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特許異議申立

2025-700151

セルロース繊維乾燥体の製造方法、及び樹脂複合体の製造方法

審判番号
2025-700151
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-073646
登録番号
7527830
請求日
2025年02月05日
審決日
2025年07月07日
公報発行日
2025年08月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】旭化成株式会社
  • 【権利者代理人】青木 篤
  • 【権利者代理人】三橋 真二
  • 【権利者代理人】中村 和広
  • 【権利者代理人】齋藤 都子
  • 【権利者代理人】三間 俊介
  • 【異議申立人】山本 真優子
審判長/審判官
  • 審判長 阪野 誠司
  • 審判官 野田 定文
  • 審判官 宮田 透
分類
P1652.121-Y (C08B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第113条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7527830号発明「セルロース繊維乾燥体の製造方法、及び樹脂複合体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7527830号の請求項1~13に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7527830号(以下「本件特許」という。)の請求項1~20に係る特許についての出願は、令和2年4月16日にされた出願であって、令和6年7月26日にその特許権の設定登録がされ、同年8月5日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~13に係る特許に対し、令和7年2月5日に、特許異議申立人 山本 真優子(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、同年3月31日に手続補正書(方式)が提出されたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~13に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~13に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである(以下、請求項の番号順に、「本件発明1」などといい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)。 「【請求項1】 数平均繊維径が2nm~1000nmであるセルロース繊維と、分散剤と、液体媒体とを含むスラリーを調製するスラリー調製工程、及び 前記スラリーを、ずり速度500秒-1~20000秒-1の撹拌下にて、乾燥速度0.01%/分~10%/分、乾燥温度20℃~130℃で乾燥させて、セルロース繊維を含むセルロース繊維乾燥体を形成する乾燥工程、 を含む、セルロース繊維乾燥体の製造方法。 【請求項2】 前記乾燥工程において、前記液体媒体の沸点と前記乾燥温度とが、下記関係: Td≦BP0 (式中、Tdは乾燥温度であり、BP0は1気圧における液体媒体の沸点である。) を満たす、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記乾燥工程において、前記液体媒体の沸点と前記乾燥温度とが、下記関係: Td≦BP1 (式中、Tdは乾燥温度であり、BP1は乾燥工程時の圧力における液体媒体の沸点である。) を満たす、請求項1又は2に記載の方法。 【請求項4】 前記乾燥工程を、機械撹拌式混合造粒機を用いたバッチプロセスにて行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。 【請求項5】 前記乾燥工程を、レーディゲミキサー、バキュームドライヤー又は流動式混合機を用いて行う、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。 【請求項6】 前記セルロース繊維乾燥体が、安息角45°未満、差角10°超、ゆるめ嵩密度0.35~0.85g/cm3、あつめ嵩密度0.6~0.9g/cm3、及び圧縮度1~25%を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。 