特許異議申立
2025-700248
包装材料、包装体及び包装物品
- 審判番号
- 2025-700248
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-000331
- 登録番号
- 7563639
- 請求日
- 2025年02月28日
- 審決日
- 2026年01月15日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
- 【異議申立人】天野 麻美
- 【異議申立人】渡辺 陽子
- 【異議申立人】三輪 貴幸
- 審判長/審判官
- 審判長 八木 誠
- 審判官 神山 茂樹
- 審判官 金丸 治之
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7563639号発明「包装材料、包装体及び包装物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7563639号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
特許第7563639号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7563639号の請求項1~9に係る特許についての出願(特願2024-331号)は、令和4年9月2日(優先権主張 令和3年9月3日、令和3年9月6日(3件)、令和3年9月21日、令和3年11月26日(2件)、令和3年11月30日)を出願日とする国際出願である特願2022-577735号の一部を令和5年1月27日に新たな特許出願とした特願2023-10918号の一部を令和6年1月4日に新たな特許出願としたものであって、令和6年9月30日にその特許権の設定登録がされ、令和6年10月8日に特許掲載公報が発行された。
本件の特許異議の申立てに係る手続の経緯の概要は、次のとおりである。
令和7年 2月28日 :特許異議申立人天野麻美(以下「申立人1」という。)による請求項1~9に係る特許に対する本件特許異議の申立て
令和7年 4月 1日 :特許異議申立人渡辺陽子(以下「申立人2」という。)による請求項1~9に係る特許に対する本件特許異議の申立て
令和7年 4月 8日 :特許異議申立人三輪貴幸(以下「申立人3」という。)による請求項1~9に係る特許に対する本件特許異議の申立て
令和7年 4月30日 :令和7年4月8日に申立人3から提出された特許異議申立書に対する手続補正書(方式)の提出
令和7年 7月 1日付け:取消理由通知書
令和7年 8月18日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、当該令和7年8月18日に提出された訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和7年 9月 8日 :申立人1による意見書(以下「意見書」という。)の提出
令和7年 9月12日 :申立人3による意見書(以下「意見書」という。)の提出
令和7年8月21日付けで申立人1、申立人2及び申立人3に対して、訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を、期間を指定して行ったものであるが、当該期間内に申立人2からは応答がなかった。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7563639号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された
「X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上である」を、
「X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上75%以下である」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~9も同様に訂正する。)。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~9は、請求項2~9が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~9〕について請求されたものである。
3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「結晶化度」の上限について「75%以下」と限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の明細書の【0055】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~9に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~9を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え、
前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含み、
前記基材層は、厚さが10乃至200μmの範囲内にあり、前記基材層に占める前記ポリエチレンの割合は50質量%以上であり、且つ、X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上75%以下である包装材料。
【請求項2】
前記基材層は、融点が100℃乃至140℃の範囲内にある請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
前記基材層は、密度の異なるポリエチレンフィルムの多層構造からなる請求項1に記載の包装材料。
【請求項4】
前記基材層は着色されている請求項1に記載の包装材料。
【請求項5】
前記基材層に含まれる前記ポリエチレンは、バイオマス由来のポリエチレンである請求項1に記載の包装材料。
【請求項6】
前記基材層に含まれる前記ポリエチレンは、リサイクルされたポリエチレンである請求項1に記載の包装材料。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の包装材料を含んだ包装体。
【請求項8】
スタンディングパウチである請求項7に記載の包装体。
【請求項9】
請求項7に記載の包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~9に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(新規性)
本件発明1~3、7~9は以下の甲2-1(甲3-2)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)取消理由2(進歩性)
本件発明1~9は、以下の甲2-1(甲3-2)に記載された発明、甲2-2(甲3-12)、甲2-3、甲2-4、甲3-6、甲3-8及び甲3-11に記載の事項並びに甲2-5、甲2-6及び甲2-7に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
以下、申立人2及び申立人3の提出した甲第○号証を、それぞれ甲2-○及び甲3-○とする。
甲2-1:特開2020-55158号公報
甲2-2:仁田勇、外1名、「高分子物質の結晶度(II)」、高分子、公益社団法人高分子学会、1956年6月20日、5巻、7号、p.345-352
甲2-3:Tim A.Osswald、外1名、「エンジニアのためのプラスチック材料工学」、初版第1刷、株式会社シグマ出版、1997年11月1日、p.33-37
甲2-4:特開2013-203441号公報
甲2-5:高原淳、「高分子機器分析 小角X線散乱,広角X線回折」、高分子、高分子学会、1991年6月1日、40巻、6号、p.394-397
甲2-6:長尾圭悟、「X線回折装置の最近の進歩」、日本接着学会誌、日本接着学会、2008年5月1日、44巻、5号、p.180-187
甲2-7:特開2020-203971号公報
甲3-6:竹田政民、外5名、「市販ポリエチレンの基礎的物性と機械的性質の関係の研究」、高分子化学、1967年、第24巻、第264号、p.277-284
