特許訂正審判
2025-390011
マッサージ機
- 審判番号
- 2025-390011
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願1998-006166
- 登録番号
- 3574888
- 請求日
- 2025年01月22日
- 審決日
- 2025年12月25日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】パナソニックホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】重冨 貴光
- 【請求人代理人】古庄 俊哉
- 【請求人代理人】松本 健男
- 【請求人代理人】石津 真二
- 【請求人代理人】松井 鴻
- 【請求人代理人】手代木 啓
- 【請求人代理人】横山 寧花
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 哲男
- 審判官 麻川 倫広
- 審判官 土田 嘉一
- 分類
- P141 .831-Y (A61H) / P141 .841-Y (A61H) / P141 .851-Y (A61H) / P141 .854-Y (A61H) / P141 .856-Y (A61H) / 標準データ:手続:訂正 / 標準データ:41・831-Y (A61H) / 標準データ:41・841 / 標準データ:41・851 / 標準データ:41・854 / 標準データ:41・856 / 標準データ:確定ステータス:1 維持(出訴無し)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)、特許情報標準データ(審判)
結論
結 論
特許第3574888号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件審判の請求に係る特許第3574888号(以下「本件特許」という。)は、平成10年 1月14日に出願された特願平10-6166号について、平成16年 7月16日にその特許権の設定登録がなされ、その後、令和 7年 1月22日に訂正審判(以下「本件訂正審判」という。)の請求がなされ、令和 7年 7月23日に上申書(以下「上申書」という。)が提出されたたものである。
第2 請求の趣旨及び訂正の内容
1 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。
2 訂正の内容
本件訂正審判の訂正の内容は、以下のとおりである(審決注:下線部分が訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチを備えている」という記載を、「前記マッサージ機は、背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構と、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチを備えており、」に訂正し、当該記載の後に、「自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではなく、自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能である」との記載を追加する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2の「自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチを備えている」という記載を、「前記マッサージ機は、背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構と、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチを備えており、」に訂正し、当該記載の後に、「自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではなく、自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能である」との記載を追加する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3の「自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチと、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチとを備えている」という記載を、「前記マッサージ機は、背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構と、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチと、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチとを備えており、」に訂正し、当該記載の後に、「自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではなく、自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能であり、自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能である」との記載を追加する。
第3 当審の判断
1 独立特許要件以外の訂正要件について
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は、「マッサージ機」が、「背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構」を備えることを限定し、「マッサージ機」が備える「自動コース施療機能」に関して、「自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではなく、自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能である」ことを限定するものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項1は、本件特許明細書の段落【0008】、【0010】、【0011】及び本件特許図面の【図1】、【図2】に基づくものである。
特に、段落【0010】には、「上半身」を選択した場合の自動コース施療のプログラム(テーブル)の内容として、「施療子の間隔(幅)、動作位置等」が記載されていることから、【図2】に示される背もたれ12内に配されたマッサージ機構4が「施療子」を有することは明らかである。
よって、「背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構」は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項である。
また、段落【0010】に、「上半身」を選択した場合の自動コース施療の実施にあたり、「施療子」の「間隔(幅)、動作位置等」が変更されることが記載されている。そして、段落【0010】には、「上半身」を選択した場合の自動コース施療の施療動作について、「ローリング下降、ローリング上昇、もみ上げ、もみ下げといった複数種の施療動作」がある旨が記載されているほか、【図1】には、「動作内容」として、「幅広ローリング下降」、「幅狭ローリング上昇」、「もみ上げ」、「もみ下げ」といった、施療を実現する手段の「間隔(幅)」の変更及び「上昇又は下降」を伴う施療動作が記載ないし図示されている。そして、本件特許明細書、図面には、施療子のほかに施療動作を実現する手段についての記載はない。以上のことから、自動コース施療の施療動作にあたり、「施療子」の「幅の変更」及び「上昇又は下降」が行われることは自明である。
さらに、【図1】には、施療動作の強弱度に対応する「出代量」が、自動コース中の個々の「動作内容」について一律でないことを図示されているほか、段落【0011】には、「自動コース施療の途中で『やわらか』のスイッチ54を操作」する旨が記載されている。
よって、「自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではなく、自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能である」ことは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項である。
以上のとおりであるから、訂正事項1は、新たな技術的事項を導入するものでなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アのとおりであるから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2は、「マッサージ機」が、「背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構」を備えることを限定し、「マッサージ機」が備える「自動コース施療機能」に関して、「自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではなく、自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能である」ことを限定するものであるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項2は、本件特許明細書の段落【0008】、【0010】~【0012】及び本件特許図面の【図1】、【図2】、【図4】に基づくものである。
本件特許明細書及び図面には、上記(1)イで指摘した事項に加えて、段落【0012】及び図4に、「自動コースの動作内容」として「通常よりも出代量を大きくした「強」モードを設けておくとともに」、「該モードに対応するスイッチを設ける」ことが記載されている。
よって、「自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではなく、自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能である」ことは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項である。
