特許異議申立
2025-700018
結晶化インジウムスズ複合酸化物膜、透明導電性フィルムおよびその製造方法
- 審判番号
- 2025-700018
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-552061外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7509690
- 請求日
- 2024年12月24日
- 審決日
- 2025年03月11日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.121-Y (H01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7509690号発明「結晶化インジウムスズ複合酸化物膜、透明導電性フィルムおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7509690号の請求項1及び請求項2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7509690号(以下、「本件特許」という。)の請求項1及び請求項2に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)6月12日(優先権主張 2019年(令和1年)6月27日)を国際出願日とする出願であって、令和6年6月24日にその特許権の設定登録がされ、同年7月2日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、同年12月24日に特許異議申立人 平居博美(以下、「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」といい、併せて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、請求項1及び2に記載された構成要件「A」、「B」、・・・、「K」等の符号は、異議申立人が異議申立書で付与したものであり、本決定でも採用した。
「【請求項1】
A 透明フィルム基材と、
B 前記透明フィルム基材の厚み方向一方面に配置された結晶化インジウムスズ複合酸化物スパッタ膜とを備え、
C 前記透明フィルム基材の前記厚み方向一方面は、1.0nm以下の算術平均粗さRaを有し、
D 前記結晶化インジウムスズ複合酸化物スパッタ膜は、酸化スズの含有割合が9質量%以上である領域を含み、
E 35nm以上の厚みを有し、
F 平均粒径が110nm以上である結晶粒を含有することを特徴とする、
G 透明導電性フィルム。
【請求項2】
H 請求項1に記載の透明導電性フィルムを製造する方法であり、
I 前記透明フィルム基材の前記厚み方向一方面にスパッタリングすることにより、非晶化インジウムスズ複合酸化物スパッタ膜を形成する第1工程と、
J 前記非晶化インジウムスズ複合酸化物スパッタ膜を加熱して、結晶化インジウムスズ複合酸化物スパッタ膜を形成する第2工程とを備え、
K 前記第1工程では、分圧0.4Pa以上の不活性ガスの存在下で、スパッタリングを実施することを特徴とする、透明導電性フィルムの製造方法。」
第3 申立理由の概要
1 異議申立人の提出した証拠
異議申立人は、次の甲第1~16号証(以下、それぞれ、「甲1」~「甲16」という。)を証拠として提出している。
甲第1号証(甲1):国際公開第2013/172055号
甲第2号証(甲2):国際公開第2013/080995号
甲第3号証(甲3):国際公開第2011/030741号
甲第4号証(甲4):特開2010- 80290号公報
甲第5号証(甲5):特開2011- 28945号公報
甲第6号証(甲6):国際公開第2010/035598号
甲第7号証(甲7):国際公開第2011/046094号
甲第8号証(甲8):国際公開第2011/048996号
甲第9号証(甲9):特開2016- 62783号公報
甲第10号証(甲10):特開2015-104904号公報
甲第11号証(甲11):国際公開第2013/111681号
甲第12号証(甲12):特開2014- 13540号公報
甲第13号証(甲13):特開2015-159091号公報
甲第14号証(甲14):特開2010-282785号公報
甲第15号証(甲15):特開2018-145214号公報
甲第16号証(甲16):特開2018-176553号公報
2 特許異議の申立理由
異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由(進歩性)は、概略、本件発明は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明に基いて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである、というものであり、より具体的には以下のとおりである。