甲3-8:岩政健司、「ポリエチレン-その用途と物性のコントロール」、化学と教育、1998年、46巻、8号、p.502-505
甲3-11:「広角X線回折による試料延伸時の結晶性変化測定」、[online]、株式会社三井化学分析センター、[2024年1月31日検索]、インターネット<URL:https://www.mcanac.co.jp/images/pdf/1022.pdf>
2 取消理由通知に記載した取消理由についての当審の判断
当審合議体は、上記取消理由で通知した取消理由1及び2によっては、本件発明1~9に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。
(1)引用文献の記載及び引用発明
ア 甲2-1(甲3-2)
(ア)甲2-1(甲3-2)(以下「甲2-1」という。)の記載
甲2-1には、以下の記載がある。(下線は当審で付した。「・・・」は記載の省略を示す。以下同様。)
「【請求項1】
基材と、中間層と、ヒートシール層とを備え、
前記中間層が、蒸着膜および基材本体を備え、
前記基材が、延伸樹脂フィルムであり、
前記基材本体が、延伸樹脂フィルムであり、
前記基材、前記基材本体および前記ヒートシール層が共にポリエチレンにより構成され基材本体ることを特徴とする、積層体。」
「【0001】
本発明は、積層体、包装材料、包装袋およびスタンドパウチに関する。」
「【0006】
本発明者らは、従来ヒートシール層として使用していたポリエチレンを、延伸樹脂フィルムとすることで基材として使用でき、当該基材をポリエチエレンから構成されるヒートシール層と積層して使用することで、十分な強度や耐熱性を有し、かつリサイクル可能な包装材料などを作製することができるとの知見を得た。
さらに、本発明の積層体において、ポリエチレンから構成される延伸樹脂フィルムおよび蒸着膜を備える中間層をさらに設けることにより、そのリサイクル性を維持しつつ、バリア性、特には、酸素バリア性および水蒸気バリア性に優れる包装材料などを作製することができるとの知見を得た。」
「【0044】
また、本発明においては、上記高密度ポリエチレンなどを得るための原料として、化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンを用いてもよい。このようなバイオマス由来のポリエチレンはカーボニュートラルな材料であるため、より一層、環境負荷の少ない包装材料とすることができる。このようなバイオマス由来のポリエチレンは、例えば、特開2013-177531号公報に記載されているような方法にて製造することができる。また、市販されているバイオマス由来のポリエチレン(例えば。ブラスケム社から市販されているグリーンPEなど)を使用してもよい。
【0045】
また、メカニカルリサイクルによりリサイクルされたポリエチレンを使用することもできる。ここで、メカニカルリサイクルとは、一般に、回収されたポリエチレンフィルムなどを粉砕、アルカリ洗浄してフィルム表面の汚れ、異物を除去した後、高温・減圧下で一定時間乾燥してフィルム内部に留まっている汚染物質を拡散させ除染を行い、ポリエチレンからなるフィルムの汚れを取り除き、再びポリエチレンに戻す方法である。」
「【0129】
<用途>
本発明の積層体は、包装材料用途に特に好適に使用することができる。
包装材料の形状としては、特に限定されず、図3に示すように、包装袋20であってもよく、図4に示すように、胴部31および底部32を備えるスタンドパウチ30であってもよい。なお、スタンドパウチにおいては、胴部のみが上記積層体により形成されていても、底部のみが上記積層体により形成されていても、胴部および底部の両方が上記積層体により形成されていてもよい。」
「【実施例】
【0134】
本発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明がこれら実施例によって限定されるものではない。
【0135】
<実施例1-1>
中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3、融点129℃、MFR:1.3g/10分、Dowchemical社製、商品名:Elite5538G)をインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Aを得た。基材Aのヘイズ値を、JIS K 7105に準拠して測定したところ、ヘイズ値は6.5%であった。
【0136】
基材Aの一方の面に、水性フレキソインキ(東洋インキ(株)製、商品名:アクワリオナ)を用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0137】
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た後、長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材本体Aを得た。次いで、該基材本体Aの一方の面に、PVD法により、厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成し、中間層Aを得た。
【0138】
上記基材Aの画像形成面を、中間層Aの蒸着面に、2液硬化型ウレタン系接着剤(ロックペイント(株)製、商品名:RU-77T/H-7)を介して積層した。2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
【0139】
中間層Aの非蒸着面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、ヒートシール層として、厚さ40μmの未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(三井化学東セロ(株)商品名:TUX-TCS)を積層し、本発明の積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、92質量%であった。
【0140】
<実施例1-2>
高密度ポリエチレン(密度:0.961g/cm3、融点135℃、MFR:0.7g/10分、ExxonMobil社製、商品名:HTA108)および上記中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなる厚さポリエチレンフィルムを作製した。高密度ポリエチレン層の厚さは、それぞれ20μm、中密度ポリエチレン層の厚さは、60μmであった。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、高密度ポリエチレン層の厚さが、それぞれ4μm、中密度ポリエチレン層の厚さが、12μmである、総厚さ20μmの基材Bを得た。基材Bのヘイズ値を、測定したところ、ヘイズ値は8.9%であった。
【0141】
基材Bの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0142】
上記高密度ポリエチレンおよび上記中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルムを作製した。高密度ポリエチレン層の厚さは、それぞれ20μm、中密度ポリエチレン層の厚さは、60μmであった。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、高密度ポリエチレン層の厚さは、それぞれ4μm、中密度ポリエチレン層の厚さは、12μmである、総厚さ20μmの基材本体Bを得た。次いで、該基材本体Bの一方の面に、PVD法により、厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成し、中間層Bを得た。
【0143】
上記基材Bの画像形成面を、中間層Bの蒸着面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して積層した。2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
【0144】
