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特許異議申立

2025-700286

封止フィルム並びにそれを用いたタブリード及び二次電池

審判番号
2025-700286
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-017851外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7546932
請求日
2025年03月10日
審決日
2025年07月15日
公報発行日
2025年08月29日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (H01M) / P1651.4 -Y (H01M) / P1651.537-Y (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第39条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7546932号発明「封止フィルム並びにそれを用いたタブリード及び二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7546932号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。

理由

理 由 理 由 第1 手続の経緯 特許第7546932号の請求項1ないし9に係る発明についての出願は、2020年(令和2年)6月4日を国際出願日とする特願2020-562793号(優先日 令和1年11月22日、令和2年1月30日)の一部を、令和4年2月8日に新たに出願したものであって、令和6年8月30日にその特許権の設定登録され、令和6年9月9日に特許掲載公報が発行された。 その後、請求項1ないし9に係る特許に対し、令和7年3月10日に特許異議申立人竹口 美穂(以下、「申立人A」という。)及び赤松 智信(以下、「申立人B」という。)の2名によって、特許異議の申立てがなされた。 第2 本件発明 特許第7546932号の請求項1ないし9の特許に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明9」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 外装パッケージで覆われた二次電池において、正極又は負極に接続されたリード導体と前記外装パッケージとの間に配置されて熱シールされる封止フィルムであって; 前記封止フィルムがコア層とその両面にスキン層が形成されてなる3層の多層封止フィルムであり、 前記コア層が、融点が155~166℃であり、メルトフローレート(MFR)が0.5~5g/10minであるポリプロピレンを含み、 前記スキン層が、融点が120~150℃であり、メルトフローレート(MFR)が1~40g/10minであるポリプロピレンを含み、 前記コア層のシャルピー強度が15kJ/m2以上であり、 前記封止フィルムの厚みが30~300μmであり、かつ 前記コア層の厚みに対する前記スキン層の厚みの比が0.2~5であることを特徴とする封止フィルム。 【請求項2】 前記コア層が、融点が158~166℃であり、メルトフローレート(MFR)が1~3g/10minであるポリプロピレンを含み、かつ 前記スキン層が、融点が128~150℃であり、メルトフローレート(MFR)が1~7g/10minであるポリプロピレンを含む請求項1に記載の封止フィルム。 【請求項3】 前記スキン層の少なくとも一方の層に含まれるポリプロピレンが、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又は不飽和エポキシ化合物で変性されている請求項1又は2に記載の封止フィルム。 【請求項4】 前記コア層に含まれるポリプロピレンが、ポリプロピレンブロックコポリマーである請求項1~3のいずれかに記載の封止フィルム。 【請求項5】 前記スキン層の一方の層が前記リード導体と接着する金属接着層であり、他方の層が前記外装パッケージと接着するパッケージ接着層であり、 前記金属接着層に含まれるポリプロピレンが、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又は不飽和エポキシ化合物で変性されたポリプロピレンであり、かつ 前記パッケージ接着層に含まれるポリプロピレンが、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又は不飽和エポキシ化合物で変性されたポリプロピレン、又はポリプロピレンランダムコポリマーである請求項3又は4に記載の封止フィルム。 【請求項6】 前記パッケージ接着層に含まれるポリプロピレンの融点が、前記金属接着層に含まれるポリプロピレンの融点よりも高い請求項5に記載の封止フィルム。 【請求項7】 前記金属接着層に含まれるポリプロピレンのMFRが、前記コア層に含まれるポリプロピレンのMFR及び前記パッケージ接着層に含まれるポリプロピレンのMFRのいずれよりも高い請求項5又は6に記載の封止フィルム。 【請求項8】 リード導体の一部の両面が、請求項1~7のいずれかに記載の封止フィルムで被覆されてなるタブリード。 【請求項9】 正極、負極、電解質及びセパレータを含む発電要素と、該発電要素を収容し周縁部が熱シールされてなる外装パッケージと、前記正極又は前記負極に接続されて前記外装パッケージの外側に引き出されるリード導体と、前記外装パッケージと前記リード導体の間に配置されて熱シールされてなる封止フィルムとを有する二次電池であって; 前記外装パッケージが、少なくとも金属層及びシーラント樹脂層を含む多層フィルムからなり、かつ 前記封止フィルムが請求項1~7のいずれかに記載の封止フィルムであることを特徴とする二次電池。」 第3 申立理由の概要 1 申立人Aの申立理由の概要は、次のとおりである。 (1)申立理由1A 特許法第29条第2項(進歩性) 請求項1ないし3、5、7ないし9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項、又は、甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された事項に基づいて、請求項4に係る発明は、甲第3号証に記載された発明と甲第4号証に記載された事項に基づいて、請求項6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項、及び、甲第5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2A 特許法第39条第2項(同日出願) 請求項1ないし9に係る発明は、同日出願に係る甲第6号証に記載された発明と同一であり、同出願は既に特許され協議を行うことができないから、請求項1ないし9に係る特許は、特許法第39条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 2 申立人Bの申立理由の概要は、次のとおりである。 (1)申立理由1B 特許法第29条第2項(進歩性) 請求項1ないし5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証に記載された事項に基づいて、請求項6ないし9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項、甲第3号証に記載された事項及び甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2B 特許法第36条第6項第2号(明確性) 請求項1ないし9に係る発明は、明確でない。 よって、請求項1ないし9に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 2 提出された証拠 (1)申立人Aが提出した証拠は次のとおりである。 甲第1号証:特開2015-170428号公報 甲第2号証: 日笠茂樹・甲加晃一、[総合論文〕ポリプロピレン複合材料の力学特性に関するフィラー添加の影響,高分子論文集、Vol,71、No.6、(Jun,2014)、pp.263-271 甲第3号証:特開2016-91939号公報 甲第4号証:特開2012-17417号公報 甲第5号証:国際公開第2015/008826号 甲第6号証:特許第7066227号 なお、申立人Aが提出した甲第1号証ないし甲第6号証を、以下「甲第1号証A」ないし「甲第6号証A」という。 (2)申立人Bが提出した証拠は次のとおりである。 甲第1号証:特開2016-91939号公報 甲第2号証:特開2012-64337号公報 甲第3号証:『プロダクトデータシート一覧表(射出)1』、『プロダクトデータシート一覧表(射出)2』、『プロダクトデータシート一覧表(フィルム)』、サンアロマー株式会社、2019年10月30日発行(作成日) 甲第4号証:特開2002-245988号公報 甲第5号証:小林政治郎 他2名、『硬質塩ビ板のVノッチ衝撃試験片形状とそのシャルピー衝撃値との関係』、「材料」第13巻第125号、日本材料学会、昭和39年(1964)、2月発行、50~56頁 <URL:DOI:https://doi.org/10.2472/jsms.13.110> 参考資料1:サンアロマー株式会社ホームページ社長メッセージ/事業案内 [on line] [2025年3月5日検索]インターネット <URL.https://www.sunallomer.co.jp/corp/message.html> <URL.https://www.sunallomer.co.jp/corp/business.html> なお、申立人Bが提出した甲第1号証ないし甲第5号証を、以下「甲第1号証B」ないし「甲第5号証B」という。 第4 申立理由についての当審の判断 1 申立理由1A(進歩性)について (1)甲各号証の記載事項 ア 甲第1号証Aについて (ア)甲第1号証A(特開2015-170428号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。) 「【0001】 本発明は、リチウムイオン2次電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイスに使用されるタブ封止用絶縁フィルム及び該絶縁フィルムを用いて構成された電気化学デバイスに関する。」 「【0042】 本発明に係るタブ封止用絶縁フィルム1は、上記特定構成のベース樹脂層2を少なくとも含む構成であり、前記特定構成のベース樹脂層2のみからなる構成(ベース樹脂層2の単層)であってもよいし、前記特定構成のベース樹脂層2の少なくともいずれか一方の面に樹脂層が積層された積層構成であってもよい。 【0043】 後者の積層構成としては、図1、3に示すように、前記ベース樹脂層2における外装材23側の面に外側樹脂層3が積層されると共に、前記ベース樹脂層2におけるタブ21(22)側の面に内側樹脂層4が積層された構成であって、前記外側樹脂層3が、「酸変性ポリプロピレン」又は/及び「酸で変性されていないポリプロピレン」を含有し、前記内側樹脂層4が酸変性ポリプロピレンを含有する構成を採用するのが好ましい。」 「【0059】 本発明のタブ封止用絶縁フィルム1を用いて構成された電気化学デバイス20の一実施形態を図3に示す。この電気化学デバイス20は、電気化学素子と、電極タブ21、22と、タブ封止用絶縁フィルム1と、外装材23と、を備える。 【0060】 この電気化学デバイス20の製造手順の一例を説明する。まず、図2に示すように、方形状に2枚切り出した外装材(外装フィルム)23、23を、互いの内面層を対向させて、周囲3辺23a、23b、23cを熱溶着して袋状物を作成する。 【0061】 また、図2に示すように、正極タブ21におけるシール部23dに対応する部分にタブ封止用絶縁フィルム1、1を両面から挟み込んだ状態で溶着すると共に、負極タブ22におけるシール部23dに対応する部分にタブ封止用絶縁フィルム1、1を両面から挟み込んだ状態で溶着する。これらタブ21、22を電気化学素子に溶接によって接合固定する。前記正極タブ21は、例えば、アルミニウム、チタン等の金属導体によって構成されている。前記負極タブ22は、例えば、銅、ニッケル、ニッケルメッキされた銅等の金属導体によって構成されている。なお、前記電気化学素子は、正極と負極とが、電解質部を介して積層されて構成されている。前記タブ材(タブ21、22の材料)としては、圧延した硬質の箔や板を使用するのが好ましい。また、タブ21、22を構成する金属表面の腐食防止や、タブ封止用絶縁フィルム1との密着性を十分に確保するために、タブ21、22に下地処理を施してもよい。 ・・・(中略)・・・。 【0062】 次に、前記袋状物内に、タブ21、22が接続された電気化学素子を収容する。次いで、袋状物のシール部23d、23dによって、タブ21、22をタブ封止用絶縁フィルム1、1を介して挟み込んだ状態で、シール部23d、23dの全域を互いに熱溶着する(図2、3参照)。これにより、電気化学素子が、外装材(外装フィルム)23、23内に密閉状態で収容された電気化学デバイス(電池等)20が作製される。」 【0065】 <原材料> ・・・(中略)・・・。 (樹脂組成物D) 無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(無水マレイン酸グラフト量0.3質量%)10質量部、ホモポリプロピレン樹脂(MFR:0.4g/10分)89質量部、エチレン-プロピレンラバー(EPR)1質量部を2軸押出機で230℃の樹脂温度で溶融混練して得られた樹脂組成物。