特許異議申立
2025-700501
硬化性ジェルネイル組成物、ジェルネイルベース層、ジェルネイル、及び、ジェルネイル組成物セット
- 審判番号
- 2025-700501
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-199972
- 登録番号
- 7580814
- 請求日
- 2025年05月08日
- 審決日
- 2025年08月26日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社サクラクレパス
- 【権利者代理人】山田 泰之
- 【権利者代理人】安藤 達也
- 【異議申立人】佐伯 圭佑
- 審判長/審判官
- 審判長 齋藤 恵
- 審判官 松元 麻紀子
- 審判官 小石 真弓
- 分類
- P1651.113-Y (A61K) / P1651.121-Y (A61K) / P1651.536-Y (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7580814号発明「硬化性ジェルネイル組成物、ジェルネイルベース層、ジェルネイル、及び、ジェルネイル組成物セット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7580814号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7580814号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成30年10月1日に出願した特願2018-186995号の一部を令和4年12月15日に新たな特許出願としたものであって、令和6年11月1日にその請求項1~6に係る特許権の設定登録がなされ、同年同月12日に特許掲載公報が発行され、その請求項1~6に係る特許に対し、令和7年5月8日に佐伯圭佑(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~6に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(以下、請求項の番号順に、「本件発明1」などといい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)。
「【請求項1】
分子内にポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートと、単官能モノマーと、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと、を含み、
前記単官能モノマーが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートの1種以上を含み、
前記ウレタン(メタ)アクリレートを、硬化性ジェルネイル組成物中に20質量%以上含み、
前記単官能モノマーを、硬化性ジェルネイル組成物中に80質量%未満含み、
1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤を含まず、
メタクリルアミドを含まず、
25℃において液体であるアクリルアミド系モノマーの含有量が、ポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレート100重量部に対して5~20重量部の範囲内でなく、
前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~70,000の範囲にあり、
硬化塗膜の水分透過率が33%以下である、
硬化性ジェルネイル組成物。
【請求項2】
分子内にポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートと、単官能モノマーと、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと、を含み、
前記単官能モノマーが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上を含み、
前記ウレタン(メタ)アクリレートを、硬化性ジェルネイル組成物中に20質量%以上含み、
前記単官能モノマーを、硬化性ジェルネイル組成物中に45質量%以下含み、
1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤を含まず、
メタクリルアミドを含まず、
重量平均分子量が10,000以上のバインダーポリマーを含まず、
前記バインダーポリマーは、ポリカーボネート構造を有するポリウレタン(メタ)アクリレートを除くポリマー成分であり、
25℃において液体であるアクリルアミド系モノマーの含有量が、ポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレート100重量部に対して5~20重量部の範囲内でなく、
前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~70,000の範囲にあり、
硬化塗膜の水分透過率が33%以下である、
硬化性ジェルネイル組成物。
【請求項3】
爪の上に直接塗布されるジェルネイルベース層形成用である、請求項1又は2に記載の硬化性ジェルネイル組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性ジェルネイル組成物から得られる、硬化塗膜の水分透過率が33%以下であるジェルネイルベース層。
【請求項5】
爪の上に、硬化塗膜の水分透過率が33%以下である請求項1又は2に記載の硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜を設ける工程を含む、爪の上にジェルネイルを設ける方法。
【請求項6】
爪の上に設けられるジェルネイルであって、少なくとも、表面側に設けられるトップジェル層、爪側に設けられるベースジェル層、及び、トップジェル層とベースジェル層の間に設けられるカラー層を有し、ベースジェル層が請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性ジェルネイル組成物から得られる硬化塗膜であり、少なくともベースジェル層の水分透過率が33%以下である、ジェルネイル。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、下記4に示す甲第1号証及び甲第2号証(以下、甲号証の番号順に、「甲1」などという。)を提出し、下記1~3の申立理由を主張している。
1 申立理由1(新規性欠如)
本件発明1~6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であるから、本件請求項1~6に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由2(進歩性欠如)
本件発明1~6は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由3(実施可能要件違反)
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、「硬化塗膜の水分透過率が33%以下である」硬化性ジェルネイルについて、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本件発明1~6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
4 証拠方法
甲1:国際公開第2016/152546号
甲2:特開2014-201562号公報
第4 判断
当審合議体は、本件発明1~6に係る特許は、上記第3に示した申立理由によっては、取り消すことはできないと判断する。その理由は以下のとおりである。
なお、「・・・」は記載の省略を表し、以下の下線は、当審合議体で追加した。また、証拠の転記は全て全角で表記する。本決定全体についても同様である。
1 甲号証の記載事項
(1)甲1の記載事項
摘記1a:「[請求項1]
成分Aとしてポリマーを含有し、
成分Aのゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される分子量分布において、分子量1,000以下の成分の面積が、全面積の5%以下であることを特徴とする、
人工爪組成物。
[請求項2]
成分Aがポリウレタンである、請求項1に記載の人工爪組成物。
・・・
[請求項6]
