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特許異議申立

2024-701192

熱伝導性組成物、熱伝導性シート及びその製造方法

審判番号
2024-701192
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-530708外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7499414
請求日
2024年12月12日
審決日
2025年08月28日
公報発行日
2025年11月28日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7499414号発明「熱伝導性組成物、熱伝導性シート及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7499414号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 特許第7499414号の請求項1~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7499414号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、令和4年10月7日(優先権主張 令和4年2月22日)を国際出願日とする出願であって、令和6年6月5日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、令和6年12月12日に、本件特許の請求項1~10に係る特許に対して、特許異議申立人 合同会社SAS(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 その後の手続は以下のとおりである。 令和 7年 3月28日付け 取消理由通知 同年 5月22日 訂正請求書、意見書(特許権者)の提出 同年 6月 5日付け 訂正請求があった旨の通知 (特許法第120条の5第5項) 同年 7月 9日 意見書(申立人)の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 (1)訂正請求の趣旨 令和7年5月22日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、「特許第7499414号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める。」ことを請求の趣旨とするものである。 (2)本件訂正の訂正事項 特許請求の範囲の請求項1の「平均粒子径1μm以上10μm未満の非球状かつ破砕状アルミナは含まない、ことを特徴とする熱伝導性組成物。」を「平均粒子径1μm以上10μm未満の非球状かつ破砕状アルミナは含まず、前記熱伝導性組成物は熱伝導性シート用熱伝導性組成物であることを特徴とする熱伝導性組成物。」と訂正する。 (3)一群の請求項 訂正前の請求項2~10は訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、前記(2)の訂正事項によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2 訂正事項の検討 訂正事項による請求項1についての訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の段落0012の「硬化前のコンパウンド(混合原料)の粘度が低く、成形性を向上させ、かつ硬化後の熱伝導性シートの瞬間及び定常荷重値が低い熱伝導性組成物、当該熱伝導性組成物から形成される熱伝導性シートが得られる」という記載に基づいて、請求項1の「熱伝導性組成物」の用途を「熱伝導性シート用」に限定するものである。 したがって、訂正事項による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 訂正の適否についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 また、本件訂正は特許異議の申立てがされている請求項である訂正前の請求項1~10に係るものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正は適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 前記第2のとおり本件訂正が認められたため、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明10」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)及び熱伝導性無機フィラー(B)を含む熱伝導性組成物であって、 前記付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)100質量部に対して、前記熱伝導性無機フィラー(B)を500~5000質量部含み、 前記付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)は、下記ベースポリマー(A1)と下記架橋成分(A2)と下記触媒成分(C)とからなり、 前記熱伝導性無機フィラー(B)は、平均粒子径1μm以上10μm未満の球状アルミナ(B1)と、平均粒子径0.01μm以上1μm未満の破砕状アルミナ(B2)を含み、 前記付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)100質量部に対して、前記平均粒子径1μm以上10μm未満の球状アルミナ(B1)の割合は0質量部を超え1500質量部以下、前記平均粒子径0.01μm以上1μm未満の破砕状アルミナ(B2)の割合は0質量部を超え1000質量部以下であり、 平均粒子径1μm以上10μm未満の非球状かつ破砕状アルミナは含まず、前記熱伝導性組成物は熱伝導性シート用熱伝導性組成物であることを特徴とする熱伝導性組成物。 (A1)ベースポリマー:1分子中に平均2個以上かつ分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサン (A2)架橋成分:1分子中に平均2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、A2成分中のSiH基がA1成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、0.1モル以上3モル未満の量 (C)触媒成分:白金系触媒が前記A1成分に対して金属原子重量で0.01~1000ppm 【請求項2】 前記熱伝導性無機フィラー(B)は、さらに平均粒子径10μm以上150μm以下の球状アルミナ(B3)を、0質量部を超え3500質量部以下含む請求項1に記載の熱伝導性組成物。 【請求項3】 前記熱伝導性無機フィラー(B)は、さらに平均粒子径10μm以上100μm以下の破砕状窒化アルミニウム(B4)を、0質量部を超え500質量部以下含む請求項1に記載の熱伝導性組成物。 【請求項4】 前記熱伝導性無機フィラー(B)は、さらに、平均粒子径10μm以上150μm以下の球状アルミナ(B3)と、平均粒子径10μm以上100μm以下の破砕状窒化アルミニウム(B4)とを含み、 前記付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)100質量部に対して、 前記(B2)は0質量部を超え800質量部以下、 前記(B3)は0質量部を超え3000質量部以下、 前記(B4)は0質量部を超え300質量部以下である請求項1に記載の熱伝導性組成物。 