特許拒絶査定不服審判
2025-001020
プラスチックのモノマーへの高温熱分解
- 審判番号
- 2025-001020
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-501679外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2025年01月24日
- 審決日
- 2026年02月25日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ユーオーピー エルエルシー
- 【請求人代理人】山本 修
- 【請求人代理人】宮前 徹
- 【請求人代理人】松尾 淳一
- 【請求人代理人】中田 尚志
- 分類
- P18 .113-Z (C08J) / P18 .121-Z (C08J) / P18 .537-Z (C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-501679「プラスチックのモノマーへの高温熱分解」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 1月20日国際公開、WO2022/016178、令和 5年 8月 8日国内公表、特表2023-534224〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)7月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2020年7月11日、米国(US))を国際出願日とする出願であって、令和6年2月29日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内に応答がなかったため、同年9月19日付けで拒絶査定がされ(謄本送達は9月26日)、これに対し、令和7年1月24日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和7年1月24日付けの手続補正についての補正の適否
1 補正の内容
令和7年1月24日付け手続補正書に補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の
「【請求項1】
プラスチックをモノマーに変換するためのプロセスであって、
プラスチック供給物流を600~1100℃の高温まで加熱することと、
0.6~20の炭素供給物対希釈剤ガスモル比で、前記プラスチック供給物流を希釈剤ガス流と接触させることと、
前記プラスチックを、モノマーを含むガス状生成物に熱分解することと、
前記ガス状生成物から前記モノマーを回収することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記プラスチック供給物流を高温熱担体粒子流と接触させて、前記プラスチック供給物流を加熱することを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記希釈剤ガス流で前記高温熱担体粒子流を持ち上げることを更に含む、請求項2に記載のプロセス。」
を
「【請求項1】
プラスチックをモノマーに変換するためのプロセスであって、
プラスチック供給物流を600~1100℃の高温まで加熱することと、
0.6~20の炭素対ガスモル比で、前記プラスチック供給物流を希釈剤ガス流と接触させることと、ここで、前記炭素対ガスモル比は、前記プラスチック供給物流中の炭素原子のモル数と前記希釈剤ガス流中のガスのモル数との比であり、
前記プラスチックを、モノマーを含むガス状生成物に熱分解することと、
前記ガス状生成物から前記モノマーを回収することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記プラスチック供給物流を高温熱担体粒子流と接触させて、前記プラスチック供給物流を加熱することを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記希釈剤ガス流で前記高温熱担体粒子流を持ち上げることを更に含む、請求項2に記載のプロセス。」
とする補正を含むものである。
2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1の「炭素供給物対希釈剤ガスモル比」を「炭素対ガスモル比」に変更する補正事項と、「炭素対ガスモル比」は「前記プラスチック供給物流中の炭素原子のモル数と前記希釈剤ガス流中のガスのモル数との比であ」るとの定義を追加する補正事項からなる。そして、いずれの補正事項も、特許法第36条第6項第2号に基づく拒絶理由が通知されていた事項について、解消しようとするものであるから、特許法第17条の2第5項第4号で掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえる。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定を満たすものである。
