特許拒絶査定不服審判
2024-008884
配膳車内の洗浄方法およびこれに用いる配膳車
- 審判番号
- 2024-008884
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-209557
- 請求日
- 2024年05月29日
- 審決日
- 2025年04月10日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社井上製作所
- 【請求人代理人】河野 修
- 審判長/審判官
- 審判長 渋谷 知子
- 審判官 三橋 健二
- 審判官 稲荷 宗良
- 分類
- P18 .113-Z (A47B) / P18 .121-Z (A47B) / P18 .575-Z (A47B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-209557「配膳車内の洗浄方法およびこれに用いる配膳車」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 5月27日出願公開、特開2021- 78831〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯の概要
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、令和元年11月20日の出願であって、令和5年8月24日付けで拒絶の理由が通知され、令和6年2月26日付け(謄本送達日:同年3月1日)で、拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和6年5月29日に提出された手続補正書による補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年5月29日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含むものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前の請求項1が、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1に補正された。なお、補正事項に対応する下線は当審で付した(以下同様。)。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
蒸気発生装置および蒸気加熱ヒータを有する配膳車内の洗浄方法であって、配膳車内に蒸気および/または過熱蒸気を充満させて所定時間その状態を保つことで、配膳車内の内壁に付着した汚れを浮かせると共に該汚れを配膳車内の内壁を伝って流下させることを特徴とする、配膳車内の洗浄方法。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
蒸気発生装置および蒸気加熱ヒータを有する配膳車内の洗浄方法であって、配膳車内に蒸気および/または過熱蒸気を充満させて所定時間その状態を保つことで、配膳車内の内壁に蒸気および/または過熱蒸気を付着させて、配膳車内の内壁に付着した汚れを浮かせると共に該汚れを配膳車内の内壁を伝って流下させる洗浄工程を備え、前記配膳車内が常温の状態で前記蒸気および/または過熱蒸気を充満させ、且つ前記蒸気および/または過熱蒸気の温度が80~150℃の範囲内であることを特徴とする、配膳車内の洗浄方法。」
2 補正の適否
(1) 本件補正
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてした補正は、以下の補正事項からなる。
ア 補正事項1
本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「蒸気および/または過熱蒸気を充満させ」る「配膳車内の洗浄方法」について、「配膳車内の内壁に蒸気および/または過熱蒸気を付着させ」る点、及び「前記配膳車内が常温の状態で前記蒸気および/または過熱蒸気を充満させ、且つ前記蒸気および/または過熱蒸気の温度が80~150℃の範囲内である」点を限定する補正(以下「補正事項1」という。)。
イ 補正事項2
本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「配膳車内の内壁に付着した汚れを浮かせると共に該汚れを配膳車内の内壁を伝って流下させる」ことを「洗浄工程」であるとする補正(以下「補正事項2」という。)。
(2)補正の目的について
ア 補正事項1は、上記(1)アのとおり、請求項1に係る発明の発明特定事項に限定を加えるものであって、本件補正後の請求項1に係る発明は本件補正前の請求項1に係る発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
イ 補正事項2は、「配膳車内の内壁に付着した汚れを浮かせると共に該汚れを配膳車内の内壁を伝って流下させる」ことが「洗浄工程」である点を特定して、「配膳車内の洗浄方法」における工程を明確にするものであるから、特許法17条の2第5項4号に掲げる「明りょうでない記載の釈明」に該当する。
