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特許異議申立

2025-700066

パウチ型電池ケースおよびパウチ型二次電池

審判番号
2025-700066
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-558527外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7516545
請求日
2025年01月15日
審決日
2025年03月31日
公報発行日
2025年05月30日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (H01M) / P1651.537-Y (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7516545号発明「パウチ型電池ケースおよびパウチ型二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第7516545号の請求項1~18に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 14項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特許第7516545号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~18に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)4月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2020年4月14日、韓国)を国際出願日とする出願であって、令和6年7月5日にその特許権の設定登録がされ、同年7月16日に特許掲載公報が発行された。

その後、令和7年1月15日に特許異議申立人松山徳子(以下、「特許異議申立人」という。)により本件の請求項1~18に係る特許に対する特許異議の申立てがなされ、甲第1号証~甲第5号証が提出され、令和7年3月19日に特許異議申立人により手続補正書及び甲第4号証の2が提出された。

第2 本件発明

本件特許の請求項1~18に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明18」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~18に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】(本件発明1)

正極、セパレータ、負極が積層されて形成される電極組立体を収納するパウチ型電池ケースであって、

第1ポリマーで最内層として形成され、厚さが70μm~90μmであるシーラント層と、

第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層と、

前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層され、厚さが60μm~100μmであり、結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層とを含むパウチフィルム積層体を含む、前記パウチ型電池ケース。

【請求項2】(本件発明2)

前記アルミニウム合金薄膜は、

鉄を1.2wt%~1.7wt%含む、請求項1に記載のパウチ型電池ケース。

【請求項3】(本件発明3)

前記アルミニウム合金薄膜は、

鉄を1.3wt%~1.7wt%含む、請求項1に記載のパウチ型電池ケース。

【請求項4】(本件発明4)

前記アルミニウム合金薄膜は、

シリコンを0.2wt%以下含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。

【請求項5】(本件発明5)

前記アルミニウム合金薄膜は、

結晶粒度が10.5μm~12.5μmである、請求項2~4のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。

【請求項6】(本件発明6)

前記アルミニウム合金薄膜は、

合金番号がAA8021である、請求項1~5のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。

【請求項7】(本件発明7)

前記ガスバリア層は、

厚さが70μm~90μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。

【請求項8】(本件発明8)

前記シーラント層は、厚さが前記ガスバリア層の厚さの0.8倍~1.1倍である、請求項1~7のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。

【請求項9】(本件発明9)

前記第1ポリマーは、

ポリプロピレン(PP)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。

【請求項10】(本件発明10)

前記表面保護層は、

厚さが6μm~25μmである、請求項1~9のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。

【請求項11】(本件発明11)

前記第2ポリマーは、

ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。

【請求項12】(本件発明12)

第3ポリマーで形成されると共に、前記表面保護層と前記ガスバリア層との間に積層される延伸補助層をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。

【請求項13】(本件発明13)

前記延伸補助層は、

厚さが20μm~50μmである、請求項12に記載のパウチ型電池ケース。

【請求項14】(本件発明14)

前記第3ポリマーは、

ナイロン(Nylon)を含む、請求項12または13に記載のパウチ型電池ケース。

【請求項15】(本件発明15)

前記パウチフィルム積層体の総厚さが180μm以上である、請求項1~14のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。

【請求項16】(本件発明16)

前記パウチフィルム積層体は、15mm×80mmのサイズで裁断した後、50mm/minの引張速度で引っ張りながら測定した引張強度が200N/15mm~300N/15mmであり、伸び率が105%~150%である、請求項1~15のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。

【請求項17】(本件発明17)

前記パウチフィルム積層体は、穿孔強度が30N以上である、請求項1~16のいずれか一項に記載のパウチ型電池ケース。

【請求項18】(本件発明18)

正極、セパレータ、負極が積層されて形成される電極組立体と、

前記電極組立体を収納するパウチ型電池ケースとを含み、

前記電池ケースは、

第1ポリマーで最内層として形成され、厚さが70μm~90μmであるシーラント層と、

第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層と、

前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層され、厚さが60μm~100μmであり、結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層とを含むパウチフィルム積層体を含む、パウチ型二次電池。

第3 特許異議の申立ての理由の概要

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特許異議申立人が申し立てた理由は、概略以下のとおりである。

1 申立理由1 特許法第29条第2項(特許異議申立書「3(4)ウ(ア)理由A(甲第1号証を主引例とする場合)」(35~48頁))

請求項1~15に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証、甲第2号証、及び、甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

請求項16に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、及び、甲第4号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

請求項17、18に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証、甲第2号証、及び、甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項17、18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

2 申立理由2 特許法第29条第2項(特許異議申立書「3(4)ウ(イ)理由A(甲第5号証を主引例とする場合)」(48~55頁))

請求項1~18に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第5号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

3 申立理由3 特許法第36条第6項第1号(特許異議申立書「3(4)ウ(ウ)理由B(請求項1~18)」(55、56頁))

請求項1~18に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

甲第1号証:特開2019-38183号公報
甲第2号証:国際公開2013/168606号
甲第3号証:JIS H4160-1994 アルミニウム及びアルミニウム合金はく(https://kikakurui.com/h4/H4160-2006-01.html)
甲第4号証:張り出し成形用アルミニウム箔樹脂フィルム積層材に関する研究 坂口雅司、大阪大学、1989、博士論文 1~5頁
甲第5号証:特開2017-84786号公報