【請求項5】 前記熱伝導性無機フィラーは、シラン化合物、チタネート化合物、アルミネート化合物、もしくはその部分加水分解物により表面処理されている請求項1に記載の熱伝導性組成物。 【請求項6】 請求項1~5のいずれか1項に記載の前記熱伝導性組成物がシート状に成形され、硬化された、熱伝導性シート。 【請求項7】 ASTM D575-91:2012に従った圧縮荷重の測定方法による、直径28.6mm、初期厚み2mmの前記熱伝導性シートの50%圧縮時の瞬間荷重値が300N以下である、請求項6に記載の熱伝導性シート。 【請求項8】 ASTM D575-91:2012に従った圧縮荷重の測定方法による、直径28.6mm、初期厚み2mmの前記熱伝導性シートの50%圧縮時の定常荷重値が80N以下である請求項6に記載の熱伝導性シート。 【請求項9】 請求項6に記載の熱伝導性シートの製造方法であって、請求項1~5のいずれか1項に記載の前記熱伝導性組成物のコンパウンドをシート状に成形し、加熱硬化することを含む、熱伝導性シートの製造方法。 【請求項10】 前記加熱硬化の条件は、温度90~120℃、時間5~180分である請求項9に記載の熱伝導性シートの製造方法。」 第4 特許異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知書に記載された取消理由並びに証拠方法 1 特許異議申立書に記載された申立理由 (1)特許異議申立書に記載された申立理由の概要 ア 申立理由1(甲第1号証を主引用例とする新規性) 本件発明1~8は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であるから、本件発明1~8に係る特許は、特許法第29条第1項第3項の規定に違反してされたものであって同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 イ 申立理由2(甲第1号証を主引用例とする進歩性) 本件発明1~10は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 ウ 申立理由3(甲第2号証を主引用例とする新規性) 本件発明1~5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明であるから、本件発明1~8に係る特許は、特許法第29条第1項第3項の規定に違反してされたものであって同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 エ 申立理由4(甲第2号証を主引用例とする進歩性) 本件発明1~10は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)特許異議申立書に添付して提出された証拠方法 甲第1号証:国際公開第2018/079215号 甲第2号証:国際公開第2013/129600号 甲第3号証:国際公開第2020/137086号 甲第4号証:特開2017-210518号公報 甲第5号証:特開2021-136454号公報 甲第6号証:特開平8-319425号公報 甲第7号証:特開2021-134340号公報 甲第8号証:特許第6988023号公報 以下「甲第1号証」等を「甲1」等という。 2 取消理由通知書に記載された取消理由の概要 (1)取消理由1(明確性) 本件発明1~10に係る特許は、以下の理由により、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (理由)請求項1の「球状アルミナ(B1)」、請求項2及び請求項4の「球状アルミナ(B3)」の「球状アルミナ」について、どのようなものが「球状アルミナ」に該当し、どのようなものが「球状アルミナ」に該当しないのかが明確であるとはいえない。したがって、本件発明1、2及び4が明確であるとはいえない。また、本件発明1、2又は4を直接又は間接的に引用する本件発明2~10も明確であるとはいえない。 (2)取消理由2(甲1を主引用例とする新規性) 本件発明1、2及び5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であるから、本件発明1、2及び5に係る特許は、特許法第29条第1項第3項の規定に違反してされたものであって同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)取消理由3(甲1を主引用例とする進歩性) 本件発明1~5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (4)取消理由4(甲2を主引用例とする新規性) 本件発明1、2及び5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であるから、本件発明1、2及び5に係る特許は、特許法第29条第1項第3項の規定に違反してされたものであって同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (5)取消理由5(甲2を主引用例とする進歩性) 本件発明1~5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 特許権者が提出した証拠方法 乙第1号証:特開2017-222884号公報 乙第2号証:特開2013-131563号公報 乙第3号証:特許第6942907号公報 乙第4号証:特開2009-62436号公報 乙第5号証:特開2016-11322号公報 以下「乙第1号証」等を「乙1」等という。 4 当審合議体が職権で採用した証拠方法 参考1:坂元俊介ほか,高純度アルミナの新規技術開発と用途展開,住友化学,2020年,17-25頁(URL:https://www.sumitomo-chem.co.jp/rd/report/2020/,https://www.sumitomo-chem.co.jp/rd/report/files/docs/2020J_2.pdf) 参考2:(株)マイクロン 業務部営業グループ,技術部シリカグループ,アルミナグループ,シリカ・アルミナ球状微粒子,新日鉄技報,383号,2005年,32頁(URL:https://www.nipponsteel.com/tech/report/nsc/no383.html,https://www.nipponsteel.com/tech/report/nsc/pdf/38315.pdf) 参考3:特開2013-147600号公報 参考4:国際公開第2021/261519号 参考5:特開2022-87605号 以下「参考1」等を「参1」等という。 第5 当審の判断 1 判断の概要 当審合議体は、本件発明1~10に係る特許は特許異議申立書に記載された申立理由1~4及び取消理由通知書に記載された取消理由1~5によっては取り消すことができないと判断する。その理由は以下のとおりである。 2 取消理由1(明確性)について (1)明確性の判断手法 特許法36条6項2号の趣旨は、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るため、そのような不都合な結果を防止することにある。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである(知財高判平29.9.21平成28年(行ケ)10236号参照。)。 (2)特許請求の範囲の記載及び明細書の記載並びに技術常識 本件特許の願書に添付した特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。)