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特許異議申立

2025-700624

樹脂フィルム、積層体、および、包装袋

審判番号
2025-700624
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-118820
登録番号
7600554
請求日
2025年06月12日
審決日
2025年12月10日
公報発行日
2026年01月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】恩田 誠
  • 【権利者代理人】恩田 博宣
  • 【異議申立人】早川 いづみ
審判長/審判官
  • 審判長 松田 成正
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 柴田 昌弘
分類
P1651.121-Y (C08J) / P1651.537-Y (C08J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7600554号発明「樹脂フィルム、積層体、および、包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7600554号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7600554号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、令和2年7月9日を出願日とする出願であって、令和6年12月9日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月17日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和7年6月12日に特許異議申立人 早川 いづみ(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年7月15日付けで手続補正指令(方式)がされ、同年8月13日に特許異議申立人から手続補正書(方式)が提出され、同年同月28日に特許異議申立人から手続補正書が提出されたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、これらをまとめて「本件特許発明」という。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ガスバリア性を有したガスバリア層を積層されることによって包装袋用の積層体を構成する樹脂フィルムであって、 ポリエチレンテレフタレート製の三層の樹脂層を備え、 前記三層の樹脂層のうちの少なくとも一層が、リサイクルポリエチレンテレフタレートを含み、 前記樹脂フィルムが含有する前記リサイクルポリエチレンテレフタレートの質量割合は、前記樹脂フィルムの総質量の70%以上であり、 前記樹脂フィルムの貯蔵弾性率と温度との関係を示す貯蔵弾性曲線において、ガラス状態からゴム状態への転移温度は、80℃以上88℃以下であり、かつ、前記転移温度における貯蔵弾性率は、3.8GPa以上4.1GPa以下である 樹脂フィルム。 【請求項2】 前記リサイクルポリエチレンテレフタレートは、繰り返し単位中のジカルボン酸単位にテレフタル酸とイソフタル酸とを含む 請求項1に記載の樹脂フィルム。 【請求項3】 請求項1または2に記載の樹脂フィルムと、 ガスバリア性を有するガスバリア層と、 を備える積層体。 【請求項4】 前記ガスバリア層は、 酸化アルミニウムおよび酸化珪素の少なくとも一方を含む第1バリア層と、 高分子材料を含む第2バリア層と、を有する 請求項3に記載の積層体。 【請求項5】 前記第2バリア層は、前記第1バリア層に隣接して積層されている 請求項4に記載の積層体。 【請求項6】 前記第2バリア層は、Si(OR1)4、もしくは、R2Si(OR3)3(OR1、OR3は加水分解性基であり、R2は有機官能基である。)で表されるケイ素化合物あるいはその加水分解物を1種以上と、水酸基を有する水溶性高分子と、を含む 請求項4または5に記載の積層体。 【請求項7】 対象物を包装するための包装袋であって、 請求項3~6のいずれか一項に記載の積層体から構成されている 包装袋。」 第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要等 令和7年6月12日に特許異議申立人が提出し、同年8月13日に提出した手続補正書(方式)及び同年同月28日に提出した手続補正書により補正された特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし5及び7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 なお、特許異議申立人が主張する申立理由2の概要は、以下のとおりである。 