以上のとおりであるから、訂正事項2は、新たな技術的事項を導入するものでなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アのとおりであるから、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3は、「マッサージ機」が、「背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構」を備えることを限定し、「マッサージ機」が備える「自動コース施療機能」に関して、「自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではなく、自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能であり、自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能である」ことを限定するものであるから、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
よって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項3は、本件特許明細書の段落【0008】、【0010】~【0012】及び本件特許図面の【図1】、【図2】、【図4】に基づくものである。
本件特許明細書及び図面には、上記(1)イ及び(2)イで指摘した事項が記載されている。
よって、「自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではなく、自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能であり、自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能である」ことは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項である。
以上のとおりであるから、訂正事項3は、新たな技術的事項を導入するものでなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
よって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記アのとおりであるから、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合する。
2 独立特許要件について
以上のとおりであるから、訂正事項1~3は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
上記のとおりであるから、本件訂正後の請求項1~3に係る発明は、特許法第126条第7項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて以下検討する。
なお、上申書によれば、本件特許に係る特許権侵害訴訟(大阪地方裁判所令和 6年(ワ)第2740号)(以下「別件侵害訴訟」という。)が係属中であり、上申書により、別件侵害訴訟における両当事者の主張及び関連証拠が甲号証として提出されているので、上記甲号証を踏まえて、以下、当該独立特許要件について検討する(なお、上申書に記載された上記別件侵害訴訟における証拠について、例えば、「甲第13号証」との表記を「甲13」という。)
理由1:出願前実施品1発明(MC-133)を主引用発明とする進歩性の欠如
本件訂正後の請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に公然実施をされた出願前実施品1発明及び甲14~甲19に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(甲3の第10頁~第38頁を参照)。
理由2:甲6発明(実願平3-113417号(実開平5-56131号)のCD-ROM)を主引用発明とする進歩性の欠如
本件訂正後の請求項1~3に係る発明は、甲6発明及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(甲3の第38頁~第50頁を参照)。
理由3:出願前実施品2発明(FCX-100型)に基づく新規性の欠如
本件訂正後の請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に公然実施をされた出願前実施品2発明である(甲3の第50頁~第62頁を参照)。
[証拠一覧]
甲6:実願平3-113417号(実開平5-56131号)のCD-ROM
甲12:株式会社フジ医療器「生産終了商品」,[online],[text], [取得日 令和 6年 9月10日],取得先<https://www.fujiiryoki.co.jp/support/closed.html>
甲13:MC-133(品名:エアーマッサージチェア ロイヤルチェア)の取扱説明書
甲14:特開平3-221041号公報
甲15:特開平2-279157号公報
甲16:特開平2-295561号公報
甲17:特開平3-123555号公報
甲18:特開昭58-109053号公報
甲19:特開平3-165767号公報
甲20:株式会社フジ医療器「マッサージチェアの歴史」,[online],[text], [取得日 令和 7年 3月24日],取得先<https://www.fujiiryoki.co.jp/product/massagechair/particular/history.html>
甲21:FCX-100型(品名:ファミリー指圧ローラー 押太郎)の取扱説明書
甲22:ファミリー株式会社,「医療用具製造承認申請書」,昭和63年 4月15日
甲23:厚生大臣 藤本孝雄,「医療用具製造承認書(承認番号(63B)第1478号)」,昭和63年 8月18日
甲24:ファミリーイナダ株式会社「マッサージチェアの歴史」,[online],[text], [取得日 令和 7年 3月31日],取得先<https://www.family-chair.co.jp/history/>
(1) 本件訂正発明1~3
本件訂正後の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ順に「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明3」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
予め設定されているプログラムに従った手順及び強弱度で施療動作を順次実行する自動コース施療機能を備えたマッサージ機において、前記マッサージ機は、背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構と、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチを備えており、自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではなく、自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能であることを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
予め設定されているプログラムに従った手順及び強弱度で施療動作を順次実行する自動コース施療機能を備えたマッサージ機において、前記マッサージ機は、背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構と、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチを備えており、自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではなく、自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能であることを特徴とするマッサージ機。
【請求項3】
予め設定されているプログラムに従った手順及び強弱度で施療動作を順次実行する自動コース施療機能を備えたマッサージ機において、前記マッサージ機は、背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構と、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチと、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチとを備えており、自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではなく、自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能であり、自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能であることを特徴とするマッサージ機。」
(2)理由1(出願前実施品1発明を主引用発明とする進歩性の欠如)
ア 出願前実施品1発明
甲12及び甲20によればMC-133(商品名:エアーマッサージチェア ロイヤルチェア)は、本件特許の出願前である平成 7年に販売されていたものと認められる。そして、MC-133の取扱説明書(甲13)には、次の事項が記載されている。
(ア)第5頁(各部のなまえとはたらき)「
[図:0001434054000001.jpg]
」
(イ)第6頁(リモコン・特長)「
[図:0001434054000002.jpg]
」
(ウ)第9~10頁(マッサージのしかた)「
[図:0001434054000003.jpg]
[図:0001434054000004.jpg]
」
(エ)第11頁(仕様)「
[図:0001434054000005.jpg]
」
(オ)(ア)の「各部のなまえとはたらき」、(イ)の「特長」の記載を踏まえると、エアマッサージチェアは、背もたれ部を備え、背もたれ部の「首・肩」、「背中」、「背筋」に対応する箇所にエアーバッグが配置されている。
また、(イ)の「コース選択ボタン」、(ウ)の「マッサージのしかた」、(エ)の「機能」の記載を踏まえると、コースのマッサージには、「背筋」から「首・肩」までのエアーバッグが最も効果的な順番に膨らんでマッサージをする上半身コースが含まれ、強さは初めは「弱」に設定されているから、各コースは予め設定された手順及び強さでマッサージする。
