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特許異議申立

2017-700152

処理フィルムの製造方法及びその製造装置

審判番号
2017-700152
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2011-169468外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年02月17日
審決日
2018年04月17日
公報発行日
2018年07月27日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条、特許法第36条、特許法第120条の5第7項、特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5969180号発明「処理フィルムの製造方法及びその製造装置」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5969180号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の〔請求項1,3〕,〔2,9,11〕,4,〔5,7〕,〔6,12,14〕,8,10,13について訂正することを認める。 特許第5969180号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第5969180号の請求項1-請求項8に係る特許(以下「本件特許」という。)についての特許出願(特願2011-169468号)は,平成23年8月2日に出願され,平成28年7月15日に特許権の設定の登録がされたものである。 本件特許について,同年8月17日に特許掲載公報が発行されたところ,発行の日から6月以内である平成29年2月17日に,特許異議申立人 平居博美から特許異議の申立てがされた(異議2017-700152号)。 その後の手続の経緯の概要は,以下のとおりである。 平成29年 6月13日付け:取消理由通知書 平成29年 8月 8日付け:意見書(特許権者) 平成29年 8月 8日付け:訂正請求書 平成29年10月 2日付け:意見書(特許異議申立人) 平成29年12月 7日付け:取消理由通知書(決定の予告) 平成30年 2月 5日付け:訂正請求書 (この訂正請求書による訂正の請求を,以下「本件訂正請求」という。また,本件訂正請求による訂正を,以下「本件訂正」という。) 平成30年 2月 5日付け:意見書(特許権者) 平成30年 3月26日付け:意見書(特許異議申立人) なお,本件訂正請求がされたことにより,平成29年8月8日付け訂正請求書による,先にした訂正の請求は,特許法120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正請求について 1 一群の請求項について 特許請求の範囲の請求項1~請求項8の引用関係からみて,本件訂正請求は特許法120条の5第4項に規定された一群の請求項である〔請求項1-請求項4〕,〔請求項5-請求項8〕ごとにされたものである。 したがって,本件訂正請求は,特許法120条の5第4項の規定に適合する。 2 請求項1~請求項4からなる一群の請求項に係る訂正について (1) 訂正の内容 本件訂正のうち,請求項1~請求項4からなる一群の請求項に係る訂正の内容は,以下のとおりである。なお,下線は当合議体が付したものであり,訂正箇所を表す。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に,「前記樹脂フィルムが,ポリビニルアルコール系フィルムであり」と記載されているのを,「前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり」に訂正する。 請求項3のうち,請求項1の記載を引用し,請求項2の記載を引用しないもの(本件訂正後の請求項3)についても,同様に訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に,「少なくとも1つの前記処理工程は,」と記載されているのを,「前記染色工程,前記架橋工程,および前記延伸工程の少なくとも1つの処理工程は,」に訂正する。 請求項3のうち,請求項1の記載を引用し,請求項2の記載を引用しないもの(本件訂正後の請求項3)についても,同様に訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2に,「前記上方ガイドロールには,当該上方ガイドロールの表面への液供給手段が設けられていることを特徴する請求項1記載の処理フィルムの製造方法。」と記載されているのを,「長尺状の樹脂フィルムを処理槽内の処理液に接触させて処理しながら搬送する処理工程を少なくとも有する,前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法において, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記処理工程は,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 少なくとも1つの前記処理工程は,当該処理工程により得られた前記処理フィルムを,前記処理槽内から搬出した後に,前記処理液外に配置された,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールおよび前記ニップロールに続いて配置されたガイドロールを介して搬送する工程を有し,かつ, 前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記上方ガイドロールには,当該上方ガイドロールの表面への液供給手段が設けられており, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており,これらニップロールの周速差により,長尺状の樹脂フィルムを長手方向に延伸しながら搬送工程を行い, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造方法。」に訂正する。 請求項4のうち,請求項1の記載及び請求項2の記載を引用し,請求項3の記載を引用しないもの(本件訂正後の請求項2の記載を引用する請求項11)についても,同様に訂正する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3に,「前記ニップロールと前記上方ガイドロールは,前記ニップロールの第1ロールと第2ロールの各中心点を結ぶ仮想線に対する仮想垂線の方向を0°とし,当該仮想垂線と前記ニップロールと前記上方ガイドロールで搬送される処理フィルムの方向を表わす仮想搬送線により形成する角度が,0~90°未満になるように配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の処理フィルムの製造方法。」と記載されているのを,「前記ニップロールと前記上方ガイドロールは,前記ニップロールの第1ロールと第2ロールの各中心点を結ぶ仮想線に対する仮想垂線の方向を0°とし,当該仮想垂線と前記ニップロールと前記上方ガイドロールで搬送される処理フィルムの方向を表わす仮想搬送線により形成する角度が,0~90°未満になるように配置されていることを特徴とする請求項1記載の処理フィルムの製造方法。」に訂正する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項4に,「前記少なくとも1つの前記処理工程が,当該処理工程により得られた前記処理フィルムを,前記処理槽内から搬出した後に,前記処理液外に配置された,液切り手段と,前記ニップロールと,前記上方ガイドロールを,順に介して搬送する工程を有することを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の処理フィルムの製造方法。」と記載されているのを,「長尺状の樹脂フィルムを処理槽内の処理液に接触させて処理しながら搬送する処理工程を少なくとも有する,前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法において, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記処理工程は,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 少なくとも1つの前記処理工程が,当該処理工程により得られた前記処理フィルムを,前記処理槽内から搬出した後に,前記処理液外に配置された,液切り手段と,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールと,前記ニップロールに続いて配置されたガイドロールを,順に介して搬送する工程を有し,かつ, 前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており,これらニップロールの周速差により,長尺状の樹脂フィルムを長手方向に延伸しながら搬送工程を行い, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造方法。」に訂正する。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項3に,「前記ニップロールと前記上方ガイドロールは,前記ニップロールの第1ロールと第2ロールの各中心点を結ぶ仮想線に対する仮想垂線の方向を0°とし,当該仮想垂線と前記ニップロールと前記上方ガイドロールで搬送される処理フィルムの方向を表わす仮想搬送線により形成する角度が,0~90°未満になるように配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の処理フィルムの製造方法。」と記載されているのを,「長尺状の樹脂フィルムを処理槽内の処理液に接触させて処理しながら搬送する処理工程を少なくとも有する,前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法において, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記処理工程は,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 少なくとも1つの前記処理工程は,当該処理工程により得られた前記処理フィルムを,前記処理槽内から搬出した後に,前記処理液外に配置された,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールおよび前記ニップロールに続いて配置されたガイドロールを介して搬送する工程を有し,かつ, 前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記上方ガイドロールには,当該上方ガイドロールの表面への液供給手段が設けられており, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており,これらニップロールの周速差により,長尺状の樹脂フィルムを長手方向に延伸しながら搬送工程を行い, 前記ニップロールと前記上方ガイドロールは,前記ニップロールの第1ロールと第2ロールの各中心点を結ぶ仮想線に対する仮想垂線の方向を0°とし,当該仮想垂線と前記ニップロールと前記上方ガイドロールで搬送される処理フィルムの方向を表わす仮想搬送線により形成する角度が,0~90°未満になるように配置されており, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造方法。」に訂正し,新たな請求項9とする。 請求項4のうち,請求項1の記載~請求項3の記載を引用するもの(本件訂正後の請求項9の記載を引用する請求項11)についても,同様に訂正する。 キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項4に,「前記少なくとも1つの前記処理工程が,当該処理工程により得られた前記処理フィルムを,前記処理槽内から搬出した後に,前記処理液外に配置された,液切り手段と,前記ニップロールと,前記上方ガイドロールを,順に介して搬送する工程を有することを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の処理フィルムの製造方法。」と記載されているのを,「長尺状の樹脂フィルムを処理槽内の処理液に接触させて処理しながら搬送する処理工程を少なくとも有する,前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法において, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記処理工程は,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 少なくとも1つの前記処理工程が,当該処理工程により得られた前記処理フィルムを,前記処理槽内から搬出した後に,前記処理液外に配置された,液切り手段と,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールと,前記ニップロールに続いて配置されたガイドロールを,順に介して搬送する工程を有し,かつ, 前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており,これらニップロールの周速差により,長尺状の樹脂フィルムを長手方向に延伸しながら搬送工程を行い, 前記ニップロールと前記上方ガイドロールは,前記ニップロールの第1ロールと第2ロールの各中心点を結ぶ仮想線に対する仮想垂線の方向を0°とし,当該仮想垂線と前記ニップロールと前記上方ガイドロールで搬送される処理フィルムの方向を表わす仮想搬送線により形成する角度が,0~90°未満になるように配置されており, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造方法。」に訂正し,新たな請求項10とする。 ク 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項4に,「前記少なくとも1つの前記処理工程が,当該処理工程により得られた前記処理フィルムを,前記処理槽内から搬出した後に,前記処理液外に配置された,液切り手段と,前記ニップロールと,前記上方ガイドロールを,順に介して搬送する工程を有することを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の処理フィルムの製造方法。」