物を含み、前記化粧組成物を分配するための開口部を有する前記貯蔵容器と、
iii.貯蔵容器の前記開口部をカバーするメッシュであって、後者にせん断応力が作用しない場合には化粧組成物に対して不浸透性であり、後者にせん断応力が作用する場合には化粧組成物に対して浸透性であるように構成された前記メッシュと
を備える化粧用品が提供される。
メッシュとの組合せによるチキソトロピック化粧組成物の使用により、優れた展延特性を有する化粧組成物と携帯使用との組合せを可能とする。これは、例えば、スポンジを使用するその収集及び展延中に、組成物にはせん断応力が作用し、それによってその構造を破壊するとともにそれを流体にして良好な展延を結果としてもたらすからである。したがって、化粧組成物は、鮮度及び保湿性を与えることができる。その上、これによってメッシュを通じた組成物の容易な収集が可能となり、消費者は収集される組成物の用量を精密に制御することができる。
使用前及び使用が完了すると、化粧組成物は、再構造化され、メッシュを通過できないように十分高い粘度を有する。これによって、化粧用品の携帯使用が可能となる。これは、化粧組成物が、その構造化及び粘性状態であるその本来の状態では化粧用品から漏出不可能だからである。化粧組成物はまた、後者にせん断応力が作用しない場合には、すなわち、それがその本来の状態である場合には、メッシュが化粧組成物に不浸透性であるため流出することもない。
したがって、化粧組成物の流体力学的挙動は、上記の従来技術の制約に対処しつつ、メッシュが設けられた携帯用筐体との良好な適合性を可能とする。本発明による化粧用品は、含浸されたスポンジなしで使用可能であり、それによって貯蔵容器の容積を大幅に低減し製品のいずれのロスも防止するのを可能とする。組成物の輸送中の流動の危険がないことによって、化粧用品のパッキング、特にメッシュに対する設計上の制約を非常に低下させる。」(3頁1行~4頁5行)
甲7c)「化粧組成物は、60Pa以下、好適には55Pa以下の降伏応力を有することが好ましい。降伏応力は、製品を流動させるのに必要な最小応力に相当する。この値は、組成物の展延性能及びメッシュを通じて押し出されるその性能に関する情報を提供する。収集を容易にするには、十分低い降伏応力が必要とされる。」(7頁13~18行)
甲7d)「式1~4は、上記の方法に従って特徴付けられた。これらの特徴付けの結果は、以下の表に報告される。
[図:0001428028000012.jpg]
表2:組成物1~4の特徴
組成物1及び2は、比較的低い降伏応力、中間複素弾性率G*によって反映される適度な剛性、及びさらに十分低いδによって反映される適度な弾力性を有する。これらの特性は、これら2つの組成物に、メッシュを通じた組成物の押出し、並びに低い複素弾性率G*及び低い位相角δの組合せによるアプリケータスポンジへの接着を容易にしつつ、本発明による化粧用品における輸送上の良好な安定性に必要な流体力学的特性を与える。さらに、組成物1及び2の100s-1における粘度は、これらの組成物が流体組成物のように皮膚上で容易に展延するのに十分低い。」(27頁表2の上2行~28頁10行。下線は原文どおり。)
(8)甲8
甲8には以下の記載がある。
甲8a)「【0029】
(E)乳化剤
乳化剤は、本発明の効果を損なわない限り、化粧料に一般的に使用されるものを使用することができる。乳化剤は、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等である。乳化剤は、疎水基に着目すると、シリコーン系界面活性剤であることが好ましく、シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーンやポリグリセリン変性シリコーンを用いることができる。乳化剤の含有量は、油中水型乳化化粧料の総量中に0.1~10.0質量%とすることが好ましい。
・・・
【0031】
ポリエーテル変性シリコーンとしては、・・・、PEG-10ジメチコン、PEG-10メチルエーテルジメチコン、・・・、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、・・・、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-10トリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコンなどが挙げられる。」
(9)甲9
甲9には以下の記載がある(訳文で示す。)。
甲9a)「文献D1は、エーテル-エステル系のウレタンフォームに化粧品組成物を含浸させたものを開示している。これは、ポリブタジエンポリオールとヒマシ油を重量比80/20又は70/30でイソシアネートと混合することにより得られる(実施例M3、M4、M31~M35、[0122]、[0126])。ヒマシ油は分子量が約930g/molであり、実施例M3、M4、M31~M35におけるウレタン中のエーテル/エステル基のモル比は5.8:4.2又は4.4:5.6である。組成物1~4は水分含有量が35重量%未満である([0135])。D1の化粧品は、変形や腐食を伴うことなく含浸材料の耐久性を向上させる(要約)。」(1~2頁、2.2の欄)
(10)甲10
甲10には以下の記載がある(訳文で示す。)。
甲10a)「KR2018-0026125は、ポリウレタンフォームを含む組成物を開示しており、このフォームはイソシアネート、ヒマシ油(分子量930g/mol)、及び分子量2800g/molのポリブタジエンポリオールから形成されている。そしてこのフォームは、エーテル基及びエステル基をモル比5.8:4.2で含み、この比率は請求項1の範囲内であり、水とオイルエマルションの形態の化粧料組成物で含浸されている(M3、M4、及びM31~M35などの実施例2を参照)。」(5頁13~20行)
(11)甲11
甲11には以下の記載がある。
甲11a)「
[図:0001428028000013.jpg]
[図:0001428028000014.jpg]
[図:0001428028000015.jpg]
[図:0001428028000016.jpg]
[図:0001428028000017.jpg]
」(2~6頁)
(12)甲12
甲12には以下の記載がある。
甲12a)「「本願発明では、「従来のクッション化粧品は、フォームの材質、フォームの構造に関する考察や、それに適した化粧料組成物としての要求特性、それに基づいた化粧料組成物の設計は全くない実情である」という背景技術(段落[0005])を踏まえて、「加圧使用に適した耐化学性および流動特性を有するエーテル/エステルポリウレタンフォーム化粧品を提供すること」を目的としている(段落[0008])。・・・
・・・再配置特性の評価では、限界せん断応力の異なる製造例1~3の化粧料組成物をポリウレタンフォームに含浸させ、限界せん断応力が低いほど、加圧した際の流動性が高まることを見出している(段落[0085])。このように、本願では、貯蔵弾性率(G’)=損失弾性率(G’’)となる限界せん断応力が、ポリウレタンフォームに含浸させて加圧した際の流動の発生に影響する点に初めて着眼し、当該限界せん断応力を特定の範囲に調整している。」(3.(4)の欄。下線は原文どおり。)
(13)甲13
甲13には以下の記載がある(訳文で示す。)。
甲13a)
「要約:
最も一般的な化粧品分散系である乳液及びクリーム(o/w、w/o)を含む31種類の化粧品エマルションを、レオロジー的手法(RheoStress 300、Thermo Fischer Scientific)及び官能評価によって分析した。擬塑性を示すボディローションにはパワーローモデルを、塑性粘性を示すクリームにはハーシェル・バルクレーモデルを適用し、基本的なレオロジー特性(見かけの粘度、一貫性パラメータ、降伏応力、塑性粘度、流動挙動指数)を得た。日焼け止めローション中のTiO2含有量は、塑性粘性を示すクリームとのより良い一致性をもたらした可能性がある。レオロジー分析は、エマルションの保存安定性試験において、官能評価よりも適していることが確認された。心理レオロジーは適切な複合的手法として適用された。レオロジー特性と官能特性との関係のうち、約60%が統計的に有意であった(P=0.05)。レオロジー特性と官能特性同士の関係のみに限定すると、46%が統計的に有意であった(P=0.05)。見かけの粘度とボトルからローションを取り出す動作との関係は十分に信頼できるものであり(相関係数0.91)、迅速なレオロジー測定により官能属性を推定できる可能性が示された。その他の統計的に有意な関係(相関係数0.53~0.80)も、化粧品エマルションの感触に関する官能的な受容性が、部分的にレオロジー分析によって予測可能であることを示している。」(352001-1頁、要約)
甲13b)
「
[図:0001428028000018.jpg]
」(352001-3頁、右欄)
甲13c)「
[図:0001428028000019.jpg]
」(352001-4頁)
2 申立理由について
(1)申立理由1(新規性欠如)について
ア 引用発明