の記載は前記第3のとおりであり、その請求項1には「球状アルミナ(B1)」という記載があり、請求項2及び請求項4には「球状アルミナ(B3)」という記載がある。また、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)には、平均粒径1μm以上10μm未満のアルミナとして平均粒子径3μmの丸み状アルミナを使用した例は比較例であること(段落0040~0044)、多角形状あるいは丸み状アルミナは「球状アルミナ(B1)」には含まれないこと(段落0037)が記載されている。 一方、熱伝導性組成物に配合されるフィラーの形状には真球状、球状、丸み状、破砕状(不定形状)等の区分があり(甲1段落0024、参5の段落0037)、「球状アルミナ」はよく知られている概念であり(特許権者が意見書3頁1~5行で指摘する乙1~5号証の各箇所)、それは真球状のアルミナとほぼ真球のアルミナとを包含する概念であることが、本件特許の出願時の技術常識であると認められる(参5の段落0037)。 (3)検討 前記(2)から、本件特許請求の範囲の請求項1の「球状アルミナ(B1)」並びに請求項2及び請求項4の「球状アルミナ(B3)」の「球状アルミナ」という用語は真球状のアルミナとほぼ真球のアルミナとを包含するという通常の意味のものであるといえ、この用語が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるということはできない。 したがって、本件発明1、2及び4並びにこれらを直接又は間接的に引用する本件発明2~10は明確である。 (4)申立人の主張について 申立人は「特許権者は意見書にて、訂正発明1記載の「球状アルミナ」は明確である旨を乙第1~5号証を用いて主張していますが、球状アルミナの製法には溶融法以外にも周知のものが複数あります。よって本件明細書【0012】段落の記載をもってただちに訂正発明1の「球状アルミナ」が溶融法で得られた真球状アルミナという意味であるとは言えません。『請求項に記載された用語(球状)が有する通常の意味と異なる意味を持つ旨の定義(溶融法で得られた真球状)が置かれているときは、請求項の記載に基づくことを基本としつつ発明の詳細な説明等の記載をも考慮する、という請求項に係る発明の認定の運用からみて、いずれと解すべきかが不明となり』(特許審査基準第II部 第2章 第3節 明確性要件 2.1(3))、発明が不明確になるのです」(意見書4頁6~15行)と主張し、また、「特許権者は訂正発明1の用語「球状アルミナ」が溶融法で得られた真球状アルミナという意味であるかどうかは説明していません。訂正発明1での球状とは真球でないものを排除しているのか、製法に依る粒子の構造上の特徴のようなものがあればそれは考慮しないのか、など、訂正発明1において「球状アルミナ」が指す内容の外縁に未だ確たるものはなく、訂正発明1の記載は第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であると評価せざるを得ません。したがって、訂正発明1~8は、その請求項1~8は、その請求項に係る記載が明確ではありません」(意見書4頁16~22行)とも主張する。 しかし、前記(1)~(3)に照らし、特許権者の意見書における主張にかかわらず、本件特許請求の範囲の請求項1の「球状アルミナ(B1)」並びに請求項2及び請求項4の「球状アルミナ(B3)」という用語の意義は前記(3)のとおり解釈するのが適切である。 (5)取消理由1についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件発明1~10に係る特許が取消理由1により取り消すべきものとすることはできない。 3 取消理由2及び3並びにこれと同旨の申立理由1及び2(甲1を主引用例とする新規性、進歩性)について (1)引用発明 甲1(段落0060)の実施例2に係る1液硬化型熱伝導性シリコーングリース組成物に着目すると、甲1には、 「ロスミキサーにより、(A-1)成分75重量部、(A-3)成分25重量部、(C-2)成分190重量部、(C-4)成分210重量部、(C-6)成分510重量部、(F-2)成分2.8重量部、(G)成分4.2重量部を混合した後、減圧下、150℃で1時間加熱撹拌し、その後、25℃まで冷却し、常温に戻し、(B-2)成分13.1重量部、(E-1)成分1.7重量部を加えて撹拌した後、(D-1)成分3.5重量部を加えて成分を加えて均一になるように混合することで調製した1液硬化型熱伝導性シリコーングリース組成物であって、Si-H/Si-Vi(個数比)が1.0である、1液硬化型熱伝導性シリコーングリース組成物。 ここで、前記各成分は以下のとおりである。 (A-1)成分:両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、25℃における粘度が400mPa・sのジメチルポリシロキサン Si-Vi含有量 0.44質量% (A-3)成分:両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、25℃における粘度が40,000mPa・sのジメチルポリシロキサン Si-Vi含有量 0.08質量% (B-2)成分:下記平均式で表されるハイドロジェンポリシロキサン [化8] [図:0001429019000001.jpg] Si-H含有量 0.10質量% 20mPa・s (C-2)成分:平均粒子径0.4μm破砕状アルミナ微粉末 (C-4)成分:平均粒子径4.0μmの球状アルミナ微粉末 (C-6)成分:平均粒子径35μmの球状アルミナ微粉末 (D-1)成分:白金錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンを白金金属原子として0.4質量%含有する軟化点が115℃であるメチルメタクリレート・ブチルメタクリレート共重合体(デュポン社製Elvacite2013)からなる平均粒子径が1.5μmである微粒子触媒 (E-1)成分:トリス(1,1-ジメチルプロピンオキシ)メチルシラン (F-2)成分:C10H21Si(OCH3)3 で表されるアルキルシラン (G)成分:BET比表面積が200m2/gであり、ヘキサメチルジシラザンにより疎水化処理されたヒュームドシリカ」 の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、両発明の構成の対応は以下のとおりとなる。 (a)甲1発明における「(A-1)成分:両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、25℃における粘度が400mPa・sのジメチルポリシロキサン Si-Vi含有量 0.44質量%」及び「(A-3)成分:両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、25℃における粘度が40,000mPa・sのジメチルポリシロキサン Si-Vi含有量 0.08質量%」は、いずれも、両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖されていることから1分子中に2個かつ分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するといえるし、ジメチルポリシロキサンであることから直鎖状であるといえるから、本件発明1における「(A1)ベースポリマー:1分子中に平均2個以上かつ分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサン」に相当する。 (b)甲1発明における「(B-2)成分:下記平均式で表されるハイドロジェンポリシロキサン [化8] [図:0001429019000002.jpg] Si-H含有量 0.10質量% 20mPa・s」は、1分子中に平均2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するといえるから、本件発明1における「(A2)架橋成分:1分子中に平均2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン」に相当する。 (c)甲1発明における「Si-H/Si-Vi(個数比)が1.0である」は、個数比とモル比とは同義であるから、Si-HがSi-Vi1モルに対して1モルの量であるという意味である。また、甲1発明において(A-1)成分、(A-3)成分及び(B-2)成分のほかに本件発明1における(A1)ベースポリマー又は(A2)架橋成分に相当する成分は配合されていない。そうすると、これらのことと前記(a)及び(b)とから、甲1発明における「Si-H/Si-Vi(個数比)が1.0である」は、本件発明1における「A2成分中のSiH基がA1成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、0.1モル以上3モル未満の量」に相当する。 (d)甲1発明における「(D-1)成分:白金錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンを白金金属原子として0.4質量%含有する軟化点が115℃であるメチルメタクリレート・ブチルメタクリレート共重合体(デュポン社製Elvacite2013)からなる平均粒子径が1.5μmである微粒子触媒」は、本件発明1における「(C)触媒成分:白金系触媒」に相当する。 (e)甲1発明における「(A-1)成分」、「(A-3)成分」及び「(D-1)成分:白金錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンを白金金属原子として0.4質量%含有する軟化点が115℃であるメチルメタクリレート・ブチルメタクリレート共重合体(デュポン社製Elvacite2013)からなる平均粒子径が1.5μmである微粒子触媒」の配合量はそれぞれ「75重量部」、「25重量部」及び「3.5重量部」である。したがって、(A-1)成分及び(A-3)成分に対する(D-1)成分中の白金金属原子の配合量は (3.5×(0.4×10-2))/(75+25)=140×10-6 すなわち140ppmである。そしてこのことは、前記(a)及び(d)に照らして、本件発明1における「白金系触媒が前記A1成分に対して金属原子重量で0.01~1000ppm」に相当する。 (f)甲1発明における「(C-4)成分:平均粒子径4.0μmの球状アルミナ微粉末」は、甲1の段落0023の記載からみて熱伝導性の充填剤(フィラー)であるといえることとアルミナは無機物質であることとから、本件発明1における「熱伝導性無機フィラー(B)」に相当し、かつ、「平均粒子径1μm以上10μm未満の球状アルミナ(B1)」に相当する。 (g)甲1発明における「(C-2)成分:平均粒子径0.4μm破砕状アルミナ微粉末」は、前記(f)と同様に、本件発明1における「熱伝導性無機フィラー(B)」に相当し、かつ、「平均粒子径0.01μm以上1μm未満の破砕状アルミナ(B2)」に相当する。 (h)甲1発明における「(C-6)成分:平均粒子径35μmの球状アルミナ微粉末」は、前記(f)と同様に、本件発明1における「熱伝導性無機フィラー(B)」に相当するが、「平均粒子径1μm以上10μm未満の球状アルミナ(B1)」にも「平均粒子径0.01μm以上1μm未満の破砕状アルミナ(B2)」にも相当しない。 (i)甲1発明において(A-1)成分、(A-3)成分、(B-2)成分及び(D-1)成分のほかに本件発明1における(A1)ベースポリマー、(A2)架橋成分又は触媒成分(C)に相当するものは配合されていない。したがって、前記(a)、(b)及び(d)から、甲1発明における「(A-1)成分」、「(A-3)成分」、「(B-2)成分」及び「(D-1)成分」の総体は、本件発明1における「下記ベースポリマー(A1)と下記架橋成分(A2)と下記触媒成分(C)とからな」る「付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)」に相当する。 (j)甲1発明における「(A-1)成分」、「(A-3)成分」、「(B-2)成分」、「(D-1)成分」及び「(C-4)成分」の配合量はそれぞれ「75重量部」、「25重量部」、「13.1重量部」、「3.5重量部」及び「210重量部」である。したがって、(A-1)成分、(A-3)成分、(B-2)成分及び(D-1)成分の合計100重量部に対する(C-4)成分の配合量は (210/(75+25+13.1+3.5))×100=180.1(重量部) である。このことと前記(f)及び(i)とから、甲1発明における「(A-1)成分」、「(A-3)成分」、「(B-2)成分」、「(D-1)成分」及び「(C-4)成分」の配合量がそれぞれ「75重量部」、「25重量部」、「13.1重量部」、「3.5重量部」及び「210重量部」であることは、本件発明1における「前記付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)100質量部に対して…アルミナ(B1)の割合は0質量部を超え1500質量部以下」に相当する。 (k)前記(j)と同様に、甲1発明における「(A-1)成分」、「(A-3)成分」、「(B-2)成分」、「(D-1)成分」及び「(C-2)成分」の配合量がそれぞれ「75重量部」、「25重量部」、「13.1重量部」、「3.5重量部」及び「190重量部」であること、すなわち(A-1)成分、(A-3)成分、(B-2)成分及び(D-1)成分の合計100重量部に対する(C-2)成分の配合量が (190/(75+25+13.1+3.5))×100=163.0(重量部) であることは、本件発明1における「前記付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)100質量部に対して…アルミナ(B2)の割合は0質量部を超え1000質量部以下」に相当する。 (l)前記(j)と同様に、甲1発明における「(A-1)成分」、「(A-3)成分」、「(B-2)成分」、「(D-1)成分」、「(C-4)成分」、「(C-2)成分」及び「(C-6)成分」の配合量がそれぞれ「75重量部」、「25重量部」、「13.1重量部」、「3.5重量部」、「210重量部」、「190重量部」及び「510重量部」であること、すなわち(A-1)成分、(A-3)成分、(B-2)成分及び(D-1)成分の合計100重量部に対する(C-4)成分、(C-2)成分及び(C-6)成分の配合量が ((210+190+510)/(75+25+13.1+3.5))×10 0=780.4(重量部) であることは、本件発明1における「前記付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)100質量部に対して、前記熱伝導性無機フィラー(B)を500~5000質量部含み」に相当する。 (m)甲1発明は「(C-4)成分:平均粒子径4.0μmの球状アルミナ微粉末」、「(C-2)成分:平均粒子径0.4μm破砕状アルミナ微粉末」及び「(C-6)成分:平均粒子径35μmの球状アルミナ微粉末」以外のアルミナを含有していない。このことは、本件発明1における「平均粒子径1μm以上10μm未満の非球状かつ破砕状アルミナは含まない」に相当する。 (n)甲1発明における「1液硬化型熱伝導性シリコーングリース組成物」は、本件発明1における「熱伝導性シート用熱伝導性組成物」と、「熱伝導性組成物」という限りで一致する。 イ 一致点、相違点 前記アから、本件発明1と甲1発明とは、 「付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)及び熱伝導性無機フィラー(B)を含む熱伝導性組成物であって、 前記付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)100質量部に対して、前記熱伝導性無機フィラー(B)を500~5000質量部含み、 前記付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)は、下記ベースポリマー(A1)と下記架橋成分(A2)と下記触媒成分(C)とからなり、 前記熱伝導性無機フィラー(B)は、平均粒子径1μm以上10μm未満の球状アルミナ(B1)と、平均粒子径0.01μm以上1μm未満の破砕状アルミナ(B2)を含み、 前記付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)100質量部に対して、前記アルミナ(B1)の割合は0質量部を超え1500質量部以下、前記平均粒子径0.01μm以上1μm未満の破砕状アルミナ(B2)の割合は0質量部を超え1000質量部以下であり、 平均粒子径1μm以上10μm未満の非球状かつ破砕状アルミナは含まない、ことを特徴とする熱伝導性組成物。 (A1)ベースポリマー:1分子中に平均2個以上かつ分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサン (A2)架橋成分:1分子中に平均2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、A2成分中のSiH基がA1成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、0.1モル以上3モル未満の量 (C)触媒成分:白金系触媒が前記A1成分に対して金属原子重量で0.01~1000ppm」 という点で一致し、 (相違点1-1)「熱伝導性組成物」が、本件発明1は「熱伝導性シート用」であるのに対し、甲1発明は用途が明らかではない点 で相違する。 ウ 相違点について 熱伝導性シートが発熱体等と放熱体等との間に装着されるものであることは本件特許の優先日当時の技術常識である(甲5段落0005)。また、本件明細書には、半導体等の発熱体と放熱体との密着性を改善するための熱伝導性シートには高い熱伝導率及び定常荷重値が低く柔らかい特性が求められ、電子部品への密着性、追従性を向上させる手法が提案されていること(段落0002)、本件発明1の実施例としての未硬化コンパウンドは粘土状の固形物であり、これを2枚のフィルムに挟んでロール圧延し硬化処理することで熱伝導性シートを得たこと(段落0039及び0040)、熱伝導性シートを2枚のアルミプレートで挟持した上で瞬間荷重値及び定常荷重値を測定したこと(段落0038)、本件発明1の実施例から得た熱伝導性シートは定荷重で挟持可能であり電子部品への凹凸への追従性が良くシートの取り扱い性も良好であること(段落0044)が記載されている。 そうすると、本件発明1における「熱伝導性シート用」の「熱伝導性シート」とは、「発熱体等と放熱体等との間に装着するために予めシート状になったもの」であって、本件発明1は、定荷重で挟持可能であり電子部品への凹凸への追従性が良くシートの取り扱い性も良好となる技術的意義を有するものである。 他方、甲1には、「本発明は、1液硬化型熱伝導性シリコーングリース組成物、当該組成物の塗布方法、およびそれを用いてなる電子装置に関する」(段落0001)、「半導体パッケージの熱対策には熱伝導性シリコーンゴム組成物を用いた放熱シートなども使われることもある。(特許文献12)しかしながら、同文献に記載されているようなシリコーンゴム組成物であると、架橋密度が高いため、発熱部材に接する面が傾斜や凹凸を有しているとシリコーンゴム組成物と発熱部材との間に間隙が生じ、放熱能力に影響が生じていた。そのため、そのような発熱部材から放熱させる用途においては、表面追従性がよく薄く塗布可能な放熱グリースが放熱性能効率及び安定性の観点から好適であった」(段落0003)、「本発明の目的のひとつは、室温下での長期保存安定性と、取扱作業性が優れ、過酷な温度環境下で垂直保持性を有する、1液硬化型熱伝導性シリコーングリース組成物を提供することにある。また、本発明の目的のひとつとして、微粒子触媒をシリコーングリース組成物において用いることで生ずる物性上の課題を解決することにある。また、本発明の目的のひとつは、当該組成物の効果的な塗布方法にある。また、本発明の目的のひとつは、当該組成物を有する電子装置を提供することもある」(段落0009)、「本発明の1液硬化型熱伝導性シリコーングリース組成物を詳細に説明する。グリース組成物とは、架橋反応後(硬化後)において、グリースとしての物性を有するものをいい、本願においては複素弾性率が0.01MPa~20MPaで規定されるものをいう。尚、「硬化」とは架橋反応を意味し、硬化後の物質がグリースであることが示しているように、粘性が増したとしても、必ずしも物性上「硬く」なるわけではない」(段落0012)と記載されている。 すなわち、甲1には、熱伝導性シリコーンゴム組成物を用いた放熱シートは発熱部材に接する面が傾斜や凹凸を有しているとシリコーンゴム組成物と発熱部材との間に間隙が生じて放熱能力に影響が生じること、傾斜や凹凸を有している発熱部材から放熱させる用途においては、表面追従性がよく薄く塗布可能な放熱グリースが放熱性能効率及び安定性の観点から好適であること、甲1が開示する発明は硬化後にグリースとしての物性を有するものであること、が記載されているといえる。 そうすると、甲1が開示する発明の実施例である甲1発明は、硬化により塗布可能なグリース状になるものであるといえ、発熱体等と放熱体等との間に装着するために予めシート状にすることはできないものである。 したがって、相違点1-1は実質的な相違点であるから、本件発明1が甲1発明であるとはいえない。 また、甲1の前記記載に接した当業者であれば、甲1が開示する発明の実施例である甲1発明は硬化によりグリース状にして塗布するためのものであると認識するといえる。そして、甲1~甲8、乙1~5及び参1~参5には、甲1発明を予めシート状にして装着するようにすることを動機付ける記載は見当たらない。そうすると、甲1発明を予めシート状になるようにすることで相違点1-1に係る構成を備えるようにすることは当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。 エ 効果について 本件明細書には、「近年のCPU等の半導体の性能向上はめざましくそれに伴い発熱量も膨大になっている。そのため発熱するような電子部品には放熱体が取り付けられ、例えば半導体等の発熱体と放熱体との密着性を改善する為に熱伝導性シートが使われている。しかし近年、機器の小型化、高性能化に伴い熱伝導性シートには高い熱伝導率及び定常荷重値が低く柔らかい特性が求められている。…」(段落0002)、「本発明は前記従来の問題を解決するため、硬化前のコンパウンド(混合物)の粘度が低く、成形性を向上させ、かつ硬化後の熱伝導性シートの定常荷重値が低い熱伝導性組成物、熱伝導性シート及びその製造方法を提供する」(段落0005)、「本発明の熱伝導性シートは、前記熱伝導性組成物がシート状に成形され、硬化された、熱伝導性シートである」(段落0008)、「熱伝導性組成物は、シート成形され、硬化されて、本発明の熱伝導性シートとなる。