中間層Bの非蒸着面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、ヒートシール層として、厚さ40μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを積層し、本発明の積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、92質量%であった。」
(イ)甲2-1に記載されているに等しい事項
上記(ア)の【0129】の「本発明の積層体は、包装材料用途に特に好適に使用することができる。」という記載より、【0135】~【0139】の実施例1-1及び【0140】~【0144】の実施例1-2は、包装材料用途の積層体であることは明らかである。
(ウ)引用発明
よって、甲2-1には、【0135】~【0139】の実施例1-1に着目すると、以下の[引用発明1]が、【0140】~【0144】の実施例1-2に着目すると、以下の[引用発明2]が記載されていると認める。
[引用発明1]
「中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3)をインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムとし、このポリエチレンフィルムより、厚さ20μmの基材Aを得て、(【0135】)
基材Aの一方の面に、画像を形成し、(【0136】)
上記中密度ポリエチレンより中間層Aを得て、(【0137】)
上記基材Aの画像形成面を、中間層Aに、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層を介して積層し、(【0138】)
中間層Aに、上記2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層を介して、ヒートシール層として、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを積層することにより得た、(【0139】)
包装材料用途の、(上記(イ))
積層体。」
[引用発明2]
「高密度ポリエチレン(密度:0.961g/cm3)および中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3)を、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルムより、総厚さ20μmの基材Bを得て、(【0140】)
基材Bの一方の面に、画像を形成し、(【0141】)
上記高密度ポリエチレンおよび上記中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルムより中間層Bを得て、(【0142】)
上記基材Bの画像形成面を、中間層Bに、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層を介して積層し、(【0143】)
中間層Bに、上記2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層を介して、ヒートシール層として、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを積層することにより得た、(【0144】)
包装材料用途の、(上記(イ))
積層体。」
イ 甲2-2(甲3-12)
甲2-2(甲3-12)には、以下の記載がある。
「
[図:0001434146000001.jpg]
[図:0001434146000002.jpg]
」
(第345ページ左欄第5行~同右欄第8行)
ウ 甲2-3
甲2-3には、以下の記載がある。
「
[図:0001434146000003.jpg]
」
(第35ページ)
エ 甲2-4(甲3-13)
甲2-4(甲3-13)には、以下の記載がある。
「【0016】
樹脂フィルム2は、例えば低密度ポリエチレンフィルム、中密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムからなる。
上記の樹脂フィルムには、延伸処理を施して得られた樹脂フィルムを用いることが好ましい。この場合、樹脂フィルムの結晶化度が60%~90%の範囲となるように延伸処理を施すことがより好ましい。
延伸処理が施された樹脂フィルムから樹脂フィルム2を形成することで、樹脂の配向性や結晶化度を高めることができる。また、樹脂フィルムの延伸処理は広く一般に行われる処理であり、フィルム製膜ラインに組み込むことも可能なため、製造時間を大幅に増加させたり、製造コストを大幅に引き上ることなく、実施することが可能となる。」
オ 甲3-6
甲3-6には、以下の記載がある。
「
[図:0001434146000004.jpg]
[図:0001434146000005.jpg]
・・・
[図:0001434146000006.jpg]
」
(第277ページ左欄第20行~同右欄第27行)
「
[図:0001434146000007.jpg]
」
(第278ページ)
カ 甲3-8
甲3-8には、以下の記載がある。
「
[図:0001434146000008.jpg]
」
(第503ページ左欄第5行~同第7行)
「
[図:0001434146000009.jpg]
」
(第503ページ左欄)
キ 甲3-11
甲3-11には、以下の記載がある。
「
[図:0001434146000010.jpg]
」
(第3行~第5行)
「
[図:0001434146000011.jpg]
」
ク 周知技術
(ア)甲2-5の記載
甲2-5には、以下の記載がある。
「
[図:0001434146000012.jpg]
」
(第394ページ左欄第1行~同第20行)
(イ)甲2-6の記載
甲2-6には、以下の記載がある。
「
[図:0001434146000013.jpg]
」
(第180ページ左欄第1行~同第5行)
「
[図:0001434146000014.jpg]
」
(第182ページ左欄第3行~同第14行)
(ウ)甲2-7の記載
甲2-7には、以下の記載がある。
「【0044】
本発明のフィルムは、白色顔料を含む。これにより、フィルム上に画像を形成した場合における、該画像の視認性を向上することができる。また、本発明のフィルムを用いて作製される包装袋に充填される内容物を隠蔽することができる。また、フィルムの遮光性を向上することができる。
さらに、このような構成のフィルムは、白色顔料を含むインキにより背景層を形成する必要がない。そのため、積層体とした場合の層間のラミネート強度の低下や、フィルムの手切れ性の低下をもたらすことがないため、好ましい。」
(エ)周知技術について
上記(ア)及び(イ)より、以下の技術事項は周知技術(以下[周知技術1]という。)と認める。
[周知技術1]
「X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比により結晶化度を測定すること。」
また上記(ウ)より、以下の技術事項は周知技術(以下[周知技術2]という。)と認める。
[周知技術2]
「フィルムが白色顔料を含むことで、フィルム上に画像を形成した場合における、画像の視認性が向上すること。」
(2)引用発明1に基づく取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明1を対比する。
引用発明1の「基材A」は、本件発明1の「基材層」に相当し、以下同様に「接着層」は「接着剤層」に、「ヒートシール層」は「シーラント層」に、「包装材料用途の積層体」は「包装材料」にそれぞれ相当する。
引用文献1の「上記基材Aの画像形成面を、中間層Aに、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層を介して積層し、中間層Aに、上記2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層を介して、ヒートシール層として、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを積層する」ことは、本件発明1の「基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え」ることに相当する。
