特許異議申立
2026-700160
コンテナ脱着車
- 審判番号
- 2026-700160
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-043230
- 登録番号
- 7741227
- 請求日
- 2026年02月20日
- 審決日
- 2026年07月30日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】新明和工業株式会社
- 【異議申立人】清水 真美子
- 審判長/審判官
- 審判長 田村 耕作
- 審判官 落合 弘之
- 審判官 高橋 学
- 分類
- P1651.121-Y (B60P)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7741227号発明「コンテナ脱着車」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7741227号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7741227号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和6年3月19日に出願され、令和7年9月8日にその特許権の設定登録がされ、同年9月17日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1~6に係る特許に対し、令和8年2月20日に特許異議申立人清水真美子(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行い、同年5月11日に特許異議申立書に対する手続補正書が提出された。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~6の特許に係る発明(以下「本件発明1」などという。)は、本件特許の特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のものである。
「【請求項1】
車台に対してコンテナを積み下ろしする荷役装置を備えるとともにトレーラと連結し牽引可能な構成を備えたコンテナ脱着車において、
前記車台に回動自在に連結されたアームと、当該アームに回転自在に取り付けられて接地可能なローラとを有する左右のローラジャッキを備え、
前記左右のローラジャッキは、前記車台の後部において、前記トレーラの連結装置が挿通可能となるように前記車台の左右両側に互いに間隔をあけて配置されているとともに、前記アームは前方に延びて格納されている格納状態と下方に延びて地面に接近した張出状態とに姿勢変更可能に構成されており、
前記連結装置は、前記車台の前後方向における前部が基部よりも幅が狭く構成されており、
前記前部が前記左右のローラジャッキに設けられた前記間隔内に挿通した状態で前記トレーラに対してコンテナを積み下ろし可能に構成されており、
前記連結装置を前記車台の下のスペースに受け入れた状態で、前記ローラジャッキを前記格納状態から前記張出状態に姿勢変更可能に構成されている
ことを特徴とするコンテナ脱着車。
【請求項2】
請求項1に記載のコンテナ脱着車において、
前記左右のローラジャッキの間隔は、前記荷役装置のアームの幅より大きいことを特徴とするコンテナ脱着車。
【請求項3】
請求項1に記載のコンテナ脱着車において、
左側の前記ローラジャッキは、前記車台の左端を通る鉛直面に交わる位置に配置され、
右側の前記ローラジャッキは、前記車台の右端を通る鉛直面に交わる位置に配置される
ことを特徴とするコンテナ脱着車。
【請求項4】
請求項1に記載のコンテナ脱着車において、
左側の前記ローラジャッキは、前記車台の左端よりも全部が左側に配置され、
右側の前記ローラジャッキは、前記車台の右端よりも全部が右側に配置される
ことを特徴とするコンテナ脱着車。
【請求項5】
請求項4に記載のコンテナ脱着車において、
前記車台に対して前記アームを支持するブラケットと前記アームとを連結する軸が前記車台よりも下側に位置していることを特徴とするコンテナ脱着車。
【請求項6】
請求項5に記載のコンテナ脱着車において、
前記アームが水平に格納可能であることを特徴とするコンテナ脱着車。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、令和8年5月11日提出の手続補正書により補正された特許異議申立書(以下「異議申立書」という。)において、次の証拠を提示し、以下の特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張している。
1 提示された証拠
