特許拒絶査定不服審判
2021-012411
食札表示システムおよびこれに用いる配膳車
- 審判番号
- 2021-012411
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-111455
- 請求日
- 2021年09月15日
- 審決日
- 2022年09月08日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社井上製作所
- 【請求人代理人】河野 修
- 審判長/審判官
- 審判長 藤井 昇
- 審判官 出口 昌哉
- 審判官 芦原 康裕
- 分類
- P18 .121-Z (A61G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第50条の2、特許法第17条の2第5項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-111455号「食札表示システムおよびこれに用いる配膳車」拒絶査定不服審判事件〔令和2年10月22日出願公開、特開2020-171728号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年7月31日に出願した特願2017-147897号(以下「原出願」という。)の一部を令和2年6月29日に新たな特許出願としたものであって、令和3年4月1日付けで拒絶理由が通知され、同年4月30日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月8日付けで特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由が通知され、同年6月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年7月7日付けで同年6月28日の手続補正についての補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、同年9月15日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和3年9月15日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年9月15日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
令和3年9月15日の手続補正(以下「本件補正」という。)は、令和3年4月30日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を補正する事項を含むものであり、その請求項1の補正の内容は以下のとおりである(下線は補正箇所を示し、当審が付したものである。)。
(1)本件補正後の請求項1
「食札情報を管理する食札管理装置と、通信手段を介して前記食札管理装置から受信した食札情報を電気・電子的に表示する食札表示装置を備えた食札表示システムが使用される配膳車であって、その内部に収容される各段のトレイに対応して、前記食札表示装置が当該配膳車の扉の窓板前面に多段且つ個別に取り付けられていることを特徴とする、食札表示用配膳車。」
(2)本件補正前の請求項1
「食札情報を管理する食札管理装置と、通信手段を介して前記食札管理装置から受信した食札情報を電気・電子的に表示する食札表示装置を備え、該食札表示装置が、給食に使用する配膳車に設けられている食札表示システム。」
2 補正の適否
2-1
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「給食に使用する配膳車」から、「給食に使用する」という事項を削除する補正、及び、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「食札管理装置と」「食札表示装置を備え」た「食札表示システム」を、「食札管理装置と」「食札表示装置を備えた食札表示システムが使用される配膳車」ないし「食札表示用配膳車」という事項に変更する補正を含むものである。
前者の補正は、「給食に使用する配膳車」という発明特定事項の一部である「給食に使用する」を削除するものであり、当該発明特定事項に対して限定をさらに付加するものであるとはいえない。
また、後者の補正は、「食札管理装置と」「食札表示装置を備えた食札表示システム」を、「食札管理装置と」「食札表示装置を備えた食札表示システムが使用される」「食札表示用配膳車」とするものであって、「食札表示システム」を「食札表示用配膳車」に変更するものであることから、後者の補正も、「食札表示システム」に係る発明特定事項に対して限定をさらに付加するものであるとはいえない。