(3)新規事項の追加の有無について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書の【0010】-【0011】、【0037】-【0040】及び特許請求の範囲の請求項2、3等の記載からみて、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たす。
3 独立特許要件について
上記2(2)のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正を含むから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか)について以下で検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、次のとおりのものであると認める(記号A等は、分説するため当審にて付した。以下同じ。)。
「【請求項1】
A 蒸気発生装置および蒸気加熱ヒータを有する配膳車内の洗浄方法であって、
B 配膳車内に蒸気および/または過熱蒸気を充満させて所定時間その状態を保つことで、配膳車内の内壁に蒸気および/または過熱蒸気を付着させて、配膳車内の内壁に付着した汚れを浮かせると共に該汚れを配膳車内の内壁を伝って流下させる洗浄工程を備え、
C 前記配膳車内が常温の状態で前記蒸気および/または過熱蒸気を充満させ、且つ前記蒸気および/または過熱蒸気の温度が80~150℃の範囲内である
D ことを特徴とする、配膳車内の洗浄方法。」
(2) 引用発明
ア 記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2018-115814号公報(平成30年7月26日出願公開)(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
「【0004】
病院等の施設においては、ノロウイルス対策など、食事の安全性を一層向上させることが求められている。このため、従来の食品温調装置においては、毎食後に、食品が載せられたトレイを入れる保温庫内が水洗いやアルコール拭きによって清掃されている。また、このとき、保温庫内のウイルスや菌を除菌するために、次亜塩素酸水や次亜塩素酸ナトリウムなどの除菌剤が用いられている。
【0005】
しかしながら、水洗いやアルコール拭きによる清掃では、清掃ムラが発生し、保温庫内を十分に除菌できないおそれがある。また、除菌剤として微酸性次亜塩素酸水、弱酸性次亜塩素酸水、次亜塩素酸ナトリウムなどが使用されるが、これらの除菌剤を使用すると、除菌性は向上するものの、手荒れや金属腐食が発生するおそれがある。また、次亜塩素酸ナトリウムを使用した除菌剤については、食事の安全性に影響を与える場合があるので、除去する必要があり、当該除去に手間がかかる。」
「【0021】
図1に示すように、本第1実施形態に係る食品温調装置1は、移動型の再加熱カートであり、移動装置(台車)2と、移動装置2上に設けられた保温装置3とを備えている。食品温調装置1は、移動が可能なため、配膳車としても使用できる。なお、本発明において、食品温調装置1は据置型の再加熱装置であってもよい。再加熱装置は、予め調理された食品や食材を一旦冷蔵保存しておき、食事前に安全温度まで再加熱して配膳する、所謂クックチル方式を行う装置である。」
「【0026】
また、保温装置3は、図2~図8に示すように、温蔵庫と冷蔵庫のいずれかに切り替えて使用可能な第1保温庫4と、冷蔵庫として使用可能な第2保温庫5とを備えている。保温装置3は、再加熱機能を有する保温装置である。第1保温庫4と第2保温庫5とは、例えば、ステンレスで構成され、間仕切り9で区画されている。なお、間仕切り9は、例えば特開2003-299524に記載されているような構造(図5、間仕切り桟43)である。」
「【0060】
例えば、使用者により保温装置3の温調操作パネル33にて除菌モードが選択されると、制御部37は、加熱媒体生成部81に加熱媒体を生成させる。また、制御部37は、第1ファン72、第2ファン74、第3ファン84、及び第4ファン64を駆動(ON)させる。ファンの回転方向は必要に応じて切り替えられるようになっている。また、制御部37は、第1弁73により第1ダクト71内を開放するとともに、第2弁65により第3ダクト63内を開放する。」
「【0065】
除菌モード中、このように加熱媒体が循環することで、第1保温庫4、第2保温庫5、及び前記循環路が加熱媒体によって加熱されて除菌される。なお、除菌モードにおいて、第1保温庫4及び第2保温庫5内の温度は、例えば、100℃に設定される。なお、除菌モード中においては、第1保温庫4及び第2保温庫5内の温度が高温になるため、開閉扉32が開放されないように自動的にロックされることが好ましい。除菌モードに要する時間は、例えば60分である。
【0066】
本第1実施形態によれば、第1保温庫4と第2保温庫5とを連通する循環路を備えているので、冷却媒体又は加熱媒体を、第1保温庫4、第2保温庫5、及び循環路を通じて循環させることができる。また、除菌モードが選択されたとき、第1保温庫4、第2保温庫5、及び循環路を加熱媒体が循環するようにしているので、当該加熱媒体によって、第1保温庫4、第2保温庫5、及び循環路を加熱して除菌することができる。また、冷却媒体生成部61、加熱媒体生成部81、及び送風装置が循環路内に配置されているので、それらを加熱媒体によって加熱して除菌することができる。また、この除菌モードは、制御部37による制御によって自動的に行われるので、清掃ムラを抑えることができる。従って、除菌性を向上させて食事の安全性を一層向上させることができる。