この樹脂組成物DのMFRは、0.5g/10分であり、樹脂組成物Dの融点は165℃である。 ・・・(中略)・・・。 (樹脂組成物F) 無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(無水マレイン酸グラフト量0.2質量%)75質量部、エチレン-プロピレンラバー(EPR)25質量部を2軸押出機で230℃の樹脂温度で溶融混練して得られた樹脂組成物。この樹脂組成物FのMFRは、3.2g/10分であり、樹脂組成物Fの融点は134℃である。」 「【0076】 <実施例7> 樹脂組成物Dからなる厚さ40μmのベース樹脂層2の一方の面に樹脂組成物Fからなる厚さ30μmの外側樹脂層3が積層されると共に前記ベース樹脂層2の他方の面に樹脂組成物Fからなる厚さ30μmの内側樹脂層4が積層された構成を備えた図1に示すタブ封止用絶縁フィルム1を共押出インフレーション成形法により得た。」 「【0079】 【表2】 [図:0001425792000001.jpg] 「【0084】 <シール強度測定による封止性能の評価法> 得られたタブ封止用絶縁フィルムの内側樹脂層の表面を、タブリード材(タブ)の表面に重ね合わせると共に、前記絶縁フィルムの外側樹脂層の表面に、外装材の内側層の表面を重ね合わせて200℃での加熱により、タブリード材(タブ)/タブ封止用絶縁フィルム/外装材をシール接合して、シール接合物を得た。なお、前記外装材は、厚さ40μmのアルミニウム箔の一方の面に厚さ25μmの2軸延伸ポリアミドフィルムをドライラミネートし、前記アルミニウム箔の他方の面に厚さ40μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(内側層)をドライラミネートして得られた外装材である。また、前記タブリード材(タブ)は、厚さ0.3mm、幅60mm、長さ50mmの銅板に、厚さ2μmのニッケルメッキを施し、さらにキトサン樹脂、フッ化クロム及びリン酸を含む水溶液で表面処理して得られたものである。」 「【図2】 [図:0001425792000002.jpg] 」 「【図3】 [図:0001425792000003.jpg] 」 (イ)甲第1号証Aの上記記載事項によれば、次のことがいえる。 a 段落【0001】によれば、甲第1号証Aには、2次電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイスに使用されるタブ封止用絶縁フィルムが記載されている。 そして、段落【0059】によれば、電気化学デバイスは、電気化学素子を備え、段落【0061】によれば、電気化学素子は、正極と負極とが、電解質部を介して積層されて構成され、段落【0060】、【0062】によれば、電気化学素子は、袋状物である外装材に収容される。 してみると、甲第1号証Aには、正極と負極とが、電解質部を介して積層されて構成される電気化学素子が袋状物である外装材に収容される2次電池に使用されるタブ封止用絶縁フィルムが記載されているといえる。 b 図2、図3によれば、タブ封止用絶縁フィルム1は、正極タブ21、負極タブ22と外装材23との間に配置されていることが見て取れる。そして、段落【0062】に「袋状物のシール部23d、23dによって、タブ21、22をタブ封止用絶縁フィルム1、1を介して挟み込んだ状態で、シール部23d、23dの全域を互いに熱溶着する」との記載によれば、タブ封止用絶縁フィルム1は、袋状物のシール部23d、23dによって熱溶着されるといえる。 よって、タブ封止用絶縁フィルム1は、正極タブ21、負極タブ22と外装材23との間に配置され、袋状物のシール部23dによって熱溶着されるといえる。 c 段落【0042】、【0043】によれば、タブ封止用絶縁フィルム1は、ベース樹脂層2と、ベース樹脂層2における外装材23側の面に積層される外側樹脂層3と、ベース樹脂層2におけるタブ21(22)側の面に積層される内側樹脂層4とからなる積層構成である。 d 段落【0076】、【0079】の【表2】によれば、実施例7であるタブ封止用絶縁フィルム1において、ベース樹脂層は、厚みが40μmであり、樹脂組成物Dからなり、MFRが0.5g/10分であり、融点が165℃であり、外側樹脂層及び内側樹脂層は、厚みが30μmであり、樹脂組成物Fからなり、MFRが3.2g/10分であり、融点が134℃である。 そして、段落【0065】によれば、樹脂組成物Dは、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(無水マレイン酸グラフト量0.3質量%)10質量部、ホモポリプロピレン樹脂(MFR:0.4g/10分)89質量部、エチレン-プロピレンラバー(EPR)1質量部を2軸押出機で230℃の樹脂温度で溶融混練して得られたものであり、樹脂組成物Fは、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(無水マレイン酸グラフト量0.2質量%)75質量部、エチレン-プロピレンラバー(EPR)25質量部を2軸押出機で230℃の樹脂温度で溶融混練して得られものである。 (ウ)よって、甲第1号証Aには、実施例7のタブ封止用絶縁フィルム1に基づく次の発明(以下、「甲1発明A」という。)が記載されている。 「正極と負極とが、電解質部を介して積層されて構成される電気化学素子が袋状物である外装材に収容される2次電池に使用されるタブ封止用絶縁フィルムであって、 タブ封止用絶縁フィルムは、正極タブ、負極タブと外装材との間に配置され、袋状物のシール部によって熱溶着され、 タブ封止用絶縁フィルムは、ベース樹脂層と、ベース樹脂層における外装材側の面に積層される外側樹脂層と、ベース樹脂層におけるタブ側の面に積層される内側樹脂層とからなる積層構成であり、 ベース樹脂層は、厚みが40μmであり、樹脂組成物Dからなり、MFRが0.5g/10分であり、融点が165℃であり、 外側樹脂層及び内側樹脂層は、厚みが30μmであり、樹脂組成物Fからなり、MFRが3.2g/10分であり、融点が134℃であり、 樹脂組成物Dは、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(無水マレイン酸グラフト量0.3質量%)10質量部、ホモポリプロピレン樹脂(MFR:0.4g/10分)89質量部、エチレン-プロピレンラバー(EPR)1質量部を2軸押出機で230℃の樹脂温度で溶融混練して得られ、 樹脂組成物Fは、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(無水マレイン酸グラフト量0.2質量%)75質量部、エチレン-プロピレンラバー(EPR)25質量部を2軸押出機で230℃の樹脂温度で溶融混練して得られた、 2次電池に使用されるタブ封止用絶縁フィルム。」 イ 甲第2号証Aについて (ア)甲第2号証A(日笠茂樹・甲加晃一、[総合論文〕ポリプロピレン複合材料の力学特性に関するフィラー添加の影響,高分子論文集、Vol,71、No.6、(Jun,2014)、pp.263-271)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。) 「プラスチック材料では、力学特性を改善するために異種材料との複合化が有効である。例えば、フィラー添加は弾性率を向上させる1)2)。・・・一方、エラストマーの添加は衝撃強度を向上させる。・・・(中略)・・・。 これら複合化による力学特性の変化に関して、ポリプロピレン(PP)をマトリックスとして多くの研究がなされている。Longら3),4)は、PPにフィラーとしてタルクを、エラストマーとしてポリ(エチレン-co-プロピレン)(EPR)あるいはポリスチレン-block-ポリ(エチレン-co-ブテン-block-ポリスチレン(SEBS)を添加した複合材料に関して、複合化による力学特性の変化を報告している。」(263頁左欄2ないし末行) 「そこで本報では、PPにエラストマーを添加して衝撃破壊状態を脆性から延性へとコントロールし、その各々の破壊状態においてフィラー添加が各種の力学特性に及ぼす影響について総合的に論ずる。」(264頁左欄10ないし13行) 「2 実験方法 2.1 材料 マトリックスとして、アイソタクチックPP(PM600A、メルトインデックス(MI)=8、サンアロマー(株))を用いた。また、マトリックス相の衝撃破壊状態をコントロールするためのエラストマーとしてSEBS(試作品F-15、スチレン含量18wt%、分子量65,000、完全水添、旭化成ケミカルズ(株))を用いた。 ・・・(中略)・・・。 2.2 試料調整 複合材料の調製を二軸押出機を用いて行った。PP、SEBS及びCaCo3を二軸押出機(TEX30α、L/D=42、日本製鋼所(株))に投入して190℃、200rpmで混練し、複合材料を得た。」(264頁左欄19行ないし下から6行) 「2.3 力学特性試験 力学特性試験を、温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室内で行った。・・・(中略)・・・。シャルピー衝撃試験を、JIS K7111-1に準じて衝撃試験機(DG-UB、東洋精機製作所(株)製)を用いて行った。」(264頁右欄1ないし14行) 「3.3 衝撃強度 筆者らは、既報11)にて、PPにエラストマーであるSEBSをブレンドして衝撃破壊強度を脆性から延性へとコントロールしたポリマーに粒子径の異なるCaCO3をフィラーとして添加した場合、フィラー添加の衝撃強度への影響がポリマーの衝撃破壊状態およびフィラー粒子径に大きく依存することを明らかとした。 この挙動をTable 111)とした。これは、PP/SEBS=1.0/0(v/v)(シャルピー衝撃強度=1.8kJ・m-2、脆性破壊)、0.9/0,1(衝撃強度=4.8kJ・m-2、脆性破壊)、0.8/0.2(衝撃強度=32.4kJ・m-2、延性破壊)ブレンドに、平均粒子径0.12から20μmまでのCaCo3を添加した複合材料の衝撃強度である。」(266頁左欄下から20ないし8行) [図:0001425792000004.jpg] 「また、既報11)では、フィラー量についても検討し、Figure 4の結果を得た。これは、PP/SEBS=1.0/0(v/v)、0.9/0.1、0.8/0.2ブレンドに、平均粒子径0.12、0.9、2.5、3.0および20μmのCaCO3を添加した複合材料の衝撃強度である。・・・(中略)・・・。さらに、延性破壊を示すPP/SEBS=0.8/0.2ブレンドをポリマーとして用いた場合(c)、粒子径2.5μm以下のCaCO3が衝撃強度を顕著に向上させた。」(267頁左欄下から22ないし6行) [図:0001425792000005.jpg] (イ)上記(ア)によれば、甲第2号証Aには、以下の技術(以下、「甲第2号証Aに記載された技術」という。)が記載されているといえる。 「ポリプロピレン(PP)とエラストマーであるポリスチレン-block-ポリ(エチレン-CO-ブテン-block-ポリスチレン(SEBS)を0.8:0.2の割合でブレンドした複合材料のシャルピー衝撃強度は32.4kJ・m-2であること。」 ウ 甲第3号証Aについて (ア)甲第3号証A(特開2016-91939号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。) 「【0001】 本発明は、端子用樹脂フィルム、それを用いたタブ及び蓄電デバイスに関する。 【背景技術】 【0002】 近年、携帯機器の小型化や自然発電エネルギーの有効活用の要求が増しており、より高い電圧が得られ、エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池(蓄電デバイスの一種)の研究開発が行われている。」 「【0027】 図1に示した蓄電デバイス10は、リチウムイオン二次電池であり、蓄電デバイス本体11と、包装材13と、一対の金属端子14(タブリード)と、端子用樹脂フィルム16(タブシーラント)と、を有する。 【0028】 蓄電デバイス本体11は、充放電を行う電池本体である。包装材13は、蓄電デバイス本体11の表面を覆うと共に、端子用樹脂フィルム16の一部と接触するように配置されている。」 「【0040】 図1及び図3に示すように、一対(図1の場合、2つ)の金属端子14は、金属端子本体14-1と、腐食防止層14-2と、を有する。一対の金属端子本体14-1のうち、一方の金属端子本体14-1は、蓄電デバイス本体11の正極と電気的に接続されており、他方の金属端子本体14-1は、蓄電デバイス本体11の負極と電気的に接続されている。一対の金属端子本体14-1は、蓄電デバイス本体11から離間する方向に延在しており、その一部が包装材13から露出されている。一対の金属端子本体14-1の形状は、例えば、平板形状とすることができる。」 「【0045】 図3に示すように、端子用樹脂フィルム16は、金属端子14の一部の外周面を覆うように配置されている。本実施形態において、端子用樹脂フィルム16は、金属端子14の外周側面と接触する第1の最外層31と、包装材13と接触する第2の最外層32と、第1の最外層31と第2の最外層32との間に配置された中間層33と、が積層された構成とされている。なお、端子用樹脂フィルム16は、1層又は2層で構成されていてもよく、4層以上で構成されていてもよい。」 「【0056】 第2の最外層32は、包装材13と融着されることで、包装材13内部を密封する機能を有する。