本件特許の実施例1では、酸化アルミニウムからなる第1のバリア層と、テトラエトキシシランとポリビニルアルコールを含む溶液からなる第2のバリア層を積層しており、これ以外の例は記載されていないので、課題を解決するための手段として第1のバリア層と所定の第2のバリア層の両方を組み合わせることが必須であると解されるが、本件特許の請求項1ないし7には、所定の組成を有する第2バリア層が要件に含まれていないので、明細書に記載された範囲を超えるものである。 甲4には、ガスバリア性積層フィルムの表裏に、それぞれ、表面保護フィルムとシーラント層とを積層して構成される真空断熱材用外装材において、テトラエトキシシラン等の金属アルコキシドと、水溶性高分子を反応させて形成された複合構造物で構成される被覆層を蒸着層に積層することにより、上記被覆層がガスバリア性を補うと共に、真空断熱材を変形させて外装材を部分的に引き延ばした場合でも、そのガスバリア性の低下を防ぐ役割を有することが記載されているので(請求項1及び【0020】)、本件特許発明においても所定の組成を有する第2バリア層が必須の構成である。 3 証拠方法 甲第1号証:再公表WO2015/146496号公報 甲第2号証:特開2014-65282号公報 甲第3号証:特開2020-70429号公報 甲第4号証:特開2020-32596号公報 なお、証拠の表記については、特許異議申立書の記載に概ね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第4 当審の判断 当審は、申立理由1及び2には、以下のとおり理由がないと判断する。 1 申立理由1(甲1を主たる証拠とする進歩性)について (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1には、積層フィルムに関して、おおむね次の記載がある。下線は特許異議申立人が付したものと、当審が付したものがある。 ・「【請求項1】 基材フィルムの片面に、無機薄膜層が積層された積層フィルムであって、前記基材フィルムが、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を50重量%以上95重量%以下含有し、二軸延伸されてなるポリエステルフィルムであり、以下の要件を満足することを特徴とする積層フィルム。 (1)基材フィルムを構成する全ポリエステル樹脂中の全ジカルボン酸成分に対するイソフタル酸成分の含有率が0.5モル%以上5.0モル%以下 (2)基材フィルムを構成している樹脂の極限粘度が0.58dl/g以上0.70dl/g以下 (3)縦方向及び横方向の150℃熱収縮率が0.1%以上1.5%以下 (4)基材フィルムの無機薄膜層積層面の反対側にポリオレフィンフィルムをラミネートした場合に、ラミネート強度が4.0N/15mm以上20.0N/15mm以下 (5)縦方向および横方向のフィルム1m長を各々5mm毎に測定した各厚みTn(n=1~200)(単位:μm) 200点を測定し、この時の最大厚みをTmax,最小厚みをTmin,平均厚みをTave とするときの下記の式で求める厚みムラが、縦方向および横方向の各々で16%以下 厚みムラ={(Tmax-Tmin)/Tave}×100 (%) 【請求項2】 無機薄膜層が、2種の金属、2種の無機酸化物、あるいは1種の金属と1種の無機酸化物からなることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。 【請求項3】 2種の無機酸化物が、酸化ケイ素と酸化アルミニウムからなることを特徴とする請求項2に記載の積層フィルム。」 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用いた積層フィルムに関する。更に詳しくは、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用い、低熱収縮性、高ラミネート強度を有し、厚みムラが小さいことにより無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムとした際、良好なガスバリア性を発現する積層フィルムに関する。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたもので、すなわち、本発明の目的は、以下のような積層フィルムを提供することである。 1.イソフタル酸を0.5モル%以上5.0モル%以下含有し、溶融粘度が高く、固相重合を施し、高結晶化核剤などを添加することの多いペットボトルをリサイクルすることで得たリサイクル樹脂を積層フィルムにおける基材フィルムの原料樹脂として用いても、押出の温度を最適化することで樹脂の押出を安定させ、またフィルム中の樹脂、添加剤および粒子などが均一化することにより、基材フィルムの厚みムラを小さくし、ラミネートのバラツキをなくしラミネート強度を向上させること。 2.高温で高倍率の縦延伸とすることで、押出後の樹脂の溶融粘度が高くても、高倍率の横延伸ができ、基材フィルムの厚みムラを小さくすること。 3.高温での横延伸とすることで、押出後の樹脂の溶融粘度が高くても、高倍率の横延伸ができ、基材フィルムの厚みムラを小さくすること。 