第4 各甲号証の記載

1 甲第1号証

(1)甲第1号証に記載された事項

甲第1号証には、以下の記載がある。

なお、下線は、当審で付したものであり、以下の各甲号証についても同様である。

「【0001】
本発明は、例えば、携帯電話用、ノートパソコン用、車載用、定置型のリチウムイオン二次電池等の電池や、リチウムイオンキャパシタのケースとして好適に用いられる積層体および蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン等のOA機器、携帯電話、ゲーム機、ヘッドフォンステレオ、電子手帳等の各種電子機器の小型化、軽量化に伴い、電源部の電池としても、小型化、軽量化を図る観点からリチウムイオン二次電池が多く用いられるようになってきている。このリチウムイオン二次電池の代表的な形態として、金属容器からなる円筒型電池や角型電池の他、金属層を含む積層体を外装材に用いるラミネート型電池が挙げられる。その中でも、形状の自由度、薄膜化、軽量化、放熱性の点で優位であるラミネート型の外装材(例えば、基材層/接着剤層/アルミニウム箔層/接着剤層/樹脂層のような構成)が注目されている。
【0003】
ラミネート型リチウムイオン二次電池は、外装材を深絞り加工などの冷間成形により凹部を形成し、該凹部内に正負極活物質等からなる電極群および電解質を収納して、周縁部を熱融着により封緘した形態が知られている。この形態の二次電池は、外装材に形成する前記凹部を深くするほど電極群の収納量が増加し、電池容量を多くすることができる。」
「【0009】
上記した課題を解決するための本発明は、基材層、金属層および樹脂層を含む積層体であって、積層体の最大荷重が、金属層の最大荷重の2.8倍以上、4.0倍以下であり、かつ基材層の厚さが金属層の厚さ以下であることを特徴とする積層体である。」
「【0012】
本発明の金属層は、主に積層体に酸素や水分のバリア性を付与するために用いる。金属層としては、アルミニウム、ステンレス鋼等の各種金属箔を使用することができるが、加工性やコストの面からアルミニウム箔を用いることが好ましい。
【0013】
アルミニウム箔としては、公知のアルミニウム箔が使用でき、その成分も公知の純アルミニウムおよびアルミニウム合金が使用できる。アルミニウムの純度は特に制限されず、工業用の純アルミニウムの他、JIS H4160:1994で規定された、合金番号1085、1070、1050、1N30、1100、3003、3004、8021、8079の合金等、公知のものが採用できるが、マンガン、鉄およびケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1成分が0.7質量%以上含まれているものが好ましい。上限は特に制限されるものではないが、箔を製造する関係上、2.0質量%程度である。マンガン、鉄またはケイ素を0.7質量%以上含むことにより、靱性が向上しピンホールやクラックの防止に効果がある。また調質についても、焼きなまし材(O材)、圧延上がり材(H材)、それらの中間材(半硬材)のいずれでも適用可能であり、要求特性に応じて適宜選択できるが、焼きなまし材(O材)が成形性等の点で好ましい。また、必要に応じて水、洗剤、酸、アルカリまたは有機溶剤等で洗浄等を施しておいてもよい。金属層の厚さは、バリア性、耐ピンホール性、加工性の点から、20~150μmが好ましく、25~100μmがより好ましい。」
「【0015】
本発明の基材層は、電池の外装材として用いた時に外側となる層を指し、金属層の樹脂層と反対側に積層されている層を指す。基材層の主たる役割は、深絞り加工時の金属層の破断やピンホール発生を抑制する目的で設ける層である。また、基材層に求められる性能としては、内部に収納する電極群との電気的絶縁性、外部からの応力で破損しない強度、深絞り成形性に優れること、電池製造時の熱融着や電池使用時の発熱に耐えうる耐熱性、電池製造時に電解液が付着しても劣化しにくい耐薬品性等が挙げられる。」
「【0019】
本発明の樹脂層は、電池の外装材として用いた時に内側となる層を指し、金属層の基材層と反対側に積層されている層を指す。樹脂層はラミネートフィルム外装材を、深絞り加工などの冷間成形により凹部を形成し、該凹部内に正負極活物質等からなる電極群および電解質を収納して、周縁部を熱融着により封緘するために必要な層である。そのため、本発明の樹脂層は熱融着できることが好ましい。」
「【0042】
<実施例1>
(後略)
【0043】
(樹脂層)
滑材としてエルカ酸アミドを1,500ppm(質量基準)含有するエチレン-プロピレン共重合体を含む厚さ80μmのシートを製造し、片面をコロナ処理をしたものを樹脂層とした。」
「【0048】
<実施例4>
平均粒径1μmのシリカ粒子を混練した、厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを製造した。この二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にコロナ処理を行ったものを基材層とした。
【0049】
金属層として、片面が化成処理された厚さ40μmのアルミニウム箔(8021-O材)を用意した。アルミニウム箔の化成処理をしていない面と、基材層の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面を積層するように、二液硬化型のウレタン系接着剤でドライラミネートした。
【0050】
樹脂層は実施例1と同じ物を用いて、基材層と積層したアルミ箔の化成処理された面と、樹脂層のコロナ処理を施した面をオレフィン系接着剤でドライラミネートして、基材層/金属層/樹脂層からなる積層体を作製した。金属層の最大荷重は40N/10mm、積層体の最大荷重は143N/10mmであり、積層体の最大荷重は金属層の最大荷重の3.6倍であった。積層体の動摩擦係数は、基材層表面が0.23、樹脂層表面が0.19であった。」

(2)甲第1号証に記載された発明

(2-1)ラミネート型リチウムイオン二次電池のケースに係る発明

ア 【0001】~【0003】、【0019】より、甲第1号証には、深絞り加工などの冷間成形により凹部を形成し、該凹部内に正負極活物質等からなる電極群および電解質を収納して、周縁部を熱融着により封緘したラミネートフィルム外装材である積層体を含むラミネート型リチウムイオン二次電池のケースが記載されている。

イ 【0019】、【0043】、【0050】より、甲第1号証の樹脂層は、電池の外装材として用いた時に内側となる層であり、実施例4の樹脂層は実施例1の樹脂層と同じ物であるから、エチレン-プロピレン共重合体を含み、厚さ80μmである。

ウ 【0015】、【0048】より、甲第1号証の基材層は、金属層の樹脂層と反対側に積層され、電池の外装材として用いた時に外側となる層であり、実施例4の基材層は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである。

エ 【0012】、【0013】、【0049】より、甲第1号証の金属層は、積層体に酸素や水分のバリア性を付与するために用いられ、合金番号8021のアルミニウム合金を成分とするアルミニウム箔が使用され、実施例4の金属層は、厚さ40μmのアルミニウム箔(8021-O材)である。

オ 【0009】より、甲第1号証の積層体は、樹脂層と、金属層と、基材層とを含むものである。

カ 以上より、特に実施例4に係る構成に着目し、上記記載ア~オ及び図面を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されている。

(甲1発明1)

深絞り加工などの冷間成形により凹部を形成し、該凹部内に正負極活物質等からなる電極群および電解質を収納して、周縁部を熱融着により封緘したラミネートフィルム外装材である積層体を含むラミネート型リチウムイオン二次電池のケースであって、

電池の外装材として用いた時に内側となる層であり、エチレン-プロピレン共重合体を含み、厚さ80μmである樹脂層と、

金属層の樹脂層と反対側に積層され、電池の外装材として用いた時に外側となる層であり、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである基材層と、

積層体に酸素や水分のバリア性を付与するために用いられ、合金番号8021のアルミニウム合金を成分とするアルミニウム箔が使用され、厚さ40μmのアルミニウム箔(8021-O材)である金属層とを含むラミネートフィルム外装材である積層体を含む、ラミネート型リチウムイオン二次電池のケース。

(2-2)ラミネート型リチウムイオン二次電池に係る発明

ア 【0001】~【0003】、【0019】より、甲第1号証のラミネート型リチウムイオン二次電池は、正負極活物質等からなる電極群および電解質と、深絞り加工などの冷間成形により凹部を形成し、該凹部内に正負極活物質等からなる電極群および電解質を収納して、周縁部を熱融着により封緘したラミネートフィルム外装材である積層体を含むラミネート型リチウムイオン二次電池のケースとを含むといえる。

イ 上記(2-1)イ~オより、甲第1号証の実施例4のラミネート型リチウムイオン二次電池のケースは、電池の外装材として用いた時に内側となる層であり、エチレン-プロピレン共重合体を含み、厚さ80μmである樹脂層と、金属層の樹脂層と反対側に積層され、電池の外装材として用いた時に外側となる層であり、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである基材層と、積層体に酸素や水分のバリア性を付与するために用いられ、合金番号8021のアルミニウム合金を成分とするアルミニウム箔が使用され、厚さ40μmのアルミニウム箔(8021-O材)である金属層とを含むラミネートフィルム外装材である積層体を含むものである。

ウ 以上より、特に実施例4に係る構成に着目し、上記記載ア、イ及び図面を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されている。

(甲1発明2)