以上のとおりであるので、本件補正は適法になされたものである。
第3 本願発明
本件補正は、前記第2に示したように適法になされたものであるから、この出願の発明は、本件補正後の特許請求の範囲に記載されているとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
プラスチックをモノマーに変換するためのプロセスであって、
プラスチック供給物流を600~1100℃の高温まで加熱することと、
0.6~20の炭素対ガスモル比で、前記プラスチック供給物流を希釈剤ガス流と接触させることと、ここで、前記炭素対ガスモル比は、前記プラスチック供給物流中の炭素原子のモル数と前記希釈剤ガス流中のガスのモル数との比であり、
前記プラスチックを、モノマーを含むガス状生成物に熱分解することと、
前記ガス状生成物から前記モノマーを回収することと、を含む、プロセス。」
第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
「(新規性)この出願の請求項1~3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」という理由を含むものであり、刊行物として以下の引用文献1~2を引用するものである。
<引用文献>
1.特表平6-507647号公報
2.国際公開第03/074456号
第5 当審の判断
当審は、原査定のとおり、下記刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、と判断する。
1 刊行物
(1)特表平6-507647号公報(原審の引用文献1。以下、「引用文献1」という。)
(2)国際公開第03/074456号(原審の引用文献2。以下、「引用文献2」という。)
2 引用文献の記載事項
下線は合議体による。
(1)引用文献2
ア 第1頁5行~13行
「技術分野
本発明は、水蒸気の存在下、フルオロポリマーの熱分解により、フルオロモノマーを製造する方法に関する。製造されるフルオロモノマーは、フルオロポリマーを製造するために用いることができる。
背景技術
フルオロポリマーはその高い市場価値のために、 ポリテトラフルフルオロエチレン(「PTFE」とも呼ぶ)をはじめとするフルオロポリマーを可能な限りリサイクルすることが望まれている。」
イ 第9頁4行~23行
「実施例
以下、 実施例により本発明を更に具体的に説明する。
図1に概略的にフローシートで示すロータリーキルン炉を有するロータリーキルン装置を用いて、本発明のフルオロモノマーの製造方法を実施した。ロータリーキルン炉5は、長さ500mm、直径100mmの加熱管6を有し、この加熱管は、その周囲に分割して配置した温度設定が可能な電気ヒーター7により外部から加熱できるように構成されている。 加熱管は、約1° の角度で前方(水蒸気の流れ方向基準)が下がるように傾斜し、1~30rpmで回転できる。ホッパー2から熱分解すべきフルオロポリマー(予め所定の寸法(3~5mm程度)に微粉砕したもの)と石英砂(3~5mm程度の寸法)との混合物をフィーダ一4により連続的にロータリーキルンに供給し、他方、ライン3から水蒸気を予熱器1を通して加熱してロータリーキルンに連続的に供給した。
ロータリーキルンを通過して排出される水蒸気に、熱分解により生成するガス同伴をさせて、これを水蒸気排出ライン9を経てガス冷却工程(図示せず)に導いて急冷し、水蒸気を凝縮して水分を除去し、水分を除去した後のガスの組成をガスクロマトグラフィーにより求めた。尚、石英砂を回収容器7に回収した。この石英砂は、ホッパー2に戻して再利用できる。このような装置をスケールアップすることによって、工業的にも同様のフローで本発明の方法を実施できる。
上述のロータリーキルンを用いて、表1に示す条件でPTFEの熱分解を実施した。その結果も併せて表1(次表)に示している。」
ウ 第10頁
「表1
[図:0001436911000001.jpg]
」
エ
「
[図:0001436911000002.jpg]
」
(2)引用文献1
ア
「請求の範囲
1.オレフィンを製造する方法において、合成樹脂廃棄物を加熱によって溶融しそして熱分解によって合成樹脂溶融物を所望の粘度に調整しそして生成物を0.02~10秒の滞留時間の間に700~1100℃に加熱することを特徴とする、上記オレフィンの製造方法。
・・・
13.少なくとも1種類の合成樹脂がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、ポリブテン、ポリイソブテン、線状のポリブタジエン等の群の少なくとも1種類を含有する合成樹脂廃棄物を使用する請求項1~12に記載の方法。」
