特許拒絶査定不服審判
2025-001625
異常解析システム、異常解析方法及びプログラム
- 審判番号
- 2025-001625
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-190634外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2025年02月03日
- 審決日
- 2026年01月26日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】オングリットホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人ソシデア知的財産事務所
- 分類
- P18 .121-Z (G06Q) / P18 .575-Z (G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-190634「異常解析システム、異常解析方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 7年 5月20日出願公開、特開2025- 78217〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」という。)は、令和5年11月8日の出願であって、令和6年1月24日付けの拒絶理由の通知がなされ、同年5月7日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年6月3日付けの拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知がなされ、同年10月29日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して令和7年2月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2 令和7年2月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年2月3日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである(下線部は、補正箇所である。)。
「 【請求項1】
構造物の打音検査を行う形状がハンドガンタイプである叩打装置と、当該叩打装置と通信可能に接続されたコンピュータとから構成される異常解析システムであって、
前記叩打装置は、
自身に設けられたスイッチの操作が行われた際、一定の力量で、前記構造物を叩打する叩打部と、
前記構造物を叩打した際の振動データを取得する取得部と、
取得した前記振動データを、前記コンピュータに送信する送信部と、
を備え、
前記コンピュータは、
前記振動データを受信する受信部と、
受信した前記振動データに基づいて、前記構造物に発生している、うき、剥離等の異常の具体的内容を解析する解析部と、
前記構造物の解析結果を表示する表示部と、
を備え、
前記表示部は、前記解析結果として、異常が発生していない場合、異常が発生していないことを示す正常通知を表示し、異常が発生している場合、異常が発生していることを示す異常通知を表示する、
異常解析システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和6年5月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 【請求項1】
構造物の打音検査を行う叩打装置と、当該叩打装置と通信可能に接続されたコンピュータとから構成される異常解析システムであって、
前記叩打装置は、
一定の力量で、前記構造物を叩打する叩打部と、
前記構造物を叩打した際の振動データを取得する取得部と、
取得した前記振動データを、前記コンピュータに送信する送信部と、
を備え、
前記コンピュータは、
前記振動データを受信する受信部と、
受信した前記振動データに基づいて、前記構造物に発生している、うき、剥離等の異常の具体的内容を解析する解析部と、
前記構造物の解析結果を表示する表示部と、
を備え、
前記表示部は、前記解析結果として、異常が発生していない場合、異常が発生していないことを示す正常通知を表示し、異常が発生している場合、異常が発生していることを示す異常通知を表示する、
異常解析システム。」
2 補正の適否
上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「構造物の打音検査を行う叩打装置」について、「形状がハンドガンタイプである」叩打装置に限定し、また、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「一定の力量で、前記構造物を叩打する叩打部」について、「自身に設けられたスイッチの操作が行われた際、」に叩打すると限定したものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献等
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった文献である「特開昭60-211360号公報」(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。以下、同様)。
(ア)第2頁右上欄第6行~左下欄第16行
「第1図は本発明を実施した剥離検知装置の斜視図であり、建築物Bの壁面Wに添着したタイルTの剥離の程度を検知しようとしている所が示されている。