したがって、上記の補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に規定する請求項の削除、同第3号に規定する誤記の訂正、同第4号に規定する明りようでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反する。
2-2
仮に、本件補正が限定的減縮を目的とするものであり、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)についても、念のため、以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1(1)」に記載したとおりのものである。
(2)引用文献、引用文献に記載された事項、引用発明等
・特開2003-157321号公報(以下「引用文献1」という。)
・特開2008-73101号公報(以下「引用文献2」という。)
(2-1)引用文献1について
ア 引用文献1に記載された事項
原出願の出願前に頒布され、原査定で引用された引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様である。)。
「【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、コンピュータを、電子食札を用いた給食システムにおける食事の盛付けから電子食札の管理までの間での各イベントを認識するイベント認識手段、イベントの主体に報知すべき情報を記憶する記憶手段、前記イベント認識手段によりイベントが認識される毎に、当該イベントに対応する情報を当該電子食札に順次表示させる制御手段として機能させるための電子食札制御プログラムである。
・・・
【0012】図1は、本発明にかかる一実施の形態の構成を示すブロック図である。この図において、電子食札制御装置100は、複数の電子食札(同図では、電子食札2001のみを図示)の表示をイベントに応じて制御するための装置であり、例えば、患者に対して食事を提供する病院等に設けられている。この電子食札制御装置100は、据え置き型のコンピュータ装置や、携帯型のコンピュータ装置等であり、病院等の給食システムで用いられる。
・・・
【0014】図3には、調理場の配膳台3001に並べられた複数のトレー4001~40016が図示されている。これらのトレー4001~40016のそれぞれには、食器(図示略)および電子食札2001(図1参照)~20016が載置されている。
【0015】また、実際の調理場においては、図4に示した複数の配膳台3001~3004、・・・のそれぞれに、食器(図示略)および電子食札(図示略)が載置されたトレー4001~400K、・・・が並べられている。
【0016】「車載」は、調理人が、図4に示したトレー4001~400K、・・・を配膳車5001(1号車)~5004(4号車)にそれぞれ振り分け、車載することをいう。例えば、配膳台3001のトレー400aは、配膳車5001(1号車)に車載され、トレー400bは、配膳車5002(2号車)に車載される。これらの配膳車5001~5004、・・・のそれぞれは、調理場から各病棟に移動される。
・・・
【0019】電子食札2001において、電源部201は、各部に電力を供給するものであり、一次電池等である。受信部202は、電子食札制御装置100から送信される盛付け情報、車載情報、配膳情報、返却情報、食札管理情報や、後述する病室表示板700(図7参照)の送信部704から送信される点滅指示情報等を赤外線を介して受信する。
・・・
【0021】ここで、図3に示した電子食札2001~20016、・・・には、食札認識番号(図2参照)がそれぞれ付与されている。例えば、電子食札2001には、1000001(図2参照)が付与されている。
【0022】電子食札制御装置100において、制御部101は、各部を制御するものである。この制御部101の動作の詳細については、後述する。電子食札情報データベース102は、複数の電子食札2001~20016、・・・(図3参照)に表示させる電子食札情報を格納するデータベースである。この電子食札情報は、前述した盛付け情報、車載情報、配膳情報、返却情報および食札管理情報の総称である。
【0023】具体的には、電子食札情報データベース102は、図2に示したように、「患者ID」、「配膳日時」、「患者氏名」、「病棟」、「病室」、「食種」、「主食」、「コメント1~5」、「制限情報」、「残食情報」、「嗜好情報」、「食事制限区分」、「食事制限上限」、「食事制限下限」、「配膳車番号」、「食札状態」および「食札認識番号」というフィールドを備えている。
・・・
【0030】また、図23に示した電子食札情報データベース102に格納された電子食札情報のうち、「患者ID」、「配膳日時」、「患者氏名」、「病棟」、「病室」、「食種」、「主食」、「配膳車番号」、「食札状態」および「食札認識番号」は、配膳情報として、配膳時に電子食札へ送信される。」と記載されたとおりのものである。