イ 第2頁左下欄4行~7行
「本発明は、合成樹脂廃棄物を380~650℃の温度範囲で熱的に前処理することによって所望の粘度に調整しそして最初の処理段階からの生成物を700~1100℃の温度で熱的に処理することによって合成樹脂廃棄物からオレフィンを製造する方法に関する。」
ウ 第2頁右下欄20行~24行
「出願人は今度は、廃棄物を所望の粘度に調整しながら380~600℃、好ましくは400~600℃および特に好ましくは450~550℃の温度範囲で本発明に従って熱的予備処理しそして予備処理した材料を700~l100℃で熱処理してエチレンを約30%またはそれよりも更に改善された収率で得並びにC3~C4-オレフィンを得ることができることを確認した。」
エ 第3頁左上欄8行~20行
「粘度調整の為の処理段階において温度-および滞留時間を調整する際の重要な点は、700~1100℃での処理段階にエチレン-またはプロピレン収率を最大にすることである。即ち最初に挙げた熱処理段階での方法条件を700~1100℃の処理段階において最適なオレフィン収率が得られる様に調整する。粘度調整段階に水蒸気を既に導入するのが有利である。これは、液化した物質の蒸発を助成するのにも役立ち得る。
所望の粘度に調整する為の熱処理段階の前に、既に溶融を行いそして200~480℃、好ましくは250~430℃の温度に調整される熱処理をつなげるのが有利である。その滞留時間は同様に2~1500分である。更に、前に連結された熱処理段階は、使用生成物中にHClとして存在する塩素が殆ど乃至完全に除かれるよいに実施する。この場合に、塩化水素の除去は不活性ガス流の導入によって容易にされ得る。更に、塩基例えばアルカリ-およびアルカリ土類金属塩基の添加によるHCl放出が改善されあるいは完結し得る。」
オ 第3頁右上欄2行~16行
「700~1100℃での処理段階を供給した水蒸気の存在下に実施するのが有利である。しかしながら水蒸気の替わりに水素も使用でき、水蒸気と水素との混合物を使用してもよい。
合成樹脂廃棄物と添加される水蒸気および/または水素との量比は1重量部:(0.1~2重量部)である。特に有利な比は1重量部:(0.3~1.3重量部)である。後続の処理段階の温度は700~1100℃、好ましくは750~900℃、特に好ましくは780~860℃である。滞留時間は0.02~10秒、特に好ましくは0.1~2秒である。
700~1100℃で運転する熱処理段階で蒸発しそしてその蒸気を分解してオレフィンをもたらす様に粘度を調整するのが特に有利である。原則として調整された粘度の材料は700~1100℃の熱処理段階で液体状態で使用してもよい。
本発明の方法で特に適する使用生成物は合成樹脂廃棄物あるいは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブテン、ポリイソブチン、ポリビニルクロライドまたは線状のポリブタジエン等の群より成る任意の混合物である。」
カ 第3頁左下欄9行~20行
「図面において本発明の方法を例示的に且つ簡潔に説明する。
(1)は合成樹脂廃棄物、例えば家庭廃棄物からのそれの為の保存場所である。(2)を通って廃棄物を、前に連結された熱的な予備処理段階(3)に搬送し、そこに(4)を通って塩基を添加してもよい。(5)を通ってHClを除く。実質的に塩素を含まない液状生成物を、所望の粘度に調製する為に装置(6)に流し込む。(7)を通って水蒸気を供給する。(6)でも塩基を使用することができる。(6)から材料を、700~1100℃で運転される分解装置中に材料を流し込む。分解生成物は(10)を通って急冷器(11)を通り、分離装置(12)に流入し、そこで生成物混合物がオレフィンと、通例の条件のもとで液体である生成物とに分離される。オレフィン混合物を個々のオレフィンに分離する分離技術を含めた分離技術は当業者が知っており、それ故に詳細に説明する必要はない。」
キ
「
[図:0001436911000003.jpg]
」
3 引用文献に記載された発明
(1)引用文献2に記載された発明
前記2(2)ア~エから、特に、ウの表1の実施例3に着目すると、引用文献2には、「ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)の熱分解により、フルオロモノマーを製造する方法であって、熱分解温度が600℃であり、ホッパー2から熱分解すべきポリテトラフルオロエチレンと石英砂との混合物をフィーダ一4により連続的にロータリーキルンに供給し、ライン3から水蒸気を、ポリテトラフルオロエチレン供給量に対する水蒸気供給量が質量比で0.45となるように、予熱器1を通して加熱してロータリーキルンに連続的に供給し、ロータリーキルンを通過して排出される水蒸気に、熱分解により生成するガスを同伴させて、これを水蒸気排出ライン9を経てガス冷却工程に導いて急冷し、水蒸気を凝縮して水分を除去する方法。」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