【請求項7】 前記セルロース繊維乾燥体中のセルロース繊維の数平均繊維径が2nm~1000nmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。 【請求項8】 前記セルロース繊維乾燥体中のセルロース繊維の平均繊維長(L)/繊維径(D)比が30~5000である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。 【請求項9】 前記セルロース繊維乾燥体中のセルロース繊維が、重量平均分子量(Mw)100000以上、及び重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比6以下を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。 【請求項10】 前記セルロース繊維乾燥体中のセルロース繊維の結晶化度が60%以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。 【請求項11】 前記セルロース繊維乾燥体中のセルロース繊維のアルカリ可溶多糖類含有率が、20質量%以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。 【請求項12】 前記セルロース繊維乾燥体中のセルロース繊維が化学修飾されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。 【請求項13】 前記化学修飾が、エステル化である、請求項12に記載の方法。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、以下の甲第1号証~甲第15号証(以下、甲号証の番号順に、「甲1」などという。)を提出し、以下の申立理由(進歩性)により請求項1~13に係る特許を取り消すべきである旨主張する。 1 証拠方法 甲1:特開2009-203559号公報 甲2:再表2019/189318号公報 甲3:再表2019/208313号公報 甲4:特表2020-525667号公報 甲5:特開2019-131772号公報 甲6:特開2014-24928号公報 甲7:特開2019-81856号公報 甲8:特開2018-204147号公報 甲9:特開2019-14838号公報 甲10:再表2020/059859号公報 甲11:特開2017-057284号公報 甲12:【技術資料】GPCによるセルロース材料の分子量分布測定2 ~コットン材料及び再生セルロース~、東ソー分析センター、2015年6月12日、[online]令和7年2月5日印刷、<https://www.tosoh-arc.co.jp/techrepo/files/tarc00452/pdf/T1503Y.pdf?direct=1> 甲13:【技術資料】GPCによるセルロース材料の分子量分布測定4 ~パルプ~、東ソー分析センター、2015年9月29日、[online]令和7年2月5日印刷、<https://www.tosoh-arc.co.jp/techrepo/files/tarc00457/pdf/T1507Y.pdf?direct=1> 甲14:特開2014-181421号公報 甲15:パルプ繊維の化学的および機械的改質手法とその効果、紙パ技協誌、2008年7月、第62巻第7号、p.54-62、[online] <https://www.jstage.jst.go.jp/article/jtappij/62/7/62_7_830/_pdf> 2 申立理由(進歩性について) 本件発明1は、甲第1号証から甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明2~3は、甲第1号証から甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明4は、甲第1号証から甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明5は、甲第1号証から甲第9号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明6~8は、甲第1号証から甲第11号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明9は、甲第1号証から甲第13号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明10は、甲第1号証から甲第14号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 本件発明11~13は、甲第1号証から甲第15号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 それゆえ、本件請求項1~13についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。 