甲第1号証:米国特許出願公開第2002/0146306号明細書
甲第2号証:国際公開第90/14248号
甲第3号証:特開2011-5967号公報
以下、甲第○号証を甲○という。
2 申立理由
(1)甲1を主たる証拠とした申立理由(以下「申立理由1」という。)
本件発明1~6は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項、及び周知技術(甲3)に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)甲2を主たる証拠とした申立理由(以下「申立理由2」という。)
本件発明1~6は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1 甲号証について
1-1 甲1について
(1)甲1の認定事項
甲1の[0019]~[0022]及び[0027]、並びに図1~6及び10から、甲1について、以下の事項が認められる(当審訳で示す。以下同様。)。
ア 甲1の図1に、当審において部材名を付加した以下の参考図に示すように、車両18は、コンテナを積載する車台を有している。
[参考図]
[図:0001439235000001.jpg]
イ 前記ア、[0019]、[0021]、及び[0022]、並びに図1~6から、車両18は、車台に対してコンテナを積み降ろしするホイスト20を備え、トレーラ22を牽引可能である。
ウ [0020]から、トレーラ22の前部24には、トレーラ22を車両18に連結するためのヒッチアセンブリ28が装備される。
エ [0027]から、ヒッチアセンブリ28は、間隔を置いて配置された一対のアーム50を有するドローバー30を含み、これらのアーム50は前方に収束する形状となっている。
オ 前記ア、[0020]及び[0022]、並びに図1~6及び10から、ドローバー30は、ドローバーピボット34を中心とした回動動作によって、自由端32を選択的に位置決めでき、車両18がトレーラ22の前部24に対して十分に進入できるように、自由端32が車台の下で車両18と干渉しない「地面」位置に配置され、車両18からトレーラ22へのコンテナの確実な移送が保証される。
(2)甲1に記載された発明
前記(1)から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
[甲1発明]
「車台に対してコンテナを積み降ろしするホイスト20を備え、トレーラ22を牽引可能である車両18において、
前記トレーラ22の前部24には、前記トレーラ22を車両18に連結するためのヒッチアセンブリ28が装備され、
前記ヒッチアセンブリ28は、間隔を置いて配置された一対のアーム50を有するドローバー30を含み、前記一対のアーム50は前方に収束する形状となっており、
前記ドローバー30は、ドローバーピボット34を中心とした回動動作によって、自由端32を選択的に位置決めでき、
車両18が前記トレーラ22の前記前部24に対して十分に進入できるように、前記自由端32が車台の下で車両18と干渉しない「地面」位置に配置され、車両18から前記トレーラ22へのコンテナの確実な移送が保証される、
車両18。」
(3)甲1に記載された事項
前記(1)から、甲1には、次の事項(以下「甲1記載事項」という。)が記載されているといえる。
[甲1記載事項]
「車台に対してコンテナを積み降ろしするホイスト20を備え、トレーラ22を牽引可能である車両18において、車両18がトレーラ22の前部24に対して十分に進入でき、車両18からトレーラ22へのコンテナの確実な移送が保証されるように、トレーラ22を車両18に連結するヒッチアセンブリ28のドローバ30の自由端32が車台の下の車両18と干渉しない「地面」位置に配置されること。」
1-2 甲2について
(1)甲2の認定事項
ア 甲2の図5から、一対の脚部材12a及び12bは、トレーラ1の左右両側に設けられることが看取できる。
イ 甲2の13ページ34行~14ページ2行から、各脚部材12a、12bの自由端12c、12dに2組の車輪対27a、27bが取り付けられている。
ウ 甲2の20ページの請求項1、及び11ページ32行~12ページ31行から、少なくとも1つの動力ユニットは、支持脚12を回転させるためのものである。
エ 甲2の11ページ32行~12ページ31行、13ページ34行~14ページ2行、及び図4から、各脚部材12a、12bの自由端12c、12dは、地面またはその他の支持面に対して角度βをなす下降位置まで回動されて、トレーラ1の後端部1bを支持する。
(2)甲2に記載された発明
前記(1)、甲2の20ページの請求項1、並びに8ページ20~32行、及び11ページ32行~12ページ31行から、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