【0067】
なお、本発明は前記第1実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、加熱媒体生成部81は、加熱媒体として熱風を生成する熱風生成部を備えるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、加熱媒体生成部81は、加熱媒体として過熱水蒸気を生成する過熱水蒸気生成部を備えてもよい。この場合、制御部37は、温調操作パネル33にて除菌モードが選択されたとき、過熱水蒸気が第1保温庫4、第2保温庫5、及び循環路を循環するように加熱媒体生成部81、送風装置、及び開閉弁の動作を制御することが好ましい。この構成によれば、加熱媒体として過熱水蒸気を循環させるようにしているので、次亜塩素酸ナトリウムなどの除菌剤を用いることなく、除菌性を一層向上させることができる。過熱水蒸気は凝縮すると水になるので、食事の安全性が損なわれない。
【0068】
なお、「過熱水蒸気」とは、飽和蒸気を更に加熱することにより、ある圧力における飽和温度(例えば、常圧においては100℃)を超える蒸気温度を有する水蒸気である。過熱水蒸気は、例えば、水を加熱して水蒸気とし、更にその水蒸気をヒータによって加熱することにより生成することができる。この場合、水を溜めるタンクは、過熱水蒸気生成部とは別部品とし、ダクト室82b内ではなく、第1チャンバ82の外側に配置されてもよい。
【0069】
また、加熱媒体生成部81は、加熱媒体として過熱水蒸気中に微細水滴が分散された100℃を超える気液二相媒体を生成する気液二相媒体生成部を備えてもよい。この場合、制御部37は、温調操作パネル33にて除菌モードが選択されたとき、気液二相媒体が第1保温庫4、第2保温庫5、及び循環路を循環するように加熱媒体生成部81、送風装置、及び開閉弁の動作を制御することが好ましい。気液二相媒体は、後述するように内蔵電熱ヒータ等によって軟水と気体を加熱し、更に加圧することによって生成できる。具体例としては、アクアガス(登録商標)がある。この場合、軟水を溜めるタンクは、気液二相媒体生成部とは別部品とし、ダクト室82b内ではなく、第1チャンバ82の外側に配置されてもよい。気液二相媒体は、過熱水蒸気よりも比熱(熱伝達特性)が高く、除菌性が高いという性質を有している。前記構成によれば、加熱媒体として気液二相媒体を循環させるようにしているので、第1保温庫4、第2保温庫5、及び循環路を、より短時間でムラ無く加熱することができ、除菌剤を用いることなく、除菌性を一層向上させることができる。また、気液二相媒体は凝縮すると水になるので、食事の安全性が損なわれない。なお、「微細水滴」とは、例えば、粒径が100μm以下の水滴をいう。気液二相媒体の温度は、100℃以上が望ましく、例えば、115℃である。この微細水滴は生成時には粒径が100μm以下で100℃以上に熱せられた微細熱水滴となっている。」
「【0077】
また、病院等の施設によっては、除菌モードを行う時間を十分に確保することができなかったり、より高い除菌性が求められたりすることが想定される。このため、加熱媒体の温度や湿度、乾燥時間等の組合せが異なる複数のコースを温調操作パネル33にて選択可能に構成されることが好ましい。複数のコースには、例えば、標準コース、強力コース、スピードコースが含まれる。標準コースは、例えば、除菌モードを1時間行うコースである。強力コースは、例えば、除菌モードを2時間行うコースである。スピードコースは、例えば、除菌モードを30分間行うコースである。」
イ 引用発明
上記アより、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める(記号a等は、本件補正発明の記号A等に対応させて当審にて付した。)。
「a 水を加熱して水蒸気とし、更にその水蒸気をヒータによって加熱することにより、常圧において100℃を超える蒸気温度を有する過熱水蒸気を生成する加熱媒体生成部81を備えた(【0067】、【0068】)、移動型の再加熱カートであり配膳車としても使用できる食品温調装置1の保温装置3が備える、温蔵庫と冷蔵庫のいずれかに切り替えて使用可能な第1保温庫4、冷蔵庫として使用可能な第2保温庫5、循環路とを(【0021】、【0026】、【0066】)、加熱媒体として過熱水蒸気を用いて加熱して除菌し、清掃ムラを抑えることができる除菌モードが選択されたときの制御方法であって(【0066】-【0067】)、
b、c 使用者により保温装置3の温調操作パネル33にて除菌モードの強力コースが選択されると、制御部37は、加熱媒体生成部81に加熱媒体を生成させ、加熱媒体を第1保温庫4、第2保温庫5、及び循環路に循環させる除菌モードを2時間行う(【0060】、【0065】、【0077】)、
d 除菌モードが選択されたときの制御方法(【0066】)。」
(3) 対比
本件補正発明と引用発明とを、分説に従い対比する。
