2024-700664
パウチフィルム積層体、パウチ型電池ケースおよびパウチ型二次電池
- 審判番号
- 2024-700664
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-569618外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7416979
- 請求日
- 2024年07月16日
- 審決日
- 2024年09月17日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
- 【権利者代理人】飯田 雅人
- 【権利者代理人】実広 信哉
- 【異議申立人】松山 徳子
- 分類
- P1651.121-Y (H01M) / P1651.537-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
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特許第7416979号(以下「本件特許」という。)の請求項1~19に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)6月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2020年6月9日 (KR)大韓民国)を国際出願日とする出願であって、令和6年1月9日にその特許権の設定登録がされ、同年1月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年7月16日に特許異議申立人 松山 徳子(以下「特許異議申立人」という。)が特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7416979号の請求項1~19の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明19」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
第1ポリマーで製造され、最内層に形成されるシーラント層と、
第2ポリマーで製造され、最外層に形成される表面保護層と、
結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜を含み、前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層されるガスバリア層とを含み、
前記ガスバリア層は、
厚さが50~70μmであり、
前記シーラント層は、
厚さが70~100μmである、パウチフィルム積層体。
【請求項2】
前記アルミニウム合金薄膜は、
合金番号がAA8021である、請求項1に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項3】
前記アルミニウム合金薄膜は、
鉄を1.3wt%~1.7wt%含む、請求項1または2に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項4】
前記アルミニウム合金薄膜は、
シリコンを0.2wt%以下で含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項5】
前記ガスバリア層は、
厚さが55μm~65μmである、請求項1から4のいずれか一項に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項6】
前記シーラント層は、
厚さが75μm~85μmである、請求項1から5のいずれか一項に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項7】
前記第1ポリマーは、
ポリプロピレン(PP)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項8】
前記表面保護層は、
厚さが5μm~25μmである、請求項1から7のいずれか一項に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項9】
前記表面保護層は、
厚さが7μm~12μmである、請求項1から8のいずれか一項に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項10】
前記第2ポリマーは、
ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項11】
第3ポリマーで製造され、前記表面保護層と前記ガスバリア層との間に積層される延伸補助層をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項12】
前記延伸補助層は、
厚さが20μm~50μmである、請求項11に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項13】
前記延伸補助層は、
厚さが25μm~38μmである、請求項11または12に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項14】
前記延伸補助層と前記ガスバリア層との厚さの割合は、1:1.5~1:2.5である、請求項11から13のいずれか一項に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項15】
前記第3ポリマーは、
ナイロン(Nylon)を含む、請求項11から14のいずれか一項に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項16】
前記パウチフィルム積層体は、総厚さが160μm~200μmである、請求項1から15のいずれか一項に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項17】
前記パウチフィルム積層体は、15mm×80mmのサイズで裁断した後、50mm/minの引張速度で引っ張りながら測定した引張強度が200N/15mm~300N/15mmであり、伸び率が120%~150%である、請求項1から16のいずれか一項に記載のパウチフィルム積層体。
【請求項18】
電極組立体を収納し、パウチフィルム積層体を成形して製造されるパウチ型電池ケースであって、
前記パウチフィルム積層体は、
第1ポリマーで製造され、最内層に形成されるシーラント層と、
第2ポリマーで製造され、最外層に形成される表面保護層と、
結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜を含み、前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層されるガスバリア層とを含み、
前記ガスバリア層は、
厚さが50μm~70μmであり、
前記シーラント層は、
厚さが70μm~100μmである、パウチ型電池ケース。
【請求項19】