成分Aがポリエーテル骨格を有するポリウレタンである、請求項1~5のいずれか1項に記載の人工爪組成物。
[請求項7]
成分A以外に、成分Bとして、重合性モノマー、及び、成分Cとして、重合開始剤、を更に含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の人工爪組成物。
・・・
[請求項10]
請求項1~9のいずれか1項に記載の人工爪組成物からなる人工爪。」
摘記1b:「[0004]
本発明が解決しようとする課題は、密着性、耐久性、及び、硬化性に優れる人工爪組成物、並びに、上記人工爪組成物を用いた人工爪、人工爪の除去方法、及び、ネイルアートキットを提供することである。」
摘記1c:「[0015]
本発明の人工爪組成物は、光硬化性人工爪組成物(「ジェルネイル用人工爪組成物」)としても、マニキュア液用人工爪組成物としても好適に用いることができるが、密着性、耐久性の観点から、光硬化性人工爪組成物として特に好適に使用することできる。
上記光硬化性人工爪組成物は、活性光線により硬化可能な人工爪組成物である。「活性光線」とは、その照射により人工爪組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる放射線であり、紫外線、可視光線などを包含する。」
摘記1d:「[0019]
成分Aの重量平均分子量は、10,000以上1,000,000以下であることが好ましく、10,000以上100,000以下であることがより好ましく、12,000以上50,000以下であることが更に好ましい。上記範囲より低い場合は、硬化後の膜強度が低く、耐久性に劣り、上記範囲より高い場合は、人工爪組成物が高粘度になり、塗布性に劣る。」
摘記1e:「[0024]
成分Aは、人工爪組成物の密着性、耐久性の観点から、アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリカーボネート又はポリウレアが好ましく、アクリル系ポリマー又はポリウレタンがより好ましく、ポリウレタンが更に好ましい。
[0025]
ポリウレタンとしては、ジイソシアネート化合物とジオール化合物から合成した直鎖型ポリウレタン、又は、例えば特表2009-522609号公報に記載されているように3官能イソシアネートとポリオール化合物から合成した分岐型ポリウレタンが好ましく、直鎖型ポリウレタンがより好ましい。
・・・
密着性、耐久性の観点から、ジオール成分としては、・・・ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、又は、ポリカーボネートジオールが特に好ましい。」
摘記1f:「[0033]
本発明の人工爪組成物における成分Aの含有量は、特に制限はないが、人工爪組成物の全質量に対し、・・・20~80質量%であることが更に好ましく、30~70質量%であることが特に好ましい。上記範囲であると、得られる人工爪の密着性、耐久性により優れる。」
摘記1g:「[0038]
成分Bとして具体的には、・・・(メタ)アクリル酸イソボルニル、・・・(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、・・・を用いることができる。」
摘記1h:「[0044]
成分Bとしては、溶解性の観点から、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、・・・を含むことが好ましい。・・・
上記ヒドロキシル基又はアルキレンオキシ骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、これらに限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、・・・が挙げられる。」
摘記1i:「[0045]
・・・
本発明の人工爪組成物における成分Bの含有量は、特に制限はないが、人工爪組成物の全質量に対し、・・・20~80質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、人工爪組成物の粘度を調整でき、塗布性を容易に付与することができる。また、得られる人工爪の密着性、耐久性、及び除去性に優れる。」
摘記1j:「[0047]
本発明に用いることができる光重合開始剤として、以下のものを好ましく使用できる。ただし、これら例示に限定されるものではない。
アセトフェノン化合物(例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、・・・等)。」
摘記1k:「実施例
[0074]
以下実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例における形態に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、及び「%」は質量基準である。
・・・
[0077]
<合成例1>
3口フラスコに、ポリテトラメチレンオキシド111.90部(和光純薬工業(株)製、平均分子量2,000)、2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(水素化ビスフェノールAともいう。)9.6部(東京化成工業(株)製)、テトラヒドロフラン349.85部(和光純薬工業(株)製)を入れ、25℃で1時間撹拌した。次に、トリレンジイソシアネート18.1部(東京化成工業(株)製)を添加し、更にネオスタンU-600 0.15部(無機ビスマス系触媒、日東化成(株)製)を添加し、40℃で5時間撹拌した。次に、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル10.4部(和光純薬工業(株)製)を添加し、40℃で1時間撹拌した。25℃まで冷却し、ポリマー反応液を得た。別途、ビーカーに蒸留水1,500部、メタノール3,500部を入れ、25℃で撹拌し、上記ポリマー反応液を滴下した。滴下後、25℃で2時間撹拌し、その後、1時間静置した。デカンテーションにより溶剤を除き、蒸留水1,000部、メタノール4,000部を入れ、25℃で3時間撹拌し、その後、1時間静置した。沈殿物を取り出し、乾燥させ、ポリマーA-4を得た。GPCで測定したA-4のポリマー全体の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は22,000であり、分子量1,000以下成分は検出限界以下であった。
[0078]
<合成例2>
原料及びその使用量を変更し、分子量調整のために触媒量や反応温度、反応時間を適宜変更した以外は、合成例1と同様な方法により、A-1~A-3、A-5~A-13、及び、A-15~A-20をそれぞれ得た。
・・・
[0080]
[表2]
[図:0001426858000001.jpg]
・・・
[0083]
表2及び表3中の省略記載は、以下の通りである。
TDI:トリレンジイソシアネート
HBPA:水素化ビスフェノールA
PTMG2000:ポリテトラメチレンオキシド、平均分子量2,000
MeOH:メタノール
HEMA::メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
DMAPOH:3-ジメチルアミノ-1,2-プロパンジオール
PPG2000:ポリプロピレングリコールジオール、平均分子量2,000
T-5652:旭化成ケミカルズ(株)製デュラノールT-5652、ポリカーボネートジオール
V14-90:(株)アデカ製V14-90、ポリエステルポリオール
IPDI:イソホロンジイソシアネート
DMAEMA:メタクリル酸ジメチルアミノエチル
n-BuMA:メタクリル酸n-ブチル
GLM:ブレンマー GLM、グリセリンモノメタクリレート(日油(株)製)」
摘記1l:「[0085]
(実施例1~21、及び、比較例1~3)
<人工爪組成物の調製>
下記表4に示す各種成分を均一に混合し、人工爪組成物J-1~J-21、H-1~H-3を得た。なお、表中の略記は以下の化合物を表す。メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)、アクリル酸イソボルニル(IBXA)、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(HPMA)、メタクリル酸(MAA)、イルガキュア184(Irg.184、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF社製)、イルガキュアTPO(Irg.TPO、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、BASF社製)、酢酸エチル(EtOAc)。
