特許拒絶査定不服審判
2024-017760
管理システム、管理装置、及び管理プログラム
- 審判番号
- 2024-017760
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-204515
- 請求日
- 2024年11月06日
- 審決日
- 2025年09月22日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】千代田化工建設株式会社
- 【請求人代理人】三木 友由
- 【請求人】株式会社エヌ・ティ・ティ ピー・シー コミュニケーションズ
- 【請求人代理人】三木 友由
- 審判長/審判官
- 審判長 相崎 裕恒
- 審判官 小池 堂夫
- 審判官 佐藤 智康
- 分類
- P18 .121-Z (G06Q) / P18 .575-Z (G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-204515「管理システム、管理装置、及び管理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 6月21日出願公開、特開2022- 91597〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年12月9日にされた特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年 3月26日付け:拒絶理由通知書
同年 5月16日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 8月 6日 :原査定の謄本の送達)
同年11月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年11月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年11月6日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
令和6年11月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてなされたものであり、本件補正による補正後の請求項1の記載は、次のとおりである。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
管理対象の通過を管理すべき境界の近傍に設けられた第1の通信装置と、
前記境界を通過する管理対象が所持又は装着する第2の通信装置と、
前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の通信履歴を取得し、前記通信履歴に基づいて、管理対象が前記境界を通過した向きを判定する管理装置と、
を備え、
前記管理装置は、管理対象が前記境界を通過した向きの判定精度を向上させるために、前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の通信の電波強度が所定値以上である通信履歴に基づいて、管理対象が前記境界を通過した向きを判定する
管理システム」
(2) 本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正による補正前の請求項1(令和6年5月16日にされた手続補正による補正後の請求項1)の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
管理対象の通過を管理すべき境界の近傍に設けられた第1の通信装置と、
前記境界を通過する管理対象が所持又は装着する第2の通信装置と、
前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の通信履歴を取得し、前記通信履歴に基づいて、管理対象が前記境界を通過した向きを判定する管理装置と、
を備え、
前記管理装置は、前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の通信の電波強度が所定値以上である通信履歴に基づいて、管理対象が前記境界を通過した向きを判定する
管理システム。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記管理装置は、前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の通信の電波強度が所定値以上である通信履歴に基づいて、管理対象が前記境界を通過した向きを判定する」点について、「管理対象が前記境界を通過した向きの判定精度を向上させるために、」との限定を付加するものであり、明細書の段落【0050】の記載からみて、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされた補正であり(特許法第17条の2第3項に規定する要件に適合するものであり)、また、本件補正による補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であり、本件補正は、同条第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(本件補正が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下、検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。