[甲2発明]
「コンテナ9などの積み荷をトレーラ1の支持面上に移載し、また当該支持面上から移出する移載手段6を備えたトレーラ1が連結されたトラクタ8であって、
前記トレーラ1は、その前端部1aおよび後端部1bの双方を昇降させる昇降手段10~14を備え、前記昇降手段10~14によって前記トレーラ1の前端部1aおよび後端部1bを互いに独立して昇降させることができ、これにより前記トレーラ1への積荷の積込みおよび積卸しを行い、
前記トレーラ1の後端部1bを昇降させる手段は、前記トレーラ1の左右両側に一対の脚部材12a、12bを備える支持脚12と、前記支持脚12を回転させるための少なくとも1つの動力ユニットを含み、
前記各脚部材12a、12bは、その自由端12c、12dに2組の車輪対27a、27bが取り付けられ、その枢着点22において、前記トレーラ1の後端部1bから前記各脚部材12a、12bの全長にほぼ相当する距離だけ離れた位置に取り付けられ、
前記各脚部材12a、12bの自由端12c、12dが、上昇位置において前記トレーラ1の後端部1bの後縁1gの直近に位置し、地面またはその他の支持面に対して角度βをなす下降位置まで回動されて、トレーラ1の後端部1bを支持し、
前記少なくとも1つの動力ユニットは、前記各脚部材12a、12bに対して前記枢着点22を挟んだ反対側に配置されるよう、前記トレーラ1内に設けられている、
トレーラ1が連結されたトラクタ8。」
(3)甲2に記載された事項
前記(1)、甲2の17~18ページの請求項1及び5、及び8ページ20~32行から、甲2には、次の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されているといえる。
[甲2記載事項]
「コンテナ9などの積み荷をトレーラ1の支持面上に移載し、また当該支持面上から移出する移載手段6を備えたトレーラ1が連結されたトラクタ8において、トレーラ1は、その前端部1aおよび後端部1bの双方を昇降させる昇降手段10~14を備え、トレーラ1の後端部1bを昇降させる手段は、トレーラ1の左右両側に一対の脚部材12a、12bを備える支持脚12と、少なくとも1つの動力ユニットを含み、各脚部材12a、12bは、その自由端12c、12dに2組の車輪対27a、27bが取り付けられ、その枢着点22において、トレーラ1の後端部1bから前記各脚部材12a、12bの全長にほぼ相当する距離だけ離れた位置に取り付けられ、各脚部材12a、12bの自由端12c、12dが、上昇位置においてトレーラ1の後端部1bの後縁1gの直近に位置するようになっており、少なくとも1つの動力ユニットは、各脚部材12a、12bに対して前記枢着点22を挟んだ反対側に配置されるよう、トレーラ1内に設けられていること。」
1-3 甲3について
(1)甲3に記載された事項
甲3の段落【0015】、【0027】、【0029】、及び【0033】、並びに図1、3、6、及び7から、甲3には、以下の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されているといえる。
[甲3記載事項]
「車体1の後部のシャシフレーム1aに取り付けられたキャリア装置2にコンテナ3が搭載され、キャリア装置2の後部にジャッキ4を備える荷役車両において、ジャッキ4は、車体1の上下部材1cの下端部寄りの位置に回動自在に取り付けられた左右一対のアーム部4cと、このアーム部4cの先端部に回動自在に取り付けられたローラ4bとを有し、車体1から垂下してローラ4bが地面に近づく下突出位置と、車両前方へ略90°回動して下突出位置よりも上方へローラ4bが地面から退避した収納位置との間を回動可能であり、下突出位置で保持された状態にあるジャッキ4は、積荷作業の際の車体の降下を抑制すること。」
2 申立理由1について
2-1 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明の対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
ア 後者の「車台に対してコンテナを積み降ろしするホイスト20」は、前者の「車台に対してコンテナを積み下ろしする荷役装置」に相当する。
イ 後者の「トレーラ22を牽引可能である」ことは、前者の「トレーラと連結し牽引可能な構成を備え」ることに相当する。
ウ 前記ア及びイから、後者の「車台に対してコンテナを積み降ろしするホイスト20を備え、トレーラ22を牽引可能である車両18」は、前者の「車台に対してコンテナを積み下ろしする荷役装置を備えるとともにトレーラと連結し牽引可能な構成を備えたコンテナ脱着車」に相当する。