全体を符号1で示す吊下げ移動部は建築物Bの屋上に形成されているパラペットPの両側部と係合して固定されてる複数の固定金具2と、それらの複数の固定金具2上に固定されてパラペットPの上部を延びるガイドレール3と、そのガイドレール3上を走行する車輪4および係合部5を有し全体的にコ字状に形成された吊下げユニット6とを備えている。この吊下げユニット6の壁面W側には下方に延びる一対のロッド7、7が固着されており、そしてこのロッド7、7にはそれぞれパラペットPの側面と係合する案内車輪8、8が回転自在に設けられ、かつその下端にはそれぞれパラペットPの下側を壁面Wの方に延びる一対のアーム9、9が水平面内を回動自在に設けられている。これらの各アーム9、9の壁面W側の端部にはそれぞれプーリ10、10が設けられ、これらのプーリ10、10にはガイドワイヤ11、11がそれぞれ巻回されている。
これらのガイドワイヤ11、11には全体を符号12で示す打撃部が取付けられていると共に、ワイヤ11、11の下端には駆動部13が設けられ、したがって駆動部13に設けた図示しないモータを作動することによってガイドワイヤ11は移動し、ガイドワイヤ11の移動によって打撃部12は上下動するようになっている。そして打撃部12は前述の如く壁面Wに沿って上下するので、適数の案内ローラ14を有している。」
(イ)第2頁左下欄第17行~右下欄第16行
「第1a図に示すように、打撃部12には打撃ユニットUが設けられている。この打撃ユニットUは打撃部12のほぼ中央部を横方向に延びる案内ロッド15と、その案内ロッド15に沿って図示しないモータで図面の左右方向に移動する移動部16と、この移動部16に設けられた打撃ハンマ17と、その打撃ハンマ17の先端に設けられた荷重検出器18と、その打撃ハンマ17でタイルTを打撃したときの打撃音を検知するマイクロフォン19とを備えている。
したがって打撃部12の上下移動と、移動部16の左右移動とによって打撃ハンマ17は壁面Wを面状に検査することができる。上記の駆動部13および移動部16の移動指令や荷重検出器18およびマイクロフォン19からの信号は制御部20に送受される。すなわち制御部20は制御盤21を備え、各種の作動は操作盤22で行われる。そして制御部20にはデータ処理を行うためにモニタ23、フロッピーディスク24、プリンタ25およびホストコンピュータ26を備えている。」
(ウ)第2頁右下欄第17行~第3頁左上欄末行
「第2図は本発明を実施したブロック図を示し、第2図において第1図と対応する部品は同じ符号を付して示しである。
建築物BのパラペットPに移動自在に設けた吊下げユニット6は前述の如く横移動自在であるが、説明を解り易くするために、壁面Wの検査範囲は第1図において一対のワイヤ11、11の間の範囲内であるものとし、したがって吊下げユニット6は固定さているものとする。
制御部20からの移動指令信号によって所定位置に打撃部12が移動し、移動体16が所定位置に移動する。すると打撃位置検出器30が打撃ハンマ17の打撃位置(X、Y)を検出してホストコンピュータ26にその座標信号を送る。他方打撃ハンマ17の打撃作動により荷重検出器18は荷重すなわち打撃力を、またマイクロフォン19はその打撃音を剥離判定部31に送る。この剥離判定部は後述の態様で剥離部の大きさ、深さを判定するものであり、その判定信号はホストコンピュータ26に送られる。このようにしてワイヤ11、11の間の各位置(各座標)の判定結果がホストコンピュータ26に記憶され、その結果はフロッピーディスク24に格納され、モニタ23に表示され、またプリンタ25で印字される。」
(エ)第3頁左下欄第9行~右下欄第17行
「次に第8図を参照して本発明の作動について説明する。
まず、剥離しているか否かの測定に際し、前述の如く打撃ハンマ17でタイルTを打撃する(プロセスP1)。すると荷重検出器18からの出力により第3図に示す打撃データD1と、マイクロフォン19からの出力により第4図に示す振動データD2および第5図、第6図に示す周波数別データD3が得られる。剥離判定部31はこれらのデータD1~D3から打撃力の最大値F0との振幅の最大値T0とピーク音S1とその周波数F1とを採取する(プロセスP2)。また例えば第7図に示す健全部のデータD4が前記データD3と比較され(プロセスP3)、周波数別の音のうち最大の差S2およびそのときの周波数F2が採取される(プロセスP4)。そして剥離判定部31は実験データに基づいて、これらの値F0、T0、S1、F1、S2、F2から健全であるか剥離であるかを判定する(プロセスP5)。健全な場合はその旨を出力し、ホストコンピュータ26に記憶し、印字する(プロレスP6)。剥離と判定された場合はホストコンピュータ26は各種の前述した実験値に基づいて剥離の程度を判断する(プロセスP7)。そしてこの値は記憶され、モニタ23に示され、またプリンター25により印字される(プロセスP8)。次いで作動が終ったか否かを判断し(プロセスP9)、Noの場合はプロセスP1に戻る。YESの場合は終了し、次の作業に移る。」
(オ)第3頁右下欄第18行~第4頁左上欄第6行
「第9図は第8図に関して説明した態様で建築物Bの全壁面Wを判定した結果をモニタ23に表示した一例である。図中ハッチチングした部分Zは剥離と判定された部分である。したがってこの部分Zを補修すればよい。その剥離の深さを印字データから知ることができる。
以上の如く、本発明によれば、壁面の剥離の検知に際して剥離の程度および位置を知り得るので補修工事が極めて容易となる。」
(カ)第1図
「
[図:0001433859000001.jpg]
」
(キ)第1a図
「
[図:0001433859000002.jpg]
」
(ク)第2図
「
[図:0001433859000003.jpg]
」
(ケ)第8図
「
[図:0001433859000004.jpg]
」
(コ)第9図
「
[図:0001433859000005.jpg]
」
イ 引用文献1に記載された発明
上記アの記載事項及び図面から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(ここで、各構成単位末尾の括弧内には、主たる認定根拠とした記載箇所を示す。)。