第4 当審合議体の判断 当審合議体は、本件請求項1~13についての特許は、上記第3に示した申立理由によっては、取り消すことができないと判断する。その理由は以下のとおりである。 なお、以下の下線は、原文に付されていたものに加えて、当審合議体で追加した。また、「・・・」は記載の省略を表す。 1 申立人が提出した甲2~4、10について 甲2は、令和3年4月1日に公表されたものであり、本件の出願の令和2年4月16日より後に公知となった刊行物である。同様に、甲3は、令和3年2月12日に、甲4は、令和2年8月27日に、甲10は、令和3年9月2日に、それぞれ公表されたものである。 そのため、申立理由(進歩性)を判断する上で、甲2~4、10は、本件特許の出願時に公知の技術事項を示す証拠としては採用できない。 その一方で、甲2の記載事項と同じ内容が記載された、甲2に係る国際出願の国際公開公報である国際公開第2019/189318号(以下、「刊行物2」という。)は、令和元年10月3日に国際公開されたものであり、本件の出願日より前に公知となった刊行物である。また、同じく、甲3に係る国際出願の国際公開公報である国際公開第2019/208313号(以下、「刊行物3」という。)は、令和元年10月31日に国際公開されたものであり、甲4に係る国際出願の国際公開公報である国際公開第2019/008500号(以下、「刊行物4」という。)は、平成31年1月10日に国際公開されたものであり、甲10に係る国際出願の国際公開公報である国際公開第2020/059859号(以下、「刊行物10」という。)は、令和2年3月26日に国際公開されたものであって、本件の出願日より前に公知となった刊行物である。 上記当審合議体の判断は、これらの文献を参酌した上のものであり、以下に述べる理由には、そのことがわかるように説示する。 2 甲1の記載事項 (甲1a) 「【請求項4】 平均繊維長(L)0.01~2mm及び平均繊維径(D)0.001~1μmを有し、かつセルロース繊維の水分散液を高圧ホモジナイザーによりミクロフィブリル化した微小繊維状セルロースの水分散液を親水性有機溶媒で置換する置換工程、置換した分散液から溶媒を除去する乾燥工程、得られた乾燥物を粉砕処理する粉砕工程を含むフィブリル化繊維集合体の製造方法。」 (甲1b) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、乾燥又は粉末状態の微小繊維状セルロースで構成されていても、凝集せずに再分散性に優れる繊維集合体及びその製造方法に関する。」 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 従って、本発明の目的は、乾燥又は粉末状態であり、かつナノメーターサイズの繊維径でミクロフィブリル化された微小繊維状セルロースで構成されているにも拘わらず、凝集や過度の交絡が抑制され、再分散性に優れた繊維集合体及びその製造方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ミクロフィブリル化された微小繊維状セルロースの水分散液を親水性有機溶媒で置換した後、置換分散液から溶媒を除去して得られた乾燥物を粉砕処理することにより、乾燥状態のミクロフィブリル化微小繊維状セルロースで構成されているにも拘わらず、凝集や過度の交絡が抑制され、再分散性に優れる繊維集合体が得られることを見出し、本発明を完成した。」 (甲1c) 「【0046】 有機溶媒で置換された分散液は、さらに乾燥工程に供される。乾燥工程では、置換した分散液から溶媒(主として親水性有機溶媒)を除去する。 【0047】 得られた微小繊維は乾燥工程に供されるが、乾燥に必要な温度は、微小繊維の溶媒(水分)を除去する点からは高い方が好ましいが、急激な溶媒の揮発によって、高度にミクロフィブリル化したセルロース繊維が凝集するのを抑制する点、及び熱劣化性防止の点からも、なるべく低い温度で乾燥するのが好ましい。乾燥温度は、例えば、30~150℃、好ましくは40~120℃、さらに好ましくは50~100℃(特に55~80℃)程度である。乾燥時間は、例えば、1~24時間、好ましくは2~12時間、さらに好ましくは3~10時間(特に4~8時間)程度である。乾燥機としては、必要に応じて慣用の乾燥機、例えば、ナウター型乾燥機、棚型乾燥機、加熱ジャケット付き回転式混合機などを利用できる。」 (甲1d) 「【0057】 [繊維の平均繊維長及び平均繊維径] 繊維長は、カヤーニ繊維長分布測定器(FS-200)を用いて、平均繊維長ピークを測定することにより算出した。平均繊維径は、走査型電子顕微鏡観察により算出した数平均繊維径である。」 (甲1e) 「【0058】 調製例1(微小繊維状セルロースの水分散液の調製) 市販のクラフトパルプ(平均繊維長3mm、平均繊維径約12μm)40gに、水20Lを加えてよく攪拌し、分散液を調製した。得られた分散液を、常温で均質化装置(GAULIN社製15M-8TA)に仕込み、500kg/cm2(490MPa)の圧力下、装置を15回通過させて微小繊維状セルロースを得た。得られた繊維は、平均繊維長0.6mm、平均繊維径0.03μmであった。次いで、脱水を行い、固形分を約10%とした。2%濃度の分散液の粘度は、ジューサーミキサーで分散させた懸濁液が7000mPa・sであり、ホモディスパーで分散させた懸濁液が5700mPa・sであった。さらに、水分、遠心保水率を測定した結果を表1に示す。 【0059】 実施例1 調製例1で得られたスラリー状懸濁液(水分含量89.6%)500gに対して、イソプロパノール2500gを添加し、ホモディスパー(特殊機化工業(株)製、モデルL)で5000rpm、5分間撹拌して分散した。得られた分散液を、脱液用濾布を用いて手絞りで脱液した。この工程を更に2度繰り返し、最終的に溶媒を含有するセルロース繊維集合体357gを得た。この繊維集合体を棚型乾燥機により60℃で7時間乾燥した後、サンプルミルで粉砕を行って、径1mmφのメッシュを使用して分級した。繊維全体に対する水分含有量(水分率)は4.91%であった。各種特性を測定した結果を表1に示す。」 (甲1f) 「 [図:0001425779000001.jpg] 」 3 申立理由(進歩性)について (1)甲1に記載された発明 甲1には、乾燥又は粉末状態の微小繊維状セルロースで構成されていても、凝集せずに再分散性に優れるフィブリル化繊維集合体の製造方法(甲1a、甲1b)に関し、具体的な実施例1(甲1e、甲1f)として、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 甲1発明: 「平均繊維長0.6mm、平均繊維径0.03μmの微小繊維状セルロースのスラリー状懸濁液(水分含量89.6%)500gに対して、イソプロパノール2500gを添加し、ホモディスパー(特殊機化工業(株)製、モデルL)で5000rpm、5分間撹拌して分散し、脱液用濾布を用いて手絞りで脱液し、最終的に溶媒を含有するセルロース繊維集合体357gを得て、この繊維集合体を棚型乾燥機により60℃で7時間乾燥した後、サンプルミルで粉砕を行って、径1mmφのメッシュを使用して分級する、フィブリル化繊維集合体の製造方法。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「平均繊維径」とは「数平均繊維径」を意味するから(甲1d)、甲1発明の「平均繊維長0.6mm、平均繊維径0.03μmの微小繊維状セルロース」は、本件発明1の「数平均繊維径が2nm~1000nmであるセルロース繊維」に相当する 。 (イ)本件明細書段落【0063】には「液体媒体」の例示として「i-プロパノール」も記載されているから、甲1発明の「イソプロパノール」は、本件発明1の「液体媒体」に相当する。 (ウ)甲1発明の「溶媒を含有するセルロース繊維集合体」はその構成成分(微小繊維状セルロース、イソプロパノール、水)、構成割合、及び、その製造工程(ホモディスパーで分散し、手絞りで脱液)からみて、スラリー状になっているものと考えるのが自然であるから、本件発明の「スラリー」に相当する。 (エ)甲1発明の「微小繊維状セルロース・・・に対して、イソプロパノール・・・を添加し、ホモディスパー・・・で・・・撹拌して分散し、脱液用濾布を用いて手絞りで脱液し、最終的に溶媒を含有するセルロース繊維集合体」を得る工程は、本件発明1の「スラリー調製工程」に相当する。 (オ)甲1発明の「繊維集合体を棚型乾燥機により60℃で7時間乾燥」する工程は、本件発明1の「前記スラリーを、・・・乾燥温度20℃~130℃で乾燥させて、セルロース繊維を含むセルロース繊維乾燥体を形成する乾燥工程」に相当する。 (カ)甲1発明の「フィブリル化繊維」は、「微小繊維状セルロース」を乾燥処理して得られたものであるから、「セルロース」を乾燥したものである。そうすると、甲1発明の「フィブリル化繊維集合体の製造方法」は、本件発明1の「セルロース繊維乾燥体の製造方法」に相当する。 また、本件発明1は、セルロース繊維乾燥体の製造方法について、各工程「を含む」と特定している発明であるから、甲1発明が、本件発明1では特定されていない「粉砕」や「分級」の工程を有することは、本件発明1との対比において相違点とはならない。 (キ)よって、両発明は、次の一致点及び相違点を有すると認める。 一致点: 「数平均繊維径が2nm~1000nmであるセルロース繊維と、液体媒体とを含むスラリーを調製するスラリー調製工程、及び 前記スラリーを、乾燥温度20℃~130℃で乾燥させて、セルロース繊維を含むセルロース繊維乾燥体を形成する乾燥工程、 を含む、セルロース繊維乾燥体の製造方法。」 相違点1: 「スラリー」の「乾燥工程」に関し、 本件発明1は、「ずり速度500秒-1~20000秒-1の撹拌下にて、乾燥速度0.01%/分~10%/分」で乾燥させているのに対し、甲1発明は、棚型乾燥機において7時間乾燥している点。 相違点2: 本件発明1は、「スラリー」が「分散剤」を含むのに対し、甲1発明は、「溶媒を含有するセルロース繊維集合体」が「分散剤」を含んでいない点。 イ 判断 相違点1について検討する。 本件発明1は、「撹拌下にて」乾燥を行う方法であり、かつ「ずり速度500秒-1~20000秒-1の撹拌下にて、乾燥速度0.01%/分~10%/分」で乾燥させることにより、粒子サイズが比較的大きくかつ適度な嵩密度を有し、樹脂中への分散性に優れるセルロース繊維乾燥体(段落【0094】、【0098】)の形成を達成したものである。一方、甲1発明は、乾燥工程を「棚型乾燥機」により行う方法であるところ、甲1には、乾燥工程に関し、「乾燥機としては、必要に応じて慣用の乾燥機、例えば、ナウター型乾燥機、棚型乾燥機、加熱ジャケット付き回転式混合機などを利用できる。」ことが記載されている(甲1c)ものの、ずり速度500秒-1~20000秒-1の撹拌下にて、乾燥速度0.01%/分~10%/分で乾燥させることについて、何らの記載もない。 そのため、甲1発明において、「攪拌下」の乾燥ではない「棚型乾燥機」を、「撹拌下」の乾燥に特に変更する動機付けはないし、仮に、甲1cの上記記載に基いて「棚型乾燥機」を「ナウター型乾燥機」や「加熱ジャケット付き回転式混合機」に変更したとしても、ずり速度及び乾燥速度を本件発明1が特定する数値範囲内に設定する動機付けは見当たらない。 また、甲2~甲5(刊行物2~4及び甲5)の記載全体を参照しても、ずり速度500秒-1~20000秒-1の撹拌下にて、乾燥速度0.01%/分~10%/分で乾燥させることについて、何らの記載もない。 そのため、甲2~甲5(刊行物2~4及び甲5)を参照しても、甲1発明において、「攪拌下」の乾燥ではない「棚型乾燥機」を、「撹拌下」の乾燥に特に変更する動機付けはないし、仮に、「棚型乾燥機」を「ナウター型乾燥機」や「加熱ジャケット付き回転式混合機」に変更したとしても、ずり速度及び乾燥速度を本件発明1が特定する数値範囲内に設定する動機付けは見当たらない。 そして、本件発明1は、相違点1に係る本件発明1の構成を採用することにより、本件明細書段落【0008】に記載の「樹脂中で微分散することによって高剛性の樹脂複合体を与えることができ、更に取扱い性にも優れるセルロース繊維乾燥体の製造方法・・・が提供され得る。」という、甲1~甲5(甲1、刊行物2~4及び甲5)に記載された事項からは予測できない顕著な効果を奏するものである。 よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~5(刊行物2~4及び甲5)に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~13について 本件発明2~13は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、甲1発明とは、少なくとも相違点1及び2を有する。 そして、甲6~甲15(甲6~9、刊行物10及び甲11~15)の記載全体を参照しても、相違点1に係る本件発明2~13の構成を採用できる理由は見当たらず、本件発明2~13は、上記(2)と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)申立人の主張について ア 申立人の主張 申立人は、特許異議申立書の11ページにおいて、甲1に記載の発明としてa~dからなる発明を認定し、同申立書の27~31ページにおいて、本件発明1と甲1に記載の発明とを対比し、上記相違点1について、以下(ア)及び(イ)の主張をしている。 (ア)甲1に記載の発明における「b:親水性有機溶媒を添加するとともに剪断力により分散液を撹拌する、」は、本件発明1における「前記スラリーを、ずり速度500秒-1~20000秒-1の撹拌下にて」に相当し、甲1に記載の発明において、ずり速度が特定されていないという点は、一応の相違点である。 