甲1には、化粧料組成物を含浸材に含浸された化粧品において、前記含浸材は、ポリオールを含んで製造される化粧料組成物含浸用軟質ポリウレタンフォームである、化粧品についての記載があるところ(摘記甲1a~甲1h)、実施例及び実験例として、サンプルコードM31~M35から製造された軟質ポリウレタンフォームに、組成物1~4の油中水型ファンデーションを含浸させた化粧品が記載されている(摘記甲1h)。
したがって、甲1には、次に示す発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「以下の表2に示されるサンプルコードM31~M35から製造された軟質ポリウレタンフォームに、以下の表3に示される組成物1~組成物4の油中水型ファンデーションを含浸させた化粧品。
表2
[図:0001428028000020.jpg]
表3
[図:0001428028000021.jpg]
」
イ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「油中水型ファンデーション」及び「軟質ポリウレタンフォーム」は、それぞれ本件発明1の「化粧料組成物」及び「ポリウレタンフォーム」に相当する。
甲1発明の組成物1~4について、合計100gのうち増粘剤は「適量」とされ、水は「~100」とされており、水及び増粘剤以外の含有量は、順に、73.7g、73.7g、70.2g、69.2gであるから、組成物1~4における水の含有量は、順に、26.3g未満、26.3g未満、29.8g未満、30.8g未満であるといえるが、具体的な量は不明である。
してみると、本件発明1と甲1発明は、
「化粧料組成物を含浸したポリウレタンフォームを含む化粧品」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は「ポリウレタンフォームのポリウレタンは、エーテル基とエステル基をモル比で4:6~6:4の比率で含」むとされているのに対し、甲1発明はそのようなポリウレタンフォームであるとされていない点。
<相違点2>
化粧料組成物の水含量について、本件発明1は「20~30wt%」であるとされているのに対し、甲1発明は組成物100g中に26.3g未満、26.3g未満、29.8g未満又は30.8g未満であるが、具体的な量が不明である点。
<相違点3>
化粧料組成物について、本件発明1は「貯蔵弾性率(G’)の曲線と損失弾性率(G’’)の曲線との交点における限界せん断応力値が3Pa~15Paである」とされているのに対し、甲1発明はかかる特性を有するものであるか不明である点。
b 判断
(a)相違点1について
甲1発明の軟質ポリウレタンフォームは、ポリブタジエンポリオールとヒマシ油及びイソシアネートを原料としてポリウレタンとするものであると解されるところ、それらの原料を用いて製造されるポリウレタンにエーテル基が存在するとはいえない(ポリブタジエンポリオール及びヒマシ油の水酸基とイソシアネート基が反応してウレタン結合を形成すると考えられる。)。
したがって、甲1発明は、「ポリウレタンフォームのポリウレタンは、エーテル基とエステル基をモル比で4:6~6:4の比率で含」むものであるとはいえないから、相違点1は実質的な相違点である。
(b)相違点3について
甲1には、甲1発明における組成物1~4について、「貯蔵弾性率(G’)の曲線と損失弾性率(G’’)の曲線との交点における限界せん断応力値が3Pa~15Paである」ことは記載も示唆もない。
甲11に、甲1発明における組成物1及び2の貯蔵弾性率(G’)の曲線と損失弾性率(G’’)の曲線との交点における限界せん断応力を求めた実験結果が記載され、25℃において、組成物1が6.9Paであり、組成物2が12.1Paであることが示されている。
しかし、組成物1及び2の増粘剤(ジステアジモニウムヘクトライト)の量について、甲1発明は「適量」であるのに対し、甲11に記載された実験においては0.6gである点において、甲11に記載された実験は、甲1発明における組成物1及び2についての再現実験であるとはいえない。
また、甲1発明の組成物1及び2の粘度について、「ブルックフィールドLVII粘度計にスピンドル4番を利用して30rpmで1分間作動させた後、25℃で粘度を測定したとき、4,000cpsの粘度」である(摘記甲1h、[0134])のに対し、甲11には、「粘度計(DV-EViscometer、Brookfield)で測定した。この時、粘度の測定時にSpindleNo.4を用い、Spindleを前記各組成物に浸した後に1分間12rpmで回転して表示された値を粘度として用いた。測定温度は25℃(室温)で実施した。」との測定方法によって、7200及び8400cpsであったことが記載されており、粘度が一致するということはできないから、この点においても、甲11に記載された実験は、甲1発明における組成物1及び2についての再現実験であるとはいえない。
そして、甲1発明における組成物1~4について、「貯蔵弾性率(G’)の曲線と損失弾性率(G’’)の曲線との交点における限界せん断応力値が3Pa~15Paである」といえるその他の理由もない。
したがって、相違点3は実質的な相違点である。
c まとめ
以上のとおり、相違点1及び相違点3は実質的な相違点であるから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明と実質的に相違し、甲1に記載された発明であるということはできない。
(イ)本件発明2、3、5及び6について
本件発明2、3、5及び6は、本件発明1の化粧品を技術的に更に特定する化粧品であるから、本件発明1と同様に、甲1発明と実質的に相違し、甲1に記載された発明であるということはできない。
ウ 申立理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由1は理由がない。
(2)申立理由2(進歩性欠如)について
ア 引用発明
上記(1)アに示したとおりである。
イ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 対比
上記(1)(ア)aに示したとおりである。
b 判断
(a)相違点1について
甲1には、化粧料組成物の物性及び含有成分の差異によってエーテル系ポリオール及びエステル系ポリオールを混合し、適切なウレタンフォーム含浸材を選択するための努力が行われていたこと(摘記甲1b、[0009])、エステル(ester)ウレタンフォームとエーテル(ether)ウレタンフォームが有している利点を共に利用できる軟質ウレタンフォームを開発するための研究を長い間行い、本発明を完成するに至ったこと、並びにポリオール間の相溶性が良くないことからエーテルポリオールとエステルポリオールとの間の混合を利用したウレタンフォーム含浸材の開発に困難性があるという点を乗り越えることができる新たな素材の開発のために努力したことが記載されている(摘記甲1d)。
一方、甲2には、エーテル系ポリオールとエステル系ポリオールとを混合発泡させてウレタンフォームとして成形することで化粧料組成物の充填性が良好で、且つ化粧料組成物を長期間にわたり均質に担持することができ、化粧料組成物を取る際に適量の化粧料組成物が排出されると同時に、化粧料組成物を入れた後にも優れた耐久性を維持する、化粧料組成物を担持するフォームについて記載され(摘記甲2a~甲2e)、
甲3には、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとのハイブリッド共重合体を含む化粧料組成物含浸用ハイブリッド型発泡フォーム、及び前記ハイブリッド型発泡フォームを含む化粧品キットについて記載され(摘記甲3a及び甲3b)、
甲4には、ポリエーテルとポリエステルとが5:5である化粧料を担持するポリウレタンフォームが記載され(摘記甲4a~甲4c)、
甲5には、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとの混合比5:5の混合物Aと、アクリル酸又はアクリル酸塩のいずれかと界面活性剤との重量比1:2の混合溶液とを、重量比1:0.1~0.2で混合して共重合合成したタイプであり、吸収率が500~700%、反発弾性率48~55%の物性を有する網状型且つ連続気泡構造であることを特徴とする、化粧用発泡フォームについて記載されている(摘記5a~甲5c)。
ここで、甲1には、エーテル系ポリオール及びエステル系ポリオールを混合し、適切なウレタンフォーム含浸材を選択するための努力が行われていたことが従来技術として記載され(摘記甲1b)、ポリオール間の相溶性が良くないことからエーテルポリオールとエステルポリオールとの間の混合を利用したウレタンフォーム含浸材の開発に困難性があるという点を乗り越えるために、従来の化粧品業界では全く試みなかった、新たなタイプの改質された(reforming)ポリオールを利用して軟質ウレタンフォームを開発したことが記載されている(摘記甲1d)こと、すなわち、甲1に記載された発明は、エーテル系ポリオール及びエステル系ポリオールを混合したウレタンフォーム含浸材とは異なる、新たなタイプの軟質ウレタンフォームを得たものであることに鑑みると、たとえ甲2~甲4に、エーテル系ポリオールとエステル系ポリオールとを混合発泡させた化粧料組成物を担持するウレタンフォーム、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとのハイブリッド共重合体を含む化粧料組成物含浸用ハイブリッド型発泡フォーム、及びポリエーテルとポリエステルとが5:5である化粧料を担持するポリウレタンフォームが記載されているとしても、当業者において、そのようなポリウレタンフォームを甲1発明に適用する動機付けが生じるとはいえない。