ア 構成A、Dについて
引用発明の「加熱媒体生成部81」は、「水を加熱して水蒸気とし、更にその水蒸気をヒータによって加熱する」ものであるから、「水を加熱して水蒸気と」する機能を有する装置、及び「その水蒸気を」「加熱する」「ヒータ」の両者を備えていることは明らかであり、それぞれ本件補正発明の「蒸気発生装置」及び「蒸気加熱ヒータ」に相当する。
そして、引用発明の「移動型の再加熱カートであり配膳車としても使用できる食品温調装置1」の「第1保温庫、第2保温庫、及び循環路」は、本件補正発明の「配膳車内」に相当する。
次に、引用発明の「除菌モードが選択されたときの制御方法」について検討する。
引用発明は、「使用者により保温装置3の温調操作パネル33にて除菌モードの強力コースが選択される」ことで「除菌モード」を実行可能であるところ、「除菌モード」を実行する前に加熱工程を挟むことが必須のものではないから、保温装置3が常温の状態において「除菌モード」を実行することは含まれているということができ、「加熱媒体」である「過熱水蒸気」を常温の状態の「第1保温庫4、第2保温庫5、及び循環路に循環させる除菌モードを2時間行」えば、第1保温庫4、第2保温庫5の内面に接した「過熱水蒸気」の一部が凝縮して水となることは自明である。
また、引用発明の「除菌モードが選択されたときの制御方法」は、「清掃ムラを抑えることができる」ものであるから、清掃の効果も含むものであることは明らかであるところ、引用文献1の明細書には「従来の食品温調装置においては、毎食後に、食品が載せられたトレイを入れる保温庫内が水洗いやアルコール拭きによって清掃され」「水洗いやアルコール拭きによる清掃では、清掃ムラが発生し、保温庫内を十分に除菌できないおそれがある」(【0004】、【0005】)とあるとおり、引用文献1における「清掃」とは、水洗いやアルコール拭き等の液体を用いた清掃、すなわち、「洗浄」を含む意味のものであることもふまえれば、引用発明の、第1保温庫4、第2保温庫5の内面に凝縮した水を発生させることを含み、「清掃ムラを抑えることができる」「除菌モードが選択されたときの制御方法」は、本件補正発明の「洗浄方法」に相当する。
よって、引用発明は、本件補正発明の構成A、Dに相当する構成を有する。
イ 構成Bについて
引用発明の「加熱媒体」である「過熱水蒸気」、「2時間」は、本件補正発明の「蒸気および/または過熱蒸気」、「所定時間」に相当する。
そして、引用発明において「加熱媒体を第1保温庫4、第2保温庫5、及び循環路に循環させ」ることは、「加熱媒体」が「第1保温庫4、第2保温庫5、及び循環路」に存在し続けるということであり、また、「第1保温庫4、第2保温庫5、及び循環路に循環」している「加熱媒体」が、「第1保温庫4、第2保温庫5、及び循環路」の内面すなわち内壁に接することで付着することは自明であるから、本件補正発明の「配膳車内に蒸気および/または過熱蒸気を充満させ」ること、及び「配膳車内の内壁に蒸気および/または過熱蒸気を付着させ」ることに相当する。
また、上記アのとおり、引用発明の「除菌モードが選択されたときの制御方法」は、内面(内壁)に凝縮した水を発生させることを含み、「清掃ムラを抑えることができる」ものであるから、引用発明の「第1保温庫4、第2保温庫5、及び循環路に循環させ」る「除菌モードを2時間行う」、ことは、本件補正発明の「洗浄工程」に相当する。
よって、引用発明と本件補正発明の構成Bは、「配膳車内に蒸気および/または過熱蒸気を充満させて所定時間その状態を保つことで、配膳車内の内壁に蒸気および/または過熱蒸気を付着させ」る「洗浄工程を備え」る点で共通する。
ウ 構成Cについて
上記アのとおり、引用発明では保温装置3が常温の状態において「除菌モード」を実行することは含まれているということができるため、引用発明の「使用者により保温装置3の温調操作パネル33にて除菌モードの強力コースが選択され」、「加熱媒体を」「第1保温庫4、第2保温庫5、及び循環路に循環させ」ることは、本件発明の「前記配膳車内が常温の状態で前記蒸気および/または過熱蒸気を充満させ」ることに相当する。
よって、引用発明と本件補正発明の構成Cは、「前記配膳車内が常温の状態で前記蒸気および/または過熱蒸気を充満させ」る点で共通する。
エ 一致点及び相違点
上記ア-ウから、本件補正発明と引用発明の一致点及び一応の相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「【請求項1】
A 蒸気発生装置および蒸気加熱ヒータを有する配膳車内の洗浄方法であって、
B’ 配膳車内に蒸気および/または過熱蒸気を充満させて所定時間その状態を保つことで、配膳車内の内壁に蒸気および/または過熱蒸気を付着させる洗浄工程を備え、
C’ 前記配膳車内が常温の状態で前記蒸気および/または過熱蒸気を充満させる、
D 配膳車内の洗浄方法。」である点で一致し、次の点で一応相違する。
[一応の相違点1](構成B)
本件補正発明では、「配膳車内の内壁に蒸気および/または過熱蒸気を付着させ」て、「配膳車内の内壁に付着した汚れを浮かせると共に該汚れを配膳車内の内壁を伝って流下させる洗浄」を行うのに対し、引用発明は、「加熱媒体を第1保温庫4、第2保温庫5、及び循環路に循環させる除菌モードを2時間行う」ことは備えているが、上記本件補正発明が備える構成を備えていると直ちにはいえない点。