正負極活物質等からなる電極群および電解質と、

深絞り加工などの冷間成形により凹部を形成し、該凹部内に正負極活物質等からなる電極群および電解質を収納して、周縁部を熱融着により封緘したラミネートフィルム外装材である積層体を含むラミネート型リチウムイオン二次電池のケースとを含み、

ラミネート型リチウムイオン二次電池のケースは、

電池の外装材として用いた時に内側となる層であり、エチレン-プロピレン共重合体を含み、厚さ80μmである樹脂層と、

金属層の樹脂層と反対側に積層され、電池の外装材として用いた時に外側となる層であり、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである基材層と、

積層体に酸素や水分のバリア性を付与するために用いられ、合金番号8021のアルミニウム合金を成分とするアルミニウム箔が使用され、厚さ40μmのアルミニウム箔(8021-O材)である金属層とを含むラミネートフィルム外装材である積層体を含む、ラミネート型リチウムイオン二次電池。

2 甲第2号証

(1)甲第2号証に記載された事項

甲第2号証には、以下の記載がある。

「[0017] また、本発明によれば、上記の成形包装体材料を用いる二次電池が提供されることが好ましい。この二次電池によれば、上記の深い凹部成形を有した成形包装体材料を用いるため、二次電池外装材の成形凹部内に格納することができる電極材等の電池材の充填量が増えて、より電池容量を高めることができる等、二次電池の高性能化に寄与できる。」

「[0023](1)アルミニウム合金箔の組成
本実施形態において、アルミニウム合金箔に含まれるFeの含有量は、0.8~2.0mass%である。Feの含有量が0.8mass%未満になると、引張強さTS及び0.2%耐力YSが共に低下するので、上記圧延方向に対する45度方向のTS×(TS/YS)の値が小さくなり、アルミニウム合金箔の成形性が低下する。また、Feの含有量が2.0mass%を超えると、鋳造時に巨大な金属間化合物が形成され易くなり、角筒絞り試験時における割れの起点となり易くなるので成形性が低下する。Feの含有量は、特に1.1mass%以上、1.6mass%以下が強度の観点からより好ましい。このFeの含有量は、例えば、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0mass%であり、ここで例示した数値の何れか2つの値の間の範囲内であってもよい。
[0024] 本実施形態において、アルミニウム合金箔に含まれるSiの含有量は、0.05~0.2mass%である。Siの含有量が0.05mass%未満になると、引張強さTS及び0.2%耐力YSが低下するために、上記圧延方向に対する45度方向のTS×(TS/YS)の値が小さくなり、成形性が低下する。また、高純度の地金(Al)を使用することにもなり経済的にも好ましくない。一方、Siの含有量が0.2mass%を超えると、アルミニウム合金箔中の晶出物サイズが大きくなり、晶出物の個数が減少する。その結果、最終焼鈍後の平均結晶粒径が大きくなるために、成形時に不均一な成形が起こり易くなり、アルミニウム合金箔の成形性が低下する。Siの含有量は、特に0.06mass%以上、0.1mass%以下が強度と平均結晶粒径の観点から好ましい。このSiの含有量は、例えば、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20mass%であり、ここで例示した数値の何れか2つの値の間の範囲内であってもよい。
[0025] 本実施形態において、アルミニウム合金箔に含まれるCuの含有量は、0.0025~0.2mass%である。Cuは添加することで、アルミニウム合金箔の強度を向上させる。Cuの含有量が0.0025mass%未満であると、引張強さTSと0.2%耐力YSがそれぞれ低くなり、上記圧延方向に対する45度方向のTS×(TS/YS)の値が小さくなり、アルミニウム合金箔の成形性が低下する。また、Cuの含有量が0.2mass%を超えると、アルミニウム合金箔表面のCube方位密度が低下するために、アルミニウム合金箔の成形性が低下する。Cuの含有量は、特に0.005mass%以上、0.05mass%以下が強度とアルミニウム合金箔表面の結晶方位の観点から好ましい。このCuの含有量は、例えば、0.0025、0.0100、0.0150、0.0200、0.0250、0.0300、0.0350、0.0400、0.0500、0.0600、0.0700、0.0800、0.0900、0.1000、0.1100、0.1200、0.1300、0.1400、0.1500、0.1600、0.1700、0.1800、0.1900、0.2000mass%であり、ここで例示した数値の何れか2つの値の間の範囲内であってもよい。
[0026] 本実施形態において、アルミニウム合金箔に含まれる不可避的不純物は、個々に0.05mass%以下、合計で0.15mass%以下である。特にTi、Mn、Mg、Zn等などの不可避的不純物が、個々に0.05mass%、及び合計で0.15mass%を超えると、圧延時の硬化が大きく、圧延中の切れが生じ易くなる。
[0027](2)アルミニウム合金箔の物性
本実施形態において、アルミニウム合金箔における最終焼鈍後の平均結晶粒径は7μm以上、20μm以下である。好ましくは、10μm以上、18μm以下である。この平均結晶粒径は、例えば、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
なお、アルミニウム合金箔における平均結晶粒径は、公知の方法で測定することができ、例えば、切断法を用いて測定することができる。切断法は、ある線分内に何個結晶粒があるかを数え、線分をその個数で除した大きさを求める方法である。
[0028] 最終焼鈍後におけるアルミニウム合金箔の平均結晶粒径は、添加する元素量や製造時の各種条件の影響を大きく受ける。特に、添加するFeとSiの量、中間焼鈍後から最終箔厚までの冷間圧延率及び最終焼鈍条件の影響を大きく受ける。上記記載の平均結晶粒径を得るためには、これらの添加元素量及び製造条件を適宜調整する必要がある。7μm未満ではアルミニウム合金箔の平均結晶粒径が細かすぎるために、引張強さTSよりも0.2%耐力YSの増加量が大きくなるために、圧延方向に対する45度方向のTS×(TS/YS)の値が減少し、アルミニウム合金箔の成形性が低下する。一方、アルミニウム合金箔の平均結晶粒径が20μmを超えると、板厚断面方向に占める結晶粒の個数が少ないために、変形の局在化が起こり易くなり、アルミニウム合金箔の成形性が低下する。」

「[0040] 本実施形態において、アルミニウム合金箔の厚さは任意であり、用途や成形条件等に応じて適宜調整し得るが、一般的には10~100μmであることが好ましい。厚さが10μm未満のアルミニウム合金箔を製造する場合、ピンホールの発生や圧延時の切れ等が発生し易くなり、生産効率が低下し易くなる。また、アルミニウム合金箔の厚さが100μmを超えると、包装体全体の厚さが厚くなりすぎて、得られる成形包装体の小型化が図りにくくなるため、好ましくない。」

「[0056] 図1は、シート状で薄型のリチウムイオン二次電池の内部構造の一例を示した模式的断面図である。また、図2は、二次電池の外装材の一般例を示した模式的断面図である。
本実施形態における成形包装体材料1は、本実施形態におけるアルミニウム合金箔8単体又は本実施形態におけるアルミニウム合金箔8を含む複数層からなるものであってもよく、特に制限されるものではないが、複数層とする場合には、少なくとも構成要素としてアルミニウム合金箔を構成として備えていることが必要である。具体的には、図2に示されるように、合成樹脂製フィルム10、アルミニウム合金箔8、熱封緘層9の順に積層されてなるものを例示することができるが積層構造は特に制限されるものではない。」