また、甲5については、甲5に記載された発泡フォームはそもそもポリウレタンフォームではないから、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとの混合比を5:5とする技術的事項に着目して、甲1発明の軟質ウレタンフォームに適用する動機付けがあるとはいえない。
してみると、甲1発明において、相違点1に係る技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるということはできない。
(b)相違点3について
甲1には、化粧品製造業界では、水分と油分とを共に有している化粧品を担持しなければならない特性、塗布具を利用して含浸材を持続的に圧迫する特性、外部圧迫や圧力にもかかわらず一定形態を維持しなければならない特性、化粧品含浸材の摩耗や崩壊があってはならない特性により、化粧料組成物含浸用ウレタンフォームを製造するためのポリオールを選択するのに限界があったことが記載されている(摘記甲1e、[0023])。
一方、甲2には、エーテル系ポリオールとエステル系ポリオールとを混合発泡させてウレタンフォームとして成形することで化粧料組成物の充填性が良好で、且つ化粧料組成物を長期間にわたり均質に担持することができ、化粧料組成物を取る際に適量の化粧料組成物が排出されると同時に、化粧料組成物を入れた後にも優れた耐久性を維持する、所定の粘度及び硬度を有する化粧料組成物を担持するフォーム(摘記2a、[0001]、摘記甲2c)、化粧料組成物の粘度に応じて、ウレタンフォームの硬度及び1インチあたりの気孔数(ppi)を調整すること(摘記甲2c、[0024])、並びに実験例1として、化粧料組成物の粘度及びウレタンフォーム担体の違いによる充填力、担持力及び排出力についての実験結果について記載され(摘記2d)、
甲5には、有機溶液、エマルジョン、ゲル、クリーム又は懸濁液などの液状の化粧料組成物を担持して用いる際に、吸収性や排出性、反発弾性力が高く、良好な感触を有する化粧用発泡フォームの製造方法及びその発泡フォーム(摘記5a、[0001])、並びに実施例及び比較例として、発泡フォームの違いによる化粧料組成物の担持力、排出力及び充填力等についての測定結果等が記載され(摘記5c)、
甲6には、発泡ウレタンフォームの硬度別排出力及び紫外線遮断化粧料の粘度別発泡ウレタンフォームの排出力について記載されている(摘記甲6d、【0042】、【0043】、【0050】及び【0051】)。
これら、甲2、甲5及び甲6の記載からみて、本件優先日当時、化粧料組成物を含浸するフォームにおいて、担持性及び排出性等に着目して、フォーム及び化粧料組成物を選択することは周知の技術的事項であったといえる。
また、甲7には、化粧用品の貯蔵容器の開口部をカバーするメッシュであって、メッシュにせん断応力が作用しない場合には化粧組成物に対して不浸透性であり、せん断応力が作用する場合には化粧組成物に対して浸透性であるように構成された前記メッシュ(摘記甲7b)、先行技術として、流体化粧組成物のための小型のパッキング用品として、例えば、ウレタンタイプの多孔質スポンジである含浸されたスポンジ(摘記甲7a)、並びに化粧組成物は、60Pa以下、好適には55Pa以下の降伏応力を有することが好ましく、降伏応力は、製品を流動させるのに必要な最小応力に相当すること、この値は、組成物の展延性能及びメッシュを通じて押し出されるその性能に関する情報を提供すること、及び収集を容易にするには、十分低い降伏応力が必要とされることが記載されている(摘記甲7c及び7d)から、本件優先日当時、デバイスの輸送及びその使用中の漏出又は流出のいずれの危険からもユーザーを保護すること等を目的とする、メッシュを通じて押出しされる化粧組成物について、その降伏応力に適切な範囲があることが知られていたといえる。
さらに、甲13には、最も一般的な化粧品分散系である乳液及びクリーム(o/w、w/o)を含む31種類の化粧品エマルションを、レオロジー的手法(RheoStress 300、Thermo Fischer Scientific)及び官能評価によって分析したこと、基本的なレオロジー特性(見かけの粘度、一貫性パラメータ、降伏応力、塑性粘度、流動挙動指数)を得たこと、並びにレオロジー特性と官能特性との関係のうち、約60%が統計的に有意であったことが記載され、具体的に、サンプルcr8~16について、K[Pa・sn]が2.49~12.40であることが記載されている(摘記甲13a及び甲13b。なお、甲13、35200-4頁、右欄17~19行に、「粘塑性サンプルの降伏応力値、τo・・・が計算された(表4)。」と記載されているが、表4に「τo」の記載はないから、当該箇所又は表4には何らかの誤記があることが考えられる。)。
しかし、甲2、5、6、7及び甲13のいずれにも、化粧料組成物の「貯蔵弾性率(G’)の曲線と損失弾性率(G’’)の曲線との交点における限界せん断応力値」についての記載も示唆もされていないから、当該値を「3Pa~15Pa」とすることについても記載も示唆もされているとはいえない。
甲2、甲5及び甲6の記載から、本件優先日当時、化粧料組成物を含浸するフォームにおいて、担持性及び排出性等に着目して、フォーム及び化粧料組成物を選択することは周知の技術的事項であったといえ、化粧料組成物の選択に際してその粘度を調整する動機付けがあるといえるとしても、粘度と「貯蔵弾性率(G’)の曲線と損失弾性率(G’’)の曲線との交点における限界せん断応力値」との具体的な関係が本件優先日当時公知であったということはできないし、甲2、甲5及び甲6の記載を参酌しても、甲1発明の組成物1~4について、上記限界せん断応力値を「3Pa~15Pa」の範囲のものとすることが動機付けられるということもできない。
また、甲7に記載されている、「メッシュ」は、化粧料組成物を含浸させるウレタンフォームではないし、甲7に記載されている「降伏応力」と上記限界せん断応力との関係も不明であるから、甲1発明の組成物1~4について、「貯蔵弾性率(G’)の曲線と損失弾性率(G’’)の曲線との交点における限界せん断応力値が3Pa~15Pa」のものとすることが動機付けられるとはいえない。
また、甲13に、レオロジー特性と官能特性との関係のうち、約60%が統計的に有意であったことが記載され、具体的なサンプルについてのレオロジー特性について記載されているが、甲13には、化粧料組成物をポリウレタンフォームに含浸することについての記載が見当たらず、降伏応力と上記限界せん断応力値との関係も不明であるから、かかる記載を参酌しても、甲1発明の組成物1~4を「貯蔵弾性率(G’)の曲線と損失弾性率(G’’)の曲線との交点における限界せん断応力値が3Pa~15Paである」ものとすることが動機付けられるとはいえない。
さらに、甲11に、甲6に参考例1として記載された化粧料組成物の限界せん断応力値が3Pa~15Paの範囲内にあることが記載されているが、甲1発明における組成物をかかる化粧料組成物に代える動機付けはない。
したがって、甲1発明において、相違点3に係る技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるということはできない。
(c)本件発明1の効果について
本件発明1は、担持状態で化粧料組成物が安定した状態で存在し、加圧時にフォーム内部に均一に再配置可能な複合ポリウレタンフォームを備えた化粧品を提供することができ、化粧料組成物の含浸前後の硬度変化が小さいポリウレタンフォームを備えるものであり、吐出感、接触感、使い心地に優れるという、当業者の予測の範囲を超える顕著な効果を奏するものである(本件明細書【0018】及び【0085】~【0096】)。
c まとめ
以上のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1~甲7及び甲13に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(イ)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の化粧品を技術的に更に特定する化粧品である。
したがって、本件発明2、3、5及び6は、本件発明1と同様に、甲1~甲7及び甲13に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、甲8には、ポリエーテル変性シリコーン等の乳化剤について記載されているに過ぎないから(摘記甲8a)、本件発明4は、本件発明1と同様に、甲1~甲8及び甲13に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
ウ 申立理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由2は理由がない。
(3)申立理由3(サポート要件違反)について
ア 判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 判断
(ア)本件明細書の記載