・・・
【0037】また、病院内においては、電子食札制御装置100は、調理場、各病棟等に複数設けられている。これらの電子食札制御装置100は、図示しないLAN(Local Area Network)を介して相互接続されている。この場合には、それぞれの電子食札制御装置100の電子食札情報データベース102は、自動更新され、同一の電子食札情報を格納している。
・・・
【0092】そして、配膳情報が電子食札2001の受信部202(図1参照)に受信されると、制御部206は、図24に示したように、強調表示と通常表示とに分けて、配膳情報を表示する。
【0093】具体的には、図25に示したように、電子食札2001には、患者氏名1、患者ID2、病棟3、病室4および配膳日時5が強調表示され、配膳車番号6、食種7、主食8、食札状態15および処理日時16が通常表示される。
・・・
【0100】そして、配膳車5001に車載された各トレー上の電子食札2001~200Z、・・・のそれぞれの受信部に患者IDが受信されると、制御部は、該患者IDと配膳処理(図11参照)で受信した患者IDとを照合し、一致した場合、LEDを点滅させる。」
図1、4、11、23~27は、以下のとおりである。
[図:0001390234000001.jpg]
[図:0001390234000002.jpg]
[図:0001390234000003.jpg]
[図:0001390234000004.jpg]
[図:0001390234000005.jpg]
[図:0001390234000006.jpg]
イ 引用文献1から認定できる事項
上記アの記載ないし図面から、引用文献1について、以下の事項が認定できる。
(ア)
図1から、電子食札情報データベース102を備えた電子食札制御装置100が看取できる。
段落【0022】(以下、段落番号は、「段落」は省略して【0022】のように記載する。)の「電子食札情報データベース102は、複数の電子食札2001~20016、・・・(図3参照)に表示させる電子食札情報を格納するデータベースである。この電子食札情報は、前述した盛付け情報、車載情報、配膳情報、返却情報および食札管理情報の総称である。」という記載から、配膳情報を格納する電子食札情報データベース102が認定できる。
これらのことから、配膳情報を格納する電子食札情報データベース102を備えた電子食札制御装置100が認定できる。
(イ)
【0019】の「電子食札2001において、電源部201は、各部に電力を供給するものであり、一次電池等である。受信部202は、電子食札制御装置100から送信される盛付け情報、車載情報、配膳情報、返却情報、食札管理情報や、後述する病室表示板700(図7参照)の送信部704から送信される点滅指示情報等を赤外線を介して受信する。」、【0092】の「配膳情報が電子食札2001の受信部202(図1参照)に受信されると、制御部206は、図24に示したように、強調表示と通常表示とに分けて、配膳情報を表示する。」、及び、【0093】の「具体的には、図25に示したように、電子食札2001には、患者氏名1、患者ID2、病棟3、病室4および配膳日時5が強調表示され、配膳車番号6、食種7、主食8、食札状態15および処理日時16が通常表示される。」という記載から、電子食札制御装置100から送信される配膳情報が電子食札の受信部に受信されると、配膳情報を表示する、具体的には、患者氏名1、患者ID2、病棟3、病室4および配膳日時5が強調表示され、配膳車番号6、食種7、主食8、食札状態15および処理日時16が通常表示される、電子食札が認定できる。
(ウ)
【0009】の「電子食札を用いた給食システム」、及び、【0012】の「この電子食札制御装置100は、据え置き型のコンピュータ装置や、携帯型のコンピュータ装置等であり、病院等の給食システムで用いられる。」という記載から、電子食札制御装置100と、電子食札を用いた給食システムが認定できる。
そして、図1には、当該給食システムが説明されており、図1、図26、図27の記載を総合すると、電子食札制御装置100と、電子食札を用いた給食システムが使用されている、配膳車が認定できる(なお、実質的には、電子食札制御装置100と、電子食札を用いた給食システムを使用している、配膳車が認定できるのであるが、本件補正発明の記載に倣い、下線を付したとおりに認定した。)。
(エ)
【0100】の「配膳車5001に車載された各トレー上の電子食札2001~200Z、・・・のそれぞれの受信部に患者IDが受信されると、制御部は、該患者IDと配膳処理(図11参照)で受信した患者IDとを照合し、一致した場合、LEDを点滅させる。」、及び、【図面の簡単な説明】の「【図26】図11に示した配膳処理を説明する図である。【図27】図11に示した配膳処理を説明する図である。」という記載を参照すると、図26、図27の配膳車は、【0100】の「配膳車5001に車載された各トレー上の電子食札2001~200Z」を備えていると認められる。