(2) 引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2006-71466号公報(平成18年3月16日出願公開。以下「引用文献」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当審において付与した。
「【背景技術】
【0002】
従来の技術では、ある場所に入退場する人の状態を検出する場合には、接触型のIC(Integrated Circuit)タグを人に持たせて、その人が出入口に備えられた受信装置にICタグをセットすることによって入退場の状態を検出するか、または、非接触型のICタグをその人に持たせて出入口に備えられた受信装置の近傍にかざすことによって入退場の状態を検出する手段が一般的に用いられている。
また、特許文献1ではRFID(Radio Frequency Identification)方式を備えたICタグであって、赤外線照射により無線電波を発信する無線発信装置として動作するICタグを利用し入退場の状態を検出する手段が示されている(以下、RFID方式によるICタグを無線タグと記載する)。同手段では、異なる赤外線波長を照射する赤外線発信装置を出入口の両側に備えており、赤外線発信装置から照射した赤外線によって入退場者が保持している無線タグを起動する。赤外線を受信した無線タグは、赤外線信号の波長からどの赤外線発信装置から照射された赤外線であるかを判定し当該赤外線発信装置の位置情報を認識する。次に、内部に設定されているID(IDentification)情報と赤外線発信装置の位置情報を無線受信装置であるタグリーダに送信する。そして、タグリーダが受信した赤外線発信装置の位置情報と無線タグのIDに基づいて入退場者の移動方向の検出を行い入退場の管理を可能にしている。
【特許文献1】特開2003-21679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に示す技術では、指向性の高い赤外線を利用し、入口と出口の領域という狭い範囲に赤外線を照射して無線タグを起動することにより入退場の方向、即ち移動方向を判定しているため、赤外線発信装置の設置と赤外線に連動して動作する無線タグが必要となる問題がある。
【0004】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、無線発信装置である無線タグが発信する無線電波を受信した無線タグリーダによって検出された電波強度値を利用して無線タグの移動方向を判定することができる移動方向判定システム、移動方向判定方法、プログラムおよび記録媒体を提供することにある。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態によるサーバ装置を図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態によるサーバ装置と、無線タグと無線タグリーダとサーバ装置から構成される移動方向判定システム1を示す概略ブロック図である。
無線タグ10は、上述したRFID方式を備えたICタグであり、本実施形態における無線タグは、内部に設定されている情報を自らのバッテリにより無線電波を発信するアクティブタグと呼ばれているタイプの無線タグである。
【0016】
無線タグ10において、無線インタフェース13は、無線受信アンテナ14を介して後述する無線タグリーダに対して無線電波を送信する。バッテリ12は、無線タグ10を起動するための電源である。本実施形態の無線タグ10のようなバッテリを内部に有するアクティブタグは、一般的に数メートルから数十メートルの距離まで無線電波を送信することができる。制御部11は、内部に記憶している情報を無線電波で発信し、また、無線電波の発信を制御する。制御部11において、ID記録回路11aは、無線タグライタ、即ち無線電波によって情報の書込みを行う装置によって予め書き込まれた無線タグ10を一意に識別できるID情報を記憶している。間欠発信回路11bは、一定の時間間隔、例えば3秒ごとにID記憶回路11aからID情報を読み出してID情報を含む無線電波を発信する。振動検出回路11cは、無線タグ10を保持する人が動いた時に発生する振動を検出する。連続発信回路11dは、振動検出回路11cが振動を検出している間、間欠発信時よりも短い間隔でID記憶回路11aからID情報を読み出してID情報を含む無線電波を発信する。また、間欠発信回路11bと連続発信回路11dはいずれか一方しか動作しないため、振動を検出している間、間欠発信回路11bは停止する。また、さらに、間欠発信回路11bによって発信されたID情報か、連絡発信回路11dによって発信されたID情報かの発信元の識別するため、ID情報と共に発信元を識別する情報を設定して発信する。