本件明細書には、以下の事項が記載されている。
本1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品に関し、より詳しくは、液状化粧料が含浸されたポリウレタンフォームを備える化粧品に関する。
【背景技術】
・・・
【0004】
従来、このような化粧品に用いられる含浸材としてはポリウレタンフォームを主に用いており、このようなポリウレタンフォームは高分子重合反応に用いられるポリオール種類に応じてエーテル系ポリウレタンフォーム、エステル系ポリウレタンフォームに区分される。エーテル系ポリウレタンフォームは、耐加水分解性に非常に優れ、弾性に優れ、安価な長所を有するが、耐油性が弱いという短所があるのに対し、エステル系ポリウレタンフォームは、気泡調整が容易であり、耐摩耗性、耐薬品性などに優れるという長所を有するが、加水分解を起こしやすいという短所を有する。よって、二つのポリオールの短所を補い、長所を浮かび上がらせるポリウレタンフォームの使用が求められる。
【0005】
また、従来のクッション化粧品は、フォームの材質、フォームの構造に関する考察や、それに適した化粧料組成物としての要求特性、それに基づいた化粧料組成物の設計は全くない実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の問題を解決するために、本発明は、特定比率のエーテル/エステル比率を有するエステル/エーテル複合ポリウレタンフォームを備える化粧品を提供することをその目的とする。
【0007】
また、本発明は、加圧使用に適した流動特性を有する化粧料組成物を備えるポリウレタンフォーム化粧品を提供することをその目的とする。
【0008】
より具体的には、本発明は、加圧使用に適した耐化学性および流動特性を有するエーテル/エステルポリウレタンフォーム化粧品を提供することをその目的とする。」
本2)「【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題を達成するために、本発明は、化粧料組成物を含浸したポリウレタンフォームを含む化粧品であって、前記ポリウレタンフォームのポリウレタンは、エーテル基とエステル基をモル比で4:6~6:4の比率で含み、前記化粧料組成物は、水含量が35wt%以下であり、貯蔵弾性率(G’)=損失弾性率(G’’)である限界せん断応力値が100Pa以下であることを特徴とする化粧品を提供する。
【0010】
本発明において、前記化粧料組成物の水含量は20~35wt%であってもよい。また、前記化粧料組成物の水含量は20~30wt%であってもよい。また、前記化粧料組成物の水含量は25~30wt%であってもよい。
・・・
【0012】
本発明において、前記化粧料組成物は、1Paのせん断応力下で3≦G’/G’’≦10の関係であることが好ましい。
【0013】
本発明は、前記化粧料組成物は油相成分および水相成分を含み、水相成分に対する油相成分の重量比は0.9~1.1の範囲であることが好ましい。
【0014】
また、前記化粧料組成物は主乳化剤および補助乳化剤を含み、前記主乳化剤および補助乳化剤は重量比で3:1~4:1の比率であることが好ましい。
【0015】
この時、前記主乳化剤は、ラウリルPEG-10トリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンおよびセチルPEG/PPG-10/1ジメチコンからなる群より選択された少なくとも1種の物質を含み、前記補助乳化剤は、PEG-10ジメチコンおよびソルビタンイソステアレートのうち少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0016】
本発明において、前記ポリウレタンフォームの含浸後の硬度は20~35であることが好ましい。この時、前記ポリウレタンフォームの含浸前を基準にした含浸前後の硬度変化率は45%以下であることがより好ましい。」
本3)「【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、特定比率のエーテル/エステル比率を有するエステル/エーテル複合ポリウレタンフォームを備える化粧品を提供することができる。
【0018】
また、本発明によれば、担持状態で化粧料組成物が安定した状態で存在し、加圧時にフォーム内部に均一に再配置可能な複合ポリウレタンフォームを備えた化粧品を提供することができる。」
本4)「【図面の簡単な説明】
【0019】
・・・
【図4】本発明の実施例による化粧料組成物の流動を説明するための模式図である。
【図5】本発明の一実施例による化粧料組成物の流動特性を示すグラフである。
【図6】本発明の他の実施例による化粧料組成物の流動特性を示すグラフである。
【図7】本発明のまた他の実施例による化粧料組成物の流動特性を示すグラフである。」
本5)「【発明を実施するための形態】
【0020】
・・・
【0021】
本発明の明細書において、エーテルポリウレタンフォームは、ポリエーテルポリオールとイソシアネート(-NCO)基を有した化合物と反応して形成されたポリウレタンを発泡フォームとして加工したものを含む。また、エステルポリウレタンフォームは、ポリエステルポリオールとイソシアネート(-NCO)基を有した化合物と反応して形成されたポリウレタンを発泡フォームとして加工したものを含む。また、本発明において、エーテル/エステルポリウレタンフォームとは、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールの混合物とイソシアネート(-NCO)基を有した化合物と反応して形成されたポリウレタンを発泡フォームとして加工したもの、またはポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールのハイブリッド共重合体とイソシアネート(-NCO)基を有した化合物と反応して形成されたポリウレタンを発泡フォームとして加工したものを含む。また、本発明において、エーテル:エステル比率は、エーテル/エステルポリウレタンフォーム内のエステル基およびエーテル基のモル比を意味する。例えば、エーテル:エステル=4:6は、ポリウレタン内のエーテル基とエステル基のモル比が4:6であることを意味する。
・・・
【0024】
本発明において、前記含浸材100は、好ましくは、エーテル-エステルポリウレタンフォームである。より好ましくは、前記エーテル-エステルポリウレタンフォームは、中間比率のエーテル-エステルポリウレタンフォームである。ここで、中間比率とはポリウレタン内のエステル基の比率が半分に近いものをいい、例示的にエーテル:エステルの比率は4:6~6:4であることが好ましい。
【0025】
例示的にエーテル:エステル比率は4:6~6:4、好ましくは4.5:5.5~5.5:4.5、より好ましくは4.3:5.7~5.7:4.3であってもよい。本発明の一部の実施例においては、エーテル:エステル比率が5:5のポリウレタンフォームを用いた。一部の文献の中でもポリウレタンフォームのポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールの混合について開示している文献は存在するが、本発明のように原料物質中に従来の耐加水分解性に脆弱であると知られたポリエステルポリオールの比率がポリエーテルポリオールとほぼ類似した比率で用いられたポリウレタンフォームに関する特性を研究したり効果を確認したりした文献は公開されたことがない。
・・・
【0031】
含浸材を構成するポリウレタンフォームにおいて、原料物質としてポリエーテルポリオールを用いたフォームは、耐加水分解性に非常に優れ、弾性に優れ、安価な長所を有するが、耐油性が弱いという短所がある。その反面、ポリエステルポリオールを用いたフォームは、気泡調整が容易であり、耐摩耗性、耐薬品性などに優れた長所を有するが、加水分解を起こしやすく、高温で長期間の保管時に壊れる現象が発生する短所があると知られている。本発明において、エーテル-エステルポリウレタンフォームは、単一組成のポリエーテルフォームまたはポリエステルフォームが有する短所を補うことができる。さらに、ポリエステルポリウレタンフォームは、ポリエーテルポリウレタンに比べてセル大きさを容易に調節できるという長所を有し、より小さいセル大きさを有するポリウレタンフォームの製造に有利である。
【0032】
本発明のフォームにおけるポリウレタン内のエステル基の含量(モル比)はエーテル基の含量(モル比)に近接し、エーテル:エステルのモル比は好ましくは6:4~4:6の範囲であってもよい。例示的に、本発明において、エーテル:エステルのモル比は、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールの混合比により決定される。すなわち、エーテル:エステル=5:5のポリウレタンは、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールを5:5で混合して製造される。
・・・
【0042】