第2の最外層32は、包装材13との密着性の観点から、上述した第1の最外層31と同様の構成とすることが好ましい。」 「【0109】 (実施例1) <タブの作製> 図3を参照して、実施例1のタブ(言い換えれば、金属端子14(タブリード)及び一対の端子用樹脂フィルム16(タブシーラント)よりなる構造体)の作製方法について説明する。 ・・・(中略)・・・。 【0111】 次に、端子用樹脂フィルム16を以下の通り作製した。端子用樹脂フィルム16の作製に当たり、第1の最外層に融点140℃のランダム系酸変性ポリプロピレン(エチレン含有量:4質量%、重量平均分子量(Mw):16万、MFR:7g/10min、無水マレイン酸をグラフト変性)を用い、中間層に融点162℃のブロック系ポリプロピレン(ホモPP中にEPR及びPEが島状に分散したもの、PE含有量:1質量%、重量平均分子量:22万、MFR:1g/10min)を用い、第2の最外層に第1の最外層と同一の融点140℃のランダム系酸変性ポリプロピレンを用いた。 【0112】 次いで、住友重機モダン社製のインフレーション式フィルム押出製造装置(Co-OI型)に、第1の最外層の母材、中間層の母材、及び第2の最外層の母材をセットし、該フィルム押出製造装置により、上記3つの母材を押し出すことで積層フィルム(端子用樹脂フィルム16の母材となるフィルム)を作製した。このとき、上記積層フィルムは、第1の最外層の厚さが33μm、中間層の厚さが34μm、第2の最外層の厚さが33μmとなるように形成した。また、第1の最外層の母材、中間層の母材、及び第2の最外層の母材の溶融温度は210℃とし、ブロー比を2.2とした。 ・・・(中略)・・・。 【0114】 その後、2枚の端子用樹脂フィルム16間に、金属端子14を挟み込み、2枚の端子用樹脂フィルム16を200℃、0.3MPaで5秒間加熱加圧し、金属端子14と2枚の端子用樹脂フィルム16とを熱融着させることで、金属端子14及び2枚の端子用樹脂フィルム16よりなるタブ(端子用樹脂フィルム16のはみ出し部の幅L:3mm)を作製した。このとき、端子用樹脂フィルム16は、第1の最外層が金属端子14側となるように配置した。 「【0140】 次いで、上記包装材13の長辺の中点で2つ折りし、長さ45mmの2つ折り部の一方に、実施例及び比較例で作製したタブを挟んで、ヒートシールすることで、包装材13とタブとを融着させた。このとき、ヒートシールの条件としては、加熱温度を190℃、処理時間を5秒とした。」 「【図1】 [図:0001425792000006.jpg] 」 「【図3】 [図:0001425792000007.jpg] ] (イ)甲第3号証Aの上記記載事項によれば、次のことがいえる。 a 段落【0001】、【0002】によれば、甲第3号証Aには、二次電池に用いられる端子用樹脂フィルムが記載されているといえる。 また、段落【0027】、【0028】によれば、二次電池は、包装材に表面が覆われ、充放電を行う電池本体である蓄電デバイス本体を有する。 よって、甲第3号証Aには、包装材に表面が覆われ、充放電を行う電池本体である蓄電デバイス本体を有する二次電池に用いられる端子用樹脂フィルムが記載されているといえる。 b 図1、図3によれば、端子用樹脂フィルム16は、一方の金属端子14及び他方の金属端子14と包装材13との間に配置されていることが見て取れる。また、段落【0040】によれば、一方の金属端子は、蓄電デバイス本体11の正極と電気的に接続され、他方の金属端子は、蓄電デバイス本体11の負極と電気的に接続されている。 また、段落【0045】に「本実施形態において、端子用樹脂フィルム16は、・・・と、包装材13と接触する第2の最外層32と、・・・と、が積層された構成とされている。」と、段落【0056】に「第2の最外層32は、包装材13と融着される」と記載されているから、端子用樹脂フィルム16は包装材13と融着されるといえる。 よって、甲第3号証Aに記載された端子用樹脂フィルム16は、蓄電デバイス本体11の正極と電気的に接続された一方の金属端子14及び蓄電デバイス本体11の負極と電気的に接続されている他方の金属端子14と包装材13との間に配置され、包装材13と融着されるといえる。 c 段落【0045】によれば、端子用樹脂フィルム16は、金属端子14の外周側面と接触する第1の最外層31と、包装材13と接触する第2の最外層32と、第1の最外層31と第2の最外層32との間に配置された中間層33と、が積層された構成とされている。 d 段落【0109】、【0111】、【0112】によれば、実施例1の端子用樹脂フィルムにおいて、第1の最外層は、融点140℃のランダム系酸変性ポリプロピレン(エチレン含有量:4質量%、重量平均分子量(Mw):16万、MFR:7g/10min、無水マレイン酸をグラフト変性)が用いられ、中間層は、融点162℃のブロック系ポリプロピレン(ホモPP中にEPR及びPEが島状に分散したもの、PE含有量:1質量%、重量平均分子量:22万、MFR:1g/10min)が用いられ、第2の最外層は第1の最外層と同一の融点140℃のランダム系酸変性ポリプロピレンが用いられ、第1の最外層の厚さは33μm、中間層の厚さは34μm、第2の最外層の厚さは33μmである。 e 段落【0114】、【0140】によれば、実施例1では、2枚の端子用樹脂フィルム16間に、金属端子14を挟み込み、熱融着させたタブを作製し、包装材13にタブを挟んでヒートシールすることが記載されている。 (ウ)よって、甲第3号証Aには、実施例1の端子用樹脂フィルムに基づく次の発明(以下、「甲3発明A」という。)が記載されている。 「包装材に表面が覆われ、充放電を行う電池本体である蓄電デバイス本体を有する二次電池に用いられる端子用樹脂フィルムであって、 端子用樹脂フィルムは、蓄電デバイス本体の正極と電気的に接続された一方の金属端子及び蓄電デバイス本体の負極と電気的に接続されている他方の金属端子と包装材との間に配置され、包装材と融着され、 端子用樹脂フィルムは、金属端子の外周側面と接触する第1の最外層と、包装材と接触する第2の最外層と、第1の最外層と第2の最外層との間に配置された中間層と、が積層された構成であり、 第1の最外層は、融点140℃のランダム系酸変性ポリプロピレン(エチレン含有量:4質量%、重量平均分子量(Mw):16万、MFR:7g/10min、無水マレイン酸をグラフト変性)が用いられ、厚さは33μmであり、 中間層は、融点162℃のブロック系ポリプロピレン(ホモPP中にEPR及びPEが島状に分散したもの、PE含有量:1質量%、重量平均分子量:22万、MFR:1g/10min)が用いられ、厚さが34μmであり、 第2の最外層は、第1の最外層と同一の融点140℃のランダム系酸変性ポリプロピレンが用いられ、厚さが33μmであり、 2枚の端子用樹脂フィルム間に、金属端子を挟み込み、熱融着させたタブを作製し、包装材にタブを挟んでヒートシールされる、 端子用樹脂フィルム。」 エ 甲第4号証Aについて (ア)甲第4号証A(特開2012-17417号公報)には、以下の記載がある(なお、下線は当審で付与した。) 「【0001】 本発明は、保護フィルム及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、特に光学部品の表面保護に好適に用いられる保護フィルム及びその製造方法に関する。」 「【0045】 ・・・(前略)・・・。 <他の樹脂> ・・・(中略)・・・。 B-PP-B:ブロック-ポリプロピレン-B(サンアロマー(株)製、品番:PC480A、融点=165℃、MFR=2g/10分;230℃時、エチレン含量=11モル%)」 (イ)上記(ア)によれば、甲第4号証Aには、以下の技術(以下、「甲第4号証Aに記載された技術」という。)が記載されていると言える。 「サンアロマー(株)製の品番PC480Aである樹脂は、融点=165℃、MFR=2g/10分;230℃時、エチレン含量=11モル%であること。」 オ 甲第5号証Aについて (ア)甲第5号証A(国際公開第2015/008826号)には、以下の記載がある(なお、下線は当審で付与した。) 「[0001] 本発明は、二次電池用端子被覆樹脂フィルム、より詳しくは、金属端子への密着性が良好かつ安定した二次電池用端子被覆樹脂フィルム、およびこの樹脂フィルムを用いた二次電池用タブ部材ならびに二次電池に関する。 ・・・(中略)・・・ [0004] 図8は、タブ153を示す斜視図である。タブ153は、金属端子であるリード154と、リード154の外周面の一部を覆う二次電池用端子被覆樹脂フィルム155とを有している。二次電池用端子被覆樹脂フィルムは「タブシーラント」とも呼ばれるため、本明細書では、以降、二次電池用端子被覆樹脂フィルムを「タブシーラント」と称することがある。」 「[0037] 本実施形態のタブシーラントおよび電池パックについて、実施例および比較例を用いてさらに説明するが、本実施形態は、実施例の具体的内容にもとづいて何ら限定されるものではない。まず、実施例および比較例に共通の手順について説明する。 (1)タブの作製 ・・・(中略)・・・。 (2)評価用電池パックの作製 本体包装材として、外層:ナイロン(厚さ25μm)、外側接着剤層:ポリエステルポリオール系接着剤(厚さ5μm)、バリア層:アルミニウム箔(厚さ40μm、A8079-O材)、内側接着剤層:酸変性ポリプロピレン(以下PPa、厚さ30μm)、および内層:ポリプロピレン(以下PP、厚さ40μm)の構成の包装材を用いた。 [0038] (実施例1) 最内層にMFRが6.0g/10min、融点が145℃のPPaを用い、中間層にMFRが1.8g/10min、融点が160℃のPPを用い、最外層にMFRが8.0g/10min、融点が153℃であり本体包装材の内層と同一組成(以下、「組成A」と称する。)のPPを用いた。各層の材料樹脂を、三種三層のインフレーション押し出し(以下インフレ法)で積層し、実施例1のタブシーラントを作製した。インフレ法の条件は、溶融温度を210℃およびブロー比を2.2と設定し、各層の膜厚が30μmであり、三層合計の厚さ(総厚)が90μmとなるようにタブシーラントを作成した。膜厚100μmのリードを用いてタブを作製した。」 (イ)上記(ア)によれば、甲第5号証Aには、以下の技術(以下、「甲第5号証Aに記載された技術」という。)が記載されていると言える。 「二次電池用端子被覆樹脂フィルムにおいて、最内層にMFRが6.0g/10min、融点が145℃の酸変性ポリプロピレンを用い、中間層にMFRが1.8g/10min、融点が160℃のポリプロピレンを用い、最外層にMFRが8.0g/10min、融点が153℃であり本体包装材の内層と同一組成(以下、「組成A」と称する。)のポリプロピレンを用いて作成すること。」 (2)当審の判断 ア 甲第1号証Aを主引例とした進歩性について (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と甲1発明Aとを対比する。 (a)甲1発明Aの「袋状物である外装材」は本件発明1の「外装パッケージ」に相当する。そして、甲1発明Aの「2次電池」は、「正極と負極とが、電解質部を介して積層されて構成される電気化学素子が袋状物である外装材に収容される」ものであるから、本件発明1の「外装パッケージで覆われた二次電池」に相当する。 また、甲1発明Aの「正極タブ」及び「負極タブ」は、「正極」と「負極」に接続された「タブ」であることは明らかであり、甲第1号証Aの段落【0084】によれば、「タブ」は「導体」からなる「タブリード材」といえるから、本件発明1の「正極又は負極に接続されたリード導体」に相当する。 してみると、甲1発明Aにおける、「正極と負極とが、電解質部を介して積層されて構成される電気化学素子が袋状物である外装材に収容される2次電池」において、「正極タブ、負極タブと外装材との間に配置され、袋状物のシール部によって熱溶着され」る「タブ封止用絶縁フィルム」は、本件発明1の「外装パッケージで覆われた二次電池において、正極又は負極に接続されたリード導体と前記外装パッケージとの間に配置されて熱シールされる封止フィルム」に相当する。 (b)甲1発明Aの「ベース樹脂層」は、本件発明1の「コア層」に相当し、甲1発明Aの「ベース樹脂層における外装材側の面に積層される外側樹脂層」及び「ベース樹脂層におけるタブ側の面に積層される内側樹脂層」は、本件発明1の「コア層」「の両面」の「スキン層」に相当する。 してみると、甲1発明Aの「タブ封止用絶縁フィルムは、ベース樹脂層と、ベース樹脂層における外装材側の面に積層される外側樹脂層と、ベース樹脂層におけるタブ側の面に積層される内側樹脂層とからなる積層構成であ」ることは、本件発明1の「前記封止フィルムがコア層とその両面にスキン層が形成されてなる3層の多層封止フィルムであ」ることに相当する。 (c)甲1発明Aの「ベース樹脂層」の「融点」は「165℃」、「MFR」は「0.5g/10分」であることは、本件発明1の「コア層」の「融点」の数値範囲「155~166℃」及び「メルトフローレート(MFR)」の数値範囲「0.5~5g/10min」にそれぞれ含まれる。 また、甲1発明Aの「樹脂組成物D」は、「無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(無水マレイン酸グラフト量0.3質量%)10質量部、ホモポリプロピレン樹脂(MFR:0.4g/10分)89質量部、エチレン-プロピレンラバー(EPR)1質量部を2軸押出機で230℃の樹脂温度で溶融混練して得られ」るものであるから、本件発明1の「ポリプロピレン」に相当する。 