【0017】
無線タグリーダ20a、20bは、無線タグ10から無線電波を受信し、受信した無線電波からID情報を検出する。無線タグリーダ20a及び20bは同じ構成であり、符号に付けられたa及びbは異なる無線タグリーダであることを示しているだけであるため、符号からa及びbを除いて番号のみで内部構成について説明する。無線インタフェース23は、無線受信アンテナ24を介して無線タグ10の発信した無線電波を受信する。制御部21は、無線インタフェース23が受信した無線電波からID情報及び受信時の電波強度値を検出し、内部の時計から受信時の時刻情報を取得する。通信部22は、ネットワーク40を介してサーバ装置30に接続し、制御部21が検出したID情報と電波強度値と時刻情報とをサーバ装置30に送信する。
【0018】
サーバ装置30は、無線タグリーダ20aと20bからネットワーク40を介して受信した情報に基づいて無線タグ10の移動方向の判定を行う。サーバ装置30において、受信部31は、無線タグリーダ20aと20bからネットワーク40を介してID情報と電波強度値と時刻情報を受信し、ID情報ごとに無線タグリーダ20aと20bから受信した情報に分類して電波強度値と時刻情報を記憶部32に記録する。当該ID情報を受信し続けている場合には記録を継続する。無線タグリーダ20aと20bを介して受信する無線タグ10のID情報が所定の時間受信できなくなった時、無線電波が無線タグリーダ20aと20bに到達しない位置まで無線タグ10が移動したと判定して記録を終了する。平滑化処理部33は、無線タグ10について記録が終了したことを受信部31から受けて無線タグ10に対応するID情報の電波強度値と時刻情報を記憶部32から読み出す。そして、無線タグリーダ20aと20bから受信した電波強度値ごとの時刻情報を対比して時刻同期を行い、時間軸で並べられた2つの電波強度値に対して平滑化処理を行う。判定部34は、平滑化処理後の電波強度値の時間的変化履歴に基づいて無線タグ10の移動方向を判定する。出力部35は、判定部34から判定結果を受けて画面に出力する。
【0019】
図2は、移動方向判定システム1の配置構成及び無線タグ10の移動過程を示した図である。同図において、ゲート60は、出入口を示している。無線タグリーダ20aと20bは、ゲート60を通過する無線タグ10の出入口における移動方向を判定するために、ゲート60の一方の側に2台を配置する。無線タグリーダ20aと20bを囲む楕円は無線タグ10の無線電波がそれぞれの無線タグリーダ20aと20bに到達する範囲を示している。また、2つの無線タグリーダ20aと20bはサーバ装置30に接続しており、予め同じ時刻となるように時刻設定が行われている。同図では、時間が経過すると共に無線タグ10が移動する状態を示しており、最初に時刻t0の時点での無線タグ10t0は、無線タグリーダ20aに無線電波が到達しないため無線タグリーダ20aによって検出されない。時刻t1の時点での無線タグ10t1は、無線電波が無線タグリーダ20aに到達し、無線タグリーダ20aによって無線電波が受信され、サーバ装置30にID情報と電波強度値と時刻情報が送信される。時刻t2の時点での無線タグ10t2は無線タグリーダ20aと20bの両方に無線電波が到達し、両方の無線タグリーダ20a、20bによって検出される。そのとき、サーバ装置30は無線タグリーダ20aと20bの両方からID情報と電波強度値と時刻情報を受信する。時刻t3の時点での無線タグ10t3は無線タグリーダ20aには無線電波は到達しないが、無線タグリーダ20bには到達し、無線タグリーダ20bによって無線電波が検出され、サーバ装置30にID情報と電波強度値が送信される。時刻t4での無線タグ10t4はゲート60を通り抜けると共に無線タグリーダ20bに無線電波が到達する距離を超えて離れており、無線タグリーダ20bによっても検出されなくなる。
この時点で、サーバ装置30は、無線タグ10のID情報等を所定の時間受信しないことを検出し記録を終了する。そして、記録した情報に対して後述する平滑化処理を行って、平滑化処理の結果から得られる電波強度値の時間的変化履歴に基づいて無線タグ10の移動方向の判定を行う。」
「【0021】