引用発明1の「中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3)をインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムとし、このポリエチレンフィルムより、厚さ20μmの基材Aを得」ること及び「ヒートシール層として、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを積層する」ことは、本件発明1の「前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含」むことに相当する。
引用発明1の「基材A」が「厚さ20μm」であることは、20μmが10乃至200μmの範囲内であるから、本件発明1の「基材層は、厚さが10乃至200μmの範囲内にあ」ることに相当する。
引用発明1の「基材A」を「中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3)をインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムとし、このポリエチレンフィルムより」得ることは、「基材A」が「中密度ポリエチレン」のみで構成されていることから、本件発明1の「前記基材層に占める前記ポリエチレンの割合は50質量%以上であ」ることに相当する。
(イ)引用発明1との一致点、相違点
そうすると、本件発明1と引用発明1の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点1]
「基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え、
前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含み、
前記基材層は、厚さが10乃至200μmの範囲内にあり、前記基材層に占める前記ポリエチレンの割合は50質量%以上である包装材料。」
[相違点1]
基材層に関し、本件発明1は、「X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上75%以下である」のに対し、引用発明1では、基材AのX線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が不明な点。
(ウ)相違点1の判断
まず、引用発明1の「基材A」の素材として使用される「中密度ポリエチレン」の結晶化度について、その下限値について検討するに、甲3-6のTable1に示される市販のPEの結晶化度(Crystallinity X-ray)が最低でも66.5%であること、及び、甲2-3に示される低密度ポリエチレンの結晶化度は42-53であることが例示される。
つぎに、引用発明1の「中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3)」から得られる「基材A」の結晶化度について検討する。甲2-2(甲3-12)によれば、ポリエチレンの密度が増加するに従い、結晶部分(非晶部分以外)の割合が大きくなる傾向であり、ポリエチレンの密度と結晶度x(%)(結晶化度)の間には、「密度=2.0×10-3x+0.803」の式の関係が成立するとされ、そうすると、引用発明1の「中密度ポリエチレン」の「密度:0.941g/cm3」を当該関係式に代入することにより、その結晶度は「69%」と算出される。「中密度ポリエチレン」の結晶度について、当該算出値の69%は、上記甲3-8の表1で示される密度0.940g/ccの結晶化度62.1%及び甲2-3の表2.3で示される高密度ポリエチレン(比重0.941-0.965g/cm3)の結晶化度64-80の値とも概ね整合する。
さらに、甲2-4(甲3-13)の段落【0016】の「延伸処理が施された樹脂フィルムから樹脂フィルム2を形成することで、樹脂の配向性や結晶化度を高めることができる。」との記載や、甲3-11の「一般に、延伸倍率が大きくなると配向度、結晶化度ともに増加する」との記載のように、一般に、ポリエチレンフィルムは延伸により結晶化度が増加することが技術常識であることからすれば、引用発明1の「長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸」される「中密度ポリエチレン」は、延伸により結晶化度が更に増加すると考えられる。
そうすると、引用発明1の「密度:0.941g/cm3」の「中密度ポリエチレン」を5倍に延伸したものである「基材A」は、前記算出した結晶度である「69%」より更に高い値となることが予測されることから、その結晶化度は40%以上である蓋然性が高いとはいえるものの、75%以下であるとはいえない。
以上より、相違点1は実質的な相違点である。
また、引用発明1では、基材AのX線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度について、着目すらしていないものであり、当該結晶化度について調整しようとする動機付けは存在することはなく、引用発明1に基いて、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。そして、このことは提出された他の証拠を参照しても同様である。
(エ)小括
よって、本件発明1は、引用発明1ではない。また、引用発明1及び他の証拠に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~9について
本件発明2、7~9は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2、7~9は、引用発明1ではなく、引用発明1及び他の証拠に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明3~6は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明であるから、上記に示したことと同様に、引用発明1及び他の証拠に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)引用発明2に基づく取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明2を対比する。
引用発明2の「基材B」は、本件発明1の「基材層」に相当し、以下同様に「接着層」は「接着剤層」に、「ヒートシール層」は「シーラント層」に、「包装材料用途の積層体」は「包装材料」にそれぞれ相当する。
引用発明2の「上記基材Bの画像形成面を、中間層Aに、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層を介して積層し、中間層Bに、上記2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層を介して、ヒートシール層として、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを積層する」ことは、本件発明1の「基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え」ることに相当する。
引用発明2の「高密度ポリエチレン(密度:0.961g/cm3)および中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3)を、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルムより、総厚さ20μmの基材Bを得」ること及び「ヒートシール層として、未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを積層する」ことは、本件発明1の「前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含」むことに相当する。
引用発明2の「基材B」が「総厚さ20μm」であることは、20μmが10乃至200μmの範囲内であるから、本件発明1の「基材層は、厚さが10乃至200μmの範囲内にあ」ることに相当する。