そして、配膳車の内部に複数のトレーが多段に収容されることは技術常識であることを踏まえつつ、【0016】の「トレー400aは、配膳車5001(1号車)に車載され」という記載から「配膳車」は「トレー」を「車載」できる構造であること、図26、図27から配膳車に複数の「トレー」が上下方向に多段に車載されることが看取できること、及び、【0014】の「図3には、調理場の配膳台3001に並べられた複数のトレー4001~40016が図示されている。これらのトレー4001~40016のそれぞれには、食器(図示略)および電子食札2001(図1参照)~20016が載置されている。」という「トレー」に関する記載を総合すると、配膳車の内部に収容される各段のトレーのそれぞれには、食器及び電子食札が載置されている、配膳車が認定できる。
ウ 引用文献1に記載された発明
(ア)
上記ア、イから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明1]
「配膳情報を格納する電子食札情報データベース102を備えた電子食札制御装置100と、電子食札制御装置100から送信される配膳情報が電子食札の受信部に受信されると、配膳情報を表示する、具体的には、患者氏名1、患者ID2、病棟3、病室4および配膳日時5が強調表示され、配膳車番号6、食種7、主食8、食札状態15および処理日時16が通常表示される、電子食札を用いた給食システムが使用され、
配膳車の内部に収容される各段のトレーのそれぞれには、食器及び電子食札が載置されている、配膳車。」
(イ)
また、上記ア、イ及び引用発明1から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明2」という。)も記載されていると認められる。
[引用発明2]
「配膳情報を格納する電子食札情報データベース102を備えた電子食札制御装置100と、電子食札制御装置100から送信される配膳情報が電子食札の受信部に受信されると、配膳情報を表示する、具体的には、患者氏名1、患者ID2、病棟3、病室4および配膳日時5が強調表示され、配膳車番号6、食種7、主食8、食札状態15および処理日時16が通常表示される、電子食札を用いた、
食器及び電子食札が、配膳車の内部に収容される各段のトレーのそれぞれに載置されている、給食システム。」
(2-2)引用文献2について
ア 引用文献2に記載された事項
原出願の出願前に頒布され、原査定で引用された引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、病院や老人ホーム等において、食事を配膳する際に用いられる配膳車における食札装置に関する。
・・・
【0003】
従来、食札は、横断面略L字状のカード立てに入れられて、食事が載っているトレイ上に立てられるか、或いは図9に示すように、配膳車のガラス扉(31)の前面に取り付けられた食札ホルダー(32)に入れられていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来例のうち、食札を入れるカード立ての場合、食札が患者の食事と共に配膳車の内部に入れられてしまうため、配膳を行う給食者が配膳車の外部から食札を十分に視認することができないという欠点があった。
【0005】
また、配膳車のガラス扉(31)前面に取り付けられる食札ホルダー(32)の場合、ガラス扉(31)が閉まった状態では食札(C)を見ることができるが、ガラス扉(31)を開けて配膳する際には、該扉(31)が開くことで食札(C)が裏向きとなるため、該食札(C)の記載内容を見ることができないという不都合があった。またこれを解消するためには、食札(C)の両面に患者の氏名や食事の種類等を記載したり、印刷したりしなければならないことから、通常、食札(C)が多数となる病院では、多大な手間を要した。
【0019】
なお、図中(T)はトレイ受け(12)に載置されたトレイを示す。
・・・
【符号の説明】
【0025】(1) 配膳車
(2A)(2B) 食札表示体用ヒンジ
(3) 扉
(4) 上側軸受部材
(5) 下側軸受部材
(6) 食札表示体
(7) 食札入れ
(8) 上側軸状突起
(9) 下側軸状突起
(10) 扉ヒンジ
(11) 庫内側付勢手段
(C) 食札」
図1及び図9は、以下のとおりである。
[図:0001390234000007.jpg]
[図:0001390234000008.jpg]
イ 引用文献2から認定できる事項
配膳車1は、図1に示されるとおり、内部にトレイTが多段に収容される構造となっている。
このことと、【0003】、【0004】及び【0005】の記載から、「患者の氏名や食事の種類等を記載したり印刷したりし」た「食札C」は、患者の食事が載っている、配膳車1の内部に収容される各段のトレイTに対応して設けられるものであることが明らかである。