[0086]
<人工爪の形成>
〔形成例1〕
実施例1~14、及び、実施例16~21、並びに、比較例1~3は以下の方法で人工爪を形成した。すなわち、得られた人工爪組成物一定量を爪型プラスチック片に刷毛で塗布し、紫外線ランプ(36W)を2分間照射した。その上に、カラー層として市販のカルジェル#CG-03フレッシュピンク((株)モガ・ブルック製)一定量を刷毛で塗布し、紫外線ランプ(36W)を2分間照射した。その上に、更にトップ層として市販のカルジェル#00((株)モガ・ブルック製)一定量を刷毛で塗布し、紫外線ランプ(36W)を2分間照射した。その後、エタノールで表面を拭いた。この時の人工爪全体の膜厚は約1,000μmであった。
・・・
密着性、耐久性、及び硬化性を評価した結果を表4に合わせて示す。
[0090]
[表4]
[図:0001426858000002.jpg]
[0091]
表4の結果から、本発明の人工爪組成物より得られた人工爪は、高い密着性、耐久性、硬化性を示すことがわかる。
[0092]
(実施例22)
<人工爪組成物の調製>
上記で作製した人工爪組成物J-4を用いた。
[0093]
<人工爪の形成>
〔形成例3〕
得られた人工爪組成物一定量を爪上に刷毛で塗布し、紫外線ランプ(36W)を2分間照射した。その上に、カラー層として市販のカルジェル#CG-03フレッシュピンク((株)モガ・ブルック製)一定量を刷毛で塗布し、紫外線ランプ(36W)を2分間照射した。その上に、更にトップ層として市販のカルジェル#00((株)モガ・ブルック製)一定量を刷毛で塗布し、紫外線ランプ(36W)を2分間照射した。その後、エタノールで表面を拭いた。この時の人工爪全体の膜厚は約1,000μmであった。
[0094]
<評価>
〔密着性、耐久性評価〕
爪上に人工爪を形成し、2週間生活した後、人工爪の様子を目視観察した。結果、剥離は確認されなかった。」
2 申立理由1(新規性欠如)及び申立理由2(進歩性欠如)について
(1)甲1に記載された発明
甲1は、成分Aとしてポリマーを含有し、成分Aのゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される分子量分布において、分子量1,000以下の成分の面積が、全面積の5%以下である人工爪組成物に関する文献であり(摘記1a)、その具体例を示した実施例4の人工爪組成物J-4(摘記1k、1l)の組成からみて、甲1には、次の「甲1-1発明」が記載されていると認める。
●甲1-1発明:
「ポリマーA-4を51質量部、メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)を14質量部、アクリル酸イソボルニル(IBXA)を2質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)を20質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(HPMA)を6質量部、メタクリル酸(MAA)を1質量部、イルガキュア184(Irg.184、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF社製)を3質量部、イルガキュアTPO(Irg.TPO、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、BASF社製)を3質量部含有する人工爪組成物。」
また、甲1の具体例を示した実施例9の人工爪組成物J-9の組成からみて(摘記1k、1l)、甲1には、次の「甲1-2発明」が記載されていると認める。
●甲1-2発明:
「ポリマーA-9を51質量部、メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)を14質量部、アクリル酸イソボルニル(IBXA)を2質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)を20質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(HPMA)を6質量部、メタクリル酸(MAA)を1質量部、イルガキュア184(Irg.184、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF社製)を3質量部、イルガキュアTPO(Irg.TPO、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、BASF社製)を3質量部含有する人工爪組成物。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1-1発明との対比
a 甲1-1発明における「人工爪組成物」は、爪型プラスチック片に刷毛で塗布し、紫外線ランプ(36W)を2分間照射することによって人工爪を形成している(摘記1l)。そして、甲1には、「光硬化性人工爪組成物(ジェルネイル用人工爪組成物)」とは、紫外線等の活性光線により硬化可能な人工爪組成物である旨が記載されていることから(摘記1c)、甲1-1発明における「人工爪組成物」は、「ジェルネイル用人工爪組成物」であり、本件発明1における「硬化性ジェルネイル組成物」に相当する。
b 甲1には、甲1-1発明における「ポリマーA-4」を合成する方法として、まず、平均分子量2,000のポリテトラメチレンオキシド(省略記載:「PTMG2000」)と2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンを25℃で1時間撹拌し、次に、トリレンジイソシアネート(省略記載:「TDI」)を添加し、更に無機ビスマス系触媒を添加して40℃で5時間撹拌し、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(省略記載:「HBPA」)を添加し、40℃で1時間撹拌した後、25℃まで冷却して得られたポリマー反応液を、別途、ビーカーに入れた蒸留水及びメタノールに滴下して25℃で2時間撹拌し、その後、1時間静置し、デカンテーションにより溶剤を除き、蒸留水及びメタノールを入れ、25℃で3時間撹拌し、その後、1時間静置して、生じた沈殿物を取り出し、乾燥させることにより、ポリマーA-4を合成した旨が記載されている(摘記1k)。
ここで、本件明細書の【0023】には、本件「ウレタン(メタ)アクリレート」の製造方法として、「ポリエーテルポリオール」等の「ポリオール」と「ポリイソシアネート」を反応させることによってイソシアネート基を有するウレタンポリマーを得、次いで「水酸基を有する(メタ)アクリル化合物」を供給し、混合、反応させる方法が記載されているところ、甲1-1発明における「ポリマーA-4」は、「ポリエーテルポリオール」である「ポリテトラメチチレンオキシド」と、本件明細書の【0019】に「ポリイソシアネート」として例示されている「トリレンジイソシアネート」を反応させた後、次いで、本件明細書の【0021】に「水酸基を有する(メタ)アクリル化合物」として例示されている「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル」を反応させて得られることから、本件明細書に記載された本件「ウレタン(メタ)アクリレート」と同様の方法によって製造されているといえる。
そして、「ポリオール」として、「ポリエーテルポリオール」である「ポリテトラメチチレンオキシド」を用いれば、得られる「ウレタン(メタ)アクリレート」は「分子内にポリエーテル骨格を有する」ことが明らかであるから、甲1-1発明の「ポリマーA-4」は、本件発明1の「分子内にポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート」に相当する。
さらに、「ポリマーA-4」の質量平均分子量について、甲1には、GPCで測定したポリマーA-4全体の重量平均分子量(ポリスチレン換算)が22,000であると記載されているところ(摘記1k)、「重量平均分子量」を「質量平均分子量」ともいうことは、本件出願時の技術常識であるから(必要であれば、甲2の【0011】等を参照。)、甲1-1発明における「ポリマーA-4」の「質量平均分子量」は、22,000であるといえる。
そうすると、甲1-1発明における「ポリマーA-4」は、本件発明1の「質量平均分子量が3,000~70,000の範囲」にある「分子内にポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート」に相当する。