「建築物Bの壁面Wに添着したタイルTの剥離の程度を検知する剥離検知装置であって、(上記(ア))
打撃ユニットUは、打撃ハンマ17と、その打撃ハンマ17の先端に設けられた荷重検出器18と、その打撃ハンマ17でタイルTを打撃したときの打撃音を検知するマイクロフォン19とを備え、(上記(イ))
荷重検出器18およびマイクロフォン19からの信号は制御部20に送受され、すなわち制御部20は制御盤21を備え、各種の作動は操作盤22で行われ、そして制御部20にはデータ処理を行うためにモニタ23、フロッピーディスク24、プリンタ25およびホストコンピュータ26を備え、(上記(イ))
打撃位置検出器30が打撃ハンマ17の打撃位置(X、Y)を検出してホストコンピュータ26にその座標信号を送り、他方打撃ハンマ17の打撃作動により荷重検出器18は荷重すなわち打撃力を、またマイクロフォン19はその打撃音を剥離判定部31に送り、この剥離判定部は剥離部の大きさ、深さを判定するものであり、その判定信号はホストコンピュータ26に送られ、このようにして各位置(各座標)の判定結果がホストコンピュータ26に記憶され、その結果はフロッピーディスク24に格納され、モニタ23に表示され、またプリンタ25で印字され、(上記(ウ))
まず、剥離しているか否かの測定に際し、打撃ハンマ17でタイルTを打撃し(プロセスP1)、すると荷重検出器18からの出力により打撃データD1と、マイクロフォン19からの出力により振動データD2および周波数別データD3が得られ、剥離判定部31はこれらのデータD1~D3から打撃力の最大値F0との振幅の最大値T0とピーク音S1とその周波数F1とを採取し(プロセスP2)。また健全部のデータD4が前記データD3と比較され(プロセスP3)、周波数別の音のうち最大の差S2およびそのときの周波数F2が採取され(プロセスP4)、そして剥離判定部31はこれらの値F0、T0、S1、F1、S2、F2から健全であるか剥離であるかを判定し(プロセスP5)、健全な場合はその旨を出力し、ホストコンピュータ26に記憶し、印字し(プロレスP6)、剥離と判定された場合はホストコンピュータ26は剥離の程度を判断し(プロセスP7)、そしてこの値は記憶され、モニタ23に示され、またプリンタ25により印字される(プロセスP8)、(上記(エ))
剥離検知装置。」
ウ 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった文献である「特開昭60-212569号公報」(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)第2頁左上欄第1行~第7行
「本発明は扇形往復動式の打撃装置の前記欠点を解消すべくなされたもので、その目的とするところは常に設定通りの打撃力でもって正確に打撃することができ、また打撃力を容易に調整することができ、かつ機械的にも比較的簡単であって故障が少くしかも取扱いやすい壁面タイル等の剥離検知器における打撃装置を提供するにある。」
(イ)第4頁左上欄第16行~左下欄第13行
「打撃ストローク調整器30により打撃ストロークを予めセットしておき、屋上より吊下げられたゴンドラに乗った作業員はグリップ42を操作して部分歯車13(第1図)を回転させる。すると部分歯車13と噛合っているラック12(第1図)を介してハンマ25が壁面タイルAから離れる方向に移動しその時押付けバネ27は圧縮される。そして打撃ストローク調整器30の係止爪33をハンマ25の係合用ナット29に係合させることによりハンマ25は所定のストローク位置に係止される。部分歯車13をさらに回転することにより部分歯車13は歯のない位置にきてハンマ25の強制移動力は解除される。しかしバネ35により図面において時計方向に回動付勢されている係止爪33によりハンマ25の壁面タイルA方向への動きは阻止されるのでハンマ25は飛び出さない。そこで打撃ストローク調整器30の打撃スタートレバー32により係止爪33をバネ35のバネ力に抗して反時計方向に回動させると、係止爪33がハンマ25の係止爪33がハンマ25の係止用ナット29から離れ押付けバネ27の復元力によりハンマ25が壁面タイルAに向って飛び出し壁面タイルAを打撃する。その打撃音をマイクロホン47で受音し、打撃音解析装置で解析して壁面タイルAの付着状態を診断する。壁面タイルAの打撃を終えたハンマ25は戻りバネ28の復元力により押付けバネ27と戻りバネ28のバネ力がバランスした位置に自動的に戻される。次いで打撃装置を壁面タイルに沿って所定の距離移動させ前記操作を行って順次壁面タイル全面のタイル付着状態を検査して行く。
以上説明したように本発明に係る打撃装置においては、ハンマはケースにガイドされてスライドするものであるので、扇形往復動するレバーにバネを介して打撃球を取付けたものに比べ常に設定された打撃力でもって壁面タイルを打撃することができてより正確に壁面タイルの付着状態を検査することができ、また打撃ストロークも容易に変更することができる。」
(ウ)第4図
「
[図:0001433859000006.jpg]
」
エ 引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった文献である「特開2012-198133号公報」(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、コンクリート柱のひび割れや鉄筋破断などの劣化状態を打撃固有振動解析によって点検診断する技術において、コンクリート柱を加振させる打撃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にコンクリート構造物の表面を打撃し、コンクリート構造物を加振させる装置としてはインパルスハンマーが用いられている。小型のハンマーでコンクリート表面を打撃することによって得られる反発度からコンクリート強度推定値、劣化度合い、表面近傍の剥離・浮きを検知することができる。