そして、(イ)の「強さボタン」、(エ)の「強さ 強・弱(2段階切替)」の記載を踏まえると、エアマッサージチェアは、押すごとにマッサージの強さを「強」「弱」の2段階で切り替えることができる「強さボタン」を備えている。そして、(ウ)の「マッサージのしかた」において、(3-1)で「コース選択ボタン」を押してコースを開始し、(3-2)「強さボタン」を押して強さを変えているから、コースの途中で強さボタンを操作することにより、コース中のマッサージについての強さを切り替えることが可能である。
上記事項より、本件特許の出願前に、MC-133として実施された発明(以下「出願前実施品1発明」という。)は、次のとおりである。
「予め設定された手順及び強さでマッサージをするコースを備えたエアマッサージチェアにおいて、
エアマッサージチェアは、
背もたれ部の首・肩、背中、背筋、腰部に配置されたエアーバッグと、
コース中のマッサージについての強さを「強」「弱」の2段階で切り替える強さボタンを備えており、
コースのマッサージには、背もたれ部の上下方向に配置された「背筋」から「首・肩」までのエアーバッグが最も効果的な順番に膨らんでマッサージをする上半身コースが含まれ、
コースの途中で強さボタンを操作することにより、コース中のマッサージについての強さを「強」「弱」の2段階で切り替えることが可能である
エアマッサージチェア。」
イ 甲14に記載された事項
特開平3-221041号公報(甲14)には、以下の記載が(下線は当審で追加。「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)。
(ア)「【発明が解決しようとする課題】
ところで、マッサージを行うにあたり、施療対象部位が首部であるか肩部であるか、背・腰部であるかによって、夫々好ましいスピードがある。・・・
腰部は椅子の背もたれに施療子が配されているものの場合、速いと腰がずれて逃げてしまい、遅すぎると背部と同様にまどろっこしくなってしまう。・・・
また、マッサージの手法としては、当初から強刺激が生じるもみマッサージを行うのではなく、軽い刺激から始め、その後、強い刺激が生じるマッサージに移り、最後は軽い刺激で終わるようにするのが好ましい。・・・
本発明はこのような点に鑑み為されたものであり、その目的とするところは、動作スピードも施療部位に適した値となっているために、きわめて心地良いマッサージを得ることができるマッサージ機を提供することにあるとともに、使用者に緊張感をいだかせることなく効果的なマッサージを得ることができるマッサージ機を提供するにある。」
(イ)「[実施例]
以下本発明を図示の実施例に基づいて詳述すると、ここで示したマッサージ機は、マイクロコンピュータにて形式された制御記憶回路Cによる制御を受けて、一対の施療子1(第1図では一方のみを示している〉が人体の首から腰に該当する範囲内を移動し且つマッサージ動作を行うものであって、施療子1はたとえばローラによって形成される。今、回転駆動される駆動軸に取り付けられた偏心且つ傾斜した一対の円盤に遊転自在な外輪を設けて、この外輪から突出させたアームの先端に上記ローラを取り付けるとともにアームが動く範囲に規制を加えれば、駆動軸の回転によりもみマッサージ動作を、それも駆動軸の回転方向に応じて「もみ上げ」と「もみ下げ」との2種のもみマッサージ動作を行わせることができ、駆動軸とともに上下動を行わせれば、背中をさするローリングマッサージを行わせることができ、そして上記アームと外輪を円盤のまわりに揺動させればたたきマッサージを、上下動とともにこの動作を行わせればたたきローリングマッサージを行わせることができる。更に、円盤のまわりのアームの位置を変化させたならば、マッサージの強弱の調整を行うことができ、駆動軸の軸方向に円盤をスライドさせることができるようにしておけば、一対の施療子1の幅位置を変更することができる。このような動作が可能となっている施療子1はすでに公知であることから、詳細な説明は省略する。
第1図において、図中6はどのような動作を行わせるかの指示を与えるための操作器であり、ここでは所要のマッサージを順に行わせることができるものとして、上半身をくまなくマッサージする上半身コースを指定するためのスイッチSW5と、首・肩を重点的にマッサージする首・肩コースを指定するためのスイッチSW6、そして腰を重点的にマッサージする腰コースを指定するためのSW7を備えており、このほか、もみ上げ、もみ下げ、たたき、ローリング、部分ローリング、たたきローリング、部分たたきローリングの各施療方法選択用スイッチ群SW1、施療子1を移動させるためのスイッチ群SW2、そして施療子1の動作スピードを調整するためのスイッチ群SW3を備えている。スイッチ群SW3における「1/f」のスイッチは、動作速度を連続的に自動変化させるものである。・・・
ここにおける位置検出部83は、その位置検出回路84により、施療子1の現在位置を、上下位置に関して上限1から下限Yまでの複数段階で、幅位置に関して最内端1から最外端Xまでの複数段階で、強弱に関して最弱1から最強Zまでの複数段階で検出される位置情報をそれぞれの位置レジスタ85,86,87を通じて制御記憶回路Cにおける比較判別回路C1に送るものであり、また突出量については突出量レジスタ88を通じて指示回路81に送る。
そして、制御記憶回路Cは、位置検出部83側の各位置レジスタ85,86,87に対応して比較判別回路C1に接続された目標位置レジスタ91,92,93と、指示回路81に接続された施療回数/時間カウンタ94及び施療方法レジスタ95と施療スピードレジスタ96とを備えるとともに、操作器6のスイッチSW5~SW7に対応する上半身コースと首・肩コースと腰コースの各コースマッサージのための3種のテーブルT1、T2、T3と、これらテーブル中の各ステップに付されたアドレス1~Nを指し示すテーブルポインタPとを備えている。
ここにおけるテーブルT1、T2、T3は、施療子1にどの種類のマッサージ動作を行わせるかの動作方法(動作モード)、その動作位置(動作範囲)、動作回数もしくは動作時間といった施療動作に関するパラメータと、動作スピードパラメータとを多数のステップ毎に記憶保持しているもので、たとえば上半身コースのためのテーブルTには、表1のようなパラメータが格納されている。
[図:0001434054000006.jpg]
尚、表1における施療子1の位置に関するパラメータは、位置検出回路83によって得られる情報に対応するようにしてある。」
(ウ)「今、操作器6において上半身コースを指定するスイッチSW5を操作したならば、制御記憶回路CはテーブルポインタPをテーブルT1の先頭アドレスにセットして、この先頭アドレスのステップの各パラメータを読み出してこれら情報を各レジスタやカウンタ91~96にセットし、その位置情報と、位置検出部83から得られる現在位置情報とを比較判別回路C1において比較して、両者が一致するように指示回路81及び施療子駆動回路82を通じて施療子1の位置を変更し、その後、テーブルT1に記された施療方法の動作を、同じくテーブルT1に記載されている動作スピードで実行させるものであり、またこの施療動作がテーブルT1に記された動作回数(動作時間〉だけ行われたならば、テーブルポインタPを次のアドレスのステップにセットし、このステップの各パラメータを読み出して、次のマッサージに移る。第2図にこの動作のフローチャートを示す。こうして最終ステップに至れば、施療子1を所定の収納位置に移す収納動作を行った後、停止して動作を完了する。・・・
つまり、首部にもみマッサージする時の動作スピードは遅く、肩部にもみマッサージする時の動作スピードは速く、背・腰部にもみマッサージする時の動作スピードは普通の速度となるようにしてある。前述のマッサージされる部位に応じた好ましい値がセットされており、従って、いずれの部位にマッサージされる時も、使用者は心地良いマッサージを得ることができるものである。
また、ここではコースマッサージを始めた時、まずローリングマッサージが最も弱い状態で実行され、ついでたたきローリングマッサージが同じく最も弱い状態で実行され、その後、もみマッサージが強い状態である実行されるようにしているとともに、最後もたたきローリングマッサージとローリングマッサージで終了するようにしているわけであるが、当初に実行されるたたきローリングマッサージについては、その動作スピードパラメータを5に、つまり通常の速度(パラメータ8)よりも遅い値(パラメータ5)に設定して、そのたたき動作と上下移動動作とがゆっくりとなされるようにしてある。」
(エ)第1図「
[図:0001434054000007.jpg]
」
(オ)第2図「
[図:0001434054000008.jpg]
」
(カ)上記(イ)~(エ)の記載を踏まえると、コースマッサージ中の各施療方法の強弱位置は一律でない。また、施療子1の位置を移動させるスイッチ群SW2には、「強く」及び「弱く」があり、施療子1の強弱位置を移動させるスイッチであることが看取できる。
ここで、甲14には、かかるスイッチ群SW2を操作した場合の具体的な動作について明示されていない。
しかし、上記(イ)、(ウ)、(オ)の記載を踏まえると、コースマッサージにおける施療子1の位置は、制御記憶回路CがテーブルT1~3に格納された各ステップのパラメータを順次読み出してこれを各レジスタやカウンタ91~96にセットし、位置検出部83から得られる現在位置情報と比較判別回路C1において比較して、両者が一致するよう施療子1の位置を変更するものである。そして、甲14にはコースマッサージにおけるスイッチ群SW2の操作による施療子1の位置の変更について記載はなく、上記(エ)の第1図の記載を踏まえても、制御記憶回路Cに関し、「強く」及び「弱く」のスイッチSW2の操作によって、テーブルT1~3に格納された強弱位置のパラメータや、位置レジスタにセットされた強弱位置のパラメータを変更することは記載されていない。
また、上記(イ)において、公知の施療子1を用いたマッサージ動作として、「もみ上げ」等の個別のマッサージ動作の説明に続いて、当該マッサージ動作における強弱の調整について説明されており、上記(エ)の第1図に示される操作器6においても、スイッチ群SW2は、各施療方法(マッサージ動作)選択用のスイッチ群SW1に隣接して配置されている。
これらを踏まえると、「強く」及び「弱く」のスイッチSW2は、スイッチ群SW1で選択された個別のマッサージ動作の施療子1の強弱位置を移動させるものであるものの、テーブルT1~3に格納された強弱位置のパラメータを変更するものではなく、コースマッサージ中の施療子1の強弱位置は、専らテーブルT1~3に格納されたパラメータに基づいて定められるものであって、変更可能でないものと解するのが自然である。