正極、セパレータ、負極が積層されて形成される電極組立体と、
前記電極組立体を収納するパウチ型電池ケースとを含み、
前記パウチ型電池ケースは、
パウチフィルム積層体を成形して製造され、
前記パウチフィルム積層体は、
第1ポリマーで製造され、最内層に形成されるシーラント層と、
第2ポリマーで製造され、最外層に形成される表面保護層と、
結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜を含み、前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層されるガスバリア層とを含み、
前記ガスバリア層は、
厚さが50μm~70μmであり、
前記シーラント層は、
厚さが70μm~100μmである、パウチ型二次電池。
第3 特許異議申立理由の概要
1 申立理由
特許異議申立人が主張する申立理由の概要は、次のとおりである。
(1)申立理由A(進歩性)
本件発明1~19は、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~19に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条2号)
(2)申立理由B(サポート要件)
本件発明1、18、19は、次の点で発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項1、18、19に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法113条4号)
本件特許明細書の実施例では、結晶粒度が11.6μmであるAA8021アルミニウム合金薄膜を用いた例のみが記載されており、当該AA8021アルミニウム合金薄膜とは組成の異なるその他のアルミニウム合金薄膜を用いた場合であっても、結晶粒度を10μm~13μmとすることで引張強度と伸び率が改善され、成形性を向上できるという効果を奏するかは本件特許明細書の記載及び本件特許出願時の技術常識から不明であるから、本件発明1、18、19は、本件特許明細書に記載の範囲を超えるものである。
2 証拠方法
特許異議申立人が特許異議申立書に添付した証拠方法は、以下のとおりである(以下、甲第1~3号証を「甲1」等という。)。
第4 申立理由A(進歩性)についての当審の判断
1 甲号証の記載
(1)甲1
ア 甲1の記載事項
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甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与したものである。以下、同じ。)。
「【請求項1】少なくとも、アルミニウム合金箔層を備えた電池用包装材料であって、前記アルミニウム合金箔層の厚み方向の断面において、走査型電子顕微鏡の視野内に位置する任意の100個アルミニウム合金の結晶粒について、個々の結晶粒の前記厚み方向とは垂直方向の最左端と、前記厚み方向とは垂直方向の最右端とを結ぶ直線距離を最大径xとした場合に、当該100個の結晶粒の当該最大径xの平均値である平均結晶粒径が、10.0μm以下である、電池用包装材料。」
「【請求項6】少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項1~5のいずれかに記載の電池用包装材料で形成された容器内に収容されている、電池。」
「【0008】近年、電池の小型化、薄型化の要求に伴い、電池用包装材料に対しても、より一層の薄膜化が求められている。これに伴い、電池用包装材料に積層されているアルミニウム合金箔層の厚みのさらなる薄型化が求められている。しかしながら、アルミニウム合金箔層の厚みが薄くなると、成形時にアルミニウム合金箔層にピンホールやクラックが生じやすくなるという問題もある。【0009】このような状況下、本発明は、電池用包装材料の成形時において、アルミニウム合金箔層にピンホールやクラックが生じることを効果的に抑制することができる、電池用包装材料を提供することを主な目的とする。」
「【0016】1.電池用包装材料の積層構造本発明の電池用包装材料は、図1に示すように、少なくとも、アルミニウム合金箔層3を備えている。本発明の電池用包装材料は、例えば、図1に示すように、基材層1、アルミニウム合金箔層3、及び熱融着性樹脂層4をこの順に有する積層体であってもよい。本発明の電池用包装材料がこのような積層体である場合、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層4同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。」
「【0018】本発明の電池用包装材料の総厚みとしては、特に制限されないが、電池用包装材料の厚みを薄くして電池のエネルギー密度を高めつつ、成形性に優れた電池用包装材料とする観点からは、例えば200μm以下、好ましくは180μm以下、より好ましくは40~155μm程度、さらに好ましくは40~90μm程度が挙げられる。【0019】2.電池用包装材料を形成する各層[基材層1]本発明の電池用包装材料において、基材層1は、必要に応じて設けられる層であり、最外層側に位置する層である。基材層1を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテルイミド、ポリイミド、及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。【0020】ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル-ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ポリエステルは、耐電解液性に優れ、電解液の付着に対して白化等が発生し難いという利点があり、基材層1の形成素材として好適に使用される。」
「【0030】[アルミニウム合金箔層3]電池用包装材料において、アルミニウム合金箔層3は、電池用包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層である。」
「【0032】本発明において、電池用包装材料の厚みをより一層薄くして電池のエネルギー密度を高めつつ、成形性に優れ、さらに、成形後の外観に優れた電池用包装材料とする観点からは、アルミニウム合金箔層の厚みとしては、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは50μm以下、さらにより好ましくは35μm以下、さらには30μm以下、さらには15~30μm程度、さらには15~25μm程度、特に15~20μm程度が挙げられる。」
「【0035】アルミニウム合金箔層3における平均結晶粒径は、10.0μm以下であればよいが、より成形性を高める観点からは、平均結晶粒径としては、好ましくは1.0~7.0μm程度、より好ましくは1.0~3.2μm程度が挙げられる。」