4.高温の熱処理を行うことで、基材フィルムの縦横の熱収縮率を低くすること。 5.高温、高倍率の延伸と高温の熱処理で基材フィルムの厚み方向の屈折率を適切にし、高いラミネート強度を実現すること。 6.熱処理後の冷却を徐冷とすることで、酸成分として、イソフタル酸を0.5モル%以上5.0モル%以下含有する基材フィルムの厚みムラを小さくすること。 また、ラミネート強度がフィルム内部でばらつくことが無くなること。 7.無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムとした場合でも、厚みムラが小さく、低熱収縮率により無機薄膜層の厚みが均一となり、良好なガスバリア性を発現するペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用いた優れた積層フィルムを提供することにある。」 ・「【0021】 基材フィルム中に含まれるポリエステル樹脂を構成する全ジカルボン酸成分に占めるイソフタル酸成分の量の下限は好ましくは0.5モル%であり、より好ましくは0.7モル%であり、さらに好ましくは0.9モル%であり、特に好ましくは1.0モル%である。ペットボトルからなるリサイクルポリエステル樹脂は、イソフタル酸成分を多く含むものがあるため、フィルム中のポリエステル樹脂を構成するイソフタル酸成分が0.5モル%未満であることは、リサイクル樹脂の比率の高いポリエステルフィルムの製造が結果として困難になり、あまり好ましくない。フィルム中に含まれるポリエステル樹脂を構成する全ジカルボン酸成分に占めるイソフタル酸成分の量の上限は好ましくは5.0モル%であり、より好ましくは4.0モル%であり、さらに好ましくは3.5モル%であり、特に好ましくは3.0モル%である。5.0モル%を超えると結晶性が低下するため、熱収縮率が高くなることがあり、あまり好ましくない。また、イソフタル酸成分の含有率を上記範囲とすることでラミネート強度、収縮率、厚みムラに優れたフィルムの作成が容易となり好ましい。」 ・「【0023】 フィルムに対するペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂の含有率の下限は好ましくは50重量%であり、より好ましくは65重量%であり、さらに好ましくは75重量%である。50重量%未満であるとリサイクル樹脂の活用としては、含有率に乏しく、環境保護への貢献の点であまり好ましくない。ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂の含有率の上限は好ましくは95重量%であり、より好ましくは90重量%であり、さらに好ましくは85重量%である。95重量%を超えるとフィルムとして機能向上のために無機粒子などの滑剤や添加剤を十分に添加することができない場合があり、あまり好ましくない。なお、フィルムとして機能向上のために無機粒子などの滑剤や添加剤を添加する場合に用いるマスターバッチ(高濃度含有樹脂)としてペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用いることもできる。」 ・「【0062】 本発明の積層フィルムを用いてなる無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムには、上記基材フィルムおよび無機薄膜層のほかに、必要に応じて、公知のガスバリア性積層フィルムが備えている種々の層を設けることができる。 例えば、無機薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムを包装材材料として用いる場合には、シーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層を形成することが好ましい。ヒートシール性樹脂層は通常、無機薄膜層上に設けられるが、基材フィルムの外側(無機薄膜層のある面の反対面)に設けることもある。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が十分に発現できるものであればよく、HDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等を使用できる。」 ・「【0081】 (実施例1) (ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂の調整) 飲料用ペットボトルから残りの飲料などの異物を洗い流した後、粉砕して得たフレークを押出機で溶融し、順次目開きサイズの細かなものにフィルタを変えて2回更に細かな異物を濾別し、3回目に50μmの最も小さな目開きサイズのフィルタで濾別して、ポリエステル再生原料を得た。得られた樹脂の構成は、テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール=97.0/3.0//100(モル%)で、樹脂の極限粘度は0.70dl/gであった。これをポリエステルAとする。 