(申立理由1) 本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、又は、甲1に記載された発明及び甲3~9に記載された周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(申立理由2) 本件発明2は、甲1に記載された発明、甲3~9に記載された周知の技術及び甲5、10~14に記載された周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(申立理由3) 本件発明1は、甲2に記載された発明、甲15、甲l6に記載された事項及び甲3~9に記載された周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(申立理由4) 本件発明2は、甲2に記載された発明、甲15、甲l6に記載された事項、甲3~9に記載された周知の技術及び甲5、10~14に記載された周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第4 異議申立人の提出した証拠の記載
1 甲1について
(1) 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある(下線は当審において加筆した。以下同じ。)。
「課題を解決するための手段
・・・・
[0046] (透明電極層)
透明電極層4としては、インジウム・スズ複合酸化物(ITO)を主成分とする導電性酸化物層が形成される。透明電極層4の膜厚d4は、15~110nmが好ましい。透明電極付き基板100が静電容量方式タッチパネルに用いられる場合、透明電極層4の膜厚d4は、15nm~40nmであることが好ましく、21nm~35nmであることがより好ましく、23nm~30nmであることがさらに好ましい。透明電極層の膜厚を前記範囲とすることで、低抵抗かつ高透過率の透明電極層が得られる。また、透明電極層のパターンの視認を効果的に抑止するためには、d4は32nm以下がさらに好ましく、26nm以下が特に好ましい。」
「[0095] [実施例1]
ウレタン系樹脂からなるハードコート層(屈折率1.53)が両面に形成された厚み188μmの二軸延伸PETフィルムの一方の面上に、ロール・トゥ・ロール方式の巻取り式スパッタリング装置を用いて、シリコン酸化物(SiOx層)からなる中屈折率透明誘電体層(第一誘電体層)、酸化ニオブからなる高屈折率透明誘電体層(第二誘電体層)、およびシリコン酸化物(SiO2)からなる低屈折率誘電体層(第三誘電体層)が順次形成された。
・・・・
[0098] この酸化ニオブ層上に、低屈折率透明誘電体層が形成された。B-Siをターゲットとして用い、酸素/アルゴン(190sccm/400sccm)混合ガスを装置内に導入しながら、装置内圧力0.2Pa、基板温度-20℃、パワー密度10.2W/cm2の条件でスパッタリングが行われた。得られたSiOx層(x=2)は、膜厚が50nm、屈折率が1.47であり、表面の算術平均粗さRaは、0.5nmであった。
[0099] 上記透明フィルム基材の透明誘電体層上に、MF電源を備えるロール・トゥ・ロール方式の巻取り式スパッタリング装置を用いて、非晶質ITO透明電極層が形成された。スパッタ製膜は、インジウム・スズ複合酸化物(酸化スズ含有量5重量%)をターゲットとして用い、酸素/アルゴン(2sccm/1000sccm)混合ガスを装置内に導入しながら、装置内圧力0.4Pa、基板温度-20℃、パワー密度5.2W/cm2の条件で行われた。得られた透明電極層は、膜厚が25nmであった。スパッタ製膜前に、ターゲット表面に磁束密度計を接触させることにより、ターゲット表面の磁束密度を測定したところ、46mTであった。また、スパッタ製膜時のMF電源の電圧は、357Vであった。
・・・・
[0101] その後、150℃のオーブン内で60分の熱処理が行われた。熱処理後のITO層の屈折率は1.85であった。また、電極層形成部の透過率は、88.6%であった。
・・・・
[0128] 上記参考例1~8の透明電極付き基板の各層の屈折率、膜厚および製膜条件、ならびに透明電極層の抵抗率、シート抵抗、結晶の平均粒径、および結晶粒径の変動係数を表2に示す。また、各透明電極付き基板のパターン皺の評価結果、ならびに電極層形成部(非エッチング部)の透過率およびb*を表2に示す。表2では、実施例1,8および15の透明電極付き基板の評価結果についても併せて示されている。また、参考例2および参考例3の透明電極層の顕微鏡観察写真を、それぞれ図2および図3に示す。
[0129]
[表2]
[図:0001421405000001.jpg]
・・・・
[0131] また、表2の結果から、製膜時の磁束密度を高めることにより、透明電極層が低抵抗化される傾向があり、3.7×10-4Ω・cm以下の低抵抗率透明電極層が得られることがわかる。」
(2) 甲1発明及び甲1記載事項
ア 甲1発明
(ア) 上記(1)の[0099]に記載の「上記透明フィルム基材の透明誘電体層」は、[0095]に記載の「二軸延伸PETフィルム」の上に順次形成された「シリコン酸化物(SiOx層)からなる中屈折率透明誘電体層(第一誘電体層)、酸化ニオブからなる高屈折率透明誘電体層(第二誘電体層)、およびシリコン酸化物(SiO2)からなる低屈折率誘電体層(第三誘電体層)」のことであり、[0098]に記載の「膜厚が50nm」であり、「表面の算術平均粗さRa」が「0.5nm」である「得られたSiOx層(x=2)」は、[0095]に記載の「シリコン酸化物(SiO2)からなる低屈折率誘電体層(第三誘電体層)」のことであるといえる。