と記載されているのを,「前記少なくとも1つの前記処理工程が,当該処理工程により得られた前記処理フィルムを,前記処理槽内から搬出した後に,前記処理液外に配置された,液切り手段と,前記ニップロールと,前記上方ガイドロールを,順に介して搬送する工程を有することを特徴とする請求項2または9記載の処理フィルムの製造方法。」に訂正し,新たな請求項11とする。 (2) 訂正の適否 ア 訂正事項1について 訂正事項1による訂正は,本件特許の願書に添付した明細書の【0046】の記載に基づいて,請求項1に記載された「ポリビニルアルコール系フィルム」を,「原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルム」に限定する訂正である。 したがって,訂正事項1による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。また,この訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 請求項3のうち,請求項1の記載を引用し,請求項2の記載を引用しないもの(本件訂正後の請求項3)についても,同様のことがいえる。 イ 訂正事項2について 訂正事項2による訂正は,請求項1に記載された「少なくとも1つ」の選択肢となる処理工程を,「前記染色工程,前記架橋工程,および前記延伸工程」に限定する訂正である。 したがって,訂正事項2による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。また,この訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 請求項3のうち,請求項1の記載を引用し,請求項2の記載を引用しないもの(本件訂正後の請求項3)についても,同様のことがいえる。 ウ 訂正事項3について 訂正事項3による訂正は,以下のとおり分けて考えることができる。 訂正事項3A:請求項2の記載を,他の請求項の記載を引用しないものに訂正する。 訂正事項3B:本件特許の願書に添付した明細書の【0046】の記載に基づいて,「ポリビニルアルコール系フィルム」を,「原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルム」に訂正する。 訂正事項3C:請求項2に記載された「特徴する」を「特徴とする」に訂正する。 ここで,訂正事項3Aによる訂正は,特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること(以下「請求項間の引用関係の解消」という。)を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項3Bによる訂正は,同ただし書1号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして,訂正事項3Cによる訂正は,同ただし書3号に掲げる,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。加えて,これら訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 請求項4のうち,請求項1の記載及び請求項2の記載を引用し,請求項3の記載を引用しないもの(本件訂正後の請求項2の記載を引用する請求項11)についても,同様のことがいえる。 エ 訂正事項4について 訂正事項4による訂正は,請求項3を,本件訂正後の請求項2の記載を引用しないものとする訂正である。そして,この訂正は,前記訂正事項3Aの訂正の目的(請求項1と請求項2についての,請求項間の引用関係の解消)を達するための訂正である。 (当合議体注:請求項3が,請求項1の記載及び請求項2の記載を引用したままでは,請求項1と請求項2は,依然として一群の請求項として一体的に取り扱われることとなる。) したがって,訂正事項4による訂正は,特許法120条5第2項ただし書4号に掲げる,請求項間の引用関係の解消を目的とする訂正に該当する。また,この訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 オ 訂正事項5について 訂正事項5による訂正は,以下のとおり分けて考えることができる。 訂正事項5A:請求項4のうち,請求項1の記載を引用し,請求項2の記載及び請求項3の記載を引用しないものを,他の請求項の記載を引用しないものに訂正する。 訂正事項5B:本件特許の願書に添付した明細書の【0046】の記載に基づいて,「ポリビニルアルコール系フィルム」を,「原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルム」に訂正する。 ここで,訂正事項5Aによる訂正は,特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる,請求項間の引用関係の解消を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項5Bによる訂正は,同ただし書1号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして,これら訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 カ 訂正事項6について 訂正事項6による訂正は,以下のとおり分けて考えることができる。 訂正事項6A:請求項3のうち,請求項1の記載及び請求項2の記載を引用するものを,他の請求項の記載を引用しないものに訂正して,新たな請求項9とする。 訂正事項6B:本件特許の願書に添付した明細書の【0046】の記載に基づいて,「ポリビニルアルコール系フィルム」を,「原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルム」に訂正する。 ここで,訂正事項6Aによる訂正は,特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる,請求項間の引用関係の解消を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項6Bによる訂正は,同ただし書1号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして,これら訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 キ 訂正事項7について 訂正事項7による訂正は,以下のとおり分けて考えることができる。 訂正事項7A:請求項4のうち,請求項1の記載及び請求項3の記載を引用し,請求項2の記載を引用しないものを,他の請求項の記載を引用しないものに訂正して,新たな請求項10とする。 訂正事項7B:本件特許の願書に添付した明細書の【0046】の記載に基づいて,「ポリビニルアルコール系フィルム」を,「原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルム」に訂正する。 ここで,訂正事項7Aによる訂正は,特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる,請求項間の引用関係の解消を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項7Bによる訂正は,同ただし書1号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして,これら訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 ク 訂正事項8について 訂正事項8による訂正は,以下のとおり分けて考えることができる。 訂正事項8A:請求項4を,本件訂正後の請求項1の記載を引用しないものに訂正する。 訂正事項8B:前記訂正事項6Aによる訂正と整合するように,引用する請求項の番号を3から9に訂正する。 ここで,訂正事項8Aによる訂正は,前記訂正事項3Aの訂正の目的(請求項間の引用関係の解消)を達するための訂正である。また,訂正事項8Bによる訂正も,前記訂正事項6Aの訂正の目的(請求項間の引用関係の解消)を達するための訂正である。 したがって,訂正事項8A及び訂正事項8Bによる訂正は,いずれも,特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる,請求項間の引用関係の解消を目的とする訂正である。また,これら訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 (3) 小括 請求項1~請求項4からなる一群の請求項に係る訂正は,特許法120条の5第2項ただし書に掲げる事項を目的とするものであり,また,同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定にも適合する。そして,本件訂正請求は,同法120条の5第4項の規定に適合する。 ここで,請求項1~請求項4からなる一群の請求項に係る訂正後の,請求項1~4及び請求項9~請求項11において,一群の請求項として一体的に取り扱われる請求項は,その引用関係からみて,〔請求項1及び請求項3〕,〔請求項2,請求項9及び請求項11〕,請求項4,並びに,請求項10である。 よって,訂正後の〔請求項1及び請求項3〕,〔請求項2,請求項9及び請求項11〕,請求項4,並びに,請求項10について,訂正することを認める。 3 請求項5~請求項8からなる一群の請求項に係る訂正について (1) 訂正の内容 本件訂正のうち,請求項5~請求項8からなる一群の請求項に係る訂正の内容は,以下のとおりである。なお,下線は当合議体が付したものであり,訂正箇所を表す。 ア 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項5に,「前記樹脂フィルムが,ポリビニルアルコール系フィルムであり」と記載されているのを,「前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり」に訂正する。 請求項7のうち,請求項5の記載を引用し,請求項6の記載を引用しないもの(本件訂正後の請求項7)についても,同様に訂正する。 イ 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項5に,「前記処理槽には」と記載されているのを,「前記染色工程,前記架橋工程,および前記延伸工程における少なくとも1つの処理槽には」に訂正する。 請求項7のうち,請求項5の記載を引用し,請求項6の記載を引用しないもの(本件訂正後の請求項7)についても,同様に訂正する。 ウ 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項6に,「前記上方ガイドロールには,当該上方ガイドロールの表面への液供給手段が設けられていることを特徴とする請求項5記載の製造装置。」と記載されているのを,「樹脂フィルムに任意の処理を行うための処理液を満たす少なくとも1つの処理槽を備え, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記任意の処理が,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 前記処理槽には,当該処理槽において処理された処理フィルムを当該処理槽内からに搬出した後に搬送するための,前記処理液に接触しないように配置された,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールおよび当該ニップロールに続いて配置されたガイドロールを有し,かつ,前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記上方ガイドロールには,当該上方ガイドロールの表面への液供給手段が設けられており, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造装置。」に訂正する。 請求項8のうち,請求項5の記載及び請求項6の記載を引用し,請求項7の記載を引用しないもの(本件訂正後の請求項6の記載を引用する請求項14)についても,同様に訂正する。 エ 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項7に,「前記ニップロールと前記上方ガイドロールは,前記ニップロールの第1ロールと第2ロールの各中心点を結ぶ仮想線に対する仮想垂線の方向を0°とし,当該仮想垂線と前記ニップロールと前記上方ガイドロールで搬送される処理フィルムの方向を表わす仮想搬送線により形成する角度が,0~90°未満になるように配置されていることを特徴とする請求項5または6記載の製造装置。」と記載されているのを,「前記ニップロールと前記上方ガイドロールは,前記ニップロールの第1ロールと第2ロールの各中心点を結ぶ仮想線に対する仮想垂線の方向を0°とし,当該仮想垂線と前記ニップロールと前記上方ガイドロールで搬送される処理フィルムの方向を表わす仮想搬送線により形成する角度が,0~90°未満になるように配置されていることを特徴とする請求項5記載の製造装置。」に訂正する。 オ 訂正事項13 特許請求の範囲の請求項8に,「前記処理槽が,当該処理槽において処理された処理フィルムを当該処理槽内からに搬出した後に搬送するための,前記処理液に接触しないように配置された,液切り手段と,前記ニップロールと,前記上方ガイドロールを,順に有することを特徴とする請求項5~7の何れかに記載の製造装置。」と記載されているのを,「樹脂フィルムに任意の処理を行うための処理液を満たす少なくとも1つの処理槽を備え, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記任意の処理が,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 前記処理槽が,当該処理槽において処理された処理フィルムを当該処理槽内からに搬出した後に搬送するための,前記処理液に接触しないように配置された,液切り手段と,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールと,当該ニップロールに続いて配置されたガイドロールを,順に有し,かつ,前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造装置。」