「【0041】アルミニウム合金箔層3を形成するアルミニウム合金の具体例としては、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS H4160 A8021H-O、JIS H4160 A8079H-O、JIS H4000:2014 A8021P-O、JIS H4000:2014 A8079P-O)など軟質アルミニウム合金などが挙げられる。ただし、上記の平均結晶粒径や第二相粒子の径は、アルミニウム合金の組成だけでなく、アルミニウム合金箔層の加工方法によっても変化するため、例えばJISに規定された組成のみで上記の厚みの関係を充足するわけではない。」
「【0073】また、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、熱融着性樹脂層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、好ましくは60μm以下、より好ましくは15~40μm程度が挙げられる。【0074】[接着層5]本発明の電池用包装材料において、接着層5は、アルミニウム合金箔層3と熱融着性樹脂層4を強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。」
「【0087】本発明の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。【0088】4.電池用包装材料の用途本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装材料として使用される。【0089】具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料の熱融着性樹脂層が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。」
「【実施例】【0091】以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。【0092】続きを表示(全11行)(実施例1-22及び比較例1-14)<電池用包装材料の製造>基材層上に、両面に化成処理を施したアルミニウム合金箔(それぞれ、表1~4に記載の厚さ)をドライラミネート法により積層させた。具体的には、表3及び表4に記載された平均結晶粒径及び第二相粒子径を有するアルミニウム合金箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、アルミニウム合金箔層上に接着剤層を形成した。次いで、アルミニウム合金箔層上の接着剤層と基材層をドライラミネート法で積層した後、40℃で24時間のエージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/アルミニウム合金箔層の積層体を作製した。なお、アルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。次に積層体のアルミニウム合金箔層の上に、カルボン酸変性ポリプロピレン(アルミニウム合金箔層側に配置)とランダムポリプロピレン(最内層側)を共押し出しすることにより、アルミニウム合金箔層上に接着層と熱融着性樹脂層を積層させ、基材層/接着剤層/アルミニウム合金箔層/接着層/熱融着性樹脂層が順に積層された電池用包装材料を得た。各層の厚みは、表1,2に記載の通りである。なお、表1,2において、PETはポリエチレンテレフタレート、DLは接着剤層、ONyは延伸ナイロン、PPaはカルボン酸変性ポリプロピレン、PPはランダムポリプロピレンを意味する。また、基材層におけるPET、DL、ONyは、この順に積層されており、ONyがアルミニウム合金層(当審注:「アルミニウム合金箔層」の誤記と認める。)側に位置している。また、アルミニウム合金箔の具体的な材料は以下の通りである。【0093】<アルミニウム合金箔>A8021材:軟質アルミニウム(JIS H4160 A8021H-O)なお、アルミニウム合金の平均結晶粒径、第二相粒子は、圧延条件等を変更することにより調整されたものである。すなわち、圧延条件等を種々変更して製造されたアルミニウム合金について、平均結晶粒径及び第二相粒子を測定した上で、実施例及び比較例における電池用包装材料の製造に用いた。」
「【0096】(成形性の評価)上記で得られた各電池用包装材料を80mm×120mmの長方形に断裁してサンプルを作製した。このサンプルを30mm×50mmの口径を有する成形金型(雌型)と、これに対応した成形金型(雄型)を用いて、押さえ圧0.4MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、それぞれ10個のサンプルについて冷間成形を行った。冷間成形後のサンプルについて、電池用包装材料にピンホール、クラックが10個のサンプル全てにおいて発生しない最も深い成形深さを、そのサンプルの限界成形深さとした。この限界成形深さから、以下の基準により電池包装材料の成形性を評価した。なお、アルミニウム合金箔の厚みが大きくなるほど、限界成形深さは大きくなる傾向にあることから、成形性評価の基準は、アルミニウム合金箔の厚みごとに設定した。結果を表3,4に示す。【0097】続きを表示(全70行)[評価基準1:アルミニウム合金箔の厚みが100μmである場合]A1:限界成形深さ20.0mm以上B1:限界成形深さ19.0mm、19.5mmC1:限界成形深さ18.0mm、18.5mmD1:限界成形深さ17.5mm以下【0098】[評価基準2:アルミニウム合金箔の厚みが80μmである場合]A2:限界成形深さ17.0mm以上B2:限界成形深さ16.0mm、16.5mmC2:限界成形深さ15.0mm、15.5mmD2:限界成形深さ14.5mm以下【0099】[評価基準3:アルミニウム合金箔の厚みが50μmである場合]A3:限界成形深さ10.0mm以上B3:限界成形深さ9.0mm、9.5mmC3:限界成形深さ8.0mm、8.5mmD3:限界成形深さ7.5mm以下【0100】[評価基準4:アルミニウム合金箔の厚みが40μmである場合]A4:限界成形深さ9.0mm以上B4:限界成形深さ8.0mm、8.5mmC4:限界成形深さ7.0mm、7.5mmD4:限界成形深さ6.5mm以下【0101】[評価基準5:アルミニウム合金箔の厚みが35μmである場合]A5:限界成形深さ8.0mm以上B5:限界成形深さ7.0mm、7.5mmC5:限界成形深さ6.0mm、6.5mmD5:限界成形深さ5.5mm以下【0102】[評価基準6:アルミニウム合金箔の厚みが30μmである場合]A6:限界成形深さ7.0mm以上B6:限界成形深さ6.0mm、6.5mmC6:限界成形深さ5.0mm、5.5mmD6:限界成形深さ4.5mm以下【0103】[評価基準7:アルミニウム合金箔の厚みが25μmである場合]A7:限界成形深さ6.5mm以上B7:限界成形深さ5.5mm、6.0mmC7:限界成形深さ4.5mm、5.0mmD7:限界成形深さ4.0mm以下【0104】[評価基準8:アルミニウム合金箔の厚みが20μmである場合]A8:限界成形深さ6.0mm以上B8:限界成形深さ5.0mm、5.5mmC8:限界成形深さ4.0mm、4.5mmD8:限界成形深さ3.5mm以下【0105】[評価基準9:アルミニウム合金箔の厚みが15μmである場合]A9:限界成形深さ5.5mm以上B9:限界成形深さ4.5mm、5.0mmC9:限界成形深さ3.5mm、4.0mmD9:限界成形深さ3.0mm以下【106】【表1】[図:0001415340000001.jpg]【0107】【表2】[図:0001415340000002.jpg]【0108】【表3】[図:0001415340000003.jpg]【0109】【表4】[図:0001415340000004.jpg]」