平滑化処理部33で行われる平滑化処理は、RSSIの欄に記録された電波強度値に対して行う。本実施形態での平滑化処理とは、一定の時間以上、一定の電波強度を受信しているか否かを判定し、受信している場合には安定して受信していると認定する処理を意味する。一定の時間としては、例えば上述した間欠送信の時間間隔である3秒の約3倍である10秒が安定して受信しているか否かを判断する指標となる。同図に示す記録データにおける電波強度値の時間的変化履歴は、最初は無線タグリーダ20aのみで10秒以上受信し、その後、無線タグリーダ20aと20bの両方で約10秒間受信し、最後に無線タグリーダ20bのみで10秒以上受信する変化状態となっている。受信していると認定した場合に「1」を、受信していないと認定した場合に「0」を設定する処理を行うと、平滑化処理後の電波強度値の変化のパターンは、「10」、「11」、「01」で示されることとなる。
【0022】
図4は、判定部34が平滑処理後の電波強度値の変化のパターンから無線タグ10の移動方向を判定する処理を示したフローチャートである。
最初に、無線タグ10から発信した無線電波が無線タグリーダ20aと無線タグリーダ20b(同図においても、無線タグリーダ20aをリーダ20a、無線タグリーダ20bをリーダ20bと略して記載)の両方で受信できずサーバ装置30が記録を終了する時点を決定するために、上述した所定の時間を計測するタイマーを設定する。タイマーの値としては、例えば、平滑化処理を行う際に安定した受信を行っているかを判定するための指標としている10秒を設定する。つまり、受信していた無線タグ10からの情報が10秒間受信しない場合は、無線タグ10は無線電波が到達しない場所に移動してしまったと判定する(ステップS1)。次に、無線タグリーダ20aもしくは無線タグリーダ20bから無線タグ10のID情報を受信すると、タイマーを起動する(ステップS2)。次に、無線タグIDについてタイムアウトしたか否かを判断する(ステップS3)。タイムアウトしていない場合には当該ID情報を待ち受ける状態を継続する。また、Tintの間に受信した場合にはタイマー値をリセットする(ステップS4)。Tintのタイマー値が経過しタイムアウトした場合には、サーバ装置30が記録している情報の平滑化処理を行う。平滑化処理は、無線タグリーダ20aで受信しておりかつ、無線タグリーダ20bで未受信の場合には「10」を割り当て、無線タグリーダ20aで未受信でありかつ、無線タグリーダ20bで受信している場合には「01」を割り当て、無線タグリーダ20aと無線タグリーダ20bの両方で受信している場合には「11」を割り当てる(ステップS5)。
【0023】
次に、平滑化した後の値に基づいて移動方向を判定する。最初に、受信開始時のステータスが「10」であるか否かを確認する(ステップS6)。「10」の場合には、タイムアウトした時のステータスが「01」であるか否かを確認する(ステップS7)。タイムアウトした時のステータスが「01」である場合には、無線タグ10が無線タグリーダ20aから無線タグリーダ20bの方向へ移動したと判定し処理を終了する(ステップS8)。タイムアウトした時のステータスが「01」でない場合には、無線タグリーダ20aから無線タグリーダ20aへUターン移動したという例外状態として判定し処理を終了する(ステップS9)。ステップS6において、受信開始時のステータスが「10」でなかった場合には、次に受信開始のステータスが「01」であるか否かを確認する(ステップS10)。受信開始のステータスが「01」である場合には、次にタイムアウトした時のステータスが「10」であるか否かを確認する(ステップS11)。タイムアウトした時のステータスが「10」である場合には、無線タグリーダ20bから無線タグリーダ20aの方向へ移動したと判定し処理を終了する(ステップS12)。タイムアウトした時のステータスが「10」でない場合には無線タグリーダ20bから無線タグリーダ20bへUターン移動したという例外状態として判定し終了する(ステップS13)。ステップS10において受信開始のステータスが「01」でない場合には、受信開始時点から無線タグリーダ20aと無線タグリーダ20bの同時受信という例外状態として判定し処理を終了する(ステップS14)。このようにして、電波強度値の変化のパターンを判定して無線タグ10の移動方向を判定する。」
「【図1】
[図:0001429771000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001429771000002.jpg]
」
イ 上記アで摘記した記載によると、引用文献には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(ア) 引用文献の段落【0019】には、「同図において、ゲート60は、出入口を示している。無線タグリーダ20aと20bは、ゲート60を通過する無線タグ10の出入口における移動方向を判定するために、ゲート60の一方の側に2台を配置する。」と記載されており、【図2】の記載も参照すれば、引用文献には、出入口であるゲート60の近傍に設けられた無線タグリーダ20aと20bが記載されているといえる。