に訂正する。 カ 訂正事項14 特許請求の範囲の請求項7に,「前記ニップロールと前記上方ガイドロールは,前記ニップロールの第1ロールと第2ロールの各中心点を結ぶ仮想線に対する仮想垂線の方向を0°とし,当該仮想垂線と前記ニップロールと前記上方ガイドロールで搬送される処理フィルムの方向を表わす仮想搬送線により形成する角度が,0~90°未満になるように配置されていることを特徴とする請求項5または6記載の製造装置。」と記載されているのを,「樹脂フィルムに任意の処理を行うための処理液を満たす少なくとも1つの処理槽を備え, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記任意の処理が,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 前記処理槽には,当該処理槽において処理された処理フィルムを当該処理槽内からに搬出した後に搬送するための,前記処理液に接触しないように配置された,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールおよび当該ニップロールに続いて配置されたガイドロールを有し,かつ,前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記上方ガイドロールには,当該上方ガイドロールの表面への液供給手段が設けられており, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており, 前記ニップロールと前記上方ガイドロールは,前記ニップロールの第1ロールと第2ロールの各中心点を結ぶ仮想線に対する仮想垂線の方向を0°とし,当該仮想垂線と前記ニップロールと前記上方ガイドロールで搬送される処理フィルムの方向を表わす仮想搬送線により形成する角度が,0~90°未満になるように配置されており, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造装置。」に訂正し,新たな請求項12とする。 請求項8のうち,請求項5の記載~請求項7の記載を引用するもの(本件訂正後の請求項12の記載を引用する請求項14)についても,同様に訂正する。 キ 訂正事項15 特許請求の範囲の請求項8に,「前記処理槽が,当該処理槽において処理された処理フィルムを当該処理槽内からに搬出した後に搬送するための,前記処理液に接触しないように配置された,液切り手段と,前記ニップロールと,前記上方ガイドロールを,順に有することを特徴とする請求項5~7の何れかに記載の製造装置。」と記載されているのを,「樹脂フィルムに任意の処理を行うための処理液を満たす少なくとも1つの処理槽を備え, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記任意の処理が,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 前記処理槽が,当該処理槽において処理された処理フィルムを当該処理槽内からに搬出した後に搬送するための,前記処理液に接触しないように配置された,液切り手段と,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールと,当該ニップロールに続いて配置されたガイドロールを,順に有し,かつ,前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており, 前記ニップロールと前記上方ガイドロールは,前記ニップロールの第1ロールと第2ロールの各中心点を結ぶ仮想線に対する仮想垂線の方向を0°とし,当該仮想垂線と前記ニップロールと前記上方ガイドロールで搬送される処理フィルムの方向を表わす仮想搬送線により形成する角度が,0~90°未満になるように配置されており, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造装置。」に訂正し,新たな請求項13とする。 ク 訂正事項16 特許請求の範囲の請求項8に,「前記処理槽が,当該処理槽において処理された処理フィルムを当該処理槽内からに搬出した後に搬送するための,前記処理液に接触しないように配置された,液切り手段と,前記ニップロールと,前記上方ガイドロールを,順に有することを特徴とする請求項5~7の何れかに記載の製造装置。」と記載されているのを,「前記処理槽が,当該処理槽において処理された処理フィルムを当該処理槽内からに搬出した後に搬送するための,前記処理液に接触しないように配置された,液切り手段と,前記ニップロールと,前記上方ガイドロールを,順に有することを特徴とする請求項6または12記載の製造装置。」に訂正し,新たな請求項14とする。 (2) 訂正の適否 ア 訂正事項9について 訂正事項9による訂正は,本件特許の願書に添付した明細書の【0046】の記載に基づいて,請求項5に記載された「ポリビニルアルコール系フィルム」を,「原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルム」に限定する訂正である。 したがって,訂正事項9による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。また,この訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 請求項7のうち,請求項5の記載を引用し,請求項6の記載を引用しないもの(本件訂正後の請求項7)についても,同様のことがいえる。 イ 訂正事項10について 訂正事項10による訂正は,請求項5に記載された「少なくとも1つ」の選択肢となる処理槽を,「前記染色工程,前記架橋工程,および前記延伸工程における」ものに限定する訂正である。 したがって,訂正事項10による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。また,この訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 請求項7のうち,請求項5の記載を引用し,請求項6の記載を引用しないもの(本件訂正後の請求項7)についても,同様のことがいえる。 ウ 訂正事項11について 訂正事項11による訂正は,以下のとおり分けて考えることができる。 訂正事項11A:請求項6の記載を,他の請求項の記載を引用しないものに訂正する。 訂正事項11B:本件特許の願書に添付した明細書の【0046】の記載に基づいて,「ポリビニルアルコール系フィルム」を,「原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルム」に訂正する。 ここで,訂正事項11Aによる訂正は,特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる,請求項間の引用関係の解消を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項11Bによる訂正は,同ただし書1号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして,これら訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 請求項8のうち,請求項5の記載及び請求項6の記載を引用し,請求項7の記載を引用しないもの(本件訂正後の請求項6の記載を引用する請求項14)についても,同様のことがいえる。 エ 訂正事項12について 訂正事項12による訂正は,請求項7を,本件訂正後の請求項6の記載を引用しないものとする訂正である。そして,この訂正は,前記訂正事項11Aの訂正の目的(請求項間の引用関係の解消)を達するための訂正である。 したがって,訂正事項12による訂正は,特許法120条5第2項ただし書4号に掲げる,請求項間の引用関係の解消を目的とする訂正に該当する。また,この訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 オ 訂正事項13について 訂正事項13による訂正は,以下のとおり分けて考えることができる。 訂正事項13A:請求項8のうち,請求項5の記載を引用し,請求項6の記載及び請求項7の記載を引用しないものを,他の請求項の記載を引用しないものに訂正する。 訂正事項13B:本件特許の願書に添付した明細書の【0046】の記載に基づいて,「ポリビニルアルコール系フィルム」を,「原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルム」に訂正する。 ここで,訂正事項13Aによる訂正は,特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる,請求項間の引用関係の解消を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項13Bによる訂正は,同ただし書1号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして,これら訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 カ 訂正事項14について 訂正事項14による訂正は,以下のとおり分けて考えることができる。 訂正事項14A:請求項7のうち,請求項5の記載及び請求項6の記載を引用するものを,他の請求項の記載を引用しないものに訂正して,新たな請求項12とする。 訂正事項13B:本件特許の願書に添付した明細書の【0046】の記載に基づいて,「ポリビニルアルコール系フィルム」を,「原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルム」に訂正する。 ここで,訂正事項14Aによる訂正は,特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる,請求項間の引用関係の解消を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項14Bによる訂正は,同ただし書1号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして,これら訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 請求項8のうち,請求項5の記載~請求項7の記載を引用するもの(本件訂正後の請求項12の記載を引用する請求項14)についても,同様に訂正する。 キ 訂正事項15について 訂正事項15による訂正は,以下のとおり分けて考えることができる。 訂正事項15A:請求項8のうち,請求項5の記載及び請求項7の記載を引用し,請求項6の記載を引用しないものを,他の請求項の記載を引用しないものに訂正して,新たな請求項13とする。 訂正事項15B:本件特許の願書に添付した明細書の【0046】の記載に基づいて,「ポリビニルアルコール系フィルム」を,「原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルム」に訂正する。 ここで,訂正事項15Aによる訂正は,特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる,請求項間の引用関係の解消を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項15Bによる訂正は,同ただし書1号に掲げる,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして,これら訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 ク 訂正事項16について 訂正事項16による訂正は,以下のとおり分けて考えることができる。 訂正事項16A:請求項8を,本件訂正後の請求項5の記載を引用しないものに訂正する。 訂正事項16B:前記訂正事項14Aによる訂正と整合するように,引用する請求項の番号を7から12に訂正する。 ここで,訂正事項16Aによる訂正は,前記訂正事項11Aの訂正の目的(請求項間の引用関係の解消)を達するための訂正である。また,訂正事項16Bによる訂正も,前記訂正事項14Aによる訂正の目的(請求項間の引用関係の解消)を達するための訂正である。 したがって,訂正事項16A及び訂正事項16Bによる訂正は,いずれも,特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる,請求項間の引用関係の解消を目的とする訂正である。また,これら訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。 (3) 小括 請求項5~請求項8からなる一群の請求項に係る訂正は,特許法120条の5第2項ただし書に掲げる事項を目的とするものであり,また,同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定にも適合する。そして,本件訂正請求は,同法120条の5第4項の規定に適合する。 ここで,請求項5~請求項8からなる一群の請求項に係る訂正後の,請求項5~8及び請求項12~請求項14において,一群の請求項として一体的に取り扱われる請求項は,その引用関係からみて,〔請求項5及び請求項7〕,〔請求項6,請求項12及び請求項14〕,請求項8,並びに,請求項13である。 よって,訂正後の〔請求項5及び請求項7〕,〔請求項6,請求項12及び請求項14〕,請求項8,並びに,請求項13について,訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件特許発明 前記「第2」のとおり,本件訂正は全て認められることとなったので,本件特許の特許請求の範囲の請求項1~請求項14に係る発明(以下,それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明14」という。)は,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1-請求項14に記載された事項によって特定されるとおりの,以下のものである。 