さらに、【0003】の「配膳車のガラス扉(31)の前面に取り付けられた食札ホルダー(32)」という記載を踏まえつつ、図9を見ると、図9から、ガラス扉(31)前面に取り付けられる食札C及び食札ホルダー(32)が看取できるところ、この食札C及び食札ホルダー(32)は、配膳車1の内部に収容される各段のトレイTに対応して、配膳車1のガラス扉31の前面に多段且つ個別に取り付けられると認定できる。
ウ 引用文献2に記載された技術事項
上記ア、イから、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献2に記載された技術事項]
「氏名や食事の種類等を記載したり印刷したりした食札Cが、横断面略L字状のカード立てに入れられて、食事が載っているトレイT上に立てられるか、或いは、配膳車1の内部に収容される各段の食事が載っているトレイTに対応して、配膳車1のガラス扉31の前面に多段且つ個別に取り付けられる、配膳車1。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
ア
引用発明1の「配膳情報」は、本件補正発明の「食札情報」に相当する。
引用発明1の「配膳情報を格納する電子食札情報データベース102を備えた電子食札制御装置100」は、「配膳情報を格納する」ことなどから、「配膳情報」(食札情報)を管理することが明らかであり、引用発明1の「配膳情報を格納する電子食札情報データベース102を備えた」「電子食札制御装置100」は、本件補正発明の「食札情報を管理する」「食札管理装置」に相当する。
イ
(ア)
引用発明1では、「電子食札制御装置100から送信される配膳情報が電子食札の受信部に受信されると、配膳情報を表示する」から、引用発明1の「配膳情報」は、「電子食札の受信部」を介して「電子食札制御装置100から」受信した「配膳情報」である。
引用発明1の「電子食札の受信部」は、本件補正発明の「通信手段」に相当する。
これらのことと、上記アを踏まえると、引用発明1の「電子食札制御装置100から送信される配膳情報が電子食札の受信部に受信されると、配膳情報を表示する」ことにおける「配膳情報」は、本件補正発明の「通信手段を介して食札管理装置から受信した食札情報」に相当する。
(イ)
引用発明1の「配膳情報を表示する、具体的には、患者氏名1、患者ID2、病棟3、病室4および配膳日時5が強調表示され、配膳車番号6、食種7、主食8、食札状態15および処理日時16が通常表示される」ことは、「電子食札」に「表示される」から、電気・電子的に表示されることが明らかであり、本件補正発明の「食札情報を電気・電子的に表示する」ことに相当する。
(ウ)
引用発明1の「電子食札」は、本件補正発明の「食札表示装置」に相当し、このことを踏まえると、引用発明1の「電子食札を用いた給食システム」は、本件補正発明の「食札表示装置を備えた食札表示システム」に相当する。
(エ)
上記(ア)~(ウ)を踏まえると、引用発明1の「電子食札制御装置100から送信される配膳情報が電子食札の受信部に受信されると、配膳情報を表示する、具体的には、患者氏名1、患者ID2、病棟3、病室4および配膳日時5が強調表示され、配膳車番号6、食種7、主食8、食札状態15および処理日時16が通常表示される、電子食札を用いた給食システムが使用され」ることは、本件補正発明の「通信手段を介して前記食札管理装置から受信した食札情報を電気・電子的に表示する食札表示装置を備えた食札表示システムが使用される」ことに相当する。
ウ
(ア)
引用発明1の「配膳車」は、本件補正発明の「配膳車」に相当する。
また、引用発明1の「配膳車」と、本件補正発明の「食札表示用配膳車」とは、「配膳車」において共通している。
(イ)
上記(ア)、ア、イ(エ)を踏まえると、引用発明1の「配膳情報を格納する電子食札情報データベース102を備えた電子食札制御装置100と、電子食札制御装置100から送信される配膳情報が電子食札の受信部に受信されると、配膳情報を表示する、具体的には、患者氏名1、患者ID2、病棟3、病室4および配膳日時5が強調表示され、配膳車番号6、食種7、主食8、食札状態15および処理日時16が通常表示される、電子食札を用いた給食システムが使用され」る「配膳車」は、本件補正発明の「食札情報を管理する食札管理装置と、通信手段を介して前記食札管理装置から受信した食札情報を電気・電子的に表示する食札表示装置を備えた食札表示システムが使用される配膳車」に相当する。
エ
引用発明1では、「配膳車の内部に収容される各段のトレーのそれぞれには、食器及び電子食札が載置されている」から、「配膳車の内部に収容される各段のトレー」に対応して、「電子食札」が個別に設けられているといえる。
引用発明1の「配膳車の内部」は、本件補正発明の「その内部」に相当する。