(イ) 引用文献の段落【0016】には、「無線タグ10を保持する人」と記載されており、段落【0019】には、「無線タグリーダ20aと20bは、ゲート60を通過する無線タグ10の出入口における移動方向を判定するために、ゲート60の一方の側に2台を配置する。」と記載されている。
これらの記載から、引用文献には、出入口であるゲート60を通過する人が保持する無線タグ10が記載されているといえる。
(ウ) 引用文献の段落【0018】の記載によると、引用文献には、「無線タグリーダ20aと20bから、ID情報と電波強度値と時刻情報を受信し、受信した情報に基づいて無線タグ10の移動方向の判定を行う、サーバ装置30」が記載されている。
(エ) 引用文献の段落【0017】の記載によると、引用文献には、「無線タグリーダ20a、20bは、無線タグ10から受信した無線電波からID情報及び受信時の電波強度値を検出し、内部の時計から受信時の時刻情報を取得し、検出したID情報と電波強度値と時刻情報とをサーバ装置30に送信する」ことが記載されている。
(オ) 引用文献の段落【0017】、【0018】、【0021】、【0022】、【0023】の記載によると、引用文献には、「サーバ装置30は、無線タグリーダ20a、20bからID情報と電波強度値と時刻情報を受信し、受信した前記情報が一定の時間以上、一定の電波強度を受信しているか否かを判定し、受信している場合には安定して受信していると認定する処理である平滑化処理後の電波強度値の時間的変化履歴に基づいて電波強度値の変化のパターンを判定して無線タグ10の移動方向を判定する」ことが記載されている。
(カ) 引用文献の段落【0015】、【図1】の記載を参酌すると、引用文献には、無線タグリーダ20a、20bと、無線タグ10と、サーバ装置30とから構成される移動方向判定システム1が記載されている。
ウ 前記ア、イから、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
出入口であるゲート60の近傍に設けられた無線タグリーダ20aと20bと、(前記イ(ア))
出入口であるゲート60を通過する人が保持する無線タグ10と、(前記イ(イ))
無線タグリーダ20aと20bからID情報と電波強度値と時刻情報を受信し、受信した情報に基づいて無線タグ10の移動方向の判定を行うサーバ装置30と、(前記イ(ウ))
から構成され、
無線タグリーダ20a、20bは、無線タグ10から受信した無線電波からID情報及び受信時の電波強度値を検出し、内部の時計から受信時の時刻情報を取得し、検出したID情報と電波強度値と時刻情報とをサーバ装置30に送信し、(前記イ(エ))
サーバ装置30は、無線タグリーダ20a、20bからID情報と電波強度値と時刻情報を受信し、受信した前記情報が一定の時間以上、一定の電波強度を受信しているか否かを判定し、受信している場合には安定して受信していると認定する処理である平滑化処理後の電波強度値の時間的変化履歴に基づいて電波強度値の電波のパターンを判定して無線タグ10の移動方向を判定する、(前記イ(オ))
移動方向判定システム1(前記イ(カ))
(3) 引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア) 「管理対象の通過を管理すべき境界の近傍に設けられた第1の通信装置」について
引用発明は、出入口であるゲート60を通過する人が保持する無線タグ10の移動方向を判定するための移動方向判定システム1であり、無線タグ10の移動方向を判定することは、前記「(無線タグ10を保持している)人」の移動方向を判定することにもなることは明らかであるから、引用発明の「(無線タグ10を保持して)出入口であるゲート60を通過する人」は、本件補正発明の「管理対象」に相当する。
また、引用発明の「出入口であるゲート60」は、無線タグ10を保持する人が通過する地点であるから、本件補正発明の「(管理対象が通過する)境界」という点で共通している。
さらに、引用発明の「無線タグリーダ20aと20b」は、出入口であるゲート60の近傍に設けられるものであるから、本件補正発明の「境界の近傍に設けられた第1の通信装置」に相当する。
してみると、本件補正発明と引用発明は、「管理対象が通過する境界の近傍に設けられた第1の通信装置」を備える点で共通している。
一方、本件補正発明の「境界」は、「管理対象の通過を管理すべき」ためのものであるのに対し、引用発明の「出入口であるゲート60」は、「(無線タグ10を保持して)出入口であるゲート60を通過する人を管理するためのものである」旨特定されていない点で、両発明は相違している。
(イ) 「前記境界を通過する管理対象が所持又は装着する第2の通信装置」について
引用発明の「保持する」ことは、本件補正発明の「所持又は装着する」ことに相当する。
してみると、上記(ア)で検討した事項も踏まえると、引用発明の「出入口であるゲート60を通過する人が保持する無線タグ10」は、本件補正発明の「前記境界を通過する管理対象が所持又は装着する第2の通信装置」に相当する。