c 甲1-1発明の人工爪組成物は、「ポリマーA-4」を51質量部含有するところ、甲1-1発明の人工爪組成物において、全ての成分の合計量は100質量部であるから、「ポリマーA-4」を51質量%含むといえる。
そうすると、甲1-1発明の人工爪組成物がポリマーA-4を51質量部含有することは、本件発明1の「前記ウレタン(メタ)アクリレートを、硬化性ジェルネイル組成物中に20質量%以上」含むことに相当する。
d 甲1-1発明における「メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)」、及び「アクリル酸イソボルニル(IBXA)」は、いずれも本件発明1における「単官能モノマー」及び「イソボルニル(メタ)アクリレート」に相当する。
e 甲1-1発明における「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)」は、本件発明1における「単官能モノマー」及び「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート」に相当する。
f 甲1-1発明における「メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(HPMA)」は、本件発明1における「単官能モノマー」及び「ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート」に相当する。
g 甲1-1発明の人工爪組成物は、「メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)」、「アクリル酸イソボルニル(IBXA)」、「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)」、「メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(HPMA)」、及び「メタクリル酸(MAA)」を合計43質量部、すなわち合計43質量%含有する。
そして、上記d~gで示したとおり、甲1-1発明において、「メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)」、「アクリル酸イソボルニル(IBXA)」、「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)」、「メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(HPMA)」、及び「メタクリル酸(MAA)」は、いずれも本件発明1における「単官能モノマー」に相当するから、甲1-1発明の人工爪組成物は、本件発明1の「単官能モノマーを、硬化性ジェルネイル組成物中に80質量%未満」含むことに相当する。
h 甲1-1発明における「イルガキュア184(Irg.184、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF社製)」は、本件発明1における「1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン」に相当する。
i 甲1-1発明は、本件発明1の「1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤」に相当する成分を含まない。
j 甲1-1発明は、「メタクリルアミド」を含まない。
k 甲1-1発明において、本件発明1の「25℃において液体であるアクリルアミド系モノマー」に相当する成分の含有量は、「ポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレート100重量部」に対して「0重量部」であるから、「25℃において液体であるアクリルアミド系モノマーの含有量が、ポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレート100重量部に対して5~20重量部の範囲内」でない。
l そうすると、本件発明1と甲1-1発明とは、
「分子内にポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートと、単官能モノマーと、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと、を含み、
前記単官能モノマーが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートの1種以上を含み、
前記ウレタン(メタ)アクリレートを、硬化性ジェルネイル組成物中に20質量%以上含み、
前記単官能モノマーを、硬化性ジェルネイル組成物中に80質量%未満含み、
1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤を含まず、
メタクリルアミドを含まず、
25℃において液体であるアクリルアミド系モノマーの含有量が、ポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレート100重量部に対して5~20重量部の範囲内でなく、
前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~70,000の範囲にある、
硬化性ジェルネイル組成物。」
という点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本件発明1は「硬化塗膜の水分透過率が33%以下」であるのに対し、甲1-1発明では、「硬化塗膜の水分透過率」が不明である点。
(イ)判断
a 甲1に記載の技術は、成分Aとしてポリマーを含有し、成分Aのゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される分子量分布において、分子量1,000以下の成分の面積を全面積の5%以下とすることにより、密着性、耐久性、及び硬化性に優れる人工爪組成物を提供するものであるところ(摘記1a、1b、1l)、甲1において、人工爪組成物を硬化塗膜とした際の水分透過率については、記載も示唆もされていない。
b そして、甲1-1発明の組成と、本件明細書において、硬化塗膜の水分透過率が33%未満である具体例として開示されている実施例4~9及び14(以下、「本件実施例4~9及び14」という。)の組成を比較してみるに、両者の組成は以下の点で異なっている。
(i)分子内ポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートについて、甲1-1発明は、原料としてポリテトラメチレンオキシド(PTMG2000)、トリレンジイソシアネート(TDI)、及び水素化ビスフェノール(HBPA)と、クエンチ剤としてメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)を用いて得られた、質量平均分子量22,000の「ポリマーA-4」であるのに対し、本件実施例4~9及び14は、構造が不明であって、質量平均分子量4,000の「アートレジンUN-6303」である点。
(ii)分子内ポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートの含有量が、甲1-1発明は51質量%であるのに対し、本件実施例4~9及び14は66.0~75.0質量%である点。
(iii)単官能モノマーの種類と含有量について、甲1-1発明は、単官能モノマーとして、「メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)」を14質量%、「アクリル酸イソボルニル(IBXA)」を2質量%、「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)」を20質量%、「メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(HPMA)」を6質量%、及び「メタクリル酸(MAA)」を1質量%含有するのに対し、本件実施例4~9及び14は、「2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(「メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(HPMA)」と同じ化合物)を10.0~30.0質量%、又は「イソボルニルメタクリレート(「メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)」を26.0~36.0質量%含有する点。