当該熱伝導性シートは汎用性が高く、TIM(Thermal Interface Material)として好適である。熱伝導性シートの厚みは0.2~10mmの範囲が好ましい」(段落0017)、「本発明の熱伝導性シートの製造方法は、前記熱伝導性組成物のコンパウンドを真空脱泡し、圧延し、シート成形した後に加熱硬化させることを含む。シート状に成形され、加熱硬化された熱伝導性組成物は熱伝導性シートとなる。…」(段落0021)、「表1及び表2から明らかなとおり、各実施例は、熱伝導率は高く、瞬間及び定常荷重値は低く、圧縮緩和は大きく、ゆっくりと圧縮することで、低荷重で挟持可能であり、挟持体へのダメージが小さく、荷重値が低く柔らかいことから電子部品の凹凸への追従性が良く、初期荷重値もあることによりシートの取り扱い性が良好であることが確認できた。…」(段落0044)、「本発明の熱伝導性シートは、半導体、LED、家電などの電子部品、光通信機器を含む情報通信モジュール、車載用途などの発熱部と放熱部との間の放熱体として有用である」(段落0045)と記載されている。 すなわち、本件発明1は、硬化により予め熱伝導性シートとした際に、初期荷重値があることによりシートの取り扱い性が良好であり、荷重値が低く柔らかいことからシートを装着した際の電子部品の凹凸への追従性が良く、かつ熱伝導率が高い熱伝導性シートとなるという効果を奏するものであるといえる。 そして、特に熱伝導性シートとした際に、初期荷重値があることによりシートの取り扱い性が良好であり、荷重値が低く柔らかいことからシートを装着した際の電子部品の凹凸への追従性が良いという効果は、通常トレードオフの関係にあるものであるとともに(甲5段落0005)、熱伝導性シート用組成物であるという相違点1-1に起因する効果であるといえるから、硬化により塗布可能なグリース状になるものである甲1発明から予測をすることができない顕著な効果であるといえる。 オ 本件発明1についてのまとめ 以上から、本件発明1は甲1に記載された発明であるとはいえないし、当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件発明2~10について 本件発明2~10は、本件発明1を引用するものであり、本件発明1と同様に相違点1-1に係る構成を備えるものである。 したがって、本件発明2~8が甲1に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明2~10が当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)申立人の主張について 申立人は「甲第1号証記載の発明は「1液硬化型熱伝導性シリコーングリース組成物」であり、硬化されることが予定されている組成物である。加えて甲第1号証にはシリコーングリース組成物の架橋反応後の複素弾性率すなわち変形のしにくさを特定する記載とともに(【0048】)熱伝導性グリースを120℃、5分加熱した物の複素弾性率を測定したという記載があり(【0055】)、前記加熱条件は本件特許発明10記載の熱伝導性シートの製造条件と重複していることから、甲第1号証では複素弾性率を測定できるような硬化物が、本件特許発明での熱伝導性シートとして想定されているような性状で得られることを示している。また、甲第1号証の図1に示されているような甲1発明の適用方法を考えたとき、硬化された、という点は実質的な相違点ではない」(特許異議申立書24頁19行~25頁3行)と主張する。 しかし、一般的にグリースは塗布するものであるのに対し(甲1段落0003)、シートは装着するものである(甲5段落0005)という点で使用の態様が異なるものであるから、甲1発明が硬化されることが予定されていること、甲1発明の加熱条件が本件発明10に係る加熱硬化条件と重複していること、甲1発明の硬化物が複素弾性率を測定できるようなものであることをもって、硬化により塗布可能なグリース状になるものである甲1発明の硬化物が熱伝導性シートとして想定されているような性状であるとはいえない。 したがって、申立人の主張を採用することはできない。 また、申立人は「トランジスター、IC、メモリー素子等の電子部品の放熱のために熱伝導性シリコーンゴム組成物…等を用いることは…周知であり、その形態として熱伝導性組成物をシート状にすることもまた周知の技術である。…したがって、甲1号証記載の組成物を甲第4~8号の記載に基づきシート状に成型することには周知の技術であり、何ら技術的な困難性はない」(特許異議申立書25頁5~26行)とも主張する。 しかし、前記(2)ウで述べたとおり、甲1~甲8、乙1~5及び参1~参5には、甲1発明を予めシート状にして使用するようにすることを動機付ける記載は見当たらない。また、前記(2)エで述べたとおり、本件発明1は、予め熱伝導性シートとした際に、初期荷重値があることによりシートの取り扱い性が良好であり、荷重値が低く柔らかいことから電子部品の凹凸への追従性が良いという、通常トレードオフの関係にある(甲5段落0005)効果を両立する、熱伝導性シート用組成物であるという相違点1-1に起因する顕著な効果を奏するものである。 したがって、申立人の主張を採用することはできない。 さらに、申立人は「「熱伝導性シート用」…の記載は物を特定するための意味を有しているとはいえません。…したがって、甲1…発明と訂正発明1とは、両者を異なる発明であるとは判断できず、訂正発明1は依然として新規性・進歩性を有していません」(意見書2頁14~4頁4行)とも主張する。 しかし、前記(2)ウで述べたところからすれば、本件発明1の「熱伝導性シート用」という構成は、その後に続く「熱伝導性組成物」を、予めシート状になるものに限定するものであるといえるから、「熱伝導性組成物」という物を特定するための意味を有しているといえる。 したがって、申立人の主張を採用することはできない。 (5)取消理由2及び3並びに申立理由1及び2についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件発明1~10に係る特許が取消理由2若しくは3又は申立理由1若しくは2により取り消すべきものとすることはできない。 4 取消理由4及び5並びにこれと同旨の申立理由3及び4(甲2を主引用例とする新規性、進歩性)についてについて (1)引用発明 甲2(段落0050~0058)の実施例1に係るパテ状伝熱材に着目すると、甲2には、 「シリコーン成分100質量部と、着色剤顔料である酸化鉄(弁柄)粉末1質量部を容器に入れ、撹拌混合器により混合し、100℃で0.3時間かけて部分架橋反応させ、その後熱伝導性無機粒子(1)600質量部、熱伝導性無機粒子(2)300質量部、熱伝導性無機粒子(3)500質量部を投入し撹拌混合器により混合し、シリコーン成分をシリコーンゾルとした、パテ状伝熱材。 ここで、前記シリコーン成分及び前記各熱伝導性無機粒子は以下のとおりである。 シリコーン成分:CF5036(東レダウコーニングシリコーン社製)商品名“CF5036”のA液(両末端ビニル基含有ポリシロキサンベースポリマー成分(Vi基成分という)とPt触媒成分を含み、Vi基成分はB液のVi基成分と同量含む)と、B液(架橋成分であり1分子中に平均2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノポリシロキサン(Si-H基成分という)と、Vi基成分をSi-H基:Vi基をモル比で1:1で含む)をA液:B液の質量比が7:3の割合となるように計量した、A液とB液の全体としてSi-H基はVi基1モルに対して0.3モルである、シリコーン成分 熱伝導性無機粒子(1):オクチルトリエトキシシランで表面処理した平均粒子径3μmの球状アルミナ 熱伝導性無機粒子(2):オクチルトリエトキシシランで表面処理した平均粒子径0.3μmの不特定形状のアルミナ 熱伝導性無機粒子(3):シランカップリング剤無処理の平均粒子径20μmの真球状アルミナ」 の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 なお、甲2の段落0056の「(3):シランカップリング剤無処理の平均粒子径20μmの真球上アルミナ」の「真球上」が「真球状」の誤記であることは明らかであるから、甲2発明をこのように認定した。 