以上を踏まえると、甲14には以下の事項が記載されている(以下「甲14記載事項」という。)。
「ステップ毎にテーブルに記憶保持されている施療方法・強弱位置でマッサージを順に行わせるコースマッサージを備えたマッサージ機において、
マッサージ機は
背もたれに施療子1と、
個別のマッサージ動作の施療子1の強弱位置を移動させるスイッチSW2を備え、
コースマッサージ中の施療方法にはローリングマッサージが含まれ、
コースマッサージ中の各施療方法についての強弱位置が一律ではないこと。」
ウ 甲15に記載された事項
特開平2-279157号公報(甲15)には、以下の記載がある。
(ア)「(ホ)実施例
以下、図に示す実施例に基づいてこの発明を詳述する。なお、この発明はこれによって限定されるものではない。
第1図~第4図において、椅子式マッサージ機の主要部分は、椅子の背もたれ部内の右側に上下方向へ伸びるように配された案内レールと、この案内レールに上下移動可能に装着された駆動体部1と、駆動体部1に回転可能に連結され駆動体部1から左方向へ水平に配され、・・・このもみアーム7の他端に取り付けられ外側リング6の回動にともなってマッサージ動作を行うもみ玉8とから主として構成されている。」
(イ)第1図「
[図:0001434054000009.jpg]
」
以上を踏まえると、甲15には、背もたれ部内に主要部分を構成するもみ玉8を備えた椅子式マッサージ機が記載されている。
エ 甲16に記載された事項
特開平2-295561号公報(甲16)には、以下の記載がある。
(ア)「〔実施例〕
次に、本発明の実施例を、図面に基づいて説明する。
第1図及び第2図に示すように、背もたれ部(8)のフレーム(9)内に固定した左右一対のガイドパイプ(10)に、昇降案内自在に昇降フレーム(2)を取付け、昇降フレーム(2)を昇降操作する昇降駆動装置(1)を設け、
マッサージ子(3)を備えたマッサージ子作動装置(4)を、昇降フレーム(2)に設けて背もたれ椅子式のマッサージ機を構成してある。」
(イ)第1~2図「
[図:0001434054000010.jpg]
[図:0001434054000011.jpg]
」
以上を踏まえると、甲16には、背もたれ部(8)内にマッサージ子(3)を備えたマッサージ子作動装置(4)を設けたマッサージ機が記載されている。
オ 甲17に記載された事項
特開平3-123555号公報(甲17)には、以下の記載がある。
(ア)「〔実施例〕
以下、実施例を示す図面に基づいて本発明を詳説する。
第3図と第4図は本発明に係るマッサージ機を示し、このマツサージ機は、背もたれ部1と座部2と肘部3とヘッドレスト4とからなる椅子部5と、該椅子部5の背もたれ部1内に内装される機構部6と、該椅子部5を支持する脚部7と、を備えている。
しかして、機構部6とは、背もたれ部1内に内装されるモミボール保持枠体8と、該枠体8に取付けられる正逆転自在なモータ9と、モミボール10,10と、クラッチ装置11と、等を備え、該クラッチ装置11にて、該モータ9の回転をモミボール10,10の回転としたり、枠体8の上下往復動としたりするものである。
そして、枠体8は、静止スクリューシャフト15に外嵌されるナツト部材14が上記モータ9の回転にて該シャツ目5上を螺進退し一対のガイド枠1212に沿って上下動するものである。」
(イ)第3~4図「
[図:0001434054000012.jpg]
」
以上を踏まえると、甲17には、背もたれ部1内に内装され、もみボール10,10を備えた機構部6を備えているマッサージ機が記載されている。
カ 甲18に記載された事項
特開昭58-109053号公報(甲18)には、以下の記載がある。
(ア)「マツサージ機1は座部2、背もたれ部3、肘かけ部4,4’、脚部5から構成されている。背もたれ部13には上下方向に施療面部6が設けてあり、該部には展伸性を有する布地等からなるカバー7が被盛してあり、裏側には、回転軸8に偏心eを有して一体的に装着された偏心輪9および該偏心輪9上を転動するボール10、該ボール10外局に沿つて設けられた立上り部11、平行部12、傾斜部13からなる軸方向クラツチ本体14、該クラツチ本体14外周上を転動する軸受ボール15および外輪16からなり、互に反対方向に傾斜したもみ輪17からなるもみ部18が設けてある。・・・操作スイツチとしては背すじ伸しともみの選択スイツチ55、もみと押しの選択スイツチ56、もみ巾設定スイツチ57、もみ位置制御スイツチ58、電源スイツチ59が装着してある。」
(イ)第1~2図「
[図:0001434054000013.jpg]
」
(ウ)第7図「
[図:0001434054000014.jpg]
」
以上を踏まえると、甲18には、背もたれ部3にもみ輪17からなるもみ部18が設けてあり、操作スイツチが装着してあるマッサージ機1が記載されている。
キ 甲19に記載された事項
特開平3-165767号公報(甲19)には、以下の記載がある。
(ア)「〔実施例〕
以下本発明を図示の実施例に基づいて詳述すると、第1図において、椅子1の背もたれ11の背面両側に夫々レール12が配設されているとともに、各レール12にはラック13が付設されており、また各レール12の前面側には上下端がストッカー40,40となっているガイドレール4,4が配設されている。
施療部材21は両端に上記レール12内を転動するころ23とラック13に噛合するピニオン22とを備えたマッサージ機構2の中央部に配された一対の偏心傾斜したもみ輪で形成されており、モータ20によって回転駆動されることで、背もたれ11の前面に配されたシート14を通じて背もたれ11にもたれている人体の背面にマッサージを加える。また、このマッサージ機構2は、モータ20によるピニオン22の回転でレール12に沿って、つまり背もたれ11に沿って上下に移動する。
そして、このマッサージ機では、背もたれ11におけるシート14の背面側で且つマッサージ機構2の上下に位置する部分に、夫々人体支持部材3が配されたものとなっている。」
(イ)第1図「
[図:0001434054000015.jpg]
」
以上を踏まえると、甲19には、背もたれ11の背面側に施療部材21が配されたマッサージ機構2を備えたマッサージ機が記載されている。
ク 本件訂正発明1と出願前実施品1発明の対比・判断
本件訂正発明1と出願前実施品1発明を対比する。
(ア)出願前実施品1発明の「強さ」、「マッサージ」、「コース」及び「エアマッサージチェア」は、それぞれ本件訂正発明1の「強弱度」、「施療動作」、「自動コース(施療機能)」及び「マッサージ機」に相当する。
また、出願前実施品1発明のエアマッサージチェアが備えるコースにおけるマッサージの「予め設定された手順及び強さ」は、予め設定されているプログラムに従ったものであることは自明である。
よって、出願前実施品1発明の「予め設定された手順及び強さでマッサージをするコースを備えたエアマッサージチェア」は、本件訂正発明1の「予め設定されているプログラムに従った手順及び強弱度で施療動作を順次実行する自動コース施療機能を備えたマッサージ機」に相当する。
(イ)出願前実施品1発明の「背もたれ部の首・肩、背中、背筋、腰部に配置されたエアーバッグ」と本件訂正発明1の「背もたれ部に設けられた施療子を有するマッサージ機構」は、背もたれ部に設けられたマッサージ機構の限りで一致する。
(ウ)上記ア(イ)、(ウ)の記載を踏まえると、甲13では、「強さボタン」を操作することにより、マッサージの強さを「強」から「弱」に切り替えることができ、「強さボタン」の操作後は、切り替えられた強さでマッサージが行われるから、コース中に操作することでマッサージ全体についての強さを一括して下げる方向にシフトさせているといえる。よって、出願前実施品1発明の「コース中のマッサージについての強さを「強」「弱」の2段階で切り替える強さボタン」は、本件訂正発明1の「自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチ」に相当する。
(エ)上記ア(ア)~(オ)の記載を踏まえると、コース中のマッサージの強さについて、「強」、「弱」の2段階が記載されているのみで、「上半身コース」等のコースにおいて、首・肩、背中等に配置されたエアーバッグで順番にマッサージする際、部位ごとに強さを変えることについては何ら特定されていない。
このため、出願前実施品1発明の「コースの途中で強さボタンを操作することにより、コース中のマッサージについての強さを「強」「弱」の2段階で切り替えることが可能である」ことと、本件訂正発明1の「自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではなく、自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能である」こととは、自動コース施療の途中でスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能であることの限りにおいて一致する。
したがって、本件訂正発明1と出願前実施品1発明とは以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「予め設定されているプログラムに従った手順及び強弱度で施療動作を順次実行する自動コース施療機能を備えたマッサージ機において、
マッサージ機は、
背もたれ部に設けられたマッサージ機構と、
自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチを備えており、
自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能である
マッサージ機。」
<相違点1>
背もたれ部に設けられたマッサージ機構について、本件訂正発明1では、マッサージ機構が「施療子を有」するのに対し、出願前実施品1発明では、首・肩、背中、背筋、腰部に配置されたエアーバッグである点。
<相違点2>
自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能である点について、本件訂正発明1では、「自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではな」いのに対し、出願前実施品1発明では、そのように特定されていない点。
以下、事案に鑑み、上記相違点1、2を合わせて検討する。
(ア)上記イの甲14記載事項のとおり、甲14には、マッサージ機が背もたれに施療子1を備えること、及び、施療方法に施療子の上昇又は下降を伴う動作が含むローリングマッサージが含まれ、個々の施療方法についての強弱位置が一律ではないコースマッサージが記載されている。