(iv)甲1-1発明は、多官能モノマーを含有しないのに対し、本件実施例7~9は、多官能モノマーとして、リン原子含有多官能(メタ)アクリレートを4.0質量%、又は、トリペンタエリスリトール(ポリ)アクリレート、モノ及びジペンタエリストール(ポリ)アクリレート、並びにポリペンタエリスリトール(ポリ)アクリレートの混合物を10.0~20.0質量%含有する点。
そうすると、組成が異なればその水分透過率も異なるものと解されるので、本件実施例4~9及び14について、硬化塗膜の水分透過率が33%未満であるからといって、組成が異なる甲1-1発明についても同様に、硬化塗膜の水分透過率が33%未満であるとはいえない。
してみると、上記相違点1は、実質的な相違点である。
c そして、上記aで示したとおり、甲1には、人工爪組成物を硬化塗膜とした際の水分透過率を33%以下とすることについて記載も示唆もされていないから、甲1-1発明において、硬化塗膜の水分透過率に着目した上で、その値を33%以下とする動機付けはない。
したがって、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易になし得たものではない。
(ウ)小括
d 以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件発明2について
(ア)本件発明2と甲1-2発明との対比
a 甲1-2発明における「人工爪組成物」は、上記ア(ア)aで示したとおり、「光硬化性人工爪組成物(ジェルネイル用人工爪組成物)」であるから、本件発明2における「硬化性ジェルネイル組成物」に相当する。
b 甲1には、「ポリマーA-9」は、原料として、平均分子量2,000のポリテトラメチレンオキシド(省略記載:「PTMG2000」)の代わりに、ポリカーボネートジオールである「T-5652」を用いた以外は、上記イ(ア)bで示した「ポリマーA-4」の製造方法と同様の方法で製造された旨が記載されている(摘記1k)。
そうすると、「ポリマーA-9」は、「ポリオール」である「T-5652」と、本件明細書の【0019】に「ポリイソシアネート」として例示されている「トリレンジイソシアネート」を反応させた後、次いで、本件明細書の【0021】に「水酸基を有する(メタ)アクリル化合物」として例示されている「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル」を反応させて得られることから、本件明細書に記載された本件「ウレタン(メタ)アクリレート」と同様の方法によって製造されているといえる。
そして、「ポリオール」として、「ポリカーボネートポリオール」である「T-5652」を用いれば、得られる「ウレタン(メタ)アクリレート」は「分子内にポリカーボネート骨格を有する」ことが明らかであるから、甲1-2発明の「ポリマーA-9」は、本件発明2の「分子内にポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート」に相当する。
さらに、甲1には、GPCで測定したポリマーA-9全体の重量平均分子量(ポリスチレン換算)が18,000であると記載されているから(摘記1k)、甲1-2発明における「ポリマーA-9」の「質量平均分子量」は、18,000であるといえる。
そうすると、甲1-2発明における「ポリマーA-9」は、本件発明2の「質量平均分子量が3,000~70,000の範囲」にある「分子内にポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート」に相当する。
c 甲1-2発明の人工爪組成物は、「ポリマーA-9」を51質量部含有するところ、甲1-2発明の人工爪組成物において、全ての成分の合計量は100質量部であるから、「ポリマーA-9」を51質量%含むといえる。
そうすると、甲1-2発明の人工爪組成物が「ポリマーA-9」を51質量部含有することは、本件発明2の「前記ウレタン(メタ)アクリレートを、硬化性ジェルネイル組成物中に20質量%以上」含むことに相当する。
d 甲1-2発明における「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)」は、本件発明2における「単官能モノマー」及び「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート」に相当する。
e 甲1-2発明における「メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(HPMA)」は、本件発明2における「単官能モノマー」及び「ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート」に相当する。
f 甲1-2発明の人工爪組成物は、「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)」、「メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(HPMA)」、「メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)」、「アクリル酸イソボルニル(IBXA)」、及び「メタクリル酸(MAA)」を合計質量部、すなわち合計43質量%含有する。
そして、上記d及びeで示したとおり、甲1-2発明において、「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)」及び「メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(HPMA)」は、いずれも本件発明2における「単官能モノマー」に相当するから、甲1-2発明の人工爪組成物は、本件発明2の「単官能モノマーを、硬化性ジェルネイル組成物中に45質量%以下」含むといえる。
g 甲1-2発明における「イルガキュア184(Irg.184、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF社製)」は、本件発明2における「1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン」に相当する。
h 甲1-2発明は、本件発明2の「1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤」に相当する成分を含まない。
i 甲1-2発明は、「メタクリルアミド」を含まない。
j 甲1-2発明は、本件発明2の「重量平均分子量が10,000以上のバインダーポリマー」であって、かつ「ポリカーボネート構造を有するポリウレタン(メタ)アクリレートを除くポリマー成分」に相当する成分を含まない。
k 甲1-2発明において、本件発明2の「25℃において液体であるアクリルアミド系モノマー」に相当する成分の含有量は、「ポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレート100重量部」に対して「0重量部」であるから、「25℃において液体であるアクリルアミド系モノマーの含有量が、ポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレート100重量部に対して5~20重量部の範囲内」でない。
l そうすると、本件発明2と甲1-2発明とは、
「分子内にポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートと、単官能モノマーと、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと、を含み、
前記単官能モノマーが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの1種以上を含み、
前記ウレタン(メタ)アクリレートを、硬化性ジェルネイル組成物中に20質量%以上含み、
前記単官能モノマーを、硬化性ジェルネイル組成物中に45質量%以下含み、
1分子内に1個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤を含まず、
メタクリルアミドを含まず、
重量平均分子量が10,000以上のバインダーポリマーを含まず、
前記バインダーポリマーは、ポリカーボネート構造を有するポリウレタン(メタ)アクリレートを除くポリマー成分であり、
25℃において液体であるアクリルアミド系モノマーの含有量が、ポリエーテル骨格ウレタンメタアクリレート100重量部に対して5~20重量部の範囲内でなく、