「【請求項1】 長尺状の樹脂フィルムを処理槽内の処理液に接触させて処理しながら搬送する処理工程を少なくとも有する,前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法において, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記処理工程は,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 前記染色工程,前記架橋工程,および前記延伸工程の少なくとも1つの処理工程は,当該処理工程により得られた前記処理フィルムを,前記処理槽内から搬出した後に,前記処理液外に配置された,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールおよび前記ニップロールに続いて配置されたガイドロールを介して搬送する工程を有し,かつ, 前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており,これらニップロールの周速差により,長尺状の樹脂フィルムを長手方向に延伸しながら搬送工程を行い, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造方法。 【請求項2】 長尺状の樹脂フィルムを処理槽内の処理液に接触させて処理しながら搬送する処理工程を少なくとも有する,前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法において, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記処理工程は,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 少なくとも1つの前記処理工程は,当該処理工程により得られた前記処理フィルムを,前記処理槽内から搬出した後に,前記処理液外に配置された,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールおよび前記ニップロールに続いて配置されたガイドロールを介して搬送する工程を有し,かつ, 前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記上方ガイドロールには,当該上方ガイドロールの表面への液供給手段が設けられており, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており,これらニップロールの周速差により,長尺状の樹脂フィルムを長手方向に延伸しながら搬送工程を行い, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造方法。 【請求項3】 前記ニップロールと前記上方ガイドロールは,前記ニップロールの第1ロールと第2ロールの各中心点を結ぶ仮想線に対する仮想垂線の方向を0°とし,当該仮想垂線と前記ニップロールと前記上方ガイドロールで搬送される処理フィルムの方向を表わす仮想搬送線により形成する角度が,0~90°未満になるように配置されていることを特徴とする請求項1記載の処理フィルムの製造方法。 【請求項4】 長尺状の樹脂フィルムを処理槽内の処理液に接触させて処理しながら搬送する処理工程を少なくとも有する,前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法において, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記処理工程は,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 少なくとも1つの前記処理工程が,当該処理工程により得られた前記処理フィルムを,前記処理槽内から搬出した後に,前記処理液外に配置された,液切り手段と,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールと,前記ニップロールに続いて配置されたガイドロールを,順に介して搬送する工程を有し,かつ, 前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており,これらニップロールの周速差により,長尺状の樹脂フィルムを長手方向に延伸しながら搬送工程を行い, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造方法。 【請求項5】 樹脂フィルムに任意の処理を行うための処理液を満たす少なくとも1つの処理槽を備え, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記任意の処理が,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 前記染色工程,前記架橋工程,および前記延伸工程における少なくとも1つの処理槽には,当該処理槽において処理された処理フィルムを当該処理槽内からに搬出した後に搬送するための,前記処理液に接触しないように配置された,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールおよび当該ニップロールに続いて配置されたガイドロールを有し,かつ,前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造装置。 【請求項6】 樹脂フィルムに任意の処理を行うための処理液を満たす少なくとも1つの処理槽を備え, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記任意の処理が,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 前記処理槽には,当該処理槽において処理された処理フィルムを当該処理槽内からに搬出した後に搬送するための,前記処理液に接触しないように配置された,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールおよび当該ニップロールに続いて配置されたガイドロールを有し,かつ,前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記上方ガイドロールには,当該上方ガイドロールの表面への液供給手段が設けられており, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造装置。 【請求項7】 前記ニップロールと前記上方ガイドロールは,前記ニップロールの第1ロールと第2ロールの各中心点を結ぶ仮想線に対する仮想垂線の方向を0°とし,当該仮想垂線と前記ニップロールと前記上方ガイドロールで搬送される処理フィルムの方向を表わす仮想搬送線により形成する角度が,0~90°未満になるように配置されていることを特徴とする請求項5記載の製造装置。 【請求項8】 樹脂フィルムに任意の処理を行うための処理液を満たす少なくとも1つの処理槽を備え, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記任意の処理が,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 前記処理槽が,当該処理槽において処理された処理フィルムを当該処理槽内からに搬出した後に搬送するための,前記処理液に接触しないように配置された,液切り手段と,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールと,当該ニップロールに続いて配置されたガイドロールを,順に有し,かつ,前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造装置。 【請求項9】 長尺状の樹脂フィルムを処理槽内の処理液に接触させて処理しながら搬送する処理工程を少なくとも有する,前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法において, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記処理工程は,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 少なくとも1つの前記処理工程は,当該処理工程により得られた前記処理フィルムを,前記処理槽内から搬出した後に,前記処理液外に配置された,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールおよび前記ニップロールに続いて配置されたガイドロールを介して搬送する工程を有し,かつ, 前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記上方ガイドロールには,当該上方ガイドロールの表面への液供給手段が設けられており, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており,これらニップロールの周速差により,長尺状の樹脂フィルムを長手方向に延伸しながら搬送工程を行い, 前記ニップロールと前記上方ガイドロールは,前記ニップロールの第1ロールと第2ロールの各中心点を結ぶ仮想線に対する仮想垂線の方向を0°とし,当該仮想垂線と前記ニップロールと前記上方ガイドロールで搬送される処理フィルムの方向を表わす仮想搬送線により形成する角度が,0~90°未満になるように配置されており, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造方法。 【請求項10】 長尺状の樹脂フィルムを処理槽内の処理液に接触させて処理しながら搬送する処理工程を少なくとも有する,前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法において, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記処理工程は,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 少なくとも1つの前記処理工程が,当該処理工程により得られた前記処理フィルムを,前記処理槽内から搬出した後に,前記処理液外に配置された,液切り手段と,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールと,前記ニップロールに続いて配置されたガイドロールを,順に介して搬送する工程を有し,かつ, 前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており,これらニップロールの周速差により,長尺状の樹脂フィルムを長手方向に延伸しながら搬送工程を行い, 前記ニップロールと前記上方ガイドロールは,前記ニップロールの第1ロールと第2ロールの各中心点を結ぶ仮想線に対する仮想垂線の方向を0°とし,当該仮想垂線と前記ニップロールと前記上方ガイドロールで搬送される処理フィルムの方向を表わす仮想搬送線により形成する角度が,0~90°未満になるように配置されており, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造方法。 【請求項11】 前記少なくとも1つの前記処理工程が,当該処理工程により得られた前記処理フィルムを,前記処理槽内から搬出した後に,前記処理液外に配置された,液切り手段と,前記ニップロールと,前記上方ガイドロールを,順に介して搬送する工程を有することを特徴とする請求項2または9記載の処理フィルムの製造方法。 【請求項12】 樹脂フィルムに任意の処理を行うための処理液を満たす少なくとも1つの処理槽を備え, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記任意の処理が,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 前記処理槽には,当該処理槽において処理された処理フィルムを当該処理槽内からに搬出した後に搬送するための,前記処理液に接触しないように配置された,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールおよび当該ニップロールに続いて配置されたガイドロールを有し,かつ,前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記上方ガイドロールには,当該上方ガイドロールの表面への液供給手段が設けられており, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており, 前記ニップロールと前記上方ガイドロールは,前記ニップロールの第1ロールと第2ロールの各中心点を結ぶ仮想線に対する仮想垂線の方向を0°とし,当該仮想垂線と前記ニップロールと前記上方ガイドロールで搬送される処理フィルムの方向を表わす仮想搬送線により形成する角度が,0~90°未満になるように配置されており, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造装置。 【請求項13】 樹脂フィルムに任意の処理を行うための処理液を満たす少なくとも1つの処理槽を備え, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記任意の処理が,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み,かつ 前記処理槽が,当該処理槽において処理された処理フィルムを当該処理槽内からに搬出した後に搬送するための,前記処理液に接触しないように配置された,液切り手段と,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールと,当該ニップロールに続いて配置されたガイドロールを,順に有し,かつ,前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり, かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており, 前記ニップロールと前記上方ガイドロールは,前記ニップロールの第1ロールと第2ロールの各中心点を結ぶ仮想線に対する仮想垂線の方向を0°とし,当該仮想垂線と前記ニップロールと前記上方ガイドロールで搬送される処理フィルムの方向を表わす仮想搬送線により形成する角度が,0~90°未満になるように配置されており, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造装置。 