(イ)そこで、出願前実施品1発明に甲14記載事項を適用することについて検討する。
(a)甲14のコースマッサージは、ローリングマッサージ等、施療子を用いた施療方法を含むのに対し、出願前実施品1発明はマッサージ機構としてエアーバッグを備えたエアマッサージチェアであり、施療子を備えていない。
そして、出願前実施品1発明のエアーバッグに代えて甲14の施療子を用いた場合に、コース中の施療子の強、弱の切り替えが具体的にどのように実現するのか、不明である。
すなわち、マッサージ機の技術分野における技術常識を踏まえれば、出願前実施品1発明では、各エアーバッグへ空気を供給するエアーコンプレッサの出力を調整することで、コース中のマッサージ全体についての強さを一括してシフトさせている。他方、甲14のマッサージ機では、施療子の位置を変更して強弱を変更するものであるところ、出願前実施品1発明のエアーバッグに代えて甲14の施療子を用いた際に、どのようにコース中のマッサージ全体についての強さの一括シフトを実現できるのか明らかでない。
よって、出願前実施品1発明に甲14記載事項を適用することが当業者にとって容易であるとはいえない。
(b)また、上記イ(カ)のとおり、甲14のマッサージ機の「強く」及び「弱く」のスイッチSW2は、コースマッサージ中に強弱を変更するものではなく、スイッチ群SW1で選択された個別のマッサージ動作の強弱を変更するものに過ぎないから、出願前実施品1発明に甲14記載事項を適用して、施療機構としてエアーバッグに代えて甲14の施療子を設け、甲14のコースマッサージを設けても、コース中の施療方法に施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、コース中の個々の施療方法についての強弱位置が一律ではないコースマッサージが追加されるのみで、当該コースマッサージの途中でスイッチを操作することにより、コースマッサージ中の施療方法全体についての強弱位置を一括して下げる方向にシフトさせるものとはならない。
よって、仮に、出願前実施品1発明に甲14記載事項を適用できたとしても、相違点1、2に係る構成とはならない。
(c)(a)、(b)に加えて、出願前実施品1発明において、施療機構として甲14の施療子を採用した上で、甲14のコースマッサージを適用した場合に、コースマッサージの途中でスイッチを操作することにより、コースマッサージ中の施療方法全体についての強弱位置を一括して下げる又は上げる方向にシフトすることが可能であるよう構成することの容易想到性についてさらに検討する。
上記イ(ウ)~(オ)の記載を踏まえると、甲14のマッサージ機では、予めコースマッサージで行う施療方法の強弱位置のパラメータをテーブルに記憶保持しておき、当該テーブルから、対応する施療方法の強弱位置のパラメータを順に読み出し、当該読み出した強弱位置のパラメータに基づいて施療子の強弱位置を移動して施療方法を実行している。
このため、出願前実施品1発明において、施療機構として甲14の施療子を採用した上で、甲14のコースマッサージを適用し、予めテーブルに記憶保持された強弱位置のパラメータを順に読み出して当該パラメータに基づく強弱位置で順にコースマッサージを実行する場合において、コースマッサージの途中でスイッチを操作することにより、コースマッサージ中の施療方法全体についての強弱位置を一括して下げる又は上げる方向にシフトすることが可能であるよう構成するには、単に実行中の施療方法の強弱位置を変更するだけでは足りず、例えば、本件特許明細書の段落【0011】、【0012】、図面の図1、4に記載された、テーブルにコースマッサージで行う施療方法の通常時の強弱位置のパラメータに加えて、強弱位置を弱めた又は強めた場合の強弱位置のパラメータを予め記憶保持しておき、強弱位置を一括して下げる又は上げるスイッチの操作等により、テーブルから読み出す強弱位置のパラメータをコースの途中で前記強弱位置を弱めた又は強めた場合の強弱位置のパラメータに切り替え、当該強弱位置を弱めた又は強めた場合の強弱位置のパラメータを対応する時点以降のパラメータとして実行する構成またはこれに類する構成が必要となる。
しかし、甲13、14には、そのような構成について記載や示唆はない。また、当該構成及び当該構成に類する構成を採用することが、本件出願時の技術常識に照らして、自明であったとはいえない。
このため、出願前実施品1発明において、施療機構として甲14の施療子を採用した上で、甲14のコースマッサージを適用した場合において、当該コースマッサージの途中でスイッチを操作することにより、コースマッサージ中の施療方法全体についての強弱位置を一括して下げる又は上げる方向にシフトさせることが可能であるよう構成することは当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
以上のとおりであるから、出願前実施品1発明に甲14記載事項を適用して、上記相違点1、2に係る本件訂正発明1の事項とすることは当業者が容易になし得たことではない。
(d)さらに、出願前実施品1発明に、甲14記載事項を適用することには、以下の阻害要因がある。
すなわち、上記イ(ア)、(イ)の記載を踏まえると、甲14のマッサージ機は、「当初から強刺激が生じるもみマッサージを行うのではなく、軽い刺激から始め、その後、強い刺激が生じるマッサージに移り、最後は軽い刺激で終わるようにする」というマッサージを目的として、コースマッサージのタイミングに応じて予め設定された施療方法の強弱位置でマッサージを行うものである。これに対し、上記ア(イ)、(ウ)の記載を踏まえると、出願前実施品1発明のコースは、コースの途中でユーザの好みに合わせてマッサージの強さを調整するものである。仮に、出願前実施品1発明のコースとして甲14のコースマッサージを採用して、コースの途中で強さを調整可能とすると、コースマッサージの上記目的は達成されなくなる。
さらに、上記イ(イ)の表1の記載からすれば、甲14におけるコースマッサージの1つである上半身コースでは、始めの施療方法である「ローリング」や最後の施療方法である「ローリング」では、強弱位置が最も弱い「1」に設定されており、コースマッサージの途中で、強弱位置をこれ以上弱めることはできない。
したがって、出願前実施品1発明に、甲14記載事項を適用して、甲13のコースとして甲14のコースマッサージを採用して、コースの途中で強さを調整可能とすることには、阻害要因が存在する。
(ウ)また、上記ウ~キの記載を参照しても、甲15~甲19には、そもそも、本件訂正発明1の「予め設定されているプログラムに従った手順及び強弱度で施療動作を順次実行する自動コース施療機能」に関して記載されていない。
よって、出願前実施品1発明において、上記相違点1、2に係る本件訂正発明1の事項とすることは当業者が容易になし得たことではない。
以上を踏まえると、本件訂正発明1は、出願前実施品1発明及び甲14~甲19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ケ 本件訂正発明2と出願前実施品1発明の対比・判断
本件訂正発明2と出願前実施品1発明を対比する。
本件訂正発明2は、本件訂正発明1が自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチを備えているのに対し、強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチを備えているものであり、スイッチの操作による強弱度の変更方向が「下げる」と「上げる」で異なるだけである。
してみると、本件訂正発明2と出願前実施品1発明とは以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「予め設定されているプログラムに従った手順及び強弱度で施療動作を順次実行する自動コース施療機能を備えたマッサージ機において、
マッサージ機は、
背もたれ部に設けられたマッサージ機構と、
自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチを備えており、
自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能である
マッサージ機。」
<相違点3>
背もたれ部に設けられたマッサージ機構について、本件訂正発明2では、マッサージ機構が「施療子を有」するのに対し、出願前実施品1発明では、首・肩、背中、背筋、腰部に配置されたエアーバッグである点。
<相違点4>
自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能である点について、本件訂正発明2では、「自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではな」いのに対し、出願前実施品1発明では、そのように特定されていない点。
以下、事案に鑑み、上記相違点3、4を合わせて検討する。
(ア)相違点3は、相違点1と同一であり、相違点4は、上記クにおいて検討した相違点2と、スイッチの操作による強弱度の変更方向が「上げる」と「下げる」で異なるだけであるから、上記ク(イ)(a)~(c)と同様の理由により、出願前実施品1発明に甲14記載事項を適用して、上記相違点3、4に係る本件訂正発明2の事項とすることは当業者が容易になし得たことではない。
(イ)そして、上記ク(イ)(d)における検討に加えて、上記イ(イ)の表1の記載からすれば、甲14におけるコースマッサージの1つである上半身コースでは、始めの施療方法では、コースの途中で強弱位置が最も強い「Z」に設定されているから、コースマッサージの途中で、強弱位置をこれ以上強めることはできないから、出願前実施品1発明に甲14記載事項を適用することには、阻害要因が存在する。
(ウ)また、甲15~甲19には、上記相違点3、4に係る本件訂正発明2の事項は開示されていない。
よって、出願前実施品1発明において、上記相違点3、4に係る本件訂正発明2の事項とすることは当業者が容易になし得たことではない。
以上を踏まえると、本件訂正発明2は、出願前実施品1発明及び甲14~甲19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
コ 本件訂正発明3と出願前実施品1発明の対比・判断
本件訂正発明3と出願前実施品1発明を対比する。
本件訂正発明3は、本件訂正発明1が自動コース中の施療動作全体についての強弱度を下げる方向にシフトさせるスイッチを備えるのに対し、強弱度を下げる方向にシフトさせるスイッチと強弱度を上げる方向にシフトさせるスイッチの両方を備えるもので、スイッチの操作による強弱度の変更方向が下げるだけか、両方向かという点で異なるだけである。