「[0069] 表1に記載した組成を持つアルミニウム鋳塊を準備し、表1に記載した均質化処理、冷却、熱間圧延、冷間圧延、箔圧延及び最終焼鈍を施して、厚さ40μmのアルミニウム合金箔を得た。得られたアルミニウム合金箔の圧延方向に対する0度、45度、90度における引張強さTS、0.2%耐力YS及び伸びを測定し、TS×(TS/YS)の値を算出した結果を表2に示した。さらにアルミニウム合金箔の平均結晶粒径とアルミニウム合金箔表面の結晶方位密度も同様に表2に示した。また実際の電池外装材を模擬したラミネート複合材を試作し、角筒絞り成形試験の結果も表2に示した。

「[0074]
[表1]
[図:0001422479000001.jpg]
」
「[0075]
[表2]
[図:0001422479000002.jpg]
」
「[0076] 以上の結果から明らかなように、実験例1~21、28、29、及び31に係るアルミニウム合金箔は、平均結晶粒径、アルミニウム合金箔の方位密度が制御されているために、実験例に係るアルミニウム合金箔22~27、30、32~39に比べて、角筒絞り成形試験の成形高さが大きく、成形性に優れていることを示している。従って、実験例1~21、28、29、及び31に係るアルミニウム合金箔を用いて得られた成形包装体材料は、深絞り成形が良好に行え、厚さの比較的厚い内容物を包装するのに適していることが分かる。また、実験例1~21に係るアルミニウム合金箔は、さらに、圧延方向に対する0度、45度、90度方向の強度バランスが最適に制御されているので、角筒絞り成形試験の成形高さがより大きく、成形性に優れていることを示している。一方、実験例22~27、30、32~39に係るアルミニウム合金箔は、角筒絞り成形試験の成形高さが低く、成形性が良好でないことが明らかである。従って、実験例22~27、30、32~39に係るアルミニウム合金箔を用いて得られた成形包装体材料は、深絞り成形が良好に行えず、厚さの比較的厚い内容物を包装するのに適していないことが分かる。
[0077] また、以上の結果から明らかなように、特定の組成のアルミニウム合金鋳塊を特定の工程で処理するため、実験例1~21に係るアルミニウム合金箔は、実験例に係るアルミニウム合金箔22~39に比べて、角筒絞り成形試験の成形高さが大きく、成形性に優れていることを示している。従って、実験例1~21に係るアルミニウム合金箔を用いて得られた成形包装体材料は、深絞り成形が良好に行え、厚さの比較的厚い内容物を包装するのに適していることが分かる。」

(2)甲第2号証に記載された技術事項

上記(1)より、甲第2号証の実験例15に着目すると、以下の技術事項(以下、「甲2技術事項」という。)が記載されている。

なお、各段落の末尾の括弧内に関連する段落番号を記載した。

合成樹脂製フィルム、アルミニウム合金箔、熱封緘層の順に積層されてなる成形包装体材料を用いる二次電池であって、([0017] 、[0056])

アルミニウム合金箔は、Siが0.09mass%、Feが1.59mass%、Cuが0.049mass%、Alが残、その他合計が0.11mass%である組成を持つアルミニウム鋳塊から得られた厚さ40μmのアルミニウム合金箔であり、その平均結晶粒径は11.4μmとする技術。([0069] 、[0074]、[0075])

3 甲第3号証

(1)甲第3号証に記載された事項

甲第3号証には、以下の記載がある。

「1.適用範囲 この規格は、圧延したアルミニウム及びアルミニウム合金はく(以下、はくという。)について規定する。」(1/11頁)

「
[図:0001422479000003.jpg]
」(5/11頁)

(2)甲第3号証に記載された技術事項

上記(1)より、甲第3号証の合金番号8021に着目すると、以下の技術事項(以下、「甲3技術事項」という。)が記載されている。

アルミニウム合金はくの合金番号8021は、Siが0.15%以下、Feが1.2~1.7%、Cuが0.05%以下、Alが残部、その他合計が0.15%以下であるという技術。

4 甲第4号証及び甲第4号証の2

(1)甲第4号証に記載された事項

甲第4号証には、以下の記載がある。

「(前略)アルミニウム箔の様な極薄材料では、その特性が箔厚の影響を大きく受け、図1.2、図1.3に示す様に箔厚の減少とともに強度、伸び、限界絞り比(LDR)1)が低下することが知られている。よってアルミニウム箔の厚さを薄くしただけでは製品化するのがむずかしく、(以下略)」(2頁)

「
[図:0001422479000004.jpg]
」(4頁)
「
[図:0001422479000005.jpg]
」(5頁)

(2)甲第4号証に記載された技術事項

上記(1)より、甲第4号証には、以下の技術事項(以下、「甲4技術事項」という。)が記載されている。

アルミニウム箔の厚みの減少とともに、引張り強さ、伸び、及び、限界絞り比が低下する、すなわち、アルミニウム箔の厚みが厚くなるほど引張り強さ、伸び、及び、限界絞り比が向上するという技術。

(3)甲第4号証の2について

甲第4号証の2は、甲第4号証が開示された年に関する証拠である。

5 甲第5号証

(1)甲第5号証に記載された事項

甲第5号証には、以下の記載がある。

「【請求項6】
少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項1~5のいずれかに記載の電池用包装材料で形成された容器内に収容されている、電池。」
「【0016】
1.電池用包装材料の積層構造
本発明の電池用包装材料は、図1に示すように、少なくとも、アルミニウム合金箔層3を備えている。本発明の電池用包装材料は、例えば、図1に示すように、基材層1、アルミニウム合金箔層3、及び熱融着性樹脂層4をこの順に有する積層体であってもよい。本発明の電池用包装材料がこのような積層体である場合、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層4同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。」
「【0030】
[アルミニウム合金箔層3]
電池用包装材料において、アルミニウム合金箔層3は、電池用包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層である。」
「【0032】
本発明において、電池用包装材料の厚みをより一層薄くして電池のエネルギー密度を高めつつ、成形性に優れ、さらに、成形後の外観に優れた電池用包装材料とする観点からは、アルミニウム合金箔層の厚みとしては、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは50μm以下、さらにより好ましくは35μm以下、さらには30μm以下、さらには15~30μm程度、さらには15~25μm程度、特に15~20μm程度が挙げられる。」
「【0035】
アルミニウム合金箔層3における平均結晶粒径は、10.0μm以下であればよいが、より成形性を高める観点からは、平均結晶粒径としては、好ましくは1.0~7.0μm程度、より好ましくは1.0~3.2μm程度が挙げられる。」
「【0066】
熱融着性樹脂層4に使用される樹脂成分については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。
【0067】
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。」
「【0073】
また、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、熱融着性樹脂層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、好ましくは60μm以下、より好ましくは15~40μm程度が挙げられる。」
「【0077】
[表面被覆層]
本発明の電池用包装材料においては、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、基材層1の上(基材層1のアルミニウム合金箔層3とは反対側)に、必要に応じて、表面被覆層(図示しない)を設けてもよい。表面被覆層は、電池を組み立てた時に、最外層に位置する層である。
【0078】
表面被覆層は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などにより形成することができる。表面被覆層は、これらの中でも、2液硬化型樹脂により形成することが好ましい。表面被覆層を形成する2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂、2液硬化型ポリエステル樹脂、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、表面被覆層には、マット化剤を配合してもよい。」
「【0090】
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。」
「【0093】
<アルミニウム合金箔>
A8021材:軟質アルミニウム(JIS H4160 A8021H-O)
なお、アルミニウム合金の平均結晶粒径、第二相粒子は、圧延条件等を変更することにより調整されたものである。すなわち、圧延条件等を種々変更して製造されたアルミニウム合金について、平均結晶粒径及び第二相粒子を測定した上で、実施例及び比較例における電池用包装材料の製造に用いた。」