エ 後者の「前記トレーラ22を車両18に連結するためのヒッチアセンブリ28」は、前者の「前記トレーラの連結装置」に相当する。
オ 後者の「前記ドローバ30」の「自由端32」は、前者の「前記連結装置」の「前部」に相当する。
カ 後者の「前記ヒッチアセンブリ28は、間隔を置いて配置された一対のアーム50を有するドローバー30を含み、前記一対のアーム50は前方に収束する形状となって」いることは、「前方」が「自由端32」側であるのは明らかなので、前者の「前記連結装置は、前記車台の前後方向における前部が基部よりも幅が狭く構成されて」いることに相当する。
キ 後者の「車両18が前記トレーラ22の前記前部24に対して十分に進入でき」、「車両18から前記トレーラ22へのコンテナの確実な移送が保証される」ことは、前者の「前記トレーラに対してコンテナを積み下ろし可能に構成されて」いることに相当する。
ク 後者の「前記ドローバー30は、ドローバーピボット34を中心とした回動動作によって、自由端32を選択的に位置決めでき、」「車両18が前記トレーラ22の前記前部24に対して十分に進入できるように、前記自由端32が車台の下で車両18と干渉しない「地面」位置に配置され」た状態は、前者の「前記連結装置を前記車台の下のスペースに受け入れた状態」に相当する。
ケ 前記カ~クから、後者の「前記ドローバー30は、ドローバーピボット34を中心とした回動動作によって、自由端32を選択的に位置決めでき、車両18が前記トレーラ22の前記前部24に対して十分に進入できるように、前記自由端32が車台の下で車両18と干渉しない「地面」位置に配置され、車両18から前記トレーラ22へのコンテナの確実な移送が保証される」ことと、前者の「前記前部が前記左右のローラジャッキに設けられた前記間隔内に挿通した状態で前記トレーラに対してコンテナを積み下ろし可能に構成されており、前記連結装置を前記車台の下のスペースに受け入れた状態で、前記ローラジャッキを前記格納状態から前記張出状態に姿勢変更可能に構成されている」ことは、「前記前部が前記連結装置を前記車台の下のスペースに受け入れた状態で、前記トレーラに対してコンテナを積み下ろし可能に構成されている」ことで共通する。
コ 以上の限りにおいて、後者の「車両18」は、前者の「コンテナ脱着車」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、
「車台に対してコンテナを積み下ろしする荷役装置を備えるとともにトレーラと連結し牽引可能な構成を備えたコンテナ脱着車において、
前記トレーラの連結装置は、前記車台の前後方向における前部が基部よりも幅が狭く構成されており、
前記前部が前記連結装置を前記車台の下のスペースに受け入れた状態で、前記トレーラに対してコンテナを積み下ろし可能に構成されている
コンテナ脱着車。」
との点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1-1-1]
本件発明1は、「前記車台に回動自在に連結されたアームと、当該アームに回転自在に取り付けられて接地可能なローラとを有する左右のローラジャッキを備え、前記左右のローラジャッキは、前記車台の後部において、前記トレーラの連結装置が挿通可能となるように前記車台の左右両側に互いに間隔をあけて配置されているとともに、前記アームは前方に延びて格納されている格納状態と下方に延びて地面に接近した張出状態とに姿勢変更可能に構成されており、前記連結装置の前記前部が前記左右のローラジャッキに設けられた前記間隔内に挿通した状態で」前記トレーラに対してコンテナを積み下ろし可能に構成されており、前記連結装置を前記車台の下のスペースに受け入れた状態で、「前記ローラジャッキを前記格納状態から前記張出状態に姿勢変更可能に構成されている」のに対して、甲1発明は、かかる「ローラジャッキ」を備えることが特定されていない点。
(2)相違点についての検討
甲1には、車台に対して、車台に回動自在に連結されたアームと、当該アームに回転自在に取り付けられて接地可能なローラとを有する左右のローラジャッキを備えることについては、記載も示唆もされていない。
一方、甲2には、前記1の1-2(3)で甲2記載事項として示したように、コンテナ9などの積み荷を支持面上に移載するトレーラ1が連結されたトラクタ8において、トレーラ1の後端部1bを昇降させる手段として、トレーラ1の左右両側に一対の脚部材12a、12bを備える支持脚12を設けること、及び各脚部材12a、12bは、その自由端12c、12dに2組の車輪対27a、27bが取り付けられ、その枢着点22において、トレーラ1の後端部1bから各脚部材12a、12bの全長にほぼ相当する距離だけ離れた位置に取り付けられることが記載されている。