してみると、本件訂正発明3と出願前実施品1発明とは以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「予め設定されているプログラムに従った手順及び強弱度で施療動作を順次実行する自動コース施療機能を備えたマッサージ機において、
マッサージ機は、
背もたれ部に設けられたマッサージ機構と、
自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチと、
自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチとを備えており、
自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作についての強弱度を下げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能であり、
自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作についての強弱度を上げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能である
マッサージ機。」
<相違点5>
背もたれ部に設けられたマッサージ機構について、本件訂正発明3では、マッサージ機構が「施療子を有」するのに対し、出願前実施品1発明では、首・肩、背中、背筋、腰部に配置されたエアーバッグである点。
<相違点6>
自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作についての強弱度を下げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能であり、自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作についての強弱度を上げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能である点について、本件訂正発明3では、「自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではな」いのに対し、出願前実施品1発明では、そのように特定されていない点。
以下、事案に鑑み、上記相違点5、6を合わせて検討する。
(ア)相違点5は、相違点1、3と同一であり、相違点6は、上記クにおいて検討した相違点2と上記ケにおいて検討した相違点4とを合わせたものである。
(イ)よって、上記ク及びケにおける検討と同様に、出願前実施品1発明に甲14記載事項を適用して、上記相違点5、6に係る本件訂正発明3の事項とすることは当業者が容易になし得たことではない。
(ウ)また、甲15~甲19には、上記相違点5、6に係る本件訂正発明3の事項は開示されていない。
したがって、出願前実施品1発明において、上記相違点5、6に係る本件訂正発明3の事項とすることは、当業者が容易になし得たものではない。
以上を踏まえると、本件訂正発明3は、出願前実施品1発明及び甲14~甲19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
サ 理由1についての小括
したがって、本件訂正発明1~3は、理由1によっては、独立特許要件を満たさないこととなるものではない。
(3)理由2(甲6発明(実願平3-113417号(実開平5-56131号)のCD-ROM)を主引用発明とした進歩性の欠如)
ア 甲6発明
本件特許の出願前である平成 5年 7月27日に公開された実願平3-113417号(実開平5-56131号)のCD-ROM(甲6)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は人体に対して刺激を与えることで施療を行うマッサージ機に関するものであり、特に押しボタン方式のスイッチが配列されたマイクロコンピュータ制御による操作器を備え、複数の施療手段と施療部位の組合せが選択できる機能を有したマッサージ機に関するものである。」
(イ)「【0007】
【実施例】
次に本考案を図示の実施例に基づいて詳述する。まず、構造上の点から説明すると、第1図は椅子の背部にマッサージ機構を組み込んだ椅子型マッサージ機の外観を示す。椅子本体は背部1、座部2、左右肘部3そして脚部4により構成され、クッション材を介し、外装布をカバーリングした背部1内部(第2図)には施療子6が組み込まれている。施療子6は背部1中央の上下方向に設置された送りネジ棒7上をその回転に伴い上下方向に移動するとともに、送りネジ棒7の回転駆動は背部1内下部に取り付けられた正反転可能なモータ8によってベルト駆動される。マッサージ動作は左肘3内部に設置された制御回路によって、モータ8の動作、即ち停止、正転、反転と、また、さすり、指圧、たたきの各動作切り換えを行うクラッチ機構を駆動するソレノイド9のオン、オフの組合せによって制御される。
【0008】
マッサージ手段の選択操作は、左肘3の操作パネル5により行う。第3図に於て操作パネル5上には、動作スイッチSW1、上端部で施療子を停止させ動作を停止する上部停止スイッチSW2、予めマイクロコンピュータにプログラムされている動作(自動コース)を行う自動コーススイッチSW3、SW4、SW5、指圧動作を行う指圧スイッチSW6、指圧と移動を繰り返す動作を行う移動指圧スイッチSW7、たたき動作を行うたたきスイッチSW8、たたきと移動を繰り返す動作を行う移動たたきスイッチSW9、さすり動作となるローリングを行うスイッチSW10、たたきとローリングで施療子の出代、即ち強弱を切り換える強/弱スイッチSW11、施療子の移動範囲をそれぞれ首肩、全身、腰に指定する施療部位切り替えスイッチSW12、SW13、SW14、移動範囲の上限(肩位置)を高低2段階に切り換える肩位置スイッチSW15、施療子の位置を上下方向に調節する位置調節スイッチSW16、SW17を備えている。また、施療手段と施療部位の選択スイッチには表示ランプが設置され、動作の状況が一目で分かるようになっている。
操作パネル上のスイッチSW1~SW17の状態は制御回路中のマイクロコンピュータに送られ、マイクロコンピュータはモータの動作、即ち、正転、反転、停止とソレノイドのオン、オフとの組合せを制御して操作パネル上に表示された動作を行わせる。
【0009】
第4図に於て最初の施療開始時、即ち電源コードをコンセントに差込み操作パネル上の動作スイッチSW1を入れた時には、マイクロコンピュータに予め設定されている施療手段がローリングそして施療部位が全身という組合せの施療条件で施療を開始する。施療条件を変える場合には、使用者は自分の希望する施療条件を操作パネル上のスイッチを押すことにより設定する。操作パネル上の状態は常にマイクロコンピュータに送られているので、スイッチの組合せが変更されるとマイクロコンピュータは、その施療条件を満たす動作を制御回路中のモータ、ソレノイドによりドライブ回路を介して行わせる。
施療終了時には、動作スイッチを切ると操作パネル上のランプが消え、モータとソレノイドの動作は停止するが、制御回路には電源回路より常に電圧が供給されており、マイクロコンピュータは施療終了時に行っていた施療条件を記憶保持した状態で待機する。
そして再び施療開始する時には、動作スイッチSW1を押すとマイクロコンピュータが記憶している前回使用時の施療条件を読み出し、操作パネル上のスイッチサイドにあるランプを点灯させ、同時にモータとソレノイドの動作を指令し、自動的に施療状態に入る。その後、他の施療動作に切り換えても動作スイッチSW1を切った時点でマイクロコンピュータはその時の操作パネル上の各機能の組合せを記憶保持しており、再び動作スイッチSW1を入れることで前回終了時の施療条件を再現することができる。即ち、動作スイッチSW1を切った時と同じ施療手段と施療部位が実行される。これらの動作の流れは第5図に示している通りである。」
(ウ)【図2】「
[図:0001434054000016.jpg]
」
(エ)【図3】「
[図:0001434054000017.jpg]
」
(オ)(イ)の段落【0008】、【0009】の記載、(エ)の【図3】における「強/弱スイッチSW11」の配置を踏まえると、強/弱スイッチSW11は、スイッチSW3~5を押すと実行される自動コースではなく、スイッチSW8~10を押すと実行される個別の施術動作である「たたき」、「移動たたき」、「ローリング」における強弱を切り換えるもので、「たたき」、「ローリング」の施療動作中に、強/弱スイッチSW11を押すことで、個別の施術動作の強弱を切り換えることが可能であると認められる。
なお、(イ)の段落【0009】の記載を踏まえれば、動作スイッチSW1を押したときの動作は、前回施療時の施療条件(施療手段及び施療部位の組み合わせ)という1個の施療動作を再現するものに過ぎず、強弱度が一律でない個々の施療動作を含む自動コースに相当するものではない。
上記事項より、甲6には、次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されている。
「予めマイクロコンピュータにプログラムされている自動コースを備えた椅子型マッサージ機において、
椅子型マッサージ機は、
背部1内部に組み込まれた施療子6と、
個別の施術動作であるたたきとローリングで施療子6の強弱を切り替える強/弱スイッチSW11とを備え、
施療子6は背部1中央の上下方向に設置された送りネジ棒7上をその回転に伴い上下方向に移動し、
たたき又はローリングの施療動作中に強/弱スイッチSW1を押すことで、個別の施術動作の強弱を切り換えることが可能である
椅子型マッサージ機。」
イ 本件訂正発明1と甲6発明の対比
本件訂正発明1と甲6発明を対比する。
(ア)甲6発明の「自動コース」は、予めマイクロコンピュータにプログラムされているから、予め設定されているプログラムに従った手順及び強弱度で施療動作を行うことは自明である。そうすると、甲6発明の「予めマイクロコンピュータにプログラムされている自動コース」は、本件訂正発明1の「予め設定されているプログラムに従った手順及び強弱度で施療動作を順次実行する自動コース施療機能」に相当する。また、甲6発明の「椅子型マッサージ機」は本件訂正発明1の「マッサージ機」に相当し、甲6発明の「背部1内部に組み込まれた施療子6」は、本件訂正発明1の「背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構」に相当する。