引用発明2の「基材B」を「高密度ポリエチレン(密度:0.961g/cm3)および中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3)を、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルムより」得ることは、「基材B」が「高密度ポリエチレン」及び「中密度ポリエチレン」のみで構成されていることから、本件発明1の「前記基材層に占める前記ポリエチレンの割合は50質量%以上であ」ることに相当する。
(イ)引用発明2との一致点、相違点
そうすると、本件発明1と引用発明2の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点2]
「基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え、
前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含み、
前記基材層は、厚さが10乃至200μmの範囲内にあり、前記基材層に占める前記ポリエチレンの割合は50質量%以上である包装材料。」
[相違点2]
基材層に関し、本件発明1は、「X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上75%以下である」のに対し、引用発明2では、基材AのX線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が不明な点。
(ウ)相違点2の判断
本件明細書の段落【0061】には、「基材層1が複数の層を有する場合は、基材層1の最表面のいずれか一方の結晶化度を測定する。」と記載されていることから、引用発明2の基材Bの最表面である「高密度ポリエチレン」の結晶化度について検討する。
上記(2)ア(ウ)での検討と同様に、引用発明2の高密度ポリエチレン(密度:0.961g/cm3)の結晶化度を甲2-2(甲3-12)で示される式から求めると79%となる。
また、ポリエチレンの結晶化度として40%以上のものが一般的であり、延伸することによりその結晶化度が増加することが技術常識であることを踏まえると、引用発明2の「高密度ポリエチレン」の結晶化度は79%以上となると考えられ、75%以下の結晶度を有しているとはいえない。
以上より、相違点2は実質的な相違点である。
また、上記(2)ア(ウ)での検討と同様に、引用発明2に基いて、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえず、このことは提出された他の証拠を参照しても同様である。
(エ)小括
よって、本件発明1は、引用発明2ではない。また、引用発明2及び他の証拠に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~9について
本件発明2、3、7~9は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2、3、7~9は、引用発明2ではなく、引用発明2及び他の証拠に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明4~6は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明であるから、上記に示したことと同様に、引用発明2及び他の証拠に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)についてのまとめ
以上より、本件発明1~3、7~9は、甲2-1(甲3-2)に記載された発明ではなく、本件発明1~9は、甲2-1(甲3-2)に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由について
1 取消理由通知で採用しなかった申立理由の概要について
取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由1-1(甲1-1を引用例とする新規性、申立人1による申立理由。)
本件発明1~3、5~9は甲1-1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由1-2(甲1-1を主引用例とする進歩性、申立人1による申立理由。)
本件発明4は、甲1-1及び甲1-2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3) 申立理由3-1(甲3-1を引用例とする新規性、申立人3による申立理由。)
本件発明1~9は甲3-1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(4)申立理由3-2(甲3-1を主引用例とする進歩性、申立人3による申立理由。)
本件発明1~9は、甲3-1、甲3-2、甲3-3、甲3-4、甲3-5及び甲3-14に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(5)申立理由3-3(甲3-14を主引用例とする進歩性、申立人3による申立理由。)
本件発明1~9は、甲3-14、甲3-1及び甲3-2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(6)申立理由3-4(実施可能要件、申立人3による申立理由。)
本件特許は、明細書の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ポリエチレンの結晶化度(%)の程度が密度(g/cm3)に影響することは技術常識であるところ、本件特許の明細書の【0284】、【0290】、【0302】、【0325】及び【0327】には、密度(g/cm3)が同一である一方で、結晶化度(%)の大きく異なるポリエチレンが例示されている。このような技術常識に反するポリエチレンフィルムの製造方法の詳細について、本件特許の明細書において説明がなされておらず、本件の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
(7)申立理由3-5(サポート要件、申立人3による申立理由。)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件発明1は「基材層とシーラント層とがポリエチレンを含む」と規定するものであるが、これは各層にポリエチレン以外の樹脂材料を含むものを包含するものであり、このように、ポリエチレンに加えてポリエチレン以外の樹脂材料を含むものは、リサイクル適正を有するという本件特許の解決しようとする課題を解決するものとはいえない。
2 取消理由通知で採用しなかった申立理由についての当審の判断
(1)引用文献の記載
ア 甲1-1
甲1-1の【0007】~【0008】、【0014】及び【0138】~【0140】の記載より、特に【0138】~【0140】の実施例1-1をふまえると、甲1-1には以下の発明(以下「甲1-1発明」という。)が記載されているものと認める。
「中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3)をインフレーション成形法により製膜したポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Aを得、(【0138】)
基材Aの一方の面に、画像を形成し、(【0139】)
ヒートシール層として、未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、これを、基材Aの画像形成面に、2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層することにより得た、(【0140】)
包装材料用途の積層体。(【0014】)」
イ 甲3-1
甲3-1の【0007】~【0008】、【0014】及び【0131】~【0134】の記載より、特に【0131】~【0134】の実施例1-2の記載をふまえると、甲3-1には以下の発明(以下「甲3-1発明」という。)が記載されているものと認める。
「高密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、総厚さ20μmの基材Bを得て、(【0131】)