イ 甲1発明
(ア)【0092】、【0093】及び表4によれば、比較例6の電池用包装材料の製造に用いたアルミニウム合金箔は、平均結晶粒径11.5μm及び第二相粒子径6.4μmを有する軟質アルミニウム(JIS H4160 A8021H-O)であると認められる。
(イ)【0092】及び表2によれば、比較例6の電池用包装材料の各層の厚みは、基材層がポリエチレンテレフタレート(PET)12μm、接着剤層(DL)3μm、延伸ナイロン(ONy)25μmで、この順に積層され、延伸ナイロン(ONy)がアルミニウム合金箔層側に位置し、接着剤層(DL)が3μm、アルミニウム合金箔層が50μm、接着層がカルボン酸変性ポリプロピレン(PPa)22.5μm、熱融着層樹脂層がランダムポリプロピレン(PP)22.5μmであると認められる。
(ウ)したがって、甲1には、比較例6の電池用包装材料(【0092】)として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
平均結晶粒径11.5μm及び第二相粒子径6.4μmを有する軟質アルミニウム(JIS H4160 A8021H-O)のアルミニウム合金箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、アルミニウム合金箔層上に接着剤層を形成し、(【0092】、前記(ア))
次いで、アルミニウム合金箔層上の接着剤層と基材層をドライラミネート法で積層した後、40℃で24時間のエージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/アルミニウム合金箔層の積層体を作製し、(【0092】)
次に積層体のアルミニウム合金箔層の上に、カルボン酸変性ポリプロピレン(アルミニウム合金箔層側に配置)とランダムポリプロピレン(最内層側)を共押し出しすることにより、アルミニウム合金箔層上に接着層と熱融着性樹脂層を積層させ、基材層/接着剤層/アルミニウム合金箔層/接着層/熱融着性樹脂層が順に積層された電池用包装材料であって、(【0092】)
各層の厚みは、基材層がポリエチレンテレフタレート12μm、接着剤層3μm、延伸ナイロン25μmで、この順に積層され、延伸ナイロンがアルミニウム合金箔層側に位置し、接着剤層が3μm、アルミニウム合金箔層が50μm、接着層がカルボン酸変性ポリプロピレン22.5μm、熱融着層樹脂層がランダムポリプロピレン22.5μmであり、(前記(イ))
電池素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させるのに使用する(【0089】)
電池用包装材料。(【0092】)
(2)甲2
ア 甲2の記載事項
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甲2には、次の事項が記載されている。
「【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0007】基材に破断強度の高いフィルムを用いた構成では、成形性は向上するが、別の問題として、基材のコシが強すぎて積層体の賦形性が悪化し、深絞り成形で付与した形状が充分保持されずに、成形後の形状が不明瞭な凹形状となり、電極群の収納が困難となる問題があった。また、基材の破断強度を得るために基材を厚くすると、積層体の賦形性が悪化して、成形後の形状が不明瞭になりやすいばかりか、積層体全体の厚さが増し、結果として電池に占める外装材の体積が大きくなり、電池の体積エネルギー密度が低下する問題があった。また、基材を厚くする分、コストが増大するという問題もあった。基材層に特定範囲の結晶化度を持つ延伸フィルムを用いる構成は、金属層と基材層の厚さ、および、強度とのバランスによっては、充分な成形性が得られなかったり、深絞り成形後の形状が不良となったりする問題があった。基材層の表面にスリップ剤をコーティングする技術では、スリップ剤をコーティングする工程を新たに設ける必要があるため、生産性が悪化する他、成形に用いる金型にスリップ剤が堆積して、工程を汚染したり、清掃の手間が発生したりするという問題があった。【0008】本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、積層体の厚さを必要以上に厚くすることなく、良好な成形性と成形形状が得られる、蓄電デバイスの外装材に好適に用いられる積層体を提供するものである。【課題を解決するための手段】【0009】上記した課題を解決するための本発明は、基材層、金属層および樹脂層を含む積層体であって、積層体の最大荷重が、金属層の最大荷重の2.8倍以上、4.0倍以下であり、かつ基材層の厚さが金属層の厚さ以下であることを特徴とする積層体である。」
「【0023】樹脂層の厚さは、25~100μmが好ましい。樹脂層の厚さが25μm未満であると充分なシール性および熱融着強度が得られない場合がある。樹脂層の厚さが100μmを超えると、薄膜、軽量といったラミネート型電池の特徴が小さくなることに加え、コストも増加する場合がある。更には、シール端面から電池内部に透過する水分量が増える場合もある。」
「【0042】<実施例1>(基材層)平均粒径1μmのシリカ粒子を混練した、厚さ14μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを製造した。この二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にコロナ処理を行った。次いで、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理された面に、両面がコロナ処理された厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルムを二液硬化型のウレタン系接着剤でドライラミネートし、基材層とした。基材層の厚さは32μmであった。続きを表示(全13行)【0043】(樹脂層)滑材としてエルカ酸アミドを1,500ppm(質量基準)含有するエチレン-プロピレン共重合体を含む厚さ80μmのシートを製造し、片面をコロナ処理をしたものを樹脂層とした。【0044】(金属層)金属層として、片面が化成処理された厚さ40μmのアルミニウム箔(8021-O材)を用意した。【0045】(積層体の作製)アルミニウム箔の化成処理をしていない面と、基材層の二軸延伸ナイロンフィルム側を積層するように、二液硬化型のウレタン系接着剤でドライラミネートした。次に、基材層と積層したアルミ箔の化成処理された面と、樹脂層のコロナ処理を施した面をオレフィン系接着剤でドライラミネートして、基材層/金属層/樹脂層からなる積層体を作製した。金属層の最大荷重は40N/10mm、積層体の最大荷重は110N/10mmであり、積層体の最大荷重は金属層の最大荷重の2.8倍であった。積層体の動摩擦係数は、基材層表面が0.26、樹脂層表面が0.19であった。」