【0082】 (フィルムの作製) ポリエステルBとしてテレフタル酸//エチレングリコール=100//100(モル%)からなる極限粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂を、ポリエステルCとして、ポリエステルBに平均粒子径1.5μmの不定形シリカを0.3%含有するマスターバッチとしてものを作製した。各原料は、33Paの減圧下、125℃で8時間乾燥した。それらをA/B/C=70/20/10(重量比)となるよう混合したものを、一軸押出機に投入した。押出機から、メルトライン、フィルタおよびT-ダイまでは樹脂の温度が280℃となるように温度設定した。ただし、押出機のスクリューの圧縮部の開始点から30秒間は樹脂の温度が305℃となるように設定し、その後は再び、280℃となるようにした。 【0083】 T-ダイから押し出された溶融物を冷却ロールに密着させ、未延伸シートとし、それを引き続き118℃に加熱した周速差のあるロールにて縦方向に1.41倍延伸し(MD1)、さらに128℃に加熱した周速差のあるロールにて縦方向に2.92倍延伸(MD2)した。その縦延伸したシートをテンターに導き、121℃で予熱した後に、131℃で4.3倍横延伸した。引き続き熱固定として、180℃、リラックスなし(0%)で2.5秒行った(TS1)後に引き続き231℃、リラックス5%、3.0秒行った(TS2)後に引き続き222℃、リラックスなしで2.5秒行った(TS3)。引き続き、同じテンター内で、120℃で6.0秒間の冷却を行い、最終的にワインダーで巻き取ることで厚さ18μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。 【0084】 (無機薄膜層の形成) 次に、得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの片面に、無機薄膜層として二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合無機酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着源としては、3mm~5mm程度の粒子状SiO2(純度99.9%)とA12O3(純度99.9%)を用いた。ここで複合酸化物層の組成は、SiO2/A12O3(質量比)=60/40であった。またこのようにして得られたフィルム(無機薄膜層/二軸延伸ポリエステルフィルム)における無機薄膜層(SiO2/A12O3複合酸化物層)の膜厚は13nmであった。 以上のようにして、二軸延伸ポリエステルフィルムの上に無機薄膜層を備えた本発明の積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、上記の通り、酸素透過度、水蒸気透過度を評価した。」 ・「【0103】 [表1] [図:0001431154000001.jpg] 」 ・「【0105】 [表3] [図:0001431154000002.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を、特に、実施例1の積層フィルムについて整理すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。(当審注:実施例1については、上記アを参照。) <甲1発明> 「テレフタル酸/イソフタル酸//エチレングリコール=97.0/3.0//100(モル%)で、極限粘度が0.70dl/gである、飲料用ペットボトルから得たポリエステル再生原料(ポリエステルA)、テレフタル酸//エチレングリコール=100//100(モル%)からなる極限粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂(ポリエステルB)及びポリエステルBに平均粒子径1.5μmの不定形シリカを0.3%含有するマスターバッチとして作製したもの(ポリエステルC)を、A/B/C=70/20/10となるように混合し、一軸押出機から押し出した溶融物を冷却ロールに密着させ、未延伸シートとし、118℃に加熱した周速差のあるロールで縦方向に1.41倍延伸し(MD1)、さらに128℃に加熱した周速差のあるロールで縦方向に2.92倍延伸(MD2)した後、テンターに導き、121℃で予熱した後に、131℃で4.3倍横延伸し、熱固定として、180℃、リラックスなし(0%)で2.5秒(TS1)、231℃、リラックス5%、3.0秒(TS2)、222℃、リラックスなしで2.5秒(TS3)行った後、冷却して得られた厚さ18μmの二軸延伸ポリエステルフィルムであって、フィルムを構成する全ポリエステル中の全ジカルボン酸に対するイソフタル酸成分の含有率が2.1モル%、ペットボトルからリサイクルされた樹脂の含有率が70重量%であり、得られた二軸延伸ポリエステルフィルムの片面に、無機薄膜層として二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの組成がSiO2/Al2O3(質量比)=60/40であり、膜厚が13nmである複合無機酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成して積層フィルムとされる、実施例1において作製した二軸延伸ポリエステルフィルム。