・・・
【0007】
コンクリート柱を加振させるためには、打撃者はゴムハンマーを用いて打撃することになるが、打撃固有振動解析を実施するうえで複数回(数十回)の打撃が必要である。そのため、打撃者が疲労するという課題がある。また、コンクリート柱の打撃面は曲面であることから、打撃者自身によるハンマー打撃の方向や加重が不均一になりやすく、有効な振動データが収録できない場合がある。」
(イ)「【0020】
カム型ギア12は、図4に示すように、形状がカム型となっていることから所定の回転位置まで約一回転すると、伸縮ガイド9に設けられたラックギア(直線状ギア)との連結が解放される構造になっている。なお、それぞれのギアは、共にそれぞれが連動する上で、ギア比を変換できるように複数のギアを付属することができる構造になっており、ギア比の調整においては、探触子5が移動する長さと伸縮ガイド9の移動する長さ、つまり、バネ7が縮む長さとの調整によって、筺体8がコンクリート柱14の表面に接触する前までにハンマー打撃を実施する筺体8とコンクリート柱14の表面との間隔と、ハンマー打撃の衝撃力、つまり、バネ7の付勢力(反力)の大きさを調整することができる構造になっている。
・・・
【0022】
図6は、本発明の打撃装置による打撃操作を説明する図である。打撃者は、一方の手でハンドル部3を握り、他方の手を押し当て部4に添えて、探触子5の先端をコンクリート柱14の表面に接触させた状態から、装置本体1をコンクリート柱に押し当てる。探触子5が装置筺体内へ移動すると、ギア11と連動してカム型ギア12が回転し、カム型ギア12が所定の位置まで回転すると、バネ7の圧縮が解放されて、ハンマー6が、コンクリート柱14の表面を打撃することになる。図6(a)は、装置本体1をコンクリート柱14に押し当てているときの状態を示しており、図6(b)は、打撃後の状態を示している。
・・・
【0025】
上述したように、本発明の加振装置は、装置本体をコンクリート柱に押し当てるだけでコンクリート柱を打撃することができるため、打撃者の疲労を軽減でき、また、打撃の力と方向を安定させることができるため、より精度の高い振動データを取得することができる。また、本発明によれば、打撃力の調整をバネ力やハンマーの重量などで実施でき、片手操作ができる程度まで装置の小型・軽量化が可能となる。」
(ウ)図3
「
[図:0001433859000007.jpg]
」
(エ)図5
「
[図:0001433859000008.jpg]
」
オ 引用文献6の記載事項
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった文献である「実願昭60-124455号(実開昭62-32362号のマイクロフィルム)」(以下「引用文献6」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)第1頁第19行~第2頁第6行
「本考案は、コンクリート壁の内装用仕上げ壁や間仕切り壁のように、木軸下地に石膏ボード、化粧合板等の壁板やクロス等の内装用仕上げ材を貼着してなる壁における木軸下地の探査、仕上げ材を兼ねる型枠の内側に打設されたコンクリートの空洞部の探査、外壁面の仕上げ材であるタイルの剥離個所(タイル裏面の空洞部)の探査等に使用される木軸下地等の探査装置に関するものである。」
(イ)第5頁第3行~第8頁第13行
「図面は木軸下地等の探査装置の一例を示す。1は銃身状部分1aと握り部分1bとを備えた装置本体であり、銃身部分1aの先端には、木軸下地Aに取り付けられた内装用仕上げ材Bに密着可能に構成した透明樹脂製の椀状の防音カバー2が設けられている。
銃身状部1aの内部には、防音カバー2内において前記仕上げ材Bを軽打する角軸状の打撃子3がその軸芯方向にのみ摺動自在に設けられている。打撃子3には、その先端にゴム製の保護キャップ4が嵌着され、中間部には、銃身状部分1a先端からの突出量を規制するストッパー5が固着されている。このストッパー5と銃身状部分1aの内部適所との間には、ストッパー5を受け座に兼用して打撃子3を突出側に摺動付勢する弾機(圧縮コイルスプリングを使用しているが、板バネでもよいことは勿論である。)6が介装されている。装置本体1の銃身状部分1a下部には、打撃子3を作動する引金7が打撃子3と平行な方向に移動自在に設けられている。8は引金7を初期位置に復帰させるためのバネである。引金7には、打撃子3の長手方向適所に形成した切欠き9に対して係脱自在な係止部材10がピン11周りに揺動自在に枢着され、係止部材10は、当該係止部材10と引金7との間に介装したバネ12により、前記切欠き9に係止する側へ付勢されている。前記係止部材10の遊端側には第1カム面F1が形成され、銃身状部分1a内に形成した打撃子3の後端側の摺動ガイド13の下端側には、前記第1カム面F1に作用して係止部材10を押し下げる第2カム面F2が形成され、第2図(イ)、(ロ)に示す如く、これら両カム面F1、F2により、引金7を引いて打撃子3を所定位置まで後退させたとき係止部材10と切欠き9との係止を解除する解除機構14が構成されている。
装置本体1の銃身状部分1aには、コンデンサマイクロホン等の集音部15が、防音カバー2内に臨ませて設けられ、集音部15に接続された判別部16と判別結果の表示部17とが、銃身状部分1aの上部など、装置本体1の適所(図示の通り、横から見える位置であることが望ましい。)に付設されている。判別部16は、集音部15からの出力信号を増幅する増幅器と、増幅された信号と予め記憶させたデータとを比較分析する周波数分析器と、分析結果の出力回路とを備えている。表示部17は、増幅器からの信号波形を写し出す波形表示部17aと周波数分析器による分析結果、つまり木軸下地存在信号に応答して点灯するランプ17bとを備えている。そして、波形表示部17aの波形変化により木軸下地存在箇所に近いかどうかを見なから装置を移動し、木軸下地存在箇所に到達したとき、つまり木軸下地の位置で打撃子3が内装仕上げ材を打撃したとき、ランプ17bの点灯により木軸下地存在箇所であることを明確に知ることができるように構成されている。18は、集音部15、判別部16、及び表示部17に対する電源用電池であり、握り部1bに形成した収納部19に収納されている。20は蓋体である。21は石膏ボーや合板等の壁板、22はクロスであり、これらにより内装用仕上げ材Bの一例を構成している。