イ 甲2記載技術
前記アの下線に着目すると、甲2には、次の技術(以下「甲2記載技術」という。)が記載されていると認められる。
蓄電デバイスの外装材に用いられる積層体であって、(【0008】)
平均粒径1μmのシリカ粒子を混練した、厚さ14μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にコロナ処理を行い、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理された面に、両面がコロナ処理された厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルムを二液硬化型のウレタン系接着剤でドライラミネートし、基材層とし、基材層の厚さは32μmであり、(【0042】)
滑材としてエルカ酸アミドを1,500ppm(質量基準)含有するエチレン-プロピレン共重合体を含む厚さ80μmのシートの片面をコロナ処理をしたものを樹脂層とし、(【0043】)
片面が化成処理された厚さ40μmのアルミニウム箔(8021-O材)を金属層とし、(【0044】)
アルミニウム箔の化成処理をしていない面と、基材層の二軸延伸ナイロンフィルム側を積層するように、二液硬化型のウレタン系接着剤でドライラミネートし、基材層と積層したアルミ箔の化成処理された面と、樹脂層のコロナ処理を施した面をオレフィン系接着剤でドライラミネートした(【0045】)
基材層/金属層/樹脂層からなる積層体。(【0045】)
(3)甲3
ア 甲3の記載事項
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甲3には、次の事項が記載されている。
「【0008】本発明は、上記事情を鑑みて行われたものであり、リチウムイオン電池の電解液の劣化による、アルミ箔と多層のシーラントフィルムとのラミネート強度の低下や層間剥離の発生が低減された電池外装用積層体であり、しかも、高い歩留まりで外装容器を製造することが可能な電池外装用積層体を低コストで提供することを目的とする。」
「【0010】上記の課題を解決するため、本発明は、アルミ箔及び樹脂層を積層してなる電池外装用積層体において、基材層と、アルミ箔と、金属との熱接着性樹脂層とポリオレフィン樹脂層とが積層された多層のシーラントフィルムと、が順に積層され、少なくとも前記アルミ箔の前記多層のシーラントフィルムと貼り合せる側の面に、耐食性コーティング層が形成され、前記耐食性コーティング層の上に、前記金属との熱接着性樹脂層を介して前記多層のシーラントフィルムが接着されてなり、前記金属との熱接着性樹脂層の融解熱量が25mJ/mg以下であることを特徴とする電池外装用積層体を提供する。」
「【0025】酸変性ポリプロピレン樹脂もしくは酸変性ポリエチレン樹脂もしくは酸変性ポリプロピレン樹脂もしくは酸変性ポリエチレン樹脂と2官能以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物とを混合した樹脂等からなる金属との熱接着性樹脂層16と、ポリプロピレン樹脂もしくはポリエチレン樹脂からなるポリオレフィン樹脂層13とが順に多層化されたヒートシール性を有するポリオレフィンシーラントフィルムである多層のシーラントフィルム17のポリオレフィン樹脂層13は、電池外装用積層体10を用いて製袋した際に最内側になり、リチウムイオン電池と接する層である。ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリオレフィンに極性基を導入したポリオレフィン系樹脂からなる樹脂群の中から選択された少なくとも1種のポリオレフィンシーラント層からなるポリオレフィン樹脂層13をリチウムイオン電池と接する層にする理由は、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン樹脂がリチウムイオン電池の電解液に対する耐食性に優れ、かつ熱ラミネートした後に、急冷されたラミネートフィルムは、ヒートシール性が良好であるためである。ここで、ヒートシール性とは、高温におけるシールの安定性のことである。ポリプロピレン樹脂層もしくはポリエチレン樹脂層からなるポリオレフィン樹脂層13を最内層とした多層のシーラントフィルム17の厚みとしては、20~150μmであることが好ましい。ポリプロピレン樹脂層もしくはポリエチレン樹脂層からなるポリオレフィン樹脂層13であると、多層のシーラントフィルム17の厚みを150μm以上とするなどの過剰に厚くしなくても、電解液に対する耐食性およびヒートシール性、さらに十分な耐圧強度を保つことができるので、好ましい。特に、ヒートシールした断面からの水分の浸入を防止することにより、非水系電池やキャパシタの劣化を防止できるため、非常に有効な方法である。…(後略)…」
「【0030】(実施例1)厚みが40μmのアルミ箔の、多層のシーラントフィルムと貼り合せる側の面に、水酸基を有するポリビニルアルコールの骨格を持つ非結晶ポリマー(日本合成化学(株)製、商品名:Gポリマー樹脂)を1重量%と、フッ化クロム(III)を2重量%とを溶かした水溶液をグラビアコーターにて乾燥後の厚みが0.6μmとなるように塗布し、耐食性コーティング層を積層した後、更に200℃のオーブンにて加熱し架橋反応させアルミ箔に焼き付けた。さらに、アルミ箔に積層した耐食性コーティング層の上に、インラインで多層のシーラントフィルムを、加熱ロールを用いて熱ラミネートした。引き続いて、前記熱ラミネートした積層体を冷却ロールに通して、前記熱ラミネートした積層体の温度を、10℃/秒以上の冷却速度で急速降下させて急冷した。ここで用いた、多層のシーラントフィルムは、エポキシ樹脂配合の酸変性ポリオレフィン樹脂層とポリプロピレン樹脂層との厚み比率が1:3であり、かつ、全体の厚みが80μmとなるように、多層キャスト工法にて製膜したものである。また、エポキシ樹脂配合の酸変性ポリオレフィン樹脂は、酸変性ポリプロピレン樹脂に2官能以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(新日鉄住金化学(株)製、品名:YP55U)を8%ブレンドコンパウンドして得た、エポキシ基含有の酸変性ポリオレフィン樹脂のマスターバッチ樹脂ペレットと、酸変性ポリオレフィン樹脂とをブレンドして、エポキシ樹脂量が1%になるように配合したものである。次に、アルミ箔の、多層のシーラントフィルムと貼り合せる側とは反対側の面に、基材層(厚みが12μmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムと、厚みが25μmの延伸ポリアミド樹脂フィルムとを、厚みが3μmのウレタン系接着剤層を用いてドライラミネートにより積層させた基材層)を対向させ、この基材層と、このアルミ箔とをウレタン系接着剤からなる接着剤層(厚み4μm)を介してドライラミネートにより積層した。更に、アルミ箔と、金属との熱接着性樹脂層との接着強度を上げるために、この電池外装用積層体を80℃の熱風オーブンに48時間保管し、実施例1の電池外装用積層体を得た。…(後略)…」