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 甲1発明の「二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの組成がSiO2/Al2O3(質量比)=60/40であり、膜厚が13nmである複合無機酸化物層」は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明(以下、「本件特許の発明の詳細な説明」という。)の【0027】に「ガスバリア層11は、例えば、無機酸化物あるいは金属からなる第1バリア層を含む」ことが記載され、同【0028】には「特に、酸化アルミニウムや酸化ケイ素からなる第1バリア層が好適に用いられる」ことが記載され、同【0029】には「第1バリア層の厚さは、5nm以上300nm以下であることが好ましく、10nm以上150nm以下であることがより好ましい。」ことが記載されており、層を構成する物質及び層の膜厚が本件特許発明1のガスバリア層が含む第1バリア層と同一であることからみて、本件特許発明1の「ガスバリア性を有したガスバリア層」に相当し、甲1発明の「積層フィルム」は、本件特許発明1の「包装袋用の積層体」と「積層体」という限りにおいて一致する。 そして、甲1発明の「二軸延伸ポリエステルフィルム」は、本件特許発明1の「樹脂フィルム」に相当し、甲1発明の「二軸延伸ポリエステルフィルム」は、ポリエステルA~Cがすべてポリエチレンテレフタレートを主成分とするものであり、ポリエチレンテレフタレート製であるといえるから、本件特許発明1の「ポリエチレンテレフタレート製の三層の樹脂層を備え」る「樹脂フィルム」と、「ポリエチレンテレフタレート製の樹脂層を備え」る「樹脂フィルム」という限りにおいて一致する。 さらに、甲1発明の「二軸延伸ポリエステルフィルム」は、飲料用ペットボトルから得たポリエステル再生原料であるポリエステルAを含むので、本件特許発明1の「前記三層の樹脂層のうちの少なくとも一層が、リサイクルポリエチレンテレフタレートを含」む「樹脂フィルム」と、「樹脂層が、リサイクルポリエチレンテレフタレートを含」む「樹脂フィルム」という限りにおいて一致し、甲1発明の「二軸延伸ポリエステルフィルム」は、ペットボトルからリサイクルされた樹脂の含有率が70重量%であるから、本件特許発明1の「前記樹脂フィルムが含有する前記リサイクルポリエチレンテレフタレートの質量割合は、前記樹脂フィルムの総質量の70%以上であ」るという発明特定事項を満たすといえる。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「ガスバリア性を有したガスバリア層を積層されることによって積層体を構成する樹脂フィルムであって、ポリエチレンテレフタレート製の樹脂層を備え、前記樹脂層が、リサイクルポリエチレンテレフタレートを含み、前記樹脂フィルムが含有する前記リサイクルポリエチレンテレフタレートの質量割合は、前記樹脂フィルムの総質量の70%以上である樹脂フィルム。」 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点1> 樹脂フィルムが構成する積層体について、本件特許発明1においては、「包装袋用の積層体」と特定されているのに対し、甲1発明においては「積層フィルム」と特定されている点。 <相違点2> 「ポリエチレンテレフタレート製の樹脂層を備え」る「樹脂フィルム」について、本件特許発明1においては「ポリエチレンテレフタレート製の三層の樹脂層を備え」る「樹脂フィルム」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのように特定されていない点。 <相違点3> 本件特許発明1は、樹脂フィルムの貯蔵弾性率と温度との関係を示す貯蔵弾性曲線において、ガラス状態からゴム状態への転移温度は、80℃以上88℃以下であり、かつ、前記転移温度における貯蔵弾性率は、3.8GPa以上4.1GPa以下であるのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点3について検討する。 甲1には、甲1発明の樹脂フィルムの貯蔵弾性率と温度との関係を示す貯蔵弾性曲線において、ガラス状態からゴム状態への転移温度は、80℃以上88℃以下であり、かつ、前記転移温度における貯蔵弾性率は、3.8GPa以上4.1GPa以下であることは記載されていないし、甲1及び他の証拠をみても、甲1発明の樹脂フィルムの貯蔵弾性率と温度との関係を示す貯蔵弾性曲線において、ガラス状態からゴム状態への転移温度は、80℃以上88℃以下であり、かつ、前記転移温度における貯蔵弾性率は、3.8GPa以上4.1GPa以下である蓋然性が高いと判断する理由もない。 