上記の探査装置は木軸下地Aを内装用仕上げ材Bごしに正確に探査できるものであり、しかも操作性に優れたものである。
即ち、判別部16、表示部17やそれらの電源用電池18の収納部19が装置本体1に付設されているコンパクトな構造であり、表示部17を見なから片手で装置を操作できること、引金7を引くだけで、その都度、打撃子3が仕上げ材Bを打撃する構造であること、打撃子3による打撃は、引金7を引く速度と関係なく、弾機6の付勢力により、常に一定の力で行われること、等の理由により非常に優れた操作性が得られるのである。」
(ウ)第1図
「
[図:0001433859000009.jpg]
」
カ 引用文献7の記載事項
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった文献である「特開昭56-652号公報」(以下「引用文献7」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)第1頁右下欄第3行~第6行
「本発明は、型枠材の内方に打設されたコンクリートの充填度合を型枠材の外方から確認できるコンクリ-ト中の空洞部探査方法及び装置を提供するものである。」
(イ)第2頁左下欄第20行~3頁右上欄第4行
「図面は、コンクリート中の空洞部探査装置の一例を示し、Aは打設されたコンクリート、Bはコンクリート面仕上げ材又は仕上げの下地材を兼用する型枠材である。1は、銃身状部分2、握り部分3、引き金4等を備え、片手で持ち運び可能とした探査装置本体で、銃身状部分2には圧縮ばね5により前方へ摺動付勢され、且つ、後端部の摘み6aを圧縮ばね5に抗して後方へ引張ることにより、引き金4(又はこれに連動する部材でもよい。)の一部と係合する係止部6bを有する打撃棒6が前後に貫通した状態に挿設されている。また、銃身状部分2の先端には、ゴムなど防振効果と遮音効果とがある弾性材料製の椀状部材7が装着され、椀状部材7を型枠材Bの外面に密着させた状態で、引き金4を引くことにより、打撃棒6の先端で、椀状部材7の内部空間S4C面する型枠材Bの外面に軽微な衝撃を与え、この衝撃により、コンクリートAの持つ固有振動を伴う弾性波を発生させるように構成しである。
尚、衝撃を付与する際、打撃棒6が、型枠材B外面の反撥と圧縮ばね5の力とによって、型枠材B外面に対する衝突を小きざみに繰り返すことがないように、圧縮ばね5が伸びきった状態において、打撃棒6先端と型枠材B外面との間に小間隙が形成されるように設定して、圧縮ばね5が伸びきった後は、打撃棒6が慣性により圧縮ばね5の力に抗して前進し、型枠材B外面に衝突した後、該面から離れた位置に静止するように構成することが望ましい。8は、前記弾性波を、空気を媒体とする振動(空気の振動)として感知する感知器であり、具体的には高感度のマイクロフォンが使用されている。この感知器8は、できるだけ、打撃棒6の摺動、引き金4の揺動等による余分な振動を拾わないように、図示の通り、椀状部材7に支持させることが望ましい。9は感知器8の出力信号の増巾器、10は増巾された出力信号と予め記憶させたデータとを比較分析する周波数分析器、11は充填度の指示針であり、これら9、10、11の電気機器12も可搬型に構成されている。13はばね力調節ナツト、14は打撃棒6の位置調節筒である。
上記の装置を使用すれば、型枠材Bの所々に椀状部材7を押し当て、引き金4を引くことによって、コンクリート中の空洞部を探査することができる。」
(ウ)図面
「
[図:0001433859000010.jpg]
」
キ 引用文献8の記載事項
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった文献である「特開昭58-83258号公報」(以下「引用文献8」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)第1頁左下欄第10行~第12行
「本発明は、例えばトンネル等のコンクリート構造物におけるコンクリート壁と岩盤間の空隙の有無を検知する方法に関するものである。」
(イ)第2頁右下欄第1行~第8行
「第2図は、本発明方法を実施するための測定装置の一実施例を示すものであって、図中(2)はコンクリート壁(1)面に所定力の打撃を加えるための打撃機であり、この打撃機(2)による打撃により生じた弾性波を探触子(3)にて受信し、これをデイジタルメモリー(4)を介してシンクロスコープ(5)で波形を観察することによつてコンクリート壁(1)と岩盤(6)と空隙(7)の有無を知ろうとするものである。」
(ウ)第2図
「
[図:0001433859000011.jpg]
」
なお、上記引用文献6~8は、審判請求時の補正によって提示することが必要となった文献である。
ク 周知技術
(ア)上記ウ(ア)及び(イ)、上記エ(ア)及び(イ)、上記オ(ア)及び(イ)の記載に基づけば、本願の出願前において、次の周知技術(以下「周知技術1」という。)が存在したといえる。
「構造物の異常を、構造物への打撃によって生じた振動データに基づいて判定する装置において、打撃部を用いて一定の打撃力で対象物を打撃すること。」
(イ)上記オ(ア)、(イ)の記載及び(ウ)の探査装置1がピストル型の形状であることが看て取れる図面、上記カ(ア)、(イ)の記載及び(ウ)の探査装置1がピストル型の形状であることが看て取れる図面、上記キ(ア)、(イ)の記載及び(ウ)の打撃機2がピストル型の形状であることが看て取れる図面に基づけば、本願の出願前において、次の周知技術(以下「周知技術2」という。)が存在したといえる。