前記ウレタン(メタ)アクリレートの質量平均分子量が3,000~70,000の範囲にある、
硬化性ジェルネイル組成物。」
という点で一致し、以下の点で相違する。
相違点2:本件発明2は「硬化塗膜の水分透過率が33%以下」であるのに対し、甲1-2発明では、「硬化塗膜の水分透過率」が不明である点。
(イ)判断
a 上記ア(イ)aで示したとおり、甲1には、人工爪組成物を硬化塗膜とした際の水分透過率について記載も示唆もされていない。
b そして、甲1-2発明の組成と、本件明細書において、硬化塗膜の水分透過率が33%未満である具体例として開示されている実施例1~3、11及び12(以下、「本件実施例1~3、11及び12」という。)の組成を比較してみるに、両者の組成は以下の点で異なっている。
(i)分子内ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートが、甲1-2発明は、原料としてポリカーボネートジオールである「T-5652」(旭化成ケミカルズ(株)製デュラノールT-5652)、トリレンジイソシアネート(TDI)、及び水素化ビスフェノール(HBPA)と、クエンチ剤としてメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)を用いて得られた、質量平均分子量18,000の「ポリマーA-9」であるのに対し、本件実施例1~3、11及び12は、構造が不明であって、質量平均分子量15,000の「アートレジンUN-9200A」である点。
(ii)分子内ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートの含有量が、甲1-2発明は51質量%であるのに対し、本件実施例1~3、11及び12は59.0~66.0質量%である点。
(iii)単官能モノマーの種類と含有量について、甲1-2発明は、単官能モノマーとして、「メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)」を14質量%、「アクリル酸イソボルニル(IBXA)」を2質量%、「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)」を20質量%、「メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(HPMA)」を6質量%、及び「メタクリル酸(MAA)」を1質量%含有するのに対し、本件実施例1~3、11及び12は、「2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(「メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル(HPMA)」と同じ化合物)を10.0~37.0質量%含有する点。
。
(iv)甲1-2発明は、多官能モノマーを含有しないのに対し、本件実施例11及び12は、多官能モノマーとして、トリペンタエリスリトール(ポリ)アクリレート、モノ及びジペンタエリストール(ポリ)アクリレート、並びにポリペンタエリスリトール(ポリ)アクリレートの混合物を10.0~20.0質量%含有する点
。
そうすると、組成が異なればその水分透過率も異なるものと解されるので、本件実施例1~3、11及び12について、硬化塗膜の水分透過率が33%未満であるからといって、組成が異なる甲1-2発明についても同様に、硬化塗膜の水分透過率が33%未満であるとはいえない。
してみると、上記相違点2は、実質的な相違点である。
c そして、上記aで示したとおり、甲1には、人工爪組成物を硬化塗膜とした際の水分透過率を33%以下とすることについて記載も示唆もされていないから、甲1-2発明において、硬化塗膜の水分透過率に着目した上で、その値を33%以下とする動機付けはない。
したがって、本件発明2は、甲1発明に基づいて当業者が容易になし得たものではない。
(ウ)小括
よって、本件発明2は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明3について
本件発明3は、爪の上に直接塗布されるジェルネイルベース層形成用である、本件発明1又は本件発明2の硬化性ジェルネイル組成物に関するものである。
そうすると、本件発明1又は本件発明2の全ての発明特定事項を含む本件発明3についても、上記ア又はイで検討したのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1~3の硬化性ジェルネイル組成物から得られる、硬化塗膜の水分透過率が33%以下であるジェルネイルベース層に関するものである。
そうすると、本件発明1~3の全ての発明特定事項を含む本件発明4についても、上記ア~ウで検討したのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
オ 本件発明5について
本件発明5は、爪の上に、硬化塗膜の水分透過率が33%以下である本件発明1又は本件発明2の硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜を設ける工程を含む、爪の上にジェルネイルを設ける方法に関するものである。
そうすると、本件発明1又は2の全ての発明特定事項を含む本件発明5についても、上記ア又はイで検討したのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
カ 本件発明6について
本件発明6は、爪の上に設けられるジェルネイルであって、少なくともトップジェル層、ベースジェル層、及び、トップジェル層とベースジェル層の間に設けられるカラー層を有し、ベースジェル層が本件発明1~3のいずれかの硬化性ジェルネイルから得られる硬化塗膜であり、少なくともベースジェル層の水分透過率が33%以下であるジェルネイルに関するものである。
そうすると、本件発明1~3の全ての発明特定事項を含む本件発明6についても、上記ア~ウで検討したのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
キ 申立人の主張について
(ア)本件発明1について
a 申立人の主張の概要
(a)申立人は、申立書21~22頁において、甲1に記載の実施例2~8、12及び13の人工爪組成物は、本件発明1と同様の成分を同程度含有し、本件発明1と同様の製造方法によって製造され、かつ本件実施例と同様に、密着性及び耐久性に優れたものであると記載されているのだから、甲1に記載の実施例2~8、12及び13の人工爪組成物について、硬化塗膜の水分透過率を測定すれば、本件発明1と同様に「硬化塗膜の水分透過率が33%以下」となるはずであると主張している。
(b)さらに、申立人は、申立書22~24頁において、本件明細書の実施例1の硬化性ジェルネイル組成物の水分透過率の値は13.5%であったとされているのに対し、甲1に記載の実施例2~8、12及び13の人工爪組成物は、本件明細書の実施例1の硬化性ジェルネイル組成物と比較して、本件明細書の【0014】で親水性であるとされている基(ヒドロキシル基、酸基)を有する重合性モノマー(HEMA、HPMA、MAA)の合計含有量がより少なく、疎水性基を有する重合性モノマー(IBXMA、IBXA)を含有するのだから、本件明細書の【0014】の記載を参酌すれば、甲1に記載の実施例2~8、12及び13の人工爪組成物は、本件実施例4より水分透過率が低くなり、本件請求項1における「硬化塗膜の水分透過率が33%以下である」との構成を満たす蓋然性が極めて高い、と主張している。
b 申立人の主張の検討
申立人の主張について検討すると、本件実施例1で用いられているウレタン(メタ)アクリレートはポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートであり、ポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート)ではなく、その点でも組成が異なるので、その水分透過率に基づき、申立人の主張するように、甲1の実施例2~8、12及び13の人工爪組成物の組成から、その水分透過率が33%未満であると予測することはできない。
もし、仮に、ポリエーテル骨格ウレタンアクリレートの存在下において、親水性モノマーの含有量のみによって水分透過率が決まるとするなら、本件実施例8では、ウレタンアクリレート66%、ライトエステルHOP(N)を20%使用した場合、水分透過率は32.5%であるから、親水性基を有する単官能モノマーを27%含む甲1の実施例2~8、12及び13の人工爪組成物は水分透過率が33%を超える蓋然性が高い。