(2)引用文献1に記載された発明
前記2(1)ア~カから、特に、合成樹脂廃棄物がポリエチレンの場合に着目すると、引用文献1には、「ポリエチレンを380~650℃の温度範囲で熱的予備処理することによって所望の粘度に調整し、熱的予備処理した材料を700~1100℃の温度範囲で熱処理することによってポリエチレンからオレフィンを製造して分離する方法であって、以下の工程を含む方法。
熱的予備処理の前に、200~480℃の温度範囲で熱処理を行い、ポリエチレン中のHClを除去する工程、
ポリエチレンを380~650℃の温度範囲で熱的予備処理する際に、水蒸気を導入する工程、
700~1100℃での処理段階を供給した水蒸気の存在下に実施し、ポリエチレンと水蒸気との量比が1重量部:(0.1~2重量部)となるように水蒸気を添加する工程。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
4 本願発明について
(1)本願発明と引用発明2との対比
本願発明と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)の熱分解により、フルオロモノマーを製造する方法」は、本願発明の「プラスチックをモノマーに変換するためのプロセス」に相当する。
また、引用発明2の「熱分解温度が600℃であり」及び「ライン3から水蒸気を、ポリテトラフルオロエチレン供給量に対する水蒸気供給量が質量比で0.45となるように、予熱器1を通して加熱してロータリーキルンに連続的に供給し」は、本願発明の「プラスチック供給物流を600~1100℃の高温まで加熱することと」及び「前記プラスチック供給物流を希釈剤ガス流と接触させることと」に相当する。
そして、引用発明2の「ロータリーキルンを通過して排出される水蒸気に、熱分解により生成するガスを同伴させて、これを水蒸気排出ライン9を経てガス冷却工程に導いて急冷し、水蒸気を凝縮して水分を除去する」は、本願発明の「前記プラスチックを、モノマーを含むガス状生成物に熱分解することと、前記ガス状生成物から前記モノマーを回収すること」を充足する。
してみると、本願発明と引用発明2は、
「プラスチックをモノマーに変換するためのプロセスであって、
プラスチック供給物流を600~1100℃の高温まで加熱することと、
前記プラスチック供給物流を希釈剤ガス流と接触させることと、
前記プラスチックを、モノマーを含むガス状生成物に熱分解することと、
前記ガス状生成物から前記モノマーを回収することと、を含む、プロセス。」の点で一致し、以下の点(「相違点1」)で一応相違する。
(相違点1)
本願発明は、「0.6~20の炭素対ガスモル比で、前記プラスチック供給物流を希釈剤ガス流と接触させることと、ここで、前記炭素対ガスモル比は、前記プラスチック供給物流中の炭素原子のモル数と前記希釈剤ガス流中のガスのモル数との比であ」ることが特定されているのに対し、引用発明2は、「ライン3から水蒸気を、ポリテトラフルオロエチレン供給量に対する水蒸気供給量が質量比で0.45となるように、予熱器1を通して加熱してロータリーキルンに連続的に供給」することが特定されているものの、ポリテトラフルオロエチレン中の炭素原子のモル数と水蒸気のモル数との比が記載されていない点。
(2)相違点1について検討する。
引用発明2は、「ライン3から水蒸気を、ポリテトラフルオロエチレン供給量に対する水蒸気供給量が質量比で0.45となるように、予熱器1を通して加熱してロータリーキルンに連続的に供給」するため、ポリテトラフルオロエチレンと水蒸気との質量比が1:0.45の際のポリテトラフルオロエチレンの炭素原子のモル数と水蒸気のモル数との比を計算する。
ポリテトラフルオロエチレンの構成単位(-C2F4-)の分子量(100.02)、ポリテトラフルオロエチレン中の構成単位中の炭素原子の数(2)、水の分子量(18.02)、ポリテトラフルオロエチレン供給量に対する水蒸気供給量の質量比0.45より換算すると、(1/100.02)×2/(0.45/18.02)=0.80となる。
そうすると、引用発明2の「ライン3から水蒸気を、ポリテトラフルオロエチレン供給量に対する水蒸気供給量が質量比で0.45となるように、予熱器1を通して加熱してロータリーキルンに連続的に供給し」は、本願発明の「0.6~20の炭素対ガスモル比で、前記プラスチック供給物流を希釈剤ガス流と接触させることと、ここで、前記炭素対ガスモル比は、前記プラスチック供給物流中の炭素原子のモル数と前記希釈剤ガス流中のガスのモル数との比であり」に相当するといえる。
したがって、相違点1については、本願発明と引用発明2とを対比した場合、実質的な相違点ではないといえ、本願発明は、引用発明2に記載された発明である。