「構造物の異常を、構造物への打撃によって生じた振動データに基づいて判定する装置において、打撃部を含む打撃ユニットを片手で操作できるコンパクトなピストル型の形状とすること。」
(ウ)上記ウ(ア)、(イ)、上記オ(ア)、(イ)、上記カ(ア)、(イ)の記載に基づけば、本願の出願前において、次の周知技術(以下「周知技術3」という。)が存在したといえる。
「構造物の異常を、構造物への打撃によって生じた振動データに基づいて判定する装置において、対象物への打撃を打撃部自体に設けられた打撃スタートスイッチの操作により行うこと。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 叩打装置
引用発明の(上記(イ))「打撃ハンマ17」、「マイクロフォン19」を備える「打撃ユニットU」は、本件補正発明の「叩打装置」に相当する。
そうすると、引用発明の「建築物Bの壁面Wに添着した」「タイルTを打撃したときの打撃音を検知する」「打撃ユニットU」と、本件補正発明の「構造物の打音検査を行う形状がハンドガンタイプである叩打装置」とは、「構造物の打音検査を行う」「叩打装置」である点で共通する。
イ コンピュータ
引用発明の(上記(イ))「制御盤21」、「操作盤22」、「モニタ23」、「プリンタ25」、「ホストコンピュータ26」を備える「制御部20」は、本件補正発明の「コンピュータ」に相当する。また、引用発明の(上記(イ))「制御部20は制御盤21を備え、各種の作動は操作盤22で行われ」るとあるから、「制御部20」が、「打撃ユニットU」と通信可能に接続されていることは明らかである。
そうすると、引用発明の「打撃ユニットU」と通信可能に接続されている「制御部20」は、本件補正発明の「当該叩打装置と通信可能に接続されたコンピュータ」に相当する。
ウ 叩打部(叩打装置)
引用発明の(上記(イ))「打撃ハンマ17」は、本件補正発明の「叩打部」に相当する。また、引用発明では、(上記(ウ))「打撃ハンマ17の打撃作動により荷重検出器18は荷重すなわち打撃力を、・・・を剥離判定部31に送」ることから、ある「打撃力」で「打撃ハンマ17でタイルTを打撃」することは明らかである。
そうすると、引用発明の「打撃ユニットU」が、ある「打撃力」で「タイルTを打撃」する「打撃ハンマ17」を備えることと、本件補正発明の「前記叩打装置」が、「自身に設けられたスイッチの操作が行われた際、一定の力量で、前記構造物を叩打する叩打部」を備えることとは、「前記叩打装置」が、ある「力量で、前記構造物を叩打する叩打部」を備える点で共通する。
エ 取得部(叩打装置)
引用発明では、(上記(イ))「マイクロフォン19」は「タイルTを打撃したときの打撃音を検知」し、(上記(エ))「マイクロフォン19からの出力により振動データD2」「が得られ」ることから、引用発明の「振動データD2」及び「マイクロフォン19」は、本件補正発明の「振動データ」及び「取得部」に相当する。
そうすると、引用発明の「打撃ユニットU」が、「タイルTを打撃したときの」「振動データD2」を「得」る「マイクロフォン19」を備えることは、本件補正発明の「前記叩打装置」が、「前記構造物を叩打した際の振動データを取得する取得部」を備えることに相当する。
オ 送信部(叩打装置)
引用発明では、(上記(ウ))「他方打撃ハンマ17の打撃作動により荷重検出器18は荷重すなわち打撃力を、またマイクロフォン19はその打撃音を剥離判定部31に送」ることから、「マイクロフォン19」が「振動データD2を剥離判定部31に送」るための送信部を備えていることは、明らかである。ただし、引用発明において、「マイクロフォン19」が「振動データD2」を「ホストコンピュータ26」に送信する旨の特定は見当たらない。
そうすると、引用発明の「マイクロフォン19」を備える「打撃ユニットU」が、「振動データD2」を「剥離判定部31に送」るための送信部を備えることと、本件補正発明の「打撃ユニットU」が、「取得した前記振動データを、前記コンピュータに送信する送信部」を備えることとは、「打撃ユニットU」が、「取得した前記振動データを」「送信する送信部」を備える点で共通する。
カ 表示部(コンピュータ)
引用発明では、(上記(ウ))「剥離判定部は剥離部の大きさ、深さを判定するものであり、その判定信号はホストコンピュータ26に送られ、このようにして各位置(各座標)の判定結果がホストコンピュータ26に記憶され、その結果はフロッピーディスク24に格納され、モニタ23に表示され」ること、及び、(上記(エ))「剥離判定部31は・・・健全であるか剥離であるかを判定し(プロセスP5)、健全な場合はその旨を出力し、ホストコンピュータ26に記憶し、印字し(プロレスP6)、剥離と判定された場合はホストコンピュータ26は剥離の程度を判断し(プロセスP7)、そしてこの値は記憶され、モニタ23に示され、またプリンタ25により印字される(プロセスP8)」ことを踏まえると、引用発明の「各位置(各座標)の判定結果」は、本件補正発明の「前記構造物の解析結果」に相当し、また、引用発明の「モニタ23」及び「プリンタ25」は、本件補正発明の「表示部」に相当する。
そうすると、引用発明の「制御部20」が、「各位置(各座標)の判定結果」を「表示」する「モニタ23」及び「印字」する「プリンタ25」を備えることは、本件補正発明の「前記コンピュータ」が、「前記構造物の解析結果を表示する表示部」を備えることに相当する。
キ 表示内容