また、本件明細書の【0014】には、親水性成分として、分子量が小さい成分、ヒドロキシル基、酸基、アミノ酸基等の親水性基を有する成分が例示されているが、ヒドロキシメチルメタアクリレート(HEMA)、及びヒドロキシプロピルメタアクリレート(HPMA)については、本件明細書の【0030】~【0031】において、「架橋密度を調整する成分」であると記載されている。
そうすると、ヒドロキシメチルメタアクリレート(HEMA)、及びヒドロキシプロピルメタアクリレート(HPMA)は、架橋密度を調整することにより、硬化塗膜の水分透過率に影響するといえるから、単純に本件明細書の【0014】で親水性であるとされている基(ヒドロキシル基)を有していることのみを根拠として、ヒドロキシメチルメタアクリレート(HEMA)、及びヒドロキシプロピルメタアクリレート(HPMA)が、一概に硬化塗膜の水分透過率を高めるとはいえない。
さらに、甲1に記載の実施例2~8、12及び13の人工爪組成物において、本件発明1の「分子内にポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート」に相当する「ポリマーA-4」等は、本件実施例4等において「分子内にポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート」として含まれる「アートレジン UN-6303」とも、その質量平均分子量が大きく異なるところ、一般にポリマーの質量平均分子量が大きく異なれば、その疎水性の程度も大きく異なることは技術常識であるから、それに伴い、当該ポリマーを含有する硬化性ジェルネイル組成物から得られる硬化塗膜の水分透過率についても異なるものとなることは自明である。
そうすると、本件実施例1と甲1に記載の実施例2~8、12及び13の人工爪組成物において、硬化性ジェルネイル組成物の主成分である「分子内にポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート」の質量平均分子量が異なることを何ら考慮せずに、硬化塗膜の水分透過率を予測することはできない。さらに、ヒドロキシメチルメタアクリレート(HEMA)、及びヒドロキシプロピルメタアクリレート(HPMA)について、本件明細書に「架橋密度」を調整する成分であると記載されているにも関わらず、親水性を有するとされる「ヒドロキシル基」を有していることのみを根拠として、ヒドロキシメチルメタアクリレート(HEMA)、及びヒドロキシプロピルメタアクリレート(HPMA)を硬化塗膜の水分透過率を高める成分であると判断することもできない。
したがって、単純に、ヒドロキシメチルメタアクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタアクリレート(HPMA)、メタクリル酸メチル(MAA)の含有量のみに着目して、これらの含有量の多寡だけで、硬化塗膜の水分透過率を予測することはできない。
よって、申立人の主張は認められない。
(イ)本件発明2について
a 申立人の主張の概要
(a)申立人は、申立書28~29頁において、甲1に記載の実施例9及び11の人工爪組成物は、本件発明2と同様の成分を同程度含有し、本件発明2と同様の製造方法によって製造され、かつ本件実施例と同様に、密着性及び耐久性に優れたものであると記載されているのだから、硬化塗膜の水分透過率を測定すれば、本件発明2と同様に、「硬化塗膜の水分透過率が33%以下」となるはずであると主張している。
(b)さらに、申立人は、申立書29~32頁において、本件実施例6の硬化性ジェルネイル組成物の水分透過率の値は24.9%であるのに対し、甲1に記載の実施例9及び11の人工爪組成物は、本件実施例6の硬化性ジェルネイル組成物と比較して、本件明細書の【0014】で親水性であるとされている基(ヒドロキシル基、酸基)を有する重合性モノマー(HEMA、HPMA、MAA)の合計含有量がより少なく、疎水性基を有する重合性モノマー(IBXMA、IBXA)を含有するのだから、本件明細書の【0014】の記載を参酌すれば、甲1に記載の実施例9及び11の人工爪組成物は、本件実施例1より水分透過率が低くなり、本件請求項2における「硬化塗膜の水分透過率が33%以下である」との構成を満たす蓋然性が極めて高い、と主張している。
b 申立人の主張の検討
申立人の主張について検討すると、本件実施例6で用いられているウレタン(メタ)アクリレートはポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートではなく、ポリエーテル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートであり、その点でも組成が異なるので、その水分透過率に基づき、申立人の主張するように、甲1に記載の実施例9及び11の人工爪組成物の組成から、その水分透過率が33%未満であると予測することはできない。
また、本件明細書の【0014】及び【0015】の記載を参酌すれば、硬化塗膜の水分透過率を調整する方法として、親水性成分や疎水性成分の量を調整する方法だけでなく、「硬化塗膜の架橋密度を高く」することでも硬化塗膜の疎水的にすることができ、その結果、硬化塗膜の水分透過率を低下させることができると認められる。
また、本件明細書の【0014】には、親水性成分として、分子量が小さい成分、ヒドロキシル基、酸基、アミノ酸基等の親水性の基ヒドロキシメチルメタアクリレート(HEMA)、及びヒドロキシプロピルメタアクリレート(HPMA)については、本件明細書の【0030】~【0031】において、「架橋密度を調整する成分」であると記載されている。
そうすると、ヒドロキシメチルメタアクリレート(HEMA)、及びヒドロキシプロピルメタアクリレート(HPMA)は、架橋密度を調整することにより、硬化塗膜の水分透過率に影響するといえるから、単に本件明細書の【0014】で親水性であるとされている基(ヒドロキシル基)を有していることのみを根拠として、これらが一概に硬化塗膜の水分透過率を高める成分であるとはいえない。
さらに、甲1に記載の実施例9及び11の人工爪組成物において、本件発明2の「分子内にポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート」に相当する「ポリマーA-9」は、本件実施例1等において「分子内にポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート」として含まれる「アートレジン UN-9200A」とも、その質量平均分子量が大きく異なるところ、一般にポリマーの質量平均分子量が大きく異なれば、その疎水性の程度も大きく異なることは技術常識であるから、当該ポリマーを含有する硬化性ジェルネイル組成物から得られる硬化塗膜の水分透過率についても異なるであろうことは自明である。
そうすると、本件実施例6と甲1に記載の実施例9及び11の人工爪組成物において、硬化性ジェルネイル組成物の主成分である「分子内にポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート」について、その質量平均分子量が異なることを何ら考慮せずに、硬化塗膜の水分透過率を予測することはできない。さらに、ヒドロキシメチルメタアクリレート(HEMA)、及びヒドロキシプロピルメタアクリレート(HPMA)について、本件明細書に「架橋密度」を調整する成分であると記載されているにも関わらず、親水性を有するとされる「ヒドロキシル基」を有していることのみを根拠として、ヒドロキシメチルメタアクリレート(HEMA)、及びヒドロキシプロピルメタアクリレート(HPMA)を硬化塗膜の水分透過率を高める成分であると判断することもできない。
したがって、単純に、ヒドロキシメチルメタアクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタアクリレート(HPMA)、メタクリル酸メチル(MAA)の含有量のみに着目して、ヒドロキシメチルメタアクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタアクリレート(HPMA)、メタクリル酸メチル(MAA)の含有量が実施例9及び10の人工爪組成物では本件実施例6よりも少ないからといって、甲1の実施例9及び10の人工爪組成物の硬化塗膜の水分透過率が本件実施例6の硬化塗膜の水分透過率よりも低いなどと予測することはできない。
よって、申立人の主張は認められない。
(3) まとめ