(3)本願発明と引用発明1との対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「ポリエチレンからオレフィンを製造する方法」は、本願発明の「プラスチックをモノマーに変換するためのプロセス」に相当する。
また、引用発明1の「熱的予備処理した材料を700~1100℃の温度範囲で熱処理する」及び「700~1100℃での熱処理段階を供給した水蒸気の存在下に実施し、ポリエチレンと水蒸気との量比が1重量部:(0.1~2重量部)となるように水蒸気を添加する」は、本願発明の「プラスチック供給物流を600~1100℃の高温まで加熱すること」及び「前記プラスチック供給物流を希釈剤ガス流と接触させること」に相当する。
そして、前記2(1)エには「700~1100℃で運転する熱処理段階で蒸発しそしてその蒸気を分解してオレフィンをもたらす様に粘度を調整するのが特に有利である。原則として調整された粘度の材料は700~1100℃の熱処理段階で液体状態で使用してもよい。」と記載されるとおり、引用発明1の「ポリエチレンからオレフィンを製造して分離する方法」は、ポリエチレンを、オレフィンを含む蒸気に熱処理するものであるから、本願発明の「前記プラスチックを、モノマーを含むガス状生成物に熱分解することと、前記ガス状生成物から前記モノマーを回収すること」に相当する。
してみると、本願発明と引用発明1は、
「プラスチックをモノマーに変換するためのプロセスであって、
プラスチック供給物流を600~1100℃の高温まで加熱することと、
前記プラスチック供給物流を希釈剤ガス流と接触させることと、
前記プラスチックを、モノマーを含むガス状生成物に熱分解することと、
前記ガス状生成物から前記モノマーを回収することと、を含む、プロセス。」の点で一致し、以下の点(「相違点2」)で一応相違する。
(相違点2)
本願発明は、「0.6~20の炭素対ガスモル比で、前記プラスチック供給物流を希釈剤ガス流と接触させることと、ここで、前記炭素対ガスモル比は、前記プラスチック供給物流中の炭素原子のモル数と前記希釈剤ガス流中のガスのモル数との比であ」ることが特定されているのに対し、引用発明1は、「ポリエチレンと水蒸気との量比が1重量部:(0.1~2重量部)となるように水蒸気を添加する」ことが特定されているものの、ポリエチレン中の炭素原子のモル数と水蒸気のモル数との比が記載されていない点。
(4)相違点2について検討する。
引用発明1は、「ポリエチレンと水蒸気との量比が1重量部:(0.1~2重量部)となるように水蒸気を添加する」ため、ポリエチレンと水蒸気との量比が(ア)1重量部:0.1重量、(イ)1重量部:2重量部の際のポリエチレン中の炭素原子のモル数と水蒸気のモル数との比を計算する。
ポリエチレンと水蒸気との量比が(ア)1重量部:0.1重量部の場合、ポリエチレンの構成単位(-C2H4-)の分子量(28.05)、ポリエチレン中の構成単位中の炭素原子の数(2)、水の分子量(18.02)から換算すると、(ポリエチレン中の炭素原子のモル数と水蒸気のモル数との比)=(1g/28.05)×2/(0.1g/18.02)=約12.8となる。
ポリエチレンと水蒸気との量比が(イ)1重量部:2重量部の場合、(ア)と同様に計算すると、(ポリエチレン中の炭素原子のモル数と水蒸気のモル数との比)=(1g/28.05)×2/(2g/18.02)=約0.64となる。
そうすると、引用発明1の「ポリエチレンと水蒸気との量比が1重量部:(0.1~2重量部)となるように水蒸気を添加する」は、本願発明の「0.6~20の炭素対ガスモル比で、前記プラスチック供給物流を希釈剤ガス流と接触させることと、ここで、前記炭素対ガスモル比は、前記プラスチック供給物流中の炭素原子のモル数と前記希釈剤ガス流中のガスのモル数との比であり」に相当するといえる。
したがって、相違点2については、本願発明と引用発明1とを対比した場合、実質的な相違点ではないといえ、本願発明は、引用発明1に記載された発明である。
(5)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の第4頁14行~1行において、「引用文献1及び引用文献2のいずれも、0.6~20の炭素対ガスモル比という本願発明の構成やそれによって奏される効果を教示するものではありません。」と主張する。
しかしながら、前記(1)及び(2)で検討したとおり、引用発明2及び引用発明1には、「プラスチック供給物流に対して、所定の比率(0.6~20の炭素対ガスモル比)で希釈剤ガス流を接触させること」が記載されており、審判請求人の主張を採用することができない。
(6)まとめ
したがって、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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