引用発明では、(上記(ウ))「剥離判定部は剥離部の大きさ、深さを判定するものであり、その判定信号はホストコンピュータ26に送られ、このようにして各位置(各座標)の判定結果がホストコンピュータ26に記憶され、その結果はフロッピーディスク24に格納され、モニタ23に表示され」ること、及び、(上記(エ))「剥離判定部31は・・・健全であるか剥離であるかを判定し(プロセスP5)、健全な場合はその旨を出力し、ホストコンピュータ26に記憶し、印字し(プロレスP6)、剥離と判定された場合はホストコンピュータ26は剥離の程度を判断し(プロセスP7)、そしてこの値は記憶され、モニタ23に示され、またプリンタ25により印字される(プロセスP8)」ことを踏まえると、「モニタ23」及び「プリンタ25」は、「各位置(各座標)の判定結果」として、「健全な場合」には「健全」である旨の通知を、「剥離と判定された場合」には、「剥離の程度」により「剥離」である旨の通知を「表示」及び「印字」していることは明らかである。
そうすると、引用発明の「モニタ23」及び「プリンタ25」が、「各位置(各座標)の判定結果」として、「健全な場合」には「健全」である旨の通知を、「剥離と判定された場合」には、「剥離の程度」により「剥離」である旨の通知を「表示」することは、本件補正発明の「前記表示部は、前記解析結果として、異常が発生していない場合、異常が発生していないことを示す正常通知を表示し、異常が発生している場合、異常が発生していることを示す異常通知を表示する」ことに相当する。
ク 異常解析システム
引用発明の(上記(ア))「建築物Bの壁面Wに添着したタイルTの剥離の程度を検知する剥離検知装置」は、本件補正発明の「異常解析システム」に相当する。
(4)一致点・相違点
上記(3)での対比を踏まえると、本件補正発明と引用発明とは、次のアの点で一致し、次のイ(ア)~(エ)の各点で相違する。
ア 一致点
「構造物の打音検査を行う叩打装置と、当該叩打装置と通信可能に接続されたコンピュータとから構成される異常解析システムであって、
前記叩打装置は、
ある力量で、前記構造物を叩打する叩打部と、
前記構造物を叩打した際の振動データを取得する取得部と、
取得した前記振動データを送信する送信部と、
を備え、
前記コンピュータは、
前記構造物の解析結果を表示する表示部、
を備え、
前記表示部は、前記解析結果として、異常が発生していない場合、異常が発生していないことを示す正常通知を表示し、異常が発生している場合、異常が発生していることを示す異常通知を表示する、
異常解析システム。」
イ 相違点
(ア)相違点1
本件補正発明では、叩打装置は、取得部が取得した前記振動データを、「前記コンピュータに」送信する送信部を備え、コンピュータは、「前記振動データを受信する受信部と、受信した前記振動データに基づいて、前記構造物に発生している、うき、剥離等の異常の具体的内容を解析する解析部と、」を備えているに対し、引用発明では、「マイクロフォン19はその打撃音を剥離判定部31に送り、この剥離判定部は剥離部の大きさ、深さを判定するものであり、その判定信号はホストコンピュータ26に送られ」る点。
(イ)相違点2
構造物を叩打する力量について、本件補正発明では、叩打部による力量が「一定」であるのに対し、引用発明では、「打撃ハンマ17」による「打撃力」が一定であるか、不明である点。
(ウ)相違点3
叩打装置の形状について、本件補正発明では、その「形状がハンドガンタイプである」のに対し、引用発明では、その形状は不明である点。
(エ)相違点4
構造物への叩打について、本件補正発明では、「叩打部」「自身に設けられたスイッチの操作が行われた際」に叩打するのに対し、引用発明では、「各種の作動は操作盤22で行われ」る点。
(5)判断
上記各相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用発明では、「マイクロフォン19はその打撃音を剥離判定部31に送り、この剥離判定部は剥離部の大きさ、深さを判定するものであ」るから、「剥離判定部31」は、「マイクロフォン19」から「得」た「振動データD2」に基づき「剥離部の大きさ、深さ」といった異常の具体的内容「を判定する」ものである。
そして、引用発明では、「制御部20にはデータ処理を行うために・・・ホストコンピュータ26を備え」ていることを踏まえると、引用発明において、「剥離判定部31」での判定処理を、「制御部20」の「ホストコンピュータ26」で行うようにすることは、当業者が適宜設計し得る程度のことである。
そうすると、引用発明において、上記の設計を具現化するにあたり、「打撃ユニットU」は、「マイクロフォン19」から「得」た「振動データD2」を、「制御部20」の「ホストコンピュータ26」に送信する送信部を備え、「制御部20」の「ホストコンピュータ26」は、送信された「振動データD2」を受信する受信部と、受信した「振動データD2」に基づき「剥離部の大きさ、深さ」といった異常の具体的内容「を判定する」「剥離判定部31」の機能と、を備えることにより、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
イ 相違点2について
引用発明では、複数の打撃位置でのタイルTの剥離の程度を検知するものであるから、全ての位置で打撃力を一定に揃えることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
このことは、上記周知技術1(上記(2)ク(ア)参照)において裏付けられている。
そうすると、上記周知技術1に鑑み、引用発明において、「打撃ハンマ17」による「タイルT」への「打撃力」を一定にすることにより、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
ウ 相違点3について
引用発明において、上記周知技術2(上記(2)ク(イ)参照)を適用し、「打撃ハンマ17」及び「マイクロフォン19」を含む「打撃ユニットU」をピストル型の形状とすることにより、上記相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