したがって、上記(1)の[0099]に記載の「上記透明フィルム基材の透明誘電体層」の表面は、[0098]に記載の「得られたSiOx層(x=2)」の表面であるから、その算術平均粗さRaは「0.5nm」である。
(イ) 上記(1)の[0128]に記載の「実施例1の」「透明電極付き基板」は、[0095]~[0101]の記載により製造されたものであり、上記(1)の[0129][表2]に記載の「ITO」は、[0101]に記載の「熱処理後のITO層」のことであり、[0101]に記載の「熱処理後のITO層」は、[0099]に記載の「非晶質ITO透明電極層」を熱処理することにより形成されたものである。
また、上記(1)の[0101]に記載の「熱処理後のITO層」は、[0131]の記載から、「低抵抗率」と評価されている。
(ウ) 上記(ア)及び(イ)を踏まえると、上記(1)の[0095]~[0101]、[0128]、[0129][表2]及び[0131]によれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「 透明フィルム基材の透明誘電体層上に、インジウム・スズ複合酸化物(酸化スズ含有量5重量%)をターゲットとして用いて膜厚が25nmである非晶質ITO透明電極層をスパッタ製膜し、その後、150℃のオーブン内で60分の熱処理を行うことにより製造され、
透明フィルム基材の透明誘電体層の表面の算術平均粗さRaは、0.5nmであり、
熱処理後のITO透明電極層の平均粒径は210nmであり、
熱処理後のITO透明電極層は、低抵抗率透明電極層である、
透明電極付き基板。」
イ 甲1記載事項
上記(1)の[0046]によれば、甲1には、以下の技術事項(以下、「甲1記載事項」という。)が記載されている。
「透明電極層4の膜厚d4は、15~110nmが好ましく、透明電極付き基板100が静電容量方式タッチパネルに用いられる場合、透明電極層4の膜厚d4は、15nm~40nmであることが好ましく、21nm~35nmであることがより好ましく、23nm~30nmであることがさらに好ましく、透明電極層の膜厚を前記範囲とすることで、低抵抗かつ高透過率の透明電極層が得られ、透明電極層のパターンの視認を効果的に抑止するためには、d4は32nm以下がさらに好ましく、26nm以下が特に好ましいこと。」
2 甲2について
(1) 甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。
「課題を解決するための手段
[0006] 非晶質部分を含むインジウムスズ酸化物を堆積させる工程で水平方向磁場を大きくすると、該非晶質部分を含むインジウムスズ酸化物を結晶化させる工程後の結晶質の結晶粒径が大きくなることが見出された。そのため、光透過性に優れ、且つ比抵抗が小さい(電気伝導性に優れる)透明導電性フィルムを得ることができる本発明に到った。
・・・・
[0009] 前記フィルム基材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン又はポリカーボネートのいずれかによって構成されることが好ましい。前記フィルム基材が、前記インジウムスズ酸化物の堆積側の表面に易接着層を備えることが好ましい。また、前記フィルム基材が、前記インジウムスズ酸化物の堆積側の表面に屈折率調整層を備えることが好ましい。さらに、前記フィルム基材が、前記インジウムスズ酸化物の堆積側の表面にハードコート層を備えることも好ましい。また、前記結晶化したインジウムスズ酸化物層は、厚みが20nmから50nmであることが好ましい。前記フィルム基材の厚みが15μmから50μmであることも好ましい。」
「発明を実施するための形態
・・・・
[0026] なお、フィルム基材の材料には、透明性と耐熱性に優れる点から、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン又はポリカーボネートが用いられる。フィルム基材は、その表面に易接着層や、反射率を調整するための屈折率調整層(Index matching layer)、耐擦傷性を付与するためのハードコート層を備えていてもよい。
・・・・
[0028] 上記結晶化したインジウムスズ酸化物層の厚みは、好ましくは20nmから50nmであり、比抵抗は、好ましくは3.3×10-4以下Ω・cmであり、さらに好ましくは2.5×10-4Ω・cmから3.2×10-4Ω・cmである。上記結晶化したインジウムスズ酸化物の結晶の平均の結晶粒径は、好ましくは150nm以上であり、さらに好ましくは175nmから250nmである。
[0029] [実施例1]
酸化スズを10重量%、酸化インジウムを90重量%として混合し、焼結して作られたターゲット材を配置したスパッタ装置に、厚み23μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなるフィルム基材を入れた。次いで、スパッタ装置のチャンバ内に、アルゴンガス99体積%と酸素ガス1体積%の混合ガスを封入し、チャンバ内を0.4Paの低圧環境に調整した。焼結して作られたターゲット材上の水平方向磁場を50mTとして、マグネトロンスパッタリング法により、フィルム基材上に、厚み32nmの非晶質を含むインジウムスズ酸化物を堆積させた。水平方向の磁場は、テスラメータ(カネテック製 TM―701)を用いて、JIS C2501に準じて測定した。