以上のとおりであるから、本件発明は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、申立理由1(新規性欠如)、及び申立理由2(進歩性欠如)には理由がない。
なお、甲1-1発明として、実施例2、3、5~8、12及び13をもとに発明を認定した場合も、同様に、本件発明1、3~6は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、申立理由1(新規性欠如)、及び申立理由2(進歩性欠如)には理由がない。
また、甲1-2発明として、実施例11をもとに発明を認定した場合も、同様に、本件発明2~6は、甲1-2発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、申立理由1(新規性欠如)、及び申立理由2(進歩性欠如)には理由がない。
3 申立理由3(実施可能要件違反)について
(1)発明の詳細な説明の記載
本件明細書の【0014】~【0015】には、
「【0014】
本発明の硬化性ジェルネイル組成物においては、硬化塗膜の水分透過率が33%以下となるのであれば、その組成については特に限定されない。硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜の水分透過率を調整する方法としては、周知の方法を採用することができ、例えば、硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜の架橋密度を調整し得る多官能性モノマー等の成分を用いること、疎水性成分を多くすること、親水性成分を含まない又は含んだとしても少量であるものとすることがあげられる。ここでいう疎水性成分としては、例えば、分子量が大きい成分、疎水性基を有する成分が例示され、親水性成分としては、分子量が小さい成分、ヒドロキシル基、酸基、アミノ基等の親水性基を有する成分が例示される。
【0015】
好ましくは、以下のような組成の硬化性ジェルネイル組成物を用いることにより、硬化塗膜の架橋密度を高くしたり、相対的に疎水的な部分を増加させることで硬化塗膜を疎水的にしたりすることができ、硬化塗膜の水分透過率を低下(水分透過率33%以下)させることができる。」
と記載され、
同【0055】~【0064】には、実施例1~9、11~12及び14として、硬化塗膜の水分透過率が33%以下であり、本件発明1又は2の組成を有する硬化性ジェルネイルを具体的に製造したことが記載されている。
(2)判断
本件発明1~4及び6は「物の発明」であって、「物の発明」が実施可能要件を満たすためには、発明の詳細な説明の記載が、当業者において、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用することができる程度のものでなければならないところ、上記(1)の【0014】~【0015】には、硬化塗膜の水分透過率を調整し、同水分透過率が33%以下である硬化性ジェルネイル組成物を製造する一般的な方法が記載され、同【0055】~【0064】には、実施例として具体的にそれを製造した例も記載されているのであるから、当業者が本件発明1~4及び6を作り、使用することができることは明らかである。
また、本件発明5は、「爪の上に、硬化塗膜の水分透過率が33%以下である請求項1又は2に記載の硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜を設ける工程を含む、爪の上にジェルネイル組成物を設ける方法。」の発明であり、「方法の発明」であるところ、「方法の発明」が実施可能要件を満たすためには、発明の詳細な説明の記載が、当業者において、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用できることである。そうすると、本件発明5が引用する本件請求項1~2に係る硬化性ジェルネイル組成物については、上述のとおり、当業者が過度の試行錯誤を要することなく作り、使用することができるといえるから、本件発明5の方法を使用することができることも明らかである。
(3)申立人の主張について
ア 申立人の主張の概要
(ア)申立人は、申立書36~40頁において、本件明細書の【0014】に、
「【0014】
本発明の硬化性ジェルネイル組成物においては、硬化塗膜の水分透過率が33%以下となるのであれば、その組成については特に限定されない。硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜の水分透過率を調整する方法としては、周知の方法を採用することができ、例えば、硬化性ジェルネイル組成物の硬化塗膜の架橋密度を調整し得る多官能性モノマー等の成分を用いること、疎水性成分を多くすること、親水性成分を含まない又は含んだとしても少量であるものとすることがあげられる。ここでいう疎水性成分としては、例えば、分子量が大きい成分、疎水性基を有する成分が例示され、親水性成分としては、分子量が小さい成分、ヒドロキシル基、酸基、アミノ基等の親水性基を有する成分が例示される。」
と記載されていることを示した上で、以下の矛盾が存在することで、本件発明1~6を実施しようとする当業者は、【0014】の記載に沿って、親水性単官能モノマーの配合量を減少させて水分透過率を33%以下の値へ制御しようとしても、そのような制御が可能であるかは明らかでないから、本件発明のジェルネイル組成物の硬化塗膜の水分透過率の制御を行うことは不可能であると主張している。
(イ)一方、本件明細書の【0061】に記載された実施例1と比較例5を比べると、本件実施例1は、同比較例5より2-ヒドロキシプロピルメタクリレートが少ないにも関わらず、同比較例5より水分透過率が低くなっており、上記【0014】の記載と矛盾する。
(ウ)さらに、本件実施例1~3において、2-ヒドロキシプロピルメタクリレートの含有量を比べると、2-ヒドロキシプロピルメタクリレートの含有量は、実施例1、実施例2、実施例3の順に少なくなるにも関わらず、硬化塗膜の水分透過率は、実施例1、実施例2、実施例3の順に高くなっており、やはり上記【0014】の記載と矛盾する。
(エ)また、実施例6と実施例14を比べてみると、実施例6は、親水性基を有しない単官能モノマーである「イソボルニルメタアクリレート」を含有するところ、実施例14は、実施例6の「イソボルニルアクリレート」を、親水性基を有する単官能モノマーである「2-ヒドロキシプロピルメタクリレート」に置き換えたものであるにも関わらず、実施例6と実施例14は水分透過率が同じ値であり、これもやはり上記【0014】の記載と矛盾する。
イ 申立人の主張の検討
申立人が矛盾として指摘する上記ア(イ)~(エ)について検討するに、申立人の主張は、親水性の基を有するモノマーは塗膜の水分透過性を増大させるように働く親水性モノマーであり、塗膜の水分透過率を小さくするためには、その含有率を減少させることが必要であることを前提とするものである。しかしながら、上記2(2)キの(ア)b及び同(イ)bでも述べたとおり、本件明細書の【0014】及び【0015】の記載を参酌すれば、硬化塗膜の水分透過率を調整する方法としては、親水性成分や疎水性成分の量を調整するだけでなく、「硬化塗膜の架橋密度を高く」することでも硬化塗膜の疎水的にすることができ、その結果、硬化塗膜の水分透過率を低下させることができると認められる。
そして、本件明細書の【0030】~【0031】には、ヒドロキシプロピルメタアクリレート(HPMA)は、「架橋密度を調整する成分」であると記載されており、ヒドロキシプロピルメタアクリレート(HPMA)は、架橋密度を調整することにより、硬化塗膜の水分透過率に影響するといえるから、単に本件明細書の【0014】で親水性であるとされている基(ヒドロキシル基)を有していることのみを根拠として、ヒドロキシプロピルメタアクリレート(HPMA)が硬化塗膜の水分透過率を高める成分であると一概に判断することはできないことは、すでに述べたとおりである。
そうすると、申立人が上記ア(イ)~(エ)において主張する、実施例及び比較例の水分透過率の値についても、本件明細書の記載全体と何ら矛盾するものではない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1~6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものではないから、申立理由3(実施可能要件違反)には理由がない。
第5 むすび
したがって、申立人の特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700501