したがって、上記相違点3は実質的な相違点である。 そして、甲1及び他の証拠をみても、甲1発明において、樹脂フィルムの貯蔵弾性率と温度との関係を示す貯蔵弾性曲線において、ガラス状態からゴム状態への転移温度は、80℃以上88℃以下であり、かつ、前記転移温度における貯蔵弾性率は、3.8GPa以上4.1GPa以下である、とする動機付けがない。 よって、甲1発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 さらに、本件特許発明1が奏する「樹脂フィルムにおいて、外力への応答に際しての弾性の寄与が大きくなりすぎないため、樹脂フィルムとガスバリア層とを備える積層体に外力が繰り返し印加された場合でも、樹脂フィルムに積層されたガスバリア層の動きが抑えられて、ガスバリア層における欠陥の発生が抑えられ、それゆえ、積層体のガスバリア性の低下を抑えることができる」(本件特許の発明の詳細な説明の【0007】)という効果は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲を超える顕著な効果である。 ウ 特許異議申立人の主張について (ア)特許異議申立人の主張 特許異議申立人は特許異議申立書(28-30頁)において、上記相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項に関して、おおむね以下の主張をしている。 本件特許の発明の詳細な説明の【0017】~【0021】及び【0025】の記載並びに同【0058】~【0064】及び【0074】~【0075】に記載された実施例及び比較例から、樹脂フィルム10中にペットボトルのリサイクル原料(リサイクルPET)を含み、樹脂フィルム10のリサイクルPET含有量を変更することにより、樹脂フィルム10が含有するPETの全ジカルボン単位に占めるイソフタル酸の割合が変化し、それに伴い貯蔵弾性率曲線におけるガラス状からゴム状への転移温度と前記転移温度における貯蔵弾性率の値が変化することにより、前記温度と前記貯蔵弾性率の値が所定範囲内になっているものと理解され、貯蔵弾性率曲線におけるガラス状からゴム状への転移温度は、実施例と比較例のいずれも本願請求項1の範囲内にあるので、リサイクルPET含有の有無に関わらずポリエチレンテレフタレートフィルムであれば、本願請求項1の範囲内の値となるものと理解される。そして、甲1の実施例1には、ペットボトルからリサイクルされたイソフタル酸成分を含む共重合ポリエチレンテレフタレートを70質量%含むポリエチレンテレフタレート基材フィルムに無機薄膜層を蒸着した積層フィルムが記載され、基材フィルム中のイソフタル酸成分含有量が2.1モル%であることが記載されており(甲1の【0084】及び【0103】の【表1】)、甲1発明の樹脂フィルムは、リサイクルPETの含有量とイソフタル酸成分含有量が本件特許発明1のものと重複しているので、甲1発明の樹脂フィルムは、貯蔵弾性率曲線におけるガラス状からゴム状への転移温度が80℃以上88℃以下、かつ、前記転移温度における貯蔵弾性率は、3.8GPa以上4.1GPa以下であることを満足する蓋然性が極めて高いものであると推定される。以上のとおり、相違点3は、実質的に甲1に記載されている。 (イ)当審の判断 本件特許の発明の詳細な説明の【0056】には、「各温度T1,T2,T3、および、各温度T1,T2,T3での貯蔵弾性率G1、損失弾性率G2、tanδの値は、樹脂フィルム10の組成や、押出・冷却の温度や速度、延伸倍率などの製造条件によって調整可能である。例えば、樹脂フィルム10が含有するPETの全ジカルボン単位に占めるイソフタル酸の割合が多いほど、分子配向を阻害し、樹脂フィルム10の柔軟性が高められ、樹脂フィルム10の粘性体としての性質を強くすることが可能である。冷却温度においては、樹脂フィルム10の製造時における冷却の温度が低い方が、貯蔵弾性率G1を小さくし、tanδを上げることができる。その結果、低温領域でも樹脂フィルム10の柔軟性が高められ、樹脂フィルム10の粘性体としての性質を強くすることが可能である。冷却速度においては、徐冷するよりは急冷させた方が樹脂を適度に結晶成長させつつ、非晶部分を残すことができるため、温度T3は低くなるが、tanδや損失弾性率G2を上げることができる。その結果、樹脂フィルム10の柔軟性が高められ、樹脂フィルム10の粘性体としての性質を強くすることが可能である。延伸倍率においては、樹脂フィルム10の製造時における延伸倍率を小さくすることで、分子配向が抑制できるので、転移温度T1を下げ、貯蔵弾性率G1の上昇を抑えることができる。その結果、樹脂フィルム10の柔軟性が高められ、樹脂フィルム10の粘性体としての性質を強くすることが可能である。」と記載されている。 上記記載によれば、ガラス状態からゴム状態への転移温度T1及び転移温度T1における貯蔵弾性率G1は、樹脂フィルムが含有するPETの全ジカルボン酸単位に占めるイソフタル酸の割合だけで決まるものではなく、樹脂フィルム製造時における冷却の温度や冷却速度、延伸倍率等の製造条件によっても変化するものであると理解できる。 