エ 相違点4について
引用発明では、「各種の作動は操作盤22で行われ」、「他方打撃ハンマ17の打撃作動により荷重検出器18は荷重すなわち打撃力を、・・・剥離判定部31に送り」との特定事項を踏まえると、「操作盤22」の操作が行われた際、「打撃ハンマ17の打撃作動」する可能性がある。
してみれば、引用発明において、上記周知技術3(上記(2)ク(ウ)参照)を適用し、(「制御部20」の「操作盤22」の信号に連動させた)「打撃ハンマ17」自体に設けられた打撃スタートスイッチの操作が行われた際、「タイルT」への「打撃」を「作動」させることで、上記相違点4に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
オ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明により奏される効果は、当業者が、引用発明及び上記周知技術1~3から予測し得た範囲内のものであって、格別顕著なものではない。
(6)請求人の主張
ア 請求人の主張について
審判請求書における主張は、次のとおりである。
「ハンドガンタイプの叩打装置が、自身に設けられたスイッチの操作が行われた際、一定の力量で構造物を叩打し、叩打時の振動データを取得することにより、点検員が熟練者でなくとも、構造物の振動データの取得が容易となり、構造物の非破壊検査における属人的な影響を小さくし、構造物の非破壊検査の標準化を図ることが可能となります。更に、叩打装置がハンドガンタイプであるために、従来の点検ハンマと比較して、叩打装置の小型化や軽量化を図ることも可能となります。
・・・
しかしながら、引用文献3及び4を参照しても、叩打装置の形状がハンドガンタイプであり、自身に設けられたスイッチの操作が行われた際、一定の力量で構造物を叩打する構成についての開示はありません。また、その他の引用文献についても同様に、この構成についての開示はありません。
本願発明は、この構成を有することにより、上述した効果を奏するものです。これは、引用文献に記載された発明が備えない構成による、格別の効果であると考えます。」
イ 当審の見解
上記アの主張について検討する。
本件補正により追加された「叩打装置の形状がハンドガンタイプである」こと、及び、「叩打部」「自身に設けられたスイッチの操作が行われた際、一定の力量で構造物を叩打する」ことは、当業者が適宜なし得たことであることは、上記(5)イ~エで検討したとおりである。そして、請求人が主張する上述した効果についても、引用文献4の「【0025】上述したように、本発明の加振装置は、装置本体をコンクリート柱に押し当てるだけでコンクリート柱を打撃することができるため、打撃者の疲労を軽減でき、また、打撃の力と方向を安定させることができるため、より精度の高い振動データを取得することができる。また、本発明によれば、打撃力の調整をバネ力やハンマーの重量などで実施でき、片手操作ができる程度まで装置の小型・軽量化が可能となる。」、引用文献6の「即ち、判別部16、表示部17やそれらの電源用電池18の収納部19が装置本体1に付設されているコンパクトな構造であり、表示部17を見なから片手で装置を操作できること、引金7を引くだけで、その都度、打撃子3が仕上げ材Bを打撃する構造であること、打撃子3による打撃は、引金7を引く速度と関係なく、弾機6の付勢力により、常に一定の力で行われること、等の理由により非常に優れた操作性が得られるのである。」、引用文献7の「1は、銃身状部分2、握り部分3、引き金4等を備え、片手で持ち運び可能とした探査装置本体」などの記載を踏まえても、引用発明及び上記周知技術1~3から予測し得た範囲内のものであって、格別顕著なものではない。よって、当該主張は採用できない。
(7)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術1~3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和7年2月3日にされた手続補正(本件補正)は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和6年5月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明(本願の請求項1に係る発明)に対する原査定の理由は、本願出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、本願出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
引用文献1:特開昭60-211360号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、上記第2の2(2)ア及びイに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の2で検討した本件補正発明から、「構造物の打音検査を行う叩打装置」に係る限定事項、及び、「一定の力量で、前記構造物を叩打する叩打部」に係る限定事項を削除して拡張したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を限定し減縮した発明である本件補正発明が、上記第2の2(3)に説示したとおり、引用発明及び上記周知技術1~3(周知技術1は、本願発明の「一定の力量」で叩打することが、当業者が適宜なし得たことの裏付けに提示した周知技術であり、周知技術2、3は本件補正により生じた事項に対応するために用いた周知技術である。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、引用発明(及び上記周知技術1)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-001625