引用発明1の「トレー」は、本件補正発明の「トレイ」に相当する。
これらのことと、上記アを踏まえると、引用発明1の「配膳車の内部に収容される各段のトレーのそれぞれには、食器及び電子食札が載置されている」ことと、本件補正発明の「その内部に収容される各段のトレイに対応して、前記食札表示装置が当該配膳車の扉の窓板前面に多段且つ個別に取り付けられている」こととは、「その内部に収容される各段のトレイに対応して、前記食札表示装置が個別に設けられている」ことにおいて共通している。
以上から、本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「食札情報を管理する食札管理装置と、通信手段を介して前記食札管理装置から受信した食札情報を電気・電子的に表示する食札表示装置を備えた食札表示システムが使用される配膳車であって、その内部に収容される各段のトレイに対応して、前記食札表示装置が個別に設けられている、配膳車。」
<相違点1>
「食札表示装置が個別に設けられている」ことについて、本件補正発明では、食札表示装置が「当該配膳車の扉の窓板前面に多段且つ個別に取り付けられている」のに対して、引用発明1では、「配膳車の内部に収容される各段のトレーのそれぞれには、食器及び電子食札が載置されている」点。
<相違点2>
「配膳車」について、本件補正発明では、「食札表示用」配膳車であるのに対して、引用発明1では、そのように特定されていない点。
(4)判断
各相違点について以下検討する。
ア 相違点1について
(ア)
引用発明1の「電子食札」と引用文献2に記載された技術事項の「食札」とは、前者が電子的に表示されたものであり、後者が記載又は印刷されたものであるという点で異なるものの、食事の種類や食事をする人の氏名などが表示された「食札」である点では共通している。
そうすると、引用発明1と引用文献2に記載された技術事項とは、「配膳車」である点で技術分野が共通するだけでなく、食事の種類や食事をする人の氏名などが表示された「食札」を用い、さらに、「配膳車」の「内部に収容される各段のトレイに対応して」、「食札」が「個別に」設けられるという主要な構成(一致点及び引用文献2に記載された技術事項を参照。)までも共通していることから、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項を適用しようとする動機付けは充分にあるといえる。
そして、引用文献2に記載された技術事項は、「氏名や食事の種類等を記載したり印刷したりした食札Cが、横断面略L字状のカード立てに入れられて、食事が載っているトレイT上に立てられるか、或いは、配膳車1の内部に収容される各段の食事が載っているトレイTに対応して、配膳車1のガラス扉31の前面に多段且つ個別に取り付けられる、配膳車1。」であるから、食札を、トレー上に立てて、トレーに載置してもよく、配膳車のガラス扉すなわち扉の窓板の前面に多段且つ個別に取り付けてもよいものであるといえる。
(イ)
そうすると、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項を適用して、引用発明1の「配膳車」に窓板を有する扉を設け、引用発明1の「電子食札が」「配膳車の内部に収容される各段のトレーのそれぞれに」「載置されている」構成に替えて、「電子食札」が各段のトレイに対応して、配膳車の扉の窓板前面に多段且つ個別に取り付けられるようにすることで、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。
イ 相違点2について
(ア)
引用発明1の「配膳車」は、「配膳情報を表示する電子食札」を備えているから、食札表示を行う配膳車である。
このことを踏まえると、引用発明1の「配膳車」は、実質的に、本件補正発明の「食札表示用配膳車」に相当する。
したがって、相違点2は、実質的な相違点ではない。
(イ)
仮に、相違点2が、実質的な相違点であったとしても、上記アで述べたように、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項を適用して、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることで、引用発明1の「配膳車」について、用途を食札表示用に特定して、食札表示用配膳車とすることは、当業者が容易になし得たといえる。
ウ 本件補正発明の奏する作用効果について
また、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明1及び引用文献1ないし2に記載された技術事項から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人の主張
審判請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」において、以下の主張1~主張3のとおり主張している。