そうすると、甲1発明の樹脂フィルムは、リサイクルPETの含有量が70重量%であり、イソフタル酸成分含有量が2.1モル%であり、本件特許発明1におけるこれらの数値範囲と重複しているとしても、そのことをもって、甲1発明の樹脂フィルムの転移温度T1及び転移温度T1における貯蔵弾性率G1が、本件特許発明1のものと重複しているということはできない。そして、甲1発明の樹脂フィルム製造時における冷却の温度や冷却速度、延伸倍率等の製造条件が、本件特許発明1の実施例における樹脂フィルムの製造条件と同一であるか、同一とはいえないまでも極めて類似している、などの特段の事情も存在しない。 よって、特許異議申立人の主張は採用できない。 (3)本件特許発明2ないし7について 本件特許発明2ないし7は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものである。 よって、本件特許発明2ないし7はいずれも、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)申立理由1についてのまとめ したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 よって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由1によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)サポート要件の判断 ア 特許請求の範囲の記載 特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。 イ 本件特許発明が解決しようとする課題 本件特許の発明の詳細な説明の【0005】の記載からみて、本件特許発明1及び2が解決しようとする課題は「積層体におけるガスバリア性の低下を抑えることのできる樹脂フィルム」を提供することであり、本件特許発明3ないし6が解決しようとする課題は「積層体におけるガスバリア性の低下を抑えることのできる樹脂フィルムを備える積層体」を提供することであり、本件特許発明7が解決しようとする課題は、「積層体におけるガスバリア性の低下を抑えることのできる樹脂フィルムを備える積層体から構成されている、対象物を包装するための包装袋」を提供することであると認められる(以下、これらをまとめて「本発明の課題」という。)。 ウ サポート要件の判断 本件特許の発明の詳細な説明の【0019】には、樹脂フィルムがリサイクルPETに加えてバージンPETを含んでいてもよく、リサイクルPETの質量割合は、樹脂フィルムの総質量の60%以上100%以下であることが記載され、同【0021】には、リサイクルPETのジカルボン酸単位がテレフタル酸とイソフタル酸とを含むことが記載され、同【0023】には、樹脂フィルムが複数の層の積層体であってもよいことが記載され、同【0026】には、積層体が樹脂フィルムとガスバリア層とを備えることが記載され、同【0028】には、酸化アルミニウムや酸化ケイ素からなる第1バリア層が好適に用いられることが記載され、同【0032】~【0034】には、ガスバリア層が第1バリア層に加えて、高分子材料を含む第2バリア層を含んでもよいこと、第1バリア層と第2バリア層とは互いに隣り合っていること、第2バリア層が水酸基を有する水溶性高分子と、Si(OR1)4、もしくは、R2Si(OR3)3で表されるケイ素化合物あるいはその加水分解物を含むことが記載され、同【0040】には、積層体から形成された袋状を有する包装袋が記載され、同【0047】には、樹脂フィルムの貯蔵弾性率G1と温度との関係を示す貯蔵弾性率曲線における、ガラス状態からゴム状態への転移温度T1及び転移温度T1における貯蔵弾性率G1について好ましい数値範囲が記載され、本件特許発明1ないし7に対応する記載がある。 そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0042】には樹脂フィルムの柔軟性が積層体におけるガスバリア性の低下に寄与することを見いだしたこと及び樹脂フィルムの柔軟性を評価するためのパラメータとして貯蔵弾性率G1等の動的弾性率に着目したことが記載され、同【0043】~【0045】には、樹脂フィルムにおける弾性体としての性質が強いほど、外力の印加とその解除とに対する形状変化の応答性が高くなり、樹脂フィルムに追従するガスバリア層の動きが大きくなり、その結果、ガスバリア層にピンホール等の欠陥が生じやすくなって、積層体のガスバリア性が低下しやすくなること並びに樹脂フィルムにおいて粘性体としての性質が強くなると、外力の印加に対する変形の進行が緩やかになり、外力が解除されても変形が元に戻りにくくなるため、積層体における振動の吸収性が高くなり、ガスバリア層における欠陥の発生が抑えられ、積層体のガスバリア性の低下が抑えられることが記載され、同【0046】には、樹脂フィルムにおける粘性体としての性質が強くなりすぎると、加工の容易性や強度といった積層体の包装材としての適性が低下することが記載され、同【0047】には、これらの検討を踏まえた上で、ガラス状態からゴム状態への転移温度T1及び転移温度T1における貯蔵弾性率G1について、好ましい数値範囲が、T1は80℃以上88℃以下であり、G1は3.8GPa以上4.1GPa以下であることが記載されている。 