[0030] その後、フィルム基材に堆積した非晶質部分を含むインジウムスズ酸化物を、140℃の加熱室内で、常圧環境下で90分間加熱処理した。フィルム基材上に形成された非晶質部分を含むインジウムスズ酸化物は、加熱処理することにより結晶化したことを確認した。
・・・・
[0032] 結晶粒径は、結晶化したインジウムスズ酸化物を超ミクロトームで切削し、直接倍率6000倍で、透過型電子顕微鏡(日立製作所製 H-7650)を用いて撮影された写真から算出した。撮影された写真を画像解析処理して、結晶粒界の形状において最も長い径を、各粒子の径(nm)とし、25nm刻みのヒストグラムにして、ヒストグラムの平均値を得られた結晶の平均の結晶粒径とした。結晶粒径の値を表1に示す。
・・・・
[0039] [表1]
[図:0001421405000002.jpg]
[0040] 表1に示すように、ターゲット材上の水平方向磁場が、50mTから185mTである場合には、30mTの場合よりも光透過性に優れ、且つ比抵抗が小さい(電気伝導性に優れる)透明導電性フィルムが得られた。」
(2) 甲2発明及び甲2記載事項
ア 甲2発明
(ア) 上記(1)の[0026]のフィルム基材の材料として、透明性に優れる点から、ポリエチレンテレフタレートが用いられる旨の記載、及び、上記(1)の[0040]の「透明導電性フィルムが得られた」との記載から、上記(1)の[0029]に記載の「厚み23μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなるフィルム基材」は、透明であるといえる。
(イ) 上記(1)の[0032]の記載から、上記(1)の[0039] [表1]に記載の「結晶粒径」は、「平均の結晶粒径」のことであるといえる。
(ウ) 上記(ア)、(イ)及び、上記(1)の[0029]、[0030]、[0032]、[0039][表1]及び[0040]によれば、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
「マグネトロンスパッタリング法により、酸化スズを10重量%、酸化インジウムを90重量%として混合し、焼結して作られたターゲット材を用いて、厚み23μmの透明であるポリエチレンテレフタレートフィルムからなるフィルム基材上に、厚み32nmの非晶質を含むインジウムスズ酸化物層を堆積させ、
その後、フィルム基材に堆積した非晶質部分を含むインジウムスズ酸化物層を、加熱処理して結晶化することにより得た、
結晶化したインジウムスズ酸化物層の平均の結晶粒径は154nmである、
比抵抗が小さく、電気伝導性に優れる透明導電性フィルム。」
イ 甲2記載事項
上記(1)の[0009] 及び[0028]によれば、甲2には、以下の技術事項(以下、「甲2記載事項」という。)が記載されている。
「結晶化したインジウムスズ酸化物層の厚みは、好ましくは20nmから50nmである。」
3 甲3について
甲3には、以下の記載がある。
「[0105] (実施例1)
真性シリコン基板上に炭素系薄膜を10nm製膜した。製膜条件は、基板温度を室温とし、ターゲットとしてカーボンを、キャリアガスとしてアルゴンと二酸化炭素をそれぞれ80sccm、20sccm使用して、8.0Paの圧力で0.5W/cm2のパワー密度をかけて製膜した。この炭素系薄膜の表面をAFMで観察したところ、粒子状のものの集合のように観測された(図5)。この上に透明導電性酸化物層としてインジウム-亜鉛複合酸化物(IZO:酸化亜鉛10重量%含有)を50nm製膜した。製膜条件は、基板温度を室温とし、ターゲットとしてインジウム-亜鉛複合酸化物(IZO:酸化亜鉛10重量%含有)を、キャリアガスとしてアルゴンを100sccm使用して、0.2Paの圧力で0.5W/cm2のパワー密度をかけて製膜した。
・・・・
[0111] (実施例4)
実施例1のIZOをインジウム-錫複合酸化物(ITO:酸化錫10重量%含有)に変更した以外は、同様にして透明電極を作製した。」
4 甲4について
甲4には、以下の記載がある。
「【0052】
(実施例1~14)
透明導電性フィルムを得る手法は上記の〔1〕の方法を採用している。
これらの実施例は表1に示した条件のもと、以下の通り実施した。
真空槽にフィルムを投入し、真空引きをした。真空引き時間が長いほどスパッタリング時の成膜中の水分圧が減少するので、スパッタリング時の成膜雰囲気の不活性ガスに対する水分圧の比は真空引き時間を変えることで制御した。
酸素導入後に不活性ガスとしてアルゴンを導入し全圧を0.5Paにした。
酸化スズを含む酸化インジウム焼結ターゲット、あるいは酸化スズを含まない酸化インジウム焼結ターゲットに1W/cm2の電力密度で電力を投入し、DCマグネトロンスパッタリング法により、透明導電膜を成膜した。膜厚についてはフィルムがターゲット上を通過するときの速度を変えて制御した。また、スパッタリング時の成膜雰囲気の不活性ガスに対する水分圧の比については、ガス分析装置(インフィコン社製、トランスペクターXPR3)を用いて測定した。
透明導電膜を成膜したフィルムは、熱処理した後、表1に記載の測定を実施した(ただし、熱処理しないで測定したものもある)。 測定結果を表1に示した。
・・・・
【0057】
【表1】
[図:0001421405000003.jpg]
」
5 甲5について
甲5には、以下の記載がある。
「【0060】