「【0106】

【表1】

[図:0001422479000006.jpg]

「【0107】
【表2】
[図:0001422479000007.jpg]
」

(2)甲第5号証に記載された発明

(2-1)二次電池に使用される電池用包装材料で形成された容器に係る発明

ア 【請求項6】、【0016】、【0090】より、甲第5号証には、正極、負極を備えた電池素子を収容し、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される二次電池に使用される電池用包装材料で形成された容器が記載されている。

イ 【0016】、【0066】、【0067】、【0073】より、熱融着性樹脂層は、最内層になり、ポリプロピレンが使用され、厚みが60μm以下である。

ウ 【0077】、【0078】より、表面被覆層は、電池を組み立てた時に、最外層に位置する層であり、ポリエステル樹脂により形成されるものである。

エ 【0016】、【0077】より、電池用包装材料は、基材層、アルミニウム合金箔層、熱融着性樹脂層をこの順に有する積層体であって、基材層の上(基材層のアルミニウム合金箔層とは反対側)に、表面被覆層を設けるものであることから、アルミニウム合金箔層は、表面被覆層と熱融着性樹脂層との間に積層されているといえる。

また、【0030】、【0032】、【0035】より、アルミニウム合金箔層は、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層であり、厚みが100μm以下であり、平均結晶粒径は、10.0μm以下である。

以上より、アルミニウム合金箔層は、表面被覆層と熱融着性樹脂層との間に積層され、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層であり、厚みが100μm以下であり、平均結晶粒径は、10.0μm以下である。

オ 【0016】、【0077】より、甲第5号証の電池用包装材料は、熱融着性樹脂層と、アルミニウム合金箔層と、表面被覆層とを含むものである。

カ 以上より、上記記載ア~オ及び図面を総合勘案すると、甲第5号証には、次の発明(以下、「甲5発明1」という。)が記載されている。

(甲5発明1)

正極、負極を備えた電池素子を収容し、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される二次電池に使用される電池用包装材料で形成された容器であって、

最内層になり、ポリプロピレンが使用され、厚みが60μm以下である熱融着性樹脂層と、

電池を組み立てた時に、最外層に位置する層であり、ポリエステル樹脂により形成される表面被覆層と、

表面被覆層と熱融着性樹脂層との間に積層され、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層であり、厚みが100μm以下であり、平均結晶粒径は、10.0μm以下であるアルミニウム合金箔層とを含む電池用包装材料で形成された容器。

(2-2)二次電池に係る発明

ア 【請求項6】、【0016】、【0090】より、甲第5号証の二次電池は、正極、負極を備えた電池素子と、正極、負極を備えた電池素子を収容し、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される二次電池に使用される電池用包装材料で形成された容器とを含むといえる。

イ 上記(2-1)イ~オより、甲第5号証の電池用包装材料で形成された容器は、最内層になり、ポリプロピレンが使用され、厚みが60μm以下である熱融着性樹脂層と、

電池を組み立てた時に、最外層に位置する層であり、ポリエステル樹脂により形成される表面被覆層と、

表面被覆層と熱融着性樹脂層との間に積層され、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層であり、厚みが100μm以下であり、平均結晶粒径は、10.0μm以下であるアルミニウム合金箔層とを含む電池用包装材料を含むものである。

ウ 以上より、上記記載ア、イ及び図面を総合勘案すると、甲第5号証には、次の発明(以下、「甲5発明2」という。)が記載されている。

(甲5発明2)

正極、負極を備えた電池素子と、

正極、負極を備えた電池素子を収容し、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される二次電池に使用される電池用包装材料で形成された容器とを含み、

電池用包装材料で形成された容器は、

最内層になり、ポリプロピレンが使用され、厚みが60μm以下である熱融着性樹脂層と、

電池を組み立てた時に、最外層に位置する層であり、ポリエステル樹脂により形成される表面被覆層と、

表面被覆層と熱融着性樹脂層との間に積層され、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層であり、厚みが100μm以下であり、平均結晶粒径は、10.0μm以下であるアルミニウム合金箔層とを含む電池用包装材料を含む、二次電池。

第5 当審の判断

1 申立理由1(甲第1号証を主引例とする場合)について

(1)本件発明1について

本件発明1と甲1発明1とを対比する。

ア 対比

(ア)甲1発明1の「正負極活物質等からなる電極群および電解質」は、電極等が組み立てられたものといえるので、本件発明1の「正極、セパレータ、負極が積層されて形成される電極組立体」とは、「電極組立体」である点で共通する。

また、甲1発明1の「ラミネート型リチウムイオン二次電池のケース」は、「周縁部を熱融着により封緘したラミネートフィルム外装材である積層体を含む」ことから、本件発明1の「パウチ型電池ケース」に相当する。

そうすると、甲1発明1の「深絞り加工などの冷間成形により凹部を形成し、該凹部内に正負極活物質等からなる電極群および電解質を収納して、周縁部を熱融着により封緘したラミネートフィルム外装材である積層体を含むラミネート型リチウムイオン二次電池のケース」と本件発明1の「正極、セパレータ、負極が積層されて形成される電極組立体を収納するパウチ型電池ケース」とは、「電極組立体を収納するパウチ型電池ケース」である点で共通する。

しかし、「電極組立体」に関して、本件発明1は、「正極、セパレータ、負極が積層されて形成される」のに対し、甲1発明1は、そのような構成に限定されるものではない点で相違する。

(イ)甲1発明1の樹脂層の「エチレン-プロピレン共重合体」は、ポリマーであり、当該ポリマーを後述する表面保護層のポリマーと区別して「第1ポリマー」と称すると、本件発明1のシーラント層の「第1ポリマー」に相当する。

また、甲1発明1の樹脂層の「電池の外装材として用いた時に内側となる層」は、本件発明1のシーラント層の「最内層」に相当する。

更に、甲1発明1の樹脂層と本件発明1のシーラント層とは、厚さが80μmである点で共通する。

以上より、本件発明1と甲1発明1とは、「第1ポリマーで最内層として形成され、厚さが80μmであるシーラント層」である点で共通する。

しかし、シーラント層の厚さに関して、本件発明1は「70μm~90μm」であるのに対し、甲1発明1は「80μm」である点で相違する。

(ウ)甲1発明1の基材層の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、ポリマーであり、当該ポリマーを先述したシーラント層のポリマーと区別して「第2ポリマー」と称すると、本件発明1の表面保護層の「第2ポリマー」に相当する。

また、甲1発明1の基材層の「金属層の樹脂層と反対側に積層され、電池の外装材として用いた時に外側となる層」は、本件発明1の表面保護層の「最外層」に相当する。

以上より、甲1発明1の「金属層の樹脂層と反対側に積層され、電池の外装材として用いた時に外側となる層であり、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである基材層」は、本件発明1の「第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層」に相当する。