してみると、甲1発明Aにおいて、「ベース樹脂層は、」「樹脂組成物Dからなり、MFRが0.5g/10分であり、融点が165℃であり」、「樹脂組成物Dは、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(無水マレイン酸グラフト量0.3質量%)10質量部、ホモポリプロピレン樹脂(MFR:0.4g/10分)89質量部、エチレン-プロピレンラバー(EPR)1質量部を2軸押出機で230℃の樹脂温度で溶融混練して得られ」ることは、本件発明1の「前記コア層が、融点が155~166℃であり、メルトフローレート(MFR)が0.5~5g/10minであるポリプロピレンを含」むことに相当する。 (d)甲1発明Aの「外側樹脂層及び内側樹脂層」の「融点」は「134℃」、「MFR」は「3.2g/10分」であることは、本件発明1の「スキン層」の「融点」の数値範囲「120~150℃」及び「メルトフローレート(MFR)」の数値範囲「1~40g/10min」にそれぞれ含まれる。 また、甲1発明Aの「樹脂組成物F」は、「無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(無水マレイン酸グラフト量0.2質量%)75質量部、エチレン-プロピレンラバー(EPR)25質量部を2軸押出機で230℃の樹脂温度で溶融混練して得られ」るものであるから、本件発明1の「ポリプロピレン」に相当する。 してみると、甲1発明Aの「外側樹脂層及び内側樹脂層は、」「樹脂組成物Fからなり、MFRが3.2g/10分であり、融点が134℃であり、」「樹脂組成物Fは、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(無水マレイン酸グラフト量0.2質量%)75質量部、エチレン-プロピレンラバー(EPR)25質量部を2軸押出機で230℃の樹脂温度で溶融混練して得られ」ることは、本件発明1の「スキン層が、融点が120~150℃であり、メルトフローレート(MFR)が1~40g/10minであるポリプロピレンを含」むことに相当する。 (e)本件発明1は「前記コア層のシャルピー強度が15kJ/m 2以上であ」るのに対し、甲1発明Aはその旨特定されていない点で相違する。 (f)甲1発明Aの「ベース樹脂層は、厚みが40μmであり、」「外側樹脂層及び内側樹脂層は、厚みが30μmであ」ることから、「ベース樹脂層」と、「外側樹脂層」と、「内側樹脂層」とが「積層」される「タブ封止用絶縁フィルム」の厚みは100μmであり、本件発明1の「封止フィルムの厚み」の数値範囲「30~300μm」に含まれる。 (g)甲1発明Aの「ベース樹脂層は、厚みが40μmであり、」「外側樹脂層及び内側樹脂層は、厚みが30μmであ」ることから、「ベース樹脂層」の「厚み」に対する「外側樹脂層及び内側樹脂層」の「厚み」の比は0.75(=30μm/40μm)であり、本件発明1の「コア層の厚みに対する前記スキン層の厚みの比」の数値範囲「0.2~5」に含まれる。 (h)以上から、本件発明1と甲1発明Aとは、 「外装パッケージで覆われた二次電池において、正極又は負極に接続されたリード導体と前記外装パッケージとの間に配置されて熱シールされる封止フィルムであって; 前記封止フィルムがコア層とその両面にスキン層が形成されてなる3層の多層封止フィルムであり、 前記コア層が、融点が155~166℃であり、メルトフローレート(MFR)が0.5~5g/10minであるポリプロピレンを含み、 前記スキン層が、融点が120~150℃であり、メルトフローレート(MFR)が1~40g/10minであるポリプロピレンを含み、 前記封止フィルムの厚みが30~300μmであり、かつ 前記コア層の厚みに対する前記スキン層の厚みの比が0.2~5であることを特徴とする封止フィルム。」である点で一致し、 以下の点で相違する。 (相違点1) 本件発明1は「前記コア層のシャルピー強度が15kJ/m 2以上であ」るのに対し、甲1発明Aはその旨特定されていない点。 b 相違点1に対する判断 上記(1)イで述べたように、甲第2号証Aには、「ポリプロピレン(PP)とエラストマーであるポリスチレン-block-ポリ(エチレン-CO-ブテン-block-ポリスチレン(SEBS)を0.8:0.2の割合でブレンドした複合材料のシャルピー衝撃強度は32.4kJ・m-2であること」の技術(「甲第2号証Aに記載された技術」)が記載されている。 しかしながら、甲第2号証Aは、「PPにエラストマーを添加して衝撃破壊状体を脆性から延性へとコントロールし、その各々の破壊状体においてフィラー添加が各種の力学特性に及ぼす影響について総合的に論」じたもの(264頁左欄10ないし13行)であって、甲1発明Aのような「2次電池に使用されるタブ封止用絶縁フィルム」について何等記載されておらず、前記甲第2号証Aに記載された技術の「複合材料」が前記「タブ封止用絶縁フィルム」に適用可能であることを示唆するものではない。 そして、甲1発明Aの「ベース樹脂層」を構成する「樹脂組成物D」は「無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(無水マレイン酸グラフト量0.3質量%)10質量部、ホモポリプロピレン樹脂(MFR:0.4g/10分)89質量部、エチレン-プロピレンラバー(EPR)1質量部を2軸押出機で230℃の樹脂温度で溶融混練して得られ」るものであるところ、該「樹脂組成物D」として甲第2号証Aに記載された技術の「複合材料」をあえて適用する動機もない。 してみると、甲1発明Aに接した当業者は、甲1発明Aの「ベース樹脂層」として甲第2号証Aに記載された技術の「複合材料」を適用し、「前記 コア層のシャルピー強度が15kJ/m 2以上であ」るものとすることは容易に想到し得ないといえる。 したがって、相違点1に係る構成は、甲1発明A及び甲第2号証Aに記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものとは言えない。 c 申立人Aの主張について (a)申立人Aは、異議申立書において概略次のように主張する。 (a-1)甲第1号証の実施例5、6では、べース樹脂層が酸変性ポリプロピレンとEPRを15質量%あるいは30質量%含有しており、これらの実施例は、甲第2号証の上記開示に鑑みると、シャルピー強度が15kJ/m2以上である蓋然性が高い。 なお、甲第1号証の樹脂組成物BおよびCを使用した実施例5、6は、融点が168℃と構成要件Bの155~166℃を満足できていないが、シャルピー強度を維持しつつべース樹脂層の融点を166℃とすることは、当業者であれば容易に想到できる。(34頁下から8行ないし末行) (a-2)甲第1号証の樹脂組成物DおよびEを使用した実施例7、8では、EPRの含有量が1質量%あるいは2質量%であるが、ホモポリプロピレン樹脂が89質量部あるいは83質量部を占めており、融点は165℃あるいは163℃と構成Bを満足している。さらに甲第1号証の請求項2では、「熱可塑性エラストマー1質量%~30質量%」と規定されており、樹脂組成物DおよびEのEPRを、樹脂組成物BおよびCと同様に15質量%あるいは30質量%としたものであれば、シャルピー強度は15kJ/m2以上となる蓋然性が高い。(35頁1ないし7行) (b)そこで、申立人Aの上記主張について検討する。 (b-1)甲第1号証Aの段落【0079】の【表2】によれば、実施例5のベース樹脂層は「樹脂組成物B」からなり、段落【0065】によれば該「樹脂組成物B」は「無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(無水マレイン酸グラフト量0.2質量%)85質量部、エチレン-プロピレンラバー(EPR)15質量部を2軸押出機で230℃の樹脂温度で溶融混練して得られ」る。また、同【表2】によれば、実施例6のベース樹脂層は「樹脂組成物C」からなり、段落【0065】によれば、該「樹脂組成物C」は「無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(無水マレイン酸グラフト量0.2質量%)70質量部、エチレン-プロピレンラバー(EPR)30質量部を2軸押出機で230℃の樹脂温度で溶融混練して得られ」る。 しかしながら、甲第2号証Aには、「ポリプロピレン(PP)とエラストマーであるポリスチレン-block-ポリ(エチレン-co-ブテン)-block-ポリスチレン(SEBS)」を「0.8:0.2」の割合でブレンドした「複合材料」の「シャルピー衝撃強度」が「32.4kJ・m-2」あることが記載されているにとどまり、「無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」85質量部又は70質量部、及び、「エチレン-プロピレンラバー(EPR)」15質量部又は30質量部を、「230℃」で溶融混練して得られるものも、甲第2号証Aに記載された技術の「複合材料」と同等の力学的特性が得られることは何等記載されておらず、また、それを裏付ける証拠も認められない。 してみると、甲第1号証Aに記載された「樹脂組成物B」及び「樹脂組成物C」のシャルピー強度が15kJ/m2以上である蓋然性が高いとまでは言えない。 よって、申立人Aの上記(a-1)の主張は採用できない。 (b-2)甲第1号証Aの段落【0079】の【表2】によれば、実施例7の「ベース樹脂層」は「樹脂組成物D」からなり、段落【0065】によれば該「樹脂組成物D」は「無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(無水マレイン酸グラフト量0.3質量%)10質量部、ホモポリプロピレン樹脂(MFR:0.4g/10分)89質量部、エチレン-プロピレンラバー(EPR)1質量部を2軸押出機で230℃の樹脂温度で溶融混練して得られ」るものであり、また、実施例8の「ベース樹脂層」は「樹脂組成物E」からなり、段落【0065】によれば「無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(無水マレイン酸グラフト量0.3質量%)15質量部、ホモポリプロピレン樹脂(MFR:0.4g/10分)83質量部、2質量部を2軸押出機で230℃の樹脂温度で溶融混練して得られ」る。 ここで、甲第1号証Aの【請求項2】には「酸変性ポリプロピレンおよび酸で変性されていないポリプロピレンからなる第1樹脂成分70質量%~99質量%と、熱可塑性エラストマー1質量%~30質量%と、を含有してなる樹脂組成物からなるベース樹脂層」と記載されており、該「樹脂組成物D」又は「樹脂組成物E」の「エチレンープロピレン」の含有割合を調整できることが示唆されているといえる。 しかし、上記(b-1)で述べた点と同様に、甲第2号証Aには、「無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」、「ホモポリプロピレン樹脂」及び「エチレン-プロピレンラバー(EPR)」を「230℃」の温度で溶融混連して得られるものも、甲第2号証Aに記載された技術の「複合材料」と同等の力学的特性が得られることは何等記載されておらず、また、それを裏付ける証拠も認められない。 してみると、仮に、「樹脂組成物D」又は「樹脂組成物E」の「エチレンープロピレン」の含有割合を調整できたとしても、シャルピー強度が15kJ/m2以上である蓋然性が高いとまでは言えない。 よって、申立人Aの上記(a-2)の主張は採用できない。 d 小括 以上から、本件発明1は、甲第1号証Aに記載された発明、及び、甲第2号証Aに記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない (イ)本件発明2、3、5、7ないし9について 請求項2、3、5、7ないし9は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2、3、5、7ないし9は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2、3、5、7ないし9は、甲第1号証Aに記載された発明、及び、甲第2号証Aに記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (ウ)本件発明6について 請求項6は、請求項1を間接的に引用する請求項であり、本件発明6は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。 ここで、上記(ア)で検討したように、本件発明1と甲1発明Aとは、相違点1の点で相違するところ、相違点1に係る構成は、甲1発明A及び甲第2号証Aに記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものとは言えない。 そして、上記(1)オ(イ)によれば、甲第5号証Aには、「二次電池用端子被覆樹脂フィルムにおいて、最内層にMFRが6.0g/10min、融点が145℃の酸変性ポリプロピレンを用い、中間層にMFRが1.8g/10min、融点が160℃のポリプロピレンを用い、最外層にMFRが8.0g/10min、融点が153℃であり本体包装材の内層と同一組成(以下、「組成A」と称する。)のポリプロピレンを用いて作成する」技術(「甲第5号証Aに記載された技術」)が記載されているものの、甲第5号証Aには、「中間層」のシャルピー強度について記載や示唆は見当たらない。 してみると、甲1発明Aに甲第5号証Aに記載された技術を適用したとしても、相違点1に係る構成を導き出すことはできない。 