【請求項14】 前記処理槽が,当該処理槽において処理された処理フィルムを当該処理槽内からに搬出した後に搬送するための,前記処理液に接触しないように配置された,液切り手段と,前記ニップロールと,前記上方ガイドロールを,順に有することを特徴とする請求項6または12記載の製造装置。」 2 取消の理由の概要 本件訂正前の請求項1,請求項3,請求項5及び請求項7に対して,平成29年12月7日付けで特許権者に通知した取消の理由は,上記請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物である甲6及び甲7に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,上記請求項に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものである,というものである。 甲6:特開2007-226035号公報 甲7:特開2007-105662号公報 3 引用例の記載及び引用発明 (1) 甲6の記載 本件特許の出願前に頒布された刊行物である前記甲6には,以下の記載がある。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリビニルアルコール系フィルムに,染色工程,延伸工程および架橋工程を少なくとも施す偏光子の製造方法において, ポリビニルアルコール系フィルムは,原反幅が2300mm以上であり, 染色工程の前に,洗浄工程(1)を有し, 当該洗浄工程(1)では,第1ピンチロールから搬送されるフィルムは,少なくとも第1および第2ガイドロールを通過させて,洗浄浴に浸漬するとともに,第2ピンチロールに導いて,第1ピンチロールと第2ピンチロールの周速差を利用して,延伸倍率が1.2~2.9倍の範囲で延伸しながら洗浄を行い, かつ,第1ガイドロールと第2ガイドロールは,いずれも洗浄浴中に設置され,かつ第1ガイドロールと第2ガイドロールとの間のフィルムのパスライン長(a)は50cm以上に調整されており,かつ, 少なくとも第2ガイドロールは,面長2300mm以上のエキスパンダーロールを用いることを特徴とする偏光子の製造方法。 …(省略)… 【請求項7】 洗浄工程(1)は,膨潤工程を兼ねていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の偏光子の製造方法。 【請求項8】 染色工程の後に,洗浄工程(2)を有し, 当該洗浄工程(2)では,第1ピンチロールから搬送されるフィルムは,少なくとも第1および第2ガイドロールを通過させて,洗浄浴に浸漬するとともに,第2ピンチロールに導いて,第1ピンチロールと第2ピンチロールの周速差を利用して,延伸倍率が0.995~1.2倍の範囲で延伸しながら洗浄を行い, かつ,第1ガイドロールと第2ガイドロールは,いずれも洗浄浴中に設置され,かつ第1ガイドロールと第2ガイドロールとの間のフィルムのパスライン長(a)は50cm以上に調整されており,かつ, 少なくとも第2ガイドロールは,面長1500mm以上のエキスパンダーロールを用いることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の偏光子の製造方法。 …(省略)… 【請求項14】 洗浄工程(2)に用いる洗浄浴は,ヨウ化化合物を含有する水溶液であることを特徴とする請求項8~13のいずれかに記載の偏光子の製造方法。 …(省略)… 【請求項19】 染色工程,延伸工程および架橋工程を少なくとも施す偏光子の製造方法における,染色工程の前に設けられる洗浄工程(1)用の洗浄槽を有する洗浄装置であって, 洗浄槽の両側に第1ピンチロールと第2ピンチロールを有し,第1ピンチロールと第2ピンチロールはそれぞれ対向するガイドロールを有し, 第1ピンチロールと第2ピンチロールの間には,第1ガイドロールと第2ガイドロールが洗浄浴中に位置し,かつ,第1ガイドロールと第2ガイドロールは,それらの間を通過させるフィルムのパスライン長(a)が50cm以上になるように設置されており,かつ, 少なくとも第2ガイドロールは,面長2300mm以上のエキスパンダーロールであることを特徴とする洗浄装置。 …(省略)… 【請求項23】 請求項19~22の洗浄工程(1)用の洗浄槽を有する洗浄装置とともに,染色工程の後に設けられる洗浄工程(2)用の洗浄槽を有する洗浄装置を有する洗浄システムであって, 洗浄工程(2)用の洗浄槽を有する洗浄装置は, 洗浄槽の両側に第1ピンチロールと第2ピンチロールを有し,第1ピンチロールと第2ピンチロールはそれぞれ対向するガイドロールを有し,かつ, 第1ピンチロールと第2ピンチロールの間に,第1ガイドロールと第2ガイドロールが洗浄浴中に位置し,かつ,第1ガイドロールと第2ガイドロールは,それらの間を通過させるフィルムのパスライン長(a)が50cm以上になるように設置されており, かつ,少なくとも第2ガイドロールは,面長1500mm以上のエキスパンダーロールであることを特徴とする洗浄装置システム。」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は,偏光子の製造方法および当該製造方法により得られた偏光子に関する。また本発明は当該偏光子を用いた偏光板,光学フィルム,さらには当該偏光板,光学フィルムを用いた液晶表示装置,有機EL表示装置,PDP等の画像表示装置に関する。さらには,偏光子の製造方法における洗浄工程に用いられる洗浄槽を有する洗浄装置,さらには,洗浄装置を組み合わせた洗浄システムに関する。 【背景技術】 【0002】 液晶表示装置(LCD)は,パソコン,TV,モニター,携帯電話,PDA等に使用されている。従来,液晶表示装置等に用いる偏光子としては高透過率と高偏光度を兼ね備えていることから,染色処理されたポリビニルアルコール系フィルムが用いられている。当該偏光子は,ポリビニルアルコール系フィルムを,浴中にて,膨潤,染色,架橋,延伸することにより製造される。 …(省略)… 【0004】 偏光子を,ポリビニルアルコール系フィルムを湿式延伸して製造する場合には,偏光子の製造工程は,ポリビニルアルコール系フィルムの膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程に大きく分けられる。実際には,延伸工程に関しては,膨潤工程,染色工程,架橋工程のどの工程においても同時に延伸していることが多く,延伸工程と他の各工程とを区分することができない場合が多い。また,膨潤工程,染色工程,架橋工程の前後には,それぞれ洗浄浴を設けて洗浄工程を施す場合がある。さらに,架橋工程後には,品質を安定させる為に,ヨウ化化合物水溶液による洗浄工程を設けることがある。 【0005】 しかしながら,偏光子の製造装置が大型化すると,各種問題が発生する。例えば,偏光子の製造にあたり,ポリビニルアルコール系フィルムを湿式延伸工程において,ポリビニルアルコール系フィルムを延伸浴中で搬送または延伸する際に,ポリビニルアルコール系フィルムが流れ方向に折れ重なり(フィルム折れ)が発生する。 …(省略)… 【0006】 ポリビニルアルコール系フィルムのフィルム折れは,フィルム幅が1m程度のものではあまり発生しないが,フィルム幅が広くなるほど発生しやすくなる。特にフィルム幅が2.5mを超えると発生しやすくなり,3m幅を超えるとその発生頻度は高くなり,製品歩留まりを落とす原因となる。また,延伸浴の長さが長くなるほど,フィルムの折れの発生頻度は高くなる。 …(省略)… 【発明が解決しようとする課題】 【0011】 本発明は,フィルム折れの問題を生じることなく,ポリビニルアルコール系フィルムから,光学特性の良好な偏光子を製造する方法を提供することを目的とする。 …(省略)… 【0013】 さらに本発明は,前記偏光子の製造方法に用いる洗浄装置または洗浄装置システムを提供することを目的とする。」 ウ 「【課題を解決するための手段】 【0014】 本発明者らは,前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果,以下に示す偏光子の製造方法等により前記目的を達成できることを見出し,本発明を完成するに至った。 【0015】 すなわち本発明は,ポリビニルアルコール系フィルムに,染色工程,延伸工程および架橋工程を少なくとも施す偏光子の製造方法において, ポリビニルアルコール系フィルムは,原反幅が2300mm以上であり, 染色工程の前に,洗浄工程(1)を有し, 当該洗浄工程(1)では,第1ピンチロールから搬送されるフィルムは,少なくとも第1および第2ガイドロールを通過させて,洗浄浴に浸漬するとともに,第2ピンチロールに導いて,第1ピンチロールと第2ピンチロールの周速差を利用して,延伸倍率が1.2~2.9倍の範囲で延伸しながら洗浄を行い, かつ,第1ガイドロールと第2ガイドロールは,いずれも洗浄浴中に設置され,かつ第1ガイドロールと第2ガイドロールとの間のフィルムのパスライン長(a)は50cm以上に調整されており,かつ, 少なくとも第2ガイドロールは,面長2300mm以上のエキスパンダーロールを用いることを特徴とする偏光子の製造方法,に関する。 …(省略)… 【発明の効果】 【0041】 本発明の偏光子の製造方法では,染色工程前の洗浄工程(膨潤工程前)または膨潤工程において,広幅のポリビニルアルコール系フィルムに,フィルム折れ発生しやすいことから,これらの洗浄工程における各条件を制御することで,前記問題の発生を抑えて,光学特性の良好な偏光子を製造している。 【0042】 染色工程前の洗浄工程では,延伸倍率が1.2~2.9倍の小さい範囲になるように制御することで,得られる光学特性が損なわれないようにしている。一方,延伸倍率が小さいと,ポリビニルアルコール系フィルムは,水に膨潤して幅が大きくなって,ガイドロールによりフィルム折れが発生しやすいが,本発明では,当該洗浄工程において用いられる,第1ピンチロールと第2ピンチロールの間に設置される,第1ガイドロールと第2ガイドロールの間隔に関して,搬送されるフィルムが,洗浄浴と接触する長さ(パスライン長)を50cm以上に設定するとともに,第2ガイドロールとして,エキスパンダーロールを用いることで,これらの問題を抑えている。 【0043】 また,前記染色工程の前の洗浄工程または膨潤工程以外でも,染色工程や架橋工程の後の水による洗浄工程や,ヨウ化化合物による洗浄工程においても,フィルム折れが生じるおそれがある。 【0044】 本発明では,染色工程後の洗浄工程では,延伸倍率が0.995~1.2倍の小さい範囲になるように制御することで,得られる光学特性が損なわれないようにしている。一方,延伸倍率が小さいと,フィルム折れや折れ重なりが発生しやすいが,本発明では,当該洗浄工程において用いられる,第1ピンチロールと第2ピンチロール間に設置される,第1ガイドロールと第2ガイドロールの間隔に関して,搬送されるフィルムが,洗浄浴と接触する長さ(パスライン長)を50cm以上に設定するとともに,第2ガイドロールとして,エキスパンダーロールを用いることで,これらの問題を抑えている。 【0045】 前記染色工程前の洗浄工程と,染色工程後の洗浄工程は,これらを組み合わせることで,より効果的に,フィルム折れや折れ重なりによる問題を生じることなく,ポリビニルアルコール系フィルムから,光学特性の良好な偏光子を製造することができる。」 エ 「【発明を実施するための最良の形態】 【0046】 本発明の偏光子に適用されるポリビニルアルコール系フィルムの材料には,ポリビニルアルコールまたはその誘導体が用いられる。 …(省略)… 【0048】 ポリビニルアルコール系フィルムは,原反幅が2300mm以上である。原反幅は広くなるほど,フィルム折れや折れ重なりが生じやすくなるが,本発明では,原反幅が2500mm以上,さらには2700mm以上,さらには2900mm以上,さらには3000以上の場合にも,フィルム折れや折れ重なりを抑えることができる。 …(省略)… 【0049】 本発明の偏光子の製造方法は,前記ポリビニルアルコール系フィルムに,染色工程,延伸工程および架橋工程を少なくとも有する。また,本発明の偏光子の製造方法では,染色工程の前に,洗浄工程(1)を有し,または染色工程,架橋工程の後には,洗浄工程(2)を有する。本発明では,洗浄工程(1)および洗浄工程(2)を有することが好ましい。 【0050】 染色工程は,上記未延伸フィルムまたは延伸フィルムにヨウ素または二色性染料を吸着・配向させることにより行う。 …(省略)… 【0051】 延伸工程は,通常,一軸延伸を施すことにより行う。 …(省略)… 【0053】 架橋工程は,通常,ホウ素化合物により行う。架橋工程の順序は特に制限されない。 …(省略)… 【0055】 また,本発明の偏光子の製造方法では,染色工程の前に,洗浄工程(1)を有する。洗浄工程(1)は,ポリビニルアルコール系フィルムの膨潤工程として施すことができる。また洗浄工程(1)は,膨潤工程の前に施される洗浄工程として施される。洗浄工程(1)は,ポリビニルアルコール系フィルムを,水を主成分とする水溶液に浸漬することにより行うが,ポリビニルアルコール系フィルムは親水性高分子フィルムであるため水溶液中に浸漬させることで自然に膨潤させることができることから,洗浄工程(1)は,実施的な膨潤工程を兼ねた工程としてとして施すことができる。 【0056】 また,本発明の偏光子の製造方法では,染色工程の後に,洗浄工程(2)を有する。 …(省略)… 【0057】 以下,本発明の偏光子の製造方法における洗浄工程(1)および洗浄工程(2)ならびにそれらに用いる装置を,図面を参酌しながら説明する。 【0058】 洗浄工程(1)は,例えば,図1乃至図5に示す洗浄装置により行われる。図1乃至図5では,搬送されるフィルムf(ポリビニルアルコール系フィルム)は,第1ピンチロール21,次いで,第1ガイドロール11および第2ガイドロール21を通過させて,洗浄浴Bに浸漬するとともに,第2ピンチロール22に導かれる。また,フィルムfは,第1ピンチロール21と第2ピンチロール22の周速差を利用して,延伸しながら洗浄される。第1ピンチロール21にはガイドロール31が,第2ピンチロール22にはガイドロール32が,対向して設けられている。洗浄浴Bは,洗浄層A内に含有される。」 (当合議体注:図1は以下の図である。なお,「第2ガイドロール21」は「第2ガイドロール12」,「洗浄層A」は「洗浄槽A」の誤記である。) オ 「【0059】 洗浄工程(1)では,洗浄浴Bは,通常,水,蒸留水,純水が用いられる。 …(省略)… 【0061】 洗浄工程(1)では,延伸倍率1.2~2.9倍の範囲で前記延伸が行われる。