(イ)また、甲6発明の「施療子6」は「背部1中央の上下方向に設置された送りネジ棒7上をその回転に伴い上下方向に移動」し、上記ア(イ)の記載を踏まえると、個別の施療動作に施療子6の上下方向の移動を伴う「移動指圧」、「移動たたき」、「ローリング」がある。ただし、「自動コース」中の個々の施療動作に「施療子6」の上下方向の移動を伴う施療動作を含めることは可能であるものの、必ず含むものであるとまではいえいない。
(ウ)さらに、甲6発明では、「自動コース」中の個々の施療動作について「強弱」が一律かどうか甲6に記載されていない。このほか、個別の施療動作である「たたき」または「ローリング」の施療動作中に、「強/弱スイッチSW1」を押すことで、強弱を切り換えることが可能であるものの、「自動コース」中の強弱の切り換えについては甲6に記載されていない。
したがって、本件訂正発明1と甲6発明とは以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「予め設定されているプログラムに従った手順及び強弱度で施療動作を順次実行する自動コース施療機能を備えたマッサージ機において、
前記マッサージ機は、
背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構を備えている
マッサージ機。」
<相違点7>
本件訂正発明1では、「自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチを備えており、自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではなく、自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能である」のに対し、甲6発明では、個別の施術動作であるたたきとローリングで施療子6の強弱を切り替える強/弱スイッチSW11を備え、個別の施療動作の強弱を切り換えることが可能である点。
以下、上記相違点7について検討する。
上記(2)イの甲14記載事項のとおり、甲14には、コースマッサージ中の施療方法には施療子の上昇又は下降を伴うローリングマッサージが含まれ、コースマッサージ中の各施療方法についての強弱位置が一律ではないコースマッサージが記載されている。
しかしながら、上記(2)ク(イ)(b)で検討したとおり、甲14のコースマッサージは、コースマッサージの途中で、コースマッサージ中の施療方法全体の強弱位置を一括して下げる方向にシフトさせるものではない。
したがって、甲6発明に甲14記載事項を適用しても、上記相違点7に係る本件訂正発明1の事項にはならない。
また、上記(2)ク(イ)(c)の検討と同様の理由により、甲6発明に、甲14のコースマッサージを適用し、当該コースマッサージの途中でスイッチを操作することにより、コースマッサージ中の個々の施療動作の強弱を一括して下げる又は上げる方向にシフトすることが可能であるよう構成することは当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
よって、甲6発明において、上記相違点7に係る本件訂正発明1の事項とすることは当業者が容易になし得たことではない。
以上を踏まえると、本件訂正発明1は、甲6発明及び甲14に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件訂正発明2と甲6発明の対比・判断
本件訂正発明2と甲6発明を対比する。
本件訂正発明2は、本件訂正発明1と上記(2)ケのとおりである。してみると、本件訂正発明2と甲6発明とは以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「予め設定されているプログラムに従った手順及び強弱度で施療動作を順次実行する自動コース施療機能を備えたマッサージ機において、
前記マッサージ機は、
背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構を備えている
マッサージ機。」
<相違点8>
本件訂正発明2では、「自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチを備えており、自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではなく、自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能である」のに対し、甲6発明では、個別の施術動作であるたたきとローリングで施療子6の強弱を切り替える強/弱スイッチSW11を備え、強/弱スイッチSW11は個別の施療動作の強弱を切り換えることが可能である点。
以下、上記相違点8について検討する。
相違点8は、上記イにおいて検討した相違点7と、スイッチの操作による強弱度の変更方向が「上げる」と「下げる」で異なるだけである。
そして、上記(2)ケ(イ)で検討したとおり、甲14のコースマッサージは、コースマッサージの途中で、コースマッサージ中の施療方法全体の強弱位置を一括して上げる方向にシフトさせるものではない。
したがって、甲6発明に甲14記載事項を適用しても、上記相違点8に係る本件訂正発明2の事項にはならない。
よって、甲6発明において、上記相違点8に係る本件訂正発明2の事項とすることは当業者が容易になし得たことではない。
以上を踏まえると、本件訂正発明2は、甲6発明及び甲14に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件訂正発明3と甲6発明の対比・判断
本件訂正発明3と甲6発明を対比する。
本件訂正発明3は、本件訂正発明1と上記(2)コのとおりである。してみると、本件訂正発明3と甲6発明とは以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「予め設定されているプログラムに従った手順及び強弱度で施療動作を順次実行する自動コース施療機能を備えたマッサージ機において、
前記マッサージ機は、
背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構を備えている
マッサージ機。」
<相違点9>
本件訂正発明3では、「自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチと、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチとを備えており、自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではなく、自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能であり、自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能である」のに対し、甲6発明では、自動コースではなく個別の施術動作であるたたきとローリングで施療子6の強弱を切り替える強/弱スイッチSW11を備え、強/弱スイッチSW11は個別の施療動作の強弱を切り換えることが可能である点。
以下、上記相違点9について検討する。
相違点9は、上記イにおいて検討した相違点7と上記ウにおいて検討した相違点8を合わせたものである。
そして、上記イ及びウにおける検討と同様に、甲6発明に甲14記載事項を適用しても、相違点9に係る本件訂正発明3の事項にはならない。
よって、甲6発明において、上記相違点9に係る本件訂正発明3の事項とすることは当業者が容易になし得たことではない。
以上を踏まえると、本件訂正発明3は、甲6発明及び甲14に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 理由2についての小括
したがって、本件訂正発明1~3は、理由2によっては、独立特許要件を満たさないこととなるものではない。
(4)理由3(出願前実施品2発明(FCX-100型)に基づく新規性の欠如)
ア 出願前実施品2発明
甲22、甲23によれば、昭和63年に、販売名に「FCX-100型」、「押太郎」を含む家庭用電気マッサージ器の医類用具製造の承認の申請、当該申請に対する承認がなされており、甲24に、1988年(昭和63年)に「押太郎」が発売された旨の記載があることから、FCX-100型(品名:ファミリー指圧ローラー 押太郎)は、遅くとも本件特許の出願前には販売されていた事実を認めることができる。そして、FCX-100型の取扱説明書(甲21)には、次の事項が記載されている。
(ア)第1頁(本機の特長)「
[図:0001434054000018.jpg]
」
(イ)第2頁(各部の名称)「
[図:0001434054000019.jpg]
」
(ウ)第4頁(操作器各部の名称)「
[図:0001434054000020.jpg]
」
(エ)第5頁(操作器の使用方法)「
[図:0001434054000021.jpg]
」
(オ)第6頁(指圧・ローリング各コースの強さ調整)「
[図:0001434054000022.jpg]
」
(カ)第9頁(全身ローラー・部分ローラー・指圧・自動指圧)「
[図:0001434054000023.jpg]
」
(キ)(ア)の「本機の特長」、(エ)の「自動指圧」、(カ)の「自動指圧」の記載を踏まえると、マッサージ機は、マイコンによって腰から首までの間を所定の間隔で指圧する自動指圧を機能として備える。
また、(イ)の「各部の名称」、(エ)の「操作器の使用方法」の記載を踏まえると、マッサージ機は、背もたれに指圧やローリングなどの施療を行うローラーを備えている。
(ウ)の「操作器各部の名称」、(エ)の「自動指圧」、(オ)の「指圧・ローリング各コースの強さ調整」の記載を踏まえると、マッサージ機は、自動指圧の強さを弱と強の2段階で切り替える強さスイッチを備えており、自動指圧の途中で強さスイッチを操作することにより、指圧の強さを切り替えることが可能である。
そして、(ア)の「本機の特長」、(エ)の「自動指圧」、(カ)の「指圧」の記載を踏まえると、自動指圧中、ローラーは腰から首までの間を、指圧を繰り返しながら移動し、各指圧では3段階の強さで指圧(3段押し)を行う。
上記事項より、本件特許の出願前にFCX-100型として実施された発明(以下「出願前実施品2発明」という。)は、次のとおりである。
「マイコンによって腰から首までの間を所定の間隔で指圧する自動指圧を備えたマッサージ機において、
マッサージ機は、
背もたれに設けられたローラーと、
自動指圧の強さを弱と強の2段階で切り替える強さスイッチを備えており、
自動指圧中、ローラーが腰から首までの間を、指圧を繰り返しながら移動し、各指圧では3段階の強さで指圧を行い、