このような本発明のポリウレタンフォームの硬度値は、F型(Type)を基準にASKER硬度が含浸前に約70~90(含浸前)、含浸後に約40~45の値を示す一般的なポリウレタンフォームより相当に低い。しかし、本発明に係るポリウレタンフォームは、現在市販中の他のポリウレタンフォームに比べて、硬度が低く、且つ、耐久性は低下しない特性を有しており、前述したように耐加水分解性および耐油性も優れた特性を有している。
【0043】
一方、一般に含浸材に化粧料組成物を含浸する場合に含浸後の硬度が低くなるのが一般的であるが、全ての含浸材において同一な数値に硬度が落ちるのではないゆえ、含浸前後の硬度差が過度に大きい場合には、含浸材に含浸する化粧料組成物の設計が困難であり、含浸後の化粧品の使い心地に良くない影響を及ぼす。本発明者らは、化粧料組成物の含浸前後の硬度差を最大限に減らし、且つ、優れた使い心地および効果を有するポリウレタンフォームに関する研究を持続し、本発明を完成するに至った。
【0044】
本発明において、ポリウレタンフォームの化粧料含浸前の硬度に対する含浸後の硬度の減少率((含浸前の硬度-含浸後の硬度)/含浸前の硬度)は50%未満であってもよく、好ましくは45%未満であってもよい。前記減少率が50%以上である場合には、含浸後の含浸材の膨張(swelling)が過度に大きくなりうるため、含浸材の物性に影響を及ぼして使い心地が良くない。
【0045】
さらに、本発明のポリウレタンフォームは、ポリウレタンフォームを含浸材として含む化粧品を使用するにおいて、重要な官能的特性のうちの一つである化粧品の「使い心地」において、後述する実験例から確認できるように、従来の異なるポリオール比率で含まれた化粧品に比べて遥かに高い評価を受けたのを実験的に確認した。これは、化粧料組成物の含浸後の硬度が約20~約35のポリウレタンフォームが、塗布具を用いて含浸された化粧料組成物を取る時、最も柔らかく塗布具に取られる化粧料組成物の量が適切であると判断された。」
本6)「【0050】
以下では、前述した本発明のエーテル-エステルポリウレタンフォームに含浸されるのに適した化粧料組成物の特性について説明する。
【0051】
前述した高いエステル含量を有するポリウレタンフォームの加水分解特性を補うために、本発明における化粧料組成物は低い水含量(water content)を有する。好ましくは、前記化粧料組成物の水含量は35wt%以下、より好ましくは30wt%以下の水含量を有する。例示的に、前記化粧料組成物の水含量は、化粧料組成物中、約20~35wt%、20~30wt%、25~30wt%であってもよい。
【0052】
また、本発明において、化粧料組成物は次のような流動特性を有する。
【0053】
本発明の化粧料の流動特性は、組成物の弾性と粘性を示す貯蔵弾性率(storage modulus;G’)と損失弾性率(loss modulus;G’’)により表すことができる。
【0054】
図4は、本発明の実施例による化粧料組成物の流動を説明するための模式図である。図4を参照すれば、せん断応力が印加されない場合、組成物の貯蔵弾性率(storage modulus)は損失弾性率(loss modulus;G’’)より大きい値を有する。貯蔵弾性率は物質の弾性特性を示す指標であり、せん断応力が印加されなかった時、組成物は固体に近い挙動、すなわち、固体様挙動(solid like behavior)を示す。しかし、せん断応力が印加されて応力が増加すれば、貯蔵弾性率は順次減少し、その結果、貯蔵弾性率と損失弾性率値の逆転が発生する。この時、G’=G’’の地点のせん断応力を限界せん断応力(threshold shear stress;σt)とし、せん断応力が閾値を超過すれば、組成物は、粘性特性が優越した状態、すなわち、G’’>G’の状態、すなわち、液体様挙動を示す。この時、液体様挙動の組成物は、液体に近い流動特性を有し、含浸材のセル間を容易に流動することができる。
【0055】
本発明の化粧料組成物は低い限界せん断応力を有する。例示的に、前記限界せん断応力(threshold shear stress;σt)は約100Pa以下、約90Pa以下、約80Pa以下、約70Pa以下、約60Pa以下、約50Pa以下、約40Pa以下、約30Pa以下、約20Pa以下、約10Pa以下、約9Pa以下、約8Pa以下、約7Pa以下、約6Pa以下、約5Pa以下、4Pa以下、3Pa以下、2Pa以下または1Pa以下であってもよい。好ましくは、前記組成物の限界せん断応力は1Pa~20Pa、2~20Pa、3~20Paの範囲であることが好ましい。前述した貯蔵弾性率と損失弾性率は、商用のレオメーターにより測定できる。
【0056】
前述したように、加圧されたポリウレタンフォームの内部で、化粧料組成物はせん断応力を経るようになる。せん断応力により、本発明の組成物は液体のように挙動し、フォームの内部で難なく流動する。このような流動特性は、化粧料の均一な排出に有利な長所を提供することができる。例えば、数回の繰り返し使用時、本発明の組成物は、含浸材の内部を迅速に流動して再配置されることができる。使用時、含浸材内の組成物は、持続的に再配置され、使用期間の間より均一に排出可能である。また、加圧により組成物の流動特性が向上できるため、充填時、フォームを繰り返し加圧することによって化粧料組成物を容易に含浸できるという長所を有する。
【0057】
その反面、本発明の組成物は、せん断応力が印加されていない状態では固体様挙動をし、それにより、フォーム内でより安定した状態の組成物として存在できるようになる。応力の非印加状態での安定性を確保するために、化粧料組成物はG’>>G’’の関係、より具体的には、せん断応力1Paにおいて3≦G’/G’’≦10の関係にあることが好ましい。
【0058】
本発明の化粧料組成物は、油相成分、水相成分、増粘剤および粉体を含む。これらの成分およびその含量は、化粧料組成物の流動特性を決定する。」
本7)「【実施例】
【0066】
以下では、本発明の好ましい実施例を説明する。
【0067】
A.ポリウレタンフォーム
ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールの比率を異にして製造された複合ポリウレタンフォームを準備した。比較のために、ポリエステルポリオール100%のポリウレタンフォームおよびポリエーテルポリオール100%のポリウレタンフォームを準備した。
【0068】
各ポリウレタンフォームの組成を表1に示す。
【0069】
【表1】
[図:0001428028000022.jpg]
【0070】
製造されたポリウレタンフォームを発泡フォームの加水分解される特性を評価するために、10%塩酸および硝酸にポリエステルポリオールフォームおよびハイブリッド発泡フォームを常温で7日間含浸させた後、前記フォームの崩れ状態を確認した。加速条件下で実験を進行するために、酸触媒である塩酸および硝酸が各々10wt%濃度の水溶液で評価した。実験結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
[図:0001428028000023.jpg]
・・・
【0074】
B.化粧料組成物
W/O型の化粧料組成物を製造した。紫外線遮断剤、被膜形成剤、乳化剤およびオイル成分を含む油相成分を混合し、80℃に加温攪拌して相を均一にした。そこに粉体を混合し再び攪拌して粉体成分を均一に分散させた油相成分を準備した。別途のビーカーに水相成分を混合し、80℃に加温攪拌し完全に溶解させて水相成分を準備した。準備した水相成分を上記のように準備した油相成分に徐々に投入し、ホモミキサーを利用して乳化させた。その後、30℃にまで冷却して表5~7の化粧料組成物を得た。
【0075】
化粧料組成物は、30重量%以下の水含量において低い限界せん断応力を有する組成に設計した。製造された化粧料組成物の成分および配合比(重量%)を表4に示す。
【0076】
【表4】
[図:0001428028000024.jpg]
【0077】
製造例1~3の具体的な配合比を表5~表7に示す。
【0078】
【表5】
[図:0001428028000025.jpg]
【0079】
【表6】
[図:0001428028000026.jpg]
【0080】
【表7】
[図:0001428028000027.jpg]
【0081】
製造例1~3の化粧料組成物の粘度および流動特性を測定した。粘度は、製造した各組成物100gをプラスチック容器に入れた後、粘度計(DV-E Viscometer、Brookfield)で測定した。この時、粘度の測定時にSpindle No.4を用い、Spindleを前記各組成物に浸した後に1分間12rpmで回転して表示された値を粘度として用いた。粘度の測定結果値を表6に示す。
【0082】
【表8】
[図:0001428028000028.jpg]
【0083】
製造例1~3の組成物の流動特性をコーンプレート型レオメーター(MCR92、AntonPaar)で測定した。この時、測定周波数は10Hzにした。図5~図7は、測定された貯蔵モジュラスおよび損失モジュラス値を示すグラフであり、表9は、図5~図7の限界せん断応力値を整理した表である。
【0084】
【表9】
[図:0001428028000029.jpg]
【0085】
C.化粧料組成物の再配置特性の評価