(エ)甲1発明1の「アルミニウム箔(8021-O材)である金属層」は、「積層体に酸素や水分のバリア性を付与するために用いられ」ていることから、ガスバリア層であるといえる。

また、基材層が金属層の樹脂層と反対側に積層されていることから、金属層は、基材層と樹脂層との間に積層されているといえ、アルミニウム箔は「合金番号8021のアルミニウム合金を成分とする」ことから、アルミニウム合金薄膜であるといえるので、甲1発明1の金属層と本件発明1のガスバリア層とは、「前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層されるアルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層」である点で共通する。

しかし、ガスバリア層の厚さに関して、本件発明1は「60μm~100μm」であるのに対し、甲1発明1は「40μm」である点で相違する。

また、ガスバリア層の結晶粒度に関して、本件発明1は「10μm~13μm」であるのに対し、甲1発明1はそのような限定がない点で相違する。

(オ)甲1発明1の「ラミネートフィルム外装材である積層体」は、本件発明1の「パウチフィルム積層体」に相当する。

(カ)上記(ア)~(オ)によれば、本件発明1と甲1発明1との一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)

「 電極組立体を収納するパウチ型電池ケースであって、
第1ポリマーで最内層として形成され、厚さが80μmであるシーラント層と、
第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層と、
前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層されるアルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層とを含むパウチフィルム積層体を含む、前記パウチ型電池ケース。」

(相違点1)

電極組立体に関して、本件発明1は、「正極、セパレータ、負極が積層されて形成される」のに対し、甲1発明1は、そのような構成に限定されるものではない点。

(相違点2)

シーラント層の厚さに関して、本件発明1は「70μm~90μm」であるのに対し、甲1発明1は「80μm」である点。

(相違点3)

ガスバリア層の厚さに関して、本件発明1は「60μm~100μm」であるのに対し、甲1発明1は「40μm」である点。

(相違点4)

ガスバリア層の結晶粒度に関して、本件発明1は「10μm~13μm」であるのに対し、甲1発明1はそのような限定がない点。

イ 判断

事案に鑑み、相違点4について先に検討する。

甲1発明1の金属層のアルミニウム箔は、8021-O材を使用している。

そして、甲第2号証の[0028]の「最終焼鈍後におけるアルミニウム合金箔の平均結晶粒径は、添加する元素量や製造時の各種条件の影響を大きく受ける。特に、添加するFeとSiの量、中間焼鈍後から最終箔厚までの冷間圧延率及び最終焼鈍条件の影響を大きく受ける。上記記載の平均結晶粒径を得るためには、これらの添加元素量及び製造条件を適宜調整する必要がある。」(上記第4の2(1))、甲第5号証の【0093】の「なお、アルミニウム合金の平均結晶粒径、第二相粒子は、圧延条件等を変更することにより調整されたものである。」(上記第4の5(1))との記載から、アルミニウム合金薄膜の結晶粒度は、添加する元素量だけでなく、製造に際しての様々な条件を変えることにより決定されるものである。

そうすると、甲1発明1におけるアルミニウム箔は、合金番号8021のアルミニウム合金を成分とすることが規定されているのみであって、どのような条件で製造されているかについて規定されていない以上、甲1発明1のアルミニウム箔の結晶粒度は一意に定まるとはいえず、甲1発明1より、結晶粒度を「10μm~13μm」とすることが当業者にとって容易に想到しうるものであるとはいえない。

また、上記第4の3(2)より、甲第3号証には、合金番号8021は、Siが0.15%以下、Feが1.2~1.7%、Cuが0.05%以下、Alが残部、その他合計が0.15%以下であるということは記載されているものの、結晶粒度に関する記載はない。

更に、上記第4の2(1)の[0076]、[0077]の記載によれば、甲第2号証に記載された実験例のうち「実験例1~21に係るアルミニウム合金箔を用いて得られた成形包装体材料は、深絞り成形が良好に行え、厚さの比較的厚い内容物を包装するのに適している」ものであって、上記第4の2(2)より、当該実験例の中でも実験例15に着目した甲2技術事項は、合成樹脂製フィルム、アルミニウム合金箔、熱封緘層の順に積層されてなる成形包装体材料を用いる二次電池であって、アルミニウム合金箔は、Siが0.09mass%、Feが1.59mass%、Cuが0.049mass%、Alが残、その他合計が0.11mass%である組成を持つアルミニウム鋳塊から得られた厚さ40μmのアルミニウム合金箔であり、その平均結晶粒径は11.4μmとする技術であるものの、様々な実施例が記載された甲第2号証から、甲2技術事項に記載された実験例15のアルミニウム合金箔を選択し、甲1発明に採用することは、当業者にとって容易に想到しうるものであるとはいえない。

以上より、相違点4に係る構成は、当業者であっても容易に想到しうるものであるとはいえない。

(ウ)小括

以上より、本件発明1と甲1発明1とを対比すると、上記ア(カ)で示したように相違点1~相違点4を有するものであり、相違点4に係る構成が容易に想到しうるものでない以上、他の相違点について検討するまでもなく、請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証、甲第2号証、及び、甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2~15について

請求項2~15は、請求項1を直接若しくは間接に引用するものであり、本件発明2~15は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。

したがって、上記(1)と同様の理由により、請求項2~15に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証、甲第2号証、及び、甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明16について

請求項16は、請求項1を直接若しくは間接に引用するものであり、本件発明16は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。

上記第4の4(2)に記載したように、甲4技術事項は、「アルミニウム箔の厚みの減少とともに、引張り強さ、伸び、及び、限界絞り比が低下する、すなわち、アルミニウム箔の厚みが厚くなるほど引張り強さ、伸び、及び、限界絞り比が向上するという技術」であって、甲4技術事項を勘案しても、上記相違点4に係る構成が容易に想到しうるものでない以上、請求項16に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、及び、甲第4号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明17について

請求項17は、請求項1を直接若しくは間接に引用するものであり、本件発明17は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。

したがって、上記(1)と同様の理由により、請求項17に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証、甲第2号証、及び、甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明18について

本件発明18と甲1発明2とを対比する。

ア 対比

(ア)上記(1)ア(ア)の検討を援用するに、甲1発明2の「正負極活物質等からなる電極群および電解質」と、本件発明18の「正極、セパレータ、負極が積層されて形成される電極組立体」とは、「電極組立体」である点で共通する。

また、甲1発明2の「深絞り加工などの冷間成形により凹部を形成し、該凹部内に正負極活物質等からなる電極群および電解質を収納して、周縁部を熱融着により封緘したラミネートフィルム外装材である積層体を含むラミネート型リチウムイオン二次電池のケース」と本件発明18の「前記電極組立体を収納するパウチ型電池ケース」とは、「電極組立体を収納するパウチ型電池ケース」である点で共通する。

しかし、「電極組立体」に関して、本件発明18は、「正極、セパレータ、負極が積層されて形成される」のに対し、甲1発明2は、そのような構成に限定されるものではない点で相違する。

(イ)上記(1)ア(イ)の検討を援用するに、本件発明18と甲1発明2とは、「第1ポリマーで最内層として形成され、厚さが80μmであるシーラント層」である点で共通する。