他方、甲3には、前記1の1-3(1)で甲3記載事項として示したように、車体1の後部のシャシフレーム1aに取り付けられたキャリア装置2にコンテナ3が搭載される荷役車両において、キャリア装置2の後部にジャッキ4を備えること、及びジャッキ4が車体1の上下部材1cの下端部寄りの位置に回動自在に取り付けられた左右一対のアーム部4cと、このアーム部4cの先端部に回動自在に取り付けられたローラ4bとを有し、車体1から垂下してローラ4bが地面に近づく下突出位置と、車両前方へ略90°回動して下突出位置よりも上方へローラ4bが地面から退避した収納位置との間を回動可能であることが記載されている。
しかしながら、甲2におけるトレーラ1が連結されたトラクタ8は、別のトレーラを牽引するものではないので、牽引される別のトレーラのトラクタ8の連結装置と支持脚12の関係については、記載も示唆もされていない。
また、甲3の段落【0074】及び図11の記載から、甲3の荷役車両は、その後端をトレーラTの後方に位置するように縦列駐車させた状態で、コンテナ3のトレーラTから荷役車両への載せ替えを行うものであるので、甲3においても、トレーラTの荷役車両の連結器200に対して着脱可能に連結される被連結部105とジャッキ4の関係については、記載も示唆もされていない。
すなわち、相違点1-1-1に係る本件発明1の発明特定事項のうち、「左右のローラジャッキ」が「トレーラの連結装置が挿通可能となるように前記車台の左右両側に互いに間隔をあけて配置され」ること、連結装置の「前記前部が前記左右のローラジャッキに設けられた前記間隔内に挿通した状態で」トレーラに対してコンテナを積み下ろし可能に構成されること、及び連結装置を車台の下のスペースに受け入れた状態で「前記ローラジャッキを前記格納状態から前記張出状態に姿勢変更可能に構成されている」ことについては、甲1~3には、記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明において、甲2記載事項及び甲3記載事項を踏まえ、相違点1-1-1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって、本件発明1は、甲1発明、甲2記載事項、及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2-2 本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を付加したものであるから、前記2-1(2)と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 申立理由2について
3-1 本件発明1について
(1)本件発明1と甲2発明の対比
本件発明1と甲2発明を対比する。
ア 後者の「コンテナ9などの積み荷を」「移載し、」「移出する」ことは、前者の「コンテナを積み下ろしする」ことに相当するので、後者の「トレーラ1の支持面上に」「コンテナ9などの積み荷を」「移載し、また当該支持面上から移出する」ことは、前者の「車台に対してコンテナを積み下ろしする」ことに相当する。
イ 前記アから、後者の「コンテナ9などの積み荷をトレーラ1の支持面上に移載し、また当該支持面上から移出する移載手段6」は、前者の「車台に対してコンテナを積み下ろしする荷役装置」に相当する。
そして、後者の「コンテナ9などの積み荷をトレーラ1の支持面上に移載し、また当該支持面上から移出する移載手段6を備えたトレーラ1が連結されたトラクタ8」は、前者の「車台に対してコンテナを積み下ろしする荷役装置を備える」「コンテナ脱着車」に相当する。
ウ 前記ア及びイから、後者の「前記トレーラ1の左右両側に一対の脚部材12a、12bを備える支持脚12と、支持脚12を回転させるための少なくとも1つの動力ユニットを含」むことは、「一対の脚部材12a、12bを備える支持脚12」が「前記トレーラ1」に「回転」自在に連結されていることが明らかなので、前者の「前記車台に回動自在に連結されたアーム」「を有する」ことに相当する。
エ 前記ウから、後者の「前記各脚部材12a、12bは、その自由端12c、12dに2組の車輪対27a、27bが取り付けられ」ることは、前者の「当該アームに回転自在に取り付けられ」た「ローラ」「を有する」ことに相当する。
オ 前記エから、後者の「前記各脚部材12a、12bは、その自由端12c、12dに2組の車輪対27a、27bが取り付けられ、」「前記各脚部材12a、12bの自由端12c、12dが、」「地面またはその他の支持面に対して角度βをなす下降位置まで回動されて、トレーラ1の後端部1bを支持」することは、「自由端12c、12d」に「取り付けられ」た「2組の車輪対27a、27b」が接地していることが明らかなので、前者の「当該アームに回転自在に取り付けられて接地可能なローラ」「を有する」ことに相当する。