厚さ約10mm、直径約5cmのPU3フォームに製造例1~製造例3の組成物を各々含浸して含浸フォームを製造した。各フォームに含浸された組成物の重量は16gにした。含浸されたPU3フォームを下部PU3フォームにし、その上に非含浸状態の上部PU3フォームを載せ、PU3フォームの総厚さが15cmになるように加圧して10秒間維持した後、下部PU3フォームの重さ減少の相対的な大きさを比較した。重さの測定結果、減量の大きさは、製造例1、製造例2および製造例3の順であった。これは、含浸された組成物の限界せん断応力値が低いほど、上部PU3フォームへの組成物の流動が活発に発生し、下部PU3フォームの組成物の減量は増加することに起因すると見られる。
【0086】
以上の実験から、下部フォームに相当量の減量が発生して、加圧時に組成物の再配置が容易に発生することを確認することができた。また、限界せん断応力値が低い組成物を担持したフォームの場合、相対的に大きい減量が発生することが分かる。
【0087】
D.含浸前後の硬度の評価
厚さ約10mm、直径約5cmのPU1、PU3、PU6フォームの含浸前後の硬度を測定した。含浸組成物は製造例2の組成にし、含浸量は16gにした。比較のために、PU4フォームの含浸前後の硬度値を共に測定した。硬度値は、ASKER硬度計F型(Type)を基準に求めた。図8の(a)および(b)は、各々、含浸前後のPU3フォームの硬度測定過程を撮影した写真である。
【0088】
実験に用いられたPU2フォームの硬度の測定結果および硬度変化率を表10に示す。
【0089】
【表10】
[図:0001428028000030.jpg]
【0090】
E.官能評価
PU1、PU3およびPU6ポリウレタンフォームに前記製造例1の化粧料組成物を含浸した後、化粧品分野の評価に才能のある20~30代の女性20人を対象に化粧料の含浸前後の硬度差に応じた効果上の差を確認するために官能評価を行った。本実験では、ポリウレタンフォームとして硬度評価対象のPU1、PU3およびPU6フォームを用い、前記3種のポリウレタンフォームは肉眼上では全て同一であり、官能評価対象者にポリウレタンフォームに対する背景説明なしに官能評価を行った。
【0091】
官能評価の項目としては、吐出感、接触感、使い心地の三つを評価し、5点尺度法に従い、5点(非常に優れる)、4点(優れる)、3点(普通)、2点(悪い)、1点(非常に悪い)に評価した後に平均値を導出した。各々の官能評価項目に関する説明は以下のとおりである。
【0092】
1)吐出感:塗布具(一般のNBRパフ)に含浸材から化粧料組成物を取る時に吐き出される量が適切であるか否かを評価し、1回の吐出時の吐出量が少なすぎる場合には何度も取らなければならないので含浸材の耐久性に影響を及ぼす。
【0093】
2)接触感:塗布具を含浸材に接触した時に感じられる官能的特性を評価する。
【0094】
3)使い心地:塗布具で含浸された化粧料組成物を取る時に感じられる全体的な使い心地を評価する。
【0095】
【表11】
[図:0001428028000031.jpg]
【0096】
表11に示すように、本発明に係る実施例のポリウレタンフォームの官能的特性が比較例1および2に比べて優れるものとして評価された。注目すべき項目は吐出感であって、含浸前後の減少率が低い実施例の吐出感が減少率が高い比較例に比べて顕著に高い評価を受けたことを確認することができ、全体的な使い心地の側面でも実施例の優れた効果を確認することができた。」
(イ)本件発明の課題
本件明細書及び図面の記載事項全体、特に本件明細書の【0006】~【0008】(以下段落番号のみを記載する。)の記載からみて、本件発明の解決しようとする課題は、「特定比率のエーテル/エステル比率を有するエステル/エーテル複合ポリウレタンフォームを備える化粧品、具体的には、加圧使用に適した耐化学性及び流動特性を有するエーテル/エステルポリウレタンフォーム化粧品を提供すること」であると認める。
(ウ)本件発明がサポート要件を満たすか否かについての判断
本件明細書には、
【0009】に、本件発明が、化粧料組成物を含浸したポリウレタンフォームを含む化粧品であって、前記ポリウレタンフォームのポリウレタンは、エーテル基とエステル基をモル比で4:6~6:4の比率で含むこと、
【0010】に、化粧料組成物の水含量は20~30wt%であってもよいこと、
【0009】に、化粧料組成物の貯蔵弾性率(G’)=損失弾性率(G’’)である限界せん断応力値が100Pa以下であり、【0084】に、具体的な製造例1~3において順に約3.1Pa、約10.1Pa及び約15Paであること、
【0012】に、化粧料組成物は、1Paのせん断応力下で3≦G’/G’’≦10の関係であることが好ましいこと、
【0013】に、化粧料組成物は油相成分及び水相成分を含み、水相成分に対する油相成分の重量比は0.9~1.1の範囲であることが好ましいこと、
【0014】に、化粧料組成物は主乳化剤及び補助乳化剤を含み、前記主乳化剤及び補助乳化剤は重量比で3:1~4:1の比率であることが好ましいこと、【0015】に、主乳化剤は、ラウリルPEG-10トリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及びセチルPEG/PPG-10/1ジメチコンからなる群より選択された少なくとも1種の物質を含み、前記補助乳化剤は、PEG-10ジメチコン及びソルビタンイソステアレートのうち少なくとも1種を含むことが好ましいこと、
【0016】に、ポリウレタンフォームの含浸後の硬度は20~35であることが好ましいこと、及びポリウレタンフォームの含浸前を基準にした含浸前後の硬度変化率は45%以下であることがより好ましいこと
が記載されている。
また、実施例には、本件発明において特定されるエーテル基:エステル基の比率を有するPU2~PU4のポリウレタンフォーム(【0067】~【0069】)、並びに本件発明において特定される水含量及び限界せん断応力値を有する製造例1~3の化粧料組成物(【0074】~【0084】)が記載され、PU2~PU4が、10wt%濃度の塩酸及び硝酸水溶液において崩れないこと(【0070】及び【0071】)、PU3に製造例1~3の化粧料組成物を含浸させた含浸フォームについて、加圧時に組成物の再配置が容易に発生することを確認することができたこと(【0085】及び【0086】)、PU3に製造例2の化粧料組成物を含浸させた際の含浸前後の硬度変化率が42%であること(【0087】~【0088】)、並びにPU3に製造例1の化粧料組成物を含浸させた化粧品について、吐出感、接触感及び使い心地についての官能評価がいずれも優れるものとして評価されたこと(【0090】~【0096】)が記載されている。
してみると、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、当業者が、本件発明は「特定比率のエーテル/エステル比率を有するエステル/エーテル複合ポリウレタンフォームを備える化粧品、具体的には、加圧使用に適した耐化学性及び流動特性を有するエーテル/エステルポリウレタンフォーム化粧品を提供すること」との本件発明の課題を解決できると認識できるといえる。
したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
ウ 申立人の主張について
(ア)(i)(上記第3(3)(i):化粧料組成物の限界せん断応力値)について
本件明細書には、
【0054】に、「せん断応力が印加されない場合、組成物の貯蔵弾性率(storage modulus)は損失弾性率(loss modulus;G’’)より大きい値を有する。貯蔵弾性率は物質の弾性特性を示す指標であり、せん断応力が印加されなかった時、組成物は固体に近い挙動、すなわち、固体様挙動(solid like behavior)を示す。しかし、せん断応力が印加されて応力が増加すれば、貯蔵弾性率は順次減少し、その結果、貯蔵弾性率と損失弾性率値の逆転が発生する。この時、G’=G’’の地点のせん断応力を限界せん断応力(threshold shear stress;σt)とし、せん断応力が閾値を超過すれば、組成物は、粘性特性が優越した状態、すなわち、G’’>G’の状態、すなわち、液体様挙動を示す。この時、液体様挙動の組成物は、液体に近い流動特性を有し、含浸材のセル間を容易に流動することができる。」、
【0055】に、「本発明の化粧料組成物は低い限界せん断応力を有する。」、
【0056】に、「せん断応力により、本発明の組成物は液体のように挙動し、フォームの内部で難なく流動する。このような流動特性は、化粧料の均一な排出に有利な長所を提供することができる。例えば、数回の繰り返し使用時、本発明の組成物は、含浸材の内部を迅速に流動して再配置されることができる。使用時、含浸材内の組成物は、持続的に再配置され、使用期間の間より均一に排出可能である。また、加圧により組成物の流動特性が向上できるため、充填時、フォームを繰り返し加圧することによって化粧料組成物を容易に含浸できるという長所を有する。」及び
【0057】に、「本発明の組成物は、せん断応力が印加されていない状態では固体様挙動をし、それにより、フォーム内でより安定した状態の組成物として存在できるようになる。」
と記載されている。