しかし、シーラント層の厚さに関して、本件発明18は「70μm~90μm」であるのに対し、甲1発明2は「80μm」である点で相違する。

(ウ)上記(1)ア(ウ)の検討を援用するに、甲1発明2の「金属層の樹脂層と反対側に積層され、電池の外装材として用いた時に外側となる層であり、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである基材層」は、本件発明18の「第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層」に相当する。

(エ)上記(1)ア(エ)の検討を援用するに、甲1発明2の金属層と本件発明18とは、「前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層されるアルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層」である点で共通する。

しかし、ガスバリア層の厚さに関して、本件発明18は「60μm~100μm」であるのに対し、甲1発明1は「40μm」である点で相違する。

また、ガスバリア層の結晶粒度に関して、本件発明18は「10μm~13μm」であるのに対し、甲1発明1はそのような限定がない点で相違する。

(オ)甲1発明2の「ラミネートフィルム外装材である積層体」は、本件発明18の「パウチフィルム積層体」に相当する。

(カ)甲1発明2の「ラミネート型リチウムイオン二次電池」は、本件発明18の「パウチ型二次電池」に相当する。

(キ)上記(ア)~(カ)によれば、本件発明18と甲1発明2との一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)

「 電極組立体と、
前記電極組立体を収納するパウチ型電池ケースとを含み、
前記電池ケースは、
第1ポリマーで最内層として形成され、厚さが80μmであるシーラント層と、
第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層と、
前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層されるアルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層とを含むパウチフィルム積層体を含む、パウチ型二次電池。」

(相違点5)

電極組立体に関して、本件発明18は、「正極、セパレータ、負極が積層されて形成される」のに対し、甲1発明2は、そのような構成に限定されるものではない点。

(相違点6)

シーラント層の厚さに関して、本件発明18は「70μm~90μm」であるのに対し、甲1発明2は「80μm」である点。

(相違点7)

ガスバリア層の厚さに関して、本件発明18は「60μm~100μm」であるのに対し、甲1発明2は「40μm」である点。

(相違点8)

ガスバリア層の結晶粒度に関して、本件発明18は「10μm~13μm」であるのに対し、甲1発明2はそのような限定がない点。

イ 判断

事案に鑑み、相違点8について検討する。

相違点8についての検討は、上記(1)イの検討と同様であり、相違点8に係る構成は、当業者であっても容易に想到しうるものであるとはいえない。

(ウ)小括

以上より、本件発明18と甲1発明2とを対比すると、上記ア(キ)で示したように相違点5~相違点8を有するものであり、相違点8に係る構成が容易に想到しうるものでない以上、他の相違点について検討するまでもなく、請求項18に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証、甲第2号証、及び、甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではない。

2 申立理由2(甲第5号証を主引例とする場合)について

(1)本件発明1について

本件発明1と甲5発明1とを対比する。

ア 対比

(ア)甲5発明1の「正極、負極を備えた電池素子」は、電極等が組み立てられたものといえるので、本件発明1の「正極、セパレータ、負極が積層されて形成される電極組立体」とは、「電極組立体」である点で共通する。

また、甲5発明1の「電池素子が封止される二次電池に使用される電池用包装材料で形成された容器」は、「電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層同士が熱融着して電池素子を密封する」ことから、本件発明1の「パウチ型電池ケース」に相当する。

そうすると、甲5発明1の「正極、負極を備えた電池素子を収容し、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される二次電池に使用される電池用包装材料で形成された容器」と本件発明1の「正極、セパレータ、負極が積層されて形成される電極組立体を収納するパウチ型電池ケース」とは、「電極組立体を収納するパウチ型電池ケース」である点で共通する。

しかし、「電極組立体」に関して、本件発明1は、「正極、セパレータ、負極が積層されて形成される」のに対し、甲5発明1は、そのような構成に限定されるものではない点で相違する。

(イ)甲5発明1の熱融着性樹脂層の「ポリプロピレン」は、ポリマーであり、当該ポリマーを後述する表面保護層のポリマーと区別して「第1ポリマー」と称すると、本件発明1のシーラント層の「第1ポリマー」に相当する。

また、甲5発明1の熱融着性樹脂層の「最内層」は、本件発明1のシーラント層の「最内層」に相当する。

以上より、本件発明1と甲5発明1とは、「第1ポリマーで最内層として形成されるシーラント層」を含む点で共通する。

しかし、シーラント層の厚さに関して、本件発明1は「70μm~90μm」であるのに対し、甲5発明1は「60μm以下」である点で相違する。

(ウ)甲5発明1の表面被覆層の「ポリエステル樹脂」は、ポリマーであり、当該ポリマーを先述したシーラント層のポリマーと区別して「第2ポリマー」と称すると、本件発明1の表面保護層の「第2ポリマー」に相当する。

また、甲5発明1の表面被覆層の「電池を組み立てた時に、最外層に位置する層」は、本件発明1の表面保護層の「最外層」に相当する。

以上より、甲5発明1の「電池を組み立てた時に、最外層に位置する層であり、ポリエステル樹脂により形成される表面被覆層」は、本件発明1の「第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層」に相当する。

(エ)甲5発明1の「アルミニウム合金箔層」は、「電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層」であることから、ガスバリア層であるといえる。

また、甲5発明1の「表面被覆層と熱融着性樹脂層との間に積層」は、本件発明1の「前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層」に相当する。

更に、アルミニウム合金箔は「厚みが100μm以下」であることから、アルミニウム合金薄膜であるといえるので、甲5発明1のアルミニウム合金箔層と本件発明1のガスバリア層とは、「前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層されるアルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層」である点で共通する。

しかし、ガスバリア層の厚さに関して、本件発明1は「60μm~100μm」であるのに対し、甲5発明1は「100μm以下」である点で相違する。

また、ガスバリア層の結晶粒度に関して、本件発明1は「10μm~13μm」であるのに対し、甲5発明1は「10.0μm以下」である点で相違する。

(オ)甲5発明1の「電池用包装材料」は、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層同士が熱融着して電池素子を密封するものであり、熱融着性樹脂層が最内層になり、表面被覆層が最外層になり、アルミニウム合金箔層が表面被覆層と熱融着性樹脂層との間に積層されることから、本件発明1の「パウチフィルム積層体」に相当する。

(カ)上記(ア)~(オ)によれば、本件発明1と甲5発明1との一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)

「 電極組立体を収納するパウチ型電池ケースであって、
第1ポリマーで最内層として形成され、厚さが80μmであるシーラント層と、
第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層と、
前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層されるアルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層とを含むパウチフィルム積層体を含む、前記パウチ型電池ケース。」

(相違点9)

電極組立体に関して、本件発明1は、「正極、セパレータ、負極が積層されて形成される」のに対し、甲5発明1は、そのような構成に限定されるものではない点。

(相違点10)

シーラント層の厚さに関して、本件発明1は「70μm~90μm」であるのに対し、甲5発明1は「60μm以下」である点。

(相違点11)

ガスバリア層の厚さに関して、本件発明1は「60μm~100μm」であるのに対し、甲5発明1は「100μm以下」である点。

(相違点12)

ガスバリア層の結晶粒度に関して、本件発明1は「10μm~13μm」であるのに対し、甲5発明1は「10.0μm以下」である点。

イ 判断

事案に鑑み、相違点10について先に検討する。

上記第4の5(1)より、甲第5号証には、熱融着性樹脂層の厚さに関して、以下のように記載されている。

「【0073】
また、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、熱融着性樹脂層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、好ましくは60μm以下、より好ましくは15~40μm程度が挙げられる。」