さらに、同【0057】~【0079】に記載された実施例において、リサイクルPETとバージンPETが、リサイクルPETの質量割合が樹脂フィルムの総質量の80%となるように混合された、互いに同一の組成を有する3層の樹脂層からなり、ガラス状態からゴム状態への転移温度T1が87.6℃で、転移温度T1における貯蔵弾性率G1が3.8GPaであり、厚さが12μmの実施例1の樹脂フィルムに、酸化アルミニウムからなる、厚さ10nmの第1バリア層を積層し、第1バリア層上に、テトラエトキシシランの加水分解物とポリビニルアルコールとを含む、厚さ300nmの第2バリア層を形成した実施例1の積層体が、バージンPETからなる一層の樹脂層からなり、ガラス状態からゴム状態への転移温度T1が87.0℃で、転移温度T1における貯蔵弾性率G1が4.7GPaであり、厚さ12μmの比較例1の樹脂フィルムに、実施例1と同様の材料および方法によって、第1バリア層と第2バリア層とを積層することによって得た、比較例1の積層体と比して、ゲルボフレックス試験後の酸素透過度および水蒸気透過度の低下が抑制されていることが示されている(【表2】)。 そうすると、本件特許の発明の詳細な説明の記載から「ガスバリア性を有したガスバリア層を積層されることによって包装袋用の積層体を構成する樹脂フィルムであって、ポリエチレンテレフタレートを含み、前記樹脂フィルムの貯蔵弾性率と温度との関係を示す貯蔵弾性曲線において、ガラス状態からゴム状態への転移温度は、80℃以上88℃以下であり、かつ、前記転移温度における貯蔵弾性率は、3.8GPa以上4.1GPa以下である樹脂フィルム」、「該樹脂フィルムを備える積層体」及び「該樹脂フィルムを備える積層体から構成されている、対象物を包装するための包装袋」であれば、本発明の課題を解決できると当業者は認識する。 そして、本件特許発明1及び2は、上記「樹脂フィルム」をさらに限定するものであり、本件特許発明3ないし5は、上記「積層体」をさらに限定するものであり、本件特許発明7は上記「包装袋」をさらに限定するものである。 したがって、本件特許発明1ないし5及び7は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載から当業者が本発明の課題を解決できると認識できる。 よって、本件特許発明1ないし5及び7については、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を充足する。 (3)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は特許異議申立書(33-34頁)において、上記第3 2の主張をしているので、検討する。 上記(2)で検討したとおり、本件特許の発明の詳細な説明の記載から、ガスバリア層有したガスバリア層を積層されることによって包装袋用の積層体を構成する樹脂フィルムであって、前記樹脂フィルムの貯蔵弾性率と温度との関係を示す貯蔵弾性曲線において、ガラス状態からゴム状態への転移温度は、80℃以上88℃以下であり、かつ、前記転移温度における貯蔵弾性率は、3.8GPa以上4.1GPa以下である樹脂フィルムであれば、第2バリア層の有無にかかわらず、本発明の課題を解決できると当業者は認識する。 また、特許異議申立人は、甲4の記載に基づいて本件特許発明においても所定の組成を有する第2バリア層が必須の構成であると主張するが、甲4に記載された発明は真空断熱材用外装材に係る発明であり、対象物を包装するための包装袋を意図する本件特許発明とは、同じガスバリア性積層フィルムであっても適用する対象が異なる。そして、甲4の【0005】には、真空断熱材を「冷蔵庫等に適用する場合には、真空断熱材に溝をつける必要があり、この溝で屈曲されるため、真空断熱材箱の屈曲に沿って変形させる必要がある。」と記載されており、甲4において解決しようとする課題は真空断熱材用外装材に特有のものであるから、甲4に記載された発明において所定の組成を有する第2バリア層が必須の構成であるからといって、適用対象が異なる本件特許発明の樹脂フィルムにおいても、第2のバリア層が必須の構成であるということはできない。 よって、特許異議申立人の主張は、上記(2)の判断に影響するものではない。 (4)申立理由2についてのむすび 上記(2)及び(3)に記載したとおり、本件特許の請求項1ないし5及び7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由2によって取り消すことはできない。 第5 結語 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700624

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