これらの記載から、当業者は、限界せん断応力値は、せん断応力が印加されて応力が増加した際に、貯蔵弾性率と損失弾性率値の逆転が生じる限界のせん断応力であって、当該値の前後で、組成物が固体様挙動から液体様挙動に変化すること、及び液体のように挙動することで化粧料の均一な排出に有利な長所を提供することができ、含浸材の内部を迅速に流動して再配置されることができる等の一方で、せん断応力が印加されていない状態では固体様挙動をし、それにより、フォーム内でより安定した状態の組成物として存在できるようになることが理解できるといえる。
また、本件明細書には、実施例として、限界せん断応力値が本件発明の範囲内であり、範囲の両端に近い値を含む約3.1Pa、約10.1Pa及び約15Paである製造例1~3の化粧料組成物をPU3に含浸させたものについて、含浸された組成物の限界せん断応力値が低いほど、上部PU3フォームへの組成物の流動が活発に発生し、下部PU3フォームの組成物の減量は増加すると考えられること、再配置が容易に発生することが確認できたこと(【0084】~【0086】)、並びに製造例1の化粧料組成物をPU3に含浸させたものについて、吐出感、接触感及び使い心地についての官能評価がいずれも優れるものとして評価されたこと(【0090】~【0096】)が記載されているから、当業者は、再配置特性及び使用感等に優れることを具体的に確認することもできる。
してみると、当業者は、本件明細書の記載から、化粧料組成物の限界せん断応力値を3~15Paとすることにより得られる効果を理解することができ、その技術的意義を理解することができるといえるから、(i)の主張は採用できない。
(イ)(ii)(上記第3(3)(ii):ポリウレタンのエーテル基とエステル基のモル比)について
本件明細書には、本件発明のエーテル-エステルポリウレタンフォームは、中間比率のエーテル-エステルポリウレタンフォームであり、中間比率とはポリウレタン内のエステル基の比率が半分に近いものをいい、例示的にエーテル:エステルの比率は4:6~6:4であることが好ましいこと(【0024】)、ポリエーテルポリオールを用いたフォーム及びポリエステルポリオールを用いたフォームはそれぞれ長所及び短所を有するが、本件発明のエーテル-エステルポリウレタンフォームは、単一組成のポリエーテルフォーム又はポリエステルフォームが有する短所を補うことができること(【0031】)、本件発明に係るポリウレタンフォームは、現在市販中の他のポリウレタンフォームに比べて、硬度が低く、且つ、耐久性は低下しない特性を有しており、前述したように耐加水分解性及び耐油性も優れた特性を有していること(【0042】)等が記載されている。
これらの記載から、当業者は、本件発明は、エーテル基とエステル基のモル比が4:6~6:4である中間比率のエーテル-エステルポリウレタンフォームを用いるという技術的思想を有するものであり、かかるポリウレタンフォームは、単一組成のポリエーテルフォーム又はポリエステルフォームが有する短所を補うものであり、さらに、硬度が低く、且つ、耐久性は低下しない特性、並びに耐加水分解性及び耐油性も優れた特性を有していることを理解することができるといえる。
また、実施例において、エーテル基とエステル基のモル比が順に6:4、5:5、4:6であるPU2~PU4について、10wt%濃度の塩酸及び硝酸水溶液において崩れないこと(【0070】及び【0071】)、PU3に製造例1~3の化粧料組成物を含浸させた含浸フォームについて、加圧時に組成物の再配置が容易に発生することを確認することができたこと(【0085】及び【0086】)、PU3に製造例2の化粧料組成物を含浸させる際の含浸前後の硬度変化率が42%であること(【0087】~【0088】)、並びにPU3に製造例1の化粧料組成物を含浸させた化粧品について、吐出感、接触感及び使い心地についての官能評価がいずれも優れるものとして評価されたこと(【0090】~【0096】)が記載されているから、当業者は、上述の本件明細書に記載された本件発明のポリウレタンフォームが有する特性に関して、具体的に確認することができるといえる。
そして、本件発明が中間比率のエーテル-エステルポリウレタンフォームを用いるという技術的思想を有するものであることから、10wt%濃度の塩酸及び硝酸水溶液において崩れないことについてエーテル基とエステル基のモル比が6:4、5:5、4:6のものについて具体的に確認され、再配置、硬度変化率及び官能評価についてはエーテル基とエステル基のモル比がちょうど中間の5:5であるものについて具体的に確認されていることから、当業者は、エーテル基とエステル基のモル比が5:5に近似する、4:6~6:4の全範囲にわたって、上記各特性を有するものであると認識するといえる。
してみると、当業者は、本件明細書の記載から、ポリウレタンのエーテル基とエステル基のモル比を4:6~6:4とすることにより、その範囲の全体にわたって所望の効果を得られることを理解することができ、その技術的意義を理解することができるといえるから、(ii)の主張は採用できない。
(ウ)(iii)(上記第3(3)(iii):化粧料組成物の水含量)について
本件明細書には、化粧料組成物の水含量は20~30wt%であってもよいこと(【0010】、【0051】)、及び高いエステル含量を有するポリウレタンフォームの加水分解特性を補うために、本発明における化粧料組成物は低い水含量(water content)を有すること(【0051】)が記載されているから、当業者は、本件発明においては、高いエステル含量を有するポリウレタンフォームの加水分解特性を補うために化粧料組成物の水含量が20~30wt%という、低い水含量であることが理解できるといえる。
また、実施例において、化粧料組成物における水含量が順に26.44、29.84及び28.05重量%である製造例1~3の化粧料組成物(【0074】~【0084】)が記載され、PU3に製造例1~3の化粧料組成物を含浸させた含浸フォームについて、加圧時に組成物の再配置が容易に発生することを確認することができたこと(【0085】及び【0086】)、PU3に製造例2の化粧料組成物を含浸させる際の含浸前後の硬度変化率が42%であること(【0087】~【0088】)、並びにPU3に製造例1の化粧料組成物を含浸させた化粧品について、吐出感、接触感及び使い心地についての官能評価がいずれも優れるものとして評価されたこと(【0090】~【0096】)が記載されている。
これら実施例の記載によって、ポリウレタンフォームの加水分解特性が補われることは直接的に確認することはできないが、加水分解によってポリウレタンフォームが変質すれば、再配置が適切に行われず、硬度変化率が変化し、官能評価が劣る結果となることは容易に推測できるから、再配置が容易に発生すること、硬度変化率が低いことが確認され、官能評価が優れるものとして確認されたことによって、加水分解特性が補われたことは間接的に確認できたと理解できるといえること、及び水の存在によって生じる加水分解が、水含量が低いことによってより生じにくくなると考えられることから、当業者は、化粧料組成物の水含量が20~30wt%であることによって、ポリウレタンフォームの加水分解特性を補う効果があることを理解することができるといえ、その技術的意義を理解できるといえる。
したがって、(iii)の主張は採用できない。
(エ)(iv)(上記第3(3)(iv):3つの変数の数値範囲の内外における効果の違い)について
上記(ア)~(ウ)で述べたとおり、当業者は、化粧料組成物の限界せん断応力値、ポリウレタンのエーテル基とエステル基のモル比及び化粧料組成物の水含量を、本件発明で特定される数値範囲のものとすることによる効果及び技術的意義を理解することができるといえるから、それら変数の数値を本件発明の範囲外のものとした場合には、上記効果が得られない場合があることを理解できるといえる。
したがって、当業者は、上記3つの変数が本件発明の数値範囲の内外によって得られる効果の違いを理解することができ、当該数値範囲に特定する技術的意義を理解できるといえるから、(iv)の主張は採用できない。
(オ)(v)(上記第3(3)(v):官能評価)について
実施例の官能評価について、本件明細書には、
「【0090】
E.官能評価
PU1、PU3およびPU6ポリウレタンフォームに前記製造例1の化粧料組成物を含浸した後、化粧品分野の評価に才能のある20~30代の女性20人を対象に化粧料の含浸前後の硬度差に応じた効果上の差を確認するために官能評価を行った。本実験では、ポリウレタンフォームとして硬度評価対象のPU1、PU3およびPU6フォームを用い、前記3種のポリウレタンフォームは肉眼上では全て同一であり、官能評価対象者にポリウレタンフォームに対する背景説明なしに官能評価を行った。
【0091】
官能評価の項目としては、吐出感、接触感、使い心地の三つを評価し、5点尺度法に従い、5点(非常に優れる)、4点(優れる)、3点(普通)、2点(悪い)、1点(非常に悪い)に評価した後に平均値を導出した。各々の官能評価項目に関する説明は以下のとおりである。
【0092】
1)吐出感:塗布具(一般のNBRパフ)に含浸材から化粧料組成物を取る時に吐き出される量が適切であるか否かを評価し、1回の吐出時の吐出量が少なすぎる場合には何度も取らなければならないので含浸材の耐久性に影響を及ぼす。
【0093】
2)接触感:塗布具を含浸材に接触した時に感じられる官能的特性を評価する。
【0094】