(ウ) 「前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の通信履歴を取得し、前記通信履歴に基づいて、管理対象が前記境界を通過した向きを判定する管理装置」について
引用発明の「ID情報と電波強度値と時刻情報」は、無線タグリーダ20a、20bが無線タグ10から受信した無線電波から検出又は取得するものであり、通信の履歴といえる。そして、引用発明の「サーバ装置30」は、無線タグリーダ20a、20bから送信された前記「ID情報と電波強度値と時刻情報」を受信するのであるから、引用発明の「サーバ装置30」は、本件補正発明の「前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の通信履歴を取得する」との機能を備えているといえる。
また、上記(ア)、(イ)で検討した点を踏まえると、引用発明の「サーバ装置30」において「無線タグ10の移動方向の判定を行う」ことは、本件補正発明の「管理対象が前記境界を通過した向きを判定する」ことに相当する。
してみると、引用発明の「サーバ装置30」は、本件補正発明の「前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の通信履歴を取得し、前記通信履歴に基づいて、管理対象が前記境界を通過した向きを判定する管理装置」に相当する。
(エ) 「前記管理装置は、管理対象が前記境界を通過した向きの判定精度を向上させるために、前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の通信の電波強度が所定値以上である通信履歴に基づいて、管理対象が前記境界を通過した向きを判定する」について
引用発明のサーバ装置30において行われる「平滑化処理」は、「無線タグリーダ20a、20bからID情報と電波強度値と時刻情報を受信し、受信した前記情報が一定の時間以上、一定の電波強度を受信しているか否かを判定し、受信している場合には安定して受信していると認定する処理」であり、前記「安定して受信していると認定する」目的は、無線タグリーダ20a、20bから受信するID情報と電波強度値と時刻情報から不安定な情報を排除することにより、管理対象が前記境界を通過した向きの判定精度を向上させることにあるのは明らかである。
してみると、本件補正発明と引用発明は、「前記管理装置は、管理対象が前記境界を通過した向きの判定精度を向上させるために、前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の通信の電波強度を含む通信履歴に基づいて、管理対象が前記境界を通過した向きを判定する」点で共通している。
一方、両発明は、「管理対象が前記境界を通過した向きを判定する」点に関し、本件補正発明の「管理装置」は、「電波強度が所定値以上である通信履歴に基づいて」判定するのに対し、引用発明の「サーバ装置30」は、「平滑化処理後の電波強度値の時間的変化履歴に基づいて」判定する点で相違している。
(オ) 「管理システム」について
本件補正発明と引用発明は、「システム」という点で共通しているものの、本件補正発明は「管理システム」であるのに対し、引用発明は「移動方向判定システム1」である点で両発明は相違している。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「管理対象が通過する境界の近傍に設けられた第1の通信装置と、
前記境界を通過する管理対象が所持又は装着する第2の通信装置と、
前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の通信履歴を取得し、前記通信履歴に基づいて、管理対象が前記境界を通過した向きを判定する管理装置と、
を備え、
前記管理装置は、管理対象が前記境界を通過した向きの判定精度を向上させるために、前記第1の通信装置と前記第2の通信装置との間の通信の電波強度を含む通信履歴に基づいて、管理対象が前記境界を通過した向きを判定する
システム」
<相違点1>
本件補正発明の「境界」は、「管理対象の通過を管理すべき」ためのものであるのに対し、引用発明の「出入口であるゲート60」は、「(無線タグ10を保持して)出入口であるゲート60を通過する人を管理するためのものである」旨特定されていない点。
<相違点2>
「管理対象が前記境界を通過した向きを判定する」点に関し、本件補正発明の「管理装置」は、「電波強度が所定値以上である通信履歴に基づいて」判定するのに対し、引用発明の「サーバ装置30」は、「平滑化処理後の電波強度値の時間的変化履歴に基づいて」判定する点。
<相違点3>
本件補正発明は「管理システム」であるのに対し、引用発明は「移動方向判定システム1」である点。
(4) 判断
以下、相違点について検討する。