基材Bの一方の面に画像を形成し、(【0132】)
ヒートシール層として、未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、この一方の面に蒸着膜を形成し、(【0133】)
基材Bの画像形成面と、ヒートシール層の蒸着面とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層して得た、(【0134】)
包装材料用途の積層体。(【0014】)」
ウ 甲3-14
甲3-14の【0019】により、第一層4及び第二層5はいすれもヒートシール性を有していることが明らかである。
甲3-14の【0095】の【表1】における実施例1の記載を、【0082】に照らして判断すると、第一層4及び第二層5の平均結晶化度はそれぞれ30%~42%及び50%~70%であることが把握される。
そうすると、【0001】、【0019】、【0039】、【0040】、【0056】、【0082】、【0095】の記載より、特に、甲3-14の【0056】の実施例1及びこれを用いた包装材6に係る【0034】の記載をふまえると、甲3-14には以下の発明(以下「甲3-14発明」という。)が記載されているものと認める。
「積層フィルム1は二層積層フィルムとし、第一層4の熱可塑性樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂及び低密度ポリエチレン樹脂を80:20の割合でブレンドし、第二層5の熱可塑性樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂及び低密度ポリエチレン樹脂を80:20の割合でブレンドし、これら第一層4、第二層5を単軸共押出機により、それぞれ260℃に加熱溶融し、Tダイキャスト法にて、第一層4の厚みを15μm、第二層5の厚みを85μmとし、トータル100μm厚みの積層フィルム1を製膜し、(【0056】)
第一層4及び第二層5はいすれもヒートシール性を有しており、(【0019】)
第一層4及び第二層5の平均結晶化度がそれぞれ30%~42%及び50%~70%であり、(【0082】、【0095】)
積層フィルム1に対して、ヒートシール層としての機能を果たす表面2とは反対の裏面3に、基材層7や、さらには、印刷層やバリア層といった機能層8を形成し、(【0039】)
積層フィルム1と基材層7および機能層8を積層させる際に有機系の接着剤を用いた、(【0040】)
包装材6。(【0039】)」
(2)申立理由1-1及び申立理由1-2(甲1-1を主引用例とする新規性、進歩性)
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1-1発明とを対比する。
甲1-1発明の「基材A」は、本件発明1の「基材層」に相当し、以下同様に
「ヒートシール層」は、「シーラント層」に、
「包装材料用途の積層体」は、「包装材料」にそれぞれ相当する。
甲1-1発明の、「2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層すること」における「2液硬化型ウレタン系接着剤」は積層時に層を形成することは明らかであるから、本件発明1の「接着剤層」に相当する。
そうすると、甲1-1発明の「ヒートシール層を、基材Aの画像形成面に、2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層する」ことは、本件発明1の「基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え」ることに相当する。
甲1-1発明の「中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3)をインフレーション成形法により製膜したポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Aを得」ること及び「ヒートシール層として、未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備する」ことは、本件発明1の「前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含」むことに相当する。
甲1-1発明の「基材A」が「厚さ20μm」であることは、20μmが10乃至200μmの範囲内であるから、本件発明1の「基材層は、厚さが10乃至200μmの範囲内にあ」ることに相当する。
甲1-1発明の「基材A」を「中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3)をインフレーション成形法により製膜したポリエチレンフィルム」より得ることは、「基材A」が「中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3)」のみで構成されていることから、本件発明1の「前記基材層に占める前記ポリエチレンの割合は50質量%以上であ」ることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1-1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点1-1>
「基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え、
前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含み、
前記基材層は、厚さが10乃至200μmの範囲内にあり、前記基材層に占める前記ポリエチレンの割合は50質量%以上である包装材料。」
<相違点1-1>
基材層に関し、本件発明1は、「X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上75%以下である」のに対し、甲1-1発明では、基材AのX線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が不明な点。
(イ)判断
<相違点1-1>について検討する。
上記第4の2(2)ア(ウ)の検討のとおり、甲1-1発明の「中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3)」を「インフレーション成形法により製膜したポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸」することによって得た「基材A」の結晶化度は、75%以下の結晶度を有している蓋然性が高いとはいえない。
ここで、甲1-3には、甲1-1発明の「基材A」と同様に「中密度ポリエチレン(密度:0.943g/cm3)をインフレーション成形法により製膜したポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸」することによって得た「厚さ20μm」の一軸延伸ポリエチレンフィルムについて、結晶化度が54.6%であったことが示されている。甲1-3で用いた中密度ポリエチレンの密度は0.943g/cm3であり、甲1-1発明の中密度ポリエチレン(0.941g/cm3)の密度と同程度である。しかしながら、ポリエチレンフィルムの結晶化度に影響を及ぼす因子は様々であり、密度や延伸倍率だけでなく、インフレーション時の水冷及び空冷の違い、フィルム製造時又は製造後の熱履歴や添加物なども結晶化度に影響を及ぼすものであり、甲1-1発明の基材Aと、甲1-3のポリエチレンフィルムが同一のものでない以上、甲1-1発明の基材Aの結晶化度が、甲1-3の実験で正確に再現できているとはいえない。よって、甲1-3を参照したとしても、甲1-1発明の「基材A」の結晶化度は、75%以下の結晶度を有している蓋然性が高いとはいえない。
そして、甲1-1発明では、基材AのX線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度について、着目すらしていないものであり、当該結晶化度について調整しようとする動機付けは存在することはなく、甲1-1発明に基いて、相違点1-1に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。また、このことは提出された他の証拠を参照しても同様である。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、甲1-1発明ではない。また、甲1-1発明及び他の証拠に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~9について