また、【0106】の【表1】及び【0107】の【表2】より、甲第5号証に記載された実施例及び比較例の熱融着性樹脂層の厚みは10~30μmである。

すなわち、甲第5号証において、熱融着性樹脂層4の厚みは最大でも60μmであって、60μmを超える値とすることは想定していないものである。

そうすると、熱融着性樹脂層の厚みが60μm以下である甲5発明1において、熱融着性樹脂層の厚みを70μm~90μmに変更することは、到底想起し得ないものであるから、相違点10に係る構成は、当業者であっても容易に想到しうるものであるとはいえない。

以上より、本件発明1と甲5発明1とを対比すると、上記ア(カ)で示したように相違点9~相違点12を有するものであり、相違点10に係る構成が容易に想到しうるものでない以上、他の相違点について検討するまでもなく、請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第5号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2~17について

請求項2~17は、請求項1を直接若しくは間接に引用するものであり、本件発明2~17は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。

したがって、上記(1)と同様の理由により、請求項2~17に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第5号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明18について

本件発明18と甲5発明2とを対比する。

ア 対比

(ア)上記(1)ア(ア)の検討を援用するに、甲5発明2の「正極、負極を備えた電池素子」と、本件発明18の「正極、セパレータ、負極が積層されて形成される電極組立体」とは、「電極組立体」である点で共通する。

また、甲5発明2と本件発明18とは、「電極組立体を収納するパウチ型電池ケース」である点で共通する。

しかし、「電極組立体」に関して、本件発明18は、「正極、セパレータ、負極が積層されて形成される」のに対し、甲5発明2は、そのような構成に限定されるものではない点で相違する。

(イ)上記(1)ア(イ)の検討を援用するに、本件発明18と甲5発明2とは、「第1ポリマーで最内層として形成されるシーラント層」である点で共通する。

しかし、シーラント層の厚さに関して、本件発明18は「70μm~90μm」であるのに対し、甲5発明2は「60μm以下」である点で相違する。

(ウ)上記(1)ア(ウ)の検討を援用するに、甲5発明2の「電池を組み立てた時に、最外層に位置する層であり、ポリエステル樹脂により形成される表面被覆層」は、本件発明18の「第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層」に相当する。

(エ)上記(1)ア(エ)の検討を援用するに、甲5発明2のアルミニウム合金箔層と本件発明18とは、「前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層されるアルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層」である点で共通する。

しかし、ガスバリア層の厚さに関して、本件発明18は「60μm~100μm」であるのに対し、甲5発明1は「100μm以下」である点で相違する。

また、ガスバリア層の結晶粒度に関して、本件発明18は「10μm~13μm」であるのに対し、甲5発明1は「10.0μm以下」である点で相違する。

(オ)甲5発明2の「電池用包装材料」は、本件発明18の「パウチフィルム積層体」に相当する。

(カ)甲5発明2の「二次電池」は、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される二次電池であるから、本件発明18の「パウチ型二次電池」に相当する。

(キ)上記(ア)~(カ)によれば、本件発明18と甲5発明2との一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)

「 電極組立体と、
前記電極組立体を収納するパウチ型電池ケースとを含み、
前記電池ケースは、
第1ポリマーで最内層として形成されるシーラント層と、
第2ポリマーで最外層として形成される表面保護層と、
前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層されるアルミニウム合金薄膜で形成されるガスバリア層とを含むパウチフィルム積層体を含む、パウチ型二次電池。」

(相違点13)

電極組立体に関して、本件発明18は、「正極、セパレータ、負極が積層されて形成される」のに対し、甲5発明2は、そのような構成に限定されるものではない点。

(相違点14)

シーラント層の厚さに関して、本件発明18は「70μm~90μm」であるのに対し、甲5発明2は「60μm以下」である点。

(相違点15)

ガスバリア層の厚さに関して、本件発明18は「60μm~100μm」であるのに対し、甲5発明2は「100μm以下」である点。

(相違点16)

ガスバリア層の結晶粒度に関して、本件発明18は「10μm~13μm」であるのに対し、甲5発明2は「10.0μm以下」である点。

イ 判断

事案に鑑み、相違点14について検討する。

相違点14についての検討は、上記(1)イの検討と同様であり、相違点14に係る構成は、当業者であっても容易に想到しうるものであるとはいえない。

(ウ)小括

以上より、本件発明18と甲5発明2とを対比すると、上記ア(キ)で示したように相違点13~相違点16を有するものであり、相違点14に係る構成が容易に想到しうるものでない以上、他の相違点について検討するまでもなく、請求項18に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第5号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではない。

3 申立理由3(サポート要件)について

(1)特許異議申立人の主張

特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下のようなサポート要件違反に関する主張をしている。

「(前略)
ここで本件特許明細書の段落番号【0083】によると、実施例等に記載のパウチフィルム積層体では、無延伸ポリプロピレン(CPP)を高温で溶融させた後、アルミニウム(Al)合金薄膜の他面に共押出して厚さ60μmのシーラント層を形成している。
しかしながら、通常、アルミニウム(Al)合金薄膜に無延伸ポリプロピレン(CPP)を直接接着させることは不可能である。
本件特許明細書では、実施例等のパウチフィルム積層体を用いて成形性、引張強度、伸び率等の評価を行うとされているが、アルミニウム(Al)合金薄膜に無延伸ポリプロピレン(CPP)を直接接着させることは不可能であるので、実施例等のパウチフィルム積層体を用いて上記評価を行うことも不可能である。
本件特許明細書では、作製したパウチフィルム積層体を用いて成形性、引張強度、伸び率等を評価する具体例が上記実施例のみであるから、本件特許発明1~18が解決しようとする引張強度および伸び率の改善や、成形性の向上といった課題が何を意味するのか、どの程度のものであるのか当業者であっても理解することができない。」(特許異議申立書55~56頁)

(2)主張に対する検討

特許異議申立人は「通常、アルミニウム(Al)合金薄膜に無延伸ポリプロピレン(CPP)を直接接着させることは不可能である。」と主張する。しかしながら、当該主張は具体的な証拠に基づくものではなく、本件特許明細書【0082】~【0083】に記載されたパウチフィルム積層体の作成ができないことを具体的に指摘するものではない。

また、本件発明1~17は「パウチ型電池ケース」、本件発明18は「パウチ型二次電池」に係るものであり、いずれもその発明特定事項である「パウチフィルム積層体」については、その厚さ等、具体的な条件で特定されているものであって、その製造方法で特定されるものではない。そして、本件発明の詳細な説明には、前記パウチフィルム積層体は、いずれも本件発明の詳細な説明にサポートされているといえる。

仮に、前記パウチフィルム積層体の製造方法について不明確な点があったとしても、本件発明の詳細な説明には具体的な物が記載されている以上、製造方法で特定されたものではない本件発明1~18は、発明の詳細な説明に記載したものである。

よって、特許異議申立人の前記主張を採用することはできない。

(3)小括

以上より、特許異議申立人のサポート要件に関する主張を採用することはできず、本件請求項1~18に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~18に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件請求項1~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって結論のとおり決定する。

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2025-700066

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