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比すると、両発明の構成の対応は以下のとおりとなる。 (a)甲2発明における「CF5036(東レダウコーニングシリコーン社製)商品名“CF5036”」のVi基成分(両末端ビニル基含有ポリシロキサンベースポリマー成分)は、両末端にビニル基を有することから1分子中に2個かつ分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有といえるし、両末端を観念できることから直鎖状であるといえるから、本件発明1における「(A1)ベースポリマー:1分子中に平均2個以上かつ分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサン」に相当する。 (b)甲2発明における「CF5036(東レダウコーニングシリコーン社製)商品名“CF5036”」のSi-H基成分(架橋成分であり1分子中に平均2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノポリシロキサン)は、本件発明1における「(A2)架橋成分:1分子中に平均2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン」に相当する。 (c)甲2発明における「A液とB液の全体としてSi-H基はVi基1モルに対して0.3モルである」は、甲2発明において「CF5036(東レダウコーニングシリコーン社製)商品名“CF5036”」のほかに本件発明1における(A1)ベースポリマー又は(A2)架橋成分に相当する成分は配合されていないことと前記(a)及び(b)とから、本件発明1における「A2成分中のSiH基がA1成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、0.1モル以上3モル未満の量」に相当する。 (d)甲2発明における「CF5036(東レダウコーニングシリコーン社製)商品名“CF5036”」のPt触媒成分は、本件発明1における「(C)触媒成分:白金系触媒」に相当する。 (e)甲2発明における「熱伝導性無機粒子(1):オクチルトリエトキシシランで表面処理した平均粒子径3μmの球状アルミナ」は、甲2の段落0050及び0056の記載からみて熱伝導性の無機粒子(フィラー)であるといえることから、本件発明1における「熱伝導性無機フィラー(B)」に相当し、かつ、「平均粒子径1μm以上10μm未満の球状アルミナ(B1)」に相当する。 (f)甲2発明における「熱伝導性無機粒子(2):オクチルトリエトキシシランで表面処理した平均粒子径0.3μmの不特定形状のアルミナ」は、前記(e)と同様に、本件発明1における「熱伝導性無機フィラー(B)」に相当し、かつ、「平均粒子径0.01μm以上1μm未満の破砕状アルミナ(B2)」と「平均粒子径0.01μm以上1μm未満のアルミナ(B2)」という限りで一致する。 (g)甲2発明における「熱伝導性無機粒子(3):シランカップリング剤無処理の平均粒子径20μmの真球状アルミナ」は、前記(e)と同様に、本件発明1における「熱伝導性無機フィラー(B)」に相当するが、「平均粒子径1μm以上10μm未満の球状アルミナ(B1)」にも「平均粒子径0.01μm以上1μm未満の破砕状アルミナ(B2)」にも相当しない。 (h)甲2発明において「CF5036(東レダウコーニングシリコーン社製)商品名“CF5036”」のほかに本件発明1における(A1)ベースポリマー、(A2)架橋成分又は触媒成分(C)に相当するものは配合されていない。したがって、前記(a)、(b)及び(d)から、甲2発明における「CF5036(東レダウコーニングシリコーン社製)商品名“CF5036”」は、本件発明1における「下記ベースポリマー(A1)と下記架橋成分(A2)と下記触媒成分(C)とからな」る「付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)」に相当する。 (i)甲2発明における「CF5036(東レダウコーニングシリコーン社製)商品名“CF5036”」及び「熱伝導性無機粒子(1)」の配合量がそれぞれ「100質量部」及び「600質量部」であることは、前記(e)及び(h)から、本件発明1における「前記付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)100質量部に対して…アルミナ(B1)の割合は0質量部を超え1500質量部以下」に相当する。 (j)甲2発明における「CF5036(東レダウコーニングシリコーン社製)商品名“CF5036”」及び「熱伝導性無機粒子(2)」の配合量がそれぞれ「100質量部」及び「300質量部」であることは、前記(f)及び(h)から、本件発明1における「前記付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)100質量部に対して…アルミナ(B2)の割合は0質量部を超え1000質量部以下」に相当する。 (k)甲2発明における「CF5036(東レダウコーニングシリコーン社製)商品名“CF5036”」、「熱伝導性無機粒子(1)」、「熱伝導性無機粒子(2)」及び「熱伝導性無機粒子(3)」の配合量がそれぞれ「100質量部」、「600質量部」、「300質量部」及び「500質量部」であることは、前記(e)~(h)から、本件発明1における「前記付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)100質量部に対して、前記熱伝導性無機フィラー(B)を500~5000質量部含み」に相当する。 (l)甲2発明は「熱伝導性無機粒子(1):オクチルトリエトキシシランで表面処理した平均粒子径3μmの球状アルミナ」、「熱伝導性無機粒子(2):オクチルトリエトキシシランで表面処理した平均粒子径0.3μmの不特定形状のアルミナ」及び「熱伝導性無機粒子(3):シランカップリング剤無処理の平均粒子径20μmの真球状アルミナ」以外のアルミナを含有していない。このことは、本件発明1における「平均粒子径1μm以上10μm未満の非球状かつ破砕状アルミナは含まない」に相当する。 (m)甲2発明における「パテ状伝熱材」は、熱伝導性無機粒子とシリコーンゾルとの混合物(組成物)であることから、本件発明1における「熱伝導性シート用熱伝導性組成物」と、「熱伝導性組成物」という限りで一致する。 