本件発明2、3、5~9は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2、3、5~9は、甲1-1発明ではない。
また、本件発明4は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明であるから、上記に示したことと同様に、甲1-1発明及び他の証拠に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立理由3-1及び申立理由3-2(甲3-1を主引用例とする新規性、進歩性)
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3-1発明とを対比する。
甲3-1発明の「基材B」は、本件発明1の「基材層」に相当し、以下同様に「ヒートシール層」は、「シーラント層」に、「包装材料用途の積層体」は、「包装材料」にそれぞれ相当する。
甲3-1発明の、「2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層」することにおける「2液硬化型ウレタン系接着剤」は積層時に層を形成することは明らかであるから、本件発明1の「接着剤層」に相当する。
そうすると、甲3-1発明の「基材Bの画像形成面と、ヒートシール層の蒸着面とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層して得た」ことは、本件発明1の「基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え」ることに相当する。
甲3-1発明の「高密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、総厚さ20μmの基材Bを得」ること及び「ヒートシール層として、未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備する」ことは、本件発明1の「前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含」むことに相当する。
甲3-1発明の「基材B」が「総厚さ20μm」であることは、20μmが10乃至200μmの範囲内であるから、本件発明1の「基材層は、厚さが10乃至200μmの範囲内にあ」ることに相当する。
甲3-1発明の「基材B」を「高密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜し、高密度ポリエチレン層/中密度ポリエチレン層/高密度ポリエチレン層からなるポリエチレンフィルム」より得ることは、「基材B」が「高密度ポリエチレン」と「中密度ポリエチレン」のみで構成されていることから、本件発明1の「前記基材層に占める前記ポリエチレンの割合は50質量%以上であ」ることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲3-1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点3-1>
「基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え、
前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含み、
前記基材層は、厚さが10乃至200μmの範囲内にあり、前記基材層に占める前記ポリエチレンの割合は50質量%以上である包装材料。」
<相違点3-1>
基材層に関し、本件発明1は、「X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上75%以下である」のに対し、甲3-1発明では、基材BのX線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が不明な点。
(イ)判断
上記<相違点3-1>について検討する。
上記第4の2(2)ア(ウ)及び上記第4の2(3)ア(ウ)の検討と同様に、甲3-1発明の「高密度ポリエチレン」の結晶化度は、75%以下の結晶度を有している蓋然性を有するとはいえない。
そして、甲3-1発明では、基材AのX線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度について、着目すらしていないものであり、当該結晶化度について調整しようとする動機付けは存在することはなく、甲1-1発明に基いて、相違点3-1に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。また、このことは提出された他の証拠を参照しても同様である。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、甲3-1発明ではない。また、甲3-1発明及び他の証拠に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2~9は、甲3-1発明ではない。
また、本件発明2~9は、甲3-1発明及び他の証拠に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立理由3-3(甲3-14を主引用例とする進歩性)
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3-14発明とを対比する。
甲3-14発明の「基材層7」は、本件発明1の「基材層」に相当し、甲3-14発明の「包装材6」は、本件発明1の「包装材料」に相当する。
甲3-14発明の「積層フィルム1」は、「第一層4、第二層5を単軸共押出機により、それぞれ260℃に加熱溶融し、Tダイキャスト法にて、」「製膜」するものであり、「第一層4及び第二層5はいすれもヒートシール性を有して」いることより、本件発明1の「シーラント層」に、相当する。
甲3-14発明の、「積層フィルム1と基材層7および機能層8を積層させる際に有機系の接着剤を用い」ることにおける「有機系の接着剤」は積層時に層を形成することは明らかであるから、本件発明1の「接着剤層」に相当する。
そうすると、甲3-14発明の「積層フィルム1に対して、ヒートシール層としての機能を果たす表面2とは反対の裏面3に、基材層7や、さらには、印刷層やバリア層といった機能層8を形成」することは、本件発明1の「基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え」ることに相当する。
甲3-14発明の「積層フィルム1は二層積層フィルムとし、第一層4の熱可塑性樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂及び低密度ポリエチレン樹脂を80:20の割合でブレンドし、第二層5の熱可塑性樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂及び低密度ポリエチレン樹脂を80:20の割合でブレンドし、これら第一層4、第二層5を単軸共押出機により、それぞれ260℃に加熱溶融し、Tダイキャスト法にて、第一層4の厚みを15μm、第二層5の厚みを85μmとし、トータル100μm厚みの積層フィルム1を製膜」することは、本件発明1の「前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含」むことと、「前記シーラント層はポリエチレンを含」むという限りにおいて一致する。
そうすると、本件発明1と甲3-14発明は次の<一致点3-14>で一致し、少なくとも<相違点3-14>で相違点する。
<一致点3-14>
「基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え、
前記シーラント層はポリエチレンを含む包装材料。」
<相違点3-14>