カ 前記ウ~オから、後者の「前記トレーラ1の左右両側に一対の脚部材12a、12bを備える支持脚12と、前記支持脚12を回転させるための少なくとも1つの動力ユニットを含」む「前記トレーラ1の後端部1bを昇降させる手段」は、前者の「前記車台に回動自在に連結されたアームと、当該アームに回転自在に取り付けられて接地可能なローラとを有する左右のローラジャッキ」に相当する。
キ 後者の「前記トレーラ1の後端部1bを昇降させる手段は、前記トレーラ1の左右両側に一対の脚部材12a、12bを備える支持脚12」「を含」むことは、「一対の脚部材12a、12b」が「前記トレーラ1の後端部1b」において、「前記トレーラ1の左右両側」に互いに間隔をあけて配置されていることが明らかなので、前記カも踏まえると、前者の「前記左右のローラジャッキは、前記車台の後部において、」「前記車台の左右両側に互いに間隔をあけて配置されている」ことに相当する。
ク 前記ウ~オから、後者の「前記各脚部材12a、12bの自由端12c、12dが、上昇位置において前記トレーラ1の後端部1bの後縁1gの直近に位置し、地面またはその他の支持面に対して角度βをなす下降位置まで回動されて、トレーラ1の後端部1bを支持」することは、前者の「前記アームは」「格納されている格納状態と下方に延びて地面に接近した張出状態とに姿勢変更可能に構成されて」いることに相当する。
ケ 以上の限りにおいて、後者の「トレーラ1が連結されたトラクタ8」は、前者の「コンテナ脱着車」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明は、
「車台に対してコンテナを積み下ろしする荷役装置を備えるコンテナ脱着車において、前記車台に回動自在に連結されたアームと、当該アームに回転自在に取り付けられて接地可能なローラとを有する左右のローラジャッキを備え、
前記左右のローラジャッキは、前記車台の後部において、前記車台の左右両側に互いに間隔をあけて配置されているとともに、前記アームは格納されている格納状態と下方に延びて地面に接近した張出状態とに姿勢変更可能に構成されている
コンテナ脱着車。」
との点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1-2-1]
本件発明1は、「トレーラと連結し牽引可能な構成を備えた」コンテナ脱着車であり、それゆえに、左右のローラジャッキが「前記トレーラの連結装置が挿通可能となるように」前記車台の左右両側に互いに間隔をあけて配置され、「前記連結装置は、前記車台の前後方向における前部が基部よりも幅が狭く構成されており、前記前部が前記左右のローラジャッキに設けられた前記間隔内に挿通した状態で前記トレーラに対してコンテナを積み下ろし可能に構成されており、前記連結装置を前記車台の下のスペースに受け入れた状態で、前記ローラジャッキを前記格納状態から前記張出状態に姿勢変更可能に構成されている」のに対して、甲2発明は、かかる「トレーラ」との連結について特定されていない点。
[相違点1-2-2]
アームの格納状態に関して、本件発明1は、アームが「前方に延びて」格納されるのに対して、甲2発明は、各脚部材12a、12bが「その枢着点22において、前記トレーラ1の後端部1bから前記各脚部材12a、12bの全長にほぼ相当する距離だけ離れた位置に取り付けられ、」各脚部材12a、12bの自由端12c、12dが「上昇位置において前記トレーラ1の後端部1bの後縁1gの直近に位置」するものであるので、各脚部材12a、12bは、後方に延びて格納される点。
(2)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点1-2-2について検討する。
甲1には、甲2発明における一対の脚部材12a、12bを備える支持脚12に相当する構成については、記載も示唆もされていない。
そして、甲2発明においては、枢着点22を挟んで、後方に各脚部材12a、12bが延び、前方に少なくとも1つの動力ユニットが配置されるものである。
また、甲2には、各脚部材12a、12bの上昇位置において、枢着点22を挟んで、前方に各脚部材12a、12bを伸ばして配置させることについての記載も示唆もない。
そうすると、甲2発明において、各脚部材12a、12bの上昇位置において、枢着点22を挟んで、前方に各脚部材12a、12bを伸ばして配置させることに動機付けはない。