〔実施例1~13〕
透明プラスチックフィルム基材は、両面に易接着層を有する二軸配向透明PETフィルム(東洋紡績社製、A4340、厚み188μm)を用いた。硬化型樹脂硬化層として、光重合開始剤含有アクリル系樹脂(大日精化工業社製、セイカビームEXF-01J)100質量部に、共重合ポリエステル樹脂(東洋紡績社製、バイロン200、重量平均分子量18,000)を3質量部配合し、溶剤としてトルエン/MEK(8/2:質量比)の混合溶媒を、固形分濃度が50質量%になるように加え、撹拌して均一に溶解し塗布液を調製した。二軸配向透明PETフィルムの両面に塗膜の厚みが5μmになるように、調製した塗布液をマイヤーバーを用いて塗布した。70℃で1分間乾燥を行った後、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、UB042-5AM-W型)を用いて紫外線を照射(光量:300mJ/cm2)し、塗膜を硬化させた。
【0061】
透明導電性フィルムを得る手法は上記の〔1〕~〔3〕の方法を採用している。
これらの実施例における透明導電膜作製条件は表1に記載した。また、各実施例において共通の作製条件は以下の通り。
真空槽にフィルムを投入し、2.0×10-4Paまで真空引きをした。次に、酸素分圧が1.5×10-2Paになるように酸素を導入し、その後不活性ガスとしてアルゴンを導入し全圧を0.5Paにした。実施例7のボンバード工程における導入ガスも、前記と同じである。
酸化スズを含む酸化インジウム焼結ターゲット、あるいは酸化スズを含まない酸化インジウム焼結ターゲットに1W/cm2の電力密度で電力を投入し、DCマグネトロンスパッタリング法により、透明導電膜を成膜した。膜厚についてはフィルムがターゲット上を通過するときの速度を変えて制御した。また、スパッタリング時の成膜雰囲気の不活性ガスに対する質量数28のガス分圧の比については、ガス分析装置(インフィコン社製、トランスペクターXPR3)を用いて測定した。
・・・・
【0069】
【表2】
[図:0001421405000004.jpg]
・・・・
【0071】
表2、3に記載のとおり、実施例1~16記載の透明導電性フィルムは、ペン摺動耐久試験後も摺動部が透明で、ON抵抗も10kΩ以下であり、かつ非常に優れたペン摺動耐久性が得られた。さらにタッチパネルの平面性も良好であった。比較例1、2、4、6、9はペン摺動耐久試験後に摺動部が白化し、ON抵抗も10kΩ以上であり、ペン摺動耐久性が十分でなかった。比較例3、5、7、8、10はペン摺動耐久試験は優れているが、他の特性が劣っている。比較例3は全光線透過率が実用的な水準よりも低いために使用に適さない。比較例5は表面抵抗が実用的な水準よりも高いため使用に適さない。比較例7、8、10はタッチパネルの平面性が十分でない。」
6 甲6について
甲6には、以下の記載がある。
「[0080] [表3]
[図:0001421405000005.jpg]
・・・・
[0082] 表3に記載のとおり、実施例13~26、及び実施例27、28記載の透明導電性フィルムは、ペン摺動耐久試験後も摺動部が透明で、ON抵抗も10kΩ以下であり、かつ非常に優れたペン摺動耐久性が得られた。表4の結果にある比較例10、13、15、17、18、19はペン摺動耐久試験は優れているが、他の特性が劣っている。比較例10、13、18、19は表面抵抗値が実用的な水準よりも高いために使用に適さない。比較例9は全光線透過率が実用的な水準よりも低いため使用に適さない。実施例13~26、比較例7~16、比較例18~22においては真空引き時間は2~7時間であったが、比較例17では24時間かかった。比較例17は真空引き時間が極端に長いために産業上の利用に適さない。」
7 甲7について
甲7には、以下の記載がある。
「[0050](実施例1~7)
透明導電性積層フィルムを得る手法は上記の〔1〕の方法を採用している。
これらの実施例は表1に示した条件のもと、以下の通り実施した。なお、表1に記載のITO膜は透明導電性薄膜層、SiO2膜は誘電体層にそれぞれ対応している。
真空槽にフィルムを投入し、真空引きをした。真空引き時間が長いほどスパッタリング時の成膜中の水分圧が減少するので、スパッタリング時の成膜雰囲気の不活性ガスに対する水分圧の比は真空引き時間を変えることで制御した。
酸素導入後に不活性ガスとしてアルゴンを導入し全圧を0.5Paにした。
SiO2薄膜を形成するため、シリコンをターゲットに用いて、直流マグネトロンスパッタリング法で行った。また、成膜中の電圧値を常時観測しながら、電圧値が一定となるように酸素ガスの流量計にフィートバックした。
続いて前記SiO2薄膜上に酸化スズを含む酸化インジウム焼結ターゲット、あるいは酸化スズを含まない酸化インジウム焼結ターゲットに1W/cm2の電力密度で電力を投入し、DCマグネトロンスパッタリング法により、透明導電性薄膜層を成膜した。膜厚についてはフィルムがターゲット上を通過するときの速度を変えて制御した。また、スパッタリング時の成膜雰囲気の不活性ガスに対する水分圧の比については、ガス分析装置(インフィコン社製、トランスペクターXPR3)を用いて測定した。
透明導電性薄膜層を成膜したフィルムは、熱処理した後、表1に記載の測定を実施した(ただし、熱処理しないで測定したものもある)。測定結果を表1に示した。
・・・・
[0052]