よって、本件発明6は、甲第1号証Aに記載された発明、甲第2号証Aに記載された技術及び甲第5号証Aに記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 イ 甲第3号証Aを主引例とした進歩性について (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と甲3発明Aとを対比する。 (a)甲3発明Aの「包装材」は、本件発明1の「外装パッケージ」に相当する。そして、甲3発明Aの「二次電池」は、「充放電を行う電池本体である蓄電デバイス本体」が「包装材に表面が覆われ」るから、本件発明1の「外装パッケージで覆われた二次電池」に相当する。 また、甲3発明Aの「電デバイス本体の正極と電気的に接続された一方の金属端子及び蓄電デバイス本体の負極と電気的に接続されている他方の金属端子」は、本件発明1の「正極又は負極に接続されたリード導体」に相当する。 そして、甲3発明Aでは、「端子用樹脂フィルムは、」「包装材と融着され」るところ、「2枚の端子用樹脂フィルム間に、金属端子を挟み込み、熱融着させたタブを作製し、包装材にタブを挟んでヒートシールされる」ことから、「端子用樹脂フィルム」は「ヒートシールされ」て「包装材と融着され」るといえる。 してみると、甲3発明Aにおける、「包装材に表面が覆われ、充放電を行う電池本体である蓄電デバイス本体を有する二次電池」において、「蓄電デバイス本体の正極と電気的に接続された一方の金属端子及び蓄電デバイス本体の負極と電気的に接続されている他方の金属端子本体と包装材との間に配置され」、「ヒートシールされ」て「包装材と融着され」る「端子用樹脂フィルム」は、本件発明1の「外装パッケージで覆われた二次電池において、正極又は負極に接続されたリード導体と前記外装パッケージとの間に配置されて熱シールされる封止フィルム」に相当する。 (b)甲3発明Aの「中間層」は、本件発明1の「コア層」に相当する。そして、甲3発明Aの「端子用樹脂フィルムは、金属端子の外周側面と接触する第1の最外層と、包装材と接触する第2の最外層と、第1の最外層と第2の最外層との間に配置された中間層と、が積層された構成であ」ることから、「第1の最外層」は「中間層」の一方の面側に積層され、「第2最外層」は「中間層」の他方の面側に積層されているといえる。 してみると、甲3発明Aにおいて、「端子用樹脂フィルム」が「中間層」、「中間層」の一方の面側に積層される「第1の最外層」、及び、「中間層」の他方の面側に積層される「第2最外層」からなる構成であることは、本件発明1の「封止フィルムがコア層とその両面にスキン層が形成されてなる3層の多層封止フィルムであ」ることに相当する。 (c)甲3発明Aの「中間層」の「融点」は「162℃」、「MFR」は「1g/10min」であることは、本件発明1の「コア層」の「融点」の数値範囲「155~166℃」及び「メルトフローレート」の数値範囲「0.5~5g/10min」にそれぞれ含まれる。 よって、甲3発明Aの「中間層」は「融点162℃」、「MFR:1g/10min」の「ブロック系ポリプロピレン」が用いられることは、本件発明1の「前記コア層が、融点が155~166℃であり、メルトフローレート(MFR)が0.5~5g/10minであるポリプロピレンを含」むことに相当する。 (d)甲3発明Aの「第2の最外層は、第1の最外層と同一の融点140℃のランダム系酸変性ポリプロピレンが用いられ」ることから、「第1の最下層」及び「第2の最下層」は、「融点140℃」、「MFR:7g/10min」の「ランダム系酸変性ポリプロピレン」が用いられるといえる。 そして、甲3発明Aの「第1の最下層」及び「第2の最下層」の「融点」は「140℃」、「MFR」は「7g/10min」であることは、本件発明1の「スキン層」の「融点」の数値範囲「120~150℃」及び「メルトフローレート」の数値範囲「1~40g/10min」にそれぞれ含まれる。 してみると、甲3発明Aの「第1の最下層」及び「第2の最下層」は、「融点140℃」、「MFR:7g/10min」の「ランダム系酸変性ポリプロピレン」が用いられることは、本件発明1の「前記スキン層が、融点が120~150℃であり、メルトフローレート(MFR)が1~40g/10minであるポリプロピレンを含」むことに相当する。 (e)本件発明1は「前記コア層のシャルピー強度が15kJ/m 2以上であ」るのに対し、甲3発明Aはその旨特定されていない点相違する。 (f)甲3発明Aの「第1の最外層は、」「厚さは33μmであり」、「中間層は、」「厚さが34μmであり」、「第2の最外層は、」「厚さが33μmであ」ることから、「第1の最外層」と、「第2の最外層」と、「第1の最外層と第2の最外層との間に配置された中間層と、が積層された構成であ」る「端子用樹脂フィルム」の厚さは100μmであり、本件発明1の「封止フィルムの厚み」の数値範囲「30~300μm」に含まれる。 (g)甲3発明Aの「第1の最外層は、」「厚さは33μmであり」、「中間層は、」「厚さが34μmであり」、「第2の最外層は、」「厚さが33μmであ」ることから、「中間層」の「厚さ」に対する「第1の最外層」及び「第2の最外層」の「厚さ」の比は0.97(=33μm/34μm)であり、本件発明1の「コア層の厚みに対する前記スキン層の厚みの比」の数値範囲「0.2~5」に含まれる。 (h)以上から、本件発明1と甲3発明Aとは、 「外装パッケージで覆われた二次電池において、正極又は負極に接続されたリード導体と前記外装パッケージとの間に配置されて熱シールされる封止フィルムであって; 前記封止フィルムがコア層とその両面にスキン層が形成されてなる3層の多層封止フィルムであり、 前記コア層が、融点が155~166℃であり、メルトフローレート(MFR)が0.5~5g/10minであるポリプロピレンを含み、 前記スキン層が、融点が120~150℃であり、メルトフローレート(MFR)が1~40g/10minであるポリプロピレンを含み、 前記封止フィルムの厚みが30~300μmであり、かつ 前記コア層の厚みに対する前記スキン層の厚みの比が0.2~5であることを特徴とする封止フィルム。」である点で一致し、 以下の点で相違する。 (相違点2) 本件発明1は「前記コア層のシャルピー強度が15kJ/m 2以上であ」るのに対し、甲3発明Aはその旨特定されていない点。 b 相違点2に対する判断 上記(1)エで述べたように、甲第4号証Aには、「サンアロマー(株)製の品番PC480Aである樹脂は、融点=165℃、MFR=2g/10分;230℃時、エチレン含量=11モル%であること」の技術(「甲第4号証Aに記載された技術」)が記載されている。 しかしながら、甲第4号証Aは、光学部品の表面保護に好適に用いられる保護フィルムに係るものであり、甲3発明Aのような二次電池に用いられる端子用樹脂フィルムについて何等記載されておらず、第4号証Aの樹脂を前記二次電池に用いられる端子用樹脂フィルムに適用可能であることを示唆するものではない。 また、甲3発明Aの「中間層」は「融点162℃のブロック系ポリプロピレン(ホモPP中にEPR及びPEが島状に分散したもの、PE含有量:1質量%、重量平均分子量:22万、MFR:1g/10min)が用い」られているところ、該「中間層」に、甲第4号証Aに記載された技術の「サンアロマー(株)製の品番PC480Aである樹脂」をあえて適用する動機もない。 してみると、甲3発明Aに接した当業者は、甲3発明Aの「中間層」として甲第4号証Aに記載された技術の「サンアロマー(株)製の品番PC480Aである樹脂」を適用し、「前記コア層のシャルピー強度が15kJ/m 2以上であ」るものとすることは、容易に想到し得ないといえる。 したがって、相違点2に係る構成は、甲3発明A及び甲第4号証Aに記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものとは言えない。 c 申立人Aの主張について (a)申立人Aは、異議申立書において概略次のように主張する。 (a-1)甲第4号証の【0045】には「B-PP-B:ブロック-ポリプロピレン-B(サンアロマー(株)製、品番:PC480A、融点=165℃、MFR=2g/10分;230℃時、エチレン含量=11モル%)」 記載されている。 プロピレン:42.081g/mol、エチレン:28.05g/molであるから、甲第4号証に記載のPC480Aの質量換算エチレン含有量は約7.6質量%となる。[(28.05×0.11)/(28.05×0.11+42.081×0.89)=0.00761] また、PC480Aのシャルピー強度は、本件特許権者による関連特許である甲第6号証(特許第7066227号)の令和3年6月22日付意見書によれば、68kJ/m2と記載されている。 甲第3の実施例1のPE含有量:1質量%(【0111】)を、【0060】の示唆により5質量%前後とすることは、何ら困難や阻害要因はなく、当業者であれば適宜行う設計事項に過ぎない。そしてこの場合、PC480Aのエチレン含有量の約7.6質量%%より少ない比率であるが、上記実施例1のシャルピー強度が15kJ/m2以上となる蓋然性は高い言える。 以上より、本件特許発明1は、甲第3号証、及び、甲第4号証に記載の発明に基づき進歩性を有さない。(35頁下から7行ないし36頁11行) (a-2)なお、甲第3号証には、中間層を強化層として機能させるため、段落【0069】に強化層に含有されるフィラーとして「炭酸カルシウム粒子」が挙げられ、更に、「フィラーの平均粒径は0.1~10μm」、「フィラーの含有量は強化層(中間層33)全量を基準として0.5~20質量%」と記載されている。甲第3号証のこれらの記載も、甲第2号証のFig4(c)の結果に鑑みるとシャルピー強度を向上させる要素と考えることもできる。(36頁12ないし18行) (b)そこで、申立人Aの上記主張について検討する。 (b-1)甲3発明Aの「中間層」は「融点162℃のブロック系ポリプロピレン(ホモPP中にEPR及びPEが島状に分散したもの、PE含有量:1質量%、重量平均分子量:22万、MFR:1g/10min)が用い」るものであるところ、甲第4号証Aに記載された技術の「サンアロマー(株)製の品番PC480Aである樹脂」が、ホモポリプロピレン中にエチレン-プロピレンゴム及びポリエチレンが島状に分散した構成であることは甲第4号証Aには何等記載されておらず、また、これを裏付ける証拠も認められない。 してみると、甲第4号証Aに記載された技術の「サンアロマー(株)製の品番PC480Aである樹脂」のシャルピー強度が68kJ/m2であり、甲3発明Aの「中間層」の「PE含有量」を5質量%前後にしたとしても、該「中間層」のシャルピー強度は必ずしも15kJ/m2以上となる蓋然性が高いとまではいえない。 よって、異議申立人の上記主張(a-1)は採用できない。 (b-2)甲第3号証Aの段落【0066】に「中間層33は、・・・、フィラー及び繊維からなる群より選択される少なくとも一種を含む層(強化層)、のうちのいずれか1つ又は2つ以上の要件を満たす層であってもよい。」と、同段落【0069】に「強化層において、フィラーとしては、・・・、炭酸カルシウム粒子等が挙げられる。・・・、フィラーの平均粒径は0.1~10μmであることが好ましく、フィラーの含有量は強化層(中間層33)全量を基準として0.5~20質量%であることが好ましい」とそれぞれ記載されている。 また、甲第2号証AのFig4(c)及び267頁左欄下から22ないし6行によれば、Fig4(c)は、PP/SEBS=0.8/0.2ブレンドブレンドをポリマーとして用い、平均粒子径0.12、0.9、2.5、3.0および20μmのCaCO3を添加した複合材料のCaCO3の体積分率(volume fraction)に対するシャルピー衝撃強度を示している。 しかしながら、甲第2号証AのFig4(c)によれば、平均粒子径0.12、0.9、2.5、3.0および20μmの各CaCO3の体積分率に対するシャルピー衝撃強度の挙動は同じであるとはいえない。(例えば、平均粒子径0.9μmのCaCO3の体積分率が「0.1」の場合、シャルピー衝撃強度は「60kJ/m-2」であるのに対し、平均粒子径20μmのCaCO3の体積分率が「0.1」の場合、シャルピー衝撃強度は「10kJ/m-2」以下であることが見て取れる。)。 さらに、甲第2号証Aには、甲3発明Aのような「ホモPP中にEPR及びPEが島状に分散した」「ブロック系ポリプロピレン」の力学特性について何等記載されておらず、甲3発明Aの「中間層」のシャルピー強度が、甲第2号証AのFig4(c)に示されたシャルピー衝撃強度と同一の挙動を示すことを裏付ける証拠も認められない。 してみると、甲3発明Aの「中間層」に、平均粒径が0.1~10μmであり、含有量が中間層全量を基準として0.5~20質量%であるフィラーを添加したとしても、必ずしも「中間層」のシャルピー強度が15kJ/m2以上となるとは限らない。 よって、異議申立人の上記主張(a-2)は採用できない。 