イ 甲3記載技術
前記アの下線に着目すると、甲3には、次の技術(以下「甲3記載技術」という。)が記載されていると認められる。
厚みが40μmのアルミ箔に積層した耐食性コーティング層の上に、インラインで多層のシーラントフィルムを、加熱ロールを用いて熱ラミネートし、ここで用いた、多層のシーラントフィルムは、金属との熱接着性樹脂層とポリオレフィン樹脂層とが順に多層化された多層のシーラントフィルムであって、エポキシ樹脂配合の酸変性ポリオレフィン樹脂層とポリプロピレン樹脂層との厚み比率が1:3であり、かつ、全体の厚みが80μmとなるように、多層キャスト工法にて製膜したものであり、(【0025】、【0030】)
アルミ箔の、多層のシーラントフィルムと貼り合せる側とは反対側の面に、基材層(厚みが12μmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムと、厚みが25μmの延伸ポリアミド樹脂フィルムとを、厚みが3μmのウレタン系接着剤層を用いてドライラミネートにより積層させた基材層)を対向させ、この基材層と、このアルミ箔とをウレタン系接着剤からなる接着剤層(厚み4μm)を介してドライラミネートにより積層した(【0030】)
電池外装用積層体(【0030】)。
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 「第1ポリマーで製造され、最内層に形成されるシーラント層と」について
甲1発明の「熱融着性樹脂層」は、「熱融着性樹脂層同士をヒートシール」するための層であるから、シーラント層といえる。また、上記「熱融着性樹脂層」は、「ランダムポリプロピレン」を「電池用包装材料」の「最内層側」に積層したものであって、「ランダムポリプロピレン」は、ポリマーの一種であり、それを「第1ポリマー」と称するのは任意である。
そうすると、甲1発明の「熱融着性樹脂層」は、本件発明1の「第1ポリマーで製造され、最内層に形成されるシーラント層」に相当し、本件発明1と甲1発明とは、「第1ポリマーで製造され、最内層に形成されるシーラント層」を含む点で一致する。
イ 「第2ポリマーで製造され、最外層に形成される表面保護層と」について
甲1発明の「電池用包装材料」は、「基材層/接着剤層/アルミニウム合金箔層/接着層/熱融着性樹脂層が順に積層され」、このうちの「熱融着性樹脂層」が「最内層側」であるから(前記ア)、その反対側の「基材層」は最外層側ということができ、該「基材層」は「ポリエチレンテレフタレート」、「接着剤層」、「延伸ナイロン」が「この順で積層され」、このうちの「延伸ナイロンがアルミニウム合金箔層側に位置」するから、上記「ポリエチレンテレフタレート」の層(以下「ポリエチレンテレフタレート層」という。)が「電池用包装材料」の最外層(表面)といえる。また、上記「ポリエチレンテレフタレート層」を形成する「ポリエチレンテレフタレート」は、ポリマーの一種で、それを「第2ポリマー」と称するのは任意であり、「絶縁性を備え」(【0019】)、「耐電解液性に優れ」(【0020】)る等の特性により、上記「ポリエチレンテレフタレート層」は、「密封」された「電池素子」を保護していると解される。
そうすると、甲1発明の「ポリエチレンテレフタレート層」は、本件発明1の「第2ポリマーで製造され、最外層に形成される表面保護層」に相当し、本件発明1と甲1発明とは、「第2ポリマーで製造され、最外層に形成される表面保護層」を含む点で一致する。
ウ 「結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜を含み、前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層されるガスバリア層とを含み」について
甲1発明の「アルミニウム合金箔層」を形成する「アルミニウム合金箔」は、「平均結晶粒径11.5μm」であるから、本件発明1の「結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜」に含まれる。また、上記「アルミニウム合金箔層」は、「電池内部に水蒸気、酸素」「が侵入することを防止するためのバリア層として機能する」(【0030】)ものであって、最内層の「熱融着性樹脂層」(前記ア)と最外層の「ポリエチレンテレフタレート層」(前記イ)の間に「積層」されたものである。
そうすると、甲1発明の「アルミニウム合金箔層」は、本件発明1の「結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜を含み、前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層されるガスバリア層」に含まれ、本件発明1と甲1発明とは、「結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜を含み、前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層されるガスバリア層」を含む点で共通する。
エ 「前記ガスバリア層は、厚さが50~70μmであり」について
甲1発明の「アルミニウム合金箔層」は、「厚み」が「50μm」であるから、本件発明1と甲1発明とは、「前記ガスバリア層は、厚さが50~70μmであ」る点で共通する。
オ 「前記シーラント層は、厚さが70~100μmである」について
甲1発明の「熱融着性樹脂層」は、「厚み」が「22.5μm」であるから、本件発明1の「厚さが70~100μm」に該当しない。
カ 「パウチフィルム積層体」について
甲1発明の「電池用包装材料」は、前記イのとおり「基材層/接着剤層/アルミニウム合金箔層/接着層/熱融着性樹脂層が順に積層」されたものであり、また、その厚みは138μm(=12μm+3μm+25μm+50μm+22.5μm+22.5μm)と薄いものであるからフィルムといえる。そして、上記「電池用包装材料」は、「電池素子」を「被覆」して「密封」、すなわちパウチするためのものであるから、本件発明1と甲1発明とは「パウチフィルム積層体」である点で一致する。
キ 前記ア~カによれば、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点、相違点がある。
[一致点]
第1ポリマーで製造され、最内層に形成されるシーラント層と、
第2ポリマーで製造され、最外層に形成される表面保護層と、