イ 一致点、相違点 前記アから、本件発明1と甲2発明とは、 「付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)及び熱伝導性無機フィラー(B)を含む熱伝導性組成物であって、 前記付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)100質量部に対して、前記熱伝導性無機フィラー(B)を500~5000質量部含み、 前記付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)は、下記ベースポリマー(A1)と下記架橋成分(A2)と下記触媒成分(C)とからなり、 前記熱伝導性無機フィラー(B)は、平均粒子径1μm以上10μm未満のアルミナ(B1)と、平均粒子径0.01μm以上1μm未満のアルミナ(B2)を含み、 前記付加硬化型ポリオルガノシロキサン(A)100質量部に対して、前記アルミナ(B1)の割合は0質量部を超え1500質量部以下、前記平均粒子径0.01μm以上1μm未満のアルミナ(B2)の割合は0質量部を超え1000質量部以下であり、 平均粒子径1μm以上10μm未満の非球状かつ破砕状アルミナは含まない、ことを特徴とする熱伝導性組成物。 (A1)ベースポリマー:1分子中に平均2個以上かつ分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサン (A2)架橋成分:1分子中に平均2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、A2成分中のSiH基がA1成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、0.1モル以上3モル未満の量 (C)触媒成分:白金系触媒」 という点で一致し、 (相違点2-1)平均粒子径0.01μm以上1μm未満のアルミナ(B2)が、本件発明1は「破砕状」であるのに対し、甲2発明は「不特定形状」である点 (相違点2-2)白金系触媒の配合量が、本件発明1は「A1成分に対して金属原子重量で0.01~1000ppm」であるのに対し、甲2発明は明らかではない点 (相違点2-3)「熱伝導性組成物」が、本件発明1は「熱伝導性シート用」であるのに対し、甲2発明は用途が明らかではない点 で相違する。 ウ 相違点について 事案に鑑み、相違点2-3について検討する。 甲2には、「本発明は発熱性電子部品等の発熱体とヒートシンク等の放熱冷却器の間に介在させるパテ状伝熱材及びその製造方法に関する」(段落0001)、「従来、基板上に実装された発熱性電子部品とヒートシンク等の放熱冷却器の間に介在させる伝熱材として、架橋シリコーンゲルを使用したグリースが提案されている…」(段落0003)、「本発明は、前記従来の問題を解決するため、無機粒子充填材の添加量を多量にしても流動性が良好であり、チューブ又はシリンジから押し出すことが容易であり、かつ静置状態では自己保形性があるパテ状伝熱材及びその製造方法を提供する」(段落0006)、「本発明のパテ状伝熱材は、部分架橋させたシリコーンゾル中に熱伝導性粒子が分散されている。…架橋成分の割合を少なくすることにより、架橋密度を下げ、流動性を良好に保ち、チューブ又はシリンジから押し出すことが容易でかつ静置状態では自己保形性があるパテ状伝熱材にできる。チューブ又はシリンジからの押し出し時には流動性があり、押し出し後の静置態では自己保形性がある性質は、電子部品などの組み立て時の際の作業性、効率性には有用である」(段落0013)と記載されている。 すなわち、甲2には、従来、基板上に実装された発熱性電子部品とヒートシンク等の放熱冷却器の間に介在させる伝熱材として架橋シリコーンゲルを使用したグリースが提案されていること、甲2が開示する発明は部分架橋させたシリコーンゾル中に熱伝導性粒子が分散されているものであり、チューブ又はシリンジから押し出すことが容易であり、かつ静置状態では自己保形性があるパテ状伝熱材であること、が記載されているといえる。 そうすると、甲2が開示する発明の実施例である甲2発明は、部分架橋によりチューブ又はシリンジから押し出すためのパテ状になるものであるといえ、発熱体等と放熱体等との間に装着するために予めシート状にすることはできないものである。 したがって、相違点2-3は実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1が甲2発明であるとはいえない。 また、甲2の前記記載に接した当業者であれば、甲2が開示する発明の実施例である甲2発明は部分架橋によりパテ状にしてチューブ又はシリンジから押し出すためのものであると認識するといえる。そして、甲1~甲8、乙1~5及び参1~参5には、甲2発明を予めシート状にして装着するようにすることを動機付ける記載は見当たらない。そうすると、甲2発明を予めシート状になるようにすることで相違点2-3に係る構成を備えるようにすることは当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。 エ 効果について 前記3(2)エで述べたとおり、本件発明1は、硬化により予め熱伝導性シートとした際に、初期荷重値があることによりシートの取り扱い性が良好であり、荷重値が低く柔らかいことからシートを装着した際の電子部品の凹凸への追従性が良く、かつ熱伝導率が高い熱伝導性シートとなるという効果を奏するものであるといえる。 そして、特に熱伝導性シートとした際に、初期荷重値があることによりシートの取り扱い性が良好であり、荷重値が低く柔らかいことからシートを装着した際の電子部品の凹凸への追従性が良いという効果は、通常トレードオフの関係にあるものであるとともに(甲5段落0005)、熱伝導性シート用組成物であるという相違点2-3に起因する効果であるといえるから、部分架橋によりパテ状にしてチューブ又はシリンジから押し出すためのものである甲2発明から予測をすることができない顕著な効果であるといえる。 オ 本件発明1についてのまとめ 以上から、本件発明1は甲2に記載された発明であるとはいえないし、当業者が甲2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件発明2~10について 本件発明2~10は、本件発明1を引用するものであり、本件発明1と同様に相違点2-3に係る構成を備えるものである。 したがって、本件発明2~5が甲2に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明2~10が当業者が甲2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)申立人の主張について 申立人は「「熱伝導性シート用」…の記載は物を特定するための意味を有しているとはいえません。…したがって、…甲2発明と訂正発明1とは、両者を異なる発明であるとは判断できず、訂正発明1は依然として新規性・進歩性を有していません」(意見書2頁14~4頁4行)と主張する。 しかし、前記3(4)で述べたとおり、本件発明1の「熱伝導性シート用」という構成は、その後に続く「熱伝導性組成物」を、予めシート状になるものに限定するものであるといえるから、「熱伝導性組成物」という物を特定するための意味を有しているといえる。 したがって、申立人の主張を採用することはできない。 (5)取消理由4及び5並びに申立理由3及び4についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件発明1~10に係る特許が取消理由4若しくは5又は申立理由3若しくは4により取り消すべきものとすることはできない。 第6 むすび 本件発明1~10に係る特許は、前記第5のとおり、特許異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知書に記載された取消理由によっては取り消すことができない。また、ほかに本件発明1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-701192

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