前記延伸倍率は,光学特性を満足させるとともに,フィルム折れを制御するため,1.3~2.6倍,さらには1.5~2.6倍,さらには2.0~2.4倍にするのが好ましい。 【0062】 また,洗浄工程(1)では,少なくとも第2ガイドロール11は,エキスパンダーロールを用いる。エキスパンダーロールの面長は,ポリビニルアルコール系フィルムの原反幅以上となるように,2300mm以上のものが用いられる。 …(省略)… 【0065】 図1では,第1ガイドロール11と第2ガイドロール12は,いずれも洗浄浴B中に設置され,かつ第1ガイドロール11と第2ガイドロール12との間のフィルムのパスライン長(a)は50cm以上に調整されている。 …(省略)… 【0073】 洗浄工程(2)においても,洗浄工程(1)と同様の図1乃至図5に示す洗浄装置により行われる。 …(省略)… 【0076】 なお,染色工程,架橋工程,延伸工程の各工程の全て施した後に,洗浄工程(2)が施された場合には,乾燥工程が,通常,施される。 …(省略)… 【0087】 得られた偏光子は,常法に従って,その少なくとも片面に透明保護層を設けた偏光板とすることができる。」 カ 「【実施例】 【0115】 以下に本発明を実施例および比較例をあげて具体的に説明する。 …(省略)… 【0120】 実施例1 (洗浄工程(1):膨潤工程) 上記ポリビニルアルコール系フィルムを,図1に示す洗浄装置(洗浄槽中には,上記第1浴が仕込まれている)に搬送した。…(省略)…搬送されたポリビニルアルコールフィルムは,第1浴に浸漬し,膨潤させながら,延伸倍率2倍で,一軸延伸した。なお,第2ガイドロールまでの浸漬時間は16秒間であった。 【0121】 (染色工程) 次いで,ポリビニルアルコールフィルムを搬送し,第2浴(染色浴)に,53秒間浸漬して,染色しながら,延伸倍率1.4倍(総延伸倍率2.8倍)で,一軸延伸した。 【0122】 (架橋工程) 次いで,ポリビニルアルコールフィルムを搬送し,第3浴(架橋浴)に,28秒間浸漬して,架橋しながら,延伸倍率1.4倍(総延伸倍率3.92倍)で,一軸延伸した。さらに,第4浴(架橋浴)に,66秒間浸漬して,架橋しながら,延伸倍率1.54倍(総延伸倍率6.03倍)で,一軸延伸した。 【0123】 (洗浄工程(2)) 次いで,ポリビニルアルコール系フィルムを,図2に示す洗浄装置(洗浄槽中には,上記第5浴が仕込まれている)に搬送した。…(省略)…搬送されたポリビニルアルコールフィルムは,第5浴に15秒間浸漬し,膨潤させながら,延伸倍率0.995倍(総延伸倍率6倍)で,一軸延伸した。 …(省略)… 【0170】 実施例19 実施例1において,洗浄工程(1)および洗浄工程(2)を下記に示すように変更したこと,架橋工程での延伸倍率を変更したこと以外は,実施例1と同条件で偏光子を作製し,また偏光板を作製した。 【0171】 (洗浄工程(1):膨潤工程) 上記ポリビニルアルコール系フィルムを,図1に示す洗浄装置(洗浄槽中には,上記第1浴が仕込まれている)に搬送した。当該洗浄装置において,第2ガイドロールとしてエキスパンダーロールを用いた。他のガイドロールはいずれもフラットロールである。パスライン長(a)は100cmとした。搬送されたポリビニルアルコールフィルムは,第1浴に浸漬し,膨潤させながら,延伸倍率2倍で,一軸延伸した。なお,第2ガイドロールまでの浸漬時間は30秒間であった。 【0172】 (洗浄工程(2)) ポリビニルアルコール系フィルムを,図2に示す洗浄装置(洗浄槽中には,上記第5浴が仕込まれている)に搬送した。当該洗浄装置において,ガイドロールはいずれもフラットロールである。パスライン長(b)は100cmとした。第1ガイドロールの最下面と,第5浴(洗浄浴)の液面の高さの距離(c)は5cmとした。搬送されたポリビニルアルコールフィルムは,第5浴に12秒間浸漬し,膨潤させながら,延伸倍率1.2倍(総延伸倍率6倍)で,一軸延伸した。 【0173】 なお,架橋工程における第4浴(架橋浴)での延伸倍率は1.28倍(総延伸倍率5.02倍)とした。」 (当合議体注:図2は以下の図である。) (2) 甲6発明 ア 甲6方法発明 甲6には,【発明を実施するための最良の形態】として,【0058】及び図1に記載の洗浄装置が開示されているところ,この洗浄装置は,【0073】の記載に照らせば,特許請求の範囲の請求項8に係る発明(請求項1及び請求項7に記載された発明特定事項を具備するもの)の洗浄工程(1)及び洗浄工程(2)において用いられる装置といえる(当合議体注:【0172】の記載とは対応しない発明が認定されている点に留意されたい。)。また,図1からは,ポリビニルアルコール系フィルムの搬送方向を基準にしたとき,第2ピンチロール22はガイドロール32よりも上流側にあること,及び第2ピンチロール22及びガイドロール32は洗浄浴B外に配置されていることが看取される。 そうしてみると,甲1には,次の発明が記載されている(用語を統一するとともに符号を付してして記載する。以下「甲6方法発明」という。)。 「 ポリビニルアルコール系フィルムfに,染色工程,延伸工程および架橋工程を少なくとも施す偏光子の製造方法において, ポリビニルアルコール系フィルムfは,原反幅が2300mm以上であり, 染色工程の前に,洗浄工程(1)を有し, 当該洗浄工程(1)では,第1ピンチロール21から搬送されるポリビニルアルコール系フィルムfを,少なくとも第1ガイドロール11および第2ガイドロール12を通過させて,洗浄浴Bに浸漬するとともに,第2ピンチロール22に導いて,第1ピンチロール21と第2ピンチロール22の周速差を利用して,延伸倍率が1.2~2.9倍の範囲で延伸しながら洗浄を行い, かつ,第1ガイドロール11と第2ガイドロール12は,いずれも洗浄浴B中に設置され,かつ第1ガイドロール11と第2ガイドロール12との間のポリビニルアルコール系フィルムfのパスライン長(a)は50cm以上に調整されており,かつ, 少なくとも第2ガイドロール12は,面長2300mm以上のエキスパンダーロールを用い, 洗浄工程(1)は,膨潤工程を兼ねており, 染色工程の後に,洗浄工程(2)を有し, 当該洗浄工程(2)では,第1ピンチロール21から搬送されるポリビニルアルコール系フィルムfを,少なくとも第1ガイドロール11および第2ガイドロール12を通過させて,洗浄浴Bに浸漬するとともに,第2ピンチロール22に導いて,第1ピンチロール21と第2ピンチロール22の周速差を利用して,延伸倍率が0.995~1.2倍の範囲で延伸しながら洗浄を行い, かつ,第1ガイドロール11と第2ガイドロール12は,いずれも洗浄浴B中に設置され,かつ第1ガイドロール11と第2ガイドロール12との間のポリビニルアルコール系フィルムfのパスライン長(a)は50cm以上に調整されており,かつ, 少なくとも第2ガイドロール12は,面長1500mm以上のエキスパンダーロールを用い, 洗浄工程(1)及び洗浄工程(2)は洗浄装置により行われ, 搬送されるポリビニルアルコール系フィルムfは,第1ピンチロール21,次いで,第1ガイドロール11および第2ガイドロール12を通過させられて,洗浄浴Bに浸漬するとともに,第2ピンチロール22に導かれ, また,ポリビニルアルコール系フィルムfは,第1ピンチロール21と第2ピンチロール22の周速差を利用して,延伸しながら洗浄され, 第1ピンチロール21にはガイドロール31が,第2ピンチロール22にはガイドロール32が,対向して設けられ,ポリビニルアルコール系フィルムfの搬送方向を基準にしたとき,第2ピンチロール22はガイドロール32よりも上流側にあり, 洗浄浴Bは,洗浄槽A内に含有され,第2ピンチロール22及びガイドロール32は洗浄浴B外に配置されている, 偏光子の製造方法。」 イ 甲6装置発明 甲6には,同様に,以下の発明も記載されている(以下「甲6装置発明」という。)。 「 染色工程,延伸工程および架橋工程を少なくとも施す偏光子の製造方法における,染色工程の前に設けられる洗浄工程(1)用の洗浄槽Aを有する洗浄装置であって, 洗浄槽Aの両側に第1ピンチロール21と第2ピンチロール22を有し,第1ピンチロール21と第2ピンチロール22はそれぞれ対向するガイドロール31及びガイドロール32を有し, 第1ピンチロール21と第2ピンチロール22の間には,第1ガイドロール11と第2ガイドロール12が洗浄浴B中に位置し,かつ,第1ガイドロール11と第2ガイドロール12は,それらの間を通過させるポリビニルアルコール系フィルムfのパスライン長(a)が50cm以上になるように設置されており,かつ, 少なくとも第2ガイドロール12は,面長2300mm以上のエキスパンダーロールであり, 上記洗浄工程(1)用の洗浄槽Aを有する洗浄装置とともに,染色工程の後に設けられる洗浄工程(2)用の洗浄槽Aを有する洗浄装置を有する洗浄システムであって, 洗浄工程(2)用の洗浄槽Aを有する洗浄装置は, 洗浄槽Aの両側に第1ピンチロール21と第2ピンチロール22を有し,第1ピンチロール21と第2ピンチロール22はそれぞれ対向するガイドロール31及びガイドロール32を有し,かつ, 第1ピンチロール21と第2ピンチロール22の間に,第1ガイドロール11と第2ガイドロール12が洗浄浴B中に位置し,かつ,第1ガイドロール11と第2ガイドロール12は,それらの間を通過させるポリビニルアルコール系フィルムfのパスライン長(a)が50cm以上になるように設置されており, かつ,少なくとも第2ガイドロール12は,面長1500mm以上のエキスパンダーロールであり, 洗浄工程(1)及び洗浄工程(2)において, 搬送されるポリビニルアルコール系フィルムfは,第1ピンチロール21,次いで,第1ガイドロール11および第2ガイドロール12を通過させられて,洗浄浴Bに浸漬するとともに,第2ピンチロール22に導かれ, また,ポリビニルアルコール系フィルムfは,第1ピンチロール21と第2ピンチロール22の周速差を利用して,延伸しながら洗浄され, 第1ピンチロール21にはガイドロール31が,第2ピンチロール22にはガイドロール32が,対向して設けられ,ポリビニルアルコール系フィルムfの搬送方向を基準にしたとき,第2ピンチロール22はガイドロール32よりも上流側にあり, 洗浄浴Bは,洗浄槽A内に含有され,第2ピンチロール22及びガイドロール32は洗浄浴B外に配置されている, 洗浄装置システム。」 (3) 甲7の記載 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲7には,以下の記載がある。 ア 「【請求項1】 プラスチックフィルムを巻回したロールよりプラスチックフィルムを巻出す工程と,プラスチックフィルムに洗浄水として純水を供給して複数段での洗浄を行う洗浄工程と,プラスチックフィルム上の水分を除去する水切り工程と,プラスチックフィルムの乾燥を行う乾燥工程と,乾燥を終えたプラスチックフィルムをロール状に巻き取る工程とを順に設けることを特徴とする光学用プラスチックフィルムの洗浄方法。 【請求項2】 前記洗浄工程は,前記プラスチックフィルムを純水の浴槽中に浸漬し洗浄する第1の洗浄工程と,該第1の洗浄工程を終えた前記プラスチックフィルムを純水を用いてスプレー洗浄する第2の洗浄工程とからなることを特徴とする請求項1記載の光学用プラスチックフィルムの洗浄方法。 【請求項3】 前記水きり工程は,ニップロール及び/又はエアーナイフを使用することを特徴とする請求項1又は2記載の光学用プラスチックフィルムの洗浄方法。 【請求項4】 前記水切り工程は,ニップロール,エアーナイフをこの順に設けることを特徴とする請求項3記載の光学用プラスチックフィルムの洗浄方法。 …(省略)… 【請求項7】 請求項1乃至6の何れか一に記載の光学用プラスチックフィルムの洗浄方法によりプラスチックフィルムの洗浄を行う工程を有することを特徴とする光学用プラスチックフィルムの製造方法。 【請求項8】 プラスチックフィルムを巻回したロールよりプラスチックフィルムを巻き出す巻出し部と,プラスチックフィルムに洗浄水として純水を供給して複数段での洗浄を行う洗浄部と,ニップロール及び/又はエアーナイフによるプラスチックフィルム上の水分を除去する水切り部と,プラスチックフィルムの乾燥を行う乾燥部と,乾燥を終えたプラスチックフィルムをロール状に巻き取る巻取り部とを順に設けることを特徴とする光学用プラスチックフィルムの洗浄装置。 【請求項9】 前記洗浄部は,前記プラスチックフィルムを純水の浴槽中に浸漬し洗浄する第1の洗浄部と,該第1の洗浄部による洗浄を終えた前記プラスチックフィルムを純水を用いてスプレー洗浄する第2の洗浄部とからなることを特徴とする請求項8記載の光学用プラスチックフィルムの洗浄装置。」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は,光学用プラスチックフィルムの表面に付着した,埃,フィルム片を連続的に洗浄する洗浄方法,洗浄装置等に関するものであり,特に高い均一性を求められる電子ディスプレイ分野,エレクトロニクス分野での部材やプロセス材に関連するプラスチックフィルムの洗浄に適する。 【背景技術】 【0002】 電子ディスプレイ分野,エレクトロニクス分野に使用されるプラスチックフィルムは,製膜,塗工,貼合などの工程を経て部材,プロセス材として使用される。その製造工程は,終始クリーン環境下での取り扱いが必須であり,埃,繊維,フィルム粕などの異物の製品への混入や付着などの欠陥,及びそれらに起因するキズ,押し跡などの物理的欠陥の発生は厳重に管理されている。これらの欠陥の発生頻度に対する市場の要求基準は急速に厳しくなってきている。また,欠陥の程度についても,従来問題とされなかった非常に微細な欠陥が許容されなくきており,改善を求められている。 …(省略)… 【0003】 近年,プラスチックフィルムを洗浄することにより,塵芥を除去する取組みが行われている。 …(省略)… 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は,上記従来の問題を解決するべくなされたもので,その目的は,液晶ディスプレイ,プラズマディスプレイ,リアプロジェクションディスプレイ,有機ELディスプレイ,SED,CRT等に代表される各種電子ディスプレイ分野における部材,プロセス材として使用される機能性光学用プラスチックフィルムに混入している,埃,繊維,フィルム粕といった塵芥を除去でき,欠陥の少ない光学用プラスチックフィルムの洗浄方法,その製造方法,及びその洗浄装置,並びに該洗浄装置を設けた塗工装置を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者らは,前記課題を達成するため鋭意検討した結果,プラスチックフィルムを巻回したロールよりプラスチックフィルムを巻出す工程と,プラスチックフィルムに洗浄水として純水を供給して複数段での洗浄を行う洗浄工程と,プラスチックフィルム上の水分を除去する水切り工程と,プラスチックフィルムの乾燥を行う乾燥工程と,乾燥を終えたプラスチックフィルムをロール状に巻き取る工程とを順に設けることを特徴とする光学用プラスチックフィルムの洗浄方法によれば,プラスチックフィルムに混入した埃,繊維,フィルム片といった塵芥を除去したクリーンで,フィルムの特性,均一性の変化がない光学用プラスチックフィルムが得られることを見い出した。 