ここで、上記相違点1及び相違点3は、引用発明を構成している「境界」や「システム」が、管理を目的としたものであるかという点で共通しているので合わせて検討する。
ア 相違点1及び相違点3について
引用発明は、引用文献の段落【0002】~【0004】に記載されているように、無線タグを利用して入退場者の移動方向の検出を行い入退場の管理を可能とする技術において生じた課題を解決するための発明であることを踏まえると、引用発明の「移動方向判定システム」は、出入口であるゲート60を通過する人の入退場を管理するためのシステムを想定していることは明らかである。
してみると、引用発明の「出入口であるゲート60」を当該ゲート60を通過する人を管理するために用いること、及び、引用発明の「移動方向判定システム」を人の入退場を管理するための管理システムとして用いることは、いずれも当業者であれば容易に想到し得る事項である。
イ 相違点2について
引用発明における平滑化処理とは、「無線タグリーダ20a、20bからID情報と電波強度値と時刻情報を受信し、受信した前記情報が一定の時間以上、一定の電波強度を受信しているか否かを判定し、受信している場合には安定して受信していると認定する処理」であり、このうち、「一定の時間以上」の「一定の時間」は、無線タグからの間欠送信の時間間隔の数倍等として定められるものであり(段落【0016】、【0021】)、「一定の時間以上」という条件は、間欠送信の時間間隔が十分に(連続送信を近似するものといえる程度に)短い場合には、安定して受信していると認定するための条件としての意味を失うものである。そして、「一定の電波強度」という条件は、電波強度値を基準となる任意の値を超えるもののみとして安定して受信していると認定するための条件であることが明らかであって、この「一定の電波強度」の条件の前提となる「基準となる任意の値」は、本件補正発明の「所定値」に相当し、この条件は、「通信の電波強度が所定値以上である」という条件に相当する。
以上を踏まえると、引用発明において、電波強度値の電波のパターンを判定して無線タグ10の移動方向を判定するために用いられる「平滑化処理後の電波強度値の時間的変化履歴」は、要するに、通信の電波強度が所定値以上である通信履歴から間欠送信に伴う不安定の影響を除いたものに対応するものであり、本件補正発明の「通信の電波強度が所定値以上である通信履歴」のバリエーションとして、その下位概念に位置づけられるものであるといえる。
してみると、当該相違点2は、文言上の相違であり実質的な相違点でないか、実質的な相違点であるにしても、無線タグからの送信電波に応じて当業者が適宜設計すべき事項にすぎない。
ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の構成から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第 126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第4 本願発明について
1 本願発明
令和6年11月6日にされた手続補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項1~6に係る発明は、令和6年5月16日にされた手続補正による補正後の請求項1~6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1~6に係る発明は、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知文献2、3に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2006-071466号公報
周知文献2:特開2016-070917号公報
周知文献3:特開2005-215898号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本件補正前の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の[理由]1(2)に記載したとおりのものであって、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「管理対象が前記境界を通過した向きを判定する」点に関し、「管理対象が前記境界を通過した向きの判定精度を向上させるために、」との限定に係る限定事項を削除したものに相当する。
本願発明と引用発明を対比すると、両者の一致点及び相違点は、前記第2の[理由]2(3)イに示したとおりである。
そして、前記第2の[理由]2(4)に記載したとおり、相違点は当業者が容易になし得たものであり、本願発明の奏する作用効果も引用発明の構成から予測される範囲内のものである。
してみると、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-017760