・主張1:「すなわち、前記本願発明では、食札表示装置が、当該配膳車の扉の窓板前面に・・・に取り付けられている(請求項1)ということは、食札表示装置が窓板の前面に直接的に付設されていることが一義的に理解される。」
・主張2:「引用文献1に記載の発明は、「盛付け」、「車載」および「配膳」等といったイベントごとの食札情報を制御する電子食札制御装置100と、該装置で制御された前記イベントごとの食札情報が表示される電子食札200とで構成される「電子食札制御プログラム」に関するものであって、本願発明のような配膳車に関する発明ではない。
また、引用文献1には、配膳車500を使って配膳作業を行うことが記載されているだけで、配膳車自体の具体的構造については全く記載されていない。
そのため、引用文献1は、本願の前述した配膳車自体の具体的構造に対して何ら有効な記載が認められないものである。」
・主張3:「(3)拒絶理由通知書においては、前記引用文献2記載の食札Cを引用文献1に記載された電子食札200とすることで、本願発明の進歩性(特許法第29条第2項)が否定される旨、付記されています」
(イ)主張1について
主張1の「直接的」が、「直接」を意味しているのか、間接的も含むことを意味していのか、その意味は不明であるが、本件補正発明は、「前記食札表示装置が当該配膳車の扉の窓板前面に多段且つ個別に取り付けられている」ものであり、「直接的」という構成を特定しているものではない。
したがって、この主張1は、本件補正発明の特定事項に基づいた主張とはいえないから、採用できない。
仮に、本件補正発明が「食札表示装置が窓板の前面に直接的に付設されている」構成であるとして以下検討する。
引用発明1の「電子食札」を引用文献2に記載された技術事項のように扉の窓板前面に取り付けるには、何らかの機械構造的な取付手段又は接着剤などの取付手段を介さざるを得ないことは自明である。
そして、これらの何らかの取付手段を用いたものを直接的に付設されているというのであれば、引用文献2に記載された技術事項も直接的といえるし、その直接的な取付手段は、接着、吸着、固着等、当業者であれば適宜選択し得るものであり、直接的は、設計上の微差にすぎない。
よって、主張1は、採用することができない。
(ウ)主張2について
上記「(2)(2-1)イ(エ)及びウ」のとおり、引用文献1から引用発明1の「配膳車」を認定することができる。
よって、主張2は採用することができない。
(エ)主張3について
原査定の拒絶の理由は、「引用文献2記載の食札Cを引用文献1に記載された電子食札200とすること」、つまり、引用文献2に記載された主引用発明に、引用文献1に記載された技術事項を組み合わせることで、本件補正前の請求項1に係る発明の進歩性を否定したものではない。
よって、主張3は採用できない。
(オ)その他の主張について
審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」において、本件補正発明と引用文献1に記載された事項ないし引用文献2に記載された事項をそれぞれ対比し、その対比に基づく主張が散見されるが、この主張は、引用発明1に引用文献2に記載された事項を適用することに対する主張ではないから、当を得たものでなく、採用できない。
(5)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明1及び引用文献1ないし2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するから、仮にそうでないとしても、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年9月15日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~5に係る発明は、令和3年4月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」ともいう。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2[理由]1(2)」に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の拒絶の理由を含むものである。
[理由1]
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
[理由2]
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[刊行物等]
2003-157321号公報(引用文献1:上記「第2[理由]2 2-2(2)」参照。)
3 引用文献、引用文献に記載された事項、引用発明等