結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜を含み、前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層されるガスバリア層とを含み、
前記ガスバリア層は、厚さが50~70μmである
パウチフィルム積層体。
[相違点]
シーラント層の厚さが、本件発明1は、70~100μmであるのに対し、甲1発明は、22.5μmである点。
(2)相違点についての検討
ア 甲1には、熱融着性樹脂層に関して、「熱融着性樹脂層4の厚みとしては、熱融着性樹脂層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、好ましくは60μm以下、より好ましくは15~40μm程度が挙げられる」(【0073】)との記載があり、甲1発明の熱融着性樹脂層の厚み(22.5μm)及び材料(ランダムポリプロピレン)は、甲1の実施例5~8(【表1】)の熱融着性樹脂層のものと同じであることに鑑みると、甲1発明の熱融着性樹脂層は、熱融着性樹脂層としての機能を発揮する好ましい厚さのものであると解される。そうすると、電池用包装材料に対して、より一層の薄膜化が求められている(【0008】)状況において、あえて、比較例である甲1発明を、その熱融着性樹脂層が22.5μmより厚くなるように改変する動機付けは、甲1からは見いだせない。
イ 甲2記載技術は、甲1発明と同様、蓄電デバイスの外装材に用いられる積層体であり、その樹脂層は、シール性および熱融着(【0023】)を有すると解されるから、甲1発明の熱融着性樹脂層に対応するものということができ、その厚さは、80μmである。
しかしながら、甲2記載技術は、金属層(アルミニウム箔(8021-O材))の結晶粒径が不明で、その厚さ(40μm)も甲1発明とは異なる上、該金属層と上記樹脂層との間に甲1発明のような厚さ22.5μmの接着層に対応する層を備えず、甲1発明とは、積層構成が大きく異なるものである。加えて、甲2記載技術の樹脂層の厚さ80μmは、好ましい厚さである「25~100μm」(【0023】)の一例にすぎず、厚さ80μmが他の厚さと比べて顕著な効果を奏するとは認められないから、当業者が、甲1発明の熱融着性樹脂層の厚さとして、甲2記載技術の樹脂層の厚さ80μmを採用する動機付けがあるとはいえない。
ウ 甲3記載技術は、甲1発明と同様、電池外装用積層体であり、多層のシーラントフィルムを形成する酸変性ポリオレフィン樹脂層とポリプロピレン樹脂層のうち、ポリプロピレン樹脂層は、甲1発明の熱融着性樹脂層に対応し、酸変性ポリオレフィン樹脂層は、金属との熱融着性樹脂層であるから、甲1発明の接着層(【0074】)に対応するといえる。
しかしながら、甲3記載技術は、アルミ箔の結晶粒径が不明であり、その厚さ(40μm)も甲1発明とは異なる上、甲3記載技術の多層のシーラントフィルムの厚さ80μmは、好ましい厚さである「25~150μm」(【0025】)の一例であって、厚さ80μmが他の厚さと比べて顕著な効果を奏するとは解されないから、甲1発明に、甲3記載技術の厚さ80μmの多層のシーラントフィルムを適用する動機付けがあるとはいえない。加えて、前記のとおり、甲3記載技術において、甲1発明の熱融着性樹脂層、すなわち、本件発明1のシーラント層に対応するのは、多層のシーラントフィルムのうちのポリプロピレン樹脂層であり、その厚さは60μm(=80μm×3/4)であるから、仮に、甲1発明に甲3記載技術を適用できたとしても、本件発明1のシーラント層の厚さ70~100μmには至らない。
エ そして、甲2記載技術及び甲3記載技術を総合的に勘案しても、甲1発明の熱融着性樹脂層の厚さを本件発明1のシーラント層の厚さの70~100μmにする動機付けがあるとはいえないから、相違点に係る本件発明1の構成は、甲1発明と甲2記載技術及び甲3記載技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、本件発明1のシーラント層の厚さの範囲である50~70μm(当審注:「70~100μm」の誤記と認める。)は、甲2や甲3に記載されており、本件特許出願時における公知技術であり、当業者であれば甲1発明において、熱融着性樹脂層の厚さを50~70μm(当審注:「70~100μm」の誤記と認める。)とすることは容易に想到できたものであると主張する。(特許異議申立書27~28頁)
しかしながら、前記(2)のとおりであるから、甲1発明の熱融着性樹脂層の厚さを、本件発明1のシーラント層の厚さにすることは、当業者が容易に想到し得たものではなく、特許異議申立人の主張は採用することができない。
(4)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明と甲2記載技術及び甲3記載技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明2~19について
本件発明2~19は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であり、前記2(1)で対比した相違点に係る構成を含むものであるから、前記2(2)及び(3)に示した理由により、甲1発明と甲2記載技術及び甲3記載技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 申立理由Aについてのまとめ
前記2及び3のとおり、本件発明1~19は、甲1に記載された発明と甲2及び甲3に記載された発明とに基づき当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由Aは、理由がない。
第5 申立理由B(サポート要件)についての当審の判断
1 本件特許明細書の記載
本件特許明細書には次の記載がある。
「【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0008】本発明が解決しようとする課題は、引張強度および伸び率が改善して、成形性に優れたパウチフィルム積層体、パウチ型電池ケースおよびパウチ型二次電池を提供することである。」
「【課題を解決するための手段】【0010】上記課題を解決するための本発明の実施形態によるパウチフィルム積層体は、第1ポリマーで製造され、最内層に形成されるシーラント層と、第2ポリマーで製造され、最外層に形成される表面保護層と、結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜を含み、前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層されるガスバリア層とを含み、前記ガスバリア層は、厚さが50~70μmであり、前記シーラント層は、厚さが70~100μmである。」