d 小括 以上から、本件発明1は、甲第3号証Aに記載された発明、及び、甲第4号証Aに記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (イ)本件発明2ないし5、7ないし9について 請求項2ないし5、7ないし9は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2ないし5、7ないし9は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし5、7ないし9は、甲第1号証Aに記載された発明、及び、甲第2号証Aに記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (3)まとめ 以上から、請求項1ないし3、5、7ないし9に係る発明は、甲第1号証Aに記載された発明及び甲第2号証Aに記載された技術、又は、甲第3号証Aに記載された発明及び甲第4号証Aに記載された技術に基づいて、請求項4に係る発明は、甲第3号証Aに記載された発明と甲第4号証Aに記載された技術に基づいて、請求項6に係る発明は、甲第1号証Aに記載された発明、甲第2号証Aに記載された技術、及び、甲第5号証Aに記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではないから、請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 2 申立理由2A(同日出願)について (1)同日発明について 申立人が甲第6号証(以下、「甲第6号証A」という。)によって示した発明である特許7066227号の請求項1ないし9に係る発明(以下「同日発明1」ないし「同日発明9」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 外装パッケージで覆われた二次電池において、正極又は負極に接続されたリード導体と前記外装パッケージとの間に配置されて熱シールされる封止フィルムであって; 前記封止フィルムがコア層とその両面にスキン層が形成されてなる3層の多層封止フィルムであり、 前記コア層が、融点が155~166℃であり、メルトフローレート(MFR)が0.5~5g/10minであるポリプロピレンを含み、 前記スキン層が、融点が120~150℃であり、メルトフローレート(MFR)が1~ 7g/10minであるポリプロピレンを含み、 前記コア層のシャルピー強度が15kJ/m2以上であり、 前記封止フィルムの厚みが30~300μmであり、かつ 前記コア層の厚みに対する前記スキン層の厚みの比が0.2~5であることを特徴とする封止フィルム。 【請求項2】 前記コア層が、融点が158~166℃であり、メルトフローレート(MFR)が1~3g/10minであるポリプロピレンを含み、かつ 前記スキン層が、融点が128~150℃であり、メルトフローレート(MFR)が1~7g/10minであるポリプロピレンを含む請求項1に記載の封止フィルム。 【請求項3】 前記スキン層の少なくとも一方の層に含まれるポリプロピレンが、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又は不飽和エポキシ化合物で変性されている請求項1又は2に記載の封止フィルム。 【請求項4】 前記コア層に含まれるポリプロピレンが、ポリプロピレンブロックコポリマーである請求項1~3のいずれかに記載の封止フィルム。 【請求項5】 前記スキン層の一方の層が前記リード導体と接着する金属接着層であり、他方の層が前記外装パッケージと接着するパッケージ接着層であり、 前記金属接着層に含まれるポリプロピレンが、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又は不飽和エポキシ化合物で変性されたポリプロピレンであり、かつ 前記パッケージ接着層に含まれるポリプロピレンが、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又は不飽和エポキシ化合物で変性されたポリプロピレン、又はポリプロピレンランダムコポリマーである請求項3又は4に記載の封止フィルム。 【請求項6】 前記パッケージ接着層に含まれるポリプロピレンの融点が、前記金属接着層に含まれるポリプロピレンの融点よりも高い請求項5に記載の封止フィルム。 【請求項7】 前記金属接着層に含まれるポリプロピレンのMFRが、前記コア層に含まれるポリプロピレンのMFR及び前記パッケージ接着層に含まれるポリプロピレンのMFRのいずれよりも高い請求項5又は6に記載の封止フィルム。 【請求項8】 リード導体の一部の両面が、請求項1~7のいずれかに記載の封止フィルムで被覆されてなるタブリード。 【請求項9】 正極、負極、電解質及びセパレータを含む発電要素と、該発電要素を収容し周縁部が熱シールされてなる外装パッケージと、前記正極又は前記負極に接続されて前記外装パッケージの外側に引き出されるリード導体と、前記外装パッケージと前記リード導体の間に配置されて熱シールされてなる封止フィルムとを有する二次電池であって; 前記外装パッケージが、少なくとも金属層及びシーラント樹脂層を含む多層フィルムからなり、かつ 前記封止フィルムが請求項1~7のいずれかに記載の封止フィルムであることを特徴とする二次電池。」 (2)当審の判断 同日出願に係る2つの発明が同一であるためには、一方を先願とし、他方を後願と仮定したときに両者が同一であり、かつ、他方を先願とし、一方を後願と仮定したときに両者が同一でなければならない。 ア 本件発明1について (ア)始めに、同日発明1を先願発明とし、本件発明1を後願発明として、本件発明1と同日発明1とを対比する。 a 同日発明1の「外装パッケージで覆われた二次電池において、正極又は負極に接続されたリード導体と前記外装パッケージとの間に配置されて熱シールされ」、「コア層とその両面にスキン層が形成されてなる3層の多層封止フィルムであ」り、「厚みが30~300μmであ」る「封止フィルム」は、本件発明1の「封止フィルム」に相当する。 b 同日発明1の「融点が155~166℃であり、メルトフローレート(MFR)が0.5~5g/10minであるポリプロピレンを含」み、「シャルピー強度が15kJ/m2以上であ」る「コア層」は、本件発明1の「コア層」に相当する。 c 同日発明1の「メルトフローレート」は「1~7g/10min」であるところ、本件発明1の「メルトフローレート」の「1~40g/10min」の範囲内に含まれる。 してみると、同日発明1の「融点が120~150℃であり、メルトフローレート(MFR)が1~ 7g/10minであるポリプロピレンを含」む「スキン層」は、本件発明1の「スキン層」に相当する。 d 同日発明1の「コア層の厚みに対する前記スキン層の厚みの比が0.2~5であること」は、本件発明1の「コア層の厚みに対する前記スキン層の厚みの比が0.2~5であること」に相当する。 以上aないしdによれば、本件発明1と同日発明1とは、 「外装パッケージで覆われた二次電池において、正極又は負極に接続されたリード導体と前記外装パッケージとの間に配置されて熱シールされる封止フィルムであって; 前記封止フィルムがコア層とその両面にスキン層が形成されてなる3層の多層封止フィルムであり、 前記コア層が、融点が155~166℃であり、メルトフローレート(MFR)が0.5~5g/10minであるポリプロピレンを含み、 前記スキン層が、融点が120~150℃であり、メルトフローレート(MFR)が1~40g/10minであるポリプロピレンを含み、 前記コア層のシャルピー強度が15kJ/m2以上であり、 前記封止フィルムの厚みが30~300μmであり、かつ 前記コア層の厚みに対する前記スキン層の厚みの比が0.2~5であることを特徴とする封止フィルム。」 である点で一致し、両者の間に相違するところはない。 したがって、本件発明1は同日発明1と同一である。 (イ)次に、本件発明1を先願発明、同日発明1を後願発明として、同日発明1と本件発明1とを対比する。 a 本件発明1の「外装パッケージで覆われた二次電池において、正極又は負極に接続されたリード導体と前記外装パッケージとの間に配置されて熱シールされ」、「コア層とその両面にスキン層が形成されてなる3層の多層封止フィルムであ」り、「厚みが30~300μmであ」る「封止フィルム」は、同日発明1の「封止フィルム」に相当する。 b 本件発明1の「融点が155~166℃であり、メルトフローレート(MFR)が0.5~5g/10minであるポリプロピレンを含」み、「シャルピー強度が15kJ/m2以上であ」る「コア層」は、同日発明1の「コア層」に相当する。 c 本件発明1の「融点が120~150℃であり、メルトフローレート(MFR)が1~40g/10minであるポリプロピレンを含」む「スキン層」と、同日発明1の「スキン層」とは、「融点が120~150℃であるポリプロピレンを含」む点で共通する。 ただし、スキン層に含まれるポリプロピレンのメルトフローレートに関し、同日発明1は「1~7g/10min」であるのに対し、本件発明1は「1~40g/10min」である点で相違する。 d 本件発明1の「コア層の厚みに対する前記スキン層の厚みの比が0.2~5であること」は、同日発明1の「コア層の厚みに対する前記スキン層の厚みの比が0.2~5であること」に相当する。 以上aないしdによれば、同日発明1と本件発明1とは、 「外装パッケージで覆われた二次電池において、正極又は負極に接続されたリード導体と前記外装パッケージとの間に配置されて熱シールされる封止フィルムであって; 前記封止フィルムがコア層とその両面にスキン層が形成されてなる3層の多層封止フィルムであり、 前記コア層が、融点が155~166℃であり、メルトフローレート(MFR)が0.5~5g/10minであるポリプロピレンを含み、 前記スキン層が、融点が120~150℃であるポリプロピレンを含み、 前記コア層のシャルピー強度が15kJ/m2以上であり、 前記封止フィルムの厚みが30~300μmであり、かつ 前記コア層の厚みに対する前記スキン層の厚みの比が0.2~5であることを特徴とする封止フィルム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点3) スキン層に含まれるポリプロピレンのメルトフローレートに関し、同日発明1は「1~7g/10min」であるのに対し、本件発明1は「1~40g/10min」である点。 e してみると、スキン層に含まれるポリプロピレンのメルトフローレートに関し、同日発明1と本件発明1の数値範囲は重複する部分が存在するものの、その範囲は異なっており、同日発明1のメルトフローレートの範囲は、本件発明1のメルトフローレートの範囲を包含するものではないから、同日発明1と本件発明1とは同一であるとはいえない。 (ウ)申立人Aは、異議申立書において、「本件特許発明1~9と、本件特許発明の原出願である甲第6号証(特許第7066227号)の請求項1~9とを対比すると、本件特許発明1において「スキン層が、融点が120~150℃であり、メルトフローレート(MFR)が1~40g/10minであるポリプロピレンを含み」と規定しているのに対し、甲第6号証の請求項1において「スキン層が、融点が120~150℃であり、メルトフローレート(MFR)が1~7g/10minであるポリプロピレンを含み」と規定している以外は、完全に同一である。すなわち、本件特許発明1は、スキン層のMFRが「1~7g/10min」である場合を含むため、本件特許発明と甲第6号証に記載の発明は、 同ーの発明について同日に二以上の特許出願があったときに該当する」旨主張する。(43頁1ないし10行) しかしながら、上記(イ)で述べたように、同日発明1のメルトフローレートの範囲は、本件発明1のメルトフローレートの範囲を包含するものではないから、同日発明1と本件発明1とは同一であるとはいえない。 よって、申立人Aの上記主張は採用できない。 イ 本件発明2ないし9について 請求項2ないし9は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2ないし9は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるところ、請求項2ないし9に記載された発明特定事項と、特許7066227号の請求項2ないし9に記載された発明特定事項とは、相違しない。 してみれば、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし9も、同日発明1ないし9と同一であるとはいえない。 ウ まとめ 以上から、請求項1ないし9に係る発明は、同日出願に係る甲第6号証Aに記載された発明と同一ではないから、請求項1ないし9に係る特許は、特許法第39条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。 3 申立理由1B(進歩性)について (1)各甲号証の記載事項 ア 甲第1号証Bについて 申立人Bが提出した甲第1号証B(特開2016-091939号公報)は、申立人Aが提出した甲第3号証Aと同じであり、その記載事項は、上記1(1)ウ(ア)で述べたとおりである。 そして、甲第1号証Bには、上記1(1)ウ(ウ)で述べた「甲3発明A」と同じ構成である発明(以下、「甲1発明B」という。)が記載されている。 イ 甲第2号証Bについて (ア)甲第2号証B(特開2012-64337号公報)には、以下の記載がある。(なお、下線は当審が付与した。) 「【0013】 ところで、上記の特許文献1の電池において、外装体と集電タブ7,8間のシールは、化学的な接着(水素結合力)によるものであり、一般的な低接着力なシール方式と比較した場合、高温環境下及び長期的なシール性の維持という点では一定の効果を有する。しかし、リチウム電池に代表される様な蓄電池では、長期的な使用や異常時に、電池内部でガスが発生するものが多く、このガス発生による電池内圧の上昇に伴い応力が生じる。この応力(膨らみ)に応じて変性樹脂層9,10が変形するクリープを起こして破断(破袋)し、シール性を維持できないという問題がある。特に、特許文献1の構成では、電池の外装体周辺における上下のラミネートフィルムの密閉接着部分が、変性樹脂層9,10であるPP(又はPE)を介して行われているので、ガス発生に伴う応力に応じてPPがクリープを起こして破断する。 