[表1]
[図:0001421405000006.jpg]
」
8 甲8について
甲8には、以下の記載がある。
「[0058](実施例1~6)
透明導電性フィルムを得る手法は上記の〔1〕と〔2〕の方法を採用している。
実施例1、2、4~6で採用している透明導電性フィルムを得る手法〔1〕において記載する。まず、透明導電膜を5nm成膜するまで、酸素ガス分圧に対する質量数28のガス分圧の比をガス分析装置で観測する。次に、透明導電膜を5~10nm成膜する間に、設定の酸素ガス分圧に対する質量数28のガス分圧の比になるように酸素流量をコントロールする。10nm以上の膜厚では設定の酸素ガス分圧に対する質量数28のガス分圧の比から5%ズレたら、設定値に近づけるように酸素流量をコントロールする。
・・・・
[0060] これらの実施例における透明導電膜作製条件は表1に記載した。また、各実施例において共通の作製条件は以下の通りである。
真空槽に透明プラスチックフィルム、ただし、実施例3においてはSiOx付きフィルムを投入し、2.0×10-4Paまで真空引きをした。次に酸素分圧が1.5×10-2にPaなるように酸素を導入し、その後不活性ガスとしてアルゴンを導入し全圧を0.5Paにした。
酸化スズを含む酸化インジウム焼結ターゲット、あるいは酸化スズを含まない酸化インジウム焼結ターゲットに1W/cm2の電力密度で電力を投入し、DCマグネトロンスパッタリング法により、透明プラスチック基材の硬化型樹脂層を塗布した面、ただし、実施例3においてはSiOx面に透明導電膜を成膜した。膜厚についてはフィルムがターゲット上を通過するときの速度を変えて制御した。また、スパッタリング時の成膜雰囲気の酸素ガスに対する質量数28のガス分圧の比については、ガス分析装置(インフィコン社製、トランスペクターXPR3)を用いて測定した。
透明導電膜を成膜したフィルムは、150℃1時間熱処理した後、表2に記載の測定を実施した。測定結果を表2に示した。
・・・・
[0062]
[表1]
[図:0001421405000007.jpg]
[0063]
[表2]
[図:0001421405000008.jpg]
」
9 甲9について
甲9には、以下の記載がある。
「【0053】
[実施例1]
(下地層200の製膜)
酸化インジウム・錫(酸化錫含量10重量%)をターゲットとして用い、酸素とアルゴンの混合ガスを装置内に導入しながら、酸素分圧5.0×10-2Pa、製膜室内圧力0.2Pa、基板温度0℃パワー密度2kWの条件で行った。
【0054】
(透明電極薄膜層300の製膜)
連続して、酸化インジウム・錫(酸化錫含量10重量%)をターゲットとして用い、酸素とアルゴンの混合ガスを装置内に導入しながら、酸素分圧3.3×10-2Pa、製膜室内圧力0.2Pa、基板温度0℃、パワー密度12kWの条件で行った。
・・・・
【0056】
(結晶化(熱処理))
この透明導電フィルムを、150℃で1時間熱処理を行った。顕微鏡観察によってほぼ完全に結晶化されていることが確認された(結晶化度100%)。
・・・・
【0058】
各層の構成、結果、各水準の特性を表1に示す。ここで、ターゲット材料は下記のものを用いた。nITO(n=3,5,7,10)は、酸化錫をn重量%含有する酸化インジウムを用いた。
【0059】
【表1】
[図:0001421405000009.jpg]
」
10 甲15について
甲15には、以下の記載がある。
「【0055】
[図:0001421405000010.jpg]
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは良好な易滑性と平滑性により工程でのスリキズ等の欠点や、加工工程での欠点が抑制できるため、片面に感光樹脂組成物を体積して使用されるドライフィルムレジスト支持体用ポリエステルフィルムや光学デバイス基材用フィルム、セラミックコンデンサー用離型フィルム、磁気記録媒体用フィルムとして好適に用いることができる。」
11 甲16について
甲16には、以下の記載がある。
「【0178】
【表2】
[図:0001421405000011.jpg]
【0179】
【表3】
[図:0001421405000012.jpg]
【0180】
【表4】
[図:0001421405000013.jpg]
」
「【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明が提案する積層ポリエステルフィルムは、耐応力変形性、厚み均一性、フィルム巻き取り性及び検査容易性の点で良好であり、例えば、厚みが100μm以下の光学部材、具体的には例えば偏光板などの光学部材を貼り合わせるための基材乃至工程紙として好適に利用することができる。」
第5 当審の判断
1 申立理由1(甲1を主引例とする本件発明1の進歩性)について
(1) 本件発明1と甲1発明との対比
ア 構成要件Aについて
甲1発明の「透明フィルム基材」は、本件発明1の「透明フィルム基材」に相当する。
イ 構成要件Bについて
甲1発明の「熱処理後のITO透明電極層」は、「透明フィルム基材の透明誘電体層上に、インジウム・スズ複合酸化物(酸化スズ含有量5重量%)をターゲットとして用いて膜厚が25nmである非晶質ITO透明電極層をスパッタ製膜し、その後、150℃のオーブン内で60分の熱処理を行うことにより製造され」たものであるから、本件発明1の「透明フィルム基材の厚み方向一方面に配置された結晶化インジウムスズ複合酸化物スパッタ膜」に相当する。