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1に記載された事項、引用発明等は、上記「第2[理由]2 2-2(2)(2-1)」に記載したとおりである。
4 対比・判断
(1)対比
本願発明1と引用発明2とを対比する。
ア
引用発明2の「配膳情報」は、本願発明1の「食札情報」に相当する。
引用発明2の「配膳情報を格納する電子食札情報データベース102を備えた電子食札制御装置100」は、「配膳情報を格納する」ことなどから、「配膳情報」(食札情報)を管理することが明らかであり、引用発明2の「配膳情報を格納する電子食札情報データベース102を備えた」「電子食札制御装置100」は、本願発明1の「食札情報を管理する」「食札管理装置」に相当する。
イ
(ア)
引用発明2では、「電子食札制御装置100から送信される配膳情報が電子食札の受信部に受信されると、配膳情報を表示する」から、この「表示」される「配膳情報」は、「電子食札の受信部」を介して「電子食札制御装置100から」受信した「配膳情報」である。
引用発明2の「電子食札の受信部」は、本願発明1の「通信手段」に相当する。
これらのことと、上記アを踏まえると、引用発明2の「電子食札制御装置100から送信される配膳情報が電子食札の受信部に受信されると、配膳情報を表示する」ことにおける「表示」される「配膳情報」は、本願発明1の「通信手段を介して食札管理装置から受信した食札情報」に相当する。
(イ)
引用発明2の「配膳情報を表示する、具体的には、患者氏名1、患者ID2、病棟3、病室4および配膳日時5が強調表示され、配膳車番号6、食種7、主食8、食札状態15および処理日時16が通常表示される」ことは、本願発明1の「食札情報を電気・電子的に表示する」ことに相当する。
(ウ)
引用発明2の「電子食札」は、本願発明1の「食札表示装置」に相当し、このことを踏まえると、引用発明2の「電子食札を用いた、」「給食システム」は、本願発明1の「食札表示装置を備え」た「食札表示システム」に相当する。
(エ)
上記(ア)~(ウ)を踏まえると、引用発明2の「電子食札制御装置100から送信される配膳情報が電子食札の受信部に受信されると、配膳情報を表示する、具体的には、患者氏名1、患者ID2、病棟3、病室4および配膳日時5が強調表示され、配膳車番号6、食種7、主食8、食札状態15および処理日時16が通常表示される、電子食札を用いた、」「給食システム」は、本願発明1の「食札情報を管理する食札管理装置と、通信手段を介して前記食札管理装置から受信した食札情報を電気・電子的に表示する食札表示装置を備え」た「食札表示システム」に相当する。
ウ
(ア)
引用発明2の「配膳車」と、本願発明1の「給食に使用する配膳車」とは、「配膳車」において共通している。
(イ)
上記(ア)、アを踏まえると、引用発明2の「食器及び電子食札が、配膳車の内部に収容される各段のトレーのそれぞれに載置されている」ことと、本願発明1の「該食札表示装置が、給食に使用する配膳車に設けられている」こととは、「該食札表示装置が、配膳車に設けられている」ことにおいて共通している。
以上から、本願発明1と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点A>
「食札情報を管理する食札管理装置と、通信手段を介して前記食札管理装置から受信した食札情報を電気・電子的に表示する食札表示装置を備え、該食札表示装置が、配膳車に設けられている食札表示システム。」
<相違点A>
「配膳車」が、本願発明1では、「給食に使用する」配膳車であるのに対して、引用発明2では、そのように特定されていない点。
(2)判断
相違点Aについて以下検討する。
ア
引用発明2は、「給食システム」であるから、引用発明2の「配膳車」は、給食に使用する配膳車であることが明らかである。
そうすると、相違点Aは、実質的な相違点ではない。
したがって、本願発明1は、引用発明2である。
イ
仮に、相違点Aが、実質的な相違点であったとしても、引用発明2の「配膳車」を、給食に使用する配膳車とすることは、当業者が容易になし得たといえる。
したがって、本願発明1は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本願発明1の奏する作用効果について
また、本願発明1の奏する作用効果は、引用発明2から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(3)まとめ
したがって、本願発明1は引用発明2であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないし、また、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第1項の規定により、又は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-012411