【0014】 この破断は特許文献2の電池についても同様に生じる。即ち、特許文献2の電池の周辺部分は、図8に示すように、PPを挟んで接着された上下のラミネートフィルムのAl(アルミニウム)が折り曲げられ、この折り曲げられた先端部分が更に折り返されている状態となっている。このため、電池内部のガス発生に伴う応力が生じた場合、PPがクリープを起こして破断することを遅延できる効果は得られる。しかし、その折り返された部分は、矢印Y1で示すように空間があるため、PPを挟んだAlの構成部分が独立した構成となっているので、上記のクリープ破断を遅延することはできても、クリープ破断そのものを抑止する抗力は無い。このため、更なる時間経過においてはクリープ破断を防止することはできないという問題がある。 【0015】 特許文献3の電池は、外装体が金属であるため、この金属板の厚みが厚い場合にガス発生時の応力に耐え得るが、その金属板の厚みの増加に伴って電池重量が増加するという問題がある。 【0016】 特許文献4及び5の電池は、外装体周辺部がシール樹脂材によりシールされたヒートシール形態であるため、長期的な使用に伴う電池内圧の上昇によるシール樹脂材のクリープによって、シール性が低下し、破断に至るという問題がある。 【0017】 特許文献6の電池は、外装体1aの周辺部をシール樹脂材のヒートシールにより封止した構成、又は、周辺部に絶縁性ガスケットを配置し、かしめ等の圧縮力によって封止する構成となっている。このため、ヒートシールにより封止した構成では長期的な使用に伴う電池内圧の上昇によるシール樹脂材のクリープによって、シール性が低下し、破断に至るという問題がある。また、絶縁性ガスケット等の封止構成では圧縮力を受けている絶縁性ガスケット自身がクリープし、圧縮力が低下することでシール性そのものが低下するという問題がある。また、周辺部を溶接してシール性を向上させることも考えられるが、この場合、溶接機等の設備が必要となるためコスト高となる。 【0018】 本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、発電素子を内蔵する外装体の周辺部を、内部のガス発生に伴う応力に応じたクリープで破断し難くなるように封止することができ、更に、電池全体の重量が増加することなく、コスト高とならないように封止することができる密閉型蓄電池を提供することを目的とする。」 「【0047】 (第1実施形態) 図9は、本発明の第1実施形態に係る密閉型蓄電池の外観構成を示す斜視図、図10は図9に示すB1-B2断面のB1片側部分を示した断面図である。 ・・・(中略)・・・。 【0049】 これらの図に示す密閉型蓄電池100-1は、正負両極に電流取り出し用の正極リード101及び負極リード102が電気的に接続された電極体と電解質とを含む発電要素が凹部に収納された箱型を成し、この箱型の周辺部105から四方外方に突き出たフランジ部103aを有する金属から成る外装体103と、この外装体103の凹部を蓋状に覆ってフランジ部103aに金属接着性樹脂フィルム106を介在して熱接着され、当該凹部を密閉状に封止する金属板104とを備えて構成されている。 ・・・(中略)・・・。 【0051】 本実施形態の特徴は、図10に示すように、外装体103のフランジ部103aに金属接着性樹脂フィルム106を介在して配置されると共にフランジ部103aから四方外方に突き出た金属板104の周辺部を、金属接着性樹脂フィルム106と共にフランジ部103a側に折り返し加工し、この折り返した部分の金属板104と金属製の外装体103のフランジ部103aとを、金属接着性樹脂フィルム106を挟んで熱接着した点にある。」 「【0067】 この構造によれば、フランジ部103aの下面に金属接着性樹脂フィルム106を介して金属板を熱接着した従来構造に比べ、更に、金属板104がフランジ部103aの外方へ突き出され、この突き出し部分がフランジ部103aの上面に折り返されて当該上面に金属接着性樹脂フィルム106を介して熱接着されているので、外装体103のフランジ部103aへの金属板104の接着力が強くなっている。 【0068】 従って、従来構造では、外装体103の凹部内の発電要素からガスが発生し、このガス発生によって凹部内圧が上昇した場合、この応力に応じたクリープで、互いに熱接着されたフランジ部103aと金属板とが剥がれていた。或いは破断していた。しかし、本実施形態構造では、フランジ部103aの下面に熱接着された金属板104がフランジ部103aの上面にも折り返されて熱接着されているので、凹部内圧上昇に伴う応力に対向する力が強くなり、フランジ部103aと金属板104とが剥がれ難くなる。或いは破断し難くなる。しかも、フランジ部103aの下面から外方に突き出た金属板104をフランジ部103aの上面側に折り返して当該上面に金属接着性樹脂フィルム106を介して熱接着するだけなので、電池全体の重量は殆ど増加せず、また、コストも殆ど係らないようにすることができる。」 「【図9】、図10 [図:0001425792000008.jpg] 」 (イ)上記(ア)によれば、甲第2号証Bには、以下の技術(以下、「甲第2号証Bに記載された技術」という。)が記載されていると言える。 「正負両極に電流取り出し用の正極リード及び負極リードが電気的に接続された電極体と電解質とを含む発電要素が凹部に収納された箱型を成し、この箱型の周辺部から四方外方に突き出たフランジ部を有する金属から成る外装体と、この外装体の凹部を蓋状に覆ってフランジ部に金属接着性樹脂フィルムを介在して熱接着され、当該凹部を密閉状に封止する金属板とを備えて構成されている密閉型蓄電池において、外装体のフランジ部に金属接着性樹脂フィルムを介在して配置されると共にフランジ部から四方外方に突き出た金属板の周辺部を、金属接着性樹脂フィルムと共にフランジ部側に折り返し加工し、この折り返した部分の金属板と金属製の外装体のフランジ部とを、金属接着性樹脂フィルムを挟んで熱接着したこと。」 ウ 甲第3号証Bについて (ア)甲第3号証B(『プロダクトデータシート一覧表(射出)1』、『プロダクトデータシート一覧表(射出)2』、『プロダクトデータシート一覧表(フィルム)』、サンアロマー株式会社、2019年10月30日発行(作成日))には、以下の記載がある。 「 [図:0001425792000009.jpg] 」 「 [図:0001425792000010.jpg] 」 (イ)上記(ア)によれば、甲第3号証Bには、以下の技術(以下、「甲第3号証Bに記載された技術」という。)が記載されていると言える。 「サンアロマー株式会社製のブロックコポリマーPM472Wの23℃におけるシャルピー強度が、58kJ/m2であり、ブロックコポリマーPC480Aの23℃におけるシャルピー強度が、68kJ/m2であること。」 エ 甲第4号証Bについて (ア)甲第4号証B(特開2002-245988号公報)には、以下の記載がある(なお、下線は当審で付与した。) 「【請求項1】 少なくとも金属箔および熱融着性樹脂フィルムを有する外装フィルム材と、この外装フィルム材内に収納され、正極、負極および正負極間に介在されたセパレータもしくは固体電解質層を有する扁平状の電極群と、この電極群の正極および負極にそれぞれ接続され、前記外装フィルム材から外部に延出される外部リードとを備え、前記外装フィルム材の熱融着性樹脂フィルム同士および前記外部リードの延出部においてその外部リードの両面に絶縁樹脂フィルムを挟んで熱融着することにより前記電極群を封口した薄型電池において、 前記絶縁樹脂フィルムは、前記外部リードと接する第1樹脂フィルムと前記外部リードに接しない第2樹脂フィルムとを含む2層以上の多層構造からなり、前記第2樹脂フィルムは前記第1樹脂フィルムに比べて高い融点を有することを特徴とする薄型電池。」 「【0052】すなわち、前記外部リードと前記絶縁樹脂フィルムとを密着させるためには外部リード周辺の樹脂フィルムを十分に軟化させて外部リードの形状に馴染ませる必要がある。このためには、外部リードと接する樹脂フィルム(第1樹脂フィルム)は融着時に樹脂フィルムの流れ特性、つまりMFRがある程度高いことが要求される。」 (イ)上記(ア)によれば、甲第4号証Bには、以下の技術(以下、「甲第4号証Bに記載された技術」という。)が記載されていると言える。 「少なくとも金属箔および熱融着性樹脂フィルムを有する外装フィルム材と、この外装フィルム材内に収納され、正極、負極および正負極間に介在されたセパレータもしくは固体電解質層を有する扁平状の電極群と、この電極群の正極および負極にそれぞれ接続され、前記外装フィルム材から外部に延出される外部リードとを備え、前記外装フィルム材の熱融着性樹脂フィルム同士および前記外部リードの延出部においてその外部リードの両面に絶縁樹脂フィルムを挟んで熱融着することにより前記電極群を封口した薄型電池において、前記絶縁樹脂フィルムは、前記外部リードと接する第1樹脂フィルムと前記外部リードに接しない第2樹脂フィルムとを含む2層以上の多層構造からなり、前記第2樹脂フィルムは前記第1樹脂フィルムに比べて高い融点を有し、前記外部リードと前記絶縁樹脂フィルムとを密着させるためには外部リード周辺の樹脂フィルムを十分に軟化させて外部リードの形状に馴染ませる必要があるため、外部リードと接する樹脂フィルム(第1樹脂フィルム)は融着時に樹脂フィルムの流れ特性、つまりMFRがある程度高いことが要求されること。」 (2)当審の判断 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明Bとを対比する。 ここで、上記(1)アで述べたように、甲1発明Bは甲3発明Aを同じ構成であることから、上記1(2)イ(ア)a(h)を踏まえれば、本件発明1と甲1発明Bとは、 「外装パッケージで覆われた二次電池において、正極又は負極に接続されたリード導体と前記外装パッケージとの間に配置されて熱シールされる封止フィルムであって; 前記封止フィルムがコア層とその両面にスキン層が形成されてなる3層の多層封止フィルムであり、 前記コア層が、融点が155~166℃であり、メルトフローレート(MFR)が0.5~5g/10minであるポリプロピレンを含み、 前記スキン層が、融点が120~150℃であり、メルトフローレート(MFR)が1~40g/10minであるポリプロピレンを含み、 前記封止フィルムの厚みが30~300μmであり、かつ 前記コア層の厚みに対する前記スキン層の厚みの比が0.2~5であることを特徴とする封止フィルム。」である点で一致し、 以下の点で相違する。 (相違点4) 本件発明1は「前記コア層のシャルピー強度が15kJ/m 2以上であ」るのに対し、甲1発明Bはその旨特定されていない点。 (イ)相違点4に対する判断 a 上記(1)イで述べたように、甲第2号証Bには「甲第2号証Bに記載された技術」が記載されているものの、封止フィルムを構成するコア層のシャルピー強度が15kJ/m 2以上とすることは記載されていない。 してみれば、甲1発明Bに甲第2号証Bに記載された技術を適用したとしても、相違点4に係る構成を導き出すことはできない。 b 上記(1)ウで述べたように、甲第3号証Bには、「サンアロマー株式会社製のブロックコポリマーPM472Wの23℃におけるシャルピー強度が、58kJ/m2であり、ブロックコポリマーPC480Aの23℃におけるシャルピー強度が、68kJ/m2であること」との技術(「甲第3号証Bに記載された技術」)が記載されている。 しかしながら、甲第3号証Bは、サンアロマー株式会社の製品カタログにすぎず、甲1発明Bのような二次電池に用いられる端子用樹脂フィルムに適用可能であることは何等記載も示唆もない。 さらに、甲1発明Bの「中間層」は「融点162℃のブロック系ポリプロピレン(ホモPP中にEPR及びPEが島状に分散したもの、PE含有量:1質量%、重量平均分子量:22万、MFR:1g/10min)が用い」られているところ、これに代え、該「中間層」として、多数の候補が存在する樹脂フィルムの中から甲第3号証Bに記載された技術の「ブロックコポリマーPM472W」や「ブロックコポリマーPC480A」をあえて採用する動機付けもない。 してみると、甲1発明Bに接した当業者は、甲1発明Bの「中間層」に代え、甲第3号証Bに記載された技術の「ブロックコポリマーPM472W」や「ブロックコポリマーPC480A」を採用することは、容易に想到し得ないといえる。 c したがって、相違点4に係る構成は、甲1発明B、甲第2号証Bに記載された技術、及び、甲第3号証Bに記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものとは言えない。 (ウ)申立人Bの主張について a 申立人Bは、異議申立書において概略次のように主張する。 (a)封止フィルムが破壊されるのを防ぐという課題は、甲第2号証の【0013】から【0018】に記載されているように二次電池の封止材に必要とされる周知の課題である。 甲第2号証の発明はその課題を解決するために「密閉型蓄電池において、前記熱接着される部分は、前記フランジ部又は前記金属板である金属層と、前記金属接着性樹脂フィルムとが交互に積層されて互いに熱接着される」という新たな構成を用いることにより解決している。(24頁下から11ないし6行) (b)甲第3号証の記載事項1にはブロックコポリマーPM472W、記載事項2にはブロックコポリマーPC480Aが記載され、これらの23℃におけるシャルピー強度は、それぞれ58、68kJ/m2である。