ウ 構成要件Cについて
甲1発明は、「透明フィルム基材の透明誘電体層の表面の算術平均粗さRaは、0.5nmであ」るとの構成を有するものである。
そうすると、甲1発明の「透明フィルム基材」は、本件発明1の「前記透明フィルム基材の前記厚み方向一方面は、1.0nm以下の算術平均粗さRaを有」することに相当する構成を備えている。
エ 構成要件Fについて
甲1発明は、「熱処理後のITO透明電極層の平均粒径は210nmであ」るとの構成を有するものである。
そうすると、甲1発明の「熱処理後のITO透明電極層」は、本件発明1の「平均粒径が110nm以上である結晶粒を含有する」に相当する構成を備えている。
オ 構成要件Gについて
甲1発明の「透明電極付き基板」は、「透明フィルム基材の透明誘電体層上に、インジウム・スズ複合酸化物(酸化スズ含有量5重量%)をターゲットとして用いて膜厚が25nmである非晶質ITO透明電極層をスパッタ製膜し、その後、150℃のオーブン内で60分の熱処理を行うことにより製造され」たものであるから、本件発明1の「透明導電性フィルム」に相当する。
以上によれば、本件発明と甲1発明は、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
A 透明フィルム基材と、
B 前記透明フィルム基材の厚み方向一方面に配置された結晶化インジウムスズ複合酸化物スパッタ膜とを備え、
C 前記透明フィルム基材の前記厚み方向一方面は、1.0nm以下の算術平均粗さRaを有し、
F 平均粒径が110nm以上である結晶粒を含有する、
G 透明導電性フィルム。
[相違点]
[相違点1]
本件発明1は、「前記結晶化インジウムスズ複合酸化物スパッタ膜は、酸化スズの含有割合が9質量%以上である領域を含み」との構成(構成要件D)を有しているのに対し、甲1発明は、構成要件Dを有していない点。
[相違点2]
構成要件Bの「結晶化インジウムスズ複合酸化物スパッタ膜」の厚みについて、本件発明1は、「35nm以上」(構成要件E)であるのに対し、甲1発明は、「25nm」である点。
(2) 判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
上記第4の1(2)イの甲1記載事項によれば、甲1には、「透明電極層4の膜厚d4」を「35nm以上」とすることは記載されておらず、むしろ「23nm~30nmであることがさらに好ましく、透明電極層の膜厚を前記範囲とすることで、低抵抗かつ高透過率の透明電極層が得られ、透明電極層のパターンの視認を効果的に抑止するためには、d4は32nm以下がさらに好まし」いことが記載されているから、甲1発明において、「透明電極層4の膜厚d4」を「35nm以上」とする動機付けはない。
また、上記第4の1(2)ア(ウ)のとおり、甲1発明は、「膜厚が25nmである非晶質ITO透明電極層をスパッタ製膜し、その後、150℃のオーブン内で60分の熱処理を行うことにより製造され」たものであって、「熱処理後のITO透明電極層は、低抵抗率透明電極層である」と評価されているものであるから、甲1発明において、「透明電極層4の膜厚d4」を、「35nm以上」として低抵抗化するという動機付けはない。
したがって、甲1発明において、相違点2の構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。
加えて、甲3~9には、上記第4の3~9のとおりの記載があるものの、相違点2の構成である「結晶化インジウムスズ複合酸化物スパッタ膜」の「厚み」を「35nm以上」として表面抵抗を低くするという技術思想は記載されていない。
したがって、甲3~9を考慮しても、甲1発明において、相違点2の構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。
よって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲3~甲9に記載された事項を含めて検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 申立理由2(甲1を主引例とする本件発明2の進歩性)について
上記第2のとおり、本件発明2は、本件発明1の「透明導電性フィルム」を「製造する方法」 に関するものであるから、本件発明2は、本件発明1の相違点に係る構成と同じ構成を有する。
そうすると、当該相違点に係る構成についての判断は、上記1(2)のとおりであり、本件発明2は、甲1に記載された発明、甲3~9に記載された周知の技術及び甲5、10~14に記載された周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 申立理由3(甲2を主引例とする本件発明1の進歩性)について
(1) 本件発明1と甲2発明との対比
ア 構成要件Aについて
甲2発明の「厚み23μmの透明であるポリエチレンテレフタレートフィルムからなるフィルム基材」は、本件発明1の「透明フィルム基材」に相当する。
イ 構成要件Bについて
甲2発明の「結晶化したインジウムスズ酸化物層」は、マグネトロンスパッタリング法によりフィルム基材上に、厚み32nmで形成され、その後、結晶化されたものであるから、本件発明1の「透明フィルム基材の厚み方向一方面に配置された結晶化インジウムスズ複合酸化物スパッタ膜」に相当する。