「【0030】本発明によるパウチフィルム積層体は、ガスバリア層およびシーラント層が特定の厚さを満たし、ガスバリア層として特定の結晶粒度を有するアルミニウム合金薄膜を使用することで、優れた引張強度、伸び率および靭性(Toughness)を有する。これにより、本発明のパウチフィルム積層体を使用すると、カップ部の成形時に、特に、2カップ部の成形時に、ピンホール(Pinhole)や亀裂が発生することなく成形深さを増加させることができ、カップ部の角の曲率半径を減少させることができ、電池組立体の収容空間の体積を増加させることができる。」
「【0060】そのため、本発明者らは、研究を重ねた結果、ガスバリア層の材質として特定の結晶粒度を有するアルミニウム合金薄膜を適用し、ガスバリア層とシーラント層の厚さを特定の範囲で制御する場合、カップ部を深く成形することができ、優れた密封耐久性も維持することができることを見出し、本発明を完成するに至った。【0061】具体的には、本発明によるガスバリア層1352は、結晶粒度が10μm~13μm、好ましくは10.5~12.5μm、さらに好ましくは11~12μmであるアルミニウム合金薄膜を含む。アルミニウム合金薄膜の結晶粒度が前記範囲を満たす時に、カップ成形時に、ピンホール(Pinhole)や亀裂が発生することなく成形深さを増加させることができる。アルミニウム合金薄膜の結晶粒度が13μmを超える場合には、アルミニウム合金薄膜の強度が低下し、延伸時に内部応力の分散が難しくなりクラックやピンホールの発生が増加し、結晶粒度が10μm未満の場合には、アルミニウム合金薄膜の柔軟性が低下し、成形性の向上に限界がある。【0062】一方、前記結晶粒度は、アルミニウム合金薄膜の組成およびアルミニウム合金薄膜の加工方法に応じて変化し、アルミニウム合金薄膜の厚さ方向の断面を走査電子顕微鏡(ScanningElectron Microscope、SEM)で観測して測定することができる。具体的には、本発明では、走査電子顕微鏡を用いて、アルミニウム合金薄膜の厚さ方向の断面SEMイメージを取得し、前記SEMイメージで観察される結晶粒のうち任意の30個の結晶粒の最大径を測定した後、これらの平均値を結晶粒度として評価した。」
「【0072】図4は、合金番号AA8079のアルミニウム合金と合金番号AA8021のアルミニウム合金の鉄の含量による引張強度(Rm)、伸び率(A)および結晶粒度(grain)の変化を示すグラフである。【0073】図4に図示されているように、AA8079は、引張強度および伸び率が小さくて成形性の増加に限界があり、結晶粒度が13~21μmと相対的に大きいため、延伸される時に内部応力が十分に分散されず、ピンホール(Pinhole)が多くなる問題がある。【0074】一方、AA8021は、引張強度および伸び率が大きくて成形性に優れ、結晶粒度が10~13μmと相対的に小さいことから、延伸される時に内部応力がより多く分散することができ、ピンホール(Pinhole)の発生を効果的に抑制することができる。したがって、合金番号AA8021のアルミニウム合金でガスバリア層1352を製造する場合、成形性および密封耐久性に優れたパウチフィルム積層体を製造することができる、」
2 検討
(1)本件特許明細書の記載によれば、本件発明は、引張強度及び伸び率を改善し、成形性にすぐれたパウチフィルム積層体、パウチ型電池ケースおよびパウチ型二次電池を提供することを課題とし(【0008】)、結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜をガスバリア層に適用するとともに、該ガスバリア層の厚さを50~70μmにし、シーラント層の厚さを70~100μmにすることを課題解決手段とし(【0010】、【0060】、【0061】)、それにより、優れた引張強度、伸び率および靭性を有し、ピンホールや亀裂が発生することなくカップ成形時の成形深さを増加させるとの効果を奏する(【0030】、【0061】)ものである。
(2)上記課題解決手段のうち、アルミニウム合金薄膜の結晶粒度について、本件特許明細書には、アルミニウム合金薄膜の結晶粒度が13μmを超える場合には、アルミニウム合金薄膜の強度が低下し、延伸時に内部応力の分散が難しくなり、結晶粒度が10μm未満の場合には、アルミニウム合金薄膜の柔軟性が低下する(【0061】)ことが記載されており、これは、金属材料の結晶粒径と強度、靭性とが相関するという技術常識と整合する。
また、本件特許明細書には、アルミニウム合金のAA8079は、結晶粒度が13~21μmと相対的に大きいため、延伸される時に内部応力が十分に分散されず、ピンホールが多くなる問題がある(【0073】)のに対し、AA8021は、結晶粒度が10~13μmと相対的に小さいことから、延伸される時に内部応力がより多く分散し、ピンホールの発生を効果的に抑制することができる(【0074】)ことが記載されているが、他方で、結晶粒度は、アルミニウム合金薄膜の組成及びアルミニウム合金薄膜の加工方法に応じて変化することも記載されており(【0062】)、これは、甲1の「上記の平均結晶粒径や第二相粒子の径は、アルミニウム合金の組成だけでなく、アルミニウム合金箔層の加工方法によっても変化する」(【0041】)の記載とも整合する。
そうすると、AA8021以外の組成のアルミニウム合金薄膜であっても、その結晶粒度を10~13μmに加工したものであれば、引張強度及び伸び率(柔軟性)に優れ、延伸時の内部応力を適切に分散してカップ成形時の成形深さを増加させることが可能であることは、本件特許明細書の記載及び技術常識から当業者が認識できるものといえる。
(3)したがって、「結晶粒度が10μm~13μmであるアルミニウム合金薄膜を含み、前記表面保護層と前記シーラント層との間に積層されるガスバリア層」との事項を特定し、かつ、「前記ガスバリア層は、厚さが50~70μmであり、前記シーラント層は、厚さが70~100μmである」との事項を特定した本件発明1、18、19は、課題を解決できることが本件特許明細書の記載及び技術常識から認識できるものであるから、本件発明1、18、19は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
(4)特許異議申立人は、本件特許明細書の実施例では、結晶粒度が11.6μmであるAA8021アルミニウム合金薄膜を用いた例のみが記載されており、当該AA8021アルミニウム合金薄膜とは組成の異なるその他のアルミニウム合金薄膜を用いた場合であっても、結晶粒度を10μm~13μmとすることで引張強度と伸び率が改善され、成形性を向上できるという効果を奏するかは本件特許明細書の記載及び本件特許出願時の技術常識から不明であるから、本件発明1、18、19は、本件特許明細書に記載の範囲を超えるものであると主張する。(特許異議申立書32~33頁)
しかしながら、前記(1)~(3)に示したとおりであるから、上記主張は採用することができない。
3 申立理由Bについてのまとめ
以上のとおり、本件発明1、18、19は、発明の詳細な説明に記載した発明であるから、申立理由Bは、理由がない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~19に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700664