基材層に関し、本件発明1は、「X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上75%以下である」のに対し、甲3-14発明では、基材層7のX線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が不明な点。
(イ)判断
上記<相違点1-1>について検討する。
甲3-14発明の「基材」について、X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度について、着目すらしていないものであり、当該結晶化度について調整しようとする動機付けは存在することはなく、甲3-14発明に基いて、相違点3-14に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、甲3-14発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2~9は、甲3-14発明に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立理由3-4(実施可能要件)
物の発明について実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用をすることができる程度のものでなければならない。以下検討する。
本件発明1が、本件特許の請求項1に記載のとおりのものであるところ、本件特許の明細書の【0249】~【0426】には、実施例が示され、本件発明1の発明特定事項を有する例1A~例11A、例1B~例7B、例1C~例4C、例1D~例6D、例1E~例3E、例1F~例3F、例1G~例4G及び例1H~例4Hが、本件特許の明細書の【0006】の記載から把握できる、「ポリエチレンを含み、リサイクル適性を有する積層体において、耐熱性又は強度に優れた積層体、並びに、これを含む包装体及び包装物品」を提供することであるとする、本件特許に係る発明が解決しようとする課題を解決するものとして記載されている。
これらの記載を参照することにより、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1を実施できるものである。
申立人3は、本件特許の明細書の【0284】、【0290】、【0302】、【0325】及び【0327】には、密度(g/cm3)が同一である一方で、結晶化度(%)の大きく異なるポリエチレンが例示されており、これは技術常識に反する旨主張する。しかしながら、結晶化度(%)が密度(g/cm3)に影響するということ自体は、申立人の主張のとおりである一方で、結晶化度(%)が密度(g/cm3)によって一義的に決定されるものではないことも技術常識といえる。そうすると密度(g/cm3)が同一である一方で、結晶化度(%)の大きく異なるポリエチレンが存在することが、技術常識に照らして直ちに矛盾を含むものとはいえない。
また、本件特許の明細書の【0058】に「基材層1の結晶化度は、基材層1に使用するポリエチレンフィルムの延伸度合いや、フィルム製造時又は製造後の熱履歴を制御することなどで調整することができる。例えば、製膜後に徐冷すると結晶化度は高まり、急冷すると結晶化度は下がる。また、結晶核剤などの添加物を配合することで結晶化度を向上させることも可能である。」と記載されるように、ポリエチレンフィルムの結晶化度は、延伸度合いや熱履歴及び添加物の配合により調整し得るものである。すなわち、同じ密度で異なる結晶化度のポリエチレンフィルムも作製することができるといえ、申立人3の上記主張は首肯することはできない。
よって、申立理由3-4は理由がない。
(6)申立理由3-5(サポート要件)
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下検討する。
ア 発明の課題
本件特許の【0006】の記載から、本件特許に係る発明が解決しようとする課題は「ポリエチレンを含み、リサイクル適性を有する積層体において、耐熱性又は強度に優れた積層体、並びに、これを含む包装体及び包装物品」を提供することである。
イ 発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か
本件発明1は、本件特許の請求項1に記載のとおりのものであり、請求項1では、「基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え、前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含み、前記基材層は、厚さが10乃至200μmの範囲内にあり、前記基材層に占める前記ポリエチレンの割合は50質量%以上であり、且つ、X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上75%以下である包装材料。」と規定している。
ここで、本件特許の明細書の【0249】~【0426】には、実施例が示され、本件発明1の発明特定事項を有する例1A~例11A、例1B~例7B、例1C~例4C、例1D~例6D、例1E~例3E、例1F~例3F、例1G~例4G及び例1H~例4Hが、本件特許に係る発明が解決しようとする課題を解決するものとして記載されている。
そうすると、請求項1の記載は、上記発明が解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであると判断できる。
申立人3は、本件発明1は「基材層とシーラント層とがポリエチレンを含む」と規定するものであるが、これは各層にポリエチレン以外の樹脂材料を含むものを包含するものであり、このように、ポリエチレンに加えてポリエチレン以外の樹脂材料を含むものは、リサイクル適正を有するという本件特許の解決しようとする課題を解決するものとはいえないと主張する。しかしながら、本件特許の明細書の【0004】に「リサイクル性の観点から、ポリエチレン含有率の高い包装材料や、包装用フィルムをできるだけ単純な層構成とするための技術が提案されている(例えば、特許文献2及び3を参照)。しかしながら、例えば、強度や耐熱性などの面から軽包装の用途に留まるなどの問題があり、包装材料としての用途に応じて求められる様々な特性を満たすための改善の余地がある。」と記載されており、本件は、リサイクル性を上げること自体を目的としているのではなく、リサイクル性が高いものであったとしても、強度や耐熱性においても遜色のないものを得ようとするものであり、このことは、本件特許の明細書の【0006】で把握される発明が解決しようとする課題に符合するものである。そして、本件特許の明細書の【0249】~【0426】には、実施例が示され、本件発明の発明特定事項を有する例1A~例11A、例1B~例7B、例1C~例4C、例1D~例6D、例1E~例3E、例1F~例3F、例1G~例4G及び例1H~例4Hが、本件特許に係る発明が解決しようとする課題を解決するものとして記載されているものである。そうすると、本件発明1は、各層にポリエチレン以外の樹脂材料を含むものを包含するものではあるが、強度や耐熱性においても遜色のないものを得ることができるものを示しているといえ、申立人3の上記主張は首肯することはできない。
よって、申立理由3-5は理由がない。
(6)まとめ
本件の請求項1~9に係る発明は、申立人が提出した本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明ではないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
また、本件の請求項1~9に係る発明は、申立人が提出した本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
さらに、本件特許は、明細書及び特許請求の範囲の記載に不備はなく、特許法第36条第4項1及び同条第6項第1号の要件を満たしているから、本件の請求項1~9に係る特許は特許法第36条第4項及び同条第6項の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1~9に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700248