3)使い心地:塗布具で含浸された化粧料組成物を取る時に感じられる全体的な使い心地を評価する。」として、評価対象物、評価者、評価方法、評価項目、評価基準について記載され、実施例1並びに比較例1及び2の各例について、吐出感、接触感及び使い心地の各評価項目及びそれらの平均値が数値で記載されている。
そして、評価基準は【0092】~【0094】に記載されており、いずれの基準も数値に基づくものとはいえないが、官能評価という特性上、必ずしも数値によって示すのがなじまないといえ、数値を基準とした評価でなくとも、「化粧品分野の評価に才能のある20~30代の女性20人」によって、【0092】~【0094】に記載された基準に基づいて各評価項目について「5点尺度法」による数値が示されていれば、その効果を判断することが十分に可能であるといえる。
してみると、官能評価が不適切であることを前提とする(v)の主張は採用できない。
(カ)(vi)(上記第3(3)(vi):実施例以外の本件発明の作用効果)について
上記(ア)~(ウ)で述べたとおり、当業者は、化粧料組成物の限界せん断応力値、ポリウレタンのエーテル基とエステル基のモル比及び化粧料組成物の水含量について、本件発明で特定される数値範囲のものとすることによる効果及び技術的意義を理解することができるといえるから、当業者は、実施例に記載された化粧料組成物のみではなく、本件発明の全体にわたって本件発明が奏する作用効果を認識することができるといえる。
したがって、(vi)の主張は採用できない。
エ 申立理由3についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由3は理由がない。
(4)申立理由4(実施可能要件違反)について
ア 判断の前提
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。
イ 判断
(ア)本件明細書の記載
本件明細書には、上記(3)イ(ア)で示したとおりの記載がある。
また、それに加えて、
「【0046】
本発明において、ポリウレタンフォームは、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールの混合物とイソシアネート(-NCO)基を有した化合物と反応して製造される。」と記載され、
【0047】~【0049】に、ポリエーテルポリオールの単量体、ポリエステルポリオールの単量体、及びイソシアネート(-NCO)基を有した化合物の具体例が記載され、
【0059】~【0065】に化粧料組成物の配合成分、配合量等について記載されている。
(イ)本件発明が実施可能要件を満たすか否かについての判断
上記(ア)で示したとおりであって、本件明細書には、実施例として、物の発明である本件発明に該当する物を作り、それを使用する具体的な記載を含むといえる。
本件発明は、化粧料組成物の限界せん断応力値、ポリウレタンのエーテル基とエステル基のモル比及び化粧料組成物の水含量が特定される発明であることに鑑みて、上記実施例以外の本件発明について、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されているかについて以下に検討する。
「限界せん断応力値」について、実施例に具体的に記載されている製造例1~3の化粧料組成物は、順に約3.1Pa、約10.1Pa及び約15Paであって、本件発明の3Pa~15Paの下限及び上限にほぼ一致するか中間程度の値の限界せん断応力値を有する化粧料組成物が具体的に記載されているといえる。これらの製造例をみれば、組成物の粘度を増減させる成分の選択により、限界せん断応力値を調整することができるといえる。
すなわち、上記(3)ウ(ア)で述べたとおり、限界せん断応力は流動性に関する物性であるといえ、一方、粘度が流動性に関係する物性であることは技術常識であるところ、本件明細書の表8及び表9を参酌すると、化粧料組成物の粘度と限界せん断応力にはその増減に関して正の相関があることが理解できる。そして、一般に粘度は周知の物性であるから、化粧料組成物に配合する成分についてその粘度に着目し限界せん断応力値を増減することができるといえる。
例えば、製造例1~製造例3の化粧料組成物について、配合する水の量を増減することで、それに応じて限界せん断応力値を増減することができるといえる。また、本件明細書の表5~表7及び表9からみて、シクロペンタシロキサンの配合量を17.25、8.65及び0重量%と変えることによって、限界せん断応力値が約3.1、約10.1及び約15Paと変化することが認識できるところ、約3.1Pa及び約15Paは、ほぼ3Pa~15Paの上限及び下限の値であり、約10.1はその中間程度の値であるから、製造例1~3の化粧料組成物に配合するシクロペンタシロキサンの量を変えることによって限界せん断応力値が3Pa~15Paである化粧料組成物を製造することができるといえる。
「ポリウレタンのエーテル基とエステル基のモル比」は、ポリウレタンの製造に用いるポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールの混合比を変えることによって調整できることは明らかである。
「化粧料組成物の水含量」は、化粧料組成物の製造に用いる水の配合量を変えることによって調整できることは明らかである。このとき、水の配合量を変えることによって「限界せん断応力値」が変化するといえるが、当業者は、必要であれば、例えば上記シクロペンタシロキサンの配合量を同時に変更することで、本件発明の「限界せん断応力値」の範囲内で水の配合量を変えることができるといえる。
したがって、化粧料組成物の限界せん断応力値、ポリウレタンのエーテル基とエステル基のモル比及び化粧料組成物の水含量で特定される本件発明について、発明の詳細な説明は、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されているといえる。
ウ 申立人の主張について
申立人は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明に係る化粧品を作れるように記載されているとはいえず、使用できるように記載されているとはいえない旨主張するほか、本件明細書には、化粧料組成物の限界せん断応力値、ポリウレタンのエーテル基とエステル基のモル比及び化粧料組成物の水含量の3つの変数について技術的意義を理解することができるように記載されていないこと、上記3つの変数の全体にわたって十分な作用効果が示されることを認識できないことを主張(以下「追加の主張」という。)するが、追加の主張については、上記(3)イ(ウ)及び(3)ウで述べたとおりであるから、採用できない。
エ 申立理由4についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由4は理由がない。
(5)申立理由5(明確性要件違反)について
本件特許請求の範囲に、限界せん断応力値の測定方法及び測定条件は記載されていないから、特許請求の範囲の記載からは限界せん断応力値の測定方法及び測定条件は不明である。
そこで、本件明細書の記載を参酌する。
本件明細書には以下の記載がある。
「【0053】
本発明の化粧料の流動特性は、組成物の弾性と粘性を示す貯蔵弾性率(storage modulus;G’)と損失弾性率(loss modulus;G’’)により表すことができる。」
「【0055】
・・・前述した貯蔵弾性率と損失弾性率は、商用のレオメーターにより測定できる。」
「【0081】
製造例1~3の化粧料組成物の粘度および流動特性を測定した。粘度は、製造した各組成物100gをプラスチック容器に入れた後、粘度計(DV-E Viscometer、Brookfield)で測定した。この時、粘度の測定時にSpindle No.4を用い、Spindleを前記各組成物に浸した後に1分間12rpmで回転して表示された値を粘度として用いた。粘度の測定結果値を表6に示す。
【0082】
【表8】
[図:0001428028000032.jpg]
【0083】
製造例1~3の組成物の流動特性をコーンプレート型レオメーター(MCR92、AntonPaar)で測定した。この時、測定周波数は10Hzにした。図5~図7は、測定された貯蔵モジュラスおよび損失モジュラス値を示すグラフであり、表9は、図5~図7の限界せん断応力値を整理した表である。
【0084】
【表9】
[図:0001428028000033.jpg]
」
そして、本件明細書には【0083】以外に限界せん断応力値の測定方法及び測定条件についての具体的な記載はないことから、当業者は、本件発明において特定される限界せん断応力値は、【0083】に記載された測定方法及び測定条件によって貯蔵モジュラス及び損失モジュラス値を測定することで決定できるものであると理解するといえる。
したがって、本件発明は明確であり、申立理由5は理由がない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、申立人の申立理由及び証拠によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできず、ほかに請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700664