この表にはこれらのブロックコポリマーがポリプロピレンブロックコポリマーであることは、参考資料1から明らかなようにサンアロマー社はポリプロピレンの専業メーカーであるから当然のこととして記載されていないだけである。 さらに注目すべきは、メルトフローレート(MFR、g/10min)とシャルピー強度の関係である。 ここでメルトフローレートとシャルピー強度の関係をわかりやすく整理したものが下記の表である。 [図:0001425792000011.jpg] これらを見れば、メルトフローレートの低いブロックポリプロピレンは23℃シャルピー強度が大きいことがわかる。 本件特許発明1では、コア層はメルトフローレート(MFR)が0.5~5g/10minであるポリプロピレンを含み、コア層のシャルピー強度が15kJ/m2以上であるとしているが、MFRが0.5~5g/10minと低いポリプロピレンはシャルピー強度が大きい、つまり15kJ/m2以上であることは公知の事項であって、相違点1の構成は単にポリプロピレンの公知の性質を記載したものにすぎない。 してみれば、相違点1に係る構成は、封止フィルムが破壊されるのを防ぐという周知の課題するために強度の大きなフィルムを用いるものにすぎないし、用いられるポリプロピレン樹脂フィルム自体も公知のものにすぎないのであるから、当業者が容易になし得たものである。(25頁1行ないし26頁4行) b そこで、上記申立人Bの主張について検討する。 (a)主張(a)について (a-1)上記(イ)aで検討したように、甲1発明Bに甲第2号証Bに記載された技術を適用したとしても、相違点4に係る構成を導き出すことはできない。 (a-2)また、甲第2号証Bの段落【0002】、同段落【0013】によれば、特許文献1の電池において、集電タブ7,8と外装体内面との間に介在され熱融着される熱融着性の変性樹脂層9,10が、電池内部でのガス発生に伴う応力に応じて破断するという問題が記載されているといえる。 しかしながら、同段落【0004】ないし【0011】において、特許文献1以外に、「変性樹脂層9,10」を含まない電池構成が記載された特許文献2ないし特許文献6が提示され、同段落【0014】、【0016】、【0017】において、外装体の周辺部のシール部分の破断について説明され、段落【0018】には「本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、発電素子を内蔵する外装体の周辺部を、内部のガス発生に伴う応力に応じたクリープで破断し難くなるように封止することができ、更に、電池全体の重量が増加することなく、コスト高とならないように封止することができる密閉型蓄電池を提供することを目的とする。」(下線は当審が付与。)と記載されていることからすれば、甲第2号証Bは、封止フィルムが破壊されるのを防ぐという課題が周知であることを裏付ける証拠として妥当なものとはいえない。 よって、申立人Bの主張(a)は採用できない。 (b)主張(b)について (b-1)上記(イ)bで検討したように、甲第3号証Bは、サンアロマー株式会社の製品カタログにすぎず、二次電池に用いられる端子用樹脂フィルムについて何等記載されていない。 また、甲1発明Bの「中間層」は「融点162℃のブロック系ポリプロピレン(ホモPP中にEPR及びPEが島状に分散したもの、PE含有量:1質量%、重量平均分子量:22万、MFR:1g/10min)が用いられ」ているところ、甲第3号証Bに記載の「ブロックコポリマー」が、ホモポリプロピレン中にエチレン-プロピレンゴム及びポリエチレンが縞状に分散している構造であることは記載されておらず、該「中間層」として、甲第3号証Bに記載の「ブロックコポリマー」をあえて適用する動機もない。 (b-2)申立人Bは、MFRが0.5~5g/10minと低いポリプロピレンはシャルピー強度が大きい、つまり15kJ/m2以上であることは公知の事項である旨主張する。 しかしながら、仮に、サンアロマー社製のブロックコポリマーにおいて、MFRとシャルピー強度との間にこのような関連性があるとしても、上記(b-1)で述べたように、サンアロマー社製のブロックコポリマーを利用する動機がないのであるから、甲1発明Bに甲第3号証Bに記載された技術を適用することは用業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、申立人Bの主張(b)も採用できない。 (エ)小括 以上から、本件発明1は、甲第1号証Bに記載された発明、甲第2号証Bに記載された技術、及び、甲第3号証Bに記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 イ 本件発明2ないし5について 請求項2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2ないし5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし5は、甲第1号証Bに記載された発明、甲第2号証Bに記載された技術、及び、甲第3号証Bに記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 ウ 本件発明6ないし9について (ウ)本件発明6について 請求項6ないし9は、請求項1を間接的に引用する請求項であり、本件発明6ないし9は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。 ここで、上記アで検討したように、本件発明1と甲1発明Bとは、相違点4の点で相違するところ、相違点4に係る構成は、甲1発明B、甲第2号証Bに記載された技術、及び、甲第3号証Bに記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たものとは言えない。 そして、上記(1)エ(イ)によれば、甲第4号証Bには「甲第4号証Bに記載された技術」が記載されているものの、甲第4号証Bには、「コア層」のシャルピー強度について記載や示唆は見当たらない。 してみると、甲1発明Bに甲第4号証Bに記載された技術を適用したとしても、相違点4に係る構成を導き出すことはできない。 よって、本件発明6ない9は、甲第1号証Bに記載された発明、甲第2号証Bに記載された技術、甲第3号証Bに記載された技術、及び、甲第4号証Bに記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 エ まとめ 以上から、請求項1ないし5に係る発明は、甲第1号証Bに記載された発明、甲第2号証Bに記載された技術、及び、甲第3号証Bに記載された技術に基づいて、請求項6ないし9に係る発明は、甲第1号証Bに記載された発明、甲第2号証Bに記載された技術、甲第3号証Bに記載された技術、及び、甲第4号証Bに記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではないから、請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 4 申立理由2B(明確性)について (1)明確性要件について 特許法36条6項2号の定める要件を充足するか否かは、すなわち、発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである 。 以下、この観点に従って検討する。 (2)判断 本件発明1ないし9は前記第2のとおりであって、明確である。請求人は次に示すように主張するが、格別、本件発明1ないし9に第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとすべき点は見当たらない。 (3)申立人Bの主張について ア 申立人Bは、異議申立書において、概略次のように主張する。 (ア)本件特許発明においてコア層のシャルピー強度が15kJ/m2以上であることは本件特許明細書の【0025】に記載されているように本発明の封止フィルム20の最大の特徴の一つである。それにもかかわらず、具体的な測定手段が明細書中に記載されていないのは本件特許発明を不明確なものとしている。 なぜならは、甲第5号証の記載事項1に記載されているように高分子材料のシャルピー衝撃試験で得られた測定値には差が生じることはよく知られた事実である。シャルピー衝撃試験の測定値に影響を与える要因としては、甲第5号証の「3,実験結果」の項に挙げられている「試験片の幅の影響」、「試験片の厚さの影響」、「支点間距離の影響」、「ノッチ深さの影響」、「ノッチ角度の影響」、「ノッチ先端半径の影響」などがある。 しかし、本件特許明細書中にはコア層のシャルピー強度の測定方法や測定試験片のスペックなどについては全く記載がなく、単に測定数値が記載されているにすぎない。甲第5号証に記載があるようにシャルピー衝撃試験では試験片のスペックを正確に定めない限り正確な測定はできないのであるから、本件特許発明1の「コア層のシャルピー強度が15kJ/m2以上であり」という構成は不明確であるといわざるを得ないものである。(30頁下から9行ないし31頁5行) (イ)また、本件特許明細書の【0024】の記載からすると、本件発明者は融点、メルトフローレート、シャルピー強度など本件特許発明1の重要な構成について自ら測定して適切な値を定めたのか否か不明である。そして、カタログに記載されたシャルピー強度についてもどのような測定条件で測定した測定値なのかが記載されていなければ、結局のところその材料のシャルピー強度を正確に知ることはできないものである。(31頁6ないし15行) (ウ)甲第3号証にはシャルピー強度が記載されているが、試験条件が23℃、0℃と-20℃で異なっている。例えば、PM472WやPC480Aは23℃では本件特許発明1の構成を充足しても、0℃や-20℃では充足しない状態となっている。このように試験温度を全く明示せずにシャルピー強度の数値範囲を記載しても何ら明確な記載であるとは言えないものである。(31頁16ないし20行) イ そこで、申立人Bの上記主張について検討する。 (ア)主張(ア)について 本件特許明細書によれば、シャルピー強度の測定機器、測定条件等は何等特定されていないものの、申立人Aが提出した甲第2号証Aの「シャルピー衝撃試験はJIS K71111-1に準じて衝撃試験機(DG-UB,東洋精密製作所(株)製)を用いて行った。」との記載(264頁右欄1ないし14行)によれば、シャルピー衝撃試験はJIS規格で規定され、それに準じて試験を行うことは技術常識といえる。してみると、単に本件特許明細書にシャルピー強度の測定機器や測定条件が記載されていないことをもって、「コア層のシャルピー強度が15kJ/m2以上であ」るとの構成が不明確であるとはまではいえない。 そして、甲第5号証に記載されたシャルピー強度試験に係わらず、一般に試験方法や試験装置により測定値に差が生じることは普通に知られていることであり、シャルピー強度試験においても、試験方法や試験装置器に伴う測定誤差は当業者であれば当然考慮するものである。また、本件発明1の「融点が155~166℃であり、メルトフローレート(MFR)が0.5~5g/10minであるポリプロピレンを含」む「コア層」の「シャルピー強度」が、測定機器や測定条件に起因して「15kJ/m2以上」であるのか否か評価できなくなる程にばらつくことを示す証拠は提出されていない。 してみれば、本件特許明細書にシャルピー強度の測定方法や測定試験片のスペックが記載されていないからといって、正確な測定ができないとはいえない。 よって、申立人Bの上記主張(ア)は採用できない。 (イ)主張(イ)について 本件特許明細書の段落【0024】の「ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー及びポリプロピレンブロックコポリマーは、それぞれ市販されていて、化学組成は明示されていないものの、その融点、メルトフローレート、弾性率、シャルピー強度などはカタログに示されているので、適宜選択して使用することができる。」との記載からすれば、本件発明1の「コア層」に含まれる「ポリプロピレン」も、シャルピー強度が示されたカタログに掲載された市販のものを使用できることが許容されてることは明らかであり、上記(ア)で述べたように、測定条件が記載されていないからといって、正確にシャルピー強度を測定できないとはいえない。 してみると、申立人Bの主張(イ)は採用できない。 (ウ)主張(ウ)について 申立人Aが提出した甲第2号証A(264頁右欄2ないし14行)の「力学特性試験を、温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室内で行った。・・・(中略)・・・。シャルピー衝撃試験を、JIS K7111-1に準じて衝撃試験機(DG-UB、東洋精機製作所(株)製)を用いて行った。」との記載からすれば、シャルピー強度等の力学的な特性を計測するための試験を23℃程度の常温で行うことは技術常識であり、本件特許明細書に記載された「シャルピー強度」も23℃程度の条件で計測された値であると解される。 してみれば、本件特許明細書に試験温度が記載していないからといって、「コア層のシャルピー強度が15kJ/m2以上であ」るとの構成が不明確であるとはまではいえない。 よって、申立人Bの主張(ウ)は採用できない。 (4)まとめ 以上から、請求項1ないし9に係る発明は明確であり、請求項1ないし9に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 第5 むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700286

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