[一応の相違点2](構成C)
本件補正発明では、「配膳車内が常温の状態で」「充満させ」る「蒸気および/または過熱蒸気の温度が80~150℃の範囲内である」のに対し、引用発明は、「過熱水蒸気」が「常圧において100℃を超える蒸気温度を有する」構成は備えているが、「過熱水蒸気」が150℃以下である点については明示的に記載がない点。
オ 判断
(ア) 一応の相違点1
保温装置3が常温の状態において「加熱媒体」である「過熱水蒸気」を「2時間」の間「第1保温庫4、第2保温庫5、及び循環路に循環させ」る場合、第1保温庫4、第2保温庫5の内壁に接した「過熱水蒸気」の一部が凝縮して水となることは自明であり、その際には本願の明細書の【0037】に記載された
「蒸気を前記第一ヒータH1で加熱して約120℃程度とした過熱蒸気とし、そして、該過熱蒸気を前記隔壁2の蒸気吹出口9から噴出させて前記温冷室6A・6B内に充満させる。そして、この状態を約15~30分間程度保つことで、前記温冷室6A・6B内における前記仕切り壁5A・5B、隔壁2および前後の扉16に前記過熱蒸気を付着させ、これによって前記仕切り壁5A・5B、隔壁2および前後の扉16に付いていた汚れを浮き上がらせると共に、該汚れを流下させる。」
ことと同様のことが起き、少なくとも一部の汚れが浮き上がり流下することは明らかであるといえる。
また、仮に明らかでないとしても、引用発明における「除菌モード」は「清掃ムラを抑える」効果を有し、上記アで検討した、「洗浄」を含む意味での清掃と同様の効果を備えるものであるから、「過熱水蒸気」を「2時間」の間「第1保温庫4、第2保温庫5、及び循環路に循環させ」る際に、より汚れが落ちるように制御し、上記一応の相違点1に係る本件補正発明の特定事項のようになすことは、当業者が適宜なし得たことである。
(イ) 一応の相違点2
引用文献1の【0069】には、「加熱媒体として過熱水蒸気中に微細水滴が分散された100℃を超える気液二相媒体」を用いた際に「気液二相媒体の温度は、100℃以上が望ましく、例えば、115℃である」ことが記載されており、引用発明の「除菌モード」は「第1保温庫4、第2保温庫5、及び前記循環路が加熱媒体によって加熱されて除菌される」ものである(【0065】)ところ、「気液二相媒体」ではなく「過熱水蒸気」のみを用いた場合においても同様に115℃程度であることは明らかであるといえる。
また、仮に明らかでないとしても、加熱して除菌し、清掃ムラを抑えることができる範囲で、「過熱水蒸気」を150℃を超えない程度の温度とし、上記一応の相違点2に係る本件補正発明の特定事項のようになすことは、当業者にとって設計的事項である。
(ア)、(イ)より、上記一応の相違点1、一応の相違点2は実質的な相違点ではなく、本件補正発明は、引用発明であるか、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
4 むすび
よって、本件補正発明は、特許法第29条第1項第3号の規定又は特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和元年11月20日に願書に添付して提出した特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「 【請求項1】
A 蒸気発生装置および蒸気加熱ヒータを有する配膳車内の洗浄方法であって、
B’’ 配膳車内に蒸気および/または過熱蒸気を充満させて所定時間その状態を保つことで、配膳車内の内壁に付着した汚れを浮かせると共に該汚れを配膳車内の内壁を伝って流下させる
D ことを特徴とする、配膳車内の洗浄方法。」
2 原査定の拒絶の理由の概要(令和6年2月26日付け)
原査定の拒絶の理由は、概ね次の理由を含む。
理由2(特許法第29条第1項第3号)について
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由3(特許法第29条第2項)について
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2018-115814号公報
3 引用文献の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1の記載事項、および引用発明の認定については、前記「第2 3(2)引用発明」に記載したとおりである。
4 対比、判断
本願発明は、前記「第2 3 (1)本件補正発明」で検討した本件補正発明から、構成Bの一部と構成Cについての限定を省くものである。
そうすると、本願発明の特定事項をすべて含み、さらに当該特定事項の一部を限定した本件補正発明が、前記「第2 3 (3) 対比」において検討したように、引用発明であるか、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も、引用発明であるか、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 むすび
上記1-4より、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-008884