ウ 構成要件Dについて
甲2発明の「結晶化したインジウムスズ酸化物層」は、マグネトロンスパッタリング法により、酸化スズを10重量%、酸化インジウムを90重量%として混合し、焼結して作られたターゲット材を用いて形成されたものである。
そうすると、甲2発明の「結晶化したインジウムスズ酸化物層」は、本件発明1の「酸化スズの含有割合が9質量%以上である領域を含み」に相当する構成を備えている。
エ 構成要件Fについて
甲2発明は、「結晶化したインジウムスズ酸化物層の平均の結晶粒径は154nmである」ものである。
そうすると、甲2発明の「結晶化したインジウムスズ酸化物層」は、本件発明1の「平均粒径が110nm以上である結晶粒を含有する」に相当する構成を備えている。
オ 構成要件Gについて
甲2発明の「透明導電性フィルム」は、本件発明1の「透明導電性フィルム」に相当する。
以上によれば、本件発明1と甲2発明は、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
A 透明フィルム基材と、
B 前記透明フィルム基材の厚み方向一方面に配置された結晶化インジウムスズ複合酸化物スパッタ膜とを備え、
D 前記結晶化インジウムスズ複合酸化物スパッタ膜は、酸化スズの含有割合が9質量%以上である領域を含み、
F 平均粒径が110nm以上である結晶粒を含有する、
G 透明導電性フィルム。
[相違点]
[相違点3]
本件発明1は、「前記透明フィルム基材の前記厚み方向一方面は、1.0nm以下の算術平均粗さRaを有し」(構成要件C)との構成を有しているのに対し、甲2発明は、構成要件Cを有しているのか不明な点。
[相違点4]
構成要件Bの「結晶化インジウムスズ複合酸化物スパッタ膜」の厚みについて、本件発明1は、「35nm以上」(構成要件E)であるのに対し、甲2発明は、「32nm」である点。
(2) 判断
事案に鑑み、相違点4について検討する。
本件明細書の【0024】に「結晶化インジウムスズ複合酸化物膜の厚みは、35nm以上である。結晶化インジウムスズ複合酸化物膜の厚みが上記下限を下回れば、結晶化インジウムスズ複合酸化物膜の表面抵抗を低くすることができない。」と記載されているように、本件発明1は、結晶化インジウムスズ複合酸化物膜の表面抵抗を低くするとの課題を解決するために、結晶化インジウムスズ複合酸化物膜の厚みを35nm以上としているものである。
他方、上記第4の2(2)ア(ウ)のとおり、甲2発明は、「厚み32nmの非晶質を含むインジウムスズ酸化物層を堆積させ」、「加熱処理して結晶化することにより得た」、「比抵抗が小さく、電気伝導性に優れる透明導電性フィルム」であり、32nmとの厚みで、「比抵抗が小さく、電気伝導性に優れる」と評価されているものである。
そうすると、たとえ甲2に甲2記載事項(第4の2(2)イ)のとおり、「結晶化したインジウムスズ酸化物層の厚みは、好ましくは20nmから50nmである。」と記載されていたとしても、甲2発明において、「厚み32nmの非晶質を含むインジウムスズ酸化物層」の厚みを「35nm以上」として比抵抗を小さくするという動機付けはない。
したがって、甲2発明において、相違点4の構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。
加えて、甲3~9には、上記第4の3~9のとおりの記載があるものの、相違点4の構成である「結晶化インジウムスズ複合酸化物スパッタ膜」の「厚み」を「35nm以上」として表面抵抗を低くするという技術思想は記載されていない。
したがって、甲3~9を考慮しても、甲2発明において、相違点4の構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。
よって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲3~甲9に記載された事項を含めて検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 申立理由4(甲2を主引例とする本件発明2の進歩性)について
上記第2のとおり、本件発明2は、本件発明1の「透明導電性フィルム」を「製造する方法」に関するものであるから、本件発明2は、本件発明1の相違点に係る構成と同じ構成を有する。
そうすると、当該相違点に係る構成についての判断は、上記3(2)のとおりであり、本件発明2は、甲2に記載された発明、甲15、甲l6に記載された事項、甲3~9に記載された周知の技術及び甲5、10~14に記載された周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
5 小括
したがって、異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由(進歩性)は理由がない。
第6 むすび
以上の次第であるから、特許異議の申立ての理由及び異議申立人の提出した証拠によっては、本件特許の請求項1及び請求項2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1及び請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-700018