更に、甲2発明において、上昇位置における各脚部材12a、12bの枢着点22からの延びる方向を変えることは、動力ユニットの配置の変更も必要になると認められるところ、甲2の12ページ32行~13ページ3行の記載によれば、甲2において、動力ユニットである油圧シリンダ14a~14dの配置は、支持脚12に加わるトルクが可能な限り大きくなり、かつ高位置から低位置までの全回動範囲にわたって均等に分布することを考慮して選択されたものであると認められる。
そうすると、甲2発明において、このような油圧シリンダ14a~14dの配置の変更を伴う、上昇位置における各脚部材12a、12bの枢着点22からの延びる方向の変更には、阻害要因があると認められる。
したがって、甲2発明において、甲1記載事項を踏まえ、相違点1-2-2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲1記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3-2 本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を付加したものであるから、前記3-1(2)と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 異議申立書における申立人の主張
異議申立書における申立人の主張は、概略以下のとおりである。
(1)甲1発明に甲第2号証に開示された構成を組み合わせて、甲1発明において、アームと、アームに回転自在に取り付けられて接地可能なローラとを有する左右のローラジャッキが車台の左右両側に互いに間隔をあけて配置されているとともに、アームが前方に延びて格納されている格納状態と下方に延びて地面に接近した張出状態とに姿勢変更可能に構成されている構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
(2)車台に回動可能に連結されたジャッキ装置を備えるコンテナ脱着車において、アームの格納状態として、「前方」と「後方」のどちらに延びた状態を採用するかは、当業者が適宜定めるべき単なる設計的事項にすぎず、左右の脚部材(12a、12b)に前方に延びた格納状態を採用することは、当業者にとって容易である。
前記主張(1)についてであるが、前記2-1(2)で述べたように、甲1~3には、相違点1-1-1に係る本件発明1の発明特定事項のうち、「左右のローラジャッキ」が「トレーラの連結装置が挿通可能となるように前記車台の左右両側に互いに間隔をあけて配置され」ること、連結装置の「前記前部が前記左右のローラジャッキに設けられた前記間隔内に挿通した状態で」トレーラに対してコンテナを積み下ろし可能に構成されること、及び連結装置を車台の下のスペースに受け入れた状態で「前記ローラジャッキを前記格納状態から前記張出状態に姿勢変更可能に構成されている」ことについては、記載も示唆もされていないので、仮に、甲1発明に対して、甲2の支持脚12や甲3のジャッキ4を適用できたとしても、その際に、甲1発明において、「地面」位置に配置されたドローバー30の自由端32が、支持脚12の脚部材12a、12bの間や、ジャッキ4の左右一対のアーム部4cの間に挿通されること、及びドローバー30の自由端32が車台の下の車両18と干渉しない「地面」位置に配置された状態において、支持脚12の脚部材12a、12bや、ジャッキ4の左右一対のアーム部4cが格納状態から張出状態に姿勢変更可能となることが、当業者が容易に想到できたことであるとはいえない。
また、前記主張(2)についてであるが、前記3-1(2)で述べたように、甲2発明において、各脚部材12a、12bの上昇位置において、枢着点22を挟んで、前方に各脚部材12a、12bを伸ばして配置させることに動機付けはなく、むしろそのようにすることには、阻害要因があると認められるので、このような各脚部材12a、12bの上昇位置において、枢着点22を挟んで、前方に各脚部材12a、12bを伸ばして配置させることが設計的事項であるとも認められない。そうすると、甲2発明において、甲1記載事項を踏まえ、相違点1-2-2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、異議申立書における申立人の主張を採用することはできない。
5 小括
以上のとおりであるから、本件発明1~6は、甲1発明、甲2記載事項、及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明1~6は、甲2発明及び甲1記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
よって、申立理由1及び2によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2026-700160