自動指圧の途中で強さスイッチを操作することにより、指圧の強さを切り替えることが可能である
マッサージ機。」
イ 本件訂正発明1と出願前実施品2発明の対比・判断
本件訂正発明1と出願前実施品2発明を対比する。
(ア)出願前実施品2発明における「マイコンによって腰から首までの間を所定の間隔で3段押しにより指圧する「自動指圧」は、予め設定された手順及び強弱度で施療動作を順次実行するものであり、マイコンにおいてプログラムされていることは自明であるから、本件訂正発明1の「予め設定されているプログラムに従った手順及び強弱度で施療動作を順次実行する自動コース施療機能」に相当する。
(イ)出願前実施品2発明の「背もたれ」及び「ローラー」は、それぞれ本件訂正発明1の「背もたれ部」及び「施療子」に相当し、出願前実施品2発明における「背もたれに設けられたローラー」は、本件訂正発明1の「背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構」に相当する。
また、出願前実施品2発明における「自動指圧の強さを弱と強の2段階で切り替える強さスイッチ」は、本件訂正発明1の「自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチ」に相当する。
(ウ)上記ア(エ)及び(カ)の記載を踏まえると、「自動指圧」における施療動作である「指圧」は、「一点を集中的に刺激」するものであるから、ローラーの上昇又は下降を伴う動作ではない。
また、上記ア(ア)及び(カ)の記載を踏まえると、自動指圧における施療動作である「指圧」では3段階で強さが変化するものの、各「指圧」間で強さのパターンに違いはないから、個々の「指圧」の強さは一律である。
このため、出願前実施品2発明の「自動指圧の途中で強さスイッチを操作することにより、指圧の強さを切り替えることが可能である」ことと、本件訂正発明1の「自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではなく、自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能である」こととは、自動コース施療の途中でスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能であることの限りにおいて一致する。
したがって、本件訂正発明1と出願前実施品2発明とは以下の一致点と相違点を有する。
<一致点>
「予め設定されているプログラムに従った手順及び強弱度で施療動作を順次実行する自動コース施療機能を備えたマッサージ機において、
マッサージ機は、
背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構と、
自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチを備えており、
自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能である
マッサージ機。」
<相違点10>
自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能である点に関し、本件訂正発明1では、「自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではな」いのに対し、出願前実施品2発明では、自動指圧中の指圧には、施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれず、自動コース中の個々の指圧についての強弱度は一律である点。
以上のとおり、本件訂正発明1と出願前実施品2発明は相違点10を有する。したがって、本件訂正発明1は、出願前実施品2発明ではない。
なお、上記相違点10について、出願前実施品2発明及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるかどうかについて、念のため以下検討する。
上記(2)イの甲14記載事項のとおり、甲14には、コースマッサージ中の施療方法には施療子の上昇又は下降を伴うローリングマッサージが含まれ、コースマッサージ中の各施療方法についての強弱位置が一律ではないコースマッサージが記載されている。
しかしながら、上記(2)ク(イ)(b)、(c)、(d)において検討したのと同様の理由で、出願前実施品2発明に甲14記載事項を適用して、上記相違点10に係る本件訂正発明1の事項とすることは当業者が容易になし得たことではない。
以上を踏まえると、本件訂正発明1は、出願前実施品2発明及び甲14に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件訂正発明2と出願前実施品2発明の対比・判断
本件訂正発明2と出願前実施品2発明を対比する。
本件訂正発明2は、本件訂正発明1と上記(2)ケのとおりである。してみると、本件訂正発明2と出願前実施品2発明とは以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「予め設定されているプログラムに従った手順及び強弱度で施療動作を順次実行する自動コース施療機能を備えたマッサージ機において、
前記マッサージ機は、
背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構と、
自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチを備えており、
自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能である
マッサージ機。」
<相違点11>
自動コース施療の途中で前記スイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能である点に関し、本件訂正発明2では、「自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではな」いのに対し、出願前実施品2発明では、自動指圧中の指圧には、施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれず、自動コース中の個々の指圧についての強弱度は一律である点。
以上のとおり、本件訂正発明2と出願前実施品2発明は相違点11を有する。したがって、本件訂正発明2は、出願前実施品2発明ではない。
なお、上記(2)ケにおいて検討したのと同様の理由で、出願前実施品2発明に甲14記載事項を適用して、上記相違点11に係る本件訂正発明2の事項とすることは当業者が容易になし得たことではない。
以上を踏まえると、本件訂正発明2は、出願前実施品2発明及び甲14に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件訂正発明3と出願前実施品2発明の対比・判断
本件訂正発明3と出願前実施品2発明を対比する。
本件訂正発明3は、本件訂正発明1と上記(2)コのとおりである。してみると、本件訂正発明3と出願前実施品2発明とは以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「予め設定されているプログラムに従った手順及び強弱度で施療動作を順次実行する自動コース施療機能を備えたマッサージ機において、
前記マッサージ機は、
背もたれ部に設けられて施療子を有するマッサージ機構と、
自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせるスイッチと、
自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせるスイッチとを備えており、
自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作についての強弱度を下げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能であり、
自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作についての強弱度を上げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能である
マッサージ機。」
<相違点12>
自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作についての強弱度を下げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して下げる方向にシフトさせることが可能であり、自動コース施療の途中で前記自動コース中の施療動作についての強弱度を上げる方向にシフトさせるスイッチを操作することにより、自動コース中の施療動作全体についての強弱度を一括して上げる方向にシフトさせることが可能である点について、本件訂正発明3では、「自動コース中の施療動作には前記施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれ、自動コース中の個々の施療動作についての強弱度は一律ではな」いのに対し、出願前実施品2発明では、自動指圧中の指圧には、施療子の上昇又は下降を伴う動作が含まれず、自動コース中の個々の指圧についての強弱度は一律である点。
以上のとおり、本件訂正発明3と出願前実施品2発明は相違点12を有する。したがって、本件訂正発明3は、出願前実施品2発明ではない。
なお、上記イ及びウにおける検討と同様に、出願前実施品2発明に甲14記載事項を適用して、上記相違点11に係る本件訂正発明2の事項とすることは当業者が容易になし得たことではない。
以上を踏まえると、本件訂正発明2は、出願前実施品2発明及び甲14に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 理由3についての小括
したがって、本件訂正発明1~3は、理由3によっては、独立特許要件を満たさないこととなるものではない。
(5)小括
上記のとおりであるから、本件訂正発明1~3が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は発見しない。
したがって、訂正事項1~3は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
第4 むすび
以上のとおり、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-390011