しかし、甲4の記載も踏まえれば、甲1に記載の発明において、流動特性を制御するために、ずり速度を適宜設定し、「前記スラリーを、ずり速度500秒-1~20000秒-1の撹拌下」とすることは、設計的事項にすぎない。 (イ)甲1に記載の発明における「c-3:微小繊維状セルロースを含む乾燥体を形成する乾燥工程」は、本件発明1における「C-3:セルロース繊維を含むセルロース繊維乾燥体を形成する乾燥工程」に相当し、本件発明1は、「C-1:乾燥速度0.01%/分~10%/分」としているのに、甲1に記載の発明は、「c-1:乾燥速度、1~24時間、好ましくは2~12時間、さらに好ましくは3~10時間(特に4~8時間)」としている点は、一応の相違点である。 しかし、甲5の段落0035には、BNF(当審注:バイオマスナノファイバー)を乾燥させる乾燥速度について、乾燥速度を特定の範囲のものとすることで、乾燥時に強固な凝集を起こすことなく、樹脂への分散性が高きという特長をBNF乾燥体が有することが記載されており、甲1に記載の発明において、樹脂への分散性を高くするために、乾燥速度を適宜調整することは設計的事項にすぎない。 イ 申立人の主張の検討 (ア)本件発明1の「前記スラリーを、ずり速度500秒-1~20000秒-1の撹拌下にて、」は、「乾燥させて、セルロース繊維を含むセルロース繊維を形成する乾燥工程」についての発明特定事項である。 一方、申立人がいう甲1に記載の発明における、剪断力による撹拌は、「親水性有機溶媒を添加するとともに剪断力により分散液を撹拌する」とあるとおり単に分散液を撹拌するというだけで、棚型乾燥機を用いた乾燥工程におけるものではない。 したがって、撹拌の対象となる工程がそもそも相違し、甲1発明は、撹拌下において乾燥するものではなく、ずり速度自体が発生するものではないから、申立人の「甲1に記載の発明における『b:親水性有機溶媒を添加するとともに剪断力により分散液を撹拌する、』は、本件発明1における『前記スラリーを、ずり速度500秒-1~20000秒-1の撹拌下にて』に相当」するとの前提に誤りがある。 よって、申立人の主張は、採用できない。 (イ)本件発明1で特定しているのは「乾燥速度0.01%/分~10%/分」という「スラリー100質量部当たりの液体媒体の1分あたりの脱離量(質量部)」(本件明細書段落【0098】)であるのに対し、甲1に記載の発明の「乾燥速度」は、「1~24時間、好ましくは2~12時間、さらに好ましくは3~10時間(特に4~8時間)」という「時間」であるから、そもそも次元(単位)が異なり、これらを数値として対比することはできない。また、甲5にも、「スラリー100質量部当たりの液体媒体の1分あたりの脱離量(質量部)」についての記載はない。 したがって、甲1に記載の発明において、甲5の記載を参照しても、本件発明1の「乾燥速度」を導き出すことはできない。 よって、申立人の主張は、採用できない。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、本件発明は、甲1に記載された発明並びに甲2~15(刊行物2~4、甲5~9、刊行物10及び甲11~15)に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由(進歩性欠如)には理由がない。 第5 むすび したがって、申立人の特許異議の申立の理由及び証拠によっては、請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。 また、ほかに請求項1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700151

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  • 2025-700013異議申立 / 2025-03-17 / 維持セルロース繊維乾燥体及びその製造方法、並びに樹脂複合体の製造方法
    共通の審決分類: 121・C08B
  • 2023-701251異議申立 / 2024-09-03 / 訂正認容疎水性セルロースナノファイバー、該疎水性セルロースナノファイバーの有機溶媒分散液…
    共通の審決分類: 121・C08B
  • 2022-700889異議申立 / 2023-08-01 / 訂正認容セルロースナノファイバー分散液及びその製造方法
    共通の審決分類: 121・C08B
  • 2022-700800異議申立 / 2023-06-06 / 請求成立(取消)セルロースナノファイバーの製造方法
    共通の審決分類: 121・C08B

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