【0008】 またここで,前記洗浄工程は,前記プラスチックフィルムを純水の浴槽中に浸漬し洗浄する第1の洗浄工程と,該第1の洗浄工程を終えた前記プラスチックフィルムを純水を用いてスプレー洗浄する第2の洗浄工程とからなることが好ましい。 また,前記水きり工程は,ニップロール及び/又はエアーナイフを使用することが好ましい。前記水切り工程は,ニップロール,エアーナイフをこの順に設けることがさらに好ましい。 …(省略)… 【0012】 …(省略)… また,水切り工程(水切り部)がニップロール,エアーナイフの順に設けることにより,ニップロールにてプラスチックフィルムに付着した水滴の大半を取り除き,エアーナイフで付着した水滴を完全に取り除くことが出来る。 …(省略)… 【発明の効果】 【0013】 本発明によれば,各種表示体に使用される機能性光学用プラスチックフィルムに混入,または付着している,埃,繊維,フィルム片といった塵芥を効果的に除去でき,欠陥の少ない光学用プラスチックフィルムの洗浄方法,その製造方法,及びその洗浄装置,並びに該洗浄装置を設けた塗工装置を提供することができる。」 ウ 「【発明を実施するための最良の形態】 【0014】 以下,本発明の実施の形態を図面を用いながら詳細に説明する。 図1は,本発明の光学用プラスチックフィルムの洗浄方法を実施する洗浄装置と,該洗浄装置を塗工部の前に設置した塗工装置の全体構成を示す概略側面図である。 図1の概略側面図に示すように,プラスチックフィルムロールの巻出し部5,プラスチックフィルムを純水の浴槽中に浸漬し洗浄する第1の洗浄部10A(前段の洗浄部),プラスチックフィルムを純水を用いスプレー洗浄する第2の洗浄部10B(後段の洗浄部),ニップロール3及びエアーナイフ4による水切り部,乾燥部50,塗工部60,乾燥部(塗工後の乾燥部)70,巻取り部8を順に設けている。 プラスチックフィルムロールの巻出し部5より順次巻き出されたシート状のプラスチックフィルム1は,搬送ロール6,7で次の洗浄部へ搬送される。」 (当合議体注:図1は以下の図である。) エ 「【0015】 本発明における洗浄対象となる塵芥とは,光学用プラスチックフィルム表面に付着混入した,1μm以上の繊維や砂に代表される環境異物,フィルム片などを指す。 本発明における第1番目の洗浄部10Aは,プラスチックフィルム1を純水12の浴槽11中に浸漬し,洗浄を行う。 …(省略)… 【0016】 上記第1の洗浄を終えたプラスチックフィルム1は上方向へ搬送されながら,ここで第2の洗浄部10Bを通過する。本発明における第2番目の洗浄部10Bは,スプレーによる洗浄を行う。 …(省略)… 【0018】 上記第2の洗浄を終えたプラスチックフィルム1は引続いて上方向へ搬送されながら,ニップロール3及びエアーナイフ4による水切り部を通過する。本発明におけるニップロール3による水切り部は,発砲スポンジロール,樹脂ロール,鏡面金属ロールを用いることが出来るが,水切り効果,プラスチックフィルムのグリップ性の観点から,樹脂ロールを用いることが好ましい。 …(省略)… 【0019】 こうして,水切りを終えたプラスチックフィルム1は,乾燥部50に入る。…(省略)…本実施の形態では,搬送ロール51,52で乾燥部50内を搬送され,乾燥を終えたプラスチックフィルム1は,さらに搬送ロール53で次の塗工部60に搬送される。 …(省略)… 【0021】 本発明に用いられるプラスチックフィルムは,透明なシートまたはフィルム状のものであれば特に限定されるものではなく,例えば,…(省略)…ポリビニルアルコールフィルム…(省略)…を挙げることができる。」 (4) 甲7発明 甲7の【0014】-【0019】には,「光学用プラスチックフィルムの表面に付着した,埃,フィルム片を連続的に洗浄する洗浄方法…に関するものであり,特に高い均一性を求められる電子ディスプレイ分野,エレクトロニクス分野での部材やプロセス材に関連するプラスチックフィルムの洗浄に適する」(【0001】)洗浄装置を塗工部の前に設置した塗工装置が記載されている。また,甲7の【図1】からは,「ニップロール3の上方にエアーナイフ4が配置され,乾燥部50の搬送ロール51の頂部は,ニップロール3の頂部よりも上方に配置されている」様子が看取される。 そうしてみると,甲7には,次の発明が記載されている(以下「甲7発明」という。)。 「 プラスチックフィルムロールの巻出し部5,プラスチックフィルムを純水の浴槽中に浸漬し洗浄する第1の洗浄部10A,プラスチックフィルムを純水を用いスプレー洗浄する第2の洗浄部10B,ニップロール3及びエアーナイフ4による水切り部,乾燥部50,塗工部60,乾燥部70,巻取り部8を順に設け, 第1番目の洗浄部10Aは,プラスチックフィルム1を純水12の浴槽11中に浸漬し,洗浄を行い, 第1の洗浄を終えたプラスチックフィルム1は上方向へ搬送されながら,ここで第2の洗浄部10Bを通過し,第2の洗浄部10Bは,スプレーによる洗浄を行い, 第2の洗浄を終えたプラスチックフィルム1は引続いて上方向へ搬送されながら,ニップロール3及びエアーナイフ4による水切り部を通過し, 水切りを終えたプラスチックフィルム1は,乾燥部50に入り,搬送ロール51及び搬送ロール52で乾燥部50内を搬送され, ニップロール3の上方にエアーナイフ4が配置され,乾燥部50の搬送ロール51の頂部は,ニップロール3の頂部よりも上方に配置されている, 光学用プラスチックフィルムの洗浄方法を実施する洗浄装置を塗工部の前に設置した塗工装置。」 4 対比及び判断 (1) 対比 ア 処理フィルムの製造方法 甲6方法発明は,「ポリビニルアルコール系フィルムfに,染色工程,延伸工程および架橋工程を少なくとも施す偏光子の製造方法」である。また,甲6方法発明の「ポリビニルアルコール系フィルムfは,原反幅が2300mm以上」とされているから,甲6方法発明の「ポリビニルアルコール系フィルムf」は,技術的にみて,「原反ロールから繰り出される」ものといえる。 そうしてみると,甲6方法発明の「偏光子の製造方法」は,本件特許発明1の「処理フィルムの製造方法」に相当する。また,甲6方法発明の「偏光子」は,本件特許発明1の「処理フィルム」と「偏光子」の双方に相当する。そして,甲6方法発明の「ポリビニルアルコール系フィルムf」は,本件特許発明1の「ポリビニルアルコール系フィルム」と「樹脂フィルム」の双方に相当する。 以上勘案すると,甲6方法発明は,本件特許発明1の「前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法」及び「前記処理フィルムとして偏光子を製造する…処理フィルムの製造方法」の要件を満たす。また,甲6方法発明の「ポリビニルアルコール系フィルムf」は,本件特許発明1の「前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり」という要件を満たす。 イ 処理工程 甲6方法発明は,「ポリビニルアルコール系フィルムfに,染色工程,延伸工程および架橋工程を少なくとも施す偏光子の製造方法」である。したがって,甲6方法発明は,染色工程,延伸工程及び架橋工程を含むといえる。 また,甲6方法発明の「洗浄工程(1)は,膨潤工程を兼ね」,加えて,甲6方法発明は,「染色工程の後に,洗浄工程(2)を有し」ている。したがって,甲6方法発明は膨潤工程及び洗浄工程も含むといえる。 そして,甲6方法発明の「洗浄工程(1)」,「染色工程」,「架橋工程」,「延伸工程」及び「洗浄工程(2)」は,技術的にみて,それぞれ「ポリビニルアルコール系フィルムfに対して洗浄処理及び膨潤処理を施す工程」,「ポリビニルアルコール系フィルムfに対して染色処理を施す工程」,「ポリビニルアルコール系フィルムfに対して架橋処理を施す工程」,「ポリビニルアルコール系フィルムfに対して延伸処理を施す工程」及び「ポリビニルアルコール系フィルムfに対して洗浄処理を施す工程」といえる。したがって,これら各工程は,いずれも,本件特許発明1でいう「処理工程」といえる。 以上勘案すると,甲6方法発明の「洗浄工程(1)」,「染色工程」,「架橋工程」,「延伸工程」及び「洗浄工程(2)」は,それぞれ,本件特許発明1の「膨潤工程」,「染色工程」,「架橋工程」,「延伸工程」及び「洗浄工程」に相当する。また,甲6方法発明は,本件特許発明1の「前記処理工程は,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含み」という要件を満たす。 (2) 一致点及び相違点 ア 一致点 本件特許発明1と甲6方法発明は,次の構成で一致する。 「 長尺状の樹脂フィルムを処理槽内の処理液に接触させて処理しながら搬送する処理工程を少なくとも有する,前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法において, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記処理工程は,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含む, 前記処理フィルムとして偏光子を製造する,処理フィルムの製造方法。」 イ 相違点 本件特許発明1と甲6方法発明は,次の点で相違する。 (相違点1) 本件特許発明1は,「前記染色工程,前記架橋工程,および前記延伸工程の少なくとも1つの処理工程は,当該処理工程により得られた前記処理フィルムを,前記処理槽内から搬出した後に,前記処理液外に配置された,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールおよび前記ニップロールに続いて配置されたガイドロールを介して搬送する工程を有し,かつ,前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり,かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており,これらニップロールの周速差により,長尺状の樹脂フィルムを長手方向に延伸しながら搬送工程を行い」という構成を具備するのに対して,甲6方法発明は,「前記染色工程,前記架橋工程,および前記延伸工程の少なくとも1つの処理工程」の構成が不明である点。 (3) 判断 甲7発明の「ニップロール3」(の下流側のロール)と「搬送ロール51」の位置関係と,相違点1に係る本件特許発明1の「第2ロール」と「ガイドロール」の位置関係は,位置関係でみると,同じである。 しかしながら,甲7発明は,洗浄装置を前提とした発明である。したがって,仮に,甲6方法発明に対して甲7発明を組み合わせる当業者を想定しても,甲6方法発明の「洗浄工程(1)」又は「洗浄工程(2)」に対して,甲7発明が組み合わされるにすぎない。すなわち,仮に甲6方法発明と甲7発明を組み合わせたとしても,相違点1に係る本件特許発明1の「前記染色工程,前記架橋工程,および前記延伸工程の少なくとも1つの処理工程は…」の構成に到らない。この点は,特許異議申立人が提出した,以下の甲1~甲5を考慮しても,同様である。 甲1:米国特許第3992141号明細書 甲2:特開2009-237124号公報 甲3:特開平10-153709号公報 甲4:特開2008-249766号公報 甲5:特開2004-93993号公報 以上のとおりであるから,本件特許発明1は,当業者が,甲6方法発明及び甲7発明(,並びに,甲1~甲5に記載された事項)に基づいて,容易に発明することができたものであるということができない。 (4) 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は,概略,甲6発明においても,少なくとも染色工程の後に,膜状汚れのための洗浄装置を設置することは動機付けられると主張する。 ここで,甲6方法発明の染色工程,延伸工程及び架橋工程の処理槽のうち,染色工程及び架橋工程の処理槽には,ヨウ素やホウ素が含まれるから,特許異議申立人が主張する「膜状汚れのための洗浄装置を設置すること」が動機付けられるかもしれない。 しかしながら,技術常識を考慮すると,染色工程及び架橋工程の処理槽には,所定濃度に調製されたヨウ素やホウ素が含まれる。したがって,甲6方法発明の染色工程及び架橋工程の処理槽において,純水が処理槽中に流れ込むような甲7発明を組み合わせることには,阻害要因があるといえる。 あるいは,当業者が甲6方法発明と甲7発明を組み合わせる場合においては,甲6方法発明の処理槽の後に,別個の甲7発明の洗浄装置を設ける構成を採用すると考えるのが相当である。そして,この場合の洗浄装置による処理工程は,第3の洗浄工程であって,染色工程等ではない。 したがって,特許異議申立人の主張は,採用できない。 (5) 本件特許発明2について ア 相違点 本件特許発明2と甲6方法発明を対比すると,両者は,少なくとも次の点で相違する。 (相違点2) 本件特許発明1の「上方ガイドロールには,当該上方ガイドロールの表面への液供給手段が設けられて」いるのに対して,甲6方法発明は,上方ガイドロールを具備しない点。 イ 判断 相違点2に係る本件特許発明2の構成は,甲6及び甲7に記載も示唆もされていない。この点は,甲1~甲5を考慮しても,同様である。 したがって,本件特許発明2は,当業者が,甲6方法発明及び甲7発明(,並びに,甲1~甲5に記載された事項)に基づいて,容易に発明することができたものであるということができない。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は,甲1の図4には,噴霧バー96a及び96bから噴霧されたすすぎ液が,フィルム16を伝ってローラー75の表面を濡らす構成(相違点2に係る本件特許発明1の構成)が記載されていると主張する。 (当合議体注:図4は以下の図である。) しかしながら,図4からは,噴霧バー96a及び96bが,ローラー75の下流側にあるローラー72及びローラー74の,さらに下流側に設けられている様子が看取される。したがって,このような構成を,「ローラー75には,当該ローラー75の表面への液供給手段としての噴霧バー96a及び96bが設けられている」という構成と理解することはできない。 (6) 本件特許発明3について 本件特許発明3は,相違点1に係る本件特許発明1の構成を具備する。 したがって,本件特許発明3は,本件特許発明1と同じ理由により,当業者が,甲6方法発明及び甲7発明(,並びに,甲1~甲5に記載された事項)に基づいて,容易に発明することができたものであるということができない。 (7) 本件特許発明4について ア 相違点 本件特許発明4と甲6方法発明を対比すると,両者は,少なくとも次の点で相違する。 (相違点3) 本件特許発明4は,「液切り手段と,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールと,前記ニップロールに続いて配置されたガイドロール」の構成を具備するのに対して,甲6方法発明は,この構成を具備するとはいえない点。 イ 判断 甲7発明は,上流側から順に,ニップロール3,エアーナイフ4,搬送ロール51の構成を具備する。 そうしてみると,仮に甲6方法発明の「洗浄工程(1)」において甲7発明を採用した場合を想定しても,相違点3に係る本件特許発明4の,「液切り手段と,…ニップロールと,前記ニップロールに続いて配置されたガイドロール」の構成に到らない(順番が異なる。)。この点は,甲1~甲5を考慮しても,同様である。 したがって,本件特許発明4は,当業者が,甲6方法発明及び甲7発明(,並びに,甲1~甲5に記載された事項)に基づいて,容易に発明することができたものであるということができない。 (8) 本件特許発明5について ア 一致点 本件特許発明5と甲6装置発明を対比すると,両者は,次の構成で一致する。 「 樹脂フィルムに任意の処理を行うための処理液を満たす少なくとも1つの処理槽を備え, 前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり, 前記任意の処理が,膨潤工程,染色工程,架橋工程,延伸工程および洗浄工程を少なくとも含む, 前記処理フィルムとして偏光子を製造することを特徴とする処理フィルムの製造装置。」 イ 相違点 本件特許発明5と甲6装置発明は,次の点で相違する。 (相違点4) 本件特許発明5は,「前記染色工程,前記架橋工程,および前記延伸工程における少なくとも1つの処理槽には,当該処理槽において処理された処理フィルムを当該処理槽内からに搬出した後に搬送するための,前記処理液に接触しないように配置された,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールおよび当該ニップロールに続いて配置されたガイドロールを有し,かつ,前記ガイドロールは,当該ガイドロールの頂部が,前記ニップロールにおける第2ロールの頂部よりも上方に配置された上方ガイドロールであり,かつ,前記処理フィルムを搬出するニップロールに対して,前記処理槽には,前記樹脂フィルムを前記処理槽に搬入する他のニップロールが配置されており」という構成を具備するのに対して,甲6装置発明は,「前記染色工程,前記架橋工程,および前記延伸工程における少なくとも1つの処理槽」の構成が不明である点。 ウ 判断 甲7発明の「ニップロール3」(の下流側のロール)と「搬送ロール51」の位置関係と,相違点4に係る本件特許発明5の「第2ロール」と「ガイドロール」の位置関係は,位置関係でみると,同じである。 しかしながら,甲7発明は,洗浄装置を前提とした発明である。したがって,仮に,甲6装置発明に対して甲7発明を組み合わせる当業者を想定しても,甲6装置発明の「洗浄工程(1)用の洗浄槽A」又は「洗浄工程(2)用の洗浄槽A」に対して,甲7発明が組み合わされるにすぎない。すなわち,仮に甲6方法発明と甲7発明を組み合わせたとしても,相違点4に係る本件特許発明5の「前記染色工程,前記架橋工程,および前記延伸工程における少なくとも1つの処理槽には…」の構成に到らない。この点は,甲1~甲5を考慮しても,同様である。 以上のとおりであるから,本件特許発明5は,当業者が,甲6装置発明及び甲7発明(,並びに,甲1~甲5に記載された事項)に基づいて,容易に発明することができたものであるということができない。 (9) 本件特許発明6について ア 相違点 本件特許発明6と甲6装置発明を対比すると,両者は,少なくとも次の点で相違する。 (相違点5) 本件特許発明6の「前記上方ガイドロールには,当該上方ガイドロールの表面への液供給手段が設けられて」いるのに対して,甲6装置発明は,上方ガイドロールを具備しない点。 イ 判断 相違点5に係る本件特許発明6の構成は,甲6及び甲7に記載も示唆もされていない。この点は,甲1~甲5を考慮しても,同様である。 したがって,本件特許発明6は,当業者が,甲6装置発明及び甲7発明(,並びに,甲1~甲5に記載された事項)に基づいて,容易に発明することができたものであるということができない。 (10) 本件特許発明7について 本件特許発明7は,相違点4に係る本件特許発明5の構成を具備する。 したがって,本件特許発明7は,本件特許発明5と同じ理由により,当業者が,甲6装置発明及び甲7発明(,並びに,甲1~甲5に記載された事項)に基づいて,容易に発明することができたものであるということができない。 (11) 本件特許発明8について ア 相違点 本件特許発明8と甲6装置発明を対比すると,両者は,少なくとも次の点で相違する。 (相違点6) 本件特許発明8は,「液切り手段と,第1ロールと第2ロール(処理フィルムの搬送方向を基準に上流側を第一ロール,下流側を第2ロールとする)からなるニップロールと,当該ニップロールに続いて配置されたガイドロール」の構成を具備するのに対して,甲6装置発明は,この構成を具備するとはいえない点。 イ 判断 甲7発明は,上流側から順に,ニップロール3,エアーナイフ4,搬送ロール51の構成を具備する。 そうしてみると,仮に甲6装置発明の「洗浄工程(1)用の洗浄槽A」において甲7発明を採用した場合を想定しても,相違点6に係る本件特許発明8の,「液切り手段と,…ニップロールと,当該ニップロールに続いて配置されたガイドロール」の構成に到らない(順番が異なる。)。この点は,甲1~甲5を考慮しても,同様である。 したがって,本件特許発明8は,当業者が,甲6装置発明及び甲7発明(,並びに,甲1~甲5に記載された事項)に基づいて,容易に発明することができたものであるということはできない。 (12) 本件特許発明9~本件特許発明14について 本件特許発明9は,相違点2に係る本件特許発明2の構成を具備する。本件特許発明10は,相違点3に係る本件特許発明4の構成を具備する。本件特許発明11は,相違点2に係る本件特許発明2の構成,及び相違点3に係る本件特許発明4の構成を具備する。 したがって,本件特許発明9~本件特許発明11は,本件特許発明2及び/又は本件特許発明4と同じ理由により,当業者が,甲6方法発明及び甲7発明(,並びに,甲1~甲5に記載された事項)に基づいて,容易に発明することができたものであるということができない。 本件特許発明12は,相違点5に係る本件特許発明6の構成を具備する。本件特許発明13は,相違点6に係る本件特許発明8の構成を具備する。本件特許発明14は,相違点5に係る本件特許発明6の構成,及び相違点6に係る本件特許発明8の構成を具備する。 したがって,本件特許発明12~本件特許発明14は,本件特許発明6及び/又は本件特許発明8と同じ理由により,当業者が,甲6装置発明及び甲7発明(,並びに,甲1~甲5に記載された事項)に基づいて,容易に発明することができたものであるということができない。 5 甲1について 特許異議申立人は,特許異議申立書において,概略,本件訂正前の本件特許発明1~本件特許発明8は,いずれも,当業者が,甲1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであると主張している。 しかしながら,本件訂正後の本件特許発明1~本件特許発明14は,いずれも,「前記樹脂フィルムが,原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルムであり」という構成,及び「延伸工程」の構成を有しており,この構成は,甲1には記載されていない。すなわち,甲1に記載されたフィルム16は,一軸延伸ポリビニルアルコールをしっかりと付着させた酢酸酪酸セルロースのキャリアシートであるから,「原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルム」とはいえない。また,仮に,これを「原反ロールから繰り出されるポリビニルアルコール系フィルム」というとしても,甲1に記載されたフィルム16は,一軸延伸ポリビニルアルコールをしっかりと付着させた酢酸酪酸セルロースのキャリアシートのまま染色されるものであるから,「延伸工程」が施されるものとはいえない。この点は,甲2~甲7を考慮しても,同様である。 したがって,本件特許発明1~本件特許発明14は,当業者が,甲1に記載された発明(及び甲2~甲7に記載された事項)に基づいて容易に発明をすることができたものであるということができない。 6 特許法36条6項1号について 特許異議申立人は,特許異議申立書において,概略,「前記上方ガイドロールには,当該上方ガイドロールの表面への液供給手段が設けられている」という構成を具備しない本件訂正前の本件特許発明1,3,4,5,7及び8は,発明の詳細な説明に記載の範囲を超えているから,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないと主張する。 しかしながら,本件特許の発明の詳細な説明の【0008】及び【0009】には,発明の目的(発明が解決しようとする課題)に関して,以下のとおり記載されている。 「【0008】 本発明は,長尺状の樹脂フィルムを処理槽内の処理液に接触させて処理しながら搬送する処理工程を少なくとも有する,前記樹脂フィルムから当該樹脂フィルムの処理フィルムを製造する方法であって,処理フィルムに要求される特性を満足しながら,かつ,スクラッチや打痕の発生等を低減することができる処理フィルムの製造方法及びその製造装置を提供することを目的とする。 【0009】 さらには,スクラッチや打痕の発生等を低減することができ,かつクニックを低減することができる処理フィルムの製造方法及びその製造装置を提供することを目的とする。」 また,発明の詳細な説明の【0021】~【0023】には,課題解決手段と発明の効果に関して,以下のとおり記載されている。 「【発明の効果】 【0021】 通常,連続的に搬送される樹脂フィルム(例えば,PVA系フィルム)に処理液を接触させる処理工程を施すことにより得られる処理フィルムは,処理液を有する処理槽内から搬出された後に,ニップロールにより液切りされながら搬送される。処理フィルムにスクラッチや打痕が発生するのは,当該処理フィルムと,ニップロールとの間に流体(処理液)とともに微細な異物が侵入し,当該異物がニップロールに挟まれることでスクラッチや打痕が発生すると考えられる。 【0022】 本発明の製造方法では,前記ニップロールに,続いて,前記ニップロールより上方に設置された上方ガイドロールが設けられている。前記上方ガイドロールの頂部は,前記ニップロールにおける下流側の第2ロールの頂部よりも上側に配置されている。このように,ニップロールに,続いて,上方ガイドロールを設けることにより,ニップロール間を通過して搬送される処理フィルムは,ニップロール間を通過した後にはニップロールに殆ど接触することなく,上方ガイドロールに導かれる。そのため,異物がニップロールに挟まれることにより発生するスクラッチや打痕を抑えることができると考えられる。 【0023】 また,本発明の製造方法では,ニップロールを通過して搬送される処理フィルムは,ニップロール間を通過した後にはニップロールに殆ど接触しない。そのため,液切りされた処理フィルム表面がニップロールに接触して擦れることにより発生するクニックを抑えることができるものと考えられる。一方,ニップロールを通過した処理フィルムは,上方ガイドロールにより搬送されるが,上方ガイドロールが乾燥していると,却って,処理フィルムとの擦れによって,クニックが発生するおそれがある。本発明の製造方法では,上方ガイドロールの表面への液供給手段を設けることにより,上方ガイドロールの表面に薄液膜を形成させることでできる。その結果,処理フィルムの乾燥状態を改良して,クニックをより効果的に抑えることができると考えられる。」 そして,上記【0008】及び【0009】の記載に接した当業者ならば,発明の詳細な説明には,[A]【0009】に記載の「スクラッチや打痕の発生等を低減することができ,かつクニックを低減することができる」という発明が解決しようとする課題を解決することができる発明だけではなく,[B]単に,【0008】に記載の「スクラッチや打痕の発生等を低減することができる」という発明が解決しようとする課題を解決することができるにとどまる発明(「クニックを低減することができる」という発明が解決しようとする課題は解決できない発明)も記載されていると理解することができる。また,上記【0021】~【0023】の記載に接した当業者ならば,上方ガイドロールの表面への液供給手段を設けなくとも,ニップロールに続いて上方ガイドロールを設けさえすれば,【0022】に記載された発明の効果が得られる(「スクラッチや打痕の発生等を低減することができる」という発明が解決しようとする課題は解決できる)ことを理解することができる。 したがって,本件訂正前の本件特許発明1,3,4,5,7及び8に対応する,本件特許発明1,3~5,7,8,10及び13は,発明の詳細な説明において,発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではないから,発明の詳細な説明に記載したものである。 なお,本件特許発明2,6,9,11,12及び14については,「前記上方ガイドロールには,当該上方ガイドロールの表面への液供給手段が設けられており」という構成を具備している。したがって,特許異議申立の理由の対象外である。 第4 まとめ 以上のとおりであるから,当合議体が通知した取消の理由,及び特許異議申立書に記載された特